(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上にダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)を成膜した試料に対し分光エリプソメータにより光を照射することにより得られる前記DLCの膜厚または光学定数を前記制御部により取得する取得部と、
膜厚または光学定数に対応付けてDLCの生体に対する生体親和性を記憶した記憶部を参照し、前記取得部により取得した膜厚または光学定数に対応する生体親和性を読み出す読み出し部と、
該読み出し部により読み出した生体親和性を出力する出力部と
を備える情報処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は様々なタイプの試料が提供されており、どのような試料が生体に対しどのような影響を与えるのか不明であるという問題があった。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものである。一つの側面では、本発明は試料の生体親和性を把握することが可能なプログラム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプログラムは、制御部を有するコンピュータに、基板上にダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)を成膜した試料に対し分光エリプソメータにより光を照射することにより得られる前記DLCの膜厚または光学定数を前記制御部により取得し、膜厚または光学定数に対応付けてDLCの
生体に対する生体親和性を記憶した記憶部を参照し、前記制御部により、取得した膜厚または光学定数に対応する生体親和性を読み出し、読み出した生体親和性を前記制御部により出力する処理を実行させる。
【0007】
本発明に係るプログラムは、前記試料に対し分光エリプソメータにより光を照射することにより得られる前記DLCの表面粗さを前記制御部により取得し、膜厚、光学定数または表面粗さに対応付けてDLCの生体親和性を記憶した記憶部を参照し、前記制御部により、取得した膜厚、光学定数または表面粗さに対応する生体親和性を読み出す処理を実行させる。
【0008】
本発明に係るプログラムは、前記記憶部には、DLCに培養する複数の細胞毎に、膜厚または光学定数に対応付けて生体親和性が記憶されており、細胞の種類を前記制御部により受け付け、受け付けた細胞と、取得した膜厚または光学定数とに対応する生体親和性を前記記憶部から読み出す処理を実行させる。
【0009】
本発明に係るプログラムは、前記記憶部には、試料の複数の用途毎に、膜厚または光学定数に対応付けて生体親和性が記憶されており、用途を前記制御部により受け付け、受け付けた用途と、取得した膜厚または光学定数とに対応する生体親和性を前記記憶部から読み出す処理を実行させる。
【0010】
本発明に係るプログラムは、読み出した生体親和性に対応して前記記憶部に記憶された膜厚または光学定数を出力する処理を実行させる。
【0011】
本発明に係る情報処理装置は、基板上にダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)を成膜した試料に対し分光エリプソメータにより光を照射することにより得られる前記DLCの膜厚または光学定数を前記制御部により取得する取得部と、膜厚または光学定数に対応付けてDLCの
生体に対する生体親和性を記憶した記憶部を参照し、前記取得部により取得した膜厚または光学定数に対応する生体親和性を読み出す読み出し部と、該読み出し部により読み出した生体親和性を出力する出力部とを備える。
【0012】
本発明に係る情報処理方法は、制御部を有する情報処理装置を用いた情報処理方法において、基板上にダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)を成膜した試料に対し分光エリプソメータにより光を照射することにより得られる前記DLCの膜厚または光学定数を前記制御部により取得し、膜厚または光学定数に対応付けてDLCの
生体に対する生体親和性を記憶した記憶部を参照し、前記制御部により、取得した膜厚または光学定数に対応する生体親和性を読み出し、読み出した生体親和性を前記制御部により出力する。
【発明の効果】
【0013】
一態様によれば、試料の生体親和性を把握することが可能となる。また成膜に必要な条件をフィードバックでき、効率よく試料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は分光エリプソメータのハードウェア構成を示すブロック図である。分光エリプソメータ1はキセノンランプ2、光照射器3、ステージ4、光取得器5、分光器7、データ取込機8、モータ制御機9、及び、情報処理装置10等を含んで構成される。情報処理装置は例えばパーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)または携帯電話機等である。以下では、情報処理装置10をコンピュータ10と読み替えて説明する。コンピュータ10は、本実施形態の如く分光エリプソメータ1に直接接続する他、インターネットまたはLAN(Local Area Network)等の通信網を介して接続するようにしても良い。その他、分光エリプソメータ1にて取得した膜厚及び光学定数等のデータを、コンピュータ10へ手入力またはUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体を介して入力しても良い。コンピュータ10は入力されたデータに基づき後述する処理を行う。
【0016】
分光エリプソメータ1は、ポリウレタン、ポリスチレン、PMMA(Poly methyl methacrylate)ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート、金属、セラミックスまたは綿繊維等の基板上にDLC(アモルファスカーボン)が成膜された試料50を計測する。DLCは高硬度、耐摩耗性、低摩擦係数、電気的絶縁性、化学安定性、ガスバリヤ性、生体親和性等の特徴を有するアモルファスカーボン膜である。DLCの主な成膜方法は、PVD(Physical Vapor Deposition)法とCVD(Chemical Vapor Deposition)法とに分けられる。具体的には、イオンビーム蒸着、パルスレーザアブレ−ション、フィルタードアークイオンプレーティング法、マグネトロンスパッタ法、プラズマCVD法、PBII&D(Plasma Based Ion Implantation and Deposition)法等が挙げられる。
【0017】
分光エリプソメータ1は、DLCを成膜した試料50に偏光した光を照射すると共に、試料50で反射した光を取得して反射光の偏光状態を測定し、この測定結果と試料50に応じたモデルとに基づき試料50のDLCの特性を解析する。
【0018】
分光エリプソメータ1は、一対の光照射器3及び光取得器5からなる測定器を含む測定解析系の部分及び駆動系部分に大別される。分光エリプソメータ1は測定解析系の部分として、キセノンランプ2及び光照射器3を第1光ファイバケーブル15aで接続する。分光エリプソメータ1は、ステージ4上に載置した試料50へ偏光した状態の光を照射して光を入射させると共に、試料50で反射した光を光取得器5で取り込む。光取得器5は第2光ファイバケーブル15bを介して分光器7に接続されており、分光器7は波長毎に測定を行って測定結果をアナログ信号としてデータ取込機8へ伝送する。データ取込機8は、アナログ信号を所要値に変換してコンピュータ10へ伝送する。コンピュータ10は解析を行う。
【0019】
また、分光エリプソメータ1は駆動系部分として、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7に第1モータM1〜第6モータM6を夫々設けている。第1モータM1〜第6モータM6の駆動をコンピュータ10に接続したモータ制御機9で制御することで、ステージ4、光照射器3、光取得器5及び分光器7を測定に応じた適切な位置、姿勢に変更する。モータ制御機9は、コンピュータ10から出力される指示に基づき第1モータM1〜第6モータM6の駆動制御を行う。
【0020】
次に、分光エリプソメータ1の上述した各部分を順番に詳述する。まず、キセノンランプ2は光源であり、複数の波長成分を含む白色光を発生し、発生した白色光を光照射器3へ第1光ファイバケーブル15aを介して送る。光照射器3は半円弧状のレール6上に配置され、内部には偏光子3aを有しており、白色光を偏光子3aで偏光し、偏光状態の光を試料50へ照射する。また、光照射器3は、第4モータM4が駆動されることでレール6に沿って移動し、照射する光のステージ4のステージ面4aの垂線Hに対する角度(入射角度φ)を調整可能にしている。
【0021】
ステージ4は移動レール部(図示せず)に摺動可能に配置されており、第1モータM1〜第3モータM3の駆動によりステージ4を
図1中のx軸方向、y軸方向(
図1の紙面に直交する方向)及び高さ方向となるz方向へ夫々移動可能にしている。ステージ4の移動により、試料50へ光を入射させる箇所を適宜変更し、試料50の面分析を行う。なお、本実施の形態においては、ステージ4をx軸方向及びy軸方向に動かす例を挙げて説明するがこれに限るものではない。例えばステージ4を固定し、光照射器3及び光取得器5を動かし、照射位置をx軸方向及びy軸方向に移動させるようにしても良い。また、ステージ4の試料50を載置するステージ面4aは、光の反射を防止するため黒色にされている。
【0022】
光取得器5は試料50で反射した光を取得し、取得した光の偏光状態を測定する。光取得器5は、光照射器3と同様にレール6上に配置されており、PEM(Photo Elastic Modulator:光弾性変調器)5a及び検光子(Analyzer)5bを内蔵し、試料50で反射さ
れた光を、PEM5aを介して検光子5bへ導いている。光取得器5は、第5モータM5の駆動によりレール6に沿って移動可能である。光取得器5は、光照射器3の移動に連動して反射角度φと入射角度φとが同角度になるように、モータ制御機9で制御されている。なお、光取得器5に内蔵されたPEM5aは、取り込んだ光を所要周波数(例えば50kHz)で位相変調することにより直線偏光から楕円偏光を得ている。また、検光子5bは、PEM5aで位相変調された各種偏光の中から選択的に偏光を取得して測定する。
【0023】
分光器7は、反射ミラー、回折格子、フォトマルチプライヤー(PMT:光電子倍増管)及び制御ユニット等を内蔵し、光取得器5から第2光ファイバケーブル15bを通じて送られた光を反射ミラーで反射して回折格子へ導いている。回折格子は第6モータM6により角度を変更し出射する光の波長を可変する。分光器7の内部へ進んだ光はPMTで増幅され、光の量が少ない場合でも、測定された信号(光)を安定化させる。また、制御ユニットは測定された波長に応じたアナログ信号を生成してデータ取込機8へ送出する処理を行う。
【0024】
データ取込機8は、分光器7からの信号に基づき反射光の偏光状態(p偏光、s偏光)の振幅比Ψ及び位相差Δを波長毎に算出し、算出した結果をコンピュータ10へ送出する。なお、振幅比Ψ及び位相差Δは、p偏光の振幅反射係数Rp及びs偏光の振幅反射係数Rsに対し以下の数式(1)の関係が成立する。
Rp/Rs=tanΨ・exp(i・Δ)・・・(1)
但し、iは虚数単位である(以下同様)。また、Rp/Rsは偏光変化量ρという。
【0025】
また、コンピュータ10は、データ取込機8で得られた偏光状態の振幅比Ψ及び位相差Δと、試料50に応じたモデルとに基づき試料50の解析を行うと共に、ステージ4の移動等に対する制御を行う。コンピュータ10は、CPU11(Central Processing Unit)、表示部14、入力部13、記憶部15、時計部11e、及びRAM12(Random Access Memory)等を含む。CPU11は、バスを介してコンピュータ10のハードウェア各部と接続されていて、それらを制御すると共に、記憶部15に格納された各種プログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。
【0026】
RAM12は半導体素子等であり、CPU11の指示に従い必要な情報の書き込み及び読み出しを行う。表示部14は例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等である。入力部13はキーボード及びマウス等である。入力部13は表示部14上に積層されたタッチパネルであっても良い。時計部11eは日時情報をCPU11へ出力する。記憶部15は例えばハードディスクまたは大容量メモリで構成され、解析用のコンピュータプログラム、及びステージ4の移動制御用のコンピュータプログラム等の各種プログラムを予め記憶すると共に、表示部14へ表示するための各種メニュー画像のデータ、試料50に係る既知のデータ、複数のモデル、モデルの作成に利用される複数の分散式、作成されたモデル、及び各種試料50に応じたリファレンスデータ等を記憶する。
【0027】
記憶部15は、その他、生体データベース(以下、DBという)151及び結果DB152等を格納している。なお、これらのDBは、図示しないDBサーバ等に記憶しても良い。分光エリプソメータ1は試料50に成膜されたDLCに対し計測を行う。CPU11は、分光エリプソメータ1から取得された計測データに基づき、膜厚、光学定数及び表面粗さを算出する。CPU11は、算出した膜厚、光学定数及び表面粗さを結果DB152に記憶する。なお、本実施形態では光学定数として、消衰係数及び屈折率の2つを用いる例を挙げて説明するが、いずれか一方のみを利用しても良い。また本実施形態では膜厚、消衰係数、屈折率及び表面粗さの4つを記憶する例を挙げるが、1つ乃至3つだけを記憶しても良い。
【0028】
図2は結果DB152のレコードレイアウトを示す説明図である。結果DB152は試料IDフィールド、膜厚フィールド、屈折率フィールド、消衰係数フィールド及び表面粗さフィールド等を含む。試料IDフィールドには、評価の対象となるDLCが成膜された試料50を特定するための識別情報(以下、試料IDという)が記憶されている。膜厚フィールドには、試料IDに対応付けて試料50に成膜されたDLCの膜厚(オングストローム)が記憶されている。屈折率フィールドには、試料IDに対応付けて試料50に成膜されたDLCの屈折率が記憶されている。
【0029】
消衰係数フィールドには、試料IDに対応付けて試料50に成膜されたDLCの消衰係数が記憶されている。表面粗さフィールドには、試料IDに対応付けてDLC膜の表面粗さ(オングストローム)が記憶されている。CPU11は、新に試料50を計測した場合、試料IDを生成し、結果DB152に記憶する。CPU11は、試料50に成膜されたDLCの膜厚、屈折率、消衰係数及び表面粗さを、試料IDに対応付けて結果DB152に記憶する。
【0030】
図3は生体DB151のレコードレイアウトを示す説明図である。生体DB151は膜厚フィールド、屈折率フィールド、消衰係数フィールド、表面粗さフィールド及び細胞増殖割合フィールド等を含む。生体親和性としての細胞増殖割合はDLC表面に培養した細胞が、一定時間経過後にどの程度増殖したかを示す割合である。本実施形態では増殖率が高いほど、生体親和性が高く、増殖率が低いほど、生体親和性が低いものとして説明する。細胞は例えばマウス由来の繊維芽細胞(NIH-3T3)等を用いる。初期細胞数は例えば20000個とし、例えば24時間後の細胞数の増減を顕微鏡により計数する。生体DB151には実験結果に基づくデータが予め記憶されている。また生体親和性の一例として細胞増殖割合を挙げたがこれに限るものではない。例えば、生体親和性として抗血栓性を用いても良い。抗血栓性が高い場合、アルブミンの吸収量が増加し、フィブリノーゲン及びグロブリンの吸着が減少する。実験を通じて膜厚等に対応する抗血栓性を生体DB151に記憶しておけばよい。その他生体親和性として、繊維上の静菌活性値または殺菌活性値等を用いても良い。
【0031】
膜厚フィールドにはDLCの膜厚(オングストローム)、屈折率フィールドにはDLCの屈折率、消衰係数フィールドにはDLCの消衰係数が記憶されている。また表面粗さフィールドには、DLCの表面粗さ(オングストローム)が記憶されている。細胞増殖割合フィールドには、膜厚、屈折率、消衰係数及び表面粗さに対応付けてDLC膜に培養した細胞の増殖割合(%)が記憶されている。すなわち生体DB151には予め実験により得られた、膜の屈折率等と生体親和性の関係性が記憶されている。
図3に示すように、例えば屈折率が1.573の場合に細胞増殖割合が410%と大幅に上昇していることが理解できる。なお、本実施形態では、膜厚、屈折率、消衰係数、表面粗さの4つを記憶する例を挙げたがこれに限るものではない。1つ以上であればその数は問わない。また膜厚、屈折率、消衰係数、表面粗さ以外に、膜の不均一性を記憶してもよい。本実施形態では説明を容易にするために屈折率のみを用いる例を挙げて説明する。
【0032】
CPU11は結果DB152から評価対象の屈折率を読み出す。CPU11は、読み出した屈折率及び生体DB151を参照し、読み出した屈折率との差が最も小さい屈折率を抽出する。CPU11は、抽出した屈折率に対応する細胞増殖割合を生体DB151から読み出す。CPU11は、読み出した細胞増殖割合を表示部14へ出力する。その他、CPU11は、図示しない通信部を介して細胞増殖割合を他のコンピュータ(図示せず)へ出力しても良い。なお、屈折率の最も小さい差が、記憶部15に記憶した閾値より大きい場合、対応する細胞増殖割合が存在しないことを示す情報(以下、対象無し情報という)を出力しても良い。
【0033】
また複数のパラメータを利用する場合、以下の処理により細胞増殖割合を抽出すればよい。膜厚及び屈折率を利用する例を挙げて説明する。CPU11は、結果DB152から評価対象の膜厚及び屈折率を読み出す。CPU11は、生体DB151に記憶した膜厚と読み出した膜厚との差の2乗を算出する。同様にCPU11は、生体DB151に記憶した膜厚に対応する屈折率と読み出した屈折率との差の2乗を算出する。なお、差を2乗するほか、2乗後に平方根を算出しても良い。その他2乗せずに差の絶対値を求めるようにしても良い。CPU11は、2乗の総和を算出する。CPU11は、上述した処理を生体DB151の各レコードに対し実行する。CPU11は、総和が最小の膜厚及び屈折率に対応する細胞増殖割合を生体DB151から読み出す。同様に、総和が、記憶部15に記憶した閾値より大きい場合、対象無し情報を出力しても良い。その他、膜厚、屈折率、消衰係数及び表面粗さの全てを用いる、膜厚及び消衰係数を用いる、膜厚と表面粗さを用いる、屈折率のみ用いる、屈折率及び表面粗さを用いる等、全ての組み合わせを利用して、細胞増殖割合を読み出しても良い。
【0034】
以上のハードウェア構成において、各種ソフトウェア処理を、フローチャートを用いて説明する。
図4は細胞増殖割合の出力処理手順を示すフローチャートである。CPU11は、分光エリプソメータ1により計測を行い、演算処理により求めたDLCの屈折率を取得する(ステップS41)。CPU11は、生体DB151から屈折率を読み出す(ステップS42)。CPU11は、ステップS42で読み出した屈折率と、ステップS41で取得した屈折率との差の絶対値が最小の屈折率を抽出する(ステップS43)。CPU11は、記憶部15から閾値を読み出す(ステップS44)。
【0035】
CPU11は、絶対値が閾値を超えるか否かを判断する(ステップS45)。CPU11は、絶対値が閾値を超えると判断した場合(ステップS45でYES)、表示部14に対象無し情報を出力する(ステップS46)。CPU11は、絶対値が閾値を超えないと判断した場合(ステップS45でNO)、処理をステップS47へ移行させる。CPU11は、ステップS43で抽出した屈折率に対応する細胞増殖割合を読み出す(ステップS47)。CPU11は、読み出した細胞増殖割合を表示部14に出力する(ステップS48)。これにより、試料50を製造する者は成膜したDLCがどの程度生体に親和するかを客観的に把握することが可能となる。また医療関係者にとっても、用いるDLCが生体に対しどのような影響を与えるか事前に把握することが可能となる。
【0036】
実施の形態2
実施の形態2は複数の細胞を用いる形態に関する。
図5は実施の形態2に係る生体DB151のレコードレイアウトを示す説明図である。生体DB151は培養する細胞毎に、膜厚、屈折率、消衰係数または表面粗さに対応する細胞増殖割合が記憶されている。すなわち生体DB151には予め実験により得られた細胞別に、膜の屈折率等と生体親和性の関係性が記憶されている。なお、
図5では生体親和性の一例として細胞増殖割合を挙げたがこれに限るものではない。生体親和性として抗血栓性、静菌活性値または殺菌活性値等を用いても良い。
図6は実施の形態2に係る細胞増殖割合の出力処理手順を示すフローチャートである。CPU11は、分光エリプソメータ1により計測を行い、演算処理により求めたDLCの屈折率を取得する(ステップS61)。CPU11は、入力部13から細胞の種類を受け付ける(ステップS62)。なお、細胞の種類は入力部13から入力する他、図示しない通信部から細胞の種類を受け付けても良い。
【0037】
CPU11は、生体DB151から受け付けた細胞に対応する屈折率を読み出す(ステップS63)。CPU11は、ステップS63で読み出した屈折率と、ステップS61で取得した屈折率との差の絶対値が最小の屈折率を抽出する(ステップS64)。CPU11は、記憶部15から閾値を読み出す(ステップS65)。
【0038】
CPU11は、絶対値が閾値を超えるか否かを判断する(ステップS66)。CPU11は、絶対値が閾値を超えると判断した場合(ステップS66でYES)、表示部14に対象無し情報を出力する(ステップS67)。CPU11は、絶対値が閾値を超えないと判断した場合(ステップS66でNO)、処理をステップS68へ移行させる。CPU11は、ステップS64で抽出した屈折率に対応する細胞増殖割合を読み出す(ステップS68)。CPU11は、読み出した細胞増殖割合を表示部14に出力する(ステップS69)。これにより、細胞及び成膜特性により細胞増殖割合が相違するところ、様々な特性に応じた生体親和性を提供することが可能となる。
【0039】
本実施の形態2は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
実施の形態3
実施の形態3は用途に応じた生体親和性を出力する形態に関する。
図7は実施の形態3に係る生体DB151のレコードレイアウトを示す説明図である。生体DB151は用途毎に、膜厚、屈折率、消衰係数または表面粗さに対応する生体親和性を記憶している。なお、実施の形態1で述べたとおり膜の不均一性に対応する生体親和性を記憶しても良い。用途は試料50についての用途であり、例えば人工心臓、人工歯根、人工骨、人工血管、繊維材料、歯矯正用ワイヤ、ステント、またはカテーテル等がある。用途に応じて好ましい生体親和性が決まっている。また用途により定まる生体親和性を実現しうる膜厚、屈折率、消衰係数、表面粗さまたは膜の不均一性、若しくは、これらの組み合わせも定まる。生体DB151には予め実験により得られた用途別の、膜の屈折率等と生体親和性の関係性が記憶されている。なお、本実施形態で述べる処理と、実施の形態2で述べた処理を組み合わせても良い。すなわち、生体DB151には、用途及び細胞毎に屈折率等に対する生体親和性を記憶しておいても良い。なお、
図7では生体親和性の一例として細胞増殖割合を挙げたがこれに限るものではない。生体親和性として抗血栓性、静菌活性値または殺菌活性値等を用いても良い。
【0041】
図8は実施の形態3に係る細胞増殖割合の出力処理手順を示すフローチャートである。CPU11は、分光エリプソメータ1により計測を行い、演算処理により求めたDLCの屈折率を取得する(ステップS81)。CPU11は、入力部13から用途を受け付ける(ステップS82)。なお、用途は入力部13から入力する他、図示しない通信部から受け付けても良い。
【0042】
CPU11は、生体DB151から受け付けた用途に対応する屈折率を読み出す(ステップS83)。CPU11は、ステップS83で読み出した屈折率と、ステップS81で取得した屈折率との差の絶対値が最小の屈折率を抽出する(ステップS84)。CPU11は、記憶部15から閾値を読み出す(ステップS85)。
【0043】
CPU11は、絶対値が閾値を超えるか否かを判断する(ステップS86)。CPU11は、絶対値が閾値を超えると判断した場合(ステップS86でYES)、表示部14に対象無し情報を出力する(ステップS87)。CPU11は、絶対値が閾値を超えないと判断した場合(ステップS86でNO)、処理をステップS88へ移行させる。CPU11は、ステップS84で抽出した屈折率に対応する細胞増殖割合を読み出す(ステップS88)。CPU11は、読み出した細胞増殖割合を表示部14に出力する(ステップS89)。これにより、計測した試料50が用途に応じて適切な生体親和性を有するか否かを判断することが可能となる。
【0044】
本実施の形態3は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1及び2と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
実施の形態4
実施の形態4は好ましい成膜条件を出力する形態に関する。CPU11は、ステップS48、S69またはS89にて細胞増殖割合を出力するほか、好ましい成膜条件を出力しても良い。
図9は実施の形態4に係る出力処理手順を示すフローチャートである。実施の形態1、2または3のいずれかの処理の後、以下の処理を行う。本実施形態では実施の形態3の後に行う処理を説明する。CPU11は、分光エリプソメータ1により計測を行い、演算処理により求めたDLCの屈折率を取得する(ステップS81)。CPU11は、入力部13から用途を受け付ける(ステップS82)。ステップS83〜88の処理は同様であるので省略する。CPU11は、細胞増殖割合を表示部14に出力する(ステップS89)。CPU11は、生体DB151を参照し、出力した細胞増殖割合に対応する膜厚、屈折率、消衰係数、及び表面粗さを読み出す(ステップS91)。CPU11は、読み出した膜厚、屈折率、消衰係数及び表面粗さを表示部14に出力する(ステップS92)。なお、膜厚、屈折率、消衰係数及び表面粗さの全てを読み出すほか、一部であっても良い。このほか、上述したとおり、細胞増殖割合に対応する膜の不均一性を読み出しても良い。また、CPU11は、読み出した膜厚、屈折率、消衰係数または表面粗さを、通信網を介して図示しないコンピュータまたは成膜装置へ出力するようにしても良い。また生体DB151には、細胞増殖割合に対応付けて、用途毎に推奨すべき装置及び成膜方法が記憶されている。推奨すべき装置及び成膜方法についてはテキスト形式、またはHTML(HyperText Markup Language)形式等により生体DB151に記憶しておけばよい。CPU11は、ステップS83で出力した細胞増殖割合及びステップS82で受け付けた用途に対応する装置及び成膜方法を、生体DB151から読み出し、表示部14に出力する(ステップS93)。これにより、DLCを成膜した者は、どのように成膜条件を変更すれば生体親和性が高いDLCを成膜することができるかを把握することが可能となる。
【0046】
本実施の形態4は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1乃至3と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
実施の形態5
図10は実施の形態5に係る分光エリプソメータ1のハードウェア群を示すブロック図である。コンピュータ10を動作させるためのプログラムは、ディスクドライブ等の読み取り部10AにCD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)ディスク、メモリーカード、またはUSBメモリ等の可搬型記録媒体1Aを読み取らせて記憶部15に記憶しても良い。また当該プログラムを記憶したフラッシュメモリ等の半導体メモリ1Bをコンピュータ10内に実装しても良い。さらに、当該プログラムは、インターネット等の通信網を介して接続される他のサーバコンピュータ(図示せず)からダウンロードすることも可能である。以下に、その内容を説明する。
【0048】
図10に示すコンピュータ10は、上述した各種ソフトウェア処理を実行するプログラムを、可搬型記録媒体1Aまたは半導体メモリ1Bから読み取り、或いは、通信網を介して他のサーバコンピュータ(図示せず)からダウンロードする。当該プログラムは、制御プログラムとしてインストールされ、RAM12にロードして実行される。これにより、上述したコンピュータ10として機能する。
【0049】
本実施の形態5は以上の如きであり、その他は実施の形態1乃至4と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
実施の形態6
実施の形態6は生体DB151に範囲を記憶する形態に関する。上述した実施形態では取得した屈折率と、生体DB151に記憶した屈折率との差が小さい細胞増殖割合を抽出する例を挙げて説明したがこれに限るものではない。本実施形態の如く、生体DB151に屈折率等の範囲を記憶しておき、取得した屈折率が当該範囲に属した場合に、対応する細胞増殖割合を抽出しても良い。生体DB151の膜厚フィールドには、細胞増殖割合に対応付けて膜厚の範囲が記憶されている。屈折率フィールドには、細胞増殖割合に対応付けて屈折率の範囲が記憶されている。消衰係数フィールドにも、細胞増殖割合に対応付けて消衰係数が記憶されている。表面粗さフィールドには、細胞増殖割合に対応付けて表面粗さの範囲が記憶されている。なお、実施の形態1で述べたように、細胞増殖割合に対応付けて膜の不均一性の範囲を記憶しても良い。また、生体DB151に記憶する細胞増殖割合も範囲を記憶するようにしても良い。
【0051】
図11は細胞増殖割合の出力処理手順を示すフローチャートである。CPU11は、分光エリプソメータ1により計測を行い、演算処理により求めたDLCの屈折率を取得する(ステップS111)。CPU11は、生体DB151から屈折率の範囲を読み出す(ステップS112)。CPU11は、取得した屈折率が属する範囲に対応する細胞増殖割合を、生体DB151から読み出す(ステップS113)。CPU11は、細胞増殖割合を表示部14に出力する(ステップS114)。屈折率及び膜厚等、複数のパラメータを用いる場合、それぞれのパラメータについてステップS111〜S114の処理を行う。
【0052】
CPU11は、各パラメータに対応する細胞増殖割合が一致する場合、一致した細胞増殖割合を表示部14に出力する。CPU11は、一致しない場合、読み出した各パラメータに対応する細胞増殖割合の平均値を求める。CPU11は、平均値を表示部14に出力する。また、CPU11は、各パラメータに対応する細胞増殖割合が一致しない場合、細胞増殖割合の最小値及び最大値、または、最小値から最大値の範囲を出力しても良い。例えば膜厚に対応する細胞増殖割合がA、屈折率に対応する細胞増殖割合がB、消衰係数に対応する細胞増殖割合がCであったとする。ここでA<B<Cの関係にある場合、CPU11は、最小値A〜最大値Bを細胞増殖割合の範囲として出力してもよい。その他、それぞれのパラメータに対応する細胞増殖割合を表示部14に出力しても良い。この場合、膜厚、消衰係数、屈折率及び表面粗さに対応する細胞増殖割合がそれぞれ表示される。なお、本実施形態においては取得した屈折率が属する範囲に対応する細胞増殖割合を一つ読み出す例を挙げたがこれに限るものではない。生体DB151に記憶する細胞増殖割合に対応する屈折率等の範囲を相互にオーバーラップさせても良い。CPU11は取得した屈折率が相互にオーバーラップする範囲に属する場合、対応する複数の細胞増殖割合を読み出す。例えば、CPU11は、取得した屈折率が生体DB151に記憶した2つの屈折率の範囲に属する場合、これら2つの屈折率の範囲に対応する2つの細胞増殖割合を読み出して、表示部14に出力する。またはCPU11は最小値の細胞増殖割合と、最大値の細胞増殖割合とを読み出し、最小値から最大値までを細胞増殖割合の範囲として出力しても良い。これにより本実施の形態におけるアルゴリズムにおいても、同様に各種情報を提供することが可能となる。
【0053】
本実施の形態6は以上の如きであり、その他は実施の形態1乃至5と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0054】
実施の形態7
実施の形態7は複数の生体親和性を利用する形態に関する。
図12は実施の形態7に係る生体DB151のレコードレイアウトを示す説明図である。
図3、
図5及び
図7の例では膜厚等に対し、一の生体親和性(図では細胞増殖割合)を記憶する例を示したが、複数の生体親和性を記憶しても良い。例えば膜厚等に対し、細胞増殖割合、抗血栓性、静菌活性値または殺菌活性の一つまたは複数を対応付けて記憶しても良い。
図12の例では、膜厚、屈折率、消衰計数及び表面粗さに対して、抗血栓性及び静菌活性値の2つが生体親和性として記憶されている。すなわち生体DB151には予め実験により得られた、膜の屈折率等と生体親和性の関係性が記憶されている。これにより、様々な観点から最適な条件を抽出することが可能となる。
【0055】
本実施の形態7は以上の如きであり、その他は実施の形態1乃至6と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。