【実施例1】
【0022】
まず、本発明の実施例について圧力センサを例にとり、詳細に説明する。
図1は本発明
による圧力センサの説明図で、
図1(a)は断面図、
図1(b)は
図1(a)のパッケージの蓋部を取り外したパッケージ内部の平面図である。
図1において1はパッケージ本体、2は圧力センサチップ、3はキャビティ、4はダイアフラム、5は金属あるいはセラミック等からなる蓋部、6はパッケージ内部の空間、7は外気をパッケージ内部に導入する開口部、8はワイヤ、9はワイヤ8によって圧力センサチップ表面に形成された電極が接続されるパッケージ端子、10はパッケージ本体1の周囲に形成され、少なくとも開口部7が形成されている高さより低い位置に形成されている段部である。この段差10より上方に延びる側面部が第1の側面部、段差10より下方に延びる側面部が第2の側面部に相当する。この段部10は、
図1(a)に示すように、開口部7よりも低い位置まで切り欠かれていることが必須となっている。
【0023】
圧力センサチップ2には、従来例で説明した圧力センサチップと同様、真空状態の空間部からなるキャビティ3が形成されており、ダイアフラム4が、パッケージ本体1と蓋部5との間の空間6の圧力に応じてゆがみ、ダイアフラム4上に形成された図示しないピエゾ抵抗の抵抗値の変化から圧力を検出する構成となっている。
【0024】
ここで本発明では、パッケージ本体1の周囲の一部を切り欠くように、開口部7が形成されている。
図1(b)には、パッケージ本体1の周囲の側面部のうち、対向する2面に開口部7を形成した例を示している。この開口部7は、蓋部5を接着させた状態でパッケージ外部に発生する圧力をパッケージ内部に搭載されている圧力センサチップ2に伝えるため、所望の開口寸法としている。一例として、深さ0.1mm、幅0.3mm程度とすることで、直径0.2mm程度の円形の開口面積に相当する開口を形成することができる。なお、開口部7は、パッケージ本体1の周囲の側面部の4面に形成することで指向性を無くしたり、1面に複数の開口部7を形成して、高速に応答するようにすることもできる。
【0025】
なお本発明では、少なくとも開口部7が形成されているパッケージ本体1の壁面部に、段部10が形成されていれば良い。もし指向性を持たせるために、パッケージ本体1の周囲の側面部の1面のみに開口部7を形成する場合には、開口部7が形成されていない側面部の3面に段部10が形成されている必要はなく、第1の側面部と第2の側面部それぞれに相当する部分が直線状に連続する構造とすることも可能である。また
図1に示すように、開口部7が形成させていない側面部に第1の側面部、段部10および第2の側面部を形成しても何ら問題ない。
【0026】
なお段部10は、後述する製造方法でダイシングソーを用いて支持基板11、パッケージ本体1を切断した結果、第1の凹部の側面と切断面との間の部分に相当し、切断条件によってはわずかな幅しか残らない場合もある。
【0027】
次に本発明の圧力センサの製造方法について説明する。セラミック基板あるいは樹脂基板からなり、複数の圧力センサチップを実装し、個々の圧力センサチップの電極を外部に取り出すためのパッケージ端子が形成された支持基板11を用意する(
図2a)。
図2では3個の圧力センサチップを実装する場合を図示している。次に金型を用いて、開口部7(第2の凹部に相当)と段部10(第1の凹部に相当)が形成されたパッケージ本体1を樹脂成形する(
図2b)。このパッケージ本体1は、隣接するセンサ装置のパッケージ本体1が集合した状態であり、格子状に配置されている。
図3に複数の圧力センサチップを搭載する集合基板としての支持基板11の平面図を示す。支持基板11の周辺端部12には、段部10および開口部7が形成されていない。段部10が支持基板11の端部に達してしまうと、後述するシート材となるダイシングテープにより段部10を完全に被覆するのが難しくなるからで、平坦な周辺端部12を残すことで、ダイシングテープを隙間なく密着させることができる。段部10端から支持基板11端部までの寸法は、0.5mm程度以上とするのが好ましい。
【0028】
図2および
図3では、図面の左右方向に開口部7が形成されている。
図3では、段部10は格子状に形成した例を示している。また、開口部7が形成されていないパッケージ本体1の段部(
図3では横方向に延びる段部)は、必ずしも必須ではないが、段部10にダイシングテープを密着させる際、チップ搭載部を取り囲むように段部10底面部に密着させることができ、密着性が向上するため、格子状としている。なお、
図3ではパッケージ端子の図示は省略している。
【0029】
つぎに、圧力センサチップ2を支持基板11上に実装し、圧力センサチップ2の表面に形成された電極を金線等からなるワイヤ8でパッケージ端子9に接続する(
図4)。圧力センサチップ2の実装は、集合基板11から周囲温度変化による応力を受けないように、ゴム領域の堅さを持つシリコーンダイボンド材を用いるのが一般的である。
【0030】
次に実装した圧力センサチップ2を覆うように、パッケージ本体1上に接着剤を用いて蓋部5を接着させる。開口部7はパッケージ内部と外部が連通する状態で残る。ここで、蓋部5は、段部10側に突出しないように形成するのが好ましい。これは、後述するダイシングテープにより段部10を被覆する際、段部10の側面部とダイシングテープが密着しない領域が形成されてしまうことを防止するためである。支持基板11上に蓋部5を全て接着した状態の平面図を
図6に示す。支持基板上には、蓋部5と段部10が露出する状態となる。
【0031】
その後、段部10が形成されている面にダイシングテープ13を接着し、
図7に矢印で示すように圧力を加える。圧力を加える方法は、例えば支持基板を真空チャンバー内に入れ、減圧雰囲気(1.5×10
-4Pa程度)とした状態で、段部10を形成した表面にダイシングテープ13を密着させ、この状態で真空チャンバーを常圧に戻せばよい。当然ながらこのとき圧力センサチップ1のダイアフラム4が破壊しない条件で行う必要がある。
【0032】
使用可能なダイシングテープは、一般的に半導体装置のダイシング工程で使用されているものを使用することができる。具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)基材、ポリオレフォン(PO)基材上にUV硬化型の接着剤が塗膜されたものを使用することができる。着実に密着させるため、
図3で説明したように、段部10が支持基板の周辺端部12に達しないようにする必要がある。段部10が周辺端部12に形成されていると、真空チャンバーを常圧に戻す際、周辺端部12側面から雰囲気ガスが段部10内に流入してしまうおそれがあるからである。これに対し、支持基板周辺に段部が形成されず平坦であれば、密着性が保たれることになる。格子状に段部10を形成することでアンカー効果により、段部10の内壁に確実に接着させることも可能となる。
【0033】
段部10内部にダイシングテープを密着させるため、ダイシングテープの厚さAは、段部10の底辺の幅B、後述する個片化のための切削幅Cとしたとき、A=(B−C−50μm)/2の関係となるように設定するのが好ましい。当然ながら、ダイシングテープは強度等から所定の厚さとなるため、段部10の底辺の幅を所定の幅に設定すれば、段部10内部に所望の厚さのダイシングテープを密着させることが可能となる。
【0034】
表面にダイシングテープ13が密着した状態で、ダイシングテープ13を接着した面と反対側から、ダイシングソー14を用いて個片化する。この個片化は通常のダイシング方法、即ち水をかけながらダイシングソー14を回転させて切断する。このとき、ダイシングソー14は、パッケージ本体1を切断しダイシングテープ13に達するが、ダイシングテープ13は段部10に密着しており、開口部7はダイシングテープ13によって被覆された状態が保たれることになる。その結果、開口部7内に水や切断屑が入り込むことはない。なお、段部10の深さは、開口部7が形成された深さとすると、このダイシングソーによる切断で、ダイシングテープ13の剥離等が発生してしまう場合がある。そこで、段部10の深さは、開口部7が形成された位置より少なくとも50μm以上深く形成し、十分な接着代を確保するのが好ましい。このような接着代を設けておけば、空間6内の減圧状態の気圧と大気圧との気圧差により水や切削屑が流入しない強い接着強度を維持することができるからである。
【0035】
なお、圧力センサの側壁部、パッケージ本体1にクラックや剥離等が発生している場合、パッケージ内部の空間6は大気圧雰囲気となり、気圧差による強い接着強度が得られず、切断時に水や切削屑が流入してしまい、後述する性能テスト工程で選別することが可能となる。
【0036】
この切断工程により、圧力センサの側面部は、開口部7が形成された段部10の側面部と、パッケージ本体1の切断面との間に、段部10が残り、連続した形状となる。従って、ダイシングソーの切削幅、切削位置の位置ずれ等により、段部の幅がわずかしかない場合もあり得るが、段部10の側面部(第1の側面部に相当)と切削により形成される側面部(第2の側面部に相当)との境界部が段部10となる。
【0037】
次にダイシングテープにUV光を照射して接着強度を低下させた後、
図9の矢印で示す面からダイシングテープ13にドライヤー等を用いて60℃程度の熱を加えると、ダイシングテープ13が収縮し、ダイシングテープ13上に個片化された圧力センサが整列した状態となる。この工程では
図9に示すように、開口部7からダイシングテープ13が剥離し、圧力センサチップ2は、開口部7を介して外部と連通し、圧力センサとして機能することになる。この状態から個片化された圧力センサをそれぞれピックアップして所望の実装を行うことができる。以上のように、MAP方式により、開口部を備えた圧力センサを形成することが可能となった。
【実施例2】
【0038】
次に、圧力センサの製造工程中に性能テストを行う場合について説明する。実施例1で説明したように、ダイシングテープ13上に個片化された圧力センサが整列した状態となったところで、性能テストを行う。通常の半導体集積回路における電気特性のテストと異なり、圧力センサに所望の圧力が印加された状態で性能テストを行う。例えば、
図10に示すコンタクトプローブ15、冷熱プレート16を含むテスト装置を圧力を可変できるボックス内に収納し、所望の圧力印加時の圧力センサの出力を測定し、圧力センサの良否判定を行う。本発明
による圧力センサは、ダイシングテープ13上に整列した状態となっているため、コンタクトプルーブ15をパッケージ端子9に接触させ、通常の方法で特性テストを行うことが可能となる。
【0039】
前述の通り、圧力センサの側壁部、パッケージ本体1にクラックや剥離等が発生している場合、この性能テスト工程で不良品として選別することができる。
【0040】
図10に示すような冷熱プレート16上に圧力センサを載置してウエハテストを行う場合、ダイシングテープ13としてPVCやPO基材を選択すると、70℃〜−20℃程度の温度範囲で可変することが可能となる。ダイシングテープは、図示しない吸着手段によって冷熱プレート16上に固定しても良い。また減圧状態でテストすることで、吸着手段による固定が不十分となる場合には、機械的な固定手段により固定しても良い。冷熱プレート16は、ペルチェ素子や恒温液体を流す配管を埋め込んだステンレス材等の金属で構成することで、特性テストを行う圧力センサを所望の温度に、迅速かつ安定に到達させることが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施例について圧力センサを例にとり説明したが、本発明
によるセンサ装置は圧力センサに限定されるものではなく、パッケージ内部に搭載するセンサチップの種類を種々変更することで、湿度センサ等、センサ内に外部の物理量を導入して検知するためにパッケージに開口部を備える必要のあるセンサに適用することができる。
【0042】
また、ダイシングシート材は、伸縮性、接着剤の接着力の制御性を満たせば、ポリ塩化ビニル基材あるいはポリオレフィン基材に限らず用いることができる。