(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体デバイスの種類が飛躍的に増大しており、デバイス毎やCMP工程毎(酸化膜研磨や金属膜研磨など)に、異なる膜厚分布を有する膜の研磨が必要とされている。この理由は、CMP工程の前に行われる成膜工程が膜の種類によって異なるためにウェハの初期膜厚分布が異なるからである。
【0007】
通常、ウェハは、その全面に亘って均一な膜厚分布を有することが必要とされる。ウェハの半径方向に初期膜厚が異なる場合には、特許文献1に示されるように、ウェハに当接する弾性膜によって形成される同心状の複数の圧力室内の圧力を調整することにより、ウェハの半径方向に沿った研磨レート(除去レートともいう)を調整することが可能である。
【0008】
成膜装置の特性などにより、研磨されるウェハの初期膜厚がウェハの周方向に沿ってばらつく場合がある。特に、ウェハの周縁部では初期膜厚が周方向に沿ってばらつく傾向がある。このような膜厚のばらつきを減少させるために、いくつかの研磨装置が提案されている。例えば、特許文献2には、ウェハの周方向に沿って分割された環状ピストンを用いた研磨装置が開示されている。さらに、特許文献1には、リテーナリングを押圧するための圧力室を周方向に沿って分割した基板保持装置が開示されている。
【0009】
しかしながら、これらの研磨装置は、ウェハの周方向に分割された押圧要素を用いるために、基板保持装置の構造が非常に複雑になる。さらに、分割された押圧要素の押圧力にばらつきが出る場合もある。例えば、特許文献1では、分割された各圧力室が伸縮する動作にばらつきが生じることがある。また、特許文献2では、各ピストンが下降する際の摺動抵抗にピストン間でばらつきがあることがある。
【0010】
特に、特許文献2に開示される基板保持装置では、ウェハの周方向に分割された複数の剛体ピストンがウェハを押圧するために、ウェハの研磨レートが周方向において不連続になることがある。加えて、ピストンの平面度のばらつきがウェハの研磨レートのばらつきとして現れる場合もある。
【0011】
本発明は、上述した従来の問題点を解決するためになされたものであり、ウェハなどの基板の周方向に沿った膜厚のばらつきを除去することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨装置であって、前記基板を前記研磨面に対して押し付ける弾性膜を有するとともに、前記基板を囲むように配置された、前記研磨面に接触するリテーナリングを有する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドをその軸心を中心として回転させる回転機構と、前記研磨ヘッドの回転角度を検出する回転角度検出器と、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記基板の研磨条件を周期的に変更する
ことで、前記基板の周方向の膜厚分布のばらつきを低減させる研磨制御部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記研磨制御部は、前記研磨ヘッドに保持される前の前記基板の周方向の向きを示す前記基板の初期角度を取得し、前記基板を保持する前の前記研磨ヘッドの初期回転角度を取得することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨制御部は、前記基板の初期角度を前記研磨装置の外部から通信手段を介して取得することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板に形成されたノッチを検出するノッチ検出器をさらに備え、前記研磨制御部は、前記ノッチの位置から前記基板の初期角度を取得することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記弾性膜は前記基板を前記研磨面に押圧するための流体が供給される環状の圧力室を形成し、前記研磨装置は、前記環状の圧力室内の流体の圧力を調整する圧力レギュレータをさらに備えており、前記研磨制御部は、前記圧力レギュレータを操作して前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記環状の圧力室内の圧力を周期的に変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、前記リテーナリングを前記研磨面に押し付けるリテーナリング押圧機構をさらに備えており、前記研磨制御部は、前記リテーナリング押圧機構を操作して前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記リテーナリングの前記研磨面に対する圧力を周期的に変化させることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、前記研磨ヘッドを上下動させる上下動機構をさらに備えており、前記研磨制御部は、前記上下動機構を操作して前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記研磨ヘッドの高さを周期的に変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、前記リテーナリングの一部に局所荷重を加える局所荷重付与装置をさらに備えており、前記研磨制御部は、前記局所荷重付与装置を操作して前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記局所荷重を周期的に変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨制御部は、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記研磨ヘッドの角速度を周期的に変化させることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、基板を研磨面に摺接させて該基板を研磨する研磨方法であって、研磨ヘッドで前記基板を保持し、前記研磨ヘッドを回転させながら該研磨ヘッドで前記基板を前記研磨面に押圧し、前記基板を前記研磨面に押圧しているときに、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記基板の研磨条件を周期的に変更する
ことで、前記基板の周方向の膜厚分布のばらつきを低減させることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドに保持される前の前記基板の周方向の向きを示す前記基板の初期角度を取得し、前記基板を保持する前の前記研磨ヘッドの初期回転角度を取得する工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記研磨ヘッドの前記基板に加える押圧力を周期的に変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドは、前記基板を囲むように配置された、前記研磨面に接触するリテーナリングを有しており、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記リテーナリングの前記研磨面に対する圧力を周期的に変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記研磨ヘッドの高さを周期的に変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドは、前記基板を囲むように配置された、前記研磨面に接触するリテーナリングを有しており、前記研磨ヘッドを回転させながら前記研磨ヘッドで該基板を前記研磨面に押圧する工程は、前記研磨ヘッドを回転させながら前記研磨ヘッドで該基板を前記研磨面に押圧しつつ前記リテーナリングの一部に局所荷重を加える工程であり、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記局所荷重を周期的に変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドの回転角度に同期させて前記研磨ヘッドの角速度を周期的に変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、研磨ヘッドの回転角度に同期して研磨条件が周期的に変更される。研磨条件の変更は、基板の膜厚に大きく反映される。したがって、基板の周方向に沿った研磨レート(除去レート)を制御することが可能となり、基板の周方向に沿った膜厚のばらつきを除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態における研磨装置を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、基板の一例であるウェハWを保持して回転させる研磨ヘッド(基板保持装置)1と、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、研磨パッド2に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給ノズル5とを備えている。
【0021】
研磨ヘッド1は、その下面に真空吸引によりウェハWを保持できるように構成されている。研磨ヘッド1および研磨テーブル3は、矢印で示すように同じ方向に回転し、この状態で研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。研磨液供給ノズル5からは研磨液が研磨パッド2上に供給され、ウェハWは、研磨液の存在下で研磨パッド2との摺接により研磨される。
【0022】
研磨装置は、ウェハWの膜厚に従って変化する膜厚信号を取得する膜厚センサ7をさらに備えている。膜厚センサ7は、研磨テーブル3内に設置されている。研磨テーブル3が1回転するたびに、膜厚センサ7はウェハWの中心部を含む複数の領域での膜厚信号を取得する。膜厚センサ7の例としては、光学式センサや渦電流センサが挙げられる。
【0023】
ウェハWの研磨中、膜厚センサ7は研磨テーブル3と共に回転し、記号Aに示すようにウェハWの表面を横切りながら膜厚信号を取得する。この膜厚信号は、膜厚を直接または間接に示す指標値であり、ウェハWの膜厚の減少に従って変化する。膜厚センサ7は研磨制御部9に接続されており、膜厚信号は研磨制御部9に送られるようになっている。研磨制御部9は、膜厚信号によって示されるウェハWの膜厚が所定の目標値に達したときに、ウェハWの研磨を終了させる。
【0024】
図2は、研磨装置の詳細な構成を示す図である。研磨テーブル3は、テーブル軸3aを介してその下方に配置されるテーブルモータ13に連結されており、そのテーブル軸3aの周りに回転可能になっている。研磨テーブル3の上面には研磨パッド2が貼付されており、研磨パッド2の上面がウェハWを研磨する研磨面2aを構成している。テーブルモータ13により研磨テーブル3を回転させることにより、研磨面2aは研磨ヘッド1に対して相対的に移動する。したがって、テーブルモータ13は、研磨面2aを水平方向に移動させる研磨面移動機構を構成する。
【0025】
研磨ヘッド1は、研磨ヘッドシャフト11に接続されており、この研磨ヘッドシャフト11は、上下動機構27によりヘッドアーム16に対して上下動するようになっている。この研磨ヘッドシャフト11の上下動により、ヘッドアーム16に対して研磨ヘッド1の全体を昇降させ位置決めするようになっている。研磨ヘッドシャフト11の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。
【0026】
研磨ヘッドシャフト11および研磨ヘッド1を上下動させる上下動機構27は、軸受26を介して研磨ヘッドシャフト11を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介してヘッドアーム16に固定されている。
【0027】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。研磨ヘッドシャフト11は、ブリッジ28と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これにより研磨ヘッドシャフト11および研磨ヘッド1が上下動する。ヘッドアーム16には、ブリッジ28に対向する研磨ヘッド高さセンサ39が設けられている。この研磨ヘッド高さセンサ39は、研磨ヘッド1と一体に上下動するブリッジ28の位置から研磨ヘッド1の高さを測定する。
【0028】
また、研磨ヘッドシャフト11はキー(図示せず)を介して回転筒12に連結されている。この回転筒12はその外周部にタイミングプーリ14を備えている。ヘッドアーム16には研磨ヘッドモータ18が固定されており、上記タイミングプーリ14は、タイミングベルト19を介して研磨ヘッドモータ18に設けられたタイミングプーリ20に接続されている。したがって、研磨ヘッドモータ18を回転駆動することによってタイミングプーリ20、タイミングベルト19、およびタイミングプーリ14を介して回転筒12および研磨ヘッドシャフト11が一体に回転し、研磨ヘッド1がその軸心を中心として回転する。研磨ヘッドモータ18、タイミングプーリ20、タイミングベルト19、およびタイミングプーリ14は、研磨ヘッド1をその軸心を中心として回転させる回転機構を構成する。ヘッドアーム16は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたアームシャフト21によって支持されている。
【0029】
研磨ヘッド1は、その下面にウェハWを保持できるようになっている。ヘッドアーム16はアームシャフト21を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハWを保持した研磨ヘッド1は、ヘッドアーム16の旋回によりウェハWの受渡位置から研磨テーブル3の上方位置に移動される。研磨ヘッド1および研磨テーブル3をそれぞれ回転させ、研磨テーブル3の上方に設けられた研磨液供給ノズル5から研磨パッド2上に研磨液を供給する。そして、研磨ヘッド1によりウェハWを研磨パッド2の研磨面2aに押圧し、研磨液の存在下でウェハWを研磨パッド2の研磨面2aに摺接させる。ウェハWの表面は研磨液の化学成分による化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒の機械的作用とにより研磨される。
【0030】
図3は、研磨装置を上から見た模式図である。
図3に示すように、複数のウェハを格納したFOUP42が研磨装置にセットされる。FOUP(Front-Opening Unified Pod)42は、複数のウェハをその内部に格納することができる搬送容器である。ウェハWはFOUP42に格納された状態で研磨装置に導入され、研磨装置から搬出される。通常、
図3に示すように、複数のFOUP42が研磨装置にセットされる。1つのFOUP42には最大25枚のウェハを格納することができる。
【0031】
研磨装置は、FOUP(搬送容器)42と研磨ヘッド1との間でウェハWを搬送する搬送装置47を備えている。搬送装置47は、矢印に示す方向にウェハWを搬送することが可能に構成されている。より具体的には、搬送装置47は複数のFOUP42のうちの1つから1枚のウェハWを取り出し、研磨テーブル3の側方にある受渡位置にウェハWを搬送するように構成されている。搬送装置47は、搬送ロボット、ウェハWを水平方向に移動させるリニアトランスポータ、ウェハWを鉛直方向に移動させるプッシャなどの組み合わせから構成されるが、搬送装置47はこの構成に限定されない。
【0032】
上述したように、研磨ヘッド1は、ヘッドアーム16の旋回により受渡位置と研磨テーブル3の上方位置との間を移動可能に構成されている。研磨ヘッド1は受渡位置においてウェハWを搬送装置47から受け取り、下面でウェハWを保持し、ウェハWとともに研磨テーブル3の上方位置に移動し、そしてウェハWを研磨テーブル3上の研磨パッド2に押し付ける。
【0033】
搬送装置47に沿って反転機54、ノッチ検出器55、および膜厚測定器56が配置されている。
図3では、ノッチ検出器55および膜厚測定器56は、互いに横に並んでいるが、縦に並んで配列されていてもよい。搬送装置47は、ウェハWを反転機54、ノッチ検出器55、および膜厚測定器56に搬送することが可能に構成されている。
【0034】
反転機54はウェハWを反転させる装置である。ウェハWはその研磨される面が上向きの状態でFOUP42に格納されている。したがって、研磨ヘッド1が研磨パッド2の上面から構成される研磨面2aに押し付けることができるようにするために、ウェハWの研磨される面が下を向くように反転機54により反転される。ノッチ検出器55は、ウェハWの周縁部に形成されたノッチを検出する装置である。このノッチはウェハWの周方向の向きを示す切り欠きである。膜厚測定器56は、ウェハの膜厚を測定するインライン型膜厚測定器である。
【0035】
次に、基板保持装置を構成する研磨ヘッド1について説明する。
図4は、研磨ヘッド1の断面図である。
図4に示すように、研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨面2aに対して押圧するヘッド本体10と、ウェハWを囲むように配置されたリテーナリング40とを備えている。ヘッド本体10およびリテーナリング40は、研磨ヘッドシャフト11の回転により一体に回転するように構成されている。リテーナリング40は、ヘッド本体10とは独立して上下動可能に構成されている。
【0036】
ヘッド本体10の下面には、ウェハWの裏面に当接する弾性膜45が取り付けられている。弾性膜45の下面は、ウェハWを研磨面2aに押圧する押圧面45aを構成する。弾性膜45は複数の環状の隔壁45bを有しており、これらの隔壁45bにより、弾性膜45とヘッド本体10との間に4つの圧力室、すなわち、センター圧力室50、リプル圧力室51、アウター圧力室52、およびエッジ圧力室53が形成されている。センター圧力室50は円形であり、リプル圧力室51、アウター圧力室52、およびエッジ圧力室53は環状である。センター圧力室50、リプル圧力室51、アウター圧力室52、およびエッジ圧力室53は、同心状に配置されている。本実施形態では、弾性膜45とヘッド本体10との間に4つの圧力室が形成されているが、圧力室の数は4つよりも多くても少なくてもよい。
【0037】
圧力室50〜53はロータリージョイント25および圧力レギュレータR1〜R4を経由して流体供給源65に接続されており、流体供給源65から加圧流体が圧力室50〜53に供給されるようになっている。圧力レギュレータR1〜R4は、これら4つの圧力室50〜53内の圧力を独立に調整できるようになっている。さらに、圧力室50〜53は、これら圧力室50〜53内に負圧を形成する図示しない真空源(例えば真空ポンプ)にも接続されている。弾性膜45は、リプル圧力室51またはアウター圧力室52に対応する位置に通孔(図示せず)を有しており、この通孔に負圧を形成することにより押圧面45a上にウェハWを保持できるようになっている。
【0038】
センター圧力室50、リプル圧力室51、アウター圧力室52、およびエッジ圧力室53は大気開放機構(図示せず)にも接続されており、センター圧力室50、リプル圧力室51、アウター圧力室52、およびエッジ圧力室53を大気開放することも可能である。
【0039】
リテーナリング40は、弾性膜45およびウェハWを囲むように配置されており、ウェハWの研磨中にウェハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにウェハWを保持している。リテーナリング40の上部は、環状のリテーナリング押圧機構60に連結されており、このリテーナリング押圧機構60は、リテーナリング40の上面の全体に均一な下向きの荷重を与え、これによりリテーナリング40の下面の全体を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。
【0040】
リテーナリング押圧機構60は、リテーナリング40の上部に固定された環状のピストン61と、ピストン61の上面に接続された環状のローリングダイヤフラム62とを備えている。ローリングダイヤフラム62の内部には環状のリテーナリング圧力室63が形成されている。このリテーナリング圧力室63はロータリージョイント25および圧力レギュレータR5を経由して流体供給源65に接続されている。
【0041】
流体供給源65からリテーナリング圧力室63に加圧流体(例えば、加圧空気)を供給すると、ローリングダイヤフラム62がピストン61を下方に押し下げ、さらに、ピストン61はリテーナリング40の全体を下方に押し下げる。このようにして、リテーナリング押圧機構60は、リテーナリング40の下面の全体を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。リテーナリング圧力室63内の圧力は、圧力レギュレータR5によって調整される。
【0042】
さらに、リテーナリング圧力室63は、このリテーナリング圧力室63内に負圧を形成する図示しない真空源(例えば真空ポンプ)にも接続されている。リテーナリング圧力室63内に負圧を形成することにより、リテーナリング40の全体を上昇させることができる。リテーナリング圧力室63は大気開放機構(図示せず)にも接続されており、リテーナリング圧力室63を大気開放することも可能である。
【0043】
圧力レギュレータR1〜R5は研磨制御部9に接続されており、これら圧力レギュレータR1〜R5の動作は研磨制御部9によって制御される。
【0044】
リテーナリング40は、リテーナリング押圧機構60に着脱可能に連結されている。より具体的には、ピストン61は金属などの磁性材から形成されており、リテーナリング40の上部には複数の磁石70が配置されている。これら磁石70がピストン61を引き付けることにより、リテーナリング40がピストン61に磁力により固定される。
【0045】
研磨中のウェハWと研磨ヘッド1との相対角度のずれは45度以下であることが望ましく、より望ましくは20度以下である。このため、弾性膜45はウェハ保持能力に優れたゴム材から形成されている。具体的には、弾性膜45は、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材から形成されている。このような材料から構成された弾性膜45を使用することにより、ウェハWの研磨中は、ウェハWと研磨ヘッド1とは一体に回転する。
【0046】
弾性膜45の内部空間は、ウェハWの半径方向には環状の隔壁45bにより複数の圧力室50,51,52,53に分割されているが、ウェハWの周方向には分割されていない。したがって、圧力室50,51,52,53は、ウェハWの周方向に一様な押圧力をウェハWに加えることが可能である。リテーナリング40は、ウェハWの周方向に延びるリテーナリング押圧機構60により、周方向に一様な押圧力で研磨パッド2に対して押圧される。
【0047】
図5(a)、
図5(b)、および
図5(c)はウェハWの最も外側の端部から3mm内側の位置でのウェハWの周方向に沿った膜厚分布の例を示す図である。より具体的には、
図5(a)は、ウェハ研磨前の初期膜厚分布を示し、
図5(b)は従来の研磨装置で研磨される場合のウェハの膜厚分布を示し、
図5(c)は本実施形態の研磨装置で研磨される場合のウェハの膜厚分布を例示的に示している。
【0048】
ウェハ周方向における膜厚のばらつきは、その後のデバイス製造工程において問題となりやすい。一般には、ウェハWの最も外側の端部から3mm〜5mm内側に位置した領域での膜厚のばらつきが問題となることが多い。
図5(a)〜
図5(c)におけるウェハ角度0度の位置は、ウェハの周方向の角度(または向き)を特定できる特徴的な箇所の位置に設定される。
図5(a)〜
図5(c)に示す例では、ウェハ角度0度の位置は、ウェハの周縁部に形成されたノッチの位置である。
【0049】
図5(a)に示される例では、研磨前の初期膜厚分布は、ウェハ角度180度にピーク位置があり、あるピーク幅、ピーク高さを持つ膜厚のばらつきを示している。このような初期膜厚分布が生じる原因としては、成膜装置の特性や、多層配線を形成するための様々なプロセスの影響などが考えられる。
【0050】
従来の研磨装置で
図5(a)の初期膜厚分布を持つウェハを研磨した場合には、周方向にほぼ一様に研磨が進行するために、
図5(b)に示されるように、研磨されたウェハには研磨前とほぼ同様の膜厚分布が残ってしまう。このような膜厚分布のばらつきは次の露光工程で焦点が合わない原因となったりして、半導体製造の歩留まりを低下させてしまうこととなる。
【0051】
図5(c)に示されるように、以下に説明する本実施形態の研磨装置により
図5(a)の初期膜厚分布を持つウェハを研磨した場合には、ピーク位置での研磨レートを選択的に速くすることにより、周方向の膜厚ばらつきを初期膜厚分布に比べて低減することが可能となる。
【0052】
次に、ウェハの周方向における研磨レート分布を制御することによってウェハの周方向の膜厚分布のばらつきを改善する実施形態について説明する。
図6は、研磨面2aの上方からみた位置関係を示した図である。ウェハWの中心と研磨面2aの中心を結んだ線を想像線VLと定義すると、研磨面2aは、その回転方向に関して想像線VLの上流側と、想像線VLの下流側とに分けることができる。想像線VLの上流側および想像線VLの下流側は、言い換えれば、研磨面2aの移動方向に関してウェハWの上流側および下流側である。
【0053】
図6に示す円Sは、ウェハWの中心を通る研磨面2aの回転軌跡を表している。円Sのウェハ中心での接線Tとウェハ円との2つの交点のうち、上流側の交点を研磨ヘッド角度0度とし、下流側の交点を研磨ヘッド角度180度とする。想像線VLとウェハ円との2つの交点のうち研磨面中心側の交点を研磨ヘッド角度270度、研磨面外周側の交点を研磨ヘッド角度90度とする。ウェハ円は、ウェハWの最も外側の端部を表す円である。
【0054】
ウェハWの研磨中、ウェハWは研磨面2aから摩擦力を受けてウェハWの周縁部がリテーナリング40の内周面に押し付けられた状態となっている。この摩擦力はリテーナリング40のほぼ1点に加えられるので、リテーナリング40の一部が外側に押し広げられるようにリテーナリング40が局所的に変形する。このため、リテーナリング40は、ウェハWの周縁部を研磨パッド2に押し込むように作用する場合がある。この場合、ウェハWの下流側部位は他の部位よりも高い研磨レートで研磨される。また、ウェハWもリテーナリング40に押し付けられることにより変形し、ウェハWの下流側部位と研磨パッド2との接触圧力が局所的に上昇し、ウェハWの下流側部位は他の部位よりも高い研磨レートで研磨される。
【0055】
このように、ウェハWはその全周に亘って一様に研磨されているのではなく、研磨レートが異なる状態で研磨されている。上で述べた例とは逆に、研磨液が流入するウェハWの上流側部位(研磨液の滴下位置によっては研磨面中心側)での研磨レートが下流側部位に比べて高い場合も考えられる。
【0056】
図7は上述した研磨装置を用いた研磨方法の一実施形態を示している。横軸は研磨時間、縦軸は研磨ヘッド角度、ウェハ角度、およびウェハWの周縁部を押圧するエッジ圧力室53内の圧力を示している。この実施形態では研磨条件の例としてエッジ圧力室53内の圧力を挙げたが、他の圧力室50〜52やリテーナリング圧力室63内の圧力であってもよい。
【0057】
研磨時間が経過するに従い、研磨ヘッド角度は0度、180度、360度(=0度)と変化し、研磨ヘッド1の回転は周期Tで繰り返えされる。従来の研磨装置ではエッジ圧力室53内の圧力は一定に維持されたまま研磨されるが(図示せず)、本実施形態の研磨装置では、ウェハの膜が厚い箇所(
図5(a)ではウェハ角度180度のウェハの部位)が研磨ヘッド角度180度に位置している間にエッジ圧力室53の圧力を増加させる。この昇圧時間をΔtと表す。
【0058】
図7に示される例では、研磨ヘッド角度180度の位置で、研磨レートが高い状態となっている。したがって、ウェハの膜が厚い箇所が研磨ヘッド角度180度の位置に来たときに、エッジ圧力室53内全体の圧力を一時的に増加させて、ウェハの膜が厚い箇所の研磨レートを選択的に増加させる。この動作を総研磨時間に亘って複数回、または継続実施することにより、研磨されたウェハの周方向での膜厚分布の均一性を高めることが可能となる。エッジ圧力室53内全体の圧力を一時的に増加させると、角度0度などの他の箇所でも研磨レートは増加するが、研磨ヘッド角度180度の位置で研磨レートが高い状態となっているため、他の角度に比べて角度180度の研磨量は相対的に多く増加する。したがって、ウェハの周方向での膜厚分布の均一性を高めることが可能となる。
【0059】
上の例とは逆に、ウェハの膜が薄い箇所(ウェハ角度0度の箇所)が研磨ヘッド角度180度の位置に来たときにエッジ圧力室53内全体の圧力を一時的に減少させることにより、この箇所の研磨レートを選択的に低下させることも可能である。上述した2つの圧力操作を組み合わせて、より効率的に周方向膜厚分布の均一性を高めることも可能である。
【0060】
図5(a)に示す膜厚のピーク形状がピーク位置に対してほぼ対称である場合には、
図7の昇圧時間Δtをウェハ角度が180度となる時刻の前後均等な時間に設定してもよい。ピーク位置とピーク幅の中心が一致しない場合、例えばピーク幅の中心の角度がピーク位置よりも小さい場合は、ピーク位置よりも角度が小さい領域をより多く研磨する必要がある。このため、昇圧時間Δtの中心はウェハ角度が180度となる時刻よりも前の時間に設定される。
【0061】
ピーク幅に従って昇圧時間を変更したり、ピーク高さに従ってエッジ圧力室53内の圧力の増加分を変更してもよい。具体的にはピーク幅に従って昇圧時間を長くし、ピーク高さに従って圧力室53内の圧力の増加分を大きくする。
図7の例では圧力室53内の圧力を矩形波状に変化させているが、これを階段状にしたり、傾斜状にしたり、曲線的に変化させてもよい。
【0062】
図7の例では弾性膜45の最外周に位置するエッジ圧力室53内の圧力のみを変更しているが、エッジ圧力室53よりも内側の圧力室の圧力を変更してもよいし、複数の圧力室を同時に変更してもよい。例えば、エッジ圧力室53とアウター圧力室52の圧力を同時に変更してもよい。この場合、変更する圧力は各圧力室で異なってもよいし、同じでもよい。
【0063】
通常、リテーナリング40に加える圧力を増加させると、ウェハの最も外側の端部から3mm〜5mm内側の領域での研磨レートは増加する。また、研磨ヘッド1の高さを上昇させた場合には、弾性膜45の伸びによる損失が増加するために、ウェハの最も外側の端部から3mm〜5mm内側の領域での研磨レートは減少する。このことを利用して
図7のエッジ圧力室53内の圧力を研磨ヘッド1の回転角度に同期させて周期的に増加させる代わりに、リテーナリング40に加える圧力を周期的に増加させてもよいし、あるいは研磨ヘッド1の高さを周期的に下げてもよい。リテーナリング40に加える圧力は、リテーナリング押圧機構60のリテーナリング圧力室63内全体の圧力を変化させることにより変化させることができる。また、研磨ヘッド1の高さは、
図2に示す上下動機構27により変えることができる。
【0064】
研磨レートを変更するための各パラメータ(エッジ圧力室53内の圧力、リテーナリング40に対する圧力など)の変更に対する研磨レートの応答はプロセスによって異なるために、上記実施形態とは異なるパラメータの変更を行う場合もある。例えば、リテーナリング40の圧力を増加させた場合にウェハの最も外側の端部から3mm〜5mm内側の領域での研磨レートが低下するプロセスの場合には、エッジ圧力室53内の圧力を増加させる代わりにリテーナリング40に対する圧力を減少させる操作が行われる。
【0065】
図8は研磨装置の別の実施形態を示している。
図8に示す研磨ヘッド1は、リテーナリング40を傾動自在に支持する球面軸受85を有している。リテーナリング40は、連結部材75を介して球面軸受85に連結されている。連結部材75は、ヘッド本体10の中心部に配置された軸部76と、この軸部76に固定されたハブ77と、このハブ77から放射状に延びる複数のスポーク78とを備えている。
【0066】
スポーク78の一方の端部は、ハブ77に固定されており、スポーク78の他方の端部は、リテーナリング40に固定されている。ハブ77と、スポーク78とは一体に形成されている。ヘッド本体10の内部には、複数対の駆動カラー80が配置されている。各対の駆動カラー80は各スポーク78の両側に配置されており、ヘッド本体10の回転は、駆動カラー80を介してリテーナリング40に伝達され、これによりヘッド本体10とリテーナリング40とは一体に回転する。
【0067】
球面軸受85は、リテーナリング40の内側に配置されている。連結部材75の軸部76は、ヘッド本体10の中央部に配置された球面軸受85に縦方向に移動自在に支持されている。このような構成により、連結部材75およびこれに固定されたリテーナリング40は、ヘッド本体10に対して縦方向に移動可能となっている。さらに、リテーナリング40は、球面軸受85により傾動可能に支持されている。リテーナリング40は、横方向に移動することは実質的に許容されず、リテーナリング40の横方向(水平方向)の位置は球面軸受85によって固定される。
【0068】
リテーナリング40は、ヘッド本体10から半径方向外側に張り出した上面を有している。このリテーナリング40の上方には、リテーナリング40の一部に下向きの局所荷重を加える局所荷重付与装置110が配置されている。
図9は局所荷重付与装置110の設置位置を示している。
図9に示すように、局所荷重付与装置110は、ヘッドアーム16に固定されており、研磨パッド2の回転方向(進行方向)においてウェハWの下流側に配置されている。研磨中のリテーナリング40はその軸心周りに回転するが、局所荷重付与装置110はリテーナリング40とは一体に回転せず、その位置は固定である。
【0069】
図8に戻り、局所荷重付与装置110の一実施形態を説明する。
図8に示すように、リテーナリング40の外周部上面には、荷重伝達部材111が固定されている。この荷重伝達部材111の上部には、ガイドリング112が固定されている。局所荷重付与装置110は、ガイドリング112および荷重伝達部材111を介してリテーナリング40の一部に下向きの局所荷重を与える。荷重伝達部材111はリング形状でもよいし、リテーナリング40の円周方向に沿って設置された複数の円柱でもよい。
【0070】
局所荷重付与装置110の下向きの局所荷重は、ガイドリング112から荷重伝達部材111を通じてリテーナリング40の一部に伝達される。局所荷重付与装置110の動作は、研磨制御部9によって制御される。なお、荷重伝達部材111およびガイドリング112を設けずに、局所荷重付与装置110がリテーナリング40に直接下向きの局所荷重を与えてもよい。
【0071】
研磨ヘッド1は自身の軸心を中心として回転するが、局所荷重付与装置110はヘッドアーム16に固定されるため研磨ヘッド1と共には回転しない。すなわち、ウェハWの研磨中、研磨ヘッド1およびウェハWは回転している一方、局所荷重付与装置110は所定の位置に静止している。
【0072】
局所荷重付与装置110は、エアシリンダ114と、エアシリンダ114のピストン114aに連結された車輪115とから基本的に構成されている。このエアシリンダ114は、ヘッドアーム16に固定されている。車輪115はピストン114aの先端に取り付けられており、エアシリンダ114によって車輪115を下降させたときに車輪115がガイドリング112に荷重を与えるように構成されている。エアシリンダ114に供給する気体の圧力を変更することにより、車輪115がリテーナリング40へ与える荷重を変更することができる。
【0073】
車輪115はその中心に配置された回転しない車輪軸116に回転自在に支持されており、車輪軸116を中心に滑らかに回転可能である。車輪115は低摩擦材料で形成され、車輪軸116と車輪115との間にはボールベアリングなどの軸受を配置することも可能である。
【0074】
図10に示すように、エッジ圧力室53内の圧力を変更する代わりに、研磨ヘッド1の回転角度に同期してリテーナリング40に対する局所荷重を周期的に変更することにより、ウェハの周方向における膜厚分布の均一性を改善することも可能である。
【0075】
図11は研磨ヘッド1の角速度を研磨ヘッド1の一回転周期T内で変更する他の実施例を示している。本実施例ではエッジ圧力室53内の圧力は変更しておらず、その代わりに研磨ヘッド1の回転角度が180度に位置する際に研磨ヘッド1の角速度を一時的に遅くしている。こうすることによりウェハの膜が厚い箇所(ウェハ角度180度の箇所)が、研磨ヘッド角度が180度の位置に滞在する時間が延び、ウェハの膜が厚い箇所の研磨レートを増加させることが可能となる。研磨制御部9は、
図2に示す研磨ヘッドモータ18を操作して研磨ヘッド1の角速度を研磨ヘッド1の回転角度に同期させて周期的に変化させることにより、ウェハ周方向における膜厚分布の均一性を改善することができる。
【0076】
なお、
図5(a)に示す例は周方向の初期膜厚の分布のピークが1つの場合を説明しているが、複数のピークがある場合でも同様な方法によりウェハの周方向における膜厚分布の均一性を高めることが可能である。
【0077】
次にウェハと研磨ヘッドとの相対角度を決定する方法について
図12のフローチャートを参照して説明する。ステップA-1,ステップA-2,ステップA-3は、それぞれ、ウェハの角度(または向き)を特定するための特徴的な箇所であるノッチの角度を取得するステップである。このノッチの角度は、研磨ヘッド1に保持される前のウェハの向きを示す初期角度である。
【0078】
より具体的には、ステップA-1では、研磨装置に接続された、半導体製造工場のホストコンピュータからウェハのノッチ位置に関する情報が研磨制御部9に入力される。
図3に示すように、研磨されるウェハはFOUP(搬送容器)42に格納され、複数のウェハを格納したFOUP42が研磨装置にセットされる。FOUP42に対するノッチの相対的な位置(角度)は、ホストコンピュータから通信手段を介して研磨制御部9に入力される。ノッチの位置(角度)はFOUP42内のウェハごとに異なってもよい。
【0079】
ステップA-2の場合はステップA-1とは異なり、予め決められた位置(角度)にノッチがある状態で複数のウェハがFOUP42内に格納されている。通常、ウェハが研磨装置に導入される前には、ノッチアライメント動作を伴う膜厚測定や欠陥検査などの工程が行われる。このため、複数のウェハはFOUP42内でノッチが同じ位置(同じ角度)にある状態となっている場合が多い。この様な場合には、FOUP42内のすべてのウェハのノッチが予め決められた同じ位置にある状態でFOUP42が研磨装置にセットされる(ステップA-2)。工程毎にノッチ位置が異なる場合はあるため、1つのFOUP42内ではノッチ位置が揃っていても、FOUP毎にノッチ位置が異なる場合はある。
【0080】
ステップA-3は、ウェハのノッチ位置を検出する工程であり、上記ステップA-1,A-2とは異なるステップである。このステップA-3では、ウェハを収容したFOUP42が研磨装置にセットされた後に、研磨装置に備えられたノッチ検出器55(
図3参照)によりウェハのノッチ位置が検出される。
【0081】
次に、研磨されるウェハの膜厚に関する情報が研磨制御部9に入力される。ステップB-1では、ステップA-1の場合と同様に半導体製造工場のホストコンピュータからウェハの膜厚に関する情報が研磨制御部9に入力される。ウェハの膜厚に関する情報は、ピーク位置、ピーク幅、ピーク高さなどのウェハの周方向における初期膜厚分布を含んでいる。この情報に基づき、膜厚のばらつきを解消するために必要な研磨条件変更時間(
図7の例では昇圧時間)および研磨条件変更量(
図7の例では昇圧量)が決定されてもよいし、半導体製造工場のホストコンピュータから研磨制御部9にこれら研磨条件変更時間および研磨条件変更量が入力されてもよい。
【0082】
ステップB-2では、ステップB-1とは異なり、予め決められたウェハ膜厚に関する情報を使用して、研磨制御部9によって研磨条件変更時間および研磨条件変更量が決定される。
【0083】
ステップB-3では、ステップB-1,B-2とは異なり、研磨装置に備えられた膜厚測定器56(
図3参照)によりウェハの膜厚が測定され、この膜厚情報を使用して、研磨制御部9によって研磨条件変更時間および研磨条件変更量が決定される。
【0084】
ウェハは、成膜工程が行われた後に研磨装置に導入される。したがって、研磨されるウェハは、成膜装置の特性に依存した周方向膜厚分布を有しており、FOUP42内のウェハ間での膜厚分布のばらつきは比較的小さい。したがって、この様な場合には、予め決められた研磨条件変更時間および研磨条件変更量が使用されてもよい。
【0085】
図3に示すように、研磨装置に導入されたウェハは、搬送装置47により受渡位置まで搬送され、この受渡位置にてウェハは研磨ヘッド1に渡される。ウェハが受渡位置に搬送されたときのノッチの位置は既知である。FOUP42内に格納されたウェハは搬送装置47でFOUP42から取り出され、反転機54により被研磨面が下向きになるように反転され、さらに搬送装置47により受渡位置にまで搬送される。この様なFOUP42から受渡位置までの搬送動作は予め決められた動作であるので、研磨制御部9は、ウェハが受渡位置に搬送されたときのノッチ位置を予め取得(予測する)ことができる。ステップA−3でのノッチ位置検出がウェハの反転前に行われる場合には、ノッチ位置情報はステップA−1、およびステップA−2と同様に取り扱われるが、ウェハの反転後にノッチ位置が検出される場合にはノッチ位置情報は反転によるノッチ位置変化を考慮して取り扱われる。
【0086】
受渡位置に搬送されたウェハを研磨ヘッド1が保持する前に、研磨制御部9は、研磨ヘッド1の現在の回転角度、すなわち初期回転角度を取得する。研磨ヘッド1の回転角度は、
図2に記載される研磨ヘッドモータ18に取り付けられたロータリエンコーダ41によって検出される。ロータリエンコーダ41は研磨ヘッド1の回転角度を検出する回転角度検出器である。ただし、回転角度検出器は、研磨ヘッド1の回転角度を検出できるものであれば、ロータリエンコーダに限定されない。
【0087】
次に、研磨制御部9は、研磨ヘッド1の初期回転角度が、受渡位置でのウェハのノッチ位置(初期角度)に一致するまで研磨ヘッド1を回転させる(ステップD-1)。こうすることにより、全てのウェハの回転角度を研磨ヘッド1の回転角度に一致させることが可能となる。上記ステップD-1が行われる場合は、ウェハと研磨ヘッド1との相対角度は0度である。研磨ヘッド1の初期回転角度をウェハのノッチ位置に一致させなくてもよい(ステップD-2)。この場合は、研磨制御部9は、ウェハのノッチ位置(初期角度)と研磨ヘッド1の初期回転角度との差から、ウェハと研磨ヘッド1との相対角度を決定する。
【0088】
ステップEでは、研磨ヘッド1でウェハを保持し、さらに研磨制御部9は、ウェハの膜の厚い箇所(
図5(a)のピーク位置)と研磨ヘッド1との相対角度を算出する。
【0089】
研磨ヘッド1に保持されたウェハは、研磨ヘッド1によって研磨パッド2の研磨面2aの上方位置に移動され、そして研磨ヘッド1によって研磨面2aに押圧される。ウェハは、研磨液供給ノズル5から供給された研磨液の存在下で研磨面2aに摺接され、これによりウェハの表面が研磨される(ステップF)。ウェハの研磨中は、膜厚分布のピーク位置、すなわち膜の厚い箇所が研磨ヘッド角度180度に位置するたびに、研磨条件変更時間の間だけ、研磨条件変更量に従って研磨条件が周期的に変更される。
【0090】
研磨ヘッド1がウェハを研磨パッド2の研磨面2aに押圧した瞬間は、圧力室50〜53内の圧力はあまり高くないため、この時点では研磨ヘッド1の弾性膜45とウェハとの摩擦力が十分に発生していない。このため、回転する研磨面2aによりウェハが研磨ヘッド1に対してわずかに回転してしまうことがある。これを避けるためにウェハの研磨面2aへの押圧開始時には研磨テーブル3の回転を停止したり、通常の研磨工程よりも低速で研磨テーブル3を回転させてもよい。研磨開始時のウェハの研磨ヘッド1に対する回転方向へのずれは同一研磨条件の下では大きな差は無いので、予め確認したこのずれ分を見込んで、研磨ヘッド1の回転に伴う研磨条件変更を行ってもよい。
【0091】
ウェハ研磨中に、ウェハの角度が研磨ヘッド1の回転角度に対してわずかにずれることはあり得るが、このような相対角度の変化量は非常に小さいと予想される。したがって、上述したように研磨ヘッド1の回転角度に同期して周期的に研磨条件を変更することにより、ウェハの膜厚分布の周方向におけるばらつきを低減することは可能である。
【0092】
上記ステップB-1、ステップB-2、およびステップB-3では、研磨制御部9は、ウェハの研磨開始前にウェハの初期膜厚に関する情報を取得して研磨条件変更時間および研磨条件変更量を決定する。これに代えて、
図1に記載の膜厚センサ7を使用して、ウェハの研磨中に、膜厚センサ7により回転角度毎の膜厚を測定してもよい。この場合は、ウェハの研磨中に、測定結果に基づいて研磨条件を変更したり、周方向の膜厚ばらつきがなくなった場合には研磨条件の変更操作を止めることも可能である。
【0093】
研磨制御部9は、ウェハの研磨中に膜厚センサ7により得られた膜厚測定値から膜厚分布を取得し、この膜厚分布の変化からウェハと研磨ヘッド1との相対位置(相対角度)の変化を検出することも可能である。さらに、研磨制御部9は、ウェハの研磨中に、膜厚分布の変化に従って研磨条件を変更してもよい。
【0094】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。