特許第6180900号(P6180900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180900
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】応力検知用素子および応力検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/00 20060101AFI20170807BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20170807BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20170807BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20170807BHJP
   G01L 1/14 20060101ALI20170807BHJP
   B81B 7/02 20060101ALN20170807BHJP
【FI】
   G01L1/00 A
   H01L21/66 Y
   H01L29/84 Z
   H04R19/04
   B81B3/00
   G01L1/14 K
   !B81B7/02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-239469(P2013-239469)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-99108(P2015-99108A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−150058(JP,A)
【文献】 特開2001−091534(JP,A)
【文献】 特開平10−096745(JP,A)
【文献】 国際公開第91/001010(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00, 1/14
G01L 5/00
B81B 3/00
B81B 7/02
H01L 21/66
H01L 29/84
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜の応力を検知する応力検知用素子であって、
第1の電極部と、エアギャップを介して配置された前記薄膜を含む第2の電極部とを備え、
前記第2の電極が前記薄膜の応力に応じて、当該第2の電極が配置されている面内で左右に回転するように前記第2の電極部を支持する支持部と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値を検出する検出部とを備えたことを特徴とする応力検知用素子。
【請求項2】
請求項1記載の応力検知用素子において、
前記第1の電極部および前記第2の電極部は、長方形の形状を有し、
前記第2の電極部を支持する支持部は、前記第2の電極部の長辺部に接続し、その接続部に加わる応力によって、前記第2の電極部が、当該第2の電極部が配置されている面内で左右に回転するように配置されていることを特徴とする応力検知用素子。
【請求項3】
第1の電極部と、エアギャップを介し、薄膜の応力によって、自身が配置されている面内で左右に回転するように支持された第2の電極部と、前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値を検出する検出部とを備えた応力検知用素子を用いて、被測定用の薄膜の応力を検知する応力検知方法において、
前記薄膜の応力が第1の値のときの前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値と、
前記薄膜の応力が第2の値のときの前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値とを比較し、
前記薄膜に加わる応力が変化したことを容量値の変化として検知することを特徴とする応力検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力検知用素子および応力検知方法に関し、特に半導体装置の製造プロセスにおいて製膜された薄膜の応力や、薄膜周囲の環境変化に伴う応力変化を検出することができる応力検知用素子および検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、種々の薄膜を積層形成し、半導体装置を形成している。例えば、半導体装置の製造プロセスを用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子では、半導体基板上に固定電極、犠牲層(絶縁膜)および可動電極を形成した後、犠牲層の一部を除去することで、スペーサーを介して固定された固定電極と可動電極との間にエアーギャップ(中空)構造が形成されている。
【0003】
一例として、容量型のMEMS素子であるコンデンサマイクロフォンでは、音圧を通過させる複数の貫通孔を備えた固定電極と、音圧を受けて振動する可動電極とを対向して配置し、音圧を受けて振動する可動電極の変位を電極間の容量変化として検出する構成となっている。
【0004】
このような構造のMEMS素子では、感度を上げるために可動電極の変位を大きくする必要があり、可動電極に引っ張り応力が残留する膜を用いるのが一般的である。一方この残留応力が大きすぎると可動電極の破損の原因となってしまう。そのため、残留応力のコントロールを行いたいところであるが、製造工程中で、実際の残留応力を測定することは、極めて困難であった。そのため、計算機によるシミュレーションを行い素子設計をするに留まり、製造プロセス中で、残留応力を測定するということは行っていない。シミュレーションによる素子設計の例は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
一方、残留応力の変化を視覚的に検知する応力検知用素子として、例えば図4に示す構造のものが知られている。図4に示す応力検知用素子は、被測定用の薄膜により、長方形のプローブ1、このプローブ1を支持する支持部2は図示するように薄膜の一部が除去されており、支持部2を取り囲む薄膜には、プローブ1の先端に対向する位置にゲージ部3が形成されている。また、プローブ1の先端が、薄膜の残留応力によって変位するように、薄膜の下層の基板には空洞部4が形成されており、薄膜はその下層に残る基板部5によって支持された構造となっている。
【0006】
このような構造において、被測定用の薄膜に引っ張り応力あるいは圧縮応力が加わると、プローブ1を支持する支持部2にそれぞれ所定の力が加わることになる。この支持部2は、図4に示すように、プローブ1に対してずれた位置に配置されているため、例えば、引っ張り応力が加わった薄膜に接続された支持部2にはその応力を開放する方向に力が加わる。具体的には、支持部2は短くなる方向に変形し、プローブ1が支持部2により両方から引っ張られ、プローブ1は左側(時計の回転方向と反対方向)に回転することになる。また、圧縮応力が加わった薄膜に接続された支持部2にはその応力を開放する方向に力が加わる。具体的には、支持部2は長くなる方向に変形し、プローブ1が支持部2により両方から押され、プローブ1は右側(時計の回転方向)に回転することになる。このようなプローブの範囲は、プローブ先端とゲージ部3との相対位置を比較することで、視覚的に認識できる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−210083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来提案されている応力検知用素子は、視覚的なチェックのみであり、客観的な試験方法としては適切ではなかった。本発明は、上記問題点を解消し、薄膜に加わる応力を電気的に検知することができる応力検知用素子および応力検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、薄膜の応力を検知する応力検知用素子であって、第1の電極部と、エアギャップを介して配置された前記薄膜を含む第2の電極部とを備え、前記第2の電極が前記薄膜の応力に応じて、当該第2の電極が配置されている面内で左右に回転するように前記第2の電極部を支持する支持部と、前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値を検出する検出部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の応力検知用素子において、前記第1の電極部および前記第2の電極部は、長方形の形状を有し、前記第2の電極部を支持する支持部は、前記第2の電極部の長辺部に接続し、その接続部に加わる応力によって、前記第2の電極部が、当該第2の電極部が配置されている面内で左右に回転するように配置されていることを特徴とする。
【0011】
願請求項3に係る発明は、第1の電極部と、エアギャップを介し、薄膜の応力によって、自身が配置されている面内で左右に回転するように支持された第2の電極部と、前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値を検出する検出部とを備えた応力検知用素子を用いて、被測定用の薄膜の応力を検知する応力検知方法において、前記薄膜の応力が第1の値のときの前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値と、前記薄膜の応力が第2の値のときの前記第1の電極部と前記第2の電極部との間の容量値とを比較し、前記薄膜に加わる応力が変化したことを容量値の変化として検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の応力検知用素子は、第2の電極部と一体となっている被測定用の薄膜の応力が、設計上の値から変化したことを、第1の電極部と第2の電極部との間の容量値の変化として検出することが可能となる。特に、半導体装置の製造プロセス途中で、視覚的な検査ではなく電気的な検査方法を採用することができ、半導体製造工程で行われるウエハテストにより電気的な検査を行うことが可能であり、製造コストの低減を計ることができる。
【0013】
また本発明の応力検知方法は、容量値の変化を検出すればよいので、客観的な判断が可能な評価方法であり、利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の応力検知用素子の製造工程の説明図である。
図2】本発明の応力検知用素子の説明図である。
図3】本発明の応力検知用素子により測定可能な容量変化のシミュレーション図である。
図4】従来のこの種の応力検知用素子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る応力検知用素子は、固定されている第1の電極部と、被測定用の薄膜と一体となっている第2の電極部とがエアギャップを介して配置されており、第2の電極部は、薄膜の応力に応じて左右に回転するように支持されている。その結果、薄膜の応力が所定の場合には、第1の電極部と第2の電極部の相対位置は常にほぼ等しくなり、第1の電極部と第2の電極部との間の容量値は所定の値となる。しかし、薄膜の応力が変化した場合、第1の電極部と第2の電極部の相対位置が変化し、第1の電極部と第2の電極部との間の容量値は、所定の値からずれ、薄膜の応力変化を検知できる構成となっている。以下、本発明の応力検知用素子および応力検知方法について、実施例に従い、詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例について、容量型MEMS素子の固定電極に相当する薄膜の残留応力の変化を検知する場合を例にとり説明する。図1において、左図が容量型MEMS素子の断面図、右図が応力検知用素子の断面図を示す。まず、表面の結晶方位が(100)面のシリコン基板11上に、厚さ0.3μm程度の熱酸化膜12を形成し、熱酸化膜12上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により厚さ0.1μmの導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、MEMS素子の可動電極13aと応力検知用素子の第1の電極13bを形成する(図1a)。第1の電極13bは、後述するように細い長方形の形状とし、図示しない引き出し電極が形成されている。
【0017】
その後、表面全面に、厚さ2μmのUSG(Undoped Silicate Glass)膜14を積層する。このUSG膜は、エアーギャップを形成するスペーサーを構成する膜となる。さらにUSG膜14上に、厚さ1.0μmのポリシリコン膜を積層形成し、所定のパターニングを行うことで、MEMS素子の固定電極15aと応力検知用素子の第2の電極15bを形成する。その後、表面全面に厚さ0.2μmのシリコン窒化膜16を堆積形成する(図1b)。ここで、本実施例では、シリコン窒化膜16が応力変化を検知される薄膜となる。
【0018】
次に、エアーギャップを形成する際、USG膜14を後工程で除去するため、貫通孔17を形成し、USG膜14の表面の一部を露出させる。ここで、MEMS素子では、貫通孔17は、所望の特性となるように径の大きさ、数、配置が設定される。一方応力検知用素子では、図2に示すように第2の電極15bが、先に形成した第1の電極13bと重なり合う形状となるように貫通孔17を形成する。即ち、第2の電極15bは、先に形成した第1の電極13b同様、長方形の形状とする。また第2の電極15bも第1の電極13b同様、図示しない引き出し電極が形成されている。なお、図1(c)左図に示すように、固定電極15aあるいは可動電極13aにそれぞれ接触する配線膜の形成予定領域のシリコン窒化膜16の一部もエッチング除去する。同時に応力検知用素子においても、第1の電極13bおよび第2の電極15bにそれぞれ接続する配線膜の形成予定領域のシリコン窒化膜の一部もエッチング除去されるが、図1(c)右図には図示されていない。
【0019】
次に、MEMS素子の可動電極13aの一部を露出させ、露出した固定電極13aに接続する配線膜18および固定電極15aに接触する配線膜18を、それぞれ形成する。この配線膜18は、アルミニウム等の導体膜から構成されている。一方応力検知用素子では、第1の電極13b、第2の電極15に接触する図示しない配線膜が、それぞれ形成される(図1d)。
【0020】
その後、シリコン基板11の裏面側から熱酸化膜12が露出するまでシリコン基板11を除去し、バックチャンバー19を形成する(図1e)。
【0021】
MEMS素子の可動電極13aと固定電極15aの間を中空構造とするため、USG膜14の一部をエッチング除去する。同様に応力検知用素子においても、USG膜14の一部を除去する。このエッチング工程は、配線部18を構成する配線材料とのエッチング選択性が高く、等方性エッチングが可能なエッチング方法とするのが好ましい。一例として、フッ酸、フッ化アンモニウムと酢酸の混合液を用いる。
【0022】
その結果、USG膜からなるスペーサー20を介して、エアギャップ21が形成され、MEMS素子では可動電極13aと固定電極15aが対向する構造となり、応力検知用素子では、第1の電極13bと第2の電極15bが対向する構造となる。
【0023】
次に、応力検知用素子の第1の電極13bと第2の電極15bのパターニング形状について説明する。図2の上図は、応力検知用素子の第2の電極15bの形成パターンを示している。図1(f)と関連して説明すれば、第2の電極15b上にはシリコン窒化膜16が積層形成されており、少なくとも第2の電極15bはエアギャップ上に配置されている。図2では、第2の電極15bに接続するで配線部は図示していないが、図1(f)の第1の電極13bと第2の電極15bとの間の容量値を測定する測定手段に接続されている。
【0024】
図2上図に示すように、第2の電極15bは、長方形をしており、支持部15cによって支持されている。第2の電極支持部15cも第2の電極15b同様、ポリシリコン膜とシリコン窒化膜が積層した構造となっている。ここで、第2の電極支持部15cは、第2の電極15bを挟んで、図面上、上下にずれた形状となっている。これは、第2の電極支持部15cに伝わるわずかな応力によって、第2の電極15bが左右に回転変位しやすくするためである。第2の電極支持部15cが、第2電極15bに対して左右から応力を伝えた場合、第2の電極支持部15cが対象な形状をしていると、第2電極15bの変位が小さくなるからである。
【0025】
一方、図2下図は、第1の電極13bの平面図を示している、第1の電極13bは、熱酸化膜12上に形成されており、本来変位が少ないが、第1電極支持部13cを左右対称な位置に配置している。このように形成すると、熱酸化膜12をエッチング除去した場合であっても、第1の電極13bの変位をなくすことができるからである。
【0026】
次に本発明の応力検知方法について説明する。例えば、図1左図に示したMEMS素子では、固定電極15aとシリコン窒化膜16の積層膜の残留応力は所定の値となるようにデバイス設計されている。このとき、同時に形成される応力検知用素子の第1の電極13bと第2の電極15b間の容量値は、予め既知の所定の値となる。
【0027】
ここで、製造プロセスの変動等により、固定電極を構成するポリシリコン膜の形成条件あるいはその上に形成されるシリコン窒化膜16の形成条件が変化したとする。その結果、ポリシリコン膜とシリコン窒化膜の積層膜の残留応力が、素子設計時の値から変化することになる。
【0028】
このような場合に、本発明の応力検知用素子では、第2の電極支持部15cから第2の電極15bに伝わる応力が変化し、第2の電極15bが左右いずれかに回転する。ここで、第1の電極13bの位置は変化しないので、第1の電極13bと第2の電極15bの間の容量値が変化し、残留応力が変化したことを確認できることになる。
【実施例2】
【0029】
次に第2の実施例について説明する。第2の実施例では、第1の電極13bの残留応力を確認する場合について説明する。基本的な構成は第1の実施例と同一であるが、第1の実施例で説明した第1の電極支持部13cを左右対称ではなく、第1の実施例の第2の電極支持部15cのように上下にずれた形状とする。また第2の電極支持部15cを左右対称にする。さらに第1の電極13aが変位するように、第1の電極13a下の熱酸化膜12を除去した形状とする。
【0030】
このように形成すると、第1の電極13cを構成するポリシリコン膜の残留応力の変化を、第1の実施例で説明した方法同様、確認することができることになる。
【0031】
図3は、第1および第2の電極部の長手方向の長さ、第1の電極支持部および第2の電極支持部の幅、長さを種々変更したシミュレーション結果を示す。所定の薄膜の応力変化に応じて、長さ、幅等を適宜設定することで、所望のモニターを行うことができる。なお、上記説明では、容量を測定するための電極と被測定の薄膜のパターンも種々変更することができる。
【0032】
以上本発明の実施例について、MEMS素子と同時に形成する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、応力検知用素子単独で形成してもよい。
【0033】
さらに本発明の応力検知素子および応力検知方法によれば、応力の変化に伴う容量値の変化を予め記憶しておけば、応力変化をもたらす薄膜周囲の環境変化を検知することができ、センサ装置の検知部としても使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
11:シリコン基板、12:熱酸化膜、13a:可動電極、13b:第1の電極、13c:第1の電極支持部、14:USG膜、15a:固定電極、15b:第2電極、15c:第2の電極支持部、16:シリコン窒化膜、17:貫通孔、18:配線部、19:バックチャンバー、20:スペーサー
図1
図2
図3
図4