特許第6181746号(P6181746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181746硬化中にメタノールを解離しないシラン末端化ポリマー系の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181746
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】硬化中にメタノールを解離しないシラン末端化ポリマー系の組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20170807BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20170807BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C08L101/10
   C08K5/057
   C08K5/3445
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-513188(P2015-513188)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-517603(P2015-517603A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2013060657
(87)【国際公開番号】WO2013174940
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月20日
(31)【優先権主張番号】12169153.9
(32)【優先日】2012年5月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ショファ
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ネストラー
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/094276(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/094274(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02336210(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む組成物:
a)メトキシ基ではないアルコキシ末端基を有する、少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP;
b)有機チタネート、有機ジルコネート、及び有機アルミネートからなる群より選択される、シラン官能性ポリマーを架橋するための少なくとも1種の触媒;
c)少なくとも1つのアミジノ基を含む、少なくとも1種の化合物であって、9個、10個、11個、又は12個の炭素原子をその2つの環の構成要素に含む二環式のアミジンである化合物
【請求項2】
前記シラン官能性ポリマーPのアルコキシ末端基が、以下の式(I)の末端基である、請求項1に記載の組成物:
【化1】
(式中、
は、1〜8個のC原子を有する炭化水素基を表し;
は、2〜12個のC原子を有するアルキル基を表し;
は、芳香環部分を有してもよく、また1つ以上のヘテロ原子を有してもよい、1〜12個のC原子を有する、直鎖若しくは分岐鎖又は環状のアルキレン基を表し;かつ
添え字aは、0又は1又は2の値を表す)。
【請求項3】
シラン官能性ポリマーPのアルコキシ末端基が、エトキシ基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
シラン官能性ポリマーPを架橋するための前記触媒が、少なくとも1種の多座配位子を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
シラン官能性ポリマーPを架橋するための前記触媒が、有機チタネートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機チタネートが、以下の式(VIII)の有機チタネートである、請求項5に記載の組成物:
【化2】
(式中、
21は、水素原子、又は1〜8個のC原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し;
22は、水素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい1〜8個のC原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し;
23は、水素原子若しくは1〜8個のC原子を有するアルキル基を表し、又は1〜8個のC原子を有する直鎖の又は分岐したアルコキシ基を表し;
24は、2〜20個のC原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し;かつ
nは、1又は2の値を表す)。
【請求項7】
スズ化合物又は有機スズ化合物の含量が0.06wt%未満である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
硬化する際にメタノールを解離する成分を含まない、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記触媒の分量が、組成物全体の0.1〜10wt%の含量である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアミジノ基を含む化合物の分量が、組成物全体の0.05〜3wt%の含量である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
接着剤、シーラント、又はコーティングとしての請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
メトキシ基ではないアルコキシ基を有するシラン末端化ポリマーを架橋するための、有機チタネート、有機ジルコネート及び有機アルミネートからなる群より選択される触媒と、少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物であって、9個、10個、11個、又は12個の炭素原子をその2つの環の構成要素に含む二環式のアミジンである化合物との使用。
【請求項13】
メトキシ基ではないアルコキシ基を有するシラン末端化ポリマーを架橋するための触媒系であって、有機チタネート、有機ジルコネート及び有機アルミネートからなる群より選択される触媒、並びに少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物であって、9個、10個、11個、又は12個の炭素原子をその2つの環の構成要素に含む二環式のアミジンである化合物を含む触媒系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン官能性ポリマーに基づく弾性接着剤、シーラント及びコーティングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン官能性ポリマー系の組成物及びその接着剤、シーラント又はコーティングとしての使用は従来から知られており、多く説明されている。様々な水分反応性シラン基を有するポリマーが、シラン官能性ポリマーとして用いられる。これらの場合にシラン基を選択する本質的な基準は、それらの基の反応性である。最終的に、この組成物の硬化速度は、シラン基の反応性によって決定的に影響を受ける。
【0003】
特に良好な反応性が2つの系で達成されることが知られている。それらの一方は、メトキシシラン末端化ポリマー系の組成物であり、他方は、α−シラン末端化ポリマー系の組成物である。また、α−シラン末端化ポリマーは、メトキシ基を有する場合に、特に反応性が高い。
【0004】
メトキシシラン末端化ポリマーを使用する際の欠点は、それらが水で架橋する際にメタノールを解離することである。メタノールの解離は、メタノール及び特にその代謝物が人体に毒性であり悪影響を与える場合があるために、部屋の内部で使用する場合に、特に問題となる。
【0005】
メトキシシラン末端化ポリマーのさらなる欠点は、それらが有機スズ化合物を助剤として用いて好ましくは硬化させることであり、これは環境及び毒性の観点から全ての用途において適切ではない。
【0006】
α−シラン末端化ポリマーの欠点は、製造するのが非常に高価であり、したがって商業的に入手ができないこと又は非常に高価になりすぎることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術の課題を克服し、そしてスズ化合物又は有機スズ化合物を用いなくても完全に硬化し、またメタノールを放出しないシラン官能性ポリマー系の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、下記態様1の組成物がこの課題を解決することが発見された。
少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物を含む特定の触媒の組合せが、メトキシ基ではないアルコキシ末端基を有するシラン官能性ポリマー系の組成物であって、完全に硬化し、メタノールを放出せず、そしてスズ化合物又は有機スズ化合物を完全に又は実質的に含まない、シラン官能性ポリマー系の組成物を与えた。
本発明のさらなる態様は、追加の独立的態様の主題である。本発明の特に好ましい実施態様は、従属的態様の主題である。
本発明の態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
以下を含む組成物:
a)メトキシ基ではないアルコキシ末端基を有する、少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP;
b)有機チタネート、有機ジルコネート、及び有機アルミネートからなる群より選択される、シラン官能性ポリマーを架橋するための少なくとも1種の触媒;
c)少なくとも1つのアミジノ基を含む、少なくとも1種の化合物。
《態様2》
前記シラン官能性ポリマーPのアルコキシ末端基が、以下の式(I)の末端基である、態様1に記載の組成物:
【化1】
(式中、
は、1〜8個のC原子を有する炭化水素基を表し;
は、2〜12個のC原子を有するアルキル基を表し;
は、芳香環部分を有してもよく、また1つ以上のヘテロ原子を有してもよい、1〜12個のC原子を有する、直鎖若しくは分岐鎖又は環状のアルキレン基を表し;かつ
添え字aは、0又は1又は2の値を表す)。
《態様3》
シラン官能性ポリマーPのアルコキシ末端基が、エトキシ基である、態様1又は2に記載の組成物。
《態様4》
シラン官能性ポリマーPを架橋するための前記触媒が、少なくとも1種の多座配位子を有する、態様1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
《態様5》
シラン官能性ポリマーPを架橋するための前記触媒が、有機チタネートである、態様1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
《態様6》
前記有機チタネートが、以下の式(VIII)の有機チタネートである、態様5に記載の組成物:
【化2】
(式中、
21は、水素原子、又は1〜8個のC原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し;
22は、水素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい1〜8個のC原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表し;
23は、水素原子若しくは1〜8個のC原子を有するアルキル基を表し、又は1〜8個のC原子を有する直鎖の又は分岐したアルコキシ基を表し;
24は、2〜20個のC原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し;かつ
nは、1又は2の値を表す)。
《態様7》
前記少なくとも1つのアミジノ基を含む化合物が、以下の式(IX)の化合物である、態様1〜6のいずれか一項に記載の組成物:
【化3】
(式中、
11は、水素原子、1〜10個のC原子を有する1価炭化水素基、又はR14と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表し;
12は、水素原子、随意に環状部分若しくは芳香族部分及び随意に1個以上のヘテロ原子を有する1〜12個のC原子を有する1価炭化水素基、アミノ基、又はR13と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表し;
13は、水素原子、随意に環状部分若しくは芳香族部分及び随意に1個以上のヘテロ原子を有する1〜12個のC原子を有する1価炭化水素基、又はR12と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表し;かつ
14は、水素原子、1〜10個のC原子を有する1価炭化水素基、又はR11と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表す)。
《態様8》
前記少なくとも1つのアミジノ基を含む化合物が、グアニジン、イミダゾール、イミダゾリン、二環式アミジン、又はこれらの化合物の誘導体である、態様1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
《態様9》
スズ化合物又は有機スズ化合物を実質的に含まない、態様1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
《態様10》
硬化する際にメタノールを解離する成分を含まない、態様1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
《態様11》
前記触媒の分量が、組成物全体の0.1〜10wt%、特に0.2〜4wt%、0.3〜3wt%の含量である、態様1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
《態様12》
前記少なくとも1つのアミジノ基を含む化合物の分量が、組成物全体の0.05〜3wt%、特に0.1〜2wt%、好ましくは0.1〜1wt%の含量である、態様1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
《態様13》
接着剤、シーラント、又はコーティングとしての態様1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
《態様14》
メトキシ基ではないアルコキシ基を有するシラン末端化ポリマーを架橋するための、有機チタネート、有機ジルコネート及び有機アルミネートからなる群より選択される触媒と、少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物との使用。
《態様15》
メトキシ基ではないアルコキシ基を有するシラン末端化ポリマーを架橋するための触媒系であって、有機チタネート、有機ジルコネート及び有機アルミネートからなる群より選択される触媒、並びに少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物を含む触媒系。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の主題は、以下を含む組成物である:
a)メトキシ基ではないアルコキシ末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーP;
b)有機チタネート、有機ジルコネート、及び有機アルミネートからなる群より選択される、シラン官能性ポリマーを架橋するための少なくとも1種の触媒;
c)少なくとも1つのアミジノ基を含む少なくとも1種の化合物。
【0010】
本明細書においてポリオール又はポリイソシアネートなどの「ポリ」で始まる物質名は、その化学式が、1分子につきその名前の2つ又はそれ以上の官能基を含有する物質を指す。
【0011】
本明細書において用語「ポリマー」は、一方で、重合度、分子量、及び鎖の長さが異なる化学的に均一な高分子の群を含み、重反応(polyreaction)(重合、重付加、重縮合)により調製される。この用語はまた、重反応からのそのような高分子群の誘導体を包含し、したがって既存の高分子上の官能基の付加又は置換などの反応により調製され、かつ化学的に均一な又は化学的に不均一な化合物を包含する。さらに、この用語はいわゆるプレポリマーを包含し、すなわち、その官能基が高分子の構成に含まれる反応性オリゴマープレ付加物を包含する。
【0012】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるジイソシアネート重付加法により調製されるすべてのポリマーを含む。これはまた、実質的に又は完全にウレタン基を含まないポリマーも含む。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリエステル−ポリ尿素、ポリイソシアヌレート、及びポリカルボジイミドである。
【0013】
本明細書において用語「シラン」及び「有機シラン」は、一方では、Si−O結合を介して直接ケイ素原子に結合した、少なくとも1つの、通常2つ又は3つのアルコキシ基又はアシルオキシ基を有し、他方では、Si−C結合を介して直接ケイ素原子に結合した有機基を有する化合物を意味する。このようなシランはまた、当業者には有機アルコキシシラン及び有機アシルオキシシランとして知られている。結果として、「テトラアルコキシシラン」は、この定義による有機シランではない。
【0014】
対応して用語「シラン基」は、Si−C結合を介してシランの有機基に結合したケイ素含有基を示す。シラン又はシラン基は、水分と接触すると加水分解する特徴を有する。このプロセスにおいて、有機シラノール、すなわち1種又はそれ以上のシラノール基(Si−OH基)を含有する有機ケイ素化合物が形成され、次の縮合反応で、有機シロキサン、すなわち1種又はそれ以上のシロキサン基(Si−O−Si基)を含有する有機ケイ素化合物が形成される。用語「シラン官能性」は、シラン基を含有する化合物を示す。すなわち「シラン官能性ポリマー」は、少なくとも1つのシラン基を有するポリマーである。
【0015】
「アミノシラン」及び「メルカプトシラン」は、有機残基がアミノ基とメルカプト基とを含有する有機シランに適用される用語である。「1級アミノシラン」は、1級アミノ基、すなわち有機基に結合したNH基、を有するアミノシランを示す。「2級アミノシラン」は、2級アミノ基、すなわち2つの有機基に結合したNH基、を有するアミノシランである。
【0016】
本明細書において用語「有機チタネート」、「有機ジルコネート」、及び「有機アルミネート」は、少なくとも1つの配位子が酸素原子を渡して、チタン原子、ジルコニウム原子又はアルミニウム原子に結合している化合物を示している。
【0017】
本明細書において、「多座配位子」又は「キレート配位子」は、少なくとも2つの自由電子対を有し、中心原子に対してさらに少なくとも2つの配位点を有してもよい配位子、と定義される。したがって、二座配位子が中心原子に対して2つの配位点を有してもよい。
【0018】
本明細書において「分子量」は、常に平均分子量M(重量平均)として定義される。
【0019】
本発明の組成物は、メトキシ基ではないアルコキシ末端基を有する少なくとも1種のシラン官能性ポリマーPを含有し、これらの末端基は、特に以下の式(I)の末端基である:
【化1】
【0020】
ここで、R基は、1〜8個のC原子を有する炭化水素基を表し、特にメチル基又はエチル基を表す。
【0021】
基は、2〜12個のC原子を有するアルキル基、特に2〜8個のC原子を有するアルキル基であり、特にエチル基又はイソプロピル基を表す。
【0022】
基は、芳香環部分を有してもよく、また1つ以上のヘテロ原子、特に1つ以上の窒素原子を有してもよい、1〜12個のC原子を有する、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。
【0023】
添え字aは、0又は1又は2の値を表し、特に0の値を表す。
【0024】
最も好ましくは、R基は、エチル基であり、すなわち上述の本発明による組成物において、シラン官能性ポリマーPのアルコキシ末端基は、エトキシ基である。
【0025】
アルコキシ基としてエトキシ基を有するシラン官能性ポリマーの利点は、水で架橋する際に、エタノールを放出し、それによりこの組成物が環境的及び毒性的な観点から安全となるということである。
【0026】
式(I)のシラン基内で、R及びRは、それぞれ互いに独立に、記載された基を表す。例えば、ジエトキシイソポリポキシ末端基である式(I)の末端基を有する化合物(R=エチル、R=エチル、R=イソプロピル)が可能である。
【0027】
第1の態様において、シラン官能性ポリマーPは、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1であり、これは、イソシアネート基に対して反応性のある少なくとも1つの基を含むシランに、イソシアネート基を含むポリウレタンポリマーを反応させることにより得ることができる。この反応は好ましくは、イソシアネート基に対して反応性の基とイソシアネート基との化学量論比が1:1で、又はイソシアネート基に対して反応性の基がわずかに過剰な量で行われ、したがって得られるシランシラン官能性ポリウレタンポリマーP1は、イソシアネート基を全く含まない。
【0028】
イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの基を含有するシランと、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーとの反応において、シランは、好ましくはないが、理論的に準化学量論で使用することができ、したがってシラン基とイソシアネート基との両方を有するシラン官能性ポリマーが得られる。
【0029】
イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの基を有するシランは、例えばメルカプトシラン又はアミノシラン、特にアミノシランである。
【0030】
好ましくは、アミノシランは、次の式(II)のアミノシランASである:
【化2】
ここで、R、R、R及びaは、すでに上述されており、Rは、水素原子、若しくは環状部分を有していてもよい、1〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の1価炭化水素基を表すか、又は次の式(III)の基を表す:
【化3】
ここで、R及びR基は、それぞれ互いに独立に、水素原子、又は−R、−COOR及び−CNからなる基からの基を表す。
【0031】
基は、水素原子、又は−CH−COOR、−COOR、−CONHR、−CON(R、−CN、−NO、−PO(OR、−SO及び−SOORからなる群からの基を表す。
【0032】
基は、任意選択的に少なくとも1つのヘテロ原子を有する、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。
【0033】
適切なアミノシランASの例は、1級アミノシラン、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2級アミノシラン、例えばN−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン;1級アミノシランのマイケルアクセプターへのマイケル型付加(Michael−type addition)生成物。1級アミノシランとしては、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン又は3−アミノプロピルジエトキシメチルシランであり、マイケルアクセプターとしては、例えばアクリロニトリル、(メト)アクリル酸エステル、(メト)アクリル酸アミド、マレイン酸及びフマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、イタコン酸ジエステルが挙げられ、その生成物としては、例えばN−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−アミノコハク酸ジメチル及びジエチルエステルが挙げられる;及びケイ素上のエトキシ基の代わりに、イソプロポキシ基、n−ポロポキシ、及び対応するブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、及びオクトキシを有する上記したアミノシランの類似体である。アミノシランASとして特に適しているのは、2級アミノシラン、特に、式(II)中のRがHとは異なるアミノシランASである。マイケル型付加物、特にN−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−アミノコハク酸ジエチルエステルが好ましい。
【0034】
本明細書において用語「マイケルアクセプター」は、これらが含有し、電子アクセプター基により活性化される2重結合のために、マイケル付加と同様の方法(ヘテロマイケル付加)で、1級アミノ基(NH基)と求核付加反応を受けることができる化合物を示す。
【0035】
特に好適なアルコキシシランとしては、アルコキシ末端基がメトキシ末端基ではないN−アミノエチル−アミノアルキルトリアルコキシシランとマレイン酸又はフタル酸ジエステルとの反応から得ることができるアミノシランが挙げられる。このような適切なアミノシランは、例えば国際公開第01/00632号に開示されており、この文献はその全体を参照により本明細書に組み込まれる。対応するアミノシランを用いて製造したシラン末端化ポリウレタンポリマーは、例えば欧州特許出願第09153120.2号に記載されており、この文献はその全体を参照により本明細書に組み込まれる。これらの文献に開示されているメトキシシラン基含有アミノシラン又はシラン末端化ポリウレタンポリマーは、本発明に関して不適当である。
【0036】
シラン官能性ポリウレタンポリマーP1を調製するためのイソシアネート基含有ポリウレタンポリマーの例は、少なくとも1種のポリオールに少なくとも1種のポリイソシアネート、特にジイソシアネートを反応させて得られるポリマーを含む。ポリオールとポリイソシアネートが、通常の方法で、例えば50℃〜100℃の温度で、任意選択的に適切な触媒を使用して、反応するように作られている点で、この反応が起き、ここで、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基が、ポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰に存在するような割合で添加される。
【0037】
特に、ポリオールのすべてのヒドロキシル基の反応後、生じるポリウレタンポリマーが、ポリマー全体に基づいて、0.1〜5wt%、好ましくは0.1〜2.5wt%、特に好ましくは0.2〜1wt%の残存遊離イソシアネート基含量を有するように、過剰のポリイソシアネートが選択される。
【0038】
随意にポリウレタンポリマーは、可塑剤の同時使用により調製することができ、ここで、使用される可塑剤はイソシアネートに対して反応性の基を含有しない。
【0039】
NCO:OH比が1.5:1〜2.2:1のジイソシアネートと高分子量ジオールとの反応から得られる、上記した遊離イソシアネート基含量を有するポリウレタンポリマーが好ましい。
【0040】
ポリウレタンポリマーを調製するのに特に適したポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール、並びにこれらのポリオールの混合物である。
【0041】
ポリオキシアルキレンポリオール又はオリゴエテロールとも呼ばれる特に適切なポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−又は2,3−ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、又はそれらの混合物の重合生成物であり、任意選択的に2つ以上の活性水素原子を有するスターター分子、例えば水、アンモニア、又は数個のOH又はNH基を有する化合物、例えば1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、並びに上記化合物の混合物を使用して重合される重合生成物であるものである。いわゆる2重金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)を用いて調製される、低不飽和度[ASTM D2849−69に従って測定され、ポリオール1gあたりの不飽和のミリ当量(mEq/g)で報告される]を有するポリオキシアルキレンポリオールと、例えば、NaOH、KOH、CsOH又はアルカリアルコラートなどのアニオン性触媒を用いて調製される、高不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールとの両方を、使用することができる。
【0042】
特に適しているのは、ポリオキシエチレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、及びポリオキシプロピレントリオールである。
【0043】
特に適しているのは、不飽和度が0.02mEq/g未満で分子量が1,000〜30,000g/molの範囲であるポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオール、並びに分子量が400〜20,000g/molのポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール及びポリオキシレンプロピレントリオールである。
【0044】
また、特に適しているのは、いわゆるエチレンオキシド末端(「EO末端キャップ化」、エチレンオキシド末端キャップ化)ポリオキシプロピレンポリオールである。これらは、特にポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオールであり、例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオール及びトリオールが、エチレンオキサイドとのポリプロポキシル化反応終了後に、さらにアルコキシル化され、したがって1級ヒドロキシル基を有するという点で得られる。この場合好適なのは、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンジオール及びポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレントリオールである。
【0045】
また、適しているのは、ヒドロキシル基末端ポリブタジエンポリオール、例えば1,3−ブタジエンとアリルアルコールの重合、又はポリブタジエンの酸化により調製されるもの、並びにそれらの水素添加生成物である。
【0046】
また、適しているのは、スチレン−アクリロニトリル−グラフト化ポリエーテルポリオールであり、例えばElastogran GmbH, GermanyのLupranol(商標)の商品名で市販されているものである。
【0047】
ポリエステルポリオールとして特に適しているのは、少なくとも2つのヒドロキシル基が結合したポリエステルで、公知の方法により調製されるものであり、特にヒドロキシカルボン酸と、又は脂肪族及び/又は芳香族ポリカルボン酸と、2価又は多価アルコールとの重縮合によって調製されるポリエステルである。
【0048】
特に適しているのは、2価〜3価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、又は上記アルコールの混合物と、有機ジカルボン酸又はその無水物もしくはエステル、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、脂肪酸二量体、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸及びトリメリット酸無水物、又は上記酸の混合物と、から調製されるポリエステルポリオール、並びにεカプロラクトンなどのラクトンからのポリエステルポリオールである。
【0049】
特に適しているのはポリエステルジオールであり、特に、ジカルボン酸としての、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、脂肪酸二量体、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸から調製されるもの、又はε−カプロラクトンなどのラクトンから調製されるもの、及び二価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、脂肪酸ジオール二量体及び1,4−シクロヘキサンジメタノールから調製されるものである。
【0050】
ポリカーボネートポリオールとして特に適しているのは、例えばポリエステルポリオールを作成するために使用される上記アルコールを、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、又はホスゲンと反応させることにより得られるものである。特に適しているのは、ポリカーボネートジオール、特に非晶質のポリカーボネートジオールである。
【0051】
追加の適したポリオールは、ポリ(メタ)アクリレートポリオールである。
【0052】
さらに適しているのは、ポリヒドロキシ官能性油脂であり、例えば天然油脂、特にヒマシ油、又は天然油脂の化学修飾によって得られるいわゆる油脂化学ポリオール、例えば不飽和油のエポキシ化と引き続くカルボン酸とアルコールによる開環により得られるエポキシポリエステル及びエポキシポリエーテル、又は不飽和油のヒドロホルミル化及び水素化によって得られるポリオールである。さらに適しているのは、天然油脂から、アルコール分解又はオゾン分解などの分解プロセスと以後の化学結合、例えばこうして得られた分解生成物又はその誘導体のエステル交換又は二量体化により得られるポリオールである。天然油脂の適切な分解生成物は、特に、脂肪酸及び脂肪アルコール、並びに脂肪酸エステル、特にメチルエステル(FAME)であり、これは、例えばヒドロホルミル化及び水素化により誘導体化して、ヒドロキシ脂肪酸エステルを調製することができる。
【0053】
また適しているのは、オリゴヒドロカルボノール(oligohydrocarbonol)とも呼ばれるポリ炭化水素ポリオール、例えばポリヒドロキシ官能性エチレン−プロピレン−、エチレン−ブチレン−、又はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体、例えばKraton polymers, USA製のもの、又は1,3−ブタジエン又はジエンの混合物などのジエンと、スチレン、アクリロニトリル又はイソブチレンなどのビニルモノマーとから作成されるポリヒドロキシ官能性共重合体、又はポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール、例えば1,3−ブタジエンとアリルアルコールとの共重合によって調製されるものであり、これらはまた、水素化することができる。
【0054】
また適しているのは、ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、例えばエポキシド又はアミノアルコールから調製することができる共重合体、及びEmerald Performance Materials, LLC, USAから商品名HYpro(商標)(以前はHycar(商標))CTBNで市販されている、カルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエン共重合体である。
【0055】
上記したこれらのポリオールは、好ましくは250〜30,000g/mol、特に1,000〜30,000g/molの平均分子量を有し、1.6〜3の範囲の平均OH官能度を有する。
【0056】
特に適したポリオールは、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール、好ましくはポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールである。
【0057】
上記したこれらのポリオール以外に、少量の低分子量の二価又は多価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体のジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪アルコール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトールもしくはマンニトール、スクロースなどの糖、他の多価アルコール、上記2価及び多価アルコールの低分子量アルコキシル化生成物、並びに上記アルコールの混合物を、末端イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーの製造において、添加することができる。
【0058】
市販のポリイソシアネート、特にジイソシアネートを、ポリウレタンポリマーを製造するためのポリイソシアネートとして使用することができる。
【0059】
適切なジイソシアネートの例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチル−ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、リジン及びリジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナートメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、ペルヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びペルヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナート−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3−及び1,4−ビス−(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、m−及びp−キシレンジイソシアネート(M−及びp−XDI)、m−及びp−テトラメチル−1,3−キシレンジイソシアネート、m−及びp−テトラメチル−1,4−キシレンジイソシアネート、ビス−(1−イソシアナート−1−メチルエチル)−ナフタレン、2,4−及び2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナートベンゼン、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナートジフェニル(TODI)、上記イソシアネートのオリゴマーとポリマー、並びに上記イソシアネートの任意の混合物である。
【0060】
第2の態様において、シラン官能性ポリマーPは、イソシアナートシランISと、イソシアネート基に対して反応性の官能性末端基、特にヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基を有するポリマーと、の反応により得られるシラン官能性ポリウレタンポリマーP2である。この反応を、イソシアネート基とイソシアネート基に対して反応性の官能性末端基との化学量論比1:1で起こすか、又はイソシアネート基に対して反応性の官能性末端基のわずかに過剰な量で、例えば20℃〜100℃の温度で、随意に触媒を添加して起こす。
【0061】
適切なイソシアナートシランISは、次の式(IV)の化合物である:
【化4】
【0062】
ここで、R、R、R及びaは、上述されている。式(IV)の適切なイソシアナートシランISの例は、イソシアナートメチルトリエトシラン、イソシアナートメチルジエトキシメチルシラン、3−イソシアトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルジエトキシメチルシラン、及び、ケイ素上のエトキシ基の代わりにイソプロポキシ基を有するその類似体である。好ましくは、このポリマーは、イソシアナート基に反応性の官能性末端基としてヒドロキシル基を有する。
【0063】
また、他方で式(IV)のイソシアナートシランISとの反応に適しているのは、ヒドロキシル基含有、特にヒドロキシ末端ポリウレタンポリマーである。このようなポリウレタンポリマーは、少なくとも1つのポリイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの反応により得ることができる。この反応は、ポリオールとポリイソシアネートが通常の方法を使用して、例えば50℃〜100℃の温度で、任意選択的に適切な触媒を添加して、反応するようになっていることで反応が起き、ここで、ポリオールは、そのヒドロキシル基が、ポリイソシアネートのイソシアネート基に対して化学量論的過剰で存在するような速度で添加される。好適なのは、ヒドロキシル基対イソシアネート基が1.3:1〜4:1、特に1.8:1〜3:1の割合である。
【0064】
望む場合には、可塑剤を追加的に使用してポリウレタンポリマーを調製することができ、ここで、使用される可塑剤はイソシアネートに対して反応性の基は含まないものである。
【0065】
この反応で適切なのは、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1を調製するために使用されるイソシアネート基含有ポリウレタンポリマーを調製するのに適しているとして上記したものと同じポリオールとポリイソシアネートである。
【0066】
例えば、シラン官能性ポリマーP2は、Momentive Performance Materials Inc., USAから商品名Silquest商標 A−Link Silaneで市販されている。
【0067】
第3の態様において、シラン官能性ポリマーPは、末端2重結合を有するポリマーのヒドロシリル化反応によって得られるシラン官能性ポリマーP3、例えばポリ(メタ)アクリレートポリマー又はポリエーテルポリマーであり、特にUS3971751号及びUS6207766号(その全開示は本明細書に組み込まれる)に記載されているアリル末端ポリオキシアルキレンポリマーである。これらの文献に開示されているメトキシシラン基含有シラン末端化ポリウレタンポリマーは、本発明に関して不適当である。
【0068】
このシラン官能性ポリマーPは、好ましくはシラン官能性ポリマーP1又はP2であり、特にP1である。
【0069】
シラン官能性ポリマーP3と比較すると、シラン官能性ポリマーP1及びP2は、それらがより高い反応性を有し、そしてより素早い架橋を行う点で有利である。さらに、それらは標準的なポリウレタン組成物と比較しても高い機械的特性を有するという事実が、さらなる利点である。さらに、それらはクリープ挙動に関する傾向が低く、向上した弾性を有するこれらの特性は、シラン官能性ポリマーP1の場合には、特にはっきりとするため、これらは一般的に好ましい。これらの特性の全てを通じて、好ましい組成物は、ジョイント、特に拡張ジョイント(dilatation joint)に特に好適である。
【0070】
シラン官能性ポリマーPは、組成物全体に基づいて、通常10〜80wt%の量、特に15〜50wt%の量、好ましくは20〜40wt%の量で存在する。
【0071】
本発明の組成物は、有機チタネート、有機ジルコネート、及び有機アルミネートからなる群より選択される、シラン官能性ポリマーを架橋するための少なくとも1種の触媒を含有する。
【0072】
ここで、用語「触媒」は、低濃度でも効率的である架橋剤及び架橋助剤をも意味する。示される式中で、破線は、金属への酸素の結合を示している。
【0073】
好適な有機チタネート、有機ジルコネート、及び有機アルミネートは、アルコキシ基、スルホナート基、カルボキシレート基、ジアルキルホスファート基、ジアルキルピロホスファート基及びアセチルアセトナート基からなる群より選択される配位子を有する。ここで、全ての配位子は同一でもよく、又は互いに異なっていてもよい。
【0074】
特にいわゆるネオアルコキシ置換基、特に以下の式(V)のネオアルコキシ置換基は、アルコキシ基として特に好適であることが示されている:
【化5】
【0075】
特に好適なスルホン酸は、アルキル基で置換されている芳香環を有する芳香族スルホン酸であることが分かっている。以下の式(VI)の基が、好ましいスルホン酸であると考えられる:
【化6】
【0076】
特に、好適なカルボキシレート基は、脂肪酸のカルボキシレートであることが分かった。デカノエート、ステアレート、及びイソステアレートが好ましいカルボキシレートである。
【0077】
二座の配位子は、特に式(VII)の配位子である:
【化7】
【0078】
ここで、R21基は、水素原子、又は1〜8個のC原子を有する直鎖の又は分岐鎖のアルキル基、特にメチル基を表す。
【0079】
22基は、水素原子、又は随意にヘテロ原子を有し、かつ1〜8個のC原子を有する直鎖の又は分岐鎖のアルキル基を表し、特に水素原子を表す。
23基は、水素原子、又は1〜8個、特に1〜3個のC原子を有するアルキル基、又は1〜8個、特に1〜3個のC原子を有する直鎖の又は分岐鎖のアルコキシ基を表す。
【0080】
シラン官能性ポリマーを架橋するための触媒は、特に有機チタネートであり、特に以下の式(VIII)の有機チタネートである:
【化8】
【0081】
21、R22及びR23基は、上述されている。
24基は、2〜20個のC原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基、特にイソブチル−又はイソプロピル基を表す。
nは、1又は2の値、特に2を表す。
【0082】
21基がメチル基を表し、R22基が水素原子を表し、R23基がメチル基又はメトキシ基もしくはエトキシ基を表し、かつR24基がイソブチル又はイソプロピル基を表す式(VIII)の有機チタネートが好適である。
【0083】
比較的高い架橋速度を達成できる点で、有機チタネートは利点を有する。
【0084】
適切な有機チタネートは、DuPontから商品名Tyzor(商標)AA、GBA、GBO、AA−75、AA−65、AA−105、DC、BEAT、IBAYで市販されているか、又はTensoChema AG,Switzerlandから、商品名Tytan(商標)PBT、TET、X85、TAA、ET、S2、S4又はS6で市販されている。
【0085】
有機ジルコネートは、例えばKenrich Petrochemicalsから市販されている。好適な有機ジルコネートは、例えばKen−React商標 NZ 38J、NZ TPPJ、KZ OPPR、KZ TPP、NZ 01、NZ 09、NZ 12、NZ38、NZ 44、NZ 97である。さらに好適な有機ジルコネートは、Johnson Matthey & Brandenberg AG, SwitzerlandからSnapcure商標 3020、3030、1020の商標名で入手可能である。
【0086】
好適な有機アルミネートは、例えばWorlee−Chemie GmbH、GermanyからK−KAT商標5218の商標名で入手可能である。
【0087】
当然、様々な触媒の混合物を用いることが好ましい場合もありうる。
【0088】
この触媒の分量は、組成物全体の好ましくは0.1〜10wt%、特に0.2〜4wt%、0.3〜3wt%、最も好ましくは0.5〜1.5wt%の含量である。
【0089】
さらに、本発明の組成物は、少なくとも1つのアミジノ基を有する少なくとも1種の化合物を含む。特にその化合物としては、以下の式(IX)の化合物を挙げられる:
【化9】
【0090】
ここで、R11基は、水素原子、1〜10個のC原子を有する1価炭化水素基、又はR14と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表す。
【0091】
12基は、水素原子、随意に環状部分若しくは芳香族部分及び随意に1個以上のヘテロ原子を有する1〜12個のC原子を有する1価炭化水素基、アミノ基、又はR13と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表す。
【0092】
13基は、水素原子、随意に環状部分又は及び随意に1個以上のヘテロ原子を有する1〜12個のC原子を有する1価炭化水素基、又はR12と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表す。
【0093】
14基は、水素原子、1〜10個のC原子を有する1価炭化水素基、又はR11と一緒になって随意に置換されている1〜10個のC原子を有する2価炭化水素基を表す。
【0094】
例えば、ヘテロ原子を含むR12基又はR13基は、シラン基を含むアルキル基、例えばシラン基がメトキシ基を有していないアルキルトリアルコキシシラン基である。
【0095】
好ましくは少なくとも1つのアミノ基を含む化合物は、グアニジン、イミダゾール、イミダゾリン、二環式アミジン、又はこれらの化合物の誘導体である。そのような誘導体の例は、置換したイミダゾール又はイミダゾリン、特にシラン基がメトキシ基を有していないシラン基含有イミダゾール又はイミダゾリンである。
【0096】
少なくとも1つのアミジノ基を有する好ましい化合物は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、6−(ジブチルアミノ)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、N−メチルトリアザビシクロデカン、テトラメチルグアニジン、2−グアニジノベンズイミダゾール、アセチルアセトングアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン(DTG)、1,3−ジフェニルグアニジン、o−トリルビグアニジン、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(又はN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールである。
【0097】
少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物の分量は、好ましくは組成物全体の0.05〜3wt%、特に0.1〜2wt%、さらに好ましくは0.2〜1wt%の含量である。最も好ましくは、少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物の分量は、0.5wt%以下、特に0.3〜0.5wt%、好ましくは0.4〜0.45wt%である。0.5wt%よりも高い分量の場合、硬化した組成物からの化合物のにじみ(sweating)が起こる場合があり、これは特定の用途において不利である(外観、汚れやすさ等)。
【0098】
好ましくは、アミジンは、二環式のアミジンであり、特に9個、10個、11個、又は12個の炭素原子をその2つの環の構成要素に含む二環式のアミジンである。これらの化合物の利点は、比較的高い反応性を有すること、及びそれらの含量を比較的低くできることである。結果として、これらの化合物の硬化した組成物からのにじみは減少する。
【0099】
好ましくは本発明の組成物は、スズ化合物又は有機スズ化合物を実質的に含まない。特に、この組成物は、スズ化合物又は有機スズ化合物を、0.06wt%未満の含量とし、特に0.01wt%未満の含量とする。好ましくは、この組成物は、例えばシラン末端化ポリマー系の組成物を硬化させるために通常用いられるスズ化合物又は有機スズ化合物を含まない。スズフリ組成物は、環境的にも毒性的にも有利である。スズ化合物又は有機スズ化合物を含まない組成物は、組成物の個々の構成成分が、スズ化合物又は有機スズ化合物の影響の下で製造されていないことが想定されている。したがって、典型的には、シラン官能性ポリマーPの製造は、スズ化合物又は有機スズ化合物の影響がないように行われる。
【0100】
好ましくは、この組成物は少なくとも1種のフィラーも含有する。フィラーは、未硬化組成物のレオロジー特性、並びに硬化組成物の機械的特性や表面質感に影響を与える。適切なフィラーは、例えば、任意選択的に脂肪酸、特にステアリン酸で被覆された重質又は沈降炭酸カルシウム、硫酸バリウム(BaSO4 、バライタ又は重晶石としても知られている)、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、特に熱分解プロセスからの高度分散性の二酸化ケイ素、カーボンブラック、特に工業的に製造されたカーボンブラック、PVC粉末又は中空ビーズである。好適なフィラーは、炭酸カルシウム、焼成カオリン、カーボンブラック、高度分散二酸化ケイ素、及び難燃性フィラー、例えば水酸化物又は水和物、特にアルミニウムの水酸化物又は水和物、好ましくは水酸化アルミニウムである。異なるフィラーの混合物を使用することが、可能であるか有利でさえある。
【0101】
フィラーの適切な量は、組成物全体に基づいて、例えば10〜70wt%、15〜60wt%、好ましくは30〜60wt%の範囲である。
【0102】
さらに、本発明の組成物はまた、他の成分を含んでもよい。このような成分の例は、可塑剤、例えば有機カルボン酸のエステル又はそれらの無水物、例えばフタル酸塩、例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル又はフタル酸ジイソデシル、アジピン酸塩、例えばアジピン酸ジオクチル、アゼライン酸塩及びセバシン酸塩、ポリオール、例えばポリオキシアルキレンポリオール又はポリエステルポリオール、有機リン酸及び有機スルホン酸エステル又はポリブテン;溶媒;例えばポリエチレン製の繊維;染料;顔料;レオロジー改質剤、例えば増粘剤又はチキソトロープ剤、例えばWO02/48228A2号の第9〜11頁で「チキソトロピー付与剤(thixotropy endowing agent)」として記載されている種類の尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト又は熱分解法二酸化ケイ素;接着促進剤、例えばエポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、アンヒドリドシラン、又は1級アミノシランを有する上記シランの付加物、並びにアミノシラン又は尿素シラン;架橋剤、例えばシラン官能性オリゴマー及びポリマー;乾燥剤、例えばビニルトリエトキシシラン、α−官能性シラン、例えばN−(シリルメチル)−O−メチル−カルバメート、特にN−(メチルジエトキシシリルメチル)−O−メチル−カルバメート、(メタクリルオキシメチル)シラン、エトキシメチルシラン、N−フェニル−、N−シクロヘキシル−及びN−アルキルシラン、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム又はモレキュラーシーブ;例えば熱、光及び紫外線に対する例えば安定剤;難燃性物質;界面活性物質、例えば湿潤剤、平滑剤、脱気剤又は消泡剤;殺生剤、例えば殺藻剤、殺真菌剤又は真菌増殖抑制物質;並びに習慣的に水分硬化性組成物に使用される追加の物質である。
【0103】
さらに、組成物の硬化中に、特にシラン基との反応によりポリマーマトリックス中に結合されるいわゆる反応性希釈剤を使用することができる。
【0104】
本発明の組成物は、特に硬化中にメタノールを解離する成分を含まない。このような成分は、シラン官能性ポリマーP及び随意の反応性成分、例えば接着剤、乾燥剤、反応性希釈剤、架橋剤、及び上記の成分と共に存在する。
【0105】
硬化する際にメタノールを解離する成分は、典型的にはメトキシ基含有シラン官能性化合物である。したがって、特に本発明の組成物は、メトキシシラン基を有するシラン官能性組成物を含まない。
【0106】
好ましくは組成物中に存在する全てのシラン官能性化合物が、上述のR、R、及びR、並びに添え字aを有する式(I)の末端基を有する。
【0107】
最も好ましくは組成物中に存在する全ての加水分解性シラン基がエトキシシラン基、特にトリエトキシシラン基である。全ての加水分解性シラン基が同一である、特にエトキシシラン基であるこのような組成物の利点は、この組成物の特性が、シラン基の不利なエーテル交換による保存中の影響を受けないという事実である。シランのアルコキシ基が異なると、これらのシラン基の反応速度が原則として異なるため、エーテル交換は、素早い反応性のシラン基として意図されているシラン基、例えば乾燥剤のシラン基が、長期間の保存の後により遅く反応し始めるという現象をもたらす。全てが同一のアルコキシシラン基を使用することによって、この組成物の一定の特性を、長期間の保存後であっても、例えば半年以上の保存であっても、保証することができる。
【0108】
通常好ましい実施態様では、シラン官能性ポリマーPは、シラン官能性ポリマーP1であり、かつトリエトキシシラン基のみをシラン基として有する。さらに、存在してもよいシラン含有添加剤は、トリエトキシシラン基のみ又はアルキルジエトキシシラン基のみをシラン基として有し、特にメチルジオキシシラン基又はエチルジオキシシラン基、及び好ましくはトリエトキシシラン基のみをシラン基として有する。
【0109】
組成物の保存寿命が、そのような成分の存在によって悪影響を受けないように、すなわち、保存中に特に塗布及び硬化特性が変化しないか又はわずかしか範囲しないように、組成物中に随意に存在する成分のすべて、特にフィラー及び触媒を選択することが有利である。これは、記載した組成物の、特にシラン基の化学的硬化を引き起こす反応が、保存中に有意な程度には起きないことを意味する。したがって、言及された成分が、保存中に水を全く含まないか又は多くても微量しか含まないか又は放出しないことが、特に有利である。したがって、いくつかの成分を組成物中に混合する前に、これらを化学的又は物理的に乾燥させることが有利となることがある。
【0110】
上記の組成物は、好ましくは水分の排除下で製造され保存される。典型的には、組成物は保存安定性であり、すなわち、その塗布特性又は硬化後の特性が、その使用に関係する程度に変化することなく、ドラム、バッグ又はカートリッジなどの適切なパッケージ又は構成で、水分の排除下で数ヶ月から1年以上保存することができる。通常、保存安定性は、粘度又は押し出し力を測定することによって決定される。
【0111】
少なくとも1つの固体又は物品への記載された組成物の塗布中に、組成物に含まれるシラン基は水分と接触する。シラン基は、水分と接触すると加水分解する特性を有する。このプロセスでは、有機シラノールが生成し、その後、しかしそれに続く縮合反応で、有機シロキサンが生成する。触媒の使用を介して促進することができるこれらの反応の結果として、この組成物は最終的に完全に硬化する。このプロセスは、架橋として知られている。
【0112】
硬化に必要な水は、空気(大気湿度)に由来し得るか、又は前述の組成物を、例えば平滑剤の場合には、例えば塗装により、又は噴霧により、水含有成分と接触させることができ、又は水含有成分は、例えば静的ミキサーを使用して、例えば混入された水含有ペーストの形態で、例えば塗布時に、組成物に添加することができる。大気中の水分による硬化時に、組成物は外側から内側に硬化する。ここで硬化速度は、水の拡散速度、温度、大気湿度及び結合の幾何学的形状などのさまざまな要因によって決定され、一般に、硬化が進行するにつれて速度は低下する。
【0113】
さらに本発明は、接着剤、シーラント又はコーティングとしての上記の組成物の使用を構成する。
【0114】
本発明の組成物は、特に、2つの基質S1とS2を結合させる方法であって、
i)基質S1及び/又は基質S2に上記組成物を塗布する工程と、
ii)組成物のオープン時間内に、塗布された組成物上で、基質S1とS2とを接触させる工程と、
iii)組成物を水で硬化させる工程と、
を含み、基質S1とS2は互いに同じか又は異なる、方法で使用される。
【0115】
さらに、本発明の組成物はまた、封止又はコーティング方法であって、
i)基質S1上に、及び/又は2つの基質S1とS2との間に、前記組成物を塗布する工程と、
ii)組成物を、特に湿度の形態の水で硬化する工程と、
を含み、基質S1とS2は互いに同じか又は異なる、方法で使用することもできる。
【0116】
S1及び/又はS2として特に適しているのは、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏、自然石、例えば花崗岩又は大理石、ガラス、ガラスセラミック、金属又は金属合金、木材、プラスチック及びラッカーからなる群から選択される基質である。
【0117】
本発明の組成物は、好ましくは構造的に粘性を有するペースト状稠度を有する。この種の組成物は、好ましくはビーズの形態で、適当な器具を用いて基質に塗布され、ここで、この有利な器具は基本的に丸いか又は三角形の断面積を有する。組成物を塗布するための適切な方法は、例えば、市販のカートリッジから、用手法で操作するか又は圧縮空気を使用して、又はドラム又はバケツから送達ポンプ又は押出機を用いる、任意選択的に塗布ロボットを用いる、塗布である。良好な塗布特性を有する本発明の組成物は、負荷と短いつるし状態の下で高い安定性を有する。すなわち、塗布後、これは塗布形態のままで維持され、したがって流れ去らず、塗布器具を除いた後に、ストリングは全く生成されないか又は非常に短いストリングのみが生成され、したがって基質は汚れない。
【0118】
さらに本発明は、水分、特に大気湿度の形態の水分での硬化後に、上記に記載の組成物から得られる硬化した組成物に関する。
【0119】
本発明の組成物により結合、封止、又は被覆される物品は、特に建造物、特に地上又は地下建物、工業的に製造された製品又は消費者製品、特に窓、家電、輸送手段、又は搬送手段のための付属品である。
【0120】
さらに、本発明は、メトキシ基ではないアルコキシ基を有するシラン末端化ポリマーを架橋するために、有機チタネート、有機ジルコネート及び有機アルミネートからなる群より選択される触媒を、少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物と共に使用することに関する。好ましい触媒及び少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物は、上述のとおりである。
【0121】
さらに、本発明は、メトキシ基ではないアルコキシ基を有するシラン末端化ポリマーを架橋するための触媒系であって、有機チタネート、有機ジルコネート及び有機アルミネートからなる群より選択される触媒及び少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物を含む触媒系に関する。
【0122】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために与えられている。当然、本発明は、これらの記載した実施態様に限定されない。
【実施例】
【0123】
《試験方法》
0〜100%伸びでの弾性率、引張強度、及び破壊伸び率を、DIN EN 53504(引張速度:200mm/分)に従って、23℃で相対湿度50%で7日間硬化させた2mmの層厚さを有する膜で測定した。
【0124】
引き裂き伝播抵抗は、DIN 53515に従って、23℃で相対湿度50%で7日間硬化させた2mmの層厚さを有する膜で測定した。
【0125】
ショアA硬度は、23℃、相対湿度50%で7日間硬化させた6mmの層厚を有する試験片で、DIN53505に従って、測定した。
【0126】
スキン形成時間(「不粘着時間」)は、23℃、相対湿度50%で測定した。スキン形成時間を決定するため、室温で接着剤の小さな部分を、約2mmの層厚で厚紙に塗布し、LDPEピペットで接着剤の表面を軽くたたいた時、ピペットに初めて残留物が残らなくなるまでに必要な時間を測定した。
【0127】
《エトキシ末端基を有するシラン官能性ポリウレタンポリマーP−EtOの調製》
窒素雰囲気下で、700gのポリオール(Acclaim商標 12200、Bayer Material Science社;低モノポリオキシプロピレンジオール;OH数11.0mgKOH/g;約0.02wt%の水分含有量)、32.1gのイソホロンジイソシアネート(Vestanat商標 IPDI、Evonik Degussa社)、85.4gの2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(Eastman TXIB商標; Eastman Chemical Company社、USA)及び0.4gのTyzor商標 IBAY (fromDuPont社、USA)を一定の撹拌の下で90℃に加熱し、この温度にした。1時間の反応時間の後、滴定して測定した遊離イソシアネート基の含量は、0.7wt%であった。そして、0.14molの反応性シラン(Int−EtO)(シランとNCO基の化学量論的反応に対応)を添加し、さらに90℃で2〜3時間撹拌を続けた。この反応を、遊離イソシアネート基がIR分光法(2275〜2230cm−1)によって測定されなくなった後すぐに停止させた。この生成物を室温(23℃)に冷却し、水分を排除して保存した(理論ポリマー含量=90%)。
【0128】
反応性シランInt−EtO(N−(3−トリエトキシシリル−プロピル−)アミノコハク酸ジエチルエステル)を次のとおり製造した:100gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan商標 AMEO、Evonik Degussa GmbH、Germany)を、まず使用した。撹拌をしながら、77.8gのジエチルマレエート(Fluka Chemie GmbH、Switzerland)を、室温でゆっくりと加えて、この混合物を12時間60℃で撹拌した。
【0129】
《チキソ性添加剤TMの調製》
減圧ミキサー中で1000gのジイソデシルフタレート(DIDP、Palatinol商標 Z、BASF SE、Germany)及び160gの4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(Desmodur商標 44 MC L、Bayer)を入れ、そしてわずかに加熱した。そして、90gのモノブチルアミンを強い撹拌の下でゆっくりと滴定した。その白いペーストを、減圧の下で冷却してさらに1時間撹拌した。このチキソ性添加剤は、20wt%のチキソ性添加剤を80wt%のジイソデシルフタレート中に含有していた。
【0130】
《接着剤の調製》
表1〜表3に与えられている重量部に対応して、シラン官能性ポリマーP−EtO、DIDP、チキソ性添加剤TM、及びビニルトリエトキシシラン(Dynasylan商標 VTEO、Evonik Degussa GmbH、Germany)を減圧ミキサー中で5分間よく撹拌した。そして乾燥させて、沈降チョーク(Socal商標 U1S2、Solvay SA、Belgium)及び粉体化チョーク(Omyacarb商標 5−GU、OmyaAG、Switzerland)を、15分間60℃で混練した。そして、加熱を留めて、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(Dynasylan商標 AMEO)、触媒及び選択的に少なくとも1つのアミジノ基を有する化合物を、10分間減圧下で加工して、均質のペーストを形成した。これを、次に、これを内部に塗装したアルミニウム拡大プランジャーカートリッジ(expanding plungeraluminum cartridge)に充填した。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】