(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のパッド構造、実装構造、及び、製造方法を適用した実施の形態について説明するにあたり、まず、
図1を用いて比較例の半導体装置について説明する。
【0012】
<比較例>
図1は、比較例のパッド構造の製造方法を示す図である。
【0013】
図1(A)では、絶縁層1にビア2が形成されており、絶縁層1の上面には、バリア層3及びCuシード層4が形成され、さらに、Cuシード層4の上には、レジスト5が形成されている。
【0014】
絶縁層1は、例えば、プリント基板等の絶縁層である。絶縁層1には、厚さ方向に貫通するビア2が形成されている。ビア2は、例えば、銅(Cu)製である。バリア層3は、絶縁層1及びビア2の上面の一面に形成されている。
【0015】
バリア層3は、例えば、チタン(Ti)製の金属層であり、Cuシード層4が絶縁層1に拡散するのを抑制するために設けられている。また、バリア層3は、Cuシード層4と絶縁層1との密着性を確保するために有効である。Cuシード層4は、バリア層3の上面の全体に形成されている。Cuシード層4は、無電解めっき処理又はスパッタ法によってバリア層3の上面の全体に形成される。レジスト5は、例えば、ドライフィルムを用いることができる。感光性フィルムを用いてレジスト5を露光、現像し、後にニッケル層6及び金層7を形成するために用いる開口部5Aを持つ、所望のパターンを形成する。開口部5Aは平面視で円形である。
【0016】
次に、
図1(B)に示すように、開口部5Aの内部のCuシード層4の上面に、ニッケル層6を形成し、さらに、ニッケル層6の上面に金層7を形成する。ニッケル層6と金層7の形成は、例えば、電解めっき処理によって行えばよい。
【0017】
次に、
図1(B)に示すレジスト5を除去することにより、
図1(C)の構造体を得る。レジスト5の除去は、例えば、剥離液を用いたエッチング処理によって行えばよい。
【0018】
最後に、
図1(C)に示す構造体のCuシード層4のうち、ニッケル層6及び金層7に覆われていない部分をエッチング処理によって除去する。Cuシード層4のうち、ニッケル層6及び金層7に覆われていない部分は、不要な部分だからである。また、Cuシード層4のエッチング処理を行った後に、バリア層3のうち、ニッケル層6及び金層7の真下に位置しない部分についても、エッチング処理で除去を行う。
【0019】
ところが、
図1(C)に示す構造体からCuシード層4の不要な部分を除去するために、メルテックス製メルストリップCu-3931(酸系エッチング液)を用いたエッチング処理を行うと、
図1(D)に示すパッド構造10のように、ガルバニック腐食によってCuシード層4が必要以上に除去され、ニッケル層6及び金層7の下に位置するCuシード層4の一部が除去されてしまう。
【0020】
また、Cuシード層4のエッチング処理の後に、メルテックス製メルストリップTI-3991(アルカリ系エッチング液)を用いてバリア層3のエッチング処理を行うと、バリア層3もCuシード層4と同様にガルバニック腐食によって必要以上に除去され、ニッケル層6及び金層7の下に位置するバリア層3の一部が除去されてしまう。
【0021】
これは、次のような理由によるものである。まず、金層7の金に対しては、Cuシード層4の銅、及び、バリア層3のチタンは、ともにガルバニック腐食が生じうる金属である。
【0022】
そして、Cuシード層4のエッチング処理を行った段階で、ガルバニック腐食によって、Cuシード層4のうちニッケル層6及び金層7に覆われている部分が浸食される。このようにCuシード層4が浸食された状態で、バリア層3のエッチング処理を行うと、Cuシード層4が浸食された部分にエッチング溶液が入り込むため、ガルバニック腐食により、必要以上にバリア層3が除去されてしまうからである。
【0023】
この結果、
図1(D)に示すように、Cuシード層4とバリア層3のうちニッケル層6及び金層7の下に位置していた部分が浸食され、ニッケル層6及び金層7の端が浮いた状態になり、所謂アンダーカットが生じた状態になる。
【0024】
このようなガルバニック腐食によるCuシード層4及びバリア層3のアンダーカットが生じると、ニッケル層6及び金層7の強度不足が生じる。バリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、及び金層7は、パッドとして用いられるため、パッドの根元がアンダーカットされた状態では、安定的な接続状態を得られないおそれがある。また、アンダーカットによってCuシード層4及びバリア層3が消失するおそれもある。
【0025】
また、
図1(D)に示すパッド構造10に対しては、さらに、樹脂封止を行うことにより、絶縁層1の上面側において、バリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、及び金層7の側面を封止樹脂で覆う処理を行う。
図1(E)に、一例として、バリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、及び金層7の側面を封止樹脂8で覆った状態を示す。
【0026】
ここで、
図1(E)には、一例として、
図1(D)に示すパッド構造10に対して、封止樹脂8を形成する工程を示すが、パッド構造10は、金層7の上にバンプ等を接続してから、封止樹脂8を形成してもよい。
【0027】
このように封止樹脂8による樹脂封止を行うと、Cuシード層4及びバリア層3のアンダーカットされた部分に、封止樹脂8が充填されずにボイド9が生じる可能性がある。ボイド9は、平面視において、バリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、及び金層7の側面に充填される封止樹脂8によって完全に覆われるため、閉じられた空間となる。
【0028】
このように、Cuシード層4及びバリア層3のアンダーカットされた部分にボイド9が生じると、例えば、パッド構造10が半導体装置の近傍に配置されている場合、又は、パッド構造10に大電流が流れるような場合に、温度上昇によってボイド9が膨張してパッド構造10が破損するおそれがある。
【0029】
このように、アンダーカットによって種々の問題が生じるおそれがあるが、Cuシード層4及びバリア層3のアンダーカットが生じる原因は、Cuシード層4及びバリア層3にガルバニック腐食が生じることである。
【0030】
ここで、
図2を用いてガルバニック腐食について説明する。
図2は、ガルバニック腐食を説明する図である。ガルバニック腐食とは、
図2に示すように、例えば、銅(Cu)と金(Au)のように、標準電極電位の異なる金属同士が接触した状態で、電解質溶液中に浸漬すると、電池(局部電池)が形成されて電流(局部電流)が流れ、標準電極電位の低い金属が金属イオンとなり腐食が促進されることである。
【0031】
銅(Cu)と金(Au)が接触する場合は、金(Au)よりも銅(Cu)の方が標準電極電位が低いため、銅(Cu)が金属イオン(Cu
2+)となって電解質溶液中に溶け出し、腐食が促進される。ガルバニック腐食によって銅(Cu)が金属イオン(Cu
2+)となって電解質溶液中に溶け出すときの反応式は、次の化学式(1)、(2)の通りである。
【0034】
このようなガルバニック腐食は、
図1(D)に示すように、Cuシード層4と金層7との間に、ニッケル層6が存在する場合においても生じる。
【0035】
また、ここで、
図3を用いて、比較例のパッド構造10を含む実装構造20について説明する。
図3は、比較例の実装構造20の製造工程を示す図である。
【0036】
図3(A)に示すパッド構造10は、
図1(D)に示すパッド構造10と同様であり、パッドとして用いられるバリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、及び金層7のうちのバリア層3及びCuシード層4にアンダーカットが生じている。
【0037】
このようなパッド構造10の金層7の上に、
図3(B)に示すように、はんだ21を介して、バンプ22を接続することにより、実装構造20を作製する。金層7の上にはんだ21を介してバンプ22を接続する際に、バリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、金層7に加えて、はんだ21及びバンプ22も加熱された状態で接合される。
【0038】
金層7にバンプ22を接続する際には、パッドとして用いられるバリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、及び金層7を加熱し、かつ、電圧を印加した状態において、はんだ21及びバンプ22を金層7に対して押圧する。この加熱処理により、金層7に含まれる金は、はんだ21の内部に拡散するため、
図3(B)では金層7はなくなっている。
【0039】
このように実装構造20を作製する工程を行う際に、バリア層3、Cuシード層4、ニッケル層6、及び金層7の側面に充填される封止樹脂が水分を吸っていると、バリア層3とCuシード層4がアンダーカットされた部分にあるボイドの中に水分が生じる。そして、このような高温多湿な環境下において、電圧が印加されたCuシード層4の銅(Cu)がマイグレーションを起こし、銅(Cu)が拡散するおそれがある。
【0040】
以上のように、比較例のパッド構造10(
図1(D)参照)には、ガルバニック腐食によるアンダーカットが生じるおそれがある。また、比較例の実装構造20(
図3(B)参照)には、Cuシード層4の銅(Cu)がマイグレーションを起こすおそれがある。
【0041】
従って、以下で説明する実施の形態では、上述のような問題を解決したパッド構造、実装構造、及び、製造方法を提供することを目的とする。
【0042】
<実施の形態>
図4は、実施の形態のパッド構造及び実装構造を含む半導体パッケージ50A、50Bを示す断面図である。
図4(A)には3次元実装構造による半導体パッケージ50Aを示し、
図4(B)には所謂2.5次元実装構造による半導体パッケージ50Bを示す。
【0043】
図4(A)に示す半導体パッケージ50Aは、PCB(Printed Circuit Board)51、ロジック系チップ52、及びメモリ系チップ53A、53B、53Cを含む。
【0044】
PCB(Printed Circuit Board)51の下面には、半田ボール51Aが配設されている。ロジック系チップ52は、例えば、SoC(System on a Chip)/ CPU(Central Processing Unit)/ GPU(Graphic Processing Unit)を含む。
【0045】
ロジック系チップ52は、バンプ54によってPCB51の上面のパッド(
図4(A)では図示を省略)に実装されている。また、メモリ系チップ53A、53B、53Cは、ロジック系チップ52に重ねて配設されており、ビア55及びバンプ56を介して、ロジック系チップ52とPCB51に接続されている。バンプ56は、ビア55の上端に位置するパッドに接続されている。なお、ビア55のうち、ロジック系チップ52、メモリ系チップ53A、53Bを貫通するものは、所謂TSV(Through Silicon Via)であってもよい。
【0046】
また、
図4(B)に示す半導体パッケージ50Bは、PCB51、ロジック系チップ52、メモリ系チップ53A、53B、53C、及びインターポーザ57を含む。
【0047】
PCB51の下面には、半田ボール51Aが配設されている。インターポーザ57は、バンプ54を介して、PCB51の上面のパッド(図示を省略)に実装されている。また、インターポーザ57の上には、
図4(B)における左側に、バンプ56を介してロジック系チップ52が実装され、右側に、バンプ56を介してメモリ系チップ53Aが実装されている。メモリ系チップ53Aには、バンプ56を介して、メモリ系チップ53B、53Cが重ねて配設されている。
【0048】
ロジック系チップ52は、バンプ56を介してインターポーザ57の内部の配線57Aに接続される。メモリ系チップ53Aは、バンプ56を介してインターポーザ57の内部の配線57Aに接続される。バンプ56は、ビア55又は配線57Aの上端のパッドに接続されている。
【0049】
ロジック系チップ52と、メモリ系チップ53Aとは、配線57Aを介して互いに接続されるとともに、配線57Aを介してPCB51に接続されている。なお、ビア55と配線57Aのうち、それぞれ、メモリ系チップ53A、53Bとインターポーザ57を貫通するものは、所謂TSV(Through Silicon Via)であってもよい。なお、メモリチップの数に制限はない。
【0050】
実施の形態のパッド構造100は、例えば、
図4(A)では、PCB51とロジック系チップ52との間のバンプ54が接続される、PCB51の表面のパッドとして用いることができる。また、パッド構造100は、例えば、ロジック系チップ52とメモリ系チップ53Aとの間のバンプ56が接続される、ロジック系チップ52の表面のパッドとして用いることができる。また、パッド構造100は、例えば、メモリ系チップ53Aと53Bとの間のバンプ56が接続される、メモリ系チップ53Aの表面のパッド、又は、メモリ系チップ53Bと53Cとの間のバンプ56が接続される、メモリ系チップ53Bの表面のパッドとして用いることができる。
【0051】
また、実施の形態のパッド構造100は、例えば、
図4(B)では、PCB51とインターポーザ57との間のバンプ54が接続される、PCB51の表面のパッドとして用いることができる。また、パッド構造100は、例えば、インターポーザ57とロジック系チップ52との間のバンプ56が接続される、インターポーザ57の表面のパッドとして用いることができる。また、パッド構造100は、例えば、インターポーザ57とメモリ系チップ53Aとの間のバンプ56が接続される、インターポーザ57の表面のパッドとして用いることができる。また、
図4(B)においても、パッド構造100は、例えば、メモリ系チップ53Aと53Bとの間のバンプ56が接続される、メモリ系チップ53Aの表面のパッド、又は、メモリ系チップ53Bと53Cとの間のバンプ56が接続される、メモリ系チップ53Bの表面のパッドとして用いることができる。
【0052】
図5は、実施の形態のパッド構造の製造方法を示す図である。実施の形態では、比較例の構造体と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図5(A)では、絶縁層1にビア2が形成されており、絶縁層1の上面には、バリア層3及びCuシード層4が形成され、さらに、Cuシード層4の上には、レジスト5が形成されている。これは、
図1(A)に示す構造体と同様である。
【0054】
絶縁層1は、例えば、
図4(A)、(B)に示すPCB51の絶縁層、又は、ロジック系チップ52、メモリ系チップ53A、53B、53C、あるいはインターポーザ57の絶縁層に相当する。絶縁層1には、厚さ方向に貫通するビア2が形成されている。ビア2は、例えば、銅(Cu)製である。ビア2は、例えば、
図4(A)、(B)に示すビア55又は配線57Aに相当する。バリア層3は、絶縁層1及びビア2の上面の一面に形成されている。
【0055】
次に、レジスト5を利用して、開口部5Aの側から錫(Sn)の無電解めっき処理を利用した置換めっき処理を行うことにより、
図5(B)に示すように、開口部5Aの下側のCuシード層4(
図5(A)参照)を置換めっき層104に置換する。置換めっき層104は、第1金属層の一例である。
【0056】
置換めっき層104は、
図5(A)に示すCuシード層4のうち、開口部5Aから表出する部分の銅が錫に置換されることによって形成される。このため、レジスト5の下にあるCuシード層4は、置換めっき層104を形成した後も残存する。
【0057】
置換めっき層104は、錫と銅の金属間化合物層だけを含む場合と、錫と銅の金属間化合物層と、錫層とを含む場合がある。錫層を含むか否かは、置換めっき処理の温度、時間等の処理条件によって決まる。錫と銅の金属間化合物層としては、Cu
3Sn又はCu
6Sn
5がある。
【0058】
置換めっき処理は、例えば、例えば石原薬品製UTB-580を用いて、20〜50℃の温度で、5秒〜10分の間で浸漬処理を行えばよい。
【0059】
ここで、錫と銅の金属間化合物層(Cu
3Sn又はCu
6Sn
5)は、化学的に非常に安定しているため、金層7及びニッケル層6が存在している状況で、エッチング溶液等の電解溶液に浸漬されてもガルバニック腐食は生じない。
【0060】
次に、
図5(C)に示すように、開口部5Aの内部の置換めっき層104の上面に、ニッケル層6を形成し、さらに、ニッケル層6の上面に金層7を形成する。ニッケル層6と金層7の形成は、例えば、電解めっき処理によって行えばよい。ここで、ニッケル層6と金層7は、第2金属層の一例である。
【0061】
ニッケル層6と金層7は、後にはんだ21によって接合されるバンプ22との接合状態を良好にする表面処理層として機能する。なお、例えば、ニッケル層6を含まない場合は、第2金属層の一例は、金層7だけであってもよい。
【0062】
次に、
図5(C)に示すレジスト5を除去することにより、
図5(D)の構造体を得る。レジスト5の除去は、例えば、剥離液を用いたエッチング処理によって行えばよい。
【0063】
次に、
図5(D)に示す構造体から、エッチング溶液としてメルテックス製メルストリップCu-3931(酸系エッチング液)を用いたエッチング処理により、Cuシード層4の残存部分を除去する。Cuシード層4の残存部分は、
図5(C)に示すレジスト5の下に位置しており、置換めっき処理によって錫に置換されずに残存した部分である。
【0064】
また、Cuシード層4のエッチング処理の後に、メルテックス製メルストリップTI-3991(アルカリ系エッチング液)を用いてバリア層3のエッチング処理を行う。
【0065】
図5(D)に示す構造体から、置換めっき層104の周囲に残存するCuシード層4及びバリア層3を除去すると、
図5(E)に示すパッド構造100が得られる。実施の形態のパッド構造100には、比較例のパッド構造10(
図1(D)参照)とは異なり、所謂アンダーカットは生じない。パッド構造100の置換めっき層104とバリア層3は、ニッケル層6及び金層7と略面一な側面を有している。
【0066】
このように、ニッケル層6及び金層7と略面一な側面を有する置換めっき層104とバリア層3が得られるのは、次のような理由による。
【0067】
まず、置換めっき層104に含まれる、錫と銅の金属間化合物層が、化学的に非常に安定しており、ガルバニック腐食が生じない。また、錫と銅の金属間化合物層は、Cuシード層4を除去するエッチング溶液によって除去されない。このため、置換めっき層104に含まれる、錫と銅の金属間化合物層は、ニッケル層6及び金層7と略面一な側面を有することになる。
【0068】
また、置換めっき層104に錫層が含まれる場合でも、錫層はCuシード層4を除去するエッチング溶液によって除去されない。
【0069】
ここで、一般的に、錫には、金との組み合わせにおいてガルバニック腐食が生じるおそれがある。しかしながら、エッチング溶液による溶解を伴わず、ガルバニック腐食のみによる浸食は軽微であるため、影響は殆ど生じないと考えられる。
【0070】
従って、置換めっき層104に錫層が含まれる場合でも、錫層は、ニッケル層6及び金層7と略面一な側面を有することになる。
【0071】
また、ニッケル層6及び金層7と略面一な側面を有する置換めっき層104が得られるため、バリア層3をエッチング処理によって除去する際に、バリア層3のうち、置換めっき層104、ニッケル層6、及び金層7の真下にある部分には、エッチング溶液は付着しない。
【0072】
このため、バリア層3をエッチングによって除去する際に、バリア層3のガルバニック腐食による影響は、殆ど無視することができる。また、置換めっき層104に錫層が含まれる場合でも、バリア層3をエッチングする際に、錫層のガルバニック腐食による影響は、殆ど無視することができる。
【0073】
従って、ニッケル層6及び金層7と略面一な側面を有するバリア層3が得られる。
【0074】
以上より、置換めっき層104の周囲に残存するCuシード層4及びバリア層3をエッチング処理によって除去すると、
図5(E)に示すように、ニッケル層6及び金層7と略面一な側面を有する置換めっき層104とバリア層3が得られる。実施の形態のパッド構造100では、Cuシード層4及びバリア層3には、所謂アンダーカットは生じない。
【0075】
なお、
図5(E)に示すパッド構造100に対しては、さらに、樹脂封止を行うことにより、
図5(F)に示すように、絶縁層1の上面側において、バリア層3、置換めっき層104、ニッケル層6、及び金層7の側面を封止樹脂108で覆う処理を行えばよい。封止樹脂108は、バリア層3、置換めっき層104、ニッケル層6、及び金層7の側面に密着するように形成されるため、比較例のパッド構造10のようにボイド9(
図1(E)参照)が生じることはない。
【0076】
以上のように、実施の形態によれば、ガルバニック腐食の発生を抑制したパッド構造100を提供することができる。また、ガルバニック腐食の発生を抑制することにより、パッド構造100の強度不足又は電気的接続における信頼性低下の発生を抑制することができる。また、比較例のパッド構造10のように、アンダーカットによってCuシード層4及びバリア層3が消失することを抑制できるので、不良品の発生を抑制することができる。
【0077】
次に、
図6を用いて、実施の形態のパッド構造100を含む実装構造について説明する。
【0078】
図6は、実施の形態の実装構造200の製造工程を示す図である。
【0079】
図6(A)に示すパッド構造100は、
図5(E)に示すパッド構造100と同様であり、パッドとして用いられるバリア層3、置換めっき層104、ニッケル層6、及び金層7を含む。
【0080】
このようなパッド構造100の金層7の上に、
図6(B)に示すように、はんだ21を介して、バンプ22を接続することにより、実装構造200を作製する。なお、はんだ21としては、例えば、錫(Sn)、錫銀(Sn−Ag)、錫銅(Sn−Cu)、錫銀銅(Sn−Ag−Cu)、錫鉛(Sn−Pb)、錫ビスマス(Sn−Bi)等のはんだを用いればよい。
【0081】
金層7にバンプ22を接続する際には、パッドとして用いられるバリア層3、置換めっき層104、ニッケル層6、及び金層7を加熱した状態において、はんだ21及びバンプ22を金層7に対して押圧する。この加熱処理により、金層7は、はんだ21の内部に拡散するため、
図6(B)では金層7はなくなっている。
【0082】
また、
図6(A)に示す置換めっき層104が錫層を含む場合には、加熱処理によって、ニッケル層6のニッケルが置換めっき層104の錫層に拡散するため、置換めっき層104の錫層は、ニッケルと錫の金属間化合物層になる。
図6(B)には、
図6(A)に示す置換めっき層104の錫層がニッケルと錫の金属間化合物層に置き換わった層を置換めっき層104Aとして示す。
【0083】
ここで、ニッケルと錫の金属間化合物層としては、Ni
3Sn
4、Ni
3Sn
2、Ni
3Snの組成を有するものがある。これらはいずれも、化学的に安定しており、マイグレーションは発生しない。
【0084】
このため、実装構造200を作製する段階では、置換めっき層104に錫層が含まれる場合でも、置換めっき層104を、ニッケルと錫の金属間化合物層を含む置換めっき層104Aに置換できるため、錫がマイグレーションを起こし、拡散することを抑制できる。
【0085】
また、実装構造200を作製する段階では、置換めっき層104Aではマイグレーションは発生せず、比較例のパッド構造10のように、Cuシード層4の銅(Cu)がマイグレーションを起こし、銅(Cu)が拡散することも発生しない。
【0086】
従って、実施の形態によれば、マイグレーションを抑制することにより、装置としての信頼性を改善した実装構造200を提供することができる。
【0087】
なお、置換めっき層104の錫層に含まれる錫の量は、ニッケル層6及び金層7を加熱した状態で、ニッケル層6及び金層7の上に、はんだ21を介してバンプ22を接続する際に、錫層に含まれる錫が、錫とニッケル層6に含まれる錫との金属間化合物になる量であるように、実験等を通じて設定しておけばよい。
【0088】
このようにすれば、実装構造200を作製する段階で、置換めっき層104の錫層がすべて錫とニッケル層6に含まれる錫との金属間化合物になるため、錫のマイグレーションを抑制することができる。
【0089】
以上では、バリア層3は、絶縁層1及びビア2の上面の一面に形成されている形態について説明したが、バンプ構造100は、バリア層3を含まなくてもよい。
【0090】
また、以上では、バリア層3がチタン製の金属層である形態について説明した。しかしながら、バリア層3としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、窒化チタン(TiN)、又は窒化タンタル(TaN)等を用いてもよい。これらの金属層を用いても、銅の拡散を抑制することができる。
【0091】
また、絶縁層1(
図5(E)参照)としては、窒化シリコンと酸化シリコンの多層膜(SiN/SiO2)、窒化酸化シリコン(SiON)、又は、各種樹脂、あるいは、有機基板材料等で形成される絶縁層を用いることができる。また、絶縁層1のビア2の周囲の上面と、ビア2の上面は、絶縁層1の表面のうち、ビア2から離間した部分よりも上側に突出していてもよい。このような場合でも、置換めっき層104、ニッケル層6、及び金層7をめっき処理によって形成できるので、後に、金層7にはんだ21でバンプ22を接続することができる。
【0092】
また、以上では、第2金属層の一例として、ニッケル層6及び金層7を用いる形態について説明したが、ニッケル層6と金層7との間に、パラジウム(Pd)層を挿入してもよい。この場合は、ニッケル層6、パラジウム層、及び金層7の積層体が、第2金属層の一例となる。
【0093】
また、ニッケル層6を用いずに、置換めっき層104の上に直接的に金層7を形成してもよい。この場合は、第2金属層の一例は、金層7になる。また、この場合は、実装工程において、金層7ははんだ21内に拡散し、錫とはんだ21との反応による金属間化合物が形成される。
【0094】
以上、本発明の例示的な実施の形態のパッド構造、実装構造、及び、製造方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。