(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理体の裏面と静電チャックの底面との間の距離を求める方法であって、前記静電チャックは、前記底面と該底面から突出する複数の凸部とを含む表面を有しており、前記被処理体は、前記静電チャックの前記複数の凸部の頂部に前記裏面が接するように載置され、
該方法は、
光源から出射されて前記被処理体の裏面及び前記静電チャックの前記底面に照射される光の反射光の第1の波長スペクトルを、分光器を用いて取得する工程と、
前記光源から出射される光の波長スペクトルを用いて前記第1の波長スペクトルを反射率の波長スペクトルに変換して、第2の波長スペクトルを取得する工程と、
前記第2の波長スペクトルの波長を波数に変換して、第1の波数スペクトルを取得する工程と、
前記第1の波数スペクトルを波数方向において等間隔に補間して、第2の波数スペクトルを取得する工程と、
前記第2の波数スペクトルの波数方向の両端の反射率を揃える第1の補正処理を該第2の波数スペクトルに適用して、第3の波数スペクトルを取得する工程と、
前記第3の波数スペクトルに高速フーリエ変換を適用して、第1の光路長スペクトルを取得する工程と、
前記第1の光路長スペクトルから前記被処理体の厚みに対応する光路長の成分を除去するフィルタを該第1の光路長スペクトルに適用して、第2の光路長スペクトルを取得する工程と、
前記第2の光路長スペクトルに逆高速フーリエ変換を適用して、第4の波数スペクトルを取得する工程と、
前記第1の補正処理の逆処理である第2の補正処理を前記第4の波数スペクトルに適用して、第5の波数スペクトルを取得する工程と、
前記第5の波数スペクトルの波数を波長に変換して、第3の波長スペクトルを取得する工程と、
前記光源から出力される光に基づく前記分光器の特性を示す規格化用波長スペクトルを用いて前記第3の波長スペクトルを規格化して、第4の波長スペクトルを取得する工程と、
前記第4の波長スペクトルにおけるピーク波長又はバレー波長に基づいて前記距離を算出する工程と、
を含む方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、静電チャックの帯電量を正確に検出することができないので、静電チャックを除電することが困難である。静電チャックが除電されないと、被処理体を静電チャックから取り外すときに、当該被処理体に割れ等が発生することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ところで、静電チャックには、底面と当該底面から突出する複数の凸部を有する表面を有するものがある。このような静電チャックでは、複数の凸部の頂部に裏面が接するように被処理体が静電チャック上に載置される。
【0008】
本願発明者は、静電チャックに対して被処理体が吸着されている状態では、被処理体の裏面が弾性変形し、静電チャックの吸着力に応じて被処理体の裏面と静電チャックの底面との間の距離が変動することを見出している。したがって、本願発明者は、被処理体の裏面と静電チャックの底面との間の距離を求めることにより、静電チャックの吸着力、即ち、帯電量を間接的に検出することが可能であるという知見に至った。
【0009】
かかる知見に基づき、一側面においては、静電チャックの底面と被処理体の裏面との間の距離を求める方法が提供される。この静電チャックは、底面と該底面から突出する複数の凸部を含む表面を有している。被処理体は、裏面を有しており、当該裏面が静電チャックの複数の凸部の頂部に接するように静電チャック上に載置される。この方法は、
(a)光源から出射されて前記複数の凸部の間において前記被処理体の裏面及び前記静電チャックの前記底面に照射される光の反射光の第1の波長スペクトルを、分光器を用いて取得する工程と、
(b)前記光源から出射される光の波長スペクトルを用いて前記第1の波長スペクトルを反射率の波長スペクトルに変換して、第2の波長スペクトルを取得する工程と、
(c)前記第2の波長スペクトルの波長を波数に変換して、第1の波数スペクトルを取得する工程、
(d)前記第1の波数スペクトルを波数方向において等間隔に補間して、第2の波数スペクトルを取得する工程と、
(e)前記第2の波数スペクトルの波数方向の両端の反射率を揃える第1の補正処理を該第2の波数スペクトルに適用して、第3の波数スペクトルを取得する工程と、
(f)前記第3の波数スペクトルに高速フーリエ変換を適用して、第1の光路長スペクトルを取得する工程と、
(g)前記第1の光路長スペクトルから前記被処理体の厚みに対応する光路長の成分を除去するフィルタを該第1の光路長スペクトルに適用して、第2の光路長スペクトルを取得する工程と、
(h)前記第2の光路長スペクトルに逆高速フーリエ変換を適用して、第4の波数スペクトルを取得する工程と、
(i)前記第1の補正処理の逆処理である第2の補正処理を前記第4の波数スペクトルに適用して、第5の波数スペクトルを取得する工程と、
(j)前記第5の波数スペクトルの波数を波長に変換して、第3の波長スペクトルを取得する工程と、
(k)前記光源から出力される光に基づく前記分光器の特性を示す規格化用波長スペクトルを用いて前記第3の波長スペクトルを規格化して、第4の波長スペクトルを取得する工程と、
(l)前記第4の波長スペクトルにおけるピーク波長又はバレー波長に基づいて前記距離を算出する工程と、
を含む。
【0010】
この方法では、光源から出射された光は、被処理体の表面、被処理体の裏面、及び、静電チャックの底面、即ち複数の境界面において反射される。複数の境界面において反射された反射光線は、互いに干渉する。即ち、複数の境界面からの反射光線は、波長に応じて互いに強め合うか、或いは、互いに弱め合う。したがって、分光器の出力である第1の波長スペクトルは、波長に応じて変動する強度を有する。本方法では、工程(b)において、第1の波長スペクトルを第2の波長スペクトル、即ち、反射率のスペクトルに変換することにより、第1の波長スペクトルにおける光源の波長スペクトルの影響が除去される。次いで、本方法では、工程(c)において第2の波長スペクトルが第1の波数スペクトルに変換される。次いで、本方法では、工程(d)において第1の波数スペクトルを波長方向に等間隔に補間することにより、第2の波数スペクトルが生成される。次いで、方法方では、高速フーリエ変換(以下、「FFT」という)の前処理として、工程(e)において、第2の波数スペクトルの波数方向の両端の反射率を揃える第1の補正処理が第2の波数スペクトルに適用される。これにより、第3の波数スペクトルが生成される。工程(f)では、この第3の波数スペクトルにFFTが適用される。これにより、第1の光路長スペクトルが生成される。
【0011】
第1の光路長スペクトルには、静電チャックの底面と被処理体の裏面との間の光路長よりも大きな光路長に基づく成分、即ち、被処理体の表面と裏面との間の光路長に基づく成分が含まれる。そこで、本方法では、工程(g)において、被処理体の厚みに対応する光路長の成分を除去するフィルタが第1の光路長スペクトルに適用される。これにより、第2の光路長スペクトルが生成される。次いで、本方法では、工程(h)において、第2の光路長スペクトルに、逆高速フーリエ変換(以下、「IFFT」という)が適用されることにより、第4の波数スペクトルが生成される。次いで、本方法では、工程(i)において、第1の補正処理の影響を取り除くために、当該第1の補正処理の逆処理である第2の補正処理が第4の波数スペクトルに適用される。これにより、第5の波数スペクトルが生成される。次いで、本方法では、工程(j)において、第5の波数スペクトルの波数が波長に変換される。これにより、第3の波長スペクトルが生成される。次いで、本方法では、工程(k)において、分光器の特性である規格化用波長スペクトルを用いて第3の波長スペクトルが処理されることにより、第4の波長スペクトルが生成される。そして、本方法では、第4の波長スペクトルにおけるピーク波長又はバレー波長に基づいて、被処理体の裏面と静電チャックの底面との間の距離が算出される。
【0012】
別の一側面においては、上述した距離を求める方法を用いた静電チャックの除電方法が提供される。この方法は、上述の距離を求める方法を実施することにより、静電チャックの底面と被処理体の裏面との間の距離を取得する工程と、取得された前記距離に基づき、前記静電チャックに電圧を印加する工程と、を含む。この方法によれば、静電チャックの底面と被処理体の裏面との間の距離を求めることにより、静電チャックを除電すべきか否かを判定し、静電チャックに電圧を印加することができる。換言すれば、この方法では、上記の距離を求めることにより、間接的に静電チャックの帯電量を求め、静電チャックを除電することが可能である。
【0013】
更に別の一側面においては、被処理体の処理に用いられる処理装置が提供される。この装置は、処理容器、静電チャック、光源、電源、分光器、及び制御部を備える。静電チャックは、処理容器内に設けられている。静電チャックは、表面を有しており、この表面は、底面と該底面から突出する複数の凸部を有している。静電チャックは、複数の凸部の頂部において被処理体を支持する。電源は、静電チャックに電圧を印加する。光源は、複数の凸部の間において被処理体の裏面及び静電チャックの底面に照射される光を出射する。分光器は、光源からの光に基づく反射光を受光して、第1の波長スペクトルを出力する。制御部は、第1の波長スペクトルに基づき静電チャックに印加する電圧を制御する。
【0014】
制御部は、
(b)前記光源から出射される光の波長スペクトルを用いて前記第1の波長スペクトルを反射率の波長スペクトルに変換して、第2の波長スペクトルを取得し、
(c)前記第2の波長スペクトルの波長を波数に変換して、第1の波数スペクトルを取得し、
(d)前記第1の波数スペクトルを波数方向において等間隔に補間して、第2の波数スペクトルを取得し、
(e)前記第2の波数スペクトルの波数方向の両端の反射率を揃える第1の補正処理を該第2の波数スペクトルに適用して、第3の波数スペクトルを取得し、
(f)前記第3の波数スペクトルに高速フーリエ変換を適用して、第1の光路長スペクトルを取得し、
(g)前記第1の光路長スペクトルから前記被処理体の厚みに対応する光路長の成分を除去するフィルタを該第1の光路長スペクトルに適用して、第2の光路長スペクトルを取得し、
(h)前記第2の光路長スペクトルに逆高速フーリエ変換を適用して、第4の波数スペクトルを取得し、
(i)前記第1の補正処理の逆処理である第2の補正処理を前記第4の波数スペクトルに適用して、第5の波数スペクトルを取得し、
(j)前記第5の波数スペクトルの波数を波長に変換して、第3の波長スペクトルを取得し、
(k)前記光源から出力される光に基づく前記分光器の特性を示す規格化用波長スペクトルを用いて前記第3の波長スペクトルを規格化して、第4の波長スペクトルを取得し、
(l)前記第4の波長スペクトルにおけるピーク波長又はバレー波長に基づいて被処理体の裏面と静電チャックの底面との間の距離を算出し、
(m)算出した前記距離に基づき、前記静電チャックに電圧を印加するよう前記電源を制御する。
【0015】
この処理装置によれば、静電チャックの除電を行うことが可能となる。よって、静電チャックからの被処理体の取り外し時に、被処理体の位置ずれが発生すること、或いは、被処理体の割れが発生することを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、被処理体の裏面と静電チャックの底面との間の距離を算出することが可能となり、この距離に基づき静電チャックを除電することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0019】
まず、一実施形態に係る処理装置について説明する。
図1は、一実施形態に係る処理装置の構成を概略的に示す図である。
図1においては、一実施形態に係る処理装置10の縦断面の構造が描かれている。
図1に示す処理装置10は、容量結合型のプラズマ処理装置である。
【0020】
処理装置10は、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有している。処理容器12は、例えば、その内面において陽極酸化処理されたアルミニウムから構成されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0021】
処理容器12の底部上には、絶縁材料から構成された略円筒上の支持部14が配置されている。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。支持部14は、処理容器12内に設けられた載置台18を支持している。
【0022】
載置台18は、下部電極LE及び静電チャックESCを備えている。下部電極LEは、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状を有している。静電チャックESCは、下部電極LE上に設けられている。静電チャックESCは、より詳細には後述するが、導電膜である電極を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22が電気的に接続されている。この静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により被処理体(以下、「ウエハ」という)を吸着保持することができる。
【0023】
載置台18の下部電極LEの周縁部上には、絶縁体からなるスペーサ部16が設けられている。スペーサ部16の上には、ウエハWの周縁及び静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、石英から構成され得る。
【0024】
下部電極LEの内部には、冷媒用の流路24が形成されている。流路24には、外部に設けられたチラーユニットから配管26a及び配管26bを介して外部に設けられたチラーユニットに接続されている。チラーユニットからの冷媒は、配管26a、流路24、及び配管26bを通って循環される。このように循環される冷媒の温度を制御することにより、載置台18上に支持されたウエハWの温度が制御される。
【0025】
また、処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの表面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0026】
また、載置台18には、複数、例えば三つのリフターピン用孔200が設けられている。これらのリフターピン用孔200の内部には、リフターピン61がそれぞれ配設されている。リフターピン61は、駆動機構62に接続されており、駆動機構62により上下動される。
【0027】
また、処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、載置台18の上方において、当該載置台18と対向配置されている。上部電極30と下部電極LEとは、互いに略平行に設けられている。これら上部電極30と下部電極LEとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための処理空間Sが画成されている。
【0028】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。この上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は、処理空間Sに面しており、複数のガス吐出孔34aを画成している。この電極板34は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から構成され得る。
【0029】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。
【0030】
処理装置10は、接地導体12aを更に備え得る。接地導体12aは、略円筒状をなしており、処理容器12の側壁から上部電極30の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
【0031】
また、処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0032】
処理容器12の底部側においては、支持部14と処理容器12の内壁との間に排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方において処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0033】
処理容器12の内壁には、導電性部材(GNDブロック)56が設けられている。導電性部材56は、高さ方向においてウエハWと略同じ高さに位置するように、処理容器12の内壁に取り付けられている。この導電性部材56は、グランドにDC的に接続されており、異常放電防止効果を発揮する。なお、導電性部材56はプラズマ生成領域に設けられていればよく、その設置位置は
図1に示す位置に限られるものではない。
【0034】
また、処理装置10は、高周波電源HFG、高周波電源LFG、整合器MU1、及び、整合器MU2を更に備えている。高周波電源HFGは、プラズマ生成用の高周波電力を発生するものであり、27MHz以上の周波数、例えば、40MHzの高周波電力を整合器MU1を介して、下部電極LEに供給する。整合器MU1は、高周波電源HFGの内部(又は出力)インピーダンスを負荷インピーダンスに整合させる回路を有している。また、高周波電源LFGは、イオン引き込み用の高周波バイアス電力を発生するものであり、13.56MHz以下の周波数、例えば、3MHzの高周波バイアス電力を、整合器MU2を介して下部電極LEに供給する。整合器MU2は、高周波電源LFGの内部(又は出力)インピーダンスを負荷インピーダンスに整合させる回路を有している。
【0035】
また、処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、処理装置10の各部、例えば電源系やガス供給系、及び駆動系等を制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータが処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、処理装置10の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、処理装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じて処理装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。また、この制御部Cntは、後述するように、静電チャックESCの除電のための制御も実行し得る。
【0036】
以下、
図2を参照して、載置台18の詳細について説明する。
図2は、一実施形態に係る処理装置の載置台を拡大して示す断面図である。上述したように、載置台18は、下部電極LE及び静電チャックESCを有している。静電チャックESCは、下部電極LE上に設けられている。
【0037】
静電チャックESCは、絶縁層21a及び絶縁層21bの間に、電極20を有している。電極20には、直流電源22がスイッチSWを介して接続されている。静電チャックESCは、表面21sを有している。この表面21sは、下部電極LEに接する下面21uとは反対側の面である。
【0038】
表面21sは、底面21t及び複数の凸部21pを有している。複数の凸部21pは、略円柱形状を有しており、底面21tから上方に突出するように構成されている。また、複数の凸部21pは、静電チャックESCの表面21sにおいて分散配置されている。ウエハWは、静電チャックESCの複数の凸部21pの頂部に裏面Wbが接するように載置される。
【0039】
下部電極LEには、貫通孔24hが形成されている。この貫通孔24hは、例えば、鉛直方向において下部電極LEを貫通している。貫通孔24hの上端は、底面21tの下方に位置している。この貫通孔24h内には、光学素子88が設けられている。光学素子88は、ウエハWの裏面Wb、即ち、ウエハWの静電チャックESC側の面と静電チャックESCの底面21tとの間の距離を計測するための計測装置80の一部である。
【0040】
計測装置80は、光源82、サーキュレータ84、光ファイバ86、光学素子88、及び、分光器90を有している。また、一実施形態においては、制御部Cntが、計測装置80の演算器を兼ねている。なお、計測装置80の演算器は、制御部Cntとは、別の演算器であってもよく、当該演算器は、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tとの間の距離を算出するための後述の演算を実行し、算出した距離を制御部Cntに出力してもよい。
【0041】
光源82は、距離計測用の光を発生する。光源82が出射する光は、静電チャックESCの底面21t及びウエハWの裏面Wbに照射される光であり、静電チャックESCの絶縁層及びウエハWを透過する光である。光源82が出射する光は、例えば、赤外光であり、1510nm〜1590nmの波長帯域の光である。光源82によって出射された光は、サーキュレータ84及び光ファイバ86を介して光学素子88に導かれる。
【0042】
光学素子88は、コリメータ又は集光光学素子である。光学素子88は、光源82からの光を平行光に変換し、或いは、集光する。光学素子88は、光源82から受けた光を、静電チャックESCの下面21uに向けて出力する。光学素子88から出力された光は、静電チャックESCの内部を透過して、凸部21pの間、即ち、底面21tを介してウエハWの裏面Wbに照射される。なお、光学素子88から出力される光の光路上に電極20が存在すると、ウエハWに光が到達しなくなるので、当該光路上では電極20に孔が設けられていてもよい。
【0043】
光学素子88から出力された光は、静電チャックESCの下面21u、静電チャックの底面21t、ウエハWの裏面Wb、及びウエハWの上面Wtといった境界面において反射される。なお、静電チャックESCの底面21tには、光学素子88からの光が散乱することを防止するために、少なくとも当該光が通過する部分において鏡面処理が施されていてもよい。
【0044】
上述した複数の境界面での反射により発生する複数の反射光線は、光学素子88、光ファイバ86、及びサーキュレータ84を介して分光器90に導かれる。分光器90は、受光した光の波長スペクトル、即ち、第1の波長スペクトルを出力する。複数の反射光線は、互いに干渉り、波長に応じて互いに強め合うか、或いは、互いに弱め合う。したがって、分光器90からの出力である第1の波長スペクトルは、波長に応じて変動する信号強度を有する。この第1の波長スペクトルは、制御部Cntに出力される。
【0045】
制御部Cntは、第1の波長スペクトルを処理して得られる波長スペクトル、即ち第4の波長スペクトルのピーク波長又はバレー波長に基づいて、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tとの間の距離を算出する。そして、制御部Cntは、算出した距離に基づいて、静電チャックESCの電極20に電圧を印加するよう、直流電源22を制御する。
【0046】
静電チャックESCの吸着力がウエハWに働いているときには、ウエハWの裏面Wbは弾性変形する。したがって、静電チャックESCの底面21tとウエハWの裏面Wbと間の距離は、静電チャックESCの吸着力を反映する。したがって、静電チャックESCの底面21tとウエハWの裏面Wbとの間の距離から、静電チャックESCが吸着力を発生していると判定される場合には、静電チャックESCを除電して、ウエハWに対する静電チャックESCの吸着力を低下させることができる。これにより、静電チャックESCからのウエハWの取り外しの際のウエハWの位置ずれ、或いは、ウエハWの割れを防止することが可能となる。
【0047】
以下、処理装置10における静電チャックESCのための処理の詳細と共に、静電チャックを除電する方法の一実施形態、及び、ウエハの裏面と静電チャックの底面との間の距離を求める方法の一実施形態について、説明する。
【0048】
図3は、静電チャックを除電する方法の一実施形態を示す流れ図である。
図3に示す方法MTは、被処理体の裏面と静電チャックの底面との間の距離を求める方法の一実施形態である工程ST2を含む。この工程ST2では、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tとの間の距離が、下記の(1)式又は(2)式に基づいて求められる。(1)式においてλは、ピーク波長又はバレー波長であり、nはウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tとの間の媒質の屈折率、即ち、約1.0であり、dは、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tとの間の距離であり、mは整数である。
【数1】
【数2】
【0049】
(1)式又は(2)式に示すように、距離dを求めるためには、mを決定する必要がある。そのため、方法MTでは、まず、mの初期値を算出する工程ST1が実行される。
図4は、工程ST1の詳細を示す流れ図である。
図4に示すように、工程ST1は、工程ST10〜ST18を含んでいる。工程ST1においてmの初期値を算出するために、まず、工程ST10において第4の波長スペクトルが取得される。
【0050】
図5は、第4の波長スペクトルを取得する工程の詳細を示す流れ図である。
図5に示すように、工程ST10は、工程STa〜STkを含んでいる。以下、工程STa〜工程STkについて、
図5と共に、
図6、
図7、及び
図8を参照しつつ説明する。
図6、
図7、及び
図8は、
図5に示す工程において取得されるスペクトルを示す図である。
【0051】
図5に示すように、工程STaでは、第1の波長スペクトルが取得される。第1の波長スペクトルは、計測装置80の分光器90によって出力される波長スペクトルである。工程STaでは、分光器90によって出力される第1の波長スペクトルが、制御部Cntによって受け取られる。
【0052】
制御部Cntは、第1の波長スペクトルを受け取ると、工程STb〜工程STmを実行する。具体的には、続く工程STbにおいて、第1の波長スペクトルに含まれる光源82の光の波長スペクトルの影響を除去するために、第1の波長スペクトルが、第2の波長スペクトルに変換される。第2の波長スペクトルは、反射率の波長スペクトルである。例えば、制御部Cntは、第1の波長スペクトルを光源82の光の波長スペクトルで除すことにより、第2の波長スペクトルを取得する。この工程STbにより、
図6の(a)に示すように第2の波長スペクトルが取得される。なお、光源82の光の波長スペクトルは、記憶装置に予め記憶させておくことが可能である。
【0053】
続く工程STcでは、第2の波長スペクトルの波長が波数に変換される。即ち、
図6の(a)に示す第2の波長スペクトルの横軸が、波数に変換される。この工程STcにより、反射率の波数スペクトルである第1の波数スペクトルが取得される。この工程STcにより取得される第1の波数スペクトルは、波数方向に等間隔なサンプリングがなされたデータとはなっていない。このため、続く工程STdでは、第1の波数スペクトルが波数方向において等間隔に補間される。この工程STdにより、
図6の(b)に示すように、第2の波数スペクトルが生成される。この補間には、例えば、Aitken4次補間を用いることが可能である。なお、当該補間は、Aitken4次補間に限定されるものではなく、任意の次数の任意の多項式が用いられ得る。
【0054】
工程ST10では、後の工程STfにおいて波数スペクトルに高速フーリエ変換(FFT)が適用される。このFFTのための前処理として、第2の波数スペクトルの波数方向の両端の反射率を揃えるために、続く工程STeでは、第2の波数スペクトルに第1の補正処理が適用される。第1の補正処理には、例えば、線形補正が用いられる。この工程STeにより、
図6の(c)に示すように、波数方向の両端の連続性が確保された第3の波数スペクトルが取得される。
【0055】
続く工程STfでは、第3の波数スペクトルにFFTが適用される。この工程STfにより、
図7の(a)に示すように、第1の光路長スペクトルが取得される。第1の光路長スペクトルには、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tとの間の距離に対応する光路長の信号強度、即ち、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tからの反射光線の干渉に基づく信号強度が含まれる。加えて、第1の光路長スペクトルには、静電チャックESCの下面21uと静電チャックの底面21tからの反射光線の干渉に基づく信号強度、ウエハWの上面Wtと裏面Wbからの反射光線の干渉に基づく信号強度といった成分が含まれる。ここで、静電チャックESCの下面21uと静電チャックの底面21tとの間の距離、及び、ウエハWの上面Wtと裏面Wbとの間の距離は、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tの間の距離よりも大きい。よって、続く工程STgでは、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tの間の光路長よりも大きい光路長をもつ一以上の対の境界面からの反射光の干渉に基づく信号強度を除去するために、第1の光路長スペクトルにフィルタ処理が適用される。このフィルタ処理は、ローパスフィルタ処理である。即ち、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tの間の距離に対応する光路長の信号強度を残し、ウエハWの厚みに対応する光路長の信号強度を除去するフィルタである。この工程STgにより、
図7の(b)に示すように、第2の光路長スペクトルが取得される。
【0056】
続く工程SThでは、第2の光路長スペクトルに逆高速フーリエ変換(IFFT)が適用される。この工程SThにより、
図7の(c)に示すように、反射率の第4の波数スペクトルが取得される。続く工程STiでは、工程STeの第1の補正処理の影響を取り除くために、第4の波数スペクトルに第2の補正処理が適用される。第2の補正処理は、第1の補正処理の逆処理である。一例においては、第2の補正処理には、第1の補正処理の線形補正とは対称な線形補正が用いられる。この工程STiにより、
図8の(a)に示すように、第5の波数スペクトルが取得される。
【0057】
続く工程STjでは、第5の波数スペクトルの波数が波長に変換される。この工程STjにより、
図8の(b)に示すように、第3の波長スペクトルが取得される。この第3の波数スペクトルには、分光器90の特性が反映されている。即ち、第3の波数スペクトルには、光の波長に応じた分光器90の出力の特性が反映されている。このため、続く、工程STkでは、第3の波数スペクトルに規格化処理が適用される。この規格化処理のために、制御部Cntは、規格化用波長スペクトルを記憶している。この規格化用波長スペクトルは、内層として金属膜を有するウエハを載置台18上に載置して、工程Staから工程STjまでの処理を行うことで生成される。制御部Cntは、この規格化用波長スペクトルにより第3の波数スペクトルを除すことにより、
図8の(c)に示すように、規格化反射率の第4の波長スペクトルを取得することができる。
【0058】
再び
図4を参照する。工程ST10において第4の波長スペクトルが取得されると、制御部Cntは、工程ST11〜工程ST18を実行することにより、mの初期値を算出する。以下の説明では、
図4と共に、
図9を参照する。
【0059】
工程ST11では、
図9の(a)に示すように、第4の波長スペクトルから所定波長範囲λ
Wのスペクトルが取得される。所定波長範囲λ
Wは、光源82の光のスペクトルの波長範囲内の波長範囲であり、例えば、1520nm〜1575nmの波長範囲である。以下、第4の波長スペクトル内の所定波長範囲λ
WのスペクトルをP[λ
i]と表わす。ここで、λ
iは、標本化された波長であり、iは0〜N−1の整数であり、P[λ
i]は、波長λ
iでの規格化反射率を表わしている。
【0060】
続く工程ST12では、P[λ
i]の微分が求められる。具体的には、下記の(3)式により、P[λ
i]の微分、即ち、P’[λ
i]が求められる(
図9の(b)参照)。
【数3】
【0061】
続く工程ST13では、P’[λ
i]にフィルタ処理が適用され、
図9の(c)に示すように、P
f[λ
i]が取得される。このフィルタ処理では、
図4の工程STc〜工程STjまでの処理が、P’[λ
i]に適用される。
【0062】
続く工程ST14では、中心波長λ
centerが決定される。具体的には、波長範囲λ
wの中央値以上且つ当該中央値に最も近い波長λ
iが中心波長λ
centerとして選択される(
図9の(c)参照)。
【0063】
続く工程ST15では、中心波長λ
centerに対して長波長帯側と短波長帯側の双方において、P
f[λ
i]の変極点の波長が決定される。具体的には、P
f[λ
i]×P
f[λ
i−1]が負、且つ、P
f[λ
i−1]×P
f[λ
i−2]が正となるλ
iが検索され、変極点の波長とされる。なお、P
f[λ
i]が負の場合には、検索された波長λ
iはピーク波長であり、P
f[λ
i]が正の場合には、検索された波長λ
iはバレー波長である。以下、長波長帯側で検索された波長をλ
Aとし、短波長帯側で検索された波長をλ
Bとする(
図9の(c)参照)。
【0064】
続く工程ST16では、重心計算波長範囲が決定される。即ち、長波長帯側の重心計算波長範囲B
long及び短波長帯側の重心計算波長範囲B
shortが決定される。具体的には、B
longは、λ
A−λ
WIDTH/2からλ
A+λ
WIDTH/2の範囲に設定され、B
shortは、λ
B−λ
WIDTH/2からλ
B+λ
WIDTH/2の範囲に設定される。なお、λ
WIDTHは、λ
Aとλ
Bの差の絶対値又は当該絶対値よりも若干大きな値である。
【0065】
続く工程ST17では、重心波長が計算される。具体的には、長波長帯側の重心計算波長範囲B
long及び短波長帯側の重心計算波長範囲B
shortの各々において、下記の(4)式を用いて、重心波長が計算される。より具体的には、重心計算波長範囲がピーク波長を有する場合には、Pの値が(4)式においてそのまま用いられることにより重心波長が計算される。一方、重心計算波長範囲がバレー波長を有する場合には、下記の(5)式によって求められるP
reverseが(4)式のPに代入されることにより、重心波長が計算される。なお、(4)式において、Mは、各重心計算波長範囲内のサンプル数を表わす整数であり、Sは各重心計算波長範囲内の最小の波長に対するインデックスである。
【数4】
【数5】
【0066】
以下、長波長帯側の重心計算波長範囲B
longにおいて求められた重心波長λ
centroidをλ
longとし、短波長帯側の重心計算波長範囲B
shortにおいて求められた重心波長λ
centroidをλ
shortとする。なお、波長λ
long及び波長λ
shortがピーク波長であるかバレー波長であるか否かは、工程ST15において、長波長帯側がピーク波長及びバレー波長のうち何れの波長を有するかの判定結果が得られているので、当該判定結果と同じく波長λ
longがピーク波長かバレー波長であるかを判定することができる。また、波長λ
longがピーク波長であれば、波長λ
shortはバレー波長となり、波長λ
longがバレー波長であれば、波長λ
shortはピーク波長となる。
【0067】
続く、工程ST18では、mが決定される。
図10は、
図4に示す工程ST18の詳細を示す流れ図である。工程ST18は、工程ST18a〜工程ST18gを含む。工程ST18aでは、mの値が1に設定される。
【0068】
続く工程ST18bでは、波長λ
longを用いて、距離dが算出される。具体的には、λ
longがピーク波長である場合には(1)式において、或いは、λ
longがバレー波長である場合には(2)式において、λに波長λ
longが設定されることにより、距離dが算出される。
【0069】
続く工程ST18cでは、距離d及びmに基づき、短波長帯側の波長λ
calが算出される。具体的には、工程ST18bにおいて(1)式が用いられている場合には(2)式において、工程ST18bにおいて(2)式が用いられている場合には(1)式において、距離d及びmが設定されることにより、波長λ
calが算出される。
【0070】
続く工程ST18dにおいて、波長λ
shortと波長λ
calの差分の絶対値Δλ[m]が算出される。次いで、工程ST18eにおいて、Δλ[m]がΔλ[m−1]以上であるか否かが判定される。なお、Δλ[0]としては、所定の値が設定される。
【0071】
工程ST18eにおいて、Δλ[m]がΔλ[m−1]より小さいと判定されると、工程ST18fにおいて、mが1だけ増加され、工程ST18bからの処理が繰り返される。一方、工程ST18eにおいて、Δλ[m]がΔλ[m−1]以上であると判定される場合には、工程ST18gにおいてmが1だけ減少されて、mの初期値が決定される。
【0072】
再び
図3を参照する。方法MTでは、工程ST1においてmの初期値が算出されると、工程ST2において、静電チャックESCの底面21tとウエハWの裏面Wbとの間の距離dが算出される。
【0073】
図11は、工程ST2の詳細を示す流れ図である。
図11に示すように、工程ST2では、最初に工程ST10により、第4の波長スペクトルが取得される。第4の波長スペクトルの取得の詳細については、
図5及び対応の説明を参照されたい。
【0074】
第4の波長スペクトルを取得すると制御部Cntは、工程ST20〜ST24の処理を実行する。まず、工程ST20では、第4の波長スペクトルを用いて、長波長帯側の重心計算波長範囲B
longの重心波長λ
longが算出される。工程ST20の処理は、
図4の工程ST17の処理と同様である。なお、方法MTの初回の工程ST2においては、工程ST1において求められたB
longが重心波長λ
longを計算するための波長範囲として用いられ、2回目以降の工程ST2においては、前回の工程ST2において決定されたB
longが用いられる。
【0075】
続く工程ST21では、m、及び工程ST20において算出されたλ
longに基づき、距離dが算出される。初回の工程ST21では、工程ST1において求められたmが、工程ST21において用いられる。また、2回目以後の工程ST21では、前回の工程ST2において決定されたmが用いられる。なお、工程ST21では、距離dの算出のため、λ
longがピーク波長である場合には(1)式が用いられ、λ
longがバレー波長である場合には(2)式が用いられる。
【0076】
続く工程ST22では、B
longが更新される。具体的には、以下の式により、Δλ
longが算出される。
Δλ
long=(前回の工程ST2で算出したλ
long)−(現在の工程ST2で算出したλ
long)
そして、工程ST22では、B
longが、(前回の工程ST2で算出したλ
long)−λ
WIDTH/2−Δλ
longから、(前回のST2で算出したλ
long)+λ
WIDTH/2−Δλ
longまでの範囲に更新される。
【0077】
続く工程ST23では、B
longが所定波長範囲λ
W内にあるか否かが判定される。B
longが所定波長範囲λ
Wにない場合には、工程ST24においてB
long及びmが更新される。具体的には、以下のケース1〜ケース4に応じて、B
long及びmが更新される。
【0078】
(ケース1)
B
longが短波長側にずれて所定波長範囲λ
Wにない場合であり、且つ、λ
longがピーク波長である場合には、下記の(6)式に基づき、λ
Shiftが求められ、λ
Shiftだけ長波長側にB
longがシフトされる。このとき、mの変更は行われない。なお、更新後のB
long内において計算される重心波長はバレー波長となる。
【数6】
【0079】
(ケース2)
B
longが短波長側にずれて所定波長範囲λ
Wにない場合であり、且つ、λ
longがバレー波長である場合には、下記の(7)式に基づき、λ
Shiftが求められ、λ
Shiftだけ長波長側にB
longがシフトされる。このとき、mは1だけ減少される。なお、更新後のB
long内において計算される重心波長はピーク波長となる。
【数7】
【0080】
(ケース3)
B
longが長波長側にずれて所定波長範囲λ
Wにない場合であり、且つ、λ
longがピーク波長である場合には、下記の(8)式に基づき、λ
Shiftが求められ、λ
Shiftだけ短波長側にB
longがシフトされる。このとき、mは1だけ増加される。なお、更新後のB
long内において計算される重心波長はバレー波長となる。
【数8】
【0081】
(ケース4)
B
longが長波長側にずれて所定波長範囲λ
Wにない場合であり、且つ、λ
longがバレー波長である場合には、下記の(9)式に基づき、λ
Shiftが求められ、λ
Shiftだけ短波長側にB
longがシフトされる。このとき、mは変更されない。なお、更新後のB
long内において計算される重心波長はピーク波長となる。
【数9】
【0082】
一方、工程ST23における判定の結果、B
longが所定波長範囲λ
W内にある場合には、B
long及びmの更新は行われない。
【0083】
図3に戻り、距離dが算出されると、制御部Cntは、工程ST3及び工程ST4の処理を実行する。具体的に、工程ST3では、工程ST2により求められた距離dに基づき、静電チャックESCの除電が完了しているか否かが判定される。例えば、所定値と距離dとが比較されることにより、除電が完了しているか否かが判定される。除電が完了していると判定される場合には、方法MTによる除電は完了する。
【0084】
一方、工程ST3において、除電が完了していないと判定されると、即ち、距離dが所定値よりも小さいと判定されると、工程ST4において静電チャックESCの電極20に電圧が印加される。この電圧は、除電用の所定の電圧であってもよい。或いは、当該電圧は、距離に応じて予め設定された電圧であってもよい。この工程ST4の後、工程ST2からの処理が除電が完了するまで繰り返される。
【0085】
以上説明した方法MT及び方法MTに従って動作する処理装置10によれば、分光器90の出力である第1の波長スペクトルに基づいて、ウエハWの裏面Wbと静電チャックESCの底面21tとの間の距離を求めることが可能となる。求められた距離は、静電チャックESCの吸着力を反映する。換言すると、当該距離は、静電チャックESCの帯電量を反映している。したがって、当該距離に基づいて、静電チャックESCを除電することが可能となる。その結果、静電チャックESCからウエハWを取り外す際のウエハWの位置ずれ、或いは、ウエハWの割れ等を防止することが可能となる。
【0086】
以下、
図12を参照する。
図12は、処理装置10を用いて行った有効性確認実験の結果を示すグラフである。この実験では、処理装置10の静電チャックESC上にウエハを載置し、処理容器12内を所定の真空度まで減圧した。次いで、処理容器12内の圧力を序々に大気圧まで増加させ、ウエハの裏面と静電チャックESCの底面21tとの間の距離dを、上述した方法により求めた。なお、処理容器12内の圧力を増加させても、ウエハと静電チャックESCとの間の真空度は維持される。したがって、処理容器12内の圧力を増加させると、ウエハの上面側と裏面側の圧力差に応じた大きさの力が静電チャックESCに向かう方向においてウエハに加わる。即ち、この実験では、当該圧力差を、静電チャックESCの吸着力に代えて用いて、距離dを求めた。
図12はその結果を示している。
【0087】
図12において、横軸は、処理容器12内の圧力を大気圧まで上昇させた期間の時間を表わしており、縦軸は距離dを表わしている。
図12に示すように、上記実験の結果、時間と共に圧力が増加するに従い、距離dが序々に小さくなることが確認された。このことから、静電チャックESCが発生する吸着力の大きさを、距離dから間接的に求めることが可能であることが確認された。換言すると、静電チャックESCの帯電量を、距離dから間接的に求めることが可能であることが確認された。
【0088】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、
図2に示す実施形態では、貫通孔24h内且つ静電チャックESCの下面21uの近傍に光学素子88が設けられているが、光学素子88は、光路が確保されていれば、
図2に示した位置よりも更に下方に設けられていてもよく、また、貫通孔24hの外に設けられていてもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、静電チャックESCの下方に光学素子88を設け、静電チャックESCの下方から上方に向けて光源82からの光を照射しているが、光源82からの光は、ウエハWの上方から下方に向けて照射されてもよい。例えば、処理装置10の上部電極30に設けた孔内に光学素子88が設けられていてもよい。
【0090】
また、上述した処理装置10は、下部電極に二つの高周波電力が供給されるプラズマ処理装置であったが、高周波電源HFGからの高周波電力は上部電極30に与えられてもよい。
【0091】
また、処理装置10は、容量結合型のプラズマ処理装置であったが、処理装置は任意のタイプのプラズマ源を有することができる。例えば、処理装置10は、誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよく、マイクロ波といった表面波を利用するプラズマ処理装置であってもよい。