特許 6181421 吸収性物品

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6181421

(24)【登録日】2017年7月28日

(45)【発行日】2017年8月16日

(54)【発明の名称】吸収性物品

(51)【国際特許分類】

   A61F 13/533 20060101AFI20170807BHJP

   A61F 13/532 20060101ALI20170807BHJP

   A61F 13/476 20060101ALI20170807BHJP

【ＦＩ】

   A61F13/533 100

   A61F13/532 100

   A61F13/476

【請求項の数】7

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2013-104552(P2013-104552)

(22)【出願日】2013年5月16日

(65)【公開番号】特開2014-223215(P2014-223215A)

(43)【公開日】2014年12月4日

【審査請求日】2016年3月8日

(73)【特許権者】

【識別番号】000115108

【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001564

【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人

(72)【発明者】

【氏名】高橋 雄二

(72)【発明者】

【氏名】工藤 淳

(72)【発明者】

【氏名】松島 梓

【審査官】 山本 杏子

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００６−０８１５５８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００７−００７２８３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１２−０５０６２６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１１−２２４３５８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００７−１２５１８１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ａ６１Ｆ １３／１５ − １３／８４

Ａ６１Ｌ １５／１６ − １５／６４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

製品長手方向と、前記製品長手方向と直交する製品幅方向とを有し、
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性本体と、
前記吸収性本体の前記製品幅方向の外側端部から前記製品幅方向外側に延出する一対のウィングとを有する吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、
前記製品長手方向に沿って延びており、肌当接面側から前記表面シート及び前記吸収体を圧搾することによって形成されている一対の第１圧搾溝と、
前記製品長手方向に沿って延びており、前記第１圧搾溝よりも前記製品幅方向の外側において、肌当接面側から前記表面シート及び前記吸収体を圧搾することによって形成されている一対の第２圧搾溝とを有しており、
前記一対のウィングの前記製品長手方向の中心から前記製品長手方向の後方に向かうに連れて、前記一対の第１圧搾溝同士の前記製品幅方向の間隔は狭くなるように構成されており、
前記一対の第１圧搾溝の前記製品長手方向における後方端部は離間するように構成されており、
前記第１圧搾溝の前記製品長手方向における後方端部は、前記第２圧搾溝の前記製品長手方向における前方端部よりも、前記製品長手方向の後方側に配置されるように構成されており、
前記吸収体は、前記第２圧搾溝よりも前記製品幅方向の内側で且つ前記製品長手方向の中央よりも後方側で、前記製品長手方向に沿って、周囲の剛性値と比べて低い剛性値を有している低剛性領域を有しており、
前記低剛性領域内に、前記一対の第１圧搾溝の前記製品長手方向における後方端部が配置されており、
前記低剛性領域の全体の剛性値は、前記周囲の剛性値と比べて低いことを特徴とする吸収性物品。

【請求項2】

前記低剛性領域の前記製品長手方向における後方端部は、前記一対の第１圧搾溝の前記製品長手方向における後方端部よりも、前記製品長手方向の後方側に配置されていることを特徴とする請求項１に記載の吸収性物品。

【請求項3】

前記一対の第１圧搾溝同士の前記製品幅方向の最大間隔Ｗａ、前記一対の第１圧搾溝同士の前記製品幅方向における後方端部の前記製品幅方向の間隔Ｗｂ、及び、前記低剛性領域の前記製品幅方向の最大長さＷｃは、Ｗａ＞Ｗｃ＞Ｗｂの関係を満たすことを特徴とする請求項１又は２に記載の吸収性物品。

【請求項4】

前記一対の第２圧搾溝の前記製品長手方向の後方側において、前記製品幅方向に延びる第３圧搾溝を更に有しており、
前記第３圧搾溝の前記製品幅方向における両側端部は、前記低剛性領域の前記製品幅方向における両側端部よりも前記製品幅方向の外側に配置されていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【請求項5】

前記第３圧搾溝及び前記低剛性領域は、前記製品長手方向に間隔を設けて配置されていることを特徴とする請求項４に記載の吸収性物品。

【請求項6】

前記一対の第２圧搾溝の各々は、前記製品幅方向の外側に湾曲しながら前記製品長手方向に延びるように構成されていることを特徴とする請求項１乃至５のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【請求項7】

前記低剛性領域における前記吸収体の目付は、前記低剛性領域を除く他の領域における吸収体の目付よりも低くなるように構成されており、
前記低剛性領域は、前記一対の第１圧搾溝の前記後方端部同士の間の領域に渡って設けられていることを特徴とする請求項１乃至６のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に設けられる吸収体とを備える吸収性物品に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、生理用ナプキン等の吸収性物品では、液透過性の表面シート及び吸収体を圧搾した圧搾溝を形成したものが広く知られている。また、圧搾溝についても、様々な形状のものが提案されている。

【0003】

例えば、着用者の排泄口に対向する領域として設計されている排泄口当接域から後方に向けて製品長手方向に沿って延びる一対の圧搾溝を配置した吸収性物品が知られている。

【0004】

また、特許文献１に係る吸収性物品では、一対の圧搾溝よりも製品幅方向の内側に、製品長手方向に沿って延びており、他の領域に比べて密度を高めた矩形状の中高部が配置されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２００９-１００８４６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

ここで、かかる吸収性物品を着用者が使用する際、着用者の股下部では、着用者の両太腿の付け根によって、かかる吸収性物品の製品幅方向の内側に向けて力が加えられる。

【0007】

このように加えられる力によって、上述の圧搾溝を起点として圧搾溝に対して製品幅方向の内側に設けられる部位が着用者側に盛り上がる。

【0008】

上述した吸収性物品では、このような盛り上がりが、上述の排泄口当接領域よりも後方に伝わり、上述の排泄口当接領域よりも後方において圧搾溝に対して製品幅方向の内側に設けられる部位が着用者側に盛り上がる。

【0009】

このような場合、上述の吸収性物品が、着用者の臀部に沿ってカーブせずに、着用者の臀部と吸収性物品との間に空洞が形成されてしまい、吸収性物品のフィット感が損なわれ、体液（経血等）の後方への漏れが発生する虞がある。

【0010】

そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、着用者の排泄口よりも後方の臀部においてフィット感を向上すると共に、体液（経血等）の後方への漏れを抑制することを可能とする吸収性物品を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0011】

本発明の第１の特徴は、製品長手方向と、前記製品長手方向と直交する製品幅方向とを有し、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性本体と、前記吸収性本体の前記製品幅方向の外側端部から前記製品幅方向外側に延出する一対のウィングとを有する吸収性物品であって、前記吸収性本体は、前記製品長手方向に沿って延びており、肌当接面側から前記表面シート及び前記吸収体を圧搾することによって形成されている一対の第１圧搾溝と、前記製品長手方向に沿って延びており、前記第１圧搾溝よりも前記製品幅方向外側において、肌当接面側から前記表面シート及び前記吸収体を圧搾することによって形成されている一対の第２圧搾溝とを有しており、前記一対のウィングの前記製品長手方向の中心から前記製品長手方向の後方に向かうに連れて、前記一対の第１圧搾溝同士の前記製品幅方向の間隔は狭くなるように構成されており、前記一対の第１圧搾溝の前記製品長手方向における後方端部は離間するように構成されており、前記第１圧搾溝の前記製品長手方向における後方端部は、前記第２圧搾溝の前記製品長手方向における前方端部よりも、前記製品長手方向の後方側に配置されるように構成されており、前記吸収体は、前記第２圧搾溝よりも前記製品幅方向の内側で且つ前記製品長手方向の中央よりも後方側で、前記製品長手方向に沿って、周囲の剛性値と比べて低い剛性値を有している低剛性領域を有しており、前記低剛性領域内に、前記一対の第１圧搾溝の前記製品長手方向における後方端部が配置されていることを要旨とする。

【発明の効果】

【0012】

本発明の特徴によれば、着用者の排泄口よりも後方の臀部においてフィット感を向上すると共に、体液（経血等）の後方への漏れを抑制することを可能とする吸収性物品を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】本発明の第１の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。

【図2】本発明の第１の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図におけるＡ-Ａ断面図である。

【図3】本発明の第１の実施形態に係る吸収性物品の領域Ｃ/Ｌ/Ｒの剛性値を測定する方法について説明するための図である。

【図4】本発明の第１の実施形態に係る吸収性物品の領域Ｃ/Ｌ/Ｒの剛性値を測定する方法について説明するための図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

図１乃至図４を参照して、本発明の第１の実施形態に係る吸収性物品１について説明する。

【0015】

なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。

【0016】

したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。

【0017】

図１に、本実施形態に係る吸収性物品１の肌当接面側から見た平面図を示し、図２に、図１におけるＡ-Ａ断面図を示し、図３及び図４に、本発明の第１の実施形態に係る吸収性物品１の領域Ｃ/Ｌ/Ｒの剛性値を測定する方法について説明するための図を示す。

【0018】

本実施形態に係る吸収性物品１は、例えば、パンティライナーや失禁パッドや生理用ナプキン（昼用及び夜用）等である。以下、本実施形態では、吸収性物品１として、昼用の生理用ナプキンを例に挙げて説明するが、本発明は、かかる例に限定されるものではない。

【0019】

図１に示すように、本実施形態に係る吸収性物品１は、製品長手方向Ｌ、及び、製品長手方向Ｌに直交する製品幅方向Ｗを有している。

【0020】

また、図１に示すように、本実施形態に係る吸収性物品１は、吸収性本体３と、一対のウィング４０と、一対の後方フラップ（ヒップフラップ）５０とを具備している。

【0021】

吸収性本体３は、図２に示すように、液透過性の表面シート１０と、液不透過性の裏面シート２０と、表面シート１０と裏面シート２０との間に配置される吸収体３０とを有する。

【0022】

表面シート１０としては、織布、不織布或いは有孔プラスチックシート等の液体を透過する構造のシート状材料であれば、特に限定することなく使用することができる。

【0023】

織布及び不織布の素材としては、天然繊維及び化学繊維のいずれも使用することができる。ここで、天然繊維の例としては、粉砕パルプやコットン等のセルロースが挙げられる。一方、化学繊維の例としては、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維、若しくは、親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維が挙げられる。

【0024】

熱可塑性疎水性化学繊維としては、ＰＥ（ポリエチレン）やＰＰ（ポリプロピレン）やＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）等の単繊維、ＰＥ及びＰＰをグラフト重合してなる繊維、芯鞘構造等の複合繊維が挙げられる。

【0025】

なお、不織布におけるウェブフォーミングは、乾式（カード法やスパンポンド法やメルトブローン法やエアレイド法等）や湿式等のいずれか又は複数を組み合わせたものによって行われてもよい。また、不織布におけるボンディングの方法としては、サーバルボンディングやニードルパンチやケミカルボンディング等の方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。また、不織布として、水流交絡法によりシート状に形成されたスパンレースを用いてもよい。

【0026】

有孔プラスチックシートとしては、ＰＥやＰＰやＰＥＴといった熱可塑性樹脂の有孔シートや、多孔質の発泡材等を用いることができる。また、これらについては、必要に応じて、酸化チタンや炭酸カルシウム等からなるフィラーを０.５〜１０％の範囲で混入することにより、白濁化させて使用することも好ましい。また、熱可塑性樹脂からなるフィルムを、ヒートエンボス加工や機械加工等により開孔した有孔フィルムを使用してもよい。有孔フィルムは、不織布との複合シートとして使用されてもよい。

【0027】

裏面シート１２としては、ＰＥ（融点１３０度近辺）を主体としたフィルムや、炭酸カルシウムや硫酸バリウムを含む通気フィルム等を用いることができる。

【0028】

吸収体３０は、吸収体コアを、例えば、ティッシュ又はＳＭＳ等の不織布からなるコアラップシートによって挟み込むことによって構成されている。

【0029】

吸収体コアの材料としては、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、粒子状ポリマー、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維、若しくは、親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維、ケミカルボンド処理が施されたエアレイドパルプ等を、単独又は混合して用いることができる。

【0030】

これらの材料から吸収体コアに成形する方法は、特に限定されるものではないが、かかる方法として、例えば、エアレイド法やメルトブローン法やスパンレース法や抄紙法等によってシート化する方法が挙げられる。

【0031】

また、吸収体コアの材料として、セルロース発泡体、合成樹脂の連続発泡体等を用いることもできる。さらに、吸収体コア２Ａの材料として、上述の発泡体又はシート化された材料を粉砕した後に成形したものを用いることもできる。

【0032】

さらに、吸収体３０として、厚さが０.３〜５ｍｍの吸収シートやポリマーシートによって構成されている薄型吸収体を用いることもできる。ここで、かかる吸収シートやポリマーシートとしては、通常の生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものを特に制限することなく用いることができる。

【0033】

例えば、吸収シートとしては、吸収紙、不織布、繊維をバインダー等でシート化したパルプシート等が挙げられ、ポリマーシートとしては、粉砕パルプ、繊維に粒子状ポリマーを混合してシート状に形成したもの等が挙げられる。なお、繊維に粒子状ポリマーを混合してシート状に形成したものとしては、粒子状ポリマーが層状に分配されているもの、粒子状ポリマーが三次元上に分散されているもののいずれも用いることができる。

【0034】

ここで、吸収シートを形成する材料及びポリマーシートに用いられる繊維としては、木材パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維やポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維、若しくは、界面活性剤等で繊維表面を親水化したポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート複合繊維を用いることが好ましく、親水性が良好に維持される点から、セルロース繊維を用いることがより好ましい。

【0035】

ポリマーシートに用いられる粒子状ポリマーとしては、自重の２０倍以上の液体を吸収及び保持でき且つゲル化し得るものを用いることが好ましい。かかる粒子状ポリマーの例としては、デンプンや架橋カルボキシメチル化セルロース、ポリアクリル酸及びその塩、並びに、ポリアクリル酸塩グラフト重合体等を挙げることができる。

【0036】

ウィング４０の各々は、吸収性本体３の製品幅方向Ｗの外側縁部から延出するように構成されている。かかるウィング４０の各々は、下着に巻き込まれて固定されるように構成されている。

【0037】

また、後方フラップ５０の各々は、ウィング４０の各々よりも製品長手方向Ｌの後方側に位置しており、吸収性本体３の製品幅方向Ｗの外側縁部から延出するように構成されている。

【0038】

かかる後方フラップ５０の各々は、下着に固定されて着用者の臀部を覆うように構成されている。具体的には、図１に示すように、後方フラップ５０は、製品幅方向Ｗの外側に向けて湾曲するように形成されている。

【0039】

また、図１に示すように、後方フラップ５０において、圧搾部２１/２２/２３が形成されている。

【0040】

ここで、圧搾部２１の製品幅方向Ｗの外側端部は、ウィング４０の製品長手方向Ｌの後方側Ｂの根元部分に該当する括れ部６１の周辺に位置するように構成されている。

【0041】

また、圧搾部２２の製品幅方向Ｗの外側端部は、後方フラップ５０において形成されている括れ部６２の周辺に位置するように構成されており、圧搾部２３の製品幅方向Ｗの外側端部は、後方フラップ５０において形成されている括れ部６３の周辺に位置するように構成されている。

【0042】

ここで、ウィング４０（及び、後方フラップ５０）の各々は、図２に示すように、サイドシート７１と、裏面シート２０と、サイドシート７１と裏面シート２０との間に配置される中間シート７２とによって形成されている。

【0043】

ここで、サイドシート７１は、例えば、表面シート１０や中間シート７２と同様の材料によって構成されていてもよい。ただし、サイドシート７１を乗り越えて吸収性物品１の製品幅方向Ｗの外側に経血が流れ出ることを防止するために、サイドシート７１は、疎水性又は撥水性を有する材料によって構成されることが好ましい。

【0044】

具体的には、サイドシート７１として、スパンボンド不織布やＳＭＳ不織布やエアスルー不織布等を用いることができる。ここで、エアスルー不織布は、比較的低い目付で嵩高であるため、サイドシート７１としてエアスルー不織布を用いた場合、風合いが良くなる（すなわち、使用感が良くなる）。また、エアスルー不織布では、主に繊維が芯鞘構造であり、鞘がＰＥによって構成されているため、比較的低い温度でエンボス加工を施すことができる。

【0045】

中間シート７２は、ウィング４０及び後方フラップ５０のほぼ全面を覆うように配置されている。また、中間シート７２の製品幅方向Ｗの内側端部は、吸収体３０の製品幅方向Ｗの外側端部よりも、製品幅方向Ｗの外側に配置されるように構成されている。

【0046】

ここで、中間シート７２は、裏面シート２０とは融点の異なる繊維（例えば、ＳＭＳ不織布）によって構成されている。

【0047】

例えば、中間シート７２は、ＰＰ（融点１６０度近辺）主体のＳＭＳやＳＢによって構成されていてもよい。ここで、かかるＳＭＳやＳＢは、柔軟性やコストの面で優れており、表面をエンボスで平滑になされているので、表面シート１０や裏面シート２０と樹脂の異なる材料で形成されていても、粘着剤にて表面シート１０や裏面シート２０に接合されやすい。

【0048】

或いは、中間シート７２は、ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート、融点２６０度近辺）やレーヨン（融点無し）等の繊維からなるスパンレース不織布や、エアレイドパルプによって構成されていてもよい。

【0049】

また、中間シート７２は、吸収体３０と同様に、粉砕したパルプを積層することによって構成されていてもよいし、セルロース繊維を主とした抄紙された紙であってもよい。

【0050】

ここで、本実施形態に係る吸収性物品１では、表面シート１０及び吸収体３０、裏面シート２０及び中間シート７２、サイドシート７１及び中間シート７２は、ホットメルト型接着剤（ＨＭＡ：Ｈｏｔ Ｍｅｌｔ Ａｄｈｅｓｉｖｅ）等の接着剤によって接合されている。また、表面シート１０及び裏面シート２０を接合することによって、吸収体３０を内封するように構成されていてもよい。

【0051】

例えば、一方の基材（例えば、表面シート１０や裏面シート２０や吸収体３０やサイドシート７１や中間シート７２）に対して、スパイラル塗工やコーター塗工やカーテンコータ塗工やサミットガン塗工等の塗工方法によってホットメルト型接着剤を塗工し、その上に伸縮材及び他方の基材を重ね合わせて接合してもよい。ここで、伸縮材が基材から外れにくくするために、予め伸縮材に対して、スリット塗工やコントロールシーム塗工等の塗工方法によって、ホットメルト型接着剤を塗工しておいてもよい。

【0052】

ホットメルト型接着剤として、ＳＥＢＳ（スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体）、ＳＢＳ（スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体）、ＳＩＳ（スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体）等のゴム系や直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤や感熱性接着剤、水溶性高分子からなるポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースやゼラチン等、又は、水膨潤性高分子からなるポリビニルアセテートやポリアクリル酸ナトリウム等の感水性接着剤等が例として挙げられる。

【0053】

その中でも、万が一、外面にホットメルト型接着剤が滲み出てしまったとしても、その時点ではタック性を有しない点から、感熱型接着剤を用いることが好ましい。例えば、ＳＥＢＳを５〜２５％、脂環族飽和炭化水素を４０〜６０％、芳香族変性テルペンを１〜１０％、添加剤を１５〜３０％で溶融混合したものを用いてもよい。

【0054】

また、サイドシート７１及び表面シート１０は、ヒートエンボス加工によって接合されている。

【0055】

また、これらの接合は、ホットメルト型接着剤等の接着剤やヒートエンボス加工や超音波等を単独で又は組み合わせて用いることによって実現されるように構成されていてもよい。

【0056】

なお、吸収体本部３、ウィング４０及び後方フラップ５０の非肌当接面側の表面には、吸収性物品１を下着に固定するために、粘着剤が塗布されている。

【0057】

ここで、上述の粘着剤としては、例えば、熱可塑性高分子としてスチレン系ブロックポリマー、粘着付与剤樹脂として天然樹脂や合成樹脂系、可塑性材料としてパラフィン系オイル等を用いることができる。

【0058】

スチレン系ブロックポリマーとしては、ＳＥＢＳ、ＳＢＳ、ＳＩＳ、ＳＥＰＳ（スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体）等が挙げられる。また、合成樹脂としては、脂肪族系（Ｃ５系）石油樹脂、芳香族系（Ｃ９系）石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素添加石油樹脂、ＤＣＰＤ系石油樹脂、ピュアーモノマー系石油樹脂等が挙げられる。さらに、天然樹脂としては、αピネン、βピネン又はジペンテンの共重合体であるテルペン系樹脂、ガムロジン、トール油ロジン又はウッドロジンであるロジン系樹脂、若しくは、これらの水添物やエステル等が挙げられる。また、可塑性材料は、粘度を下げるパラフィンオイル系、タック性を挙げるナフテンオイル、凝集力を下げたり色や匂いを付与したりするアロマオイル等が挙げられる。

【0059】

また、上述の粘着剤の塗布坪量は、１０〜１００ｇ/ｍ^２であり、好ましくは、２０〜５０ｇ/ｍ^２である。ここで、粘着剤２３０/２４０の塗布坪量が、１０ｇ/ｍ^２以下であると、吸収性物品１を下着にしっかりと貼り付けることができず、使用時に落ちたりずれたりしてしまい着用者に不快感を与えてしまう。一方、上述の粘着剤の塗布坪量が、１００ｇ/ｍ^２以上であると、下着から吸収性物品１を剥がす際に、吸収性物品１が破れてしまい、下着を使いものにならなくしてしまう恐れがある。

【0060】

なお、吸収性物品１は、個別に包装されるように構成されている。かかる吸収性物品１が、個別に包装される際に、第１に、ウィング４０及び後方フラップ５０が、肌当接面側に折り畳まれ、ウィング４０及び後方フラップ５０の非肌当接面側の表面に塗布されている粘着剤をカバーするように離型紙が配置されるように構成されている。また、吸収体本部３非肌当接面側の表面に塗布されている粘着剤をカバーするように離型紙が配置されるように構成されている。

【0061】

第２に、吸収性物品１の製品長手方向Ｌの後方側Ｂが、肌当接面側に折り畳まれた後、吸収性物品１の製品長手方向Ｌの後方側Ｂが、肌当接面側に折り畳まれ、吸収性物品１の製品長手方向Ｌの後方側端部３Ｅｂ及び吸収性物品１の製品長手方向Ｌの前方側端部３Ｅｆが、ヒートエンボス加工によって接合されることで、かかる吸収性物品１の個別包装の形態（４つ折り）が完成する。

【0062】

また、吸収性本体３には、伸縮性を有する伸縮部材を備えるギャザーが、製品長手方向Ｌに沿って延びるように設けられていてもよい（図示せず）。なお、かかるギャザーの形状については任意の形状とすることができる。

【0063】

図１に示すように、吸収性本体３は、製品長手方向Ｌに沿って延びている一対の圧搾溝９１及び一対の圧搾溝９２を少なくとも有している。

【0064】

ここで、図２に示すように、一対の圧搾溝９１及び一対の圧搾溝９２は、肌当接面側から表面シート１０及び吸収体３０を圧搾することによって形成されている。なお、図１に示すように、一対の圧搾溝９２は、一対の圧搾溝９１よりも製品幅方向Ｌの外側に配置されている。

【0065】

ここで、一対の圧搾溝９１は、製品長手方向Ｌの前方側端部９１Ｅｆで連結するように構成されていてもよい。

【0066】

なお、一対の圧搾溝９１の製品長手方向Ｌの前方側Ｆに、１つ又は複数の圧搾溝（図１の例では、圧搾溝９３）が設けられていてもよい。同様に、一対の圧搾溝９２の製品長手方向Ｌの後方側Ｂに、１つ又は複数の圧搾溝（図１の例では、圧搾溝９４）が設けられていてもよい。

【0067】

一対の圧搾溝９１同士の製品幅方向の間隔は、一対のウィング４０の製品長手方向Ｌの中心Ｃ１から製品長手方向Ｌの後方Ｂに向かうに連れて狭くなるように構成されている。

【0068】

また、一対の圧搾溝９１の製品長手方向Ｌにおける後方端部９１Ｅｂは離間するように構成されている。

【0069】

圧搾溝９１の製品長手方向Ｌにおける後方端部９１Ｅｂは、圧搾溝９２の製品長手方向Ｌにおける前方端部９２Ｅｆよりも、製品長手方向Ｗの後方側Ｂに配置されるように構成されている。

【0070】

また、吸収体３０は、圧搾溝９２よりも製品幅方向Ｗの内側で且つ製品長手方向Ｌの中央Ｃよりも後方側Ｂで、製品長手方向Ｌに沿って、周囲の剛性値と比べて低い剛性値を有している低剛性領域１００を有している。

【0071】

例えば、低剛性領域１００における剛性値は、３００ｍｇｆ〜４００ｍｇｆであり、低剛性領域１００の周辺の領域における剛性値は、７００ｍｇｆ〜８３０ｍｇｆである。

【0072】

本明細書において、「剛性値」とは、製品長手方向Ｌにおける曲げ剛性を意味するものとする。以下、図３及び図４を参照して、かかる剛性値の測定方法について示す。

【0073】

第１に、対象の吸収性物品１（試料）において、図３に示す領域Ｃ/Ｌ/Ｒから、図４に示すサイズの試験片（サンプル）を切り取る。ここで、領域Ｃは、低剛性領域１００に対応するものとする。

【0074】

第２に、ＪＩＳ-Ｌ-１９１３に示す「ガーレ法（６.７.３）」に従って算出した試験片についての「Ｂｒ（又は、＊Ｂｒ）」を、上述の「剛性値」とする。

【0075】

ここで、ＪＩＳ-Ｌ-１９１３に示す「ガーレ法（６.７.３）」における「ＲＧ」として、試験片が表面シート１０側に振れるように設定した際に得られた「ＲＧ」及び試験片が裏面シート２０側に振れるように設定した際に得られた「ＲＧ」の平均値を用いるものとする。

【0076】

ここで、低剛性領域１００内に、一対の圧搾溝９１の製品長手方向Ｌにおける後方端部９１Ｅｂが配置されている。

【0077】

かかる特徴によれば、圧搾溝９１が、徐々に製品幅方向Ｗの内側に向かうことで、吸収体３０の変形幅が、徐々に狭くなるため、吸収性物品１が、股間部において幅が狭くなる着用者の身体の溝に沿ってフィットし易くなる。

【0078】

また、低剛性領域１００内に、圧搾溝９１の製品長手方向Ｌにおける後方端部９１Ｅｂが配置されているため、吸収性物品１の着用時における着用者からの側圧がかかり難い製品長手方向Ｌの後方側Ｂまで吸収体３０の変形を確実に伝搬することができ、吸収性物品１が着用者の身体にフィットし易くなる。

【0079】

また、圧搾溝９１の製品長手方向Ｌにおける後方端部９１Ｅｂは離間しているため、周囲との剛性値の差によって、製品幅方向Ｗの中央近傍で安定的に吸収体３０を変形させることができる。

【0080】

また、圧搾溝９１の製品長手方向Ｌにおける後方端部９１Ｅｂは、圧搾溝９２の製品長手方向Ｌにおける前方端部９２Ｅｆよりも、製品長手方向Ｌの後方側Ｂに配置されているため、吸収性物品１の着用時における着用者からの側圧が、１点ではなくウィング４０の製品長手方向Ｌの中心Ｃ１近傍に広くかかり、かかる側圧が徐々に弱くなってくるウィング４０の製品長手方向Ｌの後方側Ｂの根元部分（括れ部６１）近傍でも、圧搾溝９２から圧搾溝９１に対して力が伝搬するため、より確実に吸収体３０を変形することができる。

【0081】

また、低剛性領域１００の製品長手方向Ｌにおける後方端部１００Ｅｂは、一対の圧搾溝９１の製品長手方向Ｌにおける後方端部９１Ｅｂよりも、製品長手方向Ｌの後方側Ｂに配置されていてもよい。

【0082】

かかる特徴によれば、製品長手方向Ｌの後方側Ｂに向かう吸収体３０の過度な変形（盛り上がり変形）を抑止することができ、吸収性物品１の製品長手方向Ｌの後方側Ｂでは、平面で着用者の身体の湾曲に沿って柔軟にフィットすることができる。

【0083】

一対の圧搾溝９１同士の製品幅方向の最大間隔Ｗａ、一対の圧搾溝９１同士の製品幅方向Ｗにおける後方端部９１Ｅｂの製品幅方向Ｗの間隔Ｗｂ、及び、低剛性領域１００の製品幅方向Ｗの最大長さＷｃは、Ｗａ＞Ｗｃ＞Ｗｂの関係を満たしてもよい。

【0084】

ここで、吸収性物品１の着用時における着用者からの側圧は、ウィング４０の製品長手方向Ｌの中心Ｃ１に対して最もかかり易く、かかる中心Ｃ１近傍の圧搾溝９１同士の製品幅方向の最大間隔Ｗａが、吸収体３０の変形幅の基準となる。

【0085】

したがって、かかる特徴によれば、一対の圧搾溝９１同士の製品幅方向の最大間隔Ｗａが、一対の圧搾溝９１同士の製品幅方向Ｗにおける後方端部９１Ｅｂの製品幅方向Ｗの間隔Ｗｂよりも大きいため、ウィング４０の製品長手方向Ｌの中心Ｃ１近傍における吸収体２０の変形が、製品幅方向Ｗの外側に逃げることなく伝搬し易くなる。

【0086】

また、かかる特徴によれば、一対の圧搾溝９１同士の製品幅方向Ｗにおける後方端部９１Ｅｂの製品幅方向Ｗの間隔Ｗｂが、低剛性領域１００の製品幅方向Ｗの最大長さＷｃよりも大きいため、より吸収体２０が変形し易くなる。

【0087】

一対の圧搾溝９２の製品長手方向Ｌの後方側Ｂにおいて、製品幅方向Ｗに延びる圧搾溝９２０を更に有していてもよい。

【0088】

ここで、圧搾溝９２０の製品幅方向Ｗにおける両側端部９２０Ｅは、低剛性領域１００の製品幅方向Ｗにおける両側端部１００Ｅよりも製品幅方向Ｗの外側に配置されていてもよい。

【0089】

かかる特徴によれば、圧搾溝９２０によって、製品長手方向Ｌの後方側Ｂに向かう吸収体３０の変形（盛り上がり変形）を抑止することができ、製品長手方向Ｌの後方側Ｂに向かう体液の拡散を抑止することができる。

【0090】

なお、図１に示すように、圧搾溝９２０の製品幅方向Ｗにおける両側端部９２０Ｅは、一対の圧搾溝９２の製品長手方向Ｌの後方側端部９２Ｅｂに連結するように構成されていてもよい。

【0091】

また、圧搾溝９２０及び低剛性領域１００は、製品長手方向Ｌに間隔を設けて配置されていてもよい。

【0092】

かかる特徴によれば、製品長手方向Ｌの後方側Ｂに向かう吸収体３０の変形（盛り上がり変形）をより確実に抑止することができる。

【0093】

一対の圧搾溝９２の各々は、製品幅方向Ｗの外側に湾曲しながら製品長手方向Ｌに延びるように構成されていてもよい。

【0094】

かかる特徴によれば、圧搾溝９１の変形につられて吸収体３０の側縁部が起立してくるのを防止して、製品長手方向Ｌの後方側における吸収体３０の幅入れを防止することができるため、製品長手方向Ｌの斜め後方側に対する体液の防漏性を向上することができる。

【0095】

低剛性領域１００における吸収体３０の目付は、低剛性領域１００を除く他の領域における吸収体１００の目付よりも低くなるように構成されていてもよい。

【0096】

かかる特徴によれば、低剛性領域１００における吸収体３０が、確実に低い剛性値を有することになるため、吸収体３０が変形し易くなり、着用者の身体の溝にフィットし易くなる。

【0097】

以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。

【符号の説明】

【0098】

１…吸収性物品
３…吸収性本体
１０…表面シート
２０…裏面シート
３０…吸収体
４０…ウィング
５０…後方フラップ
７１…サイドシート
７２…中間シート
９１、９２、９３、９４…圧搾溝
１００…低剛性領域

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】