特許第6180902号(P6180902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000002
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000003
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000004
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000005
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000006
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000007
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000008
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000009
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000010
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000011
  • 特許6180902-センサ装置の製造方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6180902
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】センサ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20170807BHJP
【FI】
   G01L19/14
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-242963(P2013-242963)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-102417(P2015-102417A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】緒方 敏洋
(72)【発明者】
【氏名】平 知晃
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 敏史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 真吾
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/129444(WO,A1)
【文献】 特開2000−077552(JP,A)
【文献】 特開平07−218365(JP,A)
【文献】 特開2011−110618(JP,A)
【文献】 特開2010−165740(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0306031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L 27/00−27/02
H01L 29/84
B81B 3/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ内部にセンサチップを搭載したセンサ装置の製造方法において、
複数のセンサチップ搭載部が形成された基板上に、前記センサチップ搭載部それぞれを取り囲むようにパッケージ本体が形成されており、少なくとも開口部形成予定領域の前記パッケージ本体は、第1の凹部と、該第1の凹部と前記センサチップ搭載部間の前記パッケージ本体の一部に、開口部となる前記第1の凹部より浅い第2の凹部とが形成されている集合基板を用意する工程と、
前記センサチップ搭載部それぞれに前記センサチップを実装する工程と、
前記第2の凹部によりパッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通する開口部が形成され、前記センサチップ搭載部それぞれを被覆する蓋部を形成する工程と、
前記蓋部、前記第1の凹部表面および前記開口部をシート材で被覆する工程と、
前記シート材による被覆面とは反対面からダイシングソーを用いて、少なくとも前記第1の凹部に達し、前記シート材により前記開口部を被覆したまま、前記集合基板および前記パッケージ本体を切断し、前記第1の凹部の側面からなり、前記開口部を備えた第1の側面部と、切断面からなる第2の側面部と、前記第1の側面部と前記第2の側面部の間の段部とが連続する前記センサ装置の側面部を形成して個片化する工程と、を含むことを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ装置の製造方法において、前記個片化工程の後、前記第1の凹部表面から前記シート材を剥離し、パッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通した状態で、前記シート材上に個片化したセンサ装置を整列配置する工程を含むことを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のセンサ装置の製造方法において、前記シート材として、ポリ塩化ビニル基材あるいはポリオレフィン基材上にUV硬化型の接着層を備えたダイシングテープを用い、UV光を照射した後、前記ダイシングテープを加熱処理して収縮させ、前記第1の凹部表面から前記ダイシングテープを剥離する工程を含むことを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3いずれか記載のセンサ装置の製造方法において、前記シート材上に配列したセンサ装置に、前記センサチップがセンシングする物理量を印加して前記センサ装置の特性テストを行う工程を含むことを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサ、圧力センサ等のセンサ装置の製造方法に関し、特に湿度、圧力等をパッケージ内に導入する開口部を備えたセンサ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種センサの小型化、軽量化に伴い、携帯用機器への搭載が進んでおり、スマートフォンやヘルスケア機器に温湿度計や気圧計が搭載されてきている。例えば、気圧を測定する圧力センサは、圧力センサチップを中空パッケージに実装し、パッケージの内部と外部を連通させるため、パッケージの一部に開口部を設ける構造となっている(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで小型化、軽量化された半導体装置のパッケージを形成する場合、複数のチップを基板上に実装させた後、樹脂により一括封止し、樹脂と実装基板をダイシングソーを用いて切断するMAP(Mold Array Package)方式と呼ばれる方法を採用するのが生産性向上のためには好ましい。一般的に、ダイシングソーを用いて切断を行う場合、切断時に発生する熱を冷却するためにパッケージに冷却水をかけながら切断を行う必要がある。
【0004】
上記特許文献1では、切断方法について言及されていないが、ダイシングソーを用いて切断する方法では、パッケージの開口部からパッケージ内部に水や切削屑が入り込んでしまい好ましくない。
【0005】
このような問題を解消する方法として図11に示す圧力センサパッケージが提案されている。図11において、図11(a)は圧力センサパッケージの断面図、図11(b)は圧力センサパッケージの蓋部を取り外したパッケージ内部の平面図、図11(c)は図11(b)のA−A‘面の断面図を示している。図11に示すように、パッケージ本体20内にセンサチップ21が実装され、ワイヤによりセンサチップ21の電極とパッケージの電極とが接続されている。センサチップ21には、図11(a)に示すように真空状態の空間部からなるキャビティ22が形成されており、ダイアフラム23が、パッケージ本体20と蓋部24との間の空間25の圧力に応じてゆがみ、ダイアフラム23上に形成された図示しないピエゾ抵抗の抵抗値の変化から圧力を検出する構成となっている。また、パッケージ本体20には、図11(b)(c)に示すように、パッケージ外部と連通する圧力導入孔26が形成されている。
【0006】
ここで個片化の際、圧力導入孔26から水、切削屑等の異物が流入するのを防止するため、パッケージ本体20の底面側から、径を小さくした形状となっている。この種のパッケージは特許文献2に開示されており、図11に示す構造の他、圧力導入孔26をパッケージ本体側面に形成するとともに、パッケージ内側から外側に向かった下がる傾斜面を形成する例や、圧力貫通孔に通気樹脂を充填する例も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−64509号公報
【特許文献1】特開2012−207931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来提案されているセンサ用パッケージにおいて、圧力導入孔26から水が侵入しないようにするためには、その直径を0.1mm程度と非常に小さく必要がある。しかし圧力導入孔26の径が小さくなると、センサ特性への影響が無視できなくなってしまう。
【0009】
また、空気を通し、水を通さない通気樹脂を圧力導入孔に充填することも提案されているが、通気樹脂の存在によって、応答スピード等特性への影響が懸念される。
【0010】
さらにまた、個片化の際、圧力導入孔26に水、切削屑等の異物が混入するのを防止するため、パッケージ本体20の底面側をダイシングテープ等に接着させると、特性テストを行う際には、一旦ダイシングテープを除去し、パッケージ端子27を露出させる必要があるため、別のテープに貼り付け直すか、センサ装置を1個ずつピックアップする必要があり、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を解消し、湿度センサ、圧力センサ等外気を導入する開口部を備えたセンサ装置の製造方法であって、感度が高く、低コストで製造することができるセンサ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、パッケージ内部にセンサチップを搭載したセンサ装置の製造方法において、複数のセンサチップ搭載部が形成された基板上に、前記センサチップ搭載部それぞれを取り囲むようにパッケージ本体が形成されており、少なくとも開口部形成予定領域の前記パッケージ本体は、第1の凹部と、該第1の凹部と前記センサチップ搭載部間の前記パッケージ本体の一部に、開口部となる前記第1の凹部より浅い第2の凹部とが形成されている集合基板を用意する工程と、前記センサチップ搭載部それぞれに前記センサチップを実装する工程と、前記第2の凹部によりパッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通する開口部が形成され、前記センサチップ搭載部それぞれを被覆する蓋部を形成する工程と、前記蓋部、前記第1の凹部表面および前記開口部をシート材で被覆する工程と、前記シート材による被覆面とは反対面からダイシングソーを用いて、少なくとも前記第1の凹部に達し、前記シート材により前記開口部を被覆したまま、前記集合基板および前記パッケージ本体を切断し、前記第1の凹部の側面からなり、前記開口部を備えた第1の側面部と、切断面からなる第2の側面部と、前記第1の側面部と前記第2の側面部の間の段部とが連続する前記センサ装置の側面部を形成して個片化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本願請求項に係る発明は、請求項記載のセンサ装置の製造方法において、前記個片化工程の後、前記第1の凹部表面から前記シート材を剥離し、パッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通した状態で、前記シート材上に個片化したセンサ装置を整列配置する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本願請求項に係る発明は、請求項記載のセンサ装置の製造方法において、前記シート材として、ポリ塩化ビニル基材あるいはポリオレフィン基材上にUV硬化型の接着層を備えたダイシングテープを用い、UV光を照射した後、前記ダイシングテープを加熱処理して収縮させ、前記第1の凹部表面から前記ダイシングテープを剥離する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本願請求項に係る発明は、請求項又は請求項いずれか記載のセンサ装置の製造方法において、前記シート材上に配列したセンサ装置に、前記センサチップがセンシングする物理量を印加して前記センサ装置の特性テストを行う工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法よるセンサ装置は、個片化の工程では、パッケージ内部の空間とパッケージ外部を連通する開口部は、シート材により被覆されているため、ダイシングソーを用いて切断しても、パッケージ内部に水や切削屑が入り込むことを防止するので、生産性の優れたMAP方式により形成することが可能となった。
【0018】
また個片化後は、開口部を被覆するソート材を剥離することで、パッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通した状態となり、しかもシート材上に個片化したセンサ装置がパッケージ端子を表面に露出して整列した状態となるため、その後の特性テストや実装のピックアップが容易になるという利点がある。なおシート材は、通常の半導体装置の製造工程で使用されるダイシングテープを用いることができ、第1の凹部からの剥離等の制御性が良いという利点もある。
【0019】
特に、パッケージ内部の空間とパッケージ外部が連通した状態でシート材上に整列配置されているため、センサチップがセンシングする物理量を印加しながら特性テストを行うことができ、非常に作業性が良いという利点がある。また、MAP方式により一体成形することにより発生する内在応力は、個片化によって開放されているため、センサ装置としての正確な特性テストを行うことができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によるセンサ装置の説明図である。
図2】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図3】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図4】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図5】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図6】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図7】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図8】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図9】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図10】本発明のセンサ装置の製造方法の説明図である。
図11】従来のこの種のセンサ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるセンサ装置は、パッケージ本体側面に開口部を備える構造であっても、本発明の製造方法による製造過程では、この開口部をシート材で被覆した状態で切断し、個片化した後、開口を被覆したシート材を除去することで、生産性に優れたMAP方式を採用することを可能としている。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
まず、本発明の実施例について圧力センサを例にとり、詳細に説明する。図1は本発明による圧力センサの説明図で、図1(a)は断面図、図1(b)は図1(a)のパッケージの蓋部を取り外したパッケージ内部の平面図である。図1において1はパッケージ本体、2は圧力センサチップ、3はキャビティ、4はダイアフラム、5は金属あるいはセラミック等からなる蓋部、6はパッケージ内部の空間、7は外気をパッケージ内部に導入する開口部、8はワイヤ、9はワイヤ8によって圧力センサチップ表面に形成された電極が接続されるパッケージ端子、10はパッケージ本体1の周囲に形成され、少なくとも開口部7が形成されている高さより低い位置に形成されている段部である。この段差10より上方に延びる側面部が第1の側面部、段差10より下方に延びる側面部が第2の側面部に相当する。この段部10は、図1(a)に示すように、開口部7よりも低い位置まで切り欠かれていることが必須となっている。
【0023】
圧力センサチップ2には、従来例で説明した圧力センサチップと同様、真空状態の空間部からなるキャビティ3が形成されており、ダイアフラム4が、パッケージ本体1と蓋部5との間の空間6の圧力に応じてゆがみ、ダイアフラム4上に形成された図示しないピエゾ抵抗の抵抗値の変化から圧力を検出する構成となっている。
【0024】
ここで本発明では、パッケージ本体1の周囲の一部を切り欠くように、開口部7が形成されている。図1(b)には、パッケージ本体1の周囲の側面部のうち、対向する2面に開口部7を形成した例を示している。この開口部7は、蓋部5を接着させた状態でパッケージ外部に発生する圧力をパッケージ内部に搭載されている圧力センサチップ2に伝えるため、所望の開口寸法としている。一例として、深さ0.1mm、幅0.3mm程度とすることで、直径0.2mm程度の円形の開口面積に相当する開口を形成することができる。なお、開口部7は、パッケージ本体1の周囲の側面部の4面に形成することで指向性を無くしたり、1面に複数の開口部7を形成して、高速に応答するようにすることもできる。
【0025】
なお本発明では、少なくとも開口部7が形成されているパッケージ本体1の壁面部に、段部10が形成されていれば良い。もし指向性を持たせるために、パッケージ本体1の周囲の側面部の1面のみに開口部7を形成する場合には、開口部7が形成されていない側面部の3面に段部10が形成されている必要はなく、第1の側面部と第2の側面部それぞれに相当する部分が直線状に連続する構造とすることも可能である。また図1に示すように、開口部7が形成させていない側面部に第1の側面部、段部10および第2の側面部を形成しても何ら問題ない。
【0026】
なお段部10は、後述する製造方法でダイシングソーを用いて支持基板11、パッケージ本体1を切断した結果、第1の凹部の側面と切断面との間の部分に相当し、切断条件によってはわずかな幅しか残らない場合もある。
【0027】
次に本発明の圧力センサの製造方法について説明する。セラミック基板あるいは樹脂基板からなり、複数の圧力センサチップを実装し、個々の圧力センサチップの電極を外部に取り出すためのパッケージ端子が形成された支持基板11を用意する(図2a)。図2では3個の圧力センサチップを実装する場合を図示している。次に金型を用いて、開口部7(第2の凹部に相当)と段部10(第1の凹部に相当)が形成されたパッケージ本体1を樹脂成形する(図2b)。このパッケージ本体1は、隣接するセンサ装置のパッケージ本体1が集合した状態であり、格子状に配置されている。図3に複数の圧力センサチップを搭載する集合基板としての支持基板11の平面図を示す。支持基板11の周辺端部12には、段部10および開口部7が形成されていない。段部10が支持基板11の端部に達してしまうと、後述するシート材となるダイシングテープにより段部10を完全に被覆するのが難しくなるからで、平坦な周辺端部12を残すことで、ダイシングテープを隙間なく密着させることができる。段部10端から支持基板11端部までの寸法は、0.5mm程度以上とするのが好ましい。
【0028】
図2および図3では、図面の左右方向に開口部7が形成されている。図3では、段部10は格子状に形成した例を示している。また、開口部7が形成されていないパッケージ本体1の段部(図3では横方向に延びる段部)は、必ずしも必須ではないが、段部10にダイシングテープを密着させる際、チップ搭載部を取り囲むように段部10底面部に密着させることができ、密着性が向上するため、格子状としている。なお、図3ではパッケージ端子の図示は省略している。
【0029】
つぎに、圧力センサチップ2を支持基板11上に実装し、圧力センサチップ2の表面に形成された電極を金線等からなるワイヤ8でパッケージ端子9に接続する(図4)。圧力センサチップ2の実装は、集合基板11から周囲温度変化による応力を受けないように、ゴム領域の堅さを持つシリコーンダイボンド材を用いるのが一般的である。
【0030】
次に実装した圧力センサチップ2を覆うように、パッケージ本体1上に接着剤を用いて蓋部5を接着させる。開口部7はパッケージ内部と外部が連通する状態で残る。ここで、蓋部5は、段部10側に突出しないように形成するのが好ましい。これは、後述するダイシングテープにより段部10を被覆する際、段部10の側面部とダイシングテープが密着しない領域が形成されてしまうことを防止するためである。支持基板11上に蓋部5を全て接着した状態の平面図を図6に示す。支持基板上には、蓋部5と段部10が露出する状態となる。
【0031】
その後、段部10が形成されている面にダイシングテープ13を接着し、図7に矢印で示すように圧力を加える。圧力を加える方法は、例えば支持基板を真空チャンバー内に入れ、減圧雰囲気(1.5×10-4Pa程度)とした状態で、段部10を形成した表面にダイシングテープ13を密着させ、この状態で真空チャンバーを常圧に戻せばよい。当然ながらこのとき圧力センサチップ1のダイアフラム4が破壊しない条件で行う必要がある。
【0032】
使用可能なダイシングテープは、一般的に半導体装置のダイシング工程で使用されているものを使用することができる。具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)基材、ポリオレフォン(PO)基材上にUV硬化型の接着剤が塗膜されたものを使用することができる。着実に密着させるため、図3で説明したように、段部10が支持基板の周辺端部12に達しないようにする必要がある。段部10が周辺端部12に形成されていると、真空チャンバーを常圧に戻す際、周辺端部12側面から雰囲気ガスが段部10内に流入してしまうおそれがあるからである。これに対し、支持基板周辺に段部が形成されず平坦であれば、密着性が保たれることになる。格子状に段部10を形成することでアンカー効果により、段部10の内壁に確実に接着させることも可能となる。
【0033】
段部10内部にダイシングテープを密着させるため、ダイシングテープの厚さAは、段部10の底辺の幅B、後述する個片化のための切削幅Cとしたとき、A=(B−C−50μm)/2の関係となるように設定するのが好ましい。当然ながら、ダイシングテープは強度等から所定の厚さとなるため、段部10の底辺の幅を所定の幅に設定すれば、段部10内部に所望の厚さのダイシングテープを密着させることが可能となる。
【0034】
表面にダイシングテープ13が密着した状態で、ダイシングテープ13を接着した面と反対側から、ダイシングソー14を用いて個片化する。この個片化は通常のダイシング方法、即ち水をかけながらダイシングソー14を回転させて切断する。このとき、ダイシングソー14は、パッケージ本体1を切断しダイシングテープ13に達するが、ダイシングテープ13は段部10に密着しており、開口部7はダイシングテープ13によって被覆された状態が保たれることになる。その結果、開口部7内に水や切断屑が入り込むことはない。なお、段部10の深さは、開口部7が形成された深さとすると、このダイシングソーによる切断で、ダイシングテープ13の剥離等が発生してしまう場合がある。そこで、段部10の深さは、開口部7が形成された位置より少なくとも50μm以上深く形成し、十分な接着代を確保するのが好ましい。このような接着代を設けておけば、空間6内の減圧状態の気圧と大気圧との気圧差により水や切削屑が流入しない強い接着強度を維持することができるからである。
【0035】
なお、圧力センサの側壁部、パッケージ本体1にクラックや剥離等が発生している場合、パッケージ内部の空間6は大気圧雰囲気となり、気圧差による強い接着強度が得られず、切断時に水や切削屑が流入してしまい、後述する性能テスト工程で選別することが可能となる。
【0036】
この切断工程により、圧力センサの側面部は、開口部7が形成された段部10の側面部と、パッケージ本体1の切断面との間に、段部10が残り、連続した形状となる。従って、ダイシングソーの切削幅、切削位置の位置ずれ等により、段部の幅がわずかしかない場合もあり得るが、段部10の側面部(第1の側面部に相当)と切削により形成される側面部(第2の側面部に相当)との境界部が段部10となる。
【0037】
次にダイシングテープにUV光を照射して接着強度を低下させた後、図9の矢印で示す面からダイシングテープ13にドライヤー等を用いて60℃程度の熱を加えると、ダイシングテープ13が収縮し、ダイシングテープ13上に個片化された圧力センサが整列した状態となる。この工程では図9に示すように、開口部7からダイシングテープ13が剥離し、圧力センサチップ2は、開口部7を介して外部と連通し、圧力センサとして機能することになる。この状態から個片化された圧力センサをそれぞれピックアップして所望の実装を行うことができる。以上のように、MAP方式により、開口部を備えた圧力センサを形成することが可能となった。
【実施例2】
【0038】
次に、圧力センサの製造工程中に性能テストを行う場合について説明する。実施例1で説明したように、ダイシングテープ13上に個片化された圧力センサが整列した状態となったところで、性能テストを行う。通常の半導体集積回路における電気特性のテストと異なり、圧力センサに所望の圧力が印加された状態で性能テストを行う。例えば、図10に示すコンタクトプローブ15、冷熱プレート16を含むテスト装置を圧力を可変できるボックス内に収納し、所望の圧力印加時の圧力センサの出力を測定し、圧力センサの良否判定を行う。本発明による圧力センサは、ダイシングテープ13上に整列した状態となっているため、コンタクトプルーブ15をパッケージ端子9に接触させ、通常の方法で特性テストを行うことが可能となる。
【0039】
前述の通り、圧力センサの側壁部、パッケージ本体1にクラックや剥離等が発生している場合、この性能テスト工程で不良品として選別することができる。
【0040】
図10に示すような冷熱プレート16上に圧力センサを載置してウエハテストを行う場合、ダイシングテープ13としてPVCやPO基材を選択すると、70℃〜−20℃程度の温度範囲で可変することが可能となる。ダイシングテープは、図示しない吸着手段によって冷熱プレート16上に固定しても良い。また減圧状態でテストすることで、吸着手段による固定が不十分となる場合には、機械的な固定手段により固定しても良い。冷熱プレート16は、ペルチェ素子や恒温液体を流す配管を埋め込んだステンレス材等の金属で構成することで、特性テストを行う圧力センサを所望の温度に、迅速かつ安定に到達させることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施例について圧力センサを例にとり説明したが、本発明によるセンサ装置は圧力センサに限定されるものではなく、パッケージ内部に搭載するセンサチップの種類を種々変更することで、湿度センサ等、センサ内に外部の物理量を導入して検知するためにパッケージに開口部を備える必要のあるセンサに適用することができる。
【0042】
また、ダイシングシート材は、伸縮性、接着剤の接着力の制御性を満たせば、ポリ塩化ビニル基材あるいはポリオレフィン基材に限らず用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1、20: パッケージ本体、2、21:圧力センサチップ、3、22:キャビティ、4、23:ダイアフラム、5、24:蓋部、6、25:空間、7:開口部、8:ワイヤ、9:パッケージ端子、10:段部、11:支持基板、12:周辺端部、13:ダイシングテープ、14:ダイシングソー、15:コンタクトプローブ、16:冷熱プレート、26:圧力導入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11