特許第6181366号(P6181366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181366荷電粒子ビーム描画方法、荷電粒子ビーム描画プログラムおよび荷電粒子ビーム描画装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181366
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画方法、荷電粒子ビーム描画プログラムおよび荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20170807BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20170807BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01L21/30 541D
   G03F7/20 504
   H01J37/305 B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-271995(P2012-271995)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-120495(P2014-120495A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】仲田 純人
(72)【発明者】
【氏名】山村 光
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 修
(72)【発明者】
【氏名】鶴巻 秀幸
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−192666(JP,A)
【文献】 特開平09−260247(JP,A)
【文献】 特開2011−066054(JP,A)
【文献】 特開平07−142321(JP,A)
【文献】 特開2001−035769(JP,A)
【文献】 特開2007−043083(JP,A)
【文献】 特開2012−043988(JP,A)
【文献】 特開2002−373856(JP,A)
【文献】 特開2000−133567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/30−37/36
H01L21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の位置座標を荷電粒子ビーム描画装置に記憶し、
荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第1の時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、前記特定の位置座標と関連づけられ、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第2の時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを前記荷電粒子ビーム描画装置に記憶し、
前記荷電粒子ビーム描画装置を用いて前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第1の時間間隔パターンに定義された前記第1の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第1の描画を行い、
描画が前記特定の位置座標に到達した際、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を行い、
描画が前記特定の位置座標に到達した後、前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第2の時間間隔パターンに定義された前記第2の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第2の描画を行い、
前記第2の時間間隔が時間経過に伴い大きくなることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項2】
前記特定の位置座標が、前記描画パターンを描画する際のショット密度の変化率が所定の変化率を超える位置を特定することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項3】
前記第2の時間間隔前記第1の時間間隔よりも狭いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項4】
特定の位置座標を荷電粒子ビーム描画装置に記憶する処理と、
荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第1の時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、前記特定の位置座標と関連づけられ、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第2の時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを前記荷電粒子ビーム描画装置に記憶する処理と、
前記荷電粒子ビーム描画装置を用いて前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第1の時間間隔パターンに定義された前記第1の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第1の描画する処理と、
描画が前記特定の位置座標に到達した際、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を行う処理と、
描画が前記特定の位置座標に到達した後、前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第2の時間間隔パターンに定義された前記第2の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第2の描画する処理と、を前記荷電粒子描画装置に搭載されるコンピュータに実行させ
前記第2の時間間隔が時間経過に伴い大きくなることを特徴とする荷電粒子ビーム描画プログラム。
【請求項5】
特定の位置座標を記憶する第1の記憶部と、
荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第1の時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、前記特定の位置座標と関連づけられ、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第2の時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを記憶する第2の記憶部と、
前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、前記試料上に所定の描画パターンを描画する描画部と、
描画位置をモニタする描画位置モニタ部と、
前記第1の時間間隔パターンに定義された前記第1の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行い、前記描画位置モニタ部で得られる描画位置の情報に基づき、前記特定の位置座標に到達した後、前記第1の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断から、前記第2の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断に変更し、前記第2の時間間隔パターンに定義された前記第2の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行う機能を有するドリフト診断制御部と、を備え
前記第2の時間間隔が時間経過に伴い大きくなることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画方法、荷電粒子ビーム描画プログラムおよび荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに所望の回路パターンを形成するために、リソグラフィー技術が用いられる。リソグラフィー技術では、マスク(レチクル)と称される原画パターンを使ったパターンの転写が行われる。そして、高精度なレチクルを製造するために、優れた解像度を備える電子ビーム描画技術が用いられる。
【0003】
マスクに電子ビーム描画を行う電子ビーム描画装置の一方式として、可変成形方式がある。可変成形方式では、例えば第1成形アパーチャの開口と、第2成形アパーチャの開口とを通過することで成形され、偏向器により偏向制御された電子ビームによって、可動ステージに載置された試料上に図形が描画される。電子ビームの1回の照射はショットと称される。
【0004】
マスクへの描画中または描画の待機中に、電子ビームの照射位置が所望の位置からずれるドリフト(またはビームドリフト)が生ずる場合がある。例えば、マスクに電子ビームが照射されると反射電子が発生する。発生した反射電子は、電子ビーム描画装置内の光学系や検出器などに衝突してチャージアップが生じ、新たな電界が発生する。そうするとマスクへ向けて偏向照射された電子ビームの軌道が変化する。このような、チャージアップが電子ビームのドリフトの一原因となる。
【0005】
電子ビームのドリフト量が許容範囲を超えるとパターンの描画精度が劣化する。そのため、電子ビームのドリフト量を描画中にモニタするためのドリフト診断が行われる。そして、ドリフト診断の結果、得られたドリフト量に応じてドリフトを補正するドリフト補正が行われる。
【0006】
特許文献1には、描画される領域の面積密度の変化量に基づき、ドリフト補正を実行する時間間隔を変更する電子ビーム描画方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−192666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
描画パターンが微細になると、許容されるドリフト量は小さくなる。したがって、描画中のドリフト診断の時間間隔(インターバル)を短くすることが望まれる。もっとも、時間間隔を短くすると描画のスループットが悪化し、例えばマスクの製造コストが高くなり問題となる。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、描画中のドリフト診断の時間間隔の設定を最適化し、高い描画精度と高いスループットを両立させる荷電粒子ビーム方法、描画粒子ビーム描画プログラムおよび荷電粒子ビーム描画装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、特定の位置座標を荷電粒子ビーム描画装置に記憶し、荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第1の時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、前記特定の位置座標と関連づけられ、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第2の時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを前記荷電粒子ビーム描画装置に記憶し、前記荷電粒子ビーム描画装置を用いて前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第1の時間間隔パターンに定義された前記第1の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第1の描画を行い、描画が前記特定の位置座標に到達した際、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を行い、描画が前記特定の位置座標に到達した後、前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第2の時間間隔パターンに定義された前記第2の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第2の描画を行い、前記第2の時間間隔が時間経過に伴い大きくなることを特徴とする。
【0011】
上記態様の荷電粒子ビーム描画方法において、前記位置座標が、前記描画パターンを描画する際のショット密度の変化率が所定の変化率を超える位置を特定することが望ましい。
【0012】
上記態様の荷電粒子ビーム描画方法において、前記第2の時間間隔パターンが前記第1の時間間隔パターンよりも狭い前記時間間隔を定義することが望ましい。
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画プログラムは、特定の位置座標を荷電粒子ビーム描画装置に記憶する処理と、荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第1の時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、前記特定の位置座標と関連づけられ、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第2の時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを前記荷電粒子ビーム描画装置に記憶する処理と、前記荷電粒子ビーム描画装置を用いて前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第1の時間間隔パターンに定義された前記第1の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第1の描画する処理と、描画が前記特定の位置座標に到達した際、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を行う処理と、描画が前記特定の位置座標に到達した後、前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、描画の合間に前記第2の時間間隔パターンに定義された前記第2の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行いながら前記試料上に所定の描画パターンを描画する第2の描画する処理と、を前記荷電粒子描画装置に搭載されるコンピュータに実行させ、前記第2の時間間隔が時間経過に伴い大きくなることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、特定の位置座標を記憶する第1の記憶部と、荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第1の時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、前記特定の位置座標と関連づけられ、前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する第2の時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを記憶する第2の記憶部と、前記荷電粒子ビームを試料上に照射し、前記試料上に所定の描画パターンを描画する描画部と、描画位置をモニタする描画位置モニタ部と、前記第1の時間間隔パターンに定義された前記第1の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行い、前記描画位置モニタ部で得られる描画位置の情報に基づき、前記特定の位置座標に到達した後、前記第1の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断から、前記第2の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断に変更し、前記第2の時間間隔パターンに定義された前記第2の時間間隔で前記荷電粒子ビームのドリフト量の診断を繰り返し行う機能を有するドリフト診断制御部と、を備え、前記第2の時間間隔が時間経過に伴い大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、描画中のドリフト診断の時間間隔の設定を最適化し、高い描画精度と高いスループットを両立させる荷電粒子ビーム描画方法、荷電粒子ビーム描画プログラムおよび荷電粒子ビーム描画装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
図2】第1の実施の形態における描画方法のフローを示す図である。
図3】第1の実施の形態における描画方法の説明図である。
図4】第1の実施の形態における時間間隔パターン変更の説明図である。
図5】第3の実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
図6】第3の実施の形態における描画方法のフローを示す図である。
図7】第4の実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
図8】第4の実施の形態における描画方法のフローを示す図である。
図9】第4の実施の形態における描画方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。ただし、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等、その他の荷電粒子を用いたビームでもかまわない。
【0018】
また、実施の形態においては、描画パターンが描画される「試料」の一例として半導体等の製造に用いられるマスク基板(またはマスク)を例に説明する。
【0019】
本明細書中、「描画データ」とは、試料に描画するパターンの基データである。描画データはCAD等で設計者により生成された設計データを、描画装置内での演算処理が可能となるようフォーマットを変換したデータである。図形等の描画パターンが、例えば、図形の頂点等の座標で定義されている。
【0020】
また、本明細書中、「ショット」とは、荷電粒子ビームの1回の照射を意味する。
【0021】
また、本明細書中、「ショット密度」とは、描画領域中の単位面積当たりのショット数または描画中の単位時間当たりのショット数を意味する。
【0022】
また、本明細書中、「描画中」とは、実際に試料に荷電粒子ビームを照射している時のみならず、荷電粒子ビームの照射の前後も含む広い意味での描画処理の最中を表す概念とする。
【0023】
また、本明細書中「イベント」とは、ドリフト量の診断を行う時間間隔パターンを変更する契機となる事象を意味する。
【0024】
また、本明細書中、「ドリフト量の診断」または「ドリフト診断」とは、描画中に生ずる荷電粒子ビームの照射位置の所望の位置からのずれ量(ドリフト量)の測定を意味する。
【0025】
また、本明細書中、「ドリフト補正」とは、ドリフト量の診断結果に基づいて行われる荷電粒子ビームのドリフトの補正を意味する。ドリフト量がゼロまたは僅少なためドリフトの補正を行わない、いわゆるゼロ補正も「ドリフト補正」に含まれるものとする。
【0026】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の電子ビーム描画装置は、ドリフト量の診断を実行する位置座標を記憶する第1の記憶部と、荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、位置座標と関連づけられ、荷電粒子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを記憶する第2の記憶部と、荷電粒子ビームを試料上に照射し、試料上に所定の描画パターンを描画する描画部と、描画位置をモニタする描画位置モニタ部と、第1または第2の時間間隔パターンに基づき荷電粒子ビームのドリフト量の診断を行い、描画位置モニタ部で得られる描画位置の情報に基づき、第1の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断から、第2の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断に変更する機能を有するドリフト診断制御部と、を備える。
【0027】
実施の形態の電子ビーム描画装置は、上記構成を備えることにより、上記位置座標に描画が到達した際に、ドリフト診断を行い、ドリフト診断を行う時間間隔パターンを変更する。これにより、適切なドリフト診断が実行され、高い描画精度と高いスループットを両立させることが可能となる。本実施の形態においては、上記位置座標が、その特定の位置を境にドリフト量が大きく変化することが予期される位置の位置座標である場合を例に説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
【0029】
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例となる。そして、描画装置100は、試料101に所望するパターンを描画する。
【0030】
描画部150は、電子鏡筒102、描画室103を有している。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランキング(BLK)偏向器212、ブランキング(BLK)アパーチャ214、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。
【0031】
また、描画室103内には、移動可能に配置されたXYステージ105が配置されている。また、XYステージ105上には、試料101が配置されている。試料101として、例えば、ウェハにパターンを転写する露光用のマスク基板が含まれる。マスク基板としては、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0032】
制御部160は、入力部111、描画データ記憶部109、プログラム記憶部152、第1の記憶部154、第2の記憶部156、描画位置モニタ部172、駆動回路108、偏向制御回路110、デジタルアナログ変換機(DAC)112、114、116、制御計算機120、及びバッファメモリ121を有している。制御計算機120には、ドリフト診断制御部122等の機能が設けられている。
【0033】
描画データ記憶部109には、マスク101上に描画するパターンの描画データが記憶される。プログラム記憶部152には、制御計算機120に各処理を実行させる制御プログラムが記憶される。第1の記憶部154には、ドリフト診断を実行する位置であり、第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンへの変更の契機となる位置座標が記憶される。第2の記憶部156には、電子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第1および第2の時間間隔パターンが記憶される。
【0034】
制御計算機120には、入力部111、描画データ記憶部109、プログラム記憶部152、第1の記憶部154、第2の記憶部156、描画位置モニタ部172、駆動回路108、偏向制御回路110、バッファメモリ121等がバスを介して接続されている。偏向制御回路110は、DAC112、114、116に接続される。DAC112は、BLK偏向器212に接続されている。DAC114は、偏向器205に接続されている。DAC116は、偏向器208に接続されている。
【0035】
制御計算機120には、描画データ記憶部109に記憶された描画データが入力される。また、制御計算機120は、例えば、プログラム記憶部152に記憶される制御プログラムによって各処理が実行される。制御計算機120に入力される情報或いは演算処理中及び処理後の各情報はその都度、例えば、バッファメモリ121に記憶される。
【0036】
ドリフト診断制御部122は、描画位置モニタ部172で得られる描画位置の情報に基づき、第1の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断から、第2の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断に変更する機能を有する。
【0037】
照射部の一例となる電子銃201から電子ビーム200が照射される。電子銃201から出た電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。
【0038】
第1のアパーチャ203で、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。その結果、電子ビーム200は成形される。
【0039】
そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208により偏向される。その結果、連続移動するXYステージ105上の試料101の所望する位置に照射される。XYステージ105の移動は、駆動回路108によって駆動される。偏向器205の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC114によって制御される。偏向器208の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC116によって制御される。
【0040】
描画位置モニタ部172は、マスク101のどの位置を電子ビームにより描画しているかモニタする。例えば、レーザ干渉計を用いてXYステージ105の位置を把握し、描画位置を特定する。
【0041】
ここで、試料101上の電子ビーム200が、所望する照射量を試料101に入射させる照射時間tに達した場合、以下のようにブランキングする。すなわち、試料101上に必要以上に電子ビーム200が照射されないようにするため、例えば静電型のBLK偏向器212で電子ビーム200を偏向すると共にBLKアパーチャ214で電子ビーム200をカットする。これにより、電子ビーム200が試料101面上に到達しないようにする。BLK偏向器212の偏向電圧は、偏向制御回路110及びDAC112によって制御される。
【0042】
ビームON(ブランキングOFF)の場合、電子銃201から出た電子ビーム200は、図1における実線で示す軌道を進むことになる。一方、ビームOFF(ブランキングON)の場合、電子銃201から出た電子ビーム200は、図1における点線で示す軌道を進むことになる。また、電子鏡筒102内および描画室103内は、図示していない真空ポンプにより真空引きされ、大気圧よりも低い圧力となる真空雰囲気となっている。
【0043】
上記構成の描画装置100を用いて、マスク101上への描画パターンの描画が行われる。
【0044】
図1では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分について記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。
【0045】
また、図1では、コンピュータの一例となる制御計算機120で、ドリフト診断制御部122といった各機能の処理を実行するように記載しているが、これに限るものではない。例えば、電気的な回路によるハードウェアにより実施させても構わない。或いは、電気的な回路によるハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、かかるハードウェアとファームウェアとの組合せでも構わない。
【0046】
図2は、本実施の形態における描画方法のフローを示す図である。以下、図2に示す描画方法のフローを参照して、描画装置100を用いた電子ビーム描画方法について説明する。
【0047】
本実施の形態の電子ビーム描画方法は、ドリフト量の診断を実行する位置座標を電子ビーム描画装置に記憶し、電子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、位置座標と関連づけられ、電子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを電子ビーム描画装置に記憶し、描画装置を用いて電子ビームを試料上に照射し、描画の合間に第1の時間間隔パターンに基づき電子ビームのドリフト量の診断を行いながら試料上に所定の描画パターンを描画する第1の描画を行い、描画が位置座標に到達した際、電子ビームのドリフト量の診断を行い、描画が上記位置座標に到達した後、電子ビームを試料上に照射し、描画の合間に第2の時間間隔パターンに基づき電子ビームのドリフト量の診断を行いながら試料上に所定の描画パターンを描画する第2の描画を行う。
【0048】
まず、描画に先立ち、ドリフト量の診断を実行する位置座標を描画装置100に記憶させる(S1)。入力は、例えば、電子記録媒体の読み取り機能を備える入力部111から位置座標を電子データとして読み込ませる。または、キーボードを備える入力部111から位置座標を直接入力することも可能である。読み込まれた時間間隔パターンは、第1の記憶部154に記憶される。
【0049】
上記位置座標は、例えば、その特定の位置を境にドリフト量が大きく変化することが予期される位置の位置座標である。例えば、描画パターンの図形形状の変化が生ずる位置や、描画条件の変化が生ずる位置など、描画に関係するパラメータが変化する位置である。
【0050】
位置座標は、例えば、マスク101上のXY座標である。X座標またはY座標のいずれか一方であってもかまわない。
【0051】
本実施の形態では、例えば、2つの位置座標、すなわち、第1の位置座標と第2の位置座標を記憶させる(S1)。
【0052】
次に、電子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第1、第2および第3の時間間隔パターンを電子ビーム描画装置100に記憶させる(S2)。時間間隔パターンは、描画中に、描画を休止して行うドリフト診断の時間間隔を定義している。第2の時間間隔パターンは、上記第1の位置座標と関連づけられる。すなわち、第1の位置座標に描画位置が到達した際に発生する第1の位置座標到達イベントと関連づけられる。また、第3の時間間隔パターンは、上記第2の位置座標と関連づけられる。すなわち、第2の位置座標に描画位置が到達した際に発生する第2の位置座標到達イベントと関連づけられる。
【0053】
第1の時間間隔パターンと第2の時間間隔パターンとは、それぞれ異なる時間間隔を定義してもよい。例えば、第2の時間間隔パターンが第1の時間間隔パターンよりも狭い時間間隔を定義する。すなわち、第2の時間間隔パターンによれば、描画パターンを描画中に、第1の時間間隔パターンよりも高い頻度でドリフト量の診断を行うことになる。
【0054】
また、例えば、第1の時間間隔パターンが等間隔の時間間隔パターンを定義し、第2の時間間隔パターンが第1の時間間隔パターンよりも更に狭い間隔の等間隔の時間間隔パターンを定義するものであってもかまわない。
【0055】
入力は、例えば、電子記録媒体の読み取り機能を備える入力部111から、第1および第2の時間間隔パターンを電子データとして読み込ませる。読み込まれた時間間隔パターンは、第2の記憶部156に記憶される。
【0056】
描画パターンを描画する際、まず、制御計算機120は、描画データ記憶部109から描画データを読み込む。描画データは、例えば、入力部111から描画装置100に取り込まれる。入力部111は、入力手段の一例であり、例えば、外部メモリから情報を読み取る読み取り装置である。
【0057】
次に、照射部の一例となる電子銃201から電子ビーム200をマスク101に照射し、マスク101上に所定の描画データに基づく描画パターンを描画する(S3−1:第1の描画)。
【0058】
第1の描画中、描画の合間に第1の時間間隔パターンに基づき電子ビームのドリフト量の診断を行う(S4−1:第1のドリフト診断)。そして、マスク101上に、ドリフト量の診断結果に基づきドリフト補正を行いながら所定のパターンを描画する(第1の描画)。すなわち、描画−第1のドリフト診断−描画のサイクルを繰り返す。このドリフト診断の時間間隔の制御は、ドリフト診断制御部122によって行われる。ドリフト診断は、描画途中に、その都度、パターンの描画を停止した状態で行われる。
【0059】
第1の描画中は、描画位置モニタ部172により、描画位置がモニタされる。そして、描画が第1の位置座標に到達する(S3−2)。第1の位置座標に到達することにより、第1の位置座標到達イベントが発生する。
【0060】
第1の位置座標に到達した際、ドリフト量の診断が行われる。そして、第1の位置座標到達後、第2の描画中に第1の時間間隔パターンにかえて、第2の時間間隔パターンに基づき電子ビームのドリフト量の診断を行う(S4−2)。そして、マスク101上に、ドリフト量の診断結果に基づきドリフト補正を行いながら所定のパターンを描画する(S3−3:第2の描画)。すなわち、描画−第2のドリフト診断−描画のサイクルを繰り返す。
【0061】
ここで、ドリフト診断制御部122が、描画位置モニタ部172で得られる描画位置の情報に基づき、第1の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断から、第2の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断に変更する。
【0062】
第2の描画中は、描画位置モニタ部172により、描画位置がモニタされる。そして、描画が第2の位置座標に到達する(S3−4)。第2の位置座標に到達することにより、第2の位置座標到達イベントが発生する。
【0063】
第2の位置座標に到達した際、ドリフト量の診断が行われる。第2の位置座標到達後、第3の描画中に第2の時間間隔パターンに基づき電子ビームのドリフト量の診断を行う(S4−3:第3のドリフト診断)。そして、マスク101上に、ドリフト量の診断結果に基づきドリフト補正を行いながら所定のパターンを描画する(S3−5:第3の描画)。すなわち、描画−第3のドリフト診断−描画のサイクルを繰り返す。
【0064】
ここで、ドリフト診断制御部122が、描画位置モニタ部172で得られる描画位置の情報に基づき、第2の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断から、第3の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断に変更する。
【0065】
図3は、本実施の形態における描画方法の説明図である。
【0066】
図3に示すように、マスク101上には、パターンが描画されるパターン領域10が存在する。そして、このパターン領域10が、例えば、複数の短冊状のストライプ領域12に分割される。
【0067】
ストライプ領域12の幅は、例えば、電子ビームが偏向可能な幅で規定される。ストライプ領域12は電子ビームの走査1回に相当する単位領域となる。パターンを描画する際には、例えば、XYステージ105をX方向に移動させることで、図中、最下部のストライプ領域12から、矢印の向きに電子ビームが走査される。最下部のストライプ領域12の描画が終わると、XYステージ105をY方向に移動させ、上側のストライプ領域12の描画が順次行われる。
【0068】
第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンへの変更の契機となる位置を図中の位置Aとし、その位置座標を(x,y)とする。電子ビームが走査され、描画が位置座標(x,y)に到達すると、ドリフト診断が実行され、ドリフト量の診断の時間間隔パターンが、第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンに変更される。
【0069】
なお、ドリフト診断の実行、第2の時間間隔パターンへの切り替えのタイミングは、位置Aを契機とするものであれば、特に限定されるものではない。例えば、位置Aを含むストライプ領域の描画が終わった時点でも良いし、位置Aに到達した後、所定の時間経過後であってもかまわない。
【0070】
第2の時間間隔パターンから第3の時間間隔パターンへの変更も同様にして行うことが可能である。
【0071】
図4は、本実施の形態における時間間隔パターン変更の説明図である。例えば、描画が開始される(描画開始イベント)と、第1の時間間隔パターンに基づきドリフト量の診断が実行される。
【0072】
なお、時間軸上の縦棒の1本1本が1回のドリフト診断を示す。そして、図に示すように、イベント発生からの時間経過に伴い、時間間隔が大きくなる時間間隔パターンを採用することが望ましい。これは、イベント直後が最もドリフト量が大きくなることが懸念されるためである。
【0073】
描画が位置座標(x,y)に到達する(第1の位置座標到達イベント)と、第2の時間間隔パターンに基づきドリフト量の診断が実行されるよう変更される。ここでは、第2の時間間隔パターンが第1の時間間隔パターンよりも狭い時間間隔を定義している。すなわち、第2の時間間隔パターンによれば、より高頻度でドリフト量の診断が行われる。
【0074】
また、第2の時間間隔パターンが第1の時間間隔パターンよりも狭い時間間隔を定義することが望ましい。ドリフト量が大きく変化した際に、適切なドリフト量の診断と補正を行うことが可能となるからである。
【0075】
第2の位置座標到達イベントを契機とするドリフト診断と、第2の時間間隔パターンから第3の時間間隔パターンへの変更についても同様に行われる。
【0076】
ドリフト診断の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、描画を中断した後、XYステージ105上に固定されるドリフト診断用の基準マークに電子ビームを照射し、所望のビーム位置からのズレを測定することで行われる。そして、ドリフト診断の結果、得られたドリフト量に応じて、ビーム照射位置の補正、いわゆるドリフト補正を行う。ドリフト補正は、例えば、DAC112、114、116の偏向感度係数等を補正することにより行われる。このようにドリフト診断後のパターンの描画は、ドリフト診断の結果に基づき、ドリフト補正を行いながら実行される。
【0077】
なお、ドリフト補正は、ドリフト診断で得られたドリフト量を一度に補正するのではなく、描画中に段階的または連続的に補正することが描画されるパターンが不連続になることを回避する観点から望ましい。
【0078】
実施の形態の電子ビーム描画プログラムは、上記電子ビーム描画方法を描画装置100に搭載されるコンピュータに実行させるためのプログラムである。制御計算機120がコンピュータの一例となる。
【0079】
具体的には、ドリフト量の診断を実行する位置座標を電子ビーム描画装置に記憶する処理と、電子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第1の時間間隔パターンと、位置座標と関連づけられ、電子ビームのドリフト量の診断を実行する時間間隔を定義する第2の時間間隔パターンを電子ビーム描画装置に記憶する処理と、描画装置を用いて電子ビームを試料上に照射し、描画の合間に第1の時間間隔パターンに基づき電子ビームのドリフト量の診断を行いながら試料上に所定の描画パターンを描画する第1の描画する処理と、描画が上記位置座標に到達した際、電子ビームのドリフト量の診断を行う処理と、描画が上記位置座標に到達した後、電子ビームを試料上に照射し、描画の合間に第2の時間間隔パターンに基づき電子ビームのドリフト量の診断を行いながら試料上に所定の描画パターンを描画する第2の描画する処理と、を描画装置100に搭載されるコンピュータに実行させるプログラムである。
【0080】
このプログラムは、例えば、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶される。具体的には、例えば、描画装置100のプログラム記憶部152に記憶される。
【0081】
以上、本実施の形態によれば、適切なドリフト診断が実行され、高い描画精度と高いスループットを両立させることが可能となる。
【0082】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の電子ビーム描画装置は、電子ビーム描画装置に記憶される位置座標が、描画パターンを描画する際のショット密度の変化率が所定の変化率(閾値)を超える位置を特定する。ショット密度は、面積当たりのショット数であっても、時間当たりのショット数であってもかまわない。上記位置座標に関する以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0083】
例えば、ショット密度の変化量は、描画装置100が描画前に、描画時間等を見積もるために行うショット数の見積もり結果を基に算出することが可能である。この算出結果を参照して、ショット密度の変化率が所定の変化率を超える位置の位置座標を特定することが可能となる。
【0084】
ショット密度の変化率が所定の変化率を超える位置では、例えば、ドリフト量が急激に変化することが予期される。
【0085】
本実施の形態によれば、ドリフト量が急激に変化することが予期される位置に到達した際にドリフト診断を行う。さらに、その後の、ドリフト診断の時間間隔を、予期される変化に適した時間間隔に変更することで、描画の精度を保証する。これにより、適切なドリフト診断が実行され、高い描画精度と高いスループットを両立させることが可能となる。
【0086】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の電子ビーム描画装置は、第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンへの変更の契機となる位置座標を、描画装置内で自動的に算出する位置座標算出部を備える以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0087】
図5は、本実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
【0088】
図5に示すように、描画装置200の制御部160の制御計算機120は、位置座標算出部124を備えている。位置座標算出部124は、第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンへの変更の契機となる位置座標を、描画装置内で自動的に算出する機能を備える。
【0089】
本実施の形態の電子ビーム描画方法は、描画装置200内で、第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンへの変更の契機となる位置座標を算出する以外は、第1の実施の形態と同様である。
【0090】
図6は、本実施の形態における描画方法のフローを示す図である。位置座標算出(S21)が描画装置200内の処理として行われる。
【0091】
具体的には、例えば、描画データ記憶部109に記憶される描画データを基に、描画時の単位面積当たりのショット密度、または単位時間当たりのショット密度を計算する。そして、このショット密度の変化率を算出する。さらに、ショット密度の変化率が、あらかじめ定められた閾値を超える位置の位置座標を算出する。算出された位置座標は、例えば、第2の記憶部156に記憶される。
【0092】
本実施の形態によれば、位置座標が描画装置200内で自動的に算出可能となる。したがって、第1の実施の形態と比較し、より高い描画効率を実現することが可能となる。
【0093】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の電子ビーム描画装置は、第2の時間間隔パターンに基づくドリフト量の診断に変更するか否かを判断する判断部を備えること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0094】
図7は、本実施の形態における描画装置の構成を示す概念図である。
【0095】
図7に示すように、描画装置300の制御部160の制御計算機120は、判断部126を備えている。判断部126は、所定の位置座標へ到達した際に、第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンへの変更を行うか否かを判断する機能を備える。
【0096】
図8は、本実施の形態における描画方法のフローを示す図である。描画が第1の位置座標に到達(S3−2)した後に、判断部126にて、第1の時間間隔パターンから第2の時間間隔パターンへの変更可否判断が行われる(S31)。
【0097】
判断部126にて変更が可と判断される場合には、第2の時間間隔パターンに切り替えて電子ビームの第2のドリフト量の診断を行う(S4−2)。一方、判断部126にて変更が不可と判断された場合、そのまま、第1の時間間隔パターンを基に電子ビームの第2のドリフト量の診断を行う。
【0098】
同様に、描画が第2の位置座標に到達(S3−2)した後に、判断部126にて、第2の時間間隔パターンから第3の時間間隔パターンへの変更可否判断が行われる(S31)。
【0099】
判断部126にて変更が可と判断される場合には、第3の時間間隔パターンに切り替えて電子ビームの第3のドリフト量の診断を行う(S4−3)。一方、判断部126にて変更が不可と判断された場合、そのまま、直前の描画で用いられていた第1または第2の時間間隔パターンを基に電子ビームの第3のドリフト量の診断を行う。
【0100】
変更可否の判断基準は、例えば、描画中の描画領域の種類である。図9は、本実施の形態の描画方法の説明図である。
【0101】
例えば、マスク101のパターン領域10のパターンが階層構造を備え、描画領域αと描画領域βとが存在する。ここで、描画領域とは、描画の際に同一の描画条件が適用される領域である。異なる描画領域は、図9のように、位置的に重なっていても1回の電子ビームの走査中に同時に描画されることはない。
【0102】
ここで、例えば、位置Aを定める際に、描画領域αではなく、描画領域βのパターンのショット密度を基礎とした場合を考える。この場合、描画領域αの描画中に位置Aに到達したとしても、時間間隔パターンの変更は不要となる。したがって、例えば、判断部126で現在描画中の描画領域の情報を取得し、時間間隔パターンの変更の可否を判断する。
【0103】
また、変更可否の判断基準は、別の例では、例えば、別のイベントを契機とする第2の時間間隔パターン以外の第3の時間間隔パターンとの競合の有無である。例えば、ユーザの事情等で描画を一時停止する描画一時停止イベントと、これに対応する第3の時間間隔パターンがあるとする。
【0104】
例えば、同一のストライプを走査中に、位置座標到達イベントと描画一時停止イベントが同時に発生する場合を考える。この場合、描画装置300は、第2の時間間隔パターンと第3の時間間隔パターンのいずれを選択するかの判断が必要となる。この判断を、例えば、判断部126で行うことが考えられる。
【0105】
本実施の形態によれば、判断部126により第2の時間間隔パターンへの変更の可否を判断することにより、さらに、描画中のドリフト診断の時間間隔の設定を最適化し、高い描画精度と高いスループットを両立させることが可能となる。
【0106】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0107】
また、実施の形態では、パターン領域10中に2つの描画領域がある場合を例に説明したが、描画領域数は2つに限られるものではない。
【0108】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、荷電粒子ビーム描画装置を制御する制御部構成についての詳細は、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0109】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画方法、荷電粒子ビーム描画プログラムおよび荷電粒子ビーム描画装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0110】
100 荷電粒子ビーム描画装置
101 マスク(試料)
150 描画部
122 ドリフト診断制御部
154 第1の記憶部
156 第2の記憶部
172 描画位置モニタ部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9