(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱流束測定用部材の前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との差が、前記低コヒーレンス光の光源のコヒーレンス長よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の熱流束測定方法。
前記熱流束測定用部材は、前記第1層及び前記第3層を形成する材料の熱伝導率が前記第2層を形成する材料の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱流束測定方法。
前記光路長測定ステップでは、光源から出力される低コヒーレンス光を2つの光路に分け、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光と前記2つの光路の他方を進む低コヒーレンス光を参照ミラーに照射すると共に前記参照ミラーを低コヒーレンス光の入射方向と平行な方向に移動させたときの前記参照ミラーからの反射光との干渉光と、前記参照ミラーの移動距離とから、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱流束測定方法。
前記光路長測定ステップでは、前記低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光のスペクトルをフーリエ変換することによって、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱流束測定方法。
前記熱流束測定用部材の前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との差が、前記低コヒーレンス光の光源のコヒーレンス長よりも大きいことを特徴とする請求項10記載の基板処理システム。
前記熱流束測定用部材は、前記第1層及び前記第3層を形成する材料の熱伝導率が前記第2層を形成する材料の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の基板処理システム。
前記光学系は、光源から出力される前記低コヒーレンス光を2つの光路を進むように分岐させ、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光と前記2つの光路の他方を進む低コヒーレンス光を参照ミラーに照射すると共に前記参照ミラーを低コヒーレンス光の入射方向と平行な方向に移動させたときの前記参照ミラーからの反射光との干渉光を取得し、
前記解析装置は、前記光学系が取得した干渉光と前記参照ミラーの移動距離とから、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の基板処理システム。
前記解析装置は、前記光学系から出力される低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光のスペクトルをフーリエ変換することによって、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の基板処理システム。
前記第2層に前記低コヒーレンス光を透過させるための孔部が、前記第1層、前記第2層及び前記第3層の積層方向に貫通するように設けられていることを特徴とする請求項19記載の熱流束測定用部材。
前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との差が、前記低コヒーレンス光の光源のコヒーレンス長よりも大きいことを特徴とする請求項19乃至23のいずれか1項に記載の熱流束測定用部材。
前記第1層及び前記第3層を形成する材料の熱伝導率が前記第2層を形成する材料の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする請求項19乃至25のいずれか1項に記載の熱流束測定用部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにイオンフラックスを測定する技術が種々提案されているが、半導体ウエハに入射するイオンフラックスはエネルギーの一種であり、半導体ウエハに入射したイオンフラックスは熱に変わることから、半導体ウエハ内の熱流束を求めることによってイオンフラックスを求めることができると考えられる。
【0006】
本発明の目的は、プラズマのイオンフラックスを熱流束測定用部材を流れる熱流束として測定する熱流束測定方法を提供することにある。また本発明の目的は、プラズマに晒される熱流束測定用部材の温度を測定することによりプラズマのイオンフラックスを熱流束として測定する熱流束測定装置を備える基板処理システムを提供することにある。更に本発明の目的は、基板処理室内で発生させるプラズマのイオンフラックスを測定するために基板処理室内に基板に代えて配置される熱流束測定用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の熱流束測定方法は、基板処理室内に発生させたプラズマのイオンフラックスを熱流束として測定する熱流束測定方法であって、第1層、第2層及び第3層がこの順で積層された構造を有し、少なくとも前記第2層は前記第1層及び前記第3層とは異なる材料からなる熱流束測定用部材をプラズマに晒した状態で、前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に低コヒーレンス光を照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光の光干渉を利用して、前記第1層内を厚さ方向に往復する低コヒーレンス光の前記第1層内での光路長と前記第3層内を厚さ方向に往復する低コヒーレンス光の前記第3層内での光路長とを測定する光路長測定ステップと、前記第1層及び前記第3層について、前記第1層及び前記第3層の温度と前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との関係を示す校正データを作成するデータ作成ステップと、前記光路長測定ステップで測定した前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを前記データ作成ステップで作成した前記校正データに照らし合わせて前記部第1層及び前記第3層のそれぞれの温度を求める温度測定ステップと、前記温度測定ステップで求めた前記部第1層及び前記第3層のそれぞれの温度と、前記第2層の厚さ及び熱伝導率とから、前記熱流束測定用部材を流れる熱流束を算出する熱流束算出ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の熱流束測定方法は、請求項1記載の熱流束測定方法において、前記熱流束測定用部材の前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との差が、前記低コヒーレンス光の光源のコヒーレンス長よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の熱流束測定方法は、請求項1又は2記載の熱流束測定方法において、前記熱流束測定用部材は、前記第1層及び前記第3層の厚さが前記第2層の厚さよりも薄いことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の熱流束測定方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱流束測定方法において、前記熱流束測定用部材は、前記第1層及び前記第3層を形成する材料の熱伝導率が前記第2層を形成する材料の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の熱流束測定方法は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱流束測定方法において、前記光路長測定ステップでは、光源から出力される低コヒーレンス光を2つの光路に分け、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光と前記2つの光路の他方を進む低コヒーレンス光を参照ミラーに照射すると共に前記参照ミラーを低コヒーレンス光の入射方向と平行な方向に移動させたときの前記参照ミラーからの反射光との干渉光と、前記参照ミラーの移動距離とから、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の熱流束測定方法は、請求項5記載の熱流束測定方法において、前記熱流束測定用部材の前記第2層は、前記低コヒーレンス光を透過しない材料からなり、前記光路長測定ステップでは、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を更に2つの光路を進むように分岐させ、更に分岐した一方を進む低コヒーレンス光を前記第1層側から前記第1層へを照射すると共に、更に分岐した他方を進む低コヒーレンス光を前記第3層側から前記第3層へ照射することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の熱流束測定方法は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱流束測定方法において、前記光路長測定ステップでは、前記低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光のスペクトルをフーリエ変換することによって、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の熱流束測定方法は、請求項7記載の熱流束測定方法において、前記熱流束測定用部材の前記第2層は、前記低コヒーレンス光を透過しない材料からなり、前記光路長測定ステップでは、光源から出力される前記低コヒーレンス光を2つの光路に分け、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を前記第1層側から前記第1層へ前記低コヒーレンス光を照射すると共に、前記2つの光路の他方を進む低コヒーレンス光を前記第3層側から前記第3層へ照射することを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の熱流束測定方法は、請求項5又は7記載の熱流束測定方法において、前記熱流束測定用部材の前記第2層には孔部が設けられており、前記光路長測定ステップでは、前記低コヒーレンス光を前記孔部を通過するように前記熱流束測定用部材に対して照射することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項10記載の基板処理システムは、収容した基板に対して所定のプラズマ処理を施す基板処理室と、第1層、第2層及び第3層がこの順で積層された構造を有し、少なくとも前記第2層は前記第1層及び前記第3層とは異なる材料からなり、前記第1層の表面又は前記第3層の表面が前記基板処理室内に発生させたプラズマに晒されるように前記基板処理室内に配置される熱流束測定用部材と、前記基板処理室内に発生させたプラズマのイオンフラックスを熱流束として測定する熱流束測定装置とを備える基板処理システムであって、前記熱流束測定装置は、前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に低コヒーレンス光を照射し、その反射光を取得する光学系と、前記熱流束測定用部材からの反射光の光干渉を利用して前記熱流束測定用部材を流れる熱流束を算出する解析装置とを有し、前記解析装置は、前記第1層内を厚さ方向に往復する低コヒーレンス光の前記第1層内での光路長と前記第3層内を厚さ方向に往復する低コヒーレンス光の前記第3層内での光路長とを測定し、測定した前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを事前に作成された前記第1層及び前記第3層の温度と前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との関係を示す校正データに照らし合わせることで前記部第1層及び前記第3層のそれぞれの温度を求め、求められた前記部第1層及び前記第3層のそれぞれの温度と、前記第2層の厚さ及び熱伝導率とから、前記熱流束測定用部材を流れる熱流束を算出することを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の基板処理システムは、請求項10記載の基板処理システムにおいて、前記熱流束測定用部材の前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との差が、前記低コヒーレンス光の光源のコヒーレンス長よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
請求項12記載の基板処理システムは、請求項11又は12記載の基板処理システムにおいて、前記熱流束測定用部材は、前記第1層及び前記第3層の厚さが前記第2層の厚さよりも薄いことを特徴とする。
【0019】
請求項13記載の基板処理システムは、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記熱流束測定用部材は、前記第1層及び前記第3層を形成する材料の熱伝導率が前記第2層を形成する材料の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
請求項14記載の基板処理システムは、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記光学系は、光源から出力される前記低コヒーレンス光を2つの光路を進むように分岐させ、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光と前記2つの光路の他方を進む低コヒーレンス光を参照ミラーに照射すると共に前記参照ミラーを低コヒーレンス光の入射方向と平行な方向に移動させたときの前記参照ミラーからの反射光との干渉光を取得し、前記解析装置は、前記光学系が取得した干渉光と前記参照ミラーの移動距離とから、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする。
【0021】
請求項15記載の基板処理システムは、請求項14記載の基板処理システムにおいて、前記熱流束測定用部材の前記第2層は、前記低コヒーレンス光を透過しない材料からなり、前記光学系は、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を更に2つの光路を進むように分岐させ、更に分岐した一方を進む低コヒーレンス光を前記第1層側から前記第1層へを照射すると共に、更に分岐した他方を進む低コヒーレンス光を前記第3層側から前記第3層へ照射することを特徴とする。
【0022】
請求項16記載の基板処理システムは、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記解析装置は、前記光学系から出力される低コヒーレンス光を前記熱流束測定用部材に対して前記第1層乃至前記第3層の積層方向に照射したときの前記熱流束測定用部材からの反射光のスペクトルをフーリエ変換することによって、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長とを測定することを特徴とする。
【0023】
請求項17記載の基板処理システムは、請求項16記載の基板処理システムにおいて、前記熱流束測定用部材の前記第2層は、前記低コヒーレンス光を透過しない材料からなり、前記光学系は、光源から出力される前記低コヒーレンス光を2つの光路に分け、前記2つの光路の一方を進む低コヒーレンス光を前記第1層側から前記第1層へ前記低コヒーレンス光を照射すると共に、前記2つの光路の他方を進む低コヒーレンス光を前記第3層側から前記第3層へ照射することを特徴とする。
【0024】
請求項18記載の基板処理システムは、請求項14又は16記載の基板処理システムにおいて、前記熱流束測定用部材の前記第2層には孔部が設けられており、前記光学系は、前記低コヒーレンス光を前記孔部を通過するように前記熱流束測定用部材に対して照射することを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するために、請求項19記載の熱流束測定用部材は、プラズマを発生させる基板処理装置内に配置される熱流束測定用部材であって、低コヒーレンス光を透過する第1層と、前記第1層上に積層された第2層と、前記第2層上に積層され、前記低コヒーレンス光を透過する第3層とを有し、少なくとも前記第2層は前記第1層及び前記第3層とは異なる材料からなり、前記第1層の表面又は前記第3層の表面が前記プラズマに晒されるように前記基板処理室内に配置されることを特徴とする。
【0026】
請求項20記載の熱流束測定用部材は、請求項19記載の熱流束測定用部材において、前記第2層に前記低コヒーレンス光を透過させるための孔部が、前記第1層、前記第2層及び前記第3層の積層方向に貫通するように設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項21記載の熱流束測定用部材は、請求項19又は20記載の熱流束測定用部材において、前記第2層は、前記低コヒーレンス光を透過しない材料からなることを特徴とする。
【0028】
請求項22記載の熱流束測定用部材は、請求項19又は20記載の熱流束測定用部材において、前記第2層は、前記低コヒーレンス光を透過する材料からなることを特徴とする。
【0029】
請求項23記載の熱流束測定用部材は、請求項19乃至22のいずれか1項に記載の熱流束測定用部材において、前記第1層及び前記第3層はシリコンからなることを特徴とする。
【0030】
請求項24記載の熱流束測定用部材は、請求項19乃至23のいずれか1項に記載の熱流束測定用部材において、前記第1層内での前記低コヒーレンス光の光路長と前記第3層内での前記低コヒーレンス光の光路長との差が、前記低コヒーレンス光の光源のコヒーレンス長よりも大きいことを特徴とする。
【0031】
請求項25記載の熱流束測定用部材は、請求項19乃至24のいずれか1項に記載の熱流束測定用部材において、前記第1層及び前記第3層の厚さが前記第2層の厚さよりも薄いことを特徴とする。
【0032】
請求項26記載の熱流束測定用部材は、請求項19乃至25のいずれか1項に記載の熱流束測定用部材において、前記第1層及び前記第3層を形成する材料の熱伝導率が前記第2層を形成する材料の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、3層構造を有する熱流束測定用部材の表面側と裏面側の第1層及び第3層のそれぞれの温度をプラズマに晒された状態で測定することによって、熱流束測定用部材に入射したイオンフラックスを熱流束測定用部材を流れる熱流束として求めることができる。特に、本発明によれば、プロセスで最も重要なプラズマが定常状態にあるときに熱流束を測定することができ、こうして得られたイオンフラックスの情報を用いて、基板処理による製品生産時のプロセスを管理し、プロセスの安定性を高めて、製品の品質を高く維持することができる。また、得られたイオンフラックスの情報は、プラズマプロセスのプロセス開発にも有用である。また、本発明に係る熱流束測定方法によれば、簡易な構成で正確な熱流束を測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係る熱流束測定用部材と、熱流束測定用部材の温度を測定することにより熱流束測定用部材を流れる熱流束を測定する熱流束測定装置とを、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」と記す)に対してプラズマエッチング処理を施す基板処理装置に適用した基板処理システムを取り上げることとする。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態に係る熱流束測定用部材と、熱流束測定装置とが適用される基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示す基板処理装置10は、例えば、直径がφ300mmの半導体デバイス用のウエハWを収容するチャンバ11を有し、チャンバ11内にはウエハW又は
図2を参照して後述する第1の熱流束測定用部材Sを載置する円柱状のサセプタ12(載置台)が配置されている。基板処理装置10では、チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路13が形成され、側方排気路13の途中には排気プレート14が配置されている。
【0037】
排気プレート14は多数の貫通孔を有する板状部品であり、チャンバ11内を上部と下部に仕切る仕切り板として機能する。排気プレート14によって仕切られることによってチャンバ11内の上部に形成される基板処理室15において、後述するようにプラズマを発生させる。排気プレート14によってチャンバ11内の下部に形成される排気室(マニホールド)16には、チャンバ11内のガスを排出する排気管17が接続されている。排気プレート14は基板処理室15に発生するプラズマを捕捉し又は反射してマニホールド16への漏洩を防止する。
【0038】
排気管17には、不図示のTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)が接続され、これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DPは、チャンバ11内を大気圧から中真空状態(例えば、1.3×10Pa(0.1Torr)以下)まで減圧する。そして、TMPは、DPと協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態(例えば、1.3×10
−3Pa(1.0×10
−5Torr)以下)まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力は、不図示のAPCバルブによって制御される。
【0039】
チャンバ11内のサセプタ12には、第1の整合器19を介して第1の高周波電源18が接続されると共に、第2の整合器21を介して第2の高周波電源20が接続されている。第1の高周波電源18は、比較的低い周波数、例えば、2MHzのイオン引き込み用の高周波電力をサセプタ12に印加する。一方、第2の高周波電源20は、比較的高い周波数、例えば、60MHzのプラズマ生成用の高周波電力をサセプタ12に印加する。これにより、サセプタ12は電極として機能する。また、第1の整合器19及び第2の整合器21は、サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への印加効率を最大にする。
【0040】
サセプタ12の上部には、大径の円柱の先端から小径の円柱が同心軸に沿って突出した形状となるように、小径の円柱を囲う段差が形成されている。小径の円柱の先端には、静電電極板22を内部に有するセラミックスからなる静電チャック23が配置されている。静電電極板22には直流電源24が接続されており、静電電極板22に正の直流電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック23側の面(裏面)に負電位が発生し、静電電極板22とウエハWの裏面との間に電位差が生じる。こうして生じた電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック23に吸着保持される。
【0041】
サセプタ12の上部には、静電チャック23に吸着保持されたウエハWを囲うように、円環状の部品であるフォーカスリング25が、サセプタ12の上部における段差部へ載置されている。フォーカスリング25は、例えば、シリコン(Si)からなる。よって、フォーカスリング25は半導電体からなるため、プラズマの分布域をウエハW上だけでなくフォーカスリング25上まで拡大してウエハWの周縁部上におけるプラズマの密度をウエハWの中央部上におけるプラズマの密度と同程度に維持する。これにより、ウエハWの全面に施されるプラズマエッチング処理の均一性を確保する。
【0042】
サセプタ12及び静電チャック23を鉛直方向に貫通するように孔部33が設けられている。孔部33には、
図3を参照して後述する第1のコリメータ54或いは
図7を参照して後述するコリメータ64が配置されており、これらのコリメータから静電チャック23上に載置されたウエハW又は第1の熱流束測定用部材Sへ低コヒーレンス光を照射することができるようになっている。
【0043】
チャンバ11の天井部には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド26が配置される。シャワーヘッド26は、上部電極板27と、上部電極板27を着脱可能に釣支するクーリングプレート28と、クーリングプレート28を覆う蓋体29とを有する。上部電極板27は厚み方向に貫通する多数のガス孔30を有する円板状部品からなり、半導電体であるシリコン(Si)で構成される。
【0044】
クーリングプレート28の内部にはバッファ室31が設けられ、バッファ室31には処理ガス導入管32が接続されている。基板処理装置10では、処理ガス導入管32からバッファ室31へ供給された処理ガスがガス孔30を介して基板処理室15内部へ導入される。基板処理室15内部へ導入された処理ガスは、第2の高周波電源20からサセプタ12を介して基板処理室15内部へ印加されたプラズマ生成用の高周波電力によって励起され、プラズマとなる。プラズマ中のイオンは、第1の高周波電源18がサセプタ12に印加するイオン引き込み用の高周波電力によってウエハWに向けて引きこまれ、ウエハWにプラズマエッチング処理を施す。
【0045】
ウエハWに対するプラズマエッチング処理中のプラズマのイオンフラックスを知ることは、ウエハWの処理時のプロセスの安定性を高め、或いは、プロセス開発を行うために重要である。特に、プラズマが定常状態にあるときのエッチングレートは、処理品質に大きな影響を及ぼすため、プラズマが定常状態にあるときのイオンフラックスを知ることは有益である。ここで、ウエハWに引き込まれたイオンフラックスは熱に変化するため、プラズマによってウエハWに供給された熱量を測定することによってイオンフラックスを推定することができる。
【0046】
しかし、ウエハWからは静電チャック23を介して熱が流出するため、単純にウエハWの温度を測定することでは、ウエハWを流れる熱流束を測定することはできない。そこで、本実施の形態では、ウエハWに代えて第1の熱流束測定用部材Sを用い、イオンフラックスを第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束として求める。
【0047】
図2(a)は、第1の熱流束測定用部材Sの概略構造を示す断面図である。第1の熱流束測定用部材Sは、ウエハWに代えて静電チャック23上に載置され、プラズマに晒される。第1の熱流束測定用部材Sは、板状形状を有し、
図2(a)には、その表裏面と直交する断面が示されている。第1の熱流束測定用部材Sの大きさ(表面の形状と面積)は、ウエハWと同等の条件でプラズマに晒されるように、ウエハWと同等であることが好ましい。
【0048】
第1の熱流束測定用部材Sを静電チャック23に載置してプラズマを発生させた状態で、第1層41と第3層43の温度を測定することにより第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束を求める。なお、第1層41と第3層43の温度は、第1の熱流束測定用部材Sに対して照射された低コヒーレンス光の反射光の光干渉を利用して求めるが、その方法の詳細については、
図3乃至
図7を参照して後述する。
【0049】
第1の熱流束測定用部材Sは、第1層41、第2層42及び第3層43がこの順序で積層された3層構造を有する。少なくとも第1層41及び第3層43は、第1のコリメータ54或いはコリメータ64から照射される低コヒーレンス光を透過する特性を有する。第2層42には、厚さ方向に貫通する孔部42aが設けられており、
図4を参照して後述するように、第1のコリメータ54或いはコリメータ64からは孔部42aを透過するように第1の熱流束測定用部材Sの厚さ方向(第1層41、第2層42及び第3層43の積層方向)に低コヒーレンス光が照射される。そのため、第2層42は、低コヒーレンス光を透過する特性を有していてもよいし、透過しない特性を有していても構わない。なお、孔部42aの直径は、例えば、第1のコリメータ54又はコリメータ64からの低コヒーレンス光の照射口径がφ1mmであれば、φ1.5mm〜φ3.0mmとすることができる。
【0050】
第1層41と第3層43は、熱伝導性に優れた材料で構成されていることが好ましく、例えば、シリコン(Si)が用いられる。これは、後述するように、第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束の測定では、第1層41及び第3層43では厚さ方向に温度勾配が生じていないことを前提とするため、第1層41内及び第3層43内で可能な限り温度勾配が生じないようにすることが好ましいからである。第1層41内及び第3層43内で可能な限り温度勾配が生じないようにするためには、後述する光路差(2n
1d
1,2n
3d
3)を測定することができる限りにおいて、第1層41内及び第3層43の厚さは薄いことが好ましい。
【0051】
また、第2層42は、第1層41及び第3層43とは異なる材料からなる。第2層42は、第1層41と第3層43との間に温度差が生じるように、第1層41及び第3層43を構成する材料よりも熱伝導性に劣る(熱伝導率が小さい)材料で構成されていることが好ましく、例えば、各種のガラスやセラミックスを用いることができる。第2層42の厚さは、第2層42を構成する材料の熱伝導率にも依存するが、熱伝導率が小さいほど厚さを薄くすることができるが、厚さを厚くすることで第1層41と第3層43との間の温度差を大きくして、測定精度を高めることができる。
【0052】
図2(b)は、第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束を測定する原理を模式的に示す図である。第1の熱流束測定用部材Sは、第3層43がプラズマ側、第1層41が静電チャック23側となるように配置されているものとする。プラズマのイオンフラックスが第3層43に入射し、イオンフラックスが熱に変わって第3層43から第1層41へ向けて流れるときの熱流束qは下記式1で表される。なお、式1において、“Q”は、第3層43から第1層41へ向けて流れる熱量である。“A”は、熱量Qが流れる面の伝熱面積であり、第1の熱流束測定用部材Sの表面の面積であるため、既知の値となる。
【0053】
第3層43の温度をT
2とし、第1層41の温度をT
1として、第3層43内では温度差がなく、第1層41内でも温度差がないものと仮定する。第2層42を構成する材料の熱伝導率を“k”、第2層42の厚さを“dx”とすると、第2層42での温度勾配dt/dxは“(T
1−T
2)/dx”となるため、下記式1は下記式2のように変形することができる。よって、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を求めることによって、熱流束qを求めることができる。
【0054】
[数1]
q=Q/A …式1
q=Q/A=−k×dt/dx=−k×(T
1−T
2)/dx …式2
【0055】
次に、第1の熱流束測定用部材Sにおける第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を測定する方法について説明する。
【0056】
なお、演算装置(パーソナルコンピュータ)は、CPUが、ROMやRAM或いはハードディスクドライブ等に格納された所定のソフトウエア(プログラム)を実行することにより各種の演算処理を行う。
【0057】
図3は、第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束を測定するために基板処理装置10に適用可能な第1の熱流束測定装置の概略構成を示すブロック図である。第1の熱流束測定装置50は、所謂、マイケルソン干渉計として構成されており、低コヒーレンス光源51、光検出器52、2×2カプラ53、第1のコリメータ54、第2のコリメータ55、参照ミラー56及び解析装置57を備える。低コヒーレンス光源51と2×2カプラ53との間の接続、光検出器52と2×2カプラ53の間の接続、2×2カプラ53と第1のコリメータ54及び第2のコリメータ55との間の接続はそれぞれ、光ファイバケーブルを用いて行われている。
【0058】
低コヒーレンス光源51は、第1の熱流束測定用部材Sの第1層41及び第3層43を透過する波長を有する低コヒーレンス光を出力する。前述の通り、第1層41及び第3層43はシリコンからなるため、低コヒーレンス光源51としては、例えば、中心波長λ
0が1.55μm又は1.31μm、コヒーレンス長が約50μmの低コヒーレンス光を最大出力1.5mWで出力するSLD(Super Luminescent Diode)等を用いることができる。
【0059】
第1のコリメータ54及び第2のコリメータ55はそれぞれ、平行光線として調整された低コヒーレンス光を出力する。第1のコリメータ54は第1の熱流束測定用部材Sへ低コヒーレンス光を照射してその反射光を受光し、第2のコリメータ55は参照ミラー56へ低コヒーレンス光を照射してその反射光を受光する。第1のコリメータ54及び第2のコリメータ55がそれぞれ受光した反射光は2×2カプラ53へ伝送される。
【0060】
2×2カプラ53は、低コヒーレンス光源51から出力される低コヒーレンス光を2つの光路に分岐させて、一方を第1のコリメータ54へ伝送すると共に他方を第2のコリメータ55へ伝送する。また、2×2カプラ53は、第1のコリメータ54から第1の熱流束測定用部材Sへ照射された低コヒーレンス光の第1の熱流束測定用部材Sからの反射光と、第2のコリメータ55から参照ミラー56へ照射された低コヒーレンス光の参照ミラー56からの反射光とを受光して、光検出器52へ伝送する。
【0061】
参照ミラー56は、第2のコリメータ55から照射される低コヒーレンス光の照射方向と平行な方向に不図示の駆動装置によって移動可能となっており、参照ミラー56の移動は解析装置57により制御される。
【0062】
光検出器52は、例えば、Geフォトダイオードであり、受光した反射光の干渉波形を解析装置57へ出力する。光検出器52から解析装置57へ出力される干渉波形の信号はアナログ電気信号である。そのため、解析装置57は、光検出器52から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、A/D変換器から受信した干渉波形データから光路長を算出し、算出した光路長から温度を算出するパーソナルコンピュータ等の演算装置とを有する。
【0063】
図4は、第1のコリメータ54から第1の熱流束測定用部材Sに低コヒーレンス光を照射したときに得られる反射光を説明する図である。第1のコリメータ54から第1の熱流束測定用部材Sの第1層41へ低コヒーレンス光を第1の熱流束測定用部材Sの厚さ方向に照射すると、照射した低コヒーレンス光の一部は、第1層41の外側表面で反射し、反射光Aとなって第1のコリメータ54へ入射し、2×2カプラ53へ進む。第1層41へ入射した低コヒーレンス光の一部は、第1層41の第2層42側の面(以下「内側表面」といい、第3層43の第2層42側の面も同様に称呼する)で反射し、反射光Bとなって第1のコリメータ54へ入射し、2×2カプラ53へ進む。また、第1層41の内側表面で反射した低コヒーレンス光の一部は、第1層41の外側表面で反射した後、再度、第1層41の内側表面で反射し、反射光Cとなって第1のコリメータ54へ入射し、2×2カプラ53へ進む。
【0064】
第2層42に形成された孔部42aへ入射した低コヒーレンス光の一部は、第3層43の内側表面で反射し、反射光Dとなって第1のコリメータ54へ入射し、2×2カプラ53へ進む。また、第3層43の内側表面で反射した低コヒーレンス光の一部は第1層41の外側表面で反射した後、再度、第1層41の内側表面で反射し、反射光Eとなって第1のコリメータ54へ入射し、2×2カプラ53へ進む。
【0065】
第3層43へ入射した低コヒーレンス光の一部は、第3層43の外側表面で反射し、反射光Fとなって第1のコリメータ54へ入射し、2×2カプラ53へ進む。なお、上記の反射光A〜F以外にも反射光は生じるが、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2の測定には、反射光A〜F(最小限、反射光D〜Fの3つ)があれば足りるため、説明を省略する。
【0066】
第1層41の厚さと屈折率をそれぞれ“d
1”,“n
1”とし、第3層の厚さと屈折率をそれぞれ“d
3”,“n
3”とすると、例えば、反射光A,B間の光路差、反射光B,C間の光路差、反射光D,E間の光路差はそれぞれ“2×n
1×d
1(以下「2n
1d
1」と記す)”となり、反射光D,F間の光路差は“2×n
3×d
3(以下「2n
3d
3」と記す)”となる。換言すれば、光路差2n
1d
1は、第1層41内をその厚さ方向に往復する低コヒーレンス光の第1層41内での光路長であり、光路差2n
3d
3は、第3層43内をその厚さ方向に往復する低コヒーレンス光の第3層43内での光路長である。そこで、第1の熱流束測定装置50を用いて、光路差2n
1d
1,2n
3d
3を測定する。
【0067】
図5は、第1の熱流束測定装置50を用いて
図4に示す反射光を取得したときの干渉波形の例を示す図である。反射光A〜Fと参照ミラー56からの反射光とは、参照ミラー56が特定の位置にあるとき、つまり、反射光A〜Fのそれぞれの光路長と参照ミラー56からの反射光の光路長とが一致したときに、強い干渉を示す。
図5中の「A」は反射光Aと参照ミラー56からの反射光との干渉によって現れた強い干渉波形を示しており、「B」〜「F」も同様である。なお、
図5において、例えば、反射光D,Eの各ピーク間の距離は、光路差2n
1d
1の半分の値であるn
1d
1である。よって、第1の熱流束測定用部材Sからの反射光を受光しながら参照ミラー56を移動させたときの参照ミラー56の移動距離に対して強い干渉波形が現れる位置を求めることにより、光路差2n
1d
1,2n
3d
3の半分の値であるn
1d
1,n
3d
3を測定することができる。
【0068】
ところで、第1層41と第3層43のそれぞれの厚さは、第1層41と第3層43をそれぞれ形成する材料の熱膨張率に依存して、温度によって変化する。よって、温度によって光路差2n
1d
1,2n
3d
3も変化する。そこで、事前に黒体炉等を用いて、第1の熱流束測定用部材Sでの低コヒーレンス光の反射光の光路差2n
1d
1,2n
3d
3(又はn
1d
1,n
3d
3)と第1の熱流束測定用部材Sの温度との関係を測定することによって校正データを作成しておき、解析装置57が備えるROM、不揮発性RAM或いはハードディスクドライブ等の記憶媒体に記憶させておく。
【0069】
図6は、作成した校正データの一例を示す図である。ここでは、第1層41と第3層43とは同じ材料からなり、且つ、第1層41の厚さd
1と第3層43の厚さd
3とが同じである例を示している。第1層41と第3層43とが異なる材料からなる場合や厚さが異なる場合には、第1層41と第3層43とのそれぞれについて校正データを作成しておけばよい。なお、このような校正データは、後述する第2の熱流束測定装置60、第3の熱流束測定装置70及び第4の熱流束測定装置80でも用いられる。
【0070】
第1の熱流束測定用部材Sを静電チャック23上に載置し、実際にウエハWに対してプラズマ処理を施す条件でプラズマを発生させた状態で、反射光A〜Fを取得しながら参照ミラー56を移動させることによって、
図5の干渉波形を取得する。そして、取得した干渉波形に基づき、プラズマ処理中の第1の熱流束測定用部材Sの第1層41及び第3層43のそれぞれの光路差2n
1d
1,2n
3d
3を求め、求めた光路差2n
1d
1,2n
3d
3と
図6の校正データとから、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を求める。こうして求めた温度T
1,T
2と上記式2と、第2層42の厚さdx(室温での厚さ)とから、イオンフラックスとして、第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束qを求めることができる。更に、伝熱面積Aが既知であるから、上記式1により熱量Qを求めることもできる。
【0071】
なお、第2層42の厚さdxもまた第2層42を形成する材料の熱膨張率によって温度によって変化する。よって、熱流束qをより正確に求めるためには、第2層42の室温での厚さを用いず、第2層42の孔部42aの屈折率(つまり、空気の屈折率)を“n
2”として、
図5に示す反射光B,D間の光路差(2×n
2×dx)を求め、この光路差から第2層42の厚さdxを求めるようにしてもよい。この場合には、屈折率n
2は温度に依存せずに一定であると仮定してよい。これに対して、第1層41及び第3層43がそれぞれ温度T
1,T
2にあるときの第2層42の厚さを、室温での第2層42の厚さと第2層42を形成する材料の熱膨張率とから計算により求めて、上記式2に適用してもよい。
【0072】
図7は、第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束を測定するために基板処理装置10に適用可能な第2の熱流束測定装置の概略構成を示すブロック図である。第2の熱流束測定装置60は、低コヒーレンス光源61、分光器62、光サーキュレータ63、コリメータ64及び解析装置65を備える。低コヒーレンス光源61と光サーキュレータ63との間の接続、分光器62と光サーキュレータ63との間、光サーキュレータ63とコリメータ64との間の接続はそれぞれ、光ファイバケーブルを用いて行われている。
【0073】
低コヒーレンス光源61は、第1の熱流束測定装置50を構成する低コヒーレンス光源51と同じである。光サーキュレータ63は、低コヒーレンス光源61から出力された低コヒーレンス光をコリメータ64へ伝送し、また、コリメータ64から伝送された第1の熱流束測定用部材Sからの反射光を解析装置65へ伝送する。コリメータ64は、第1の熱流束測定装置50を構成する第1のコリメータ54と同じ機能を有する。コリメータ64が受光する第1の熱流束測定用部材Sからの反射光は、
図4を参照して既に説明した通りである。
【0074】
分光器62は、大略的に、光分散素子と受光素子とで構成される。光分散素子は、光ファイバケーブルを通して伝送された反射光を波長毎に所定の分散角で分散させる。光分散素子には、例えば、回折格子を用いることができる。また、受光素子は、光分散素子により分散された反射光を受光することにより、受光した反射光スペクトル(強度vs波数)を検出する。受光素子としては、具体的には、複数のCCD素子が格子状に配置されたものが用いられる。
【0075】
受光素子は、前述の通り、CCD素子等の光電変換素子からなるため、分光器62から解析装置65へ出力される反射光スペクトルの信号はアナログ電気信号である。そのため、解析装置65は、分光器62から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、A/D変換器から受信した反射光スペクトルを示すデジタル信号に対してフーリエ変換処理を行って光路長を算出し、算出した光路長から温度を算出するパーソナルコンピュータ等の演算装置とを有する。
【0076】
第2の熱流束測定装置60を用いてコリメータ64から第1の熱流束測定用部材Sへ低コヒーレンス光を照射したときにも、
図4に示した反射光A〜Fが得られる。第2の熱流束測定装置60では、反射光A〜Fを分光器62により、例えば、波数に依存する反射数スペクトルに分光し、得られた反射数スペクトルに対してフーリエ変換を施す。ここでのフーリエ変換とは、波数(又は周波数又は波長)が変数の関数を距離が変数の関数に変換する処理である。これにより、距離軸に反射光A〜Fを示す各ピークが現れ、このとき、反射光D,Eの各ピーク間の距離が光路差2n
1d
1となり、反射光D,Fの各ピーク間の距離が光路差2n
3d
3となり、これらの光路差2n
1d
1,2n
3d
3と
図6の校正データとから、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を求めることができる。
【0077】
なお、第2の熱流束測定装置60を用いる場合、第1層41内での低コヒーレンス光の光路長である光路差2n
1d
1と第3層43内での低コヒーレンス光の光路長である光路差2n
3d
3との差は、低コヒーレンス光源61のコヒーレンス長より大きいことが必要となる。これは、これらの光路長が同じ場合には、第1層41に関わる反射光と第3層43に関わる反射光の波形が重なって分離できなくなるからである。
【0078】
次に、
図8乃至
図10を参照して、第1の熱流束測定用部材Sの変形例である第2の熱流束測定用部材S1と、第2の熱流束測定用部材S1を流れる熱流束qを測定するための第3の熱流束測定装置70及び第4の熱流束測定装置80について説明する。
【0079】
図8(a)は、第2の熱流束測定用部材S1の概略構造を示す断面図である。第2の熱流束測定用部材S1は、第1層41、第2層45び第3層43がこの順序で積層された3層構造を有する。第1層41及び第3層43は、第1の熱流束測定用部材Sを構成する第1層41及び第3層43と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0080】
第2層45は、第2の熱流束測定用部材S1に対して照射される低コヒーレンス光を透過しない特性を有する材料からなり、例えば、アルミナ焼結体等の各種セラミックスの焼結体を用いることができる。
【0081】
図8(b)は、第2の熱流束測定用部材S1に低コヒーレンス光を照射したときに得られる反射光を説明する図である。第2層45が低コヒーレンス光を透過しないために、第2の熱流束測定用部材S1に対しては、第1層41側から低コヒーレンス光を照射すると共にその反射光を受光する第1のコリメータ54が配置されると共に、第3層43側から低コヒーレンス光を照射すると共にその反射光を受光する第3のコリメータ71が配置される。第3のコリメータ71は、
図9(a)を参照して後述する第3の熱流束測定装置70が備えるコリメータの1つであり、第1のコリメータ54と同じものである。
【0082】
第1のコリメータ54から第2の熱流束測定用部材S1の第1層41へ低コヒーレンス光を第2の熱流束測定用部材S1の厚さ方向に照射すると、照射した低コヒーレンス光の一部は、第1層41の外側表面で反射し、反射光A´となって第1のコリメータ54へ入射する。第1層41へ入射した低コヒーレンス光の一部は、第1層41と第2層45との界面で反射し、反射光B´となって第1のコリメータ54へ入射する。また、第1層41と第2層45との界面で反射した低コヒーレンス光の一部は、第1層41の外側表面で反射した後、再度、第1層41と第2層45との界面で反射し、反射光C´となって第1のコリメータ54へ入射する。
【0083】
同様に、第3のコリメータ71から第2の熱流束測定用部材S1の第3層43へ低コヒーレンス光を第2の熱流束測定用部材S1の厚さ方向に照射すると、照射した低コヒーレンス光の一部は、第3層43の外側表面で反射し、反射光Gとなって第3のコリメータ71へ入射する。第3層43へ入射した低コヒーレンス光の一部は、第3層43と第2層45との界面で反射し、反射光Hとなって第3のコリメータ71へ入射する。また、第3層43と第2層45との界面で反射した低コヒーレンス光の一部は、第3層43の外側表面で反射した後、再度、第3層43と第2層45との界面で反射し、反射光Jとなって第3のコリメータ71へ入射する。
【0084】
図9(a)は、第2の熱流束測定用部材S1を流れる熱流束を測定するために基板処理装置10に適用可能な第3の熱流束測定装置70の概略構成を示すブロック図である。第3の熱流束測定装置70は、第1の熱流束測定装置50を第2の熱流束測定用部材S1に対して低コヒーレンス光を照射することができるように変形した構成となっており、そのため、第1の熱流束測定装置50と共通する構成要素(低コヒーレンス光源51、光検出器52、2×2カプラ53、第1のコリメータ54、第2のコリメータ55、参照ミラー56、解析装置57)については同じ符号を付して、ここでの説明を省略する。
【0085】
第3の熱流束測定装置70では、2×2カプラ53からの1つの出力先にスプリッタ72を接続し、スプリッタ72において低コヒーレンス光を2つの経路に分離させて、それぞれ、第1のコリメータ54と第3のコリメータ71へ伝送している。第1のコリメータ54及び第3のコリメータ71はそれぞれ、
図8(b)を参照して説明したように第2の熱流束測定用部材S1に対して低コヒーレンス光を照射すると共にその反射光を受光する。第1のコリメータ54及び第3のコリメータ71がそれぞれ受光した反射光は、スプリッタ72及び2×2カプラ53を介して光検出器52へ伝送される。
【0086】
なお、第3のコリメータ71は、プラズマに晒されない位置に配置する必要がある。そこで、例えば、基板処理装置10では、上部電極板27に孔部を設け、この孔部に第3のコリメータ71を収容して、静電チャック23上に載置された第2の熱流束測定用部材S1の第3層43へ低コヒーレンス光を照射する構成とする。
【0087】
図9(b)は、第3の熱流束測定装置70を用いて
図8(b)に示す反射光を取得したときの干渉波形の例を模式的に示す図である。なお、第3の熱流束測定装置70における反射光の解析方法は、第1の熱流束測定装置50における反射光の解析方法と同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0088】
図9(b)には、第1層41及び第3層43は同じ材料からなるが、厚さd3>厚さd1とした例が示されている。反射光A´,B´の各ピーク間の距離と反射光B´,C´の各ピーク間の距離は共に光路差2n
1d
1の半分の値であるn
1d
1となる。同様に、反射光G,Hの各ピーク間の距離と反射光H,Jの各ピーク間の距離は共に光路差2n
3d
3の半分の値であるn
3d
3となる。よって、第3の熱流束測定装置70により求めた光路差2n
1d
1,2n
3d
3と
図6と同様の校正データ(ここでは、第1層41と第3層43のそれぞれの厚さd
1,d
3が異なることから、光路差2n
1d
1,2n
3d
3のそれぞれについて準備したもの)とから、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を求め、求めた温度T
1,T
2と上記式2と、第2層45の厚さdxとから、イオンフラックスとして、第2の熱流束測定用部材S1を流れる熱流束qを求めることができる。
【0089】
図10(a)は、第2の熱流束測定用部材S1を流れる熱流束を測定するために基板処理装置10に適用可能な第4の熱流束測定装置80の概略構成を示すブロック図である。第4の熱流束測定装置80は、第2の熱流束測定装置60を、第2の熱流束測定用部材S1に対して低コヒーレンス光を照射することができるように変形した構成となっており、よって、第2の熱流束測定装置60と共通する構成要素(低コヒーレンス光源61、分光器62、解析装置65)については同じ符号を付して、ここでの説明を省略する。
【0090】
第4の熱流束測定装置80では、低コヒーレンス光源61から出力された低コヒーレンス光を2×2カプラ53(第1の熱流束測定装置50が備えるものと同じ)に入力し、2×2カプラ53から第1のコリメータ64´と、第2のコリメータ73へ出力する。なお、第1のコリメータ64´は第2の熱流束測定装置60が備えるコリメータ64と同じであり、第2のコリメータ73は第3の熱流束測定装置70が備える第3のコリメータ71と同じである。
【0091】
第1のコリメータ64´及び第2のコリメータ73はそれぞれ、
図8(b)を参照して説明したように第2の熱流束測定用部材S1に対して低コヒーレンス光を照射すると共にその反射光を受光する。第1のコリメータ64´及び第2のコリメータ73がそれぞれ受光した反射光は、2×2カプラ53を介して分光器62へ伝送される。
【0092】
図10(b)は、第4の熱流束測定装置80を用いて
図8(b)に示す反射光を取得し、フーリエ変換を行うことで得られるスペクトルの例を模式的に示す図である。なお、第4の熱流束測定装置80における反射光の解析方法は、第2の熱流束測定装置60における反射光の解析方法と同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0093】
フーリエ変換により、距離xに対して反射光A´,B´,C´,G,H、Jのそれぞれに対応するピークが現れる。反射光A´,B´の各ピーク間の距離と反射光B´,C´の各ピーク間の距離は共に光路差2n
1d
1を示す。同様に、反射光G,Hの各ピーク間の距離と反射光H,Jの各ピーク間の距離は共に光路差2n
3d
3を示す。よって、第4の熱流束測定装置80により求めた光路差2n
1d
1,2n
3d
3と
図6と同様の校正データ(第1層41と第3層43のそれぞれの厚さd
1,d
3が異なることから、光路差2n
1d
1,2n
3d
3毎に準備したもの)とから、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を求め、求めた温度T
1,T
2と上記式2と、第2層45の厚さdxとから、イオンフラックスとして、第2の熱流束測定用部材S1を流れる熱流束qを求めることができる。
【0094】
次に、
図11を参照して、第1の熱流束測定用部材Sの変形例である第3の熱流束測定用部材S2について説明する。
図11は、第3の熱流束測定用部材S2の概略構造を示す断面図である。第3の熱流束測定用部材S2は、第1層41、第2層46び第3層43がこの順序で積層された3層構造を有する。第1層41及び第3層43は、第1の熱流束測定用部材Sを構成する第1層41及び第3層43と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0095】
第2層46は、第3の熱流束測定用部材S2に対して照射される低コヒーレンス光を透過する特性を有し、且つ、第1層41及び第3層43とは異なる材料からなり、例えば、SiO
2系ガラスやサファイア(単結晶)等を用いることができる。
【0096】
第3の熱流束測定用部材S2は、第1の熱流束測定用部材Sと同様に用いられ、第3の熱流束測定用部材S2を流れる熱流束qの測定には、第1の熱流束測定装置50又は第2の熱流束測定装置60が用いられる。つまり、第3の熱流束測定用部材S2では、第2層46が低コヒーレンス光を透過するため、第3の熱流束測定用部材S2の厚さ方向に低コヒーレンス光を照射することで、
図4を参照して説明した反射光と同様の反射光が得られ、得られた反射光を解析することによって、光路差2n
1d
1,2n
3d
3を測定することができる。よって、測定した光路差2n
1d
1,2n
3d
3と
図6の校正データとから、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を求め、求めた温度T
1,T
2と上記式2と、第2層46の厚さdxとから、イオンフラックスとして、第2の熱流束測定用部材S1を流れる熱流束qを求めることができる。
【0097】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、例えば、第1の熱流束測定用部材Sの第3層43の表面がプラズマに晒される形態で説明したが、第1の熱流束測定用部材Sは、第1層41の表面がプラズマに晒されるように静電チャック23上に載置されてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、静電チャック23上に第1の熱流束測定用部材Sを載置したが、これに限られず、静電チャック23上に載置されたウエハW上に第1の熱流束測定用部材Sを重ねて載置してプラズマを発生させて第1の熱流束測定用部材Sを流れる熱流束qを測定してもよい。この場合には、ウエハWの裏面と表面からの反射光が加わるため、測定される干渉波形はより複雑になるが、干渉波形から第1層41及び第3層43について光路差2n
1d
1,2n
3d
3(又はその半分のn
1d
1,n
3d
3)を示す波形を抽出することによって、第1層41及び第3層43のそれぞれの温度T
1,T
2を測定することができることに変わりはない。また、この場合には、第1の熱流束測定用部材SとウエハWと間の界面での熱伝達をよくする手法を取り入れる必要がある。
【0099】
本発明の実施の形態に係る熱流束測定方法は、プラズマエッチングに限らず、ウエハWにプラズマCVDによる成膜等のプラズマを用いて各種の処理を行う基板処理装置に適用することができる。また、更に、基板処理装置は、ウエハWをプラズマ処理するものに限定されるものではなく、例えば、であるFPD(Flat Panel Display)用ガラス基板やフォトマスク、CD基板、プリント基板等のウエハW以外の基板を処理する基板処理装置であってもよい。