特許第6181273号(P6181273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181273B細胞悪性腫瘍の症状の治療のための抗CD19メイタンシンノイドイムノコンジュゲート抗体の使用
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  • 特許6181273-B細胞悪性腫瘍の症状の治療のための抗CD19メイタンシンノイドイムノコンジュゲート抗体の使用 図000016
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181273
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】B細胞悪性腫瘍の症状の治療のための抗CD19メイタンシンノイドイムノコンジュゲート抗体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170807BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170807BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170807BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   A61K39/395 EZNA
   A61K39/395 TZMD
   A61K39/395 C
   A61K39/395 L
   A61P35/00
   A61P35/02
   C07K16/28
【請求項の数】24
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-226407(P2016-226407)
(22)【出願日】2016年11月22日
(62)【分割の表示】特願2014-510798(P2014-510798)の分割
【原出願日】2012年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-81926(P2017-81926A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】11290232.5
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】モラリユー,ロデイカ
【審査官】 井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−514646(JP,A)
【文献】 51st ASH Annual Meeting and Exposition Online Program and Abstracts, 2009,,[online][2015.1.20検索],URL,https://ash.confex.com/ash/2009/webprogram/Paper24729.html
【文献】 View of NCT00796731 on 2011_04_13, ClinicalTrials.gov archive[online], 2011.04.13,[2016.01.20検索],URL,https://clinicaltrials.gov/archive/NCT00796731/2011_04_13
【文献】 Clin. Cancer Res., 2009, vol.15, No.12, p.4038-4045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
A61P 35/02
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする患者におけるCD19+B細胞悪性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートを含み、
ここで、前記抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、約55mg/m2の初回投与量で前記患者に投与され、および、初回投与量の投与の後に、55mg/m2の抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、約1週間の間隔を置いて投与される3回の後続投与量が続いて投与され、および、55mg/m2の抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、約2週間の間隔を置いて投与される4回のさらなる後続投与量が続いて投与され、
そして、前記抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、CD19抗原に特異的に結合し、以下のCDR:
a)SNWMH(配列番号4)を含む重鎖CDR1;EIDPSDSYTN(配列番号5)を含む重鎖CDR2;GSNPYYYAMDY(配列番号6)を含む重鎖CDR3;および、
b)SASSGVNYMH(配列番号1)を含む軽鎖CDR1;DTSKLAS(配列番号2)を含む軽鎖CDR2;HQRGSYT(配列番号3)を含む軽鎖CDR3;
を含む抗体を含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
前記抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの投与が、目に関連した有害事象を最少化する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
すべてのグレードの目に関連した有害事象の発生率が40%未満である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
グレード3または4の目に関連した有害事象が13%未満である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記CD19+B細胞悪性腫瘍が、白血病またはリンパ腫である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記リンパ腫が、非ホジキンリンパ腫(NHL)である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記白血病が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記非ホジキンリンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)またはワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(WM)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記非ホジキンリンパ腫が、再発したまたは不応性のB細胞非ホジキンリンパ腫である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記非ホジキンリンパ腫が、CD19を発現する非ホジキンリンパ腫である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記患者が、非ホジキンリンパ腫に関してすでに治療されている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記患者が、リツキシマブ療法に失敗している、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記非ホジキンリンパ腫が、リツキシマブ抵抗性疾患である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記患者が、自己のまたは同種異系の幹細胞移植を受けている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは静脈内投与される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記メイタンシノイドがDM4である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗体が、切断可能なリンカーによりDM4にコンジュゲートされている、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記切断可能なリンカーがN−サクシニミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが、SPDBリンカーによりDM4にコンジュゲートされたHuB4抗体を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが、以下の式:
【化1】

を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗体が配列番号7で示される配列を有する軽鎖および配列番号8で示される配列を有する重鎖を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートがHuB4抗体を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートがHuB4−DM4コンジュゲートである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
3.5分子のDM4がSPDBリンカーにより各HuB4抗体分子に結合している、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞悪性腫瘍の症状の治療のための抗CD19メイタンシンノイドイムノコンジュゲートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B細胞およびそれらの悪性対応物により発現される細胞表面分子は、免疫療法の重要な標的を表す。
【0003】
CD19は、ほとんどのB細胞で発現されるが、形質細胞、幹細胞または正常な骨髄細胞系列では検出されない、Bリンパ球系の最も初期の分化抗原である。
【0004】
したがって、CD19は、骨髄腫以外のすべてのB細胞由来の新生物(B細胞非ホジキンリンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病)の腫瘍細胞で発現される。
【0005】
B細胞非ホジキンリンパ腫(B−NHL)は、米国における5番目に頻度の高い悪性腫瘍であり、特に高齢の患者において罹病率が増加し続けている。血液悪性腫瘍を有する患者が過去十年間にわたって従来の薬物療法を用いる治療最適化の利益を受けてきた一方、大多数の患者はなお、その病気のために死亡し、薬物療法は毒性の高いままである。したがって、リンパ腫患者の生存率および生活の質を改善するための新しい療法の開発に向けた将来の努力は、特異的に癌細胞を標的とし、改善された安全性および有効性を示すストラテジーを含まなければならない。
【0006】
HuB4−DM4は、強力なチューブリン阻害剤であるメイタンシノイド誘導体DM4に、ジスルフィド結合によってコンジュゲートされたCD19抗原を特異的に標的とする、ヒト化IgG1モノクローナル抗体、huB4で構成された抗体−薬剤コンジュゲートである。HuB4−DM4コンジュゲート、SAR3419の構造が図1に開示され、該抗体の重鎖および軽鎖の配列が付属の配列表中に列挙され、上記軽鎖は配列番号7において表される配列を有し、上記重鎖は配列番号8において表される配列を有する。
【0007】
CD19抗原に結合した後、HuB4−DM4コンジュゲートはインターナリゼーションおよびDM4の細胞内放出を経る。
【0008】
ファースト・イン・マン(first−in−man)試験TED6828において、不応性の/再発したCD19+NHLを有する患者に3週間毎に1回で6サイクル(N=39)、7つの投与量レベル(10mg/mから270mg/m)でIV投与したHuB4−DM4コンジュゲートSAR3419が試験された(N=39)。最大耐容量(MTD)は、3週間毎の160mg/mであった。投与量制限毒性は、可逆的な角膜毒性であった。最も頻繁な薬物関連毒性は、患者の43.5%において観察された眼毒性(すべてのグレード)であり、15.4%がグレード3/4であった。角膜上皮上の小嚢胞の沈着(角膜毒性)を伴う視力障害から主として成る毒性は、すべての症例において可逆的であった。
【0009】
この試験の予備段階の結果がASH 2009の要旨集に発表された(Younesら、ASH ANNUAL Meeting Abstracts、 2009年、14
(22):585頁)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Younesら、ASH ANNUAL Meeting Abstracts、 2009年、114(22):585頁
【発明の概要】
【0011】
HuB4−DM4コンジュゲートによる治療に起因する毒性、特に眼毒性を、別の投与レジメンによりHuB4−DM4コンジュゲートを投与することによって低減可能であることがここに見出された。
【0012】
コンジュゲートSAR3419が、B細胞非ホジキンリンパ腫、特にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する患者の治療を可能とすることがさらに示された。
【0013】
本発明は、本明細書中に開示された方法、組成物および物品に関する。
【0014】
一態様において、本発明は、それを必要とする患者におけるCD19+B細胞悪性腫瘍の症状の治療方法であって、治療有効量の抗−CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートを上記患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0015】
特定の実施態様において、上記方法は、治療に起因する眼毒性を低減する投与レジメンにより治療有効量の抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートを上記患者に投与するステップを含む。
【0016】
ある実施態様において、この毒性は、HuB4−DM4コンジュゲートによる治療に起因する。
【0017】
この方法の別の特定の実施態様において、目に関連した(すべてのグレードの)有害事象の発生率は40%未満である。
【0018】
この方法の別の特定の実施態様において、目に関連したグレード3または4の有害事象の発生率は、13%未満である。
【0019】
この方法は安全であり、効果的である。
【0020】
本発明は主に、それを必要とする患者におけるCD19+B細胞悪性腫瘍の症状の治療に関するが、細胞中のCD19がどんな発現レベルであってもB細胞悪性腫瘍の症状が治療可能である。
【0021】
したがって、別の態様において、本発明はそれを必要とする患者におけるB細胞悪性腫瘍の症状の治療方法であって、治療有効量の抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートを上記患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0022】
これらの治療方法は、約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの初回投与量を患者に投与するステップおよび約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの複数の後続投与量を該患者に投与するステップを含むことができ、ここで、後続投与量は、互いに約1週間の時間で隔てられる。
【0023】
この方法の特定の実施態様において、初回投与量の投与後に、互いに1週間の時間で隔てられる少なくとも6回の投与量の投与が続く。別の実施態様において、初回投与量の後
に、互いに約1週間の時間で隔てられる少なくとも7回または8回の投与量の投与が続く。
【0024】
この方法の別の特定の実施態様において、初回投与量の投与後に、互いに約1週間の時間で隔てられる6回から14回までの間の投与量の投与が続く。別の実施態様において、初回投与量の投与後に、7回から13回までの間の投与量、または8回から12回までの間の投与量の投与が続く。
【0025】
したがって、この特定の実施態様において、上記方法は、
・約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの初回投与量を患者に投与するステップ、および
・約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、互いに約1週間の時間で隔てられる少なくとも6回の後続投与量を該患者に投与するステップ
を含む。
【0026】
この治療方法は、約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの後続投与量を投与するさらなるステップを含むことができ、ここで、該投与量は、互いに約2週間の時間で隔てられる。
【0027】
この方法のこの特定の実施態様において、初回投与量の投与後に、互いに約1週間の時間で隔てられる少なくとも3回の投与量の投与、次いで、互いに約2週間の時間で隔てられる少なくとも3回の投与量の投与が続く。この実施態様は、本願において一般に、毎週/2週間毎またはqw/q2wまたはさらに最適化されたスケジュールと称される。
【0028】
したがって、この特定の実施態様において、上記方法は、
・約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの初回投与量を患者に投与するステップ、
・約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、互いに約1週間の時間で隔てられる少なくとも3回の後続投与量を、該患者に投与するステップ、および
・約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、互いに約2週間の時間で隔てられる少なくとも3回の後続投与量を、該患者に投与するステップ
を含む。
【0029】
CD19+B細胞悪性腫瘍は、CD19細胞表面抗原を発現する任意の悪性腫瘍として定義される。
【0030】
上記CD19+B細胞悪性腫瘍の症状は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の症状などの白血病の症状または非ホジキンリンパ腫(NHL)の症状などのリンパ腫の症状であってよい。
【0031】
非ホジキンリンパ腫の症状は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)またはワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(WM)であってよい。
【0032】
この方法の特定の実施態様において、上記非ホジキンリンパ腫の症状は、再発した/不応性のB細胞非ホジキンリンパ腫である。
【0033】
この方法の別の特定の実施態様において、上記非ホジキンリンパ腫の症状は、CD19
を発現するB細胞非ホジキンリンパ腫である。
【0034】
この方法の別の特定の実施態様において、上記患者は、非ホジキンリンパ腫の症状をすでに治療済みである。特に、上記患者は、すでに療法、特に、化学療法またはリツキシマブ療法が失敗していてもよい。
【0035】
この方法の別の特定の実施態様において、上記非ホジキンリンパ腫の症状は、リツキシマブ抵抗性疾患である。
【0036】
この方法の別の特定の実施態様において、上記患者は、自己のまたは同種異系の幹細胞移植を受けている。
【0037】
この方法の特定の実施態様において、抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、DM4にコンジュゲートされたCD19抗原に特異的に結合する抗体を含む。
【0038】
CD19抗原に特異的に結合する抗体は、切断可能なリンカー、特にN−サクシニミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)リンカーによりDM4にコンジュゲートすることができる。
【0039】
この方法の特定の実施態様において、抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、SPDBによってDM4にコンジュゲートされたCD19抗原に特異的に結合する抗体を含み、ここで、約3.5分子のDM4がSPDBリンカーにより各huB4分子に結合されている。
【0040】
特定の実施態様において、抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、以下の式:
【0041】
【化1】
を有する。
【0042】
一実施態様において、上記抗体は6個の相補性決定領域(CDR)を含み、該CDRは、配列番号1から6において表される配列を有する。
【0043】
別の実施態様において、抗体は軽鎖を含み、ここで、該軽鎖の配列は、配列番号7において示される配列と、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有する。
【0044】
さらに別の実施態様において、抗体は重鎖を含み、ここで、該重鎖の配列は、配列番号8において示される配列と、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性を有する。
【0045】
別の実施態様において、本発明の抗体は、Roguskaら(Proc. Natl.
Acad. Sci. USA、91:969−973頁、1994年)に記載のヒト化抗体huB4である。本発明による抗体huB4は、軽鎖および重鎖を含み、該軽鎖は配列番号7において表される配列を有し、該重鎖は配列番号8において表される配列を有する。特定の実施態様において、上記コンジュゲートは、HuB4−DM4コンジュゲートである。
【0046】
一態様において、本発明は、CD19+B細胞悪性腫瘍の症状と診断されたヒト患者を、約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの初回投与量を該患者に投与するステップ;および約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、複数の後続投与量を該患者に投与するステップを含み、ここで、後続投与量が、互いに1週間の時間で隔てられる方法によって治療するための、抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートを提供する。
【0047】
一態様において、本発明は、CD19+B細胞悪性腫瘍の症状と診断されたヒト患者を、約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの初回投与量を該患者に投与するステップ;次いで、約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、互いに約1週間の時間で隔てられる、複数の後続投与量を該患者に投与するステップ;および、さらなるステップにおける、約55mg/mの抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートの、互いに約2週間の時間で隔てられる、複数の後続投与量を該患者に投与することを含む方法によって治療するための、抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートを提供する。
【0048】
別の態様において、本発明は、
・包装材料
・抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲート、および
・上記抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが、約55mg/mの初回投与量、および約55mg/mの量の、互いに1週間の時間で隔てられる複数の後続投与量で患者に投与されることを表示した、上記包装材料内に含まれたラベルまたは添付文書を含む、製品を提供する。
【0049】
別の態様において、本発明は、
・包装材料
・抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲート、および
・上記抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが、約55mg/mの初回投与量、次いで、約55mg/mの量の、互いに1週間の時間で隔てられる複数の後続投与量、次いで、約55mg/mの量の、互いに2週間の時間で隔てられる複数の後続投与量で患者に投与されることを表示した、上記包装材料内に含まれたラベルまたは添付文書
を含む、製品を提供する。
【0050】
一態様において、本発明は、
・包装材料
・抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲート、および
・上記抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが、遅発性の蓄積された毒性などの毒性のリスク、特に、眼毒性のリスクを最小化するために、約55mg/mの投与
量で患者に投与されることを表示した、上記包装材料内に含まれたラベルまたは添付文書を含む、製品を提供する。
【0051】
かかる包装材料は、角膜毒性、末梢感覚神経障害および感覚異常症などの蓄積毒性またはかかる毒性の強度増加を少なくとも部分的に引き起こすと考えられる薬剤の蓄積を制限するために、上記抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが、約55mg/mの投与量(互いに、1週間の時間で隔てられる4回の投与量、次いで、互いに2週間の時間で隔てられる4回の後続投与量)で患者に投与されることを表示している。
【0052】
特定の実施態様において、上記包装材料内に含まれたラベルまたは添付文書は、目に関連した(すべてのグレードの)有害事象の発生率が、40%、30%または25%未満であることを示している。
【0053】
特定の実施態様において、上記包装材料内に含まれたラベルまたは添付文書は、目に関連したグレード3/4の有害事象の発生率が、13%、10%または5%未満であることを示している。
【0054】
眼毒性は、患者において観察される眼疾患により特徴づけられる。
【0055】
眼疾患は、当業者が参照しうる、2009年5月28日に出版された、U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICESによる「Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)」と題した文書のバージョン3.0に定義されている。
【0056】
この文書によれば、眼疾患は、それらの重症度によって等級づけされる有害事象(AE)によって分類される。
【0057】
CTCAEは、この一般的ガイドラインに基づいて、各AEについての重症度の独自の臨床記述によりグレード1から5を表示する。
グレード1軽度;無症候性または弱い症状;臨床的または診断的観察のみ;介入は示唆されない。
グレード2中程度;最小の、局所的または非侵襲性の介入が示唆される;年齢に応じた手段的日常生活動作(ADL)を制限する。
グレード3重度または医学的に顕著な、しかし、直ちに生命を脅かさない;入院または入院の延長が示唆される;身体障害;セルフケアADLを制限する。
グレード4生命を脅かす結末;緊急の介入が示唆される。
グレード5AE関連死。
【0058】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、
・有効量の抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲート、および
・不活性または生理学的に活性であってよい、医薬として許容可能な担体
を含む、医薬組成物内で投与することができる。
【0059】
本明細書中で使用されるとおり、「医薬として許容可能な担体」は、生理学的に適合性の任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤を含む。好適な担体、希釈剤および/または賦形剤の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上並びにそれらの組み合わせを含む。多くの場合、糖、ポリアルコールまたは塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含むことが好ましい。特に、好適な担体の関連する例は:(1)約1mg/mlから25mg/mlのヒト血清アルブミンを含むまたは含まない、pH約7.4のダルベ
ッコリン酸緩衝生理食塩水、(2)0.9%食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム(NaCl))、および(3)5%(w/v)デキストロースを含み;トリプタミンなどの抗酸化剤およびTween20などの安定化剤も含んでよい。
【0060】
別の実施態様において、抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが静脈内投与される。しかしながら、他の様式の腸管外投与も使用可能である:例えば、筋肉内、腹腔内または皮下。
【0061】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートが静脈内投与される場合、それはボーラスとしてまたは典型的に10分から4時間までの間の時間を構成する期間にわたる持続輸注により投与することができる。
【0062】
別の実施態様において、それらは、局所並びに全身性の治療効果を発揮するために、筋肉内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、腫瘍内、腫瘍周囲、病変内または病変周囲経路により注射される。
【0063】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、様々な形態で投与することができる。これらは、例えば、液体、半固体および固体剤形を含むが、該形態は意図される投与様式および治療用途に依存する。
【0064】
典型的な組成物は、注射用または輸注用溶液の形態にある。
【0065】
腸管外投与のための滅菌組成物は、必要量の抗−CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートを適切な溶媒中に取り込み、続いて、精密ろ過によって滅菌することにより調製されることができる。溶媒またはビヒクルとして、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにそれらの組み合わせが使用されてよい。多くの場合、糖、ポリアルコールまたは塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含むことが好ましい。これらの組成物は、アジュバント、特に湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤および安定化剤も含有してよい。腸管外投与のための滅菌組成物は、使用時に滅菌水または他の任意の注射用滅菌媒体中に溶解されることのできる滅菌固体組成物の形態で調製されてもよい。
【0066】
抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートは、治療されている特定の疾患に必要な化学療法剤などのさらなる治療剤とともに投与してよい。好ましくは、抗CD19メイタンシノイドイムノコンジュゲートおよび該補助的活性剤は、互いに有害な影響を与えない相補的活性を有する。
【0067】
かかる化学療法剤は、同時に、半同時に、別個にまたは同時投与の最大の効果を得るような時間間隔をあけて投与してよく;各投与は、急速投与から持続輸注まで、その持続時間が変化することが可能である。
【0068】
当業者は、特にEP1651162を参照して本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】HuB4−DM4コンジュゲート、SAR3419の構造を示す図である。
図2】投与量レベルによる治療反応を示すグラフである。
図3】組織像による治療反応を示すグラフである。
図4】MTDにおける、経時的な腫瘍の縮小を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下の実施例は、本発明による組み合わせを例解する。
【実施例】
【0071】
実施例1] 再発した/不応性のCD19陽性B細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者に毎週投与したHuB4−DM4コンジュゲート(試験TED6829)
試験の目的
一次的:
・再発したまたは不応性のB細胞NHLを有する患者に単剤として毎週1回IV投与した場合に観察された投与量制限毒性(DLT)によって、SAR3419最大耐容量(MTD)を決定するため。
【0072】
二次的:
・SAR3419の全体的な安全性プロフィールを特徴づけするため。
・SAR3419の薬物動態(PK)プロフィールを評価するため。
・SAR3419の薬力学(PD)評価を実施するため。
・SAR3419の潜在的免疫原性を評価するため。
・抗リンパ腫活性の予備的証拠を評価するため。
【0073】
方法
試験デザイン
・CD19抗原を発現している不応性のまたは再発したB細胞NHLを有する成人患者が登録された。
・投与量増加は、3+3デザインにおける安全性に基づいた。
・治療の最初の3週間の間の所定のDLT発生によって投与量増加を指導した。推奨投与量を定めるために、治療期間中の遅発性または蓄積性の毒性も考慮可能であった。
・30mLの透明ガラスバイアル中で供給される活性物質に関する25mg/25mL(1mg/mL)の輸注のための溶液として、SAR3419 Drug Productが利用可能であった。
・単剤としてのSAR3419が、8回の投与量を毎週1回、IV投与された。患者のために臨床的に有益でありうる任意のさらなる治療を、研究者およびスポンサーの間で検討し、合意することができた。
・各輸注前に、50mgIVのジフェンヒドラミンおよび経口の650mgのアセトアミノフェンが必要であった。
【0074】
評価
・試験登録時、8回の投与量後および最後の治療の42−49日後(EOT)に、コンピュータ断層撮影法(CT)および/またはポジトロン放出断層撮影法(PET)によるスキャンを実施した。応答者を、1年まで、3か月毎に追跡した。
・ベースライン、治療の間の特定の時点およびEOTにおいて収集した血液サンプルを用いてPKおよび免疫原性評価を実施した。
【0075】
結果
結果を以下の表1−7に要約する。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
結論
8−12回の投与量のSAR3419の毎週のスケジュールを用いて、最大耐容量は5
5mg/m/週である。
・SAR3419は、無痛性および高悪性度のNHLの両方で、MTDにおけるORRが33%であり、有望な活性を示した。
・25人(58%)の患者において腫瘍の縮小が観察された。
・全体として、SAR3419は、患者あたりの投与量数中央値8およびMTDにおける比較薬剤強度中央値0.96で、耐容性良好である。注目すべきは、顕著な骨髄抑制のないことであり、SAR3419を慣用の化学療法と併用されるべき魅力的なADCとしている。毎週のスケジュールにおいて眼毒性(すべてのグレード)は22%(2%のグレード3/4)であるが、3週の投与レジメンにおいては、眼毒性(すべてのグレード)は、15.4%のグレード3/4を含んで43.5%であった。
・治療前後の対のバイオプシーは、腫瘍中のDM4蓄積がCD19タンパク質発現レベルおよび有糸分裂阻止の減少を示すことを可能とし、薬剤の作用メカニズムを確認した。
・毎週の投薬後の薬剤蓄積を示すPKデータによって裏付けられた、2種の遅発性のグレード3の毒性(視神経症および感覚異常症)の臨床的証拠に基づいて、4週間毎の55mg/mの投与量、その後の2週間毎に1回の追加の4回の投与量から成る最適化されたスケジュールを評価するためにプロトコールを補正した。
【0084】
実施例2] 再発した/不応性のCD19陽性B細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者に、毎週、次いで2週間毎に投与した(qw/q2wスケジュール)HuB4−DM4コンジュゲート(補正された臨床試験TED6829)
3−4週間の治療後に定常状態に達することを示すPKデータにより裏付けられた発症の遅い2種の遅発性毒性の臨床的証拠に基づいて、55mg/mの4週間毎の投与量、その後の2週間毎に1回の追加の4回の投与量から成る最適化されたスケジュールを評価するために、実施例1に記載のプロトコールを補正した(進行中)。
【0085】
試験の目的および方法は、4回の毎週の投与量、その後の4回の2週間毎のRDである投与量から成るスケジュールにおいて単剤としてSAR3419を投与したこと以外は、実施例1と同一である。
【0086】
さらに、SAR3419 Drug Productは、30mLの透明ガラスバイアル中で供給される、活性物質に関して125mg/25mL、すなわち、5mg/mlの輸注用濃縮溶液として利用可能であった。
【0087】
最適化されたスケジュールにより25人の患者を治療するために、実施例1の試験を拡張した。
【0088】
結果
結果を以下の表8−12に要約する。
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
【表12】
【0094】
結論
投与した投与量数の中央値は、計画した8であり、RDにおける比較薬剤強度の中央値は1.0[0.8−1.0]であった。
【0095】
最も頻繁な関連TEAEは、5人(23.8%)の患者における無力症(1つの事象はグレード3)および7人(33%)の患者における胃腸障害であった。可逆的なグレード1の視力障害/角膜事象が1人の患者に発生した。グレード3−4の血液毒性は最小限であった。
【0096】
16人(64%)の患者において腫瘍の縮小が観察された。7人(28%)の患者は、
1人のCRおよび3人のComplete Response(CRu)を含む客観的反応を達成した。応答率は、侵攻性疾患(3/9DLBCL患者)において本質的に維持された。
【0097】
結論として、4回の毎週の投与量、それに続く4回の2週間毎の投与量から成るスケジュールは、臨床的有効性が侵攻性リンパ腫において本質的に維持されるとともに、先に試験したスケジュールに比較して改善された安全性プロフィールを示す。
【0098】
全体的結論
この試験の間に、SAR3419のMTD/RDは、55mg/m(最大耐容量)と決定された一方、最大投与量(MAD)は70mg/mであった。
【0099】
最適化された投与スケジュール(毎週/2週間毎の55mg/m)は、発生頻度およびADC(角膜)/DM4(神経、消化および血液)関連毒性の重症度の明白な臨床における制御とともに、先に試験したスケジュールに比較して改善された安全性プロフィールを示した。
【0100】
両方の投与スケジュールで、患者のおよそ30%では55mg/mのMTD/RDで、特に高悪性度の組織像(DLBCL)を有する患者ではその投与量で毎週/2週間毎の推奨投与スケジュールで、抗リンパ腫活性を観察した。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]