(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路装置の製造工程において用いられるCMP装置は、例えば、回転軸により回転力を与えられる研磨テーブル上に取り付けた研磨パッドの表面に、研磨液を供給しつつ、アームに支持された回転軸により回転力が与えられるトップリングの下面に保持された半導体ウエハ(被研磨物)を押し付けることによって、半導体ウェハの被研磨面を研磨するように構成されている。
【0003】
ところで、従来、この種のCMP装置では、半導体ウェハを研磨している際に研磨レートを上げるために研磨パッドの研磨面圧を上げる処理や、研磨面と半導体ウェハとの相対速度を上げる処理等を行うと、研磨面とウェハとの摩擦により発生する摩擦熱が上昇し、研磨面及び研磨面に広がる研磨液(スラリ)の温度が上昇する。この研磨面及びスラリの温度の上昇に伴い、研磨パッド及びスラリと接触している半導体ウェハ及び半導体ウェハを保持するトップリングの温度上昇も引き起こされる。
【0004】
研磨パッドの研磨面の温度が上昇すると、研磨パッドの硬度及びヤング率が低下し、被研磨物である半導体ウェハの被研磨面の平坦度の劣化を引き起こす恐れがある。スラリの温度が上昇すると、スラリの化学的性能により研磨レートの上昇も期待できるが、温度が上昇しすぎた場合はその性状が劣化し、本来の研磨性能を発揮できなくなる恐れがある。さらに、ウェハを保持するトップリングの温度上昇が大きい場合、ウェハを研磨パッドに押し付ける機構に影響がある。このため、研磨によるこれらの温度上昇を管理・制御できるようにすることが切望されている。
【0005】
そこで、冷却板を研磨パッドの研磨面に接触させ、熱伝導により研磨パッドから抜熱することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この接触熱伝導方式の冷却では、冷却板が研磨パッドやスラリと接触するので、冷却板からの汚染(イオン、粒子による汚染)を防止するために冷却板の研磨パッドとの接触表面のコーティングやクリーニング装置が必要となる。また、冷却板に付着したスラリが乾くことで発生するスラリ粒子が冷却板から研磨パッド上面に落下すると、このスラリ粒子はウェハの研磨時に研磨パッドの研磨面とウェハの研磨面との間に入り込み、研磨面を傷つける恐れがあるので、冷却板全体のクリーニング装置が必要となる。
【0006】
また、接触熱伝導方式における抜熱効果は、冷却板の接触面積、冷却板と研磨パッド(又はスラリ)との温度差に比例するので、大きな面積と大きな温度差が必要となる。
しかしながら、研磨パッド面上にはウェハを保持したトップリング、パッドを目立てするドレッサ、スラリを供給するスラリノズル、パッド面を洗浄するアトマイザノズル(高圧純水シャワーノズル)等が配置されるので、接触面積を容易に確保することができない。
【0007】
そこで、スラリ等で濡れている研磨パッド面にドライガス(空気や窒素)を吹き付けることで気化潜熱により抜熱することが知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
しかしながら、ドライガスを研磨パッド面に吹き付けると、吹き付けたドライガスによ
りスラリが飛散して、研磨に有効なスラリ成分が減少することになる。また、飛散したスラリはCMP装置の周辺に付着し、付着したスラリが落下してウェハ面にスクラッチ問題を発生させるという問題があり、汎用性が乏しく、適用範囲が狭い。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る排気流量制御装置及びこれを備えた基板処理装置(CMP装置)を示す概略図である。
図示のように、本実施形態に係る基板処理装置1は、ウェハ等の基板を保持するトップリング12及び研磨パッド14が貼り付けられる研磨テーブル16を備えたCMP装置10と、CMP装置10が配置される研磨空間20(処理空間)を排気可能に構成された排気流量制御装置30とを有している。
【0020】
排気流量制御装置30は、研磨空間20の排気口24aに接続された第1の排気ライン31aと、第1の排気ライン31aにおける研磨空間20からの排気流量を調節可能な排気ダンパ等から成る第1の排気流量可変装置32aと、第1の排気流量可変装置32aを制御するための排気制御部33と、第1の排気ライン31aと接続した工場排気ライン34と、第1の排気ライン31aを介して研磨空間20を排気可能に構成された排気装置35とを備えている。
研磨空間20には吸気口22aが設けられており、排気口24aから研磨空間20が排気されると共に吸気口22aから吸気されることで、研磨空間20内が換気される。
【0021】
排気制御部33は、第1の排気流量可変装置32aと通信可能に構成されている。また、排気制御部33は、CMP装置10の所定の場所、例えば研磨パッド14上の温度を所定の温度範囲内とするために必要な、予め算出された排気流量の制御データを格納した記憶装置を有し、この制御データに基づいて第1の排気流量可変装置32aを制御する。
【0022】
本実施形態では、研磨空間20の所定の場所、例えば研磨パッド14上の温度を所定の範囲内にするために研磨空間20の排気量を管理・制御する。
本実施形態におけるCMP装置10の研磨パッド14の研磨面や、トップリング12に設けられたウェハの被研磨面には、ウェハの研磨のためのスラリ等の水溶液や純水が付着
している。これらの液体が気体に状態変化する際には吸熱反応が生じ、この吸熱反応により研磨パッド14の研磨面やウェハの被研磨面を抜熱することができる。本発明は、この現象を利用して研磨空間20の所定の場所の温度を所定の範囲内に制御することができる。
【0023】
本発明では、上記液体の気体への状態変化を促すために熱量を与える、即ち液体を沸点温度に上昇させて気化させるのではなく、研磨空間20に存在する空気に吸湿させることで上記液体の気体への状態変化を促している。
研磨空間20を排気(換気)せずに封止した状態にしておくと、研磨空間20内の空気中にスラリ等の水溶液や純水からの水分が含まれることで、空間の湿度が上がることとなる。しかし、空気中に含まれる水分量は無限ではなく、その雰囲気の温度と圧力で決定される飽和蒸気圧曲線で示される制限(飽和)が存在する。このため、研磨空間20を封止した状態では、液体から気体への状態変化はいずれかの時点で停止し、結果として一時的なものとなる。
【0024】
そこで、本発明では、研磨空間20の排気量を管理・制御することで、研磨空間20の外の空気を研磨空間20内に吸気口22aを介して取り込み、取り込んだ空気を研磨パッド14の研磨面やウェハの被研磨面を這わせて(接触させて)、その後排気口24aから排出する。これにより、研磨空間20内において液体から気体への状態変化を継続的に発生させ、気化潜熱により研磨パッド14の研磨面やウェハの被研磨面を抜熱することができる。
【0025】
また、ウェハの研磨プロセスは一般的に予め定められたシーケンスに従って行われるので、研磨時に発生する発熱量は研磨プロセスごとに再現性がある。このため、本実施形態では、予め、研磨開始から研磨終了までの時間軸に従って、研磨空間20の所定の場所、例えば研磨パッド14上の温度を所定の温度範囲内とするために必要な排気流量を算出しておき、第1の排気ライン31aにおける排気流量がこの算出された排気流量となるように、排気制御部33が第1の排気流量可変装置32aを制御する。
【0026】
図2は、
図1に示した基板処理装置1における排気流量毎の研磨パッド14の研磨表面温度と気化潜熱量との関係を示すグラフである。本グラフの横軸は研磨パッド14の研磨表面温度(℃)を示し、立軸は各排気流量における気化潜熱量(W)を示している。
図示のように、本グラフにおいては排気流量が[W]、[2W]、[W/2]の場合の研磨パッド14の研磨表面の温度及び気化潜熱量が表示されている。本グラフによれば、排気流量が大きいほど気化潜熱量が大きい傾向にある。これは、排気流量が大きいほど、研磨パッド14の研磨表面を空気が多く通過し、研磨表面やウェハ表面に付着したスラリ等の水溶液や純水の水分が気体へ状態変化し易くなり、その結果気化潜熱量が多くなり、研磨表面の抜熱量が多くなることを示している。このように排気流量を大きくしても、研磨空間20内の空間温度はほとんど下がらず、水溶液や純水が付着している部分を集中的に抜熱することができる。
なお、排気流量の単位はここでは具体的に示していないが、例えばPa・m
3/sやsccm(standard cc/m)等を用いることができる。
【0027】
次に、研磨パッド14の研磨面の熱の出入りモデル及び本モデルにおける熱の出入りの計算例を説明する。
図3は、
図1に示した研磨パッド14の研磨面の熱の出入りモデルを示す概略図である。
図示のように、研磨テーブル16上には研磨パッド14が貼り付けられており、研磨パッド14上にはスラリ等の表面液膜17が形成されている。研磨テーブル16の内部には研磨テーブル16を内部から水冷するための冷却部18が設けられている。このような構
成において、研磨パッド14により
図1に示したトップリング12が保持するウェハを研磨すると、その研磨熱の一部(本モデル例では50%)が研磨パッド14及びスラリに入熱する(Qin)。スラリによって冷やされることによる抜熱(Q2)と、スラリが気化することによる気化潜熱(Q1)により、研磨熱の50%からスラリ抜熱(Q2)及び気化潜熱(Q1)を差し引いた結果の差分の熱が研磨パッド14に入熱する(Q3)。
【0028】
研磨パッド14の入熱(Q3)は、その一部が研磨パッド14に蓄熱され(Q32)、その他が研磨テーブル16に入熱する(Q31、Q4)。研磨テーブル16の入熱(Q31、Q4)は、その一部が研磨テーブル16に蓄熱され(Q42)、その他が冷却部18により抜熱される(Q41、Q5)。
【0029】
図4は、
図3に示した熱の出入りモデルにおいて説明した各熱量の変化を示すグラフである。
本実施形態において、研磨プロセスは研磨されるウェハ毎に間欠的に行われるので、図示のように、研磨により発生する研磨熱の50%(Qin)を示すグラフは、間欠的な挙動を示している。
図3のモデルにおいて説明したように、研磨パッド14の入熱量(Q3)の大きさは、気化潜熱(Q1)とスラリ抜熱(Q2)に影響される。即ち、気化潜熱(Q1)が大きくなれば、研磨パッド14の入熱量(Q3)は小さくなる。
本発明では、この気化潜熱(Q1)を大きくすることで、研磨パッド14の入熱量(Q3)を抑制し、その結果研磨パッド14の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
図5は、本実施形態に係る研磨パッド14の研磨プロセス中の温度遷移を示すグラフであり、
図5aは第1の排気ライン31aの排気流量がWのとき、
図5bは第1の排気ライン31aの排気流量がW/2のとき、
図5cは第1の排気ライン31aの排気流量が2Wのときの温度遷移を示すグラフである。
【0031】
図5a及び
図5bを比較すると、排気流量がWの場合に対して排気流量が半分、即ちW/2の場合は、研磨パッド14の温度は60℃を超え、比較的高くなることが分かる。これは、排気流量が半分になることで、スラリ等の気化潜熱量が減少し、研磨パッド14の入熱量が増加するからであると考えられる。
図5a及び
図5cを比較すると、排気流量がWの場合に対して排気流量が2倍、即ち2Wの場合は、研磨パッド14の温度は約50℃程度であり、比較的低くなることが分かる。これは、排気流量が2倍になることで、スラリ等の気化潜熱量が増加し、研磨パッド14の入熱量が減少するからであると考えられる。
【0032】
以上で説明したように、本実施形態に係る基板処理装置1は、研磨空間20の排気流量を制御し、気化潜熱現象を活用することで、従来のような接触熱伝導方式やドライガス吹き付け方式が有する課題を伴うことなく、研磨パッド14、その研磨面に広がるスラリ、ウェハを保持するトップリング12から抜熱することができ、これらの温度が所定の温度範囲内となるように管理・制御することができる。ひいては、ウェハ研磨面の良好な平坦度を得ることができ、スラリの性能を発揮し得る温度領域での研磨プロセスを実現することができる。また、CMP装置10の生産性を向上することができる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態に係る排気流量制御装置及びこれを備えた基板処理装置を説明する。
図6は、本発明の他の実施形態に係る排気流量制御装置及びこれを備えた基板処理装置を示す概略図である。
図示のように、本実施形態に係る排気流量制御装置30は第1の排気ライン31aに差圧計36aを備えている。差圧計36aは、第1の排気ライン31a内の第1の排気流量可変装置32aの上流側位置と下流側位置との差圧を計測できるように構成され、計測し
た差圧のデータを排気制御部33が受信できるように、排気制御部33と通信可能に構成されている。
【0034】
CMP装置10は、研磨パッド14の温度を測定可能な温度センサ37を研磨テーブル16内に備えている。なお、この温度センサ37は、例えば非接触式の温度センサ等であってもよく、温度センサ37が配置される場所は限定されない。
温度センサ37は、測定した研磨パッド14の温度を排気制御部33が受信できるように排気制御部33と通信可能に構成されている。
【0035】
本実施形態における基板処理装置1は、温度センサ37を備えているので、温度センサ37で測定した研磨パッド14の温度に基づいて、第1の排気ライン31aにおける排気流量を制御することができる。即ち、温度センサ37で検知した研磨パッド14の温度のデータは、排気制御部33により受信され、排気制御部33は、その温度が所定(所望)の温度範囲を超えている場合は、第1の排気ライン31aの排気流量が大きくなるように第1の排気流量可変装置32aを制御する。一方で、温度センサ37で検知した研磨パッド14の温度が所定の温度範囲を下回っている場合は、第1の排気ライン31aの排気流量が小さくなるように第1の排気流量可変装置32aを制御する。
【0036】
または、温度センサ37で検知した研磨パッド14の温度から、研磨パッド14の温度を所定の温度範囲にするために必要な排気流量を排気制御部33が算出し、その排気流量になるように第1の排気流量可変装置32aを制御するようにしてもよい。この場合は、研磨パッド14の温度を所定の温度範囲にし得る排気流量を算出する計算式を、予め実験等により求めておき、この計算式に基づいて算出した排気流量となるように第1の排気流量可変装置32aを制御する。
【0037】
さらに、本実施形態における基板処理装置1では、差圧計36aを備えているので、第1の排気ライン31aにおける排気流量を計測することができ、計測した排気流量に基づいて、上記温度に基づいて算出した排気流量となるように、排気制御部33が第1の排気量可変装置32aを制御することができる。
【0038】
第1の排気ライン31aにおける研磨空間20からの排気流量の計測は以下のようにして行うことができる。即ち、差圧計36aにより排気流量可変装置32aの上流側位置の圧力と下流側位置の圧力との差圧が測定される。第1の排気ライン31aにおける排気流量は、予め求めておいた差圧と排気流量との関係式に基づいて、実際に測定した差圧から排気制御部33により算出される。なお、排気流量可変装置32aの下流側位置の圧力は、上流側位置の圧力に比べて高い負圧状態であるので、下流側位置の圧力をゼロと仮定して、上流側位置の圧力のみを測定して、その測定値から排気流量を算出するようにしてもよい。
従って、本実施形態においては、差圧計36aと排気制御部33とで流量計測装置を構成している。
【0039】
なお、本実施形態においては排気流量を計測(算出)するために差圧計36aを使用しているが、これに限られず、例えば流速計を用いてもよい。流速計を用いる場合は、流速計を第1の排気ライン31aに設け、測定した流速と第1の排気ライン31aの配管断面積との積から排気流量を求めることができる。
【0040】
上述のようにして求めた排気流量を監視することで、排気制御部33は、上記温度に基づいて算出した排気流量となるように、第1の排気量可変装置32aの制御の精度を向上させることができる。
【0041】
以上で説明したように、本実施形態に係る基板処理装置1は、研磨空間20の排気流量を制御し、気化潜熱現象を活用することで、従来のような接触熱伝導方式やドライガス吹き付け方式が有する課題を伴うことなく、研磨パッド14、その研磨面に広がるスラリ、ウェハを保持するトップリング12から抜熱することができ、これらの温度が一定範囲内となるように管理・制御することができる。ひいては、ウェハ研磨面の良好な平坦度を得ることができ、スラリの性能を発揮し得る温度領域での研磨プロセスを実現することができる。また、CMP装置10の生産性を向上することができる。
さらに、本実施形態に係る基板処理装置1は、温度センサ37を備えているので、温度センサ37により研磨空間20内の所定の場所(例えば本実施形態では研磨パッド14)の温度を測定し、所定の温度範囲となるように研磨空間20からの排気流量を制御することができる。
加えて、本実施形態に係る基板処理装置1は、差圧計36aと排気制御部33により構成される流量計測装置を備えているので、研磨空間20からの排気流量を所望の排気流量とするための制御の精度を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る基板処理装置1は、差圧計36aを備えるものとして説明したが、差圧計36aが備わっていなくとも、第1の排気流量可変装置32aを構成する排気ダンパの弁の開度と排気流量との関係を予め実験等により求めておくことで、この関係に基づいて第1の排気ライン31aの排気流量が所望の排気流量になるように弁の開度を排気制御部33が制御することができる。
【0043】
図7は、本発明の他の実施形態に係る排気流量制御装置及びこれを備えた基板処理装置を示す概略図である。
図示のように、本実施形態に係る基板処理装置1は、研磨空間20とは雰囲気が分離された別の空間26を有しており、別の空間26は吸気口22bから空気を取り込み、排気口24bから排気される。
【0044】
また、本実施形態に係る排気流量制御装置30は、排気口24bに接続され、別の空間26を排気するための第2の排気ライン31bと、第2の排気ライン31bにおける排気流量を調節可能な排気ダンパ等から成る第2の排気流量可変装置32bとを備えている。
第2の排気ライン31bは、上流側の一端が排気口24bに接続され、下流側の他端が第1の排気ライン31aの下流側に接続されている。第1の排気ライン31aと第2の排気ライン31bとの接続点には、第3の排気ライン31cが接続されており、この第3の排気ライン31cには第3の排気流量可変装置32cが設けられている。従って、排気装置35は、第3の排気ライン31c及び第2の排気ライン31bを介して別の空間26を排気可能に構成されている。
【0045】
排気制御部33は、例えばサーボモータ等を有する第1の排気流量可変装置32a及び第2の排気流量可変装置32bと通信可能に構成されている。また、排気制御部33は、CMP装置10の所定の場所、例えば研磨パッド14上の温度を一定の範囲内とするために必要な、予め算出された排気流量の制御データを格納した記憶装置を有し、この制御データに基づいて第1の排気流量可変装置32a及び第2の排気流量可変装置32bを制御する。
【0046】
一般に、半導体製造工場等の工場排気ライン34は、一定の排気流量で工場から排気しているので、第1の排気ライン31aと第2の排気ライン31bからの排気流量が可変であると、工場排気ライン34や他の半導体製造装置等へ影響する恐れがある。
そこで、本実施形態における基板処理装置1では、基板処理装置1から排気する排気流量が一定となるように第1の排気流量可変装置32a、第2の排気流量可変装置32bを制御する。即ち、本実施形態では、排気制御部33が、上記予め算出された排気流量の制
御データに基づいて第1の排気流量可変装置32a及び第2の排気流量可変装置32bを制御するとともに、第1の排気ライン31aにおける研磨空間20からの排気流量と第2の排気ライン31bにおける別の空間26からの排気流量との和が一定となるように第1の排気流量可変装置32a及び前記第2の排気流量可変装置32bを制御する。
さらに、本実施形態では第1の排気ライン31a及び第2の排気ライン31bからの排気が合流する第3の排気ライン31cにおける排気流量が一定であることを確実にするため、第3の排気流量可変装置32cにより排気流量を制御することができる。
【0047】
以上で説明したように、本実施形態の基板処理装置1によれば、CMP装置10の所定の場所、例えば研磨パッド14上の温度が一定の範囲内になるように第1の排気ライン31aにおける排気流量を制御することができると共に、基板処理装置1全体としては一定の排気流量で排気されるので、工場排気ライン34や他の半導体製造装置等への影響を抑制することができる。
【0048】
なお、第3の排気流量可変装置32cは、排気流量を安定させるために設けられたものであり、これがなくとも本発明の効果は達成することができる。また、第3の排気量可変装置32cは、排気制御部33により制御可能に構成されてもよい。
【0049】
また、別の空間26は、例えば
図8に示すように、クリーンルーム等の別の空間であってもよく、研磨空間20と雰囲気分離された空間であればどこであってもよい。
図8は、第2の排気ライン31bが別の空間を排気するように構成された排気流量制御装置及びこれを備えた基板処理装置を示す概略図である。
図示のように本基板処理装置1では、第2の排気ライン31bが研磨空間20と雰囲気分離された別の空間、例えばクリーンルームから排気するように構成されている。このように構成することで、
図7に示した吸気口22b、排気口24b、及び別の空間26をCMP装置10に設ける必要がないので、CMP装置10の構成を簡略化することができ、コスト及び手間を低減させることができる。
【0050】
図9は、本発明の他の実施形態に係る排気流量制御装置及びこれを備えた基板処理装置を示す概略図である。
図示のように、本実施形態に係る排気流量制御装置30は、第1の排気ライン31aに差圧計36aを、第2の排気ライン31bに差圧計36bを、第3の排気ラインに36cを備えている。
差圧計36aは、第1の排気ライン31a内の第1の排気流量可変装置32aの上流側位置と下流側位置との差圧を計測できるように構成され、差圧計36bは、第2の排気ライン31b内の第2の排気流量可変装置32bの上流側位置と下流側位置との差圧を計測できるように構成され、差圧計36cは、第1の排気ライン31c内の第1の排気流量可変装置32cの上流側位置と下流側位置との差圧を計測できるように構成されている。それぞれの差圧計36a、36b、36cは、計測した差圧のデータを排気制御部33が受信できるように、排気制御部33と通信可能に構成されている。
【0051】
本実施形態における基板処理装置1では、基板処理装置1から排気する排気流量が一定となるように第1の排気流量可変装置32a、第2の排気流量可変装置32bを制御する。即ち、本実施形態では、排気制御部33が、上記予め算出された排気流量の制御データに基づいて第1の排気流量可変装置32a及び第2の排気流量可変装置32bを制御するとともに、第1の排気ライン31aにおける研磨空間20からの排気流量と第2の排気ライン31bにおける別の空間26からの排気流量との和が一定となるように第1の排気流量可変装置32a及び前記第2の排気流量可変装置32bを制御する。
さらに、本実施形態では第1の排気ライン31a及び第2の排気ライン31bからの排気が合流する第3の排気ライン31cにおける排気流量が一定であることを確実にするた
め、第3の排気流量可変装置32cにより排気流量を制御することができる。
【0052】
本実施形態における基板処理装置1は、温度センサ37を備えているので、
図6に示した実施形態と同様に、温度センサ37で測定した研磨パッド14の温度に基づいて、第1の排気ライン31aにおける排気流量を制御することができ、または、温度センサ37で検知した研磨パッド14の温度から、研磨パッド14の温度を所定の温度範囲にするために必要な排気流量を排気制御部33が算出し、その排気流量になるように第1の排気流量可変装置32aを制御することができる。
【0053】
ここで、本実施形態では、差圧計36a、36bを備えているので、第1の排気ライン31a及び第2の排気ライン31bにおける排気流量を計測することができ、計測した排気流量に基づいて、上記温度に基づいて算出した排気流量となるように、排気制御部33が第1の排気量可変装置32aを第2の排気量可変装置32bを制御することができる。
なお、本実施形態においては排気流量を計測(算出)するために差圧計36a、36b、36cを使用しているが、これに限られず、例えば流速計を用いてもよい。
【0054】
本実施形態においては、さらに差圧計36cを備えているので、第3の排気ライン31cの基準圧力を測定できると共に、第3の排気ライン31cにおける排気流量が一定であることを確認することができる。
【0055】
以上で説明したように、本実施形態に係る基板処理装置1によれば、研磨空間20の排気流量を制御し、気化潜熱現象を活用することで、従来のような接触熱伝導方式やドライガス吹き付け方式が有する課題を伴うことなく、研磨パッド14、その研磨面に広がるスラリ、ウェハを保持するトップリング12から抜熱することができ、これらの温度が一定範囲内となるように管理・制御することができる。ひいては、ウェハ研磨面の良好な平坦度を得ることができ、スラリの性能を発揮し得る温度領域での研磨プロセスを実現することができる。また、CMP装置10の生産性を向上することができる。
本実施形態に係る基板処理装置1は、温度センサ37を備えているので、温度センサ37により研磨空間20内の所定の場所(例えば本実施形態では研磨パッド14)の温度を測定し、所定の温度範囲となるように研磨空間20からの排気流量を制御することができる。
【0056】
本実施形態の基板処理装置1は、CMP装置10の所定の場所、例えば研磨パッド14上の温度が一定の範囲内になるように第1の排気ライン31aにおける排気流量を制御することができると共に、基板処理装置1全体としては一定の排気流量で排気されるので、工場排気ライン34や他の半導体製造装置等への影響を抑制することができる。また、本実施形態に係る基板処理装置1は、差圧計36a、36b、36cを備えているので、研磨空間20からの排気流量を所望の排気流量とするための制御の精度を向上させることができるとともに、基板処理装置1全体として一定の排気流量とするための制御の精度を向上させることができる。
【0057】
なお、別の空間26は、例えば
図10に示すように、クリーンルーム等の別の空間であってもよく、研磨空間20と雰囲気分離された空間であればどこであってもよい。
図10は、第2の排気ライン31bが別の空間を排気するように構成された排気流量制御装置及びこれを備えた基板処理装置を示す概略図である。
図示のように本基板処理装置1では、
図8に示した基板処理装置1と同様に、第2の排気ライン31bが研磨空間20と雰囲気分離された別の空間、例えばクリーンルームから排気するように構成されている。このように構成することで、
図9に示した吸気口22b、排気口24b、及び別の空間26をCMP装置10に設ける必要がないので、CMP装置10の構成を簡略化することができ、コスト及び手間を低減させることができる。
【0058】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。たとえば、本実施形態では、基板処理装置としてCMP装置10を備えたものを説明したが、CMP装置10に限らず、他の基板処理装置にも適用することができる。