特許第6181762号(P6181762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181762リチウム二次電池用電解液及びそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181762
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解液及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20170807BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20170807BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20170807BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20170807BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20170807BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01M10/0569ZHV
   H01M10/0568
   H01M10/0525
   H01M4/58
   H01M4/587
   H01M4/36 C
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-532981(P2015-532981)
(86)(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公表番号】特表2015-534225(P2015-534225A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】KR2013010704
(87)【国際公開番号】WO2014081250
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0134014
(32)【優先日】2012年11月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・グン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】グン・チャン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーリム・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・チョル・チェ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジェ・ユン
【審査官】 清水 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−317654(JP,A)
【文献】 特開2011−071017(JP,A)
【文献】 特開2001−135351(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0091782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム二次電池用電解液において、前記電解液は、スルファニル(sulfanyl)系溶媒を含み、
前記スルファニル系溶媒は、下記化学式(1)〜(4)の化合物からなる群から選択される1つ以上を含み、
前記電解液は、追加的に、カーボネート系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群から選択される1つ以上を含み、
前記カーボネート系溶媒は環状カーボネートを含み、
前記電解液の溶媒は、スルファニル系溶媒及びカーボネート系溶媒からなり、スルファニル系溶媒:カーボネート系溶媒は、電解液全体の体積比を基準として20:80〜80:20の混合比を有する;または、前記電解液の溶媒は、スルファニル系溶媒及びエーテル系溶媒からなり、スルファニル系溶媒:エーテル系溶媒は、電解液全体の体積比を基準として5:95〜50:50の混合比を有する;または、前記電解液の溶媒は、スルファニル系溶媒、カーボネート系溶媒、及びエーテル系溶媒からなり、電解液全体の体積比を基準としてスルファニル系溶媒10〜80%、カーボネート系溶媒10〜80%、エーテル系溶媒1%〜10%が混合されている、リチウム二次電池用電解液。
【化1】
化学式(1)(ビス−メチルスルファニル−メタン;Bis−methylsulfanyl−methane)
【化2】
化学式(2)(1,2−ビス−メチルスルファニル−エタン;1,2−Bis−methylsulfanyl−ethane)
【化3】
化学式(3)(1,2−ビス−エチルスルファニル−エタン;1,2−Bis−ethylsulfanyl−ethane)
【化4】
化学式(4)(1,5−ビス−メチルスルファニル−ペンタン;1,5−Bis−methylsulfanyl−pentane)
【請求項2】
前記スルファニル(sulfanyl)系溶媒は、リチウムイオンとの結合エネルギーが0.1eV〜4.0eVであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項3】
前記カーボネート系溶媒は、環状カーボネートであり、前記環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、及び2,3−ペンチレンカーボネートのうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項4】
前記カーボネート系溶媒は、追加的に線状カーボネートを含み、前記線状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)のうちの1つ以上であり、環状カーボネートと線状カーボネートは、体積比で1:4〜4:1の割合で混合比を有することを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項5】
前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル及びジブチルエーテルから選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項6】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiPF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、4フェニルホウ酸リチウム及びイミドからなる群から選択された1つ以上であり、濃度は、電解液内で0.5M〜3Mであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項7】
請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項8】
前記リチウム二次電池は、
(i)正極活物質として下記化学式1のリチウム金属リン酸化物を含む正極と、
Li1+aM(PO4−b)X(1)
上記式中、Mは、第2族〜第12族の金属からなる群から選択される1種以上であり、Xは、F、S及びNから選択された1種以上であり、−0.5≦a≦+0.5、0≦b≦0.1であり、
(ii)負極活物質として非晶質カーボンを含む負極とを含んでいることを特徴とする、請求項7に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム金属リン酸化物は、下記化学式2のオリビン結晶構造のリチウム鉄リン酸化物であることを特徴とする、請求項8に記載のリチウム二次電池:
Li1+aFe1−xM’(PO4−b)X(2)
上記式中、
M’は、Al、Mg、Ni、Co、Mn、Ti、Ga、Cu、V、Nb、Zr、Ce、In、Zn及びYから選択された1種以上であり、
Xは、F、S及びNから選択された1種以上であり、
−0.5≦a≦+0.5、0≦x≦0.5、0≦b≦0.1である。
【請求項10】
前記オリビン結晶構造のリチウム鉄リン酸化物はLiFePOであることを特徴とする、請求項9に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記オリビン結晶構造のリチウム鉄リン酸化物は、伝導性カーボンでコーティングされていることを特徴とする、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記非晶質カーボンは、ハードカーボン及び/又はソフトカーボンであることを特徴とする、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
請求項7に記載のリチウム二次電池を単位電池として含むことを特徴とする、電池モジュール。
【請求項14】
請求項13に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項15】
請求項14に記載の電池パックを含むことを特徴とする、デバイス。
【請求項16】
前記デバイスは、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵用システムであることを特徴とする、請求項15に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用電解液及びそれを含むリチウム二次電池に係り、詳細には、リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム二次電池用電解液において、前記電解液は、スルファニル(sulfanyl)系溶媒を含んでいることを特徴とするリチウム二次電池用電解液及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発及び需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対して需要が急増しており、最近は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源として二次電池の使用が実現化されている。それによって、様々な要求に応えられる二次電池に対して多くの研究が行われており、特に、高いエネルギー密度、高い放電電圧及び出力安定性のリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0003】
特に、ハイブリッド電気自動車に使用されるリチウム二次電池は、短時間に大きな出力を発揮できる特性と共に、大電流による充放電が短時間に繰り返される苛酷な条件下で10年以上使用可能でなければならないので、既存の小型リチウム二次電池よりも遥かに優れた安全性及び出力特性が必然的に要求される。
【0004】
これと関連して、従来のリチウム二次電池は、正極に層状構造(layered structure)のリチウムコバルト複合酸化物を使用し、負極に黒鉛系材料を使用することが一般的であるが、LiCoOの場合、エネルギー密度及び高温特性が良いという利点を有する一方、出力特性が悪いため、発進と急加速などに一時的に要求される高い出力を電池から得るので、高出力を要するハイブリッド電気自動車(HEV)用に不適切であり、LiNiOは、その製造方法による特性上、合理的なコストで実際の量産工程に適用することが難しく、LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物は、サイクル特性などが悪いという欠点を有している。
【0005】
そこで、最近、リチウム遷移金属フォスフェート物質を正極活物質として用いる方法が研究されている。リチウム遷移金属フォスフェート物質は、ナシコン(Nasicon)構造のLixM(POとオリビン(Olivine)構造のLiMPOとに大別され、既存のLiCoOに比べて高温安定性に優れた物質として研究されている。
【0006】
負極活物質としては、標準水素電極電位に対して約−3Vの非常に低い放電電位を有し、黒鉛板層(graphene layer)の一軸配向性によって非常に可逆的な充放電挙動を示し、これによって優れた電極寿命特性(cycle life)を示す炭素系活物質が主に使用されている。
【0007】
一方、リチウム二次電池は、負極と正極との間に多孔性高分子分離膜を位置させ、LiPFなどのリチウム塩を含有した非水性電解液を入れて製造することになる。充電時には、正極活物質のリチウムイオンが放出されて負極の炭素層に挿入され、放電時には、逆に、炭素層のリチウムイオンが放出されて正極活物質に挿入され、非水性電解液は、負極と正極との間でリチウムイオンが移動する媒質の役割を果たす。このようなリチウム二次電池は、基本的に、電池の作動電圧範囲で安定しなければならず、十分に速い速度でイオンを伝達できる能力を有しなければならない。
【0008】
前記非水性電解液として、従来は、カーボネート系溶媒を使用したが、カーボネート溶媒は、粘度が大きくなってイオン伝導度が小さくなるという問題点があった。
【0009】
したがって、上記のような問題を解決することができる技術に対する必要性が非常に高い実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0011】
本出願の発明者らは、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、所定のスルファニル(sulfanyl)系溶媒を含む二次電池用電解液を使用する場合、所望の効果を達成できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、リチウム塩及び非水系溶媒を含むリチウム二次電池用電解液において、前記電解液は、スルファニル(sulfanyl)系溶媒を含んでいることを特徴とするリチウム二次電池用電解液を提供する。
【0013】
一般に、カーボネート溶媒は、粘度が大きいため、イオン伝導度が小さいという問題点がある。反面、スルファニル(sulfanyl)系溶媒の場合、硫黄(sulfur)が置換されて、リチウムイオンとの結合エネルギーが低い。したがって、カーボネート系溶媒と比較して相対的に粘度が小さく、誘電率が高いため、リチウムイオン移動度及びイオン解離度を向上させることができる。また、融点も低いので、低温でも高いイオン伝導度を示すことができる。
【0014】
前記スルファニル(sulfanyl)系溶媒として、リチウムイオンとの結合エネルギーが0.1eV〜4.0eVであるものを使用することができ、一例として、下記化学式(1)〜(5)の化合物からなる群から選択される1つ以上からなるものを使用することができる。
【0015】
【化1】
化学式(1)(ビス−メチルスルファニル−メタン;Bis−methylsulfanyl−methane)
【0016】
【化2】
化学式(2)(1,2−ビス−メチルスルファニル−エタン;1,2−Bis−methylsulfanyl−ethane)
【0017】
【化3】
化学式(3)(1,2−ビス−エチルスルファニル−エタン;1,2−Bis−ethylsulfanyl−ethane)
【0018】
【化4】
化学式(4)(1,5−ビス−メチルスルファニル−ペンタン;1,5−Bis−methylsulfanyl−pentane)
【0019】
【化5】
化学式(5)(テトラヒドロ−チオフェン;tetrahydro−thiophene)
【0020】
前記電解液は、追加的にカーボネート系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群から選択される1つ以上を含むことで、効果を極大化することができる。
【0021】
本発明において、体積比は常温を基準とし、一例として、前記電解液中の溶媒は、スルファニル(sulfanyl)系溶媒及びカーボネート系溶媒からなることができ、この場合、スルファニル(sulfanyl)系溶媒:カーボネート系溶媒は、電解液全体の体積比を基準として20:80〜80:20の混合比を有することができ、詳細には、30:70〜70:30であってもよく、より詳細には40:60〜60:40であってもよい。
【0022】
スルファニル系溶媒の含量が少なすぎるか、またはカーボネート系溶媒の含量が多すぎる場合、粘度が大きいカーボネート系溶媒により、電解液のイオン伝導度が低下することがあるため好ましくなく、また、スルファニル系溶媒の含量が多すぎるか、またはカーボネート系溶媒の含量が少なすぎる場合、リチウム塩が電解液によく溶解しないことでイオン解離度が低くなることがあるため好ましくない。
【0023】
他の例として、前記電解液中の溶媒は、スルファニル(sulfanyl)系溶媒及びエーテル系溶媒からなり、スルファニル(sulfanyl)系溶媒:エーテル系溶媒は、電解液全体の体積比を基準として5:95〜50:50の混合比を有することができ、詳細には、10:90〜40:40の混合比を有することができる。
【0024】
更に他の例として、前記電解液中の溶媒は、スルファニル(sulfanyl)系溶媒、カーボネート系溶媒及びエーテル系溶媒からなることができ、電解液全体の体積比を基準としてスルファニル(sulfanyl)系溶媒10〜80%、カーボネート系溶媒10〜80%、エーテル系溶媒1〜10%の混合比を有することができる。
【0025】
すなわち、前記電解液は、カーボネート系溶媒を基準として、スルファニル(sulfanyl)系溶媒及びエーテル系溶媒を適宜混合して使用することができる。
【0026】
前記カーボネート系溶媒は、例えば、環状カーボネートであってもよく、このような環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、及び2,3−ペンチレンカーボネートのうちの1つ以上であってもよい。
【0027】
また、前記カーボネート系溶媒は、追加的に線状カーボネートを含むことができ、このような線状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)のうちの1つ以上を含み、この場合、環状カーボネートと線状カーボネートは、体積比で1:4〜4:1の割合で混合比を有することができ、詳細には、2:2の混合比を有することができる。
【0028】
前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル及びジブチルエーテルから選択される1つ以上であってもよく、詳細にはジメチルエーテルであってもよい。
【0029】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiPF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、4フェニルホウ酸リチウム及びイミドからなる群から選択された1つ以上であってもよい。前記リチウム塩の濃度は、電解液内で0.5M〜3Mであってもよく、詳細には0.8M〜2Mであってもよい。
【0030】
本発明は、前記リチウム二次電池用電解液を含んで構成されているリチウム二次電池を提供する。
【0031】
前記リチウム二次電池は、(i)正極活物質として下記化学式1のリチウム金属リン酸化物を含む正極と、
Li1+aM(PO4−b)X(1)
上記式中、Mは、第2族〜第12族の金属からなる群から選択される1種以上であり、Xは、F、S及びNから選択された1種以上であり、−0.5≦a≦+0.5、及び0≦b≦0.1である。
(ii)負極活物質として非晶質カーボンを含む負極と、を含むことができる。
【0032】
詳細には、前記リチウム金属リン酸化物は、下記化学式2のオリビン結晶構造のリチウム鉄リン酸化物であってもよい。
【0033】
Li1+aFe1−xM’(PO4−b)X(2)
【0034】
上記式中、M’は、Al、Mg、Ni、Co、Mn、Ti、Ga、Cu、V、Nb、Zr、Ce、In、Zn及びYから選択された1種以上であり、Xは、F、S及びNから選択された1種以上であり、−0.5≦a≦+0.5、0≦x≦0.5、及び0≦b≦0.1である。
【0035】
前記a、b及びxの値が前記範囲を外れる場合には、導電性が低下するか、または前記リチウム鉄リン酸化物がオリビン構造を維持できなくなり、レート特性が悪化するか、または容量が低下するおそれがある。
【0036】
より詳細には、前記オリビン結晶構造のリチウム鉄リン酸化物は、LiFePO、Li(Fe,Mn)PO、Li(Fe,Co)PO、Li(Fe,Ni)POなどを挙げることができ、より詳細にはLiFePOであってもよい。
【0037】
すなわち、本発明に係るリチウム二次電池は、正極活物質としてLiFePOを適用し、負極活物質として非晶質カーボンを適用することで、LiFePOの低い電子伝導性のため発生し得る内部抵抗増加の問題を解決できると共に、優れた高温安定性及び出力特性を示すことができる。
【0038】
さらに、本発明に係るスルファニル系溶媒を含む電解液を共に適用する場合、優れた電解液のリチウムイオン移動度及びイオン解離度だけでなく、イオン伝導度が向上するので、カーボネート系溶媒を使用した場合と比較して、優れた常温及び低温出力特性を示すことができる。
【0039】
前記リチウム金属リン酸化物は、1次粒子及び/又は1次粒子が物理的に凝集した2次粒子からなることができる。
【0040】
このような1次粒子の平均粒径は1nm〜300nmであり、2次粒子の平均粒径は1μm〜40μmであってもよく、詳細には、前記1次粒子の平均粒径は10nm〜100nmであり、2次粒子の平均粒径は2μm〜30μmであってもよく、より詳細には、前記2次粒子の平均粒径は3μm〜15μmであってもよい。
【0041】
前記1次粒子の平均粒径が大きすぎると、所望のイオン伝導度の向上を発揮することができず、小さすぎると、電池製造工程が容易でなく、前記2次粒子の平均粒径が大きすぎると、体積密度が低下し、小さすぎると、工程効率性を発揮できないため、好ましくない。
【0042】
このような2次粒子の比表面積(BET)は3m/g〜40m/gであってもよい。
【0043】
前記リチウム金属リン酸化物は、電子伝導性を高めるために、例えば、伝導性カーボンで被覆することができ、この場合、伝導性カーボンの含量は、正極活物質の全重量を基準として0.1重量%〜10重量%であってもよく、詳細には、1重量%〜5重量%であってもよい。伝導性カーボンの量が多すぎる場合、相対的にリチウム金属リン酸化物の量が減少することで電池の諸特性が減少し、少なすぎる場合、電子伝導性の向上効果を発揮できないため好ましくない。
【0044】
前記伝導性カーボンは、1次粒子、2次粒子のそれぞれの表面に塗布されてもよく、例えば、1次粒子の表面を0.1nm〜100nmの厚さでコーティングし、2次粒子の表面を1nm〜300nmの厚さでコーティングすることができる。
【0045】
伝導性カーボンが正極活物質の全重量を基準として0.5重量%〜1.5重量%コーティングされた1次粒子の場合、カーボンコーティング層の厚さは、約0.1nm〜2.0nmであってもよい。
【0046】
本発明において、前記非晶質カーボンは、結晶質の黒鉛を除外した炭素系化合物であって、例えば、ハードカーボン及び/又はソフトカーボンであってもよい。結晶質の黒鉛を使用する場合、電解液の分解が起こることがあるため好ましくない。
【0047】
前記非晶質カーボンは、摂氏1800度以下の温度で熱処理する過程を含んで製造することができ、例えば、ハードカーボンは、フェノール樹脂またはフラン樹脂を熱分解して製造し、ソフトカーボンは、コークス、ニードルコークスまたはピッチ(Pitch)を炭化して製造してもよい。
【0048】
このような非晶質カーボンを適用した負極のXRDスペクトルを図1に示した。
【0049】
前記ハードカーボン及びソフトカーボンは、それぞれまたは混合されて負極活物質として使用することができ、例えば、負極活物質の全重量を基準として5:95〜95:5の重量比で混合されていてもよい。
【0050】
以下、本発明に係るリチウム二次電池の構成を説明する。
【0051】
リチウム二次電池は、正極集電体上に上記のような正極活物質、導電材及びバインダーの混合物を塗布した後、乾燥及びプレスして製造される正極と、同様の方法で製造される負極とを含み、この場合、必要に応じては、前記混合物に充填剤をさらに添加することもある。
【0052】
前記正極集電体は、一般に3μm〜500μmの厚さに製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態が可能である。
【0053】
前記導電材は、通常、正極活物質を含んだ混合物の全重量を基準として1重量%〜50重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0054】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全重量を基準として1重量%〜50重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などを挙げることができる。
【0055】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0056】
前記負極集電体は、一般に3μm〜500μmの厚さに製造される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0057】
このようなリチウム二次電池は、正極と負極との間に分離膜が介在した構造の電極組立体にリチウム塩含有電解液が含浸されている構造からなることができる。
【0058】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在し、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。一般に、分離膜の気孔径は0.01μm〜10μmで、厚さは5μm〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0059】
前記リチウム塩含有電解液は、前述した非水系有機溶媒電解液とリチウム塩からなっており、追加的に、有機固体電解質、無機固体電解質などが含まれてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0060】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使用することができる。
【0061】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0062】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro−Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含ませることができる。
【0063】
本発明は、前記リチウム二次電池を単位電池として含むことを特徴とする電池モジュール、及びこのような電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0064】
電池パックは、高温安定性、長いサイクル特性及び高いレート特性などが要求されるデバイスの電源として使用することができる。
【0065】
前記デバイスの例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車を挙げることができるが、本発明に係る二次電池は、優れた常温及び低温出力特性を示すので、詳細には、ハイブリッド電気自動車に好ましく使用することができる。
【0066】
また、最近は、使用しない電力を物理的又は化学的エネルギーに変えて貯蔵しておき、必要時に電気エネルギーとして使用できるようにする電力貯蔵装置にリチウム二次電池を使用するための研究が盛んに行われている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明の非晶質カーボンを適用した負極のXRDスペクトルを示したグラフである。
図2】実験例1に係るリチウム二次電池の低温出力特性を測定して示したグラフである。
図3】実験例2に係るリチウム二次電池の初期活性化過程後の相対容量を測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
<実施例1>
正極活物質としてLiFePO86重量%、Super−P(導電材)8重量%及びPVdF(バインダー)6重量%をNMPに添加して正極混合物スラリーを製造した。これをアルミニウムホイルの一面にコーティング、乾燥及び圧着することで、正極を製造した。
【0069】
負極活物質としてソフトカーボン93.5重量%、Super−P(導電材)2重量%及びSBR(バインダー)3重量%、増粘剤1.5重量%を溶剤であるHOに添加して負極混合物スラリーを製造し、銅ホイルの一面にコーティング、乾燥、及び圧着することで、負極を製造した。
【0070】
分離膜としてセルガードTMを使用して前記正極と負極を積層することによって電極組立体を製造した後、ビス−メチルスルファニル−メタン、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)が体積比を基準として6:2:2の混合溶媒にリチウム塩として1MのLiPFを含んでいるリチウム非水系電解液を添加することで、リチウム二次電池を製造した。
【0071】
<比較例1>
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が体積比を基準として2:4:4の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0072】
<比較例2>
エチレンカーボネート(EC)、ジメトキシエタン(DME)が体積比を基準として2:8の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0073】
<比較例3>
エチルビス−メチルスルファニル−メタン、エチレンカーボネート(EC)、ジメトキシエタン(DME)が体積比を基準として5:2:3の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0074】
<比較例4>
エチルビス−メチルスルファニル−メタン、エチレンカーボネート(EC)、ジメトキシエタン(DME)が体積比を基準として6:2:2の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0075】
<実験例1>
上記実施例1、比較例1及び2で製造されたリチウム二次電池の低温出力特性を測定し、下記の図2に示した。
【0076】
それぞれのセルは、常温でSOC50%にセットされた状態で摂氏−30度の低温に温度を下げた後、一定の電圧で10秒間放電して出力を比較した。
【0077】
図2によると、本発明に係る実施例1の電池は、比較例1及び2の電池に比べて低温出力特性が高いことがわかる。
【0078】
<実験例2>
上記実施例1及び比較例3、4で製造されたリチウム二次電池の初期活性化過程後の1C容量を測定し、図3に示した。
【0079】
図3によると、ビスメチルスルファニル−メタンの比率が高まるにつれて効率が急激に減少して、小さい容量を示すことがわかる。したがって、初期効率が低い比較例3は、電池として使用することができない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上で説明したように、本発明に係る二次電池は、所定のスルファニル(sulfanyl)系溶媒を含む電解液を使用して、イオン伝導度を高めることができるので、優れた出力特性を示し、特に、スルファニル(sulfanyl)系溶媒の低い融点によって、低温でも優れた出力特性を示すことができる。
【0081】
オリビン結晶構造のリチウム鉄リン酸化物を非晶質カーボンと共に使用する場合、電池の内部抵抗が減少できるので、レート特性及び出力特性がより向上して、ハイブリッド電気自動車用に好適に使用することができる。
図1
図2
図3