(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。説明には、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る電子線描画装置10の概略構成を示す図である。電子線描画装置10は、例えば真空度が10
−7Pa程度の環境下において、レジスト材がコーティングされたマスクやレチクルなどの試料(以下、基板という)120に、パターンを描画する装置である。
【0015】
図1に示されるように、電子線描画装置10は、電子線を基板120に照射する照射装置20、基板120が載置されるステージ装置51、ステージ装置51を収容する真空チャンバ50、照射装置20及びステージ装置51を制御する制御系100を備えている。
【0016】
照射装置20は、長手方向をZ軸方向とする鏡筒21と、鏡筒21の内部上方から下方に向かって順次配置される電子銃30、ブランキング電極41、電界レンズ42、アパーチャ43、走査電極44、及び対物レンズ45を備えている。
【0017】
鏡筒21は、下方が開放された円筒状のケーシングである。鏡筒21は、ステンレスからなり、接地されている。この鏡筒21は、真空チャンバ50の上方に設置され、真空チャンバ50内部に位置する部分は、その直径が下方(−Z方向)に向かって小さくなるテーパー形状となっている。
【0018】
電子銃30は、前記鏡筒21の内部上方に配置されている。この電子銃30は、例えば熱陰極型の電子銃である。
【0019】
図2は、電子銃30の構成を示す概略図である。
図2に示されるように、電子銃30は、碍子31、碍子31の中央から下方へ突出する加熱電極33及び陰極34、陰極34を包囲するように設けられるウェネルト電極35、陰極34の下方に配置される陽極36、碍子31の内部に埋め込まれたセンサ電極32を有している。
【0020】
碍子31は、直径が約60cmの円形板状の部材である。この碍子31の直径は鏡筒21の内径とほぼ等しく、鏡筒21の内部上方に固定されている。また、碍子31は、アルミナを素材とし、内部にセンサ電極32が埋め込まれている。
【0021】
加熱電極33は、一対の電極からなり、碍子31の下面中央に設けられている。加熱電極33は、電流が流れると発熱する。このため、加熱電極33に支持される陰極34は、一定温度以上に維持される。
【0022】
陰極34は、碍子31の下面中央で、加熱電極33に支持されている。陰極34は、例えば、六ホウ化ランタン(LaB
6)からなり、下端が約100nm程度になるように整形されている。
【0023】
ウェネルト電極35は、直径が約20cmで、例えば、鉄やステンレスからなる。ウェネルト電極35は、陰極34を包囲するように配置され、下方に開口35aが形成されている。このウェネルト電極35は、陰極34から下方に射出された電子線を集束させる。
【0024】
陽極36は、銅などからなる円形の部材であり、中央に開口36aが形成されている。この陽極36は、中央に形成された開口36aが陰極34の鉛直下方に位置した状態で、水平に支持されている。
【0025】
図3は、センサ電極32の平面図である。
図3に示されるように、センサ電極32は、銅やアルミニウムなど、電気抵抗の小さい金属からなる環状の部材である。センサ電極32の厚さは約1mm、幅は約1cmであり、内径Aは約50cmである。このセンサ電極32は、碍子31の内部に配置されている。このため、電子線描画装置10を構成する導体部からは絶縁された状態になっている。
【0026】
図2に示されるように、センサ電極32は、陰極34が設けられる碍子31の下面の近傍、つまり碍子31の下面から距離bのところに埋め込まれている。本実施形態に係る電子銃30では、距離bは約1mmである。また、
図3に示されるように、XY面内において、センサ電極32の中心は、ウェネルト電極35の中心と一致している。このため、ウェネルト電極35の外側の縁からセンサ電極32の内側の縁までの距離aは約15cmで、ウェネルト電極35の外側の縁から鏡筒21の内壁面までの距離Lは約20cmとなっている。
【0027】
ここで説明の便宜上、
図3に着色して示される環状領域Rを定義する。環状領域Rは、ウェネルト電極35の外縁と碍子31の外縁とで規定される環状の領域である。この環状領域R内に環状のセンサ電極領域が含まれることになる。
【0028】
図1に戻り、前記ブランキング電極41は、電子銃30の下方に配置されている。ブランキング電極41は、X軸方向に相互に対向するように配置された1対の電極を有している。そして、走査装置104によって印加される電圧に応じて、電子銃30から射出された電子線を+X方向又は−X方向へ偏向する。
【0029】
例えば、ブランキング電極41には、ハイレベルとローレベルの2値の電圧信号が入力される。ブランキング電極41では、入力された電圧信号がハイレベルの時に、電極間に電界が生じ、電子線が偏向されブランキングされる。そのため、描画パターンに基づいて変調した電圧信号を、ブランキング電極41に入力することで、基板120に所望のパターンを描画することができる。また、ハイレベルの電圧信号をブランキング電極41に入力することで、電子線をブランキングさせることができる。
【0030】
前記電界レンズ42は、ブランキング電極41の下方に配置された環状のレンズである。ブランキング電極41は、当該ブランキング電極41を通過する電子線を集束させる。
【0031】
前記アパーチャ43は、中央に電子線が通過する開口が設けられた板状の部材である。アパーチャ43は、電界レンズ42を通過した電子線が収束する点近傍に配置されている。電子線は、アパーチャ43の開口を通過することで、スポットの外径及び形状が整形される。また、電子線がブランキング電極によって偏向されたときには、電子線は、アパーチャ43によって遮蔽される。これにより、基板120に対して、電子線がブランキングされる。
【0032】
前記走査電極44は、アパーチャ43の下方に配置されている。この走査電極44は、X軸方向に相互に対向するように配置される1対の電極と、Y軸方向に相互に対向するように配置される1対の電極とを有している。そして、走査装置104によって印加される電圧に応じて、アパーチャ43を通過した電子線をX軸方向又Y軸方向へ偏向する。
【0033】
前記対物レンズ45は、走査電極44の下方に配置され、走査電極44を通過した電子線を、ステージ装置51に載置された基板120の表面に集束させる。
【0034】
真空チャンバ50は、直方体状の中空部材であり上面には円形の開口が形成されている。上述した照射装置20の鏡筒21は、真空チャンバ50の上面に形成された開口に挿入されている。
【0035】
ステージ装置51は、真空チャンバ50の内部に配置されている。ステージ装置51は、パターンが描画される基板120をほぼ水平に保持した状態で、XY平面内で移動することが可能なステージである。
【0036】
制御系100は、照射装置20及びステージ装置51を制御するためのシステムである。この制御系100は、制御装置101、表面電位計102、高圧電源装置103、走査装置104、ステージ駆動装置105を有している。
【0037】
図4は、制御装置101のブロック図である。
図4に示されるように、制御装置101は、CPU(Central Processing Unit)101a、主記憶部101b、補助記憶部101c、入力部101d、表示部101e、インタフェース部101f、及び上記各部を接続するシステムバス101gを有するコンピュータである。
【0038】
CPU101aは、補助記憶部101cに記憶されたプログラムを読み出して実行する。CPU101aの具体的な動作については後述する。
【0039】
主記憶部101bは、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを有している。主記憶部101bは、CPU101aの作業領域として用いられる。
【0040】
補助記憶部101cは、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリなどの不揮発性メモリを有している。補助記憶部101cは、CPU101aが実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。また、CPU101aによる処理結果などを含む情報を順次記憶する。
【0041】
入力部101dは、キーボードや、マウスなどのポインティングデバイスを有している。ユーザの指示は、入力部101dを介して入力され、システムバス101gを経由してCPU101aに通知される。
【0042】
表示部101eは、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示ユニットを有している。表示部101eは、例えば、電子線描画装置10のステータスや、描画パターンなどに関する情報を表示する。
【0043】
インタフェース部101fは、LANインタフェース、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、アナログインタフェースなどを備えている。表面電位計102、高圧電源装置103、走査装置104、及びステージ駆動装置105は、インタフェース部101fを介して、制御装置101に接続される。
【0044】
上述のように構成される制御装置101は、表面電位計102、高圧電源装置103、走査装置104、及びステージ駆動装置105を統括的に制御する。
【0045】
表面電位計102は、接地された鏡筒21の電位を基準に、センサ電極32の電位を、配線39を介して計測する。そして、計測結果を、制御装置101へ出力する。
【0046】
高圧電源装置103は、電子銃30の陰極34及びウェネルト電極35と、陽極36の間に高電圧を印加する。本実施形態では、陽極36の電位が0Vであり、陰極34の電位が−51kVであり、ウェネルト電極35の電位が−50kVとなっている。
【0047】
走査装置104は、制御装置101の指示に基づいて、ブランキング電極41、電界レンズ42、走査電極44、対物レンズ45を制御する。
【0048】
ステージ駆動装置105は、制御装置101の指示に基づいて、ステージ装置51を駆動し、基板120の移動や位置決めなどを行う。
【0049】
上述のように構成された電子線描画装置10では、基板120への描画開始指令が入力されると、制御装置101を構成するCPU101aが、補助記憶部101cに記憶されたプログラムを読みだす。そして、CPU101aが、読みだしたプログラムに基づいて、基板120に対するパターンの描画を開始する。
【0050】
具体的には、CPU101aは、ステージ駆動装置105を介して、ステージ装置51を駆動し、基板120を照射装置20の下方に位置決めする。
【0051】
次に、CPU101aは、高圧電源装置103を駆動して、電子銃30に電圧を印加する。これにより、電子銃30から下方に電子線が射出される。
【0052】
照射装置20の電子銃30から電子線が射出されると、CPU101aは、走査装置104を介して、電界レンズ42を制御し、電子線をアパーチャ43の開口近傍(クロスポーバーポイント)に集束させる。このとき、電子線は、アパーチャ43の開口を通過することで、スポットの外径及び形状が整形される。アパーチャ43を通過した電子線は、一旦交差した後、対物レンズ45に入射する。CPU101aは、走査装置104を介して、対物レンズ45を制御して、対物レンズ45に入射した電子線をステージ装置51に保持された基板120の表面に結像する。
【0053】
CPU101aは、上記動作と並行して、走査装置104を介して、描画パターンに基づいて変調された2値の電圧信号を、ブランキング電極41に入力する。これにより、電子線が所定のタイミングで偏向されブランキングが間欠的に実行される。また、CPU101aは、走査装置104を介して、走査電極44に印加する電圧を制御して、電子線をX軸方向又はY軸方向に偏向し、基板120に対する電子線の入射位置の調整を行う。これにより、ステージ装置51に保持された基板120の上面が電子線で走査され、基板120にパターンが描画される。
【0054】
高圧電源装置103によって、電子銃30を構成する陰極34とウェネルト電極35に電圧が印加されたときには、
図3に示される環状領域Rにおける電位分布は、内側から外縁に向かって大きくなる特性を示す。
【0055】
図5は、環状領域Rにおける電位分布を示す図である。
図5に示されるグラフでは、横軸がウェネルト電極35の外縁から碍子31の外縁までの位置xを示す。また、縦軸は、位置xにおける電位Vsを示す。
【0056】
ウェネルト電極35の外縁での電位は、ウェネルト電極35の電位と等しい。このため位置0(x=0)での電位−V1は、−50kVとなる。また、碍子31の外縁での電位は、接地された鏡筒21の電位と等しい。このため位置L(x=L)での電位は、0kVとなる。また、
図5に示されるように、環状領域Rの電位は、内側から外側に向かって高くなっている。ウェネルト電極35(x=0)の近傍では、電位が急峻に変化し、碍子31の外縁(x=L)に近づくにつれて、電位は緩やかに変化する。
【0057】
上述したように、環状領域Rの電位は、ウェネルト電極35から碍子31まで連続して分布し、通常は大きく変動することはない。しかしながら、例えば、碍子31の表面が帯電すると、碍子31下面の環状領域Rの電位分布は、
図6を参照するとわかるように、曲線L1に示される状態から順次、曲線L2に示される状態、曲線L3に示される状態、曲線L4に示される状態、曲線L5に示される状態へ移行することがある。
【0058】
この場合、当初、距離L(=20cm)についての電位差がV1(=50kV)であったところ、距離L−a(=5cm)についての電位差がV1(=50kV)となる。
【0059】
碍子31の素材となるアルミナの場合は、バルクの耐電圧が1000kV/m程度である。一般に、絶縁物の沿面耐電圧は、バルクの耐電圧の10分の1程度となるので、アルミなからなる碍子31の沿面耐電圧は100kV/mと考えることができる。このため、碍子31の素材がアルミナである場合であり、ウェネルト電極35の電位が−50kVである場合には、位置aでの電位Vsが、−50kV程度になると碍子31表面での絶縁が破壊され、異常放電が生じるおそれがある。なお、異常放電が生じる直前の電位分布は、おおよそ
図6の曲線L5に示される状態になると考えられる。
【0060】
図3に示されるように、センサ電極32は、ウェネルト電極35から距離a離れたところに位置している。このため、センサ電極32の電位は、
図6に示される位置aでの碍子31の下面の電位にほぼ等しくなる。そこで、CPU101aは、表面電位計102からの出力信号に基づいて、位置aにおける碍子31の電位を検出し監視する。そして、監視結果に基づいて、異常放電による描画エラーを回避するための、描画エラー回避処理を行う。
【0061】
描画エラー回避処理は、センサ電極32の電位を監視することにより、異常放電の発生を予測し、異常放電の発生が予測される場合に、パターンの描画を一旦停止するものである。以下、
図7を用いて、描画エラー回避処理について説明する。
【0062】
図7に示されるフローチャートは、CPU101aが行う一連の処理を示すフローチャートである。この一連の処理は、基板120に対するパターンの描画が行われているときに実行される。
【0063】
描画エラー回避処理では、CPU101aは、最初のステップS101で、表面電位計102からの出力信号に基づいて、センサ電極32の電位Vsを検出する。
【0064】
次のステップS102では、CPU101aは、センサ電極32の電位Vsが閾値Th1以下であるか否かを判断する。
図6に示されるように、閾値Th1は、位置0での電位f(0)が−V1(=−50kV)である場合に、f(a)よりも小さくなり、位置L/2での電位g(L/2)が−V1である場合に、g(a)よりも大きくなるように設定される。本実施形態では、閾値Th1の値は−7.5kV程度である。
【0065】
CPU101aは、ステップS102で、センサ電極32の電位Vsが閾値Th1より大きいと判断した場合には(ステップS102:No)、ステップS101へ戻る。そして、ステップS101,S102の処理を繰り返し実行する。
【0066】
一方、CPU101aは、ステップS102で、センサ電極32の電位Vsが閾値Th1以下であると判断した場合には(ステップS102:Yes)、ステップS103へ移行する。センサ電極32の電位Vsが閾値Th1以下になるときは、
図6を参照するとわかるように、碍子31と鏡筒21との間の電位分布が、例えば曲線L4に示されるようになっている。この場合、CPU101aは、碍子31の表面で、沿面放電が発生すると予測して、ステップS103以降の処理を実行する。
【0067】
ステップS103では、CPU101aは、基板120へのパターンの描画を停止する。具体的には、CPU101aは、走査装置104に、電子線のブランキングを指示する。走査装置104は、ブランキングの指示を受けると、ブランキング電極41を駆動して、電子線のブランキングを行う。これにより、電子線が、
図1の破線に示されるように偏向し、アパーチャ43によって遮蔽される。
【0068】
ステップS104では、CPU101aは、ウェネルト電極35に印加される電圧を、−50kVよりも低い電圧に変更する。具体的には、CPU101aは、高圧電源装置103に、印加電圧の降圧を指示する。これにより、陰極34,ウェネルト電極35の印加電圧が−10%程度降圧され、陰極34への印加電圧が−56kV程度となり、ウェネルト電極35への印過電圧が−55kV程度となる。これにより、ウェネルト電極35と鏡筒21との間で、放電が誘発される。
【0069】
次のステップS105では、CPU101aは、表面電位計102からの出力信号に基づいて、センサ電極32の電位Vsを検出する。
【0070】
次のステップS105では、CPU101aは、センサ電極32の電位Vsが閾値Th2以上であるか否かを判断する。ステップS104の処理により、陰極34及びウェネルト電極35への印加電圧が降圧されている。このため、閾値Th2は、閾値Th1と同程度の値でもよいが、やや小さい値としてもよい。
【0071】
CPU101aは、ステップS105で、センサ電極32の電位Vsが閾値Th2より小さいと判断した場合には(ステップS106:No)、ステップS105へ戻る。そして、ステップS105,S106の処理を繰り返し実行する。
【0072】
一方、CPU101aは、ステップS106で、センサ電極32の電位Vsが閾値Th2以上であると判断した場合には(ステップS106:Yes)、ステップS107へ移行する。ウェネルト電極35と鏡筒21との間で放電が生じると、ウェネルト電極35と鏡筒21との間に位置する環状領域Rの電位分布は、
図6の曲線L1に示される状態に戻る。このため、ステップS104の処理により、ウェネルト電極35と鏡筒21との間で放電が発生したときは、CPU101aによって、センサ電極32の電位Vsが閾値Th2以上であると判断されることになる。
【0073】
ステップS107では、CPU101aは、ウェネルト電極35に印加される電圧を、復帰させる。具体的には、CPU101aは、高圧電源装置103に、印加電圧の復帰を指示する。これにより、陰極34への印加電圧が−51kVとなり、ウェネルト電極35への印過電圧が−50kVとなる。
【0074】
次のステップS108では、CPU101aは、基板120に対する描画を再開する。具体的には、CPU101aは、走査装置104に、電子線のブランキングの停止を指示する。走査装置104は、ブランキングの停止指示を受けると、ブランキング電極41の駆動を停止して、電子線のブランキングを解除する。これにより、電子線によるパターンの描画が再開する。
【0075】
CPU101aは、ステップS108での処理が完了すると、ステップS101へ戻る。そして、ステップS101乃至S108までの処理を繰り返し実行する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態では、碍子31に埋め込まれたセンサ電極32の電位が検出される(ステップS101)。そして、センサ電極32の電位と閾値Th1とが比較され(ステップS102)、センサ電極32の電位が閾値Th1以下になったときには(ステップS102:Yes)、碍子31の下面で沿面放電が発生すると判断され、電子線のブランキングが実行される。これにより、基板120に対するパターンの描画が停止する(ステップS103)。
【0077】
また、パターンの描画が停止しているときにも、センサ電極32の電位が検出され(ステップS105)、センサ電極32の電位と閾値Th2とが比較される(ステップS106)。そして、センサ電極32の電位が閾値Th2以上になったときには(ステップS106:Yes)、碍子31の下面で沿面放電が発生し、碍子31の絶縁が回復したと判断され、パターンの描画が再開される(ステップS108)。
【0078】
上述のように、本実施形態では、碍子31の下面で沿面放電が発生すると予測されたときには、一旦パターンの描画が中止される。このため、碍子31の表面の異常放電による悪影響を排除して、基板120にエラーのないパターンを描画することが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、センサ電極32の電位を、表面電位計102を用いて検出した。これに限らず、センサ電極32の電位を、電界計を用いて検出してもよい。
【0080】
本実施形態では、
図3に示されるように、センサ電極32が環状である場合について説明した。これに限らず、例えば、
図8に示されるように、複数のセンサ電極32を、直径Aの円に沿って配置してもよい。複数のセンサ電極32の電位を個別に計測することで、沿面放電が生じる頻度が高い位置を特定することが可能となる。
【0081】
本実施形態では、
図3に示されるように、ウェネルト電極35からの距離がaの位置に、センサ電極32が配置されている場合について説明した。これに限らず、
図9に示されるように、ウェネルト電極35からの距離が異なる複数のセンサ電極32それぞれの電位を計測することとしてもよい。また、
図9に示されるセンサ電極32それぞれは、
図8に示されるように、複数の電極から構成されていてもよい。
【0082】
本実施形態では、沿面放電の発生が予測された場合に、ウェネルト電極35の印加電圧を降圧して、沿面放電を誘発することとした。これに限らず、ウェネルト電極35の印加電圧を変更することなく、沿面放電の発生を待つこととしてもよい。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。