【文献】
藤崎 亨,ユニバーサルデザインフード,日本食品科学工学会誌,2008年 3月31日,Vol. 55, No. 2,pp. 78-79, Online ISSN: 1881-6681
【文献】
笠原 文善,アルギン酸類,別冊フードケミカル−8「乳化・安定剤総覧」,1996年,pp. 82-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ゼリー状食品は、特有の柔らかな弾力性や、滑らかな舌触りから、デザートとして広く利用されている。また、ゼリー状食品は、高齢や病気等を理由に飲み込む力が低下して上手に飲み込むことができなくなった人向けの調整食品としても利用されている。食品を柔らかいゼリー状にすることで、飲み込む力が低下した人でも飲み込みやすくすることができる。
【0003】
ゼリー状食品は、従来から、ゲル形成能を有する物質、例えば寒天やゼラチンを用いて調製されてきた。これらは、食品に異味を付与しない点では好適であるが、溶解温度が高いため、ゼリー状食品を作る際には、加熱による溶解工程を経た後に冷却してゲル化させる必要があった。
【0004】
上記のような加熱と冷却の手間を省くために、溶解温度を下げたゼラチンや、常温の水に溶けるアルギン酸塩やペクチン等を用いたゲル化剤(ゼリー剤)も開発されている。
【0005】
また、加熱と冷却を必要としないゼリー剤として、アルギン酸ナトリウム、中性不溶・難溶カルシウム塩、及び中性可溶カルシウム塩を含有する固形状インスタントゼリーミックス(特許文献1参照)や、アルギン酸及びその塩、ペクチン並びにカラギーナンからなる群より選ばれる1種以上と、HLB値が8以下である界面活性剤とを含有するゼリー化組成物(特許文献2参照)が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術によれば、経時的にゲルが硬くなりすぎてしまう場合があり、安定した硬さが得られない問題があった。特に、嚥下障害患者に対して、誤嚥を防ぎ、安全に飲み込む観点から、安定した物性の食事を提供することは非常に重要である。例えば、介護する者にとっては、経時的にゲルが硬くなりすぎると、再度ゼリー化食品を調製する必要が生じ、食事の準備の手間や時間が余計にかかるため、デメリットになる。上記特許文献1及び2においても、ゲルの硬さの経時的な安定性については検討されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、ゼリー状食品の調製に加熱と冷却を必要とせず、食品に溶解させた後、速やかに食品をゲル化させることができ、かつ経時的にゲルを硬くさせすぎず、問題となるレベルの異味を食品に与えることのないゼリー剤組成物及び当該ゼリー剤組成物を含有する食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[4]のゼリー剤組成物及び下記[5]〜[6]の食品を提供する。
[1]アルギン酸ナトリウムを5〜25質量%、クエン酸カルシウムを2〜10質量%、クエン酸を0.4〜2.5質量%(無水基準)、及び賦形剤を含有し、前記クエン酸カルシウムと前記クエン酸の含有質量比(クエン酸カルシウム/クエン酸)が2〜5であることを特徴とするゼリー剤組成物。
[2]前記賦形剤を40〜90質量%含有することを特徴とする前記[1]に記載のゼリー剤組成物。
[3]前記賦形剤は、グラニュー糖、デキストリン、砂糖、粉糖、及びぶどう糖から選ばれる1種又は2種以上である前記[1]又は前記[2]に記載のゼリー剤組成物。
[4]前記ゼリー剤組成物を10℃の水に溶解して3%水溶液としたときの、溶解後10分後における10℃のゲルの硬さが1000〜3000N/m
2であり、溶解後30分後における10℃のゲルの硬さが、溶解後10分後における10℃のゲルの硬さの100〜200%であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のゼリー剤組成物。
[5]前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のゼリー剤組成物を含有することを特徴とする食品。
[6]アルギン酸ナトリウムを0.201〜0.600質量%、クエン酸カルシウムを0.087〜0.120質量%、及びクエン酸を0.021〜0.051質量%(無水基準)を含有し、前記クエン酸カルシウムと前記クエン酸の含有質量比(クエン酸カルシウム/クエン酸)が2〜5であることを特徴とするゼリー状食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ゼリー状食品の調製に加熱と冷却を必要とせず、食品に溶解させた後、速やかに食品をゲル化させることができ、かつ経時的にゲルを硬くさせすぎず、問題となるレベルの異味を食品に与えることのないゼリー剤組成物及び当該ゼリー剤組成物を含有する食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物〕
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物(以下、ゲル化剤組成物と言うことがある)は、アルギン酸ナトリウムを5〜25質量%、クエン酸カルシウムを2〜10質量%、クエン酸を0.4〜2.5質量%(無水基準)、及び賦形剤を含有し、前記クエン酸カルシウムと前記クエン酸の含有質量比(クエン酸カルシウム/クエン酸)が2〜5であることを特徴とする。以下、詳細に説明する。
【0012】
[アルギン酸ナトリウム]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、アルギン酸ナトリウムを含有する。アルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基の一部がナトリウムイオンと結合した中性塩である。アルギン酸とは、2種類のウロン酸(マンヌロン酸及びグルロン酸)がランダムに直鎖重合した構造を有する多糖類であり、コンブ、ワカメ等の天然の褐藻類に豊富に含まれている。
【0013】
アルギン酸ナトリウムは、公知の方法に従い、得ることができる。例えば、酸による加水分解等の方法で褐藻類等から抽出・精製して得られたアルギン酸を、水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウム等によって中和した後、精製することでアルギン酸ナトリウムを得ることができる。
【0014】
本実施の形態におけるアルギン酸ナトリウムとしては、食用に使用されるものであれば特に限定されることなく使用できる。例えば、(株)キミカ製のキミカアルギンIシリーズ、キミカアルギンHigh・Gシリーズ等が使用できる。アルギン酸ナトリウムの分子量は特に限定されるものではないが、アルギン酸ナトリウム1質量%水溶液としたときの20℃における粘度が50〜900mPa・sであるものを使用することが好ましく、200〜700mPa・sであるものを使用することがより好ましく、300〜500mPa・sであるものを使用することがさらに好ましい。
アルギン酸ナトリウムの粘度は、粘度計(TOKIMEC社製、型番:VISCOMETER(MODEL:BM))のローターNo.1(回転数30rpm)を用いて、アルギン酸エステルの1質量%水溶液について、20℃における粘度を測定することで特定される。
【0015】
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物中のアルギン酸ナトリウムの含有量は、5〜25質量%である。下限値は、5.5質量%が好ましく、6質量%がより好ましく、6.5質量%がもっとも好ましい。上限値は、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、8.5質量%がもっとも好ましい。アルギン酸ナトリウム含量が上記の範囲にあると、速やかにゲル化し、適切な硬さのゼリーが得られる。25質量%より大きくなると、溶解時にダマができ、溶けにくい。
【0016】
[クエン酸カルシウム]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、クエン酸カルシウムを含有する。クエン酸カルシウムは、実際には、クエン酸三カルシウム四水和物であり、食用として使用可能なものを用いる。
【0017】
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物中のクエン酸カルシウムの含有量(クエン酸三カルシウム四水和物としての含有量)は、2〜10質量%であり、2.2〜7質量%が好ましく、2.5〜5質量%がより好ましく、2.8〜4.5質量%がさらに好ましく、3〜4質量%がもっとも好ましい。クエン酸カルシウム含量が上記の範囲にあると、速やかにゲル化し、適切な硬さのゼリーが得られる。10質量%より大きくなると、溶解時にダマができ、溶けにくい。
【0018】
ゼリー剤組成物中のアルギン酸ナトリウムとクエン酸カルシウムとの含有質量比(アルギン酸ナトリウム/クエン酸カルシウム)は、1.5〜6が好ましく、2〜5.5がより好ましく、2.2〜5がさらに好ましい。ここで、クエン酸カルシウムについてはクエン酸三カルシウム四水和物としての含有量である。
【0019】
[クエン酸]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、クエン酸を含有する。クエン酸には、クエン酸(無水)とクエン酸(結晶)があるが、いずれも使用でき、食用として使用可能なものを用いる。クエン酸(無水)を使用することが好ましい。
【0020】
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物中のクエン酸の含有量(無水基準)は、0.4〜2.5質量%であり、0.45〜2質量%が好ましく、0.5〜1.8質量%がより好ましく、0.55〜1.2質量%がさらに好ましく、0.6〜0.9質量%がもっとも好ましい。すなわち、クエン酸(無水)を用いる場合には、上記数値範囲内となる量を秤量して配合すればよい。一方、クエン酸(結晶)を用いる場合には、上記の各数値に{クエン酸(結晶)の分子量/クエン酸(無水)の分子量}を掛け算した値の数値範囲内となる量を秤量して配合することで、ゼリー剤組成物中のクエン酸の含有量が上記の数値範囲となる。クエン酸含量が上記の範囲にあると、速やかにゲル化する。また、クエン酸が2.5質量%よりも多くなると、得られたゼリーの酸味が強くなり異味を感じるようになる。
【0021】
ゼリー剤組成物中のクエン酸カルシウムとクエン酸との含有質量比(クエン酸カルシウム/クエン酸)は、2〜5であり、2.4〜4.8が好ましく、2.8〜4.7がより好ましく、3〜4.6がさらに好ましく、4〜4.5がもっとも好ましい。ここで、クエン酸カルシウムについては前述の通りクエン酸三カルシウム四水和物としての含有量であり、クエン酸については無水基準の含有量である。クエン酸カルシウムとクエン酸との含有質量比が上記の範囲にあると、経時的にゲルが硬くなりすぎず、安定した硬さのゲルが得られる。
【0022】
[賦形剤]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、賦形剤を含有する。賦形剤は、食用に使用されるものであれば特に限定されないが、グラニュー糖、デキストリン、砂糖、粉糖、及びぶどう糖から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、グラニュー糖及びデキストリンから選ばれる1種又は2種を用いることがより好ましい。クエン酸由来の酸味を抑制する観点では、砂糖、グラニュー糖、及び粉糖から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物中の賦形剤の含有量は、40〜90質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、75〜90質量%がさらに好ましい。賦形剤含量が上記の範囲にあると、溶解時に、ダマの発生を抑え、速やかに溶解することができる。
【0024】
[その他の成分]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、グルコノデルタラクトンを含有することができる。グルコノデルタラクトンは、食用として使用可能なものを用いる。ゼリー剤組成物中のグルコノデルタラクトンの含有量は、2〜20質量%が好ましく、4〜17質量%がより好ましく、5〜9質量%がさらに好ましい。
【0025】
また、本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、着色料、香料、甘味料等を含有することができる。クエン酸に由来する酸味をマスキングするために、高甘味度甘味料を含有することが好ましく、ゼリー剤組成物中の高甘味度甘味料の含有量は、0.5〜1質量%が好ましい。
【0026】
[ゲルの硬さ]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物を10℃の水に溶解して3%水溶液としたときの、溶解後10分後における10℃のゲルの硬さが1000〜3000N/m
2であることが好ましく、1000〜2500N/m
2であることがより好ましく、1100〜2200N/m
2であることがさらに好ましく、1200〜2000N/m
2であることがもっとも好ましい。10分後のゲルの硬さが上記の範囲にあると、ゼリーが硬すぎず、口腔内でゼリーを潰しやすく、飲み込みやすくなる。
【0027】
また、本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物を10℃の水に溶解して3%水溶液としたときの、溶解後30分後における10℃のゲルの硬さが、溶解後10分後における10℃のゲルの硬さの100〜200%(すなわち1〜2倍)であることが好ましく、100〜180%であることがより好ましく、100〜160%であることがさらに好ましい。30分後のゲルの硬さが上記の範囲にあると、10分後の硬さに対する経時変化が小さく、ゼリーが硬くなりすぎず、口腔内でゼリーを潰しやすく、飲み込みやすくなる。
【0028】
ゲルの硬さは、レオメーターを用いて、直径20mmの円柱状プランジャー、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mm、10℃の条件で測定したときの測定値である。
【0029】
なお、10℃の水に溶解したのは、一般的な使用例として、ゼリー状食品の調製前後で食品を約10℃の冷蔵庫で保管する実施形態を想定したものである。
【0030】
[用途]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、食品に溶解させることで、ゼリー状食品の調製に使用できる。特に咀嚼・嚥下困難者向けゼリー状食品の調製のために好適に使用できる。ゼリー剤組成物を添加する対象食品として、特に限定されるものではないが、pH4以上、かつカルシウム濃度0.015w/v%以下の液状食品が好ましく、水、茶飲料が特に好ましい。これらに直接添加して液体をゲル化させることができる。
【0031】
[形態]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は、その形態は特に限定されるものではないが、各粉体原料を混合したものを造粒した粉末状の形態又は顆粒状の形態であることが好ましい。
【0032】
[製造方法]
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物の製造方法は、それぞれの原料が均一に混合される方法であれば、特に限定されない。例えば、容器回転式混合機、撹拌式混合機、ドラム式混合機等の混合機を使用して混合することで製造できる。また、流動層造粒法、撹拌造粒法、転動式造粒法、コーティング造粒法等により造粒してもよい。
【0033】
〔本発明の実施の形態に係る食品〕
本発明の実施の形態に係る食品は、上記本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物を含有することを特徴とする。ゼリー剤組成物を添加する対象食品としては、前述の通り、pH4以上、かつカルシウム濃度0.015w/v%以下の液状食品が好ましく、水、茶飲料が特に好ましいが、これらに限られない。
【0034】
本発明の実施の形態に係るゼリー剤組成物は溶解時に対象食品の加熱を必要としないため、常温の食品や温めた食品はもちろんのこと、冷たい食品(例えば5〜15℃)であってもゼリー状食品の調製が可能である。
【0035】
本発明の実施の形態に係る食品中の上記ゼリー剤組成物の含有量は、対象食品によっても異なるが、例えば、水や茶飲料の場合、2〜4質量%であることが好ましく、2.5〜3.5質量%であることがより好ましい。
【0036】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
〔ゼリー剤組成物の製造〕
実施例及び比較例のゲル化剤組成物を流動層造粒法により表に記載の配合に従って、以下の手順で製造した。
【0038】
各原料を秤量後、すべての原料を流動層造粒コーティング装置(商品名:SFC−5、フロイント産業(株)製)に投入し、当該装置の底部から90℃に加温した温風を吹き込み、粉体原料を流動させて混合した。続いて、当該装置の上部のスプレーノズルよりバインダー液(水)を62mL/min、空気圧0.5MPaで粉体原料に噴霧して造粒し、乾燥することにより造粒物(ゼリー剤組成物)を得た。なお、配合原料はすべて市販品を使用した。アルギン酸ナトリウムは、1質量%水溶液としたときの20℃における粘度が352mPa・sであるものを使用した。クエン酸はクエン酸(無水)、クエン酸カルシウムはクエン酸三カルシウム四水和物、炭酸カルシウムは炭酸カルシウム(無水)、リン酸カルシウムは第三リン酸カルシウム、乳酸カルシウムは乳酸カルシウム五水和物、塩化マグネシウムは塩化マグネシウム六水和物、クエン酸ナトリウムはクエン酸三ナトリウム二水和物、塩化カルシウムは塩化カルシウム(無水)、リンゴ酸カルシウムはリンゴ酸カルシウム一水和物を使用した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
〔硬さの測定〕
200mLガラスビーカーに、10℃の水(商品名:南アルプスの天然水、サントリー(株)製)97gと3cmの撹拌子を入れ、スターラー(700rpm)で撹拌しながら、製造したゲル化剤組成物3gを静かに投入し、30秒間撹拌して完全に溶解させた。
ゲル化剤組成物の溶解液を、直径40mm、高さ15mmの容器に、15mmの高さまで充填し、10℃で10分間静置した後、レオメーター(RE−33005 RHEONER、(株)山電製)を用いて測定した。直径20mmの樹脂製の円柱状プランジャーを用いて、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmの条件により測定した。
ゲル化剤組成物の溶解後、10℃で30分間静置後のゲルの硬さも上記と同様に測定した。各測定結果を表1〜4に示す。
【0044】
〔官能試験〕
上記の30分後の硬さの測定後、風味を確認した。風味は、3名の専門パネラーの総意により下記の3段階で評価した。評価結果を表1〜4に示す。
◎:酸味を感じず、その他の異味も感じない。
○:わずかに酸味(問題の無いレベル)を感じるがその他の異味は感じない。
×:酸味を強く感じる。
【0045】
実施例1〜6ではいずれも、ゲル化剤組成物を10℃の水に溶解させた後、速やかに水をゲル化させることができ、かつ、表1に示される通り、溶解30分後においても溶解10分後のゲルの硬さの100〜200%の範囲内であり、経時的にゲルを硬くさせすぎることは無かった。また、風味についても、実施例1〜5では酸味等の異味を感じることなく良好であり、実施例6ではわずかに酸味を感じたが問題の無いレベルであった。
【0046】
一方、比較例1,2は、アルギン酸ナトリウムの含有量が規定の範囲外であるため、10分後でもゲル化せず、速やかなゲル化が出来ないものであった。具体的には、比較例1は、アルギン酸ナトリウムが少ないためゲル化せず、他方、比較例2は、アルギン酸ナトリウムが多いため、溶解時にダマが発生し、均一な溶液にならず、ゲル化しなかった。
また、比較例3,4は、クエン酸カルシウムの含有量が規定の範囲外であるため、30分後でもゲル化せず、ゲル化が出来ないものであった。具体的には、比較例3は、クエン酸カルシウムが少ないためゲル化せず、他方、比較例4は、クエン酸カルシウムが多いため、その難溶性の性質ゆえ、均一な溶液にならず、ゲル化しなかった。
また、クエン酸カルシウムに替えてその他のカルシウム塩(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リンゴ酸カルシウム)又は塩化マグネシウムを用いた比較例5〜8、17、20は、10分後でも十分なゲルの硬さが得られない又はゲル化せず、速やかなゲル化が出来ないものであった。比較例7,8、17、20は、30分後でもゲル化せず、ゲル化が出来ないものであった。
比較例9は、クエン酸含量が少なく、替わりにクエン酸ナトリウムを配合させたが、クエン酸カルシウム/クエン酸の含有質量比が規定範囲を超えるものであったため、10分後でもゲル化せず、速やかなゲル化が出来ないものであった。
比較例10は、クエン酸含量が少なく、クエン酸カルシウム/クエン酸の含有質量比が規定範囲を超えるものであったため、10分後でも十分なゲルの硬さが得られず、速やかなゲル化が出来ないものであった。
比較例11は、クエン酸含量が多く、クエン酸カルシウム/クエン酸の含有質量比が規定範囲を下回るものであったため、10分後におけるゲルの硬さが3000N/m
2を超えており30分後におけるゲルの硬さが硬くなりすぎるものであった。また、酸味を強く感じるものであり、風味が好ましくないものであった。
比較例12〜13は、クエン酸を用いなかったため、10分後でもゲル化しない又は十分なゲルの硬さが得られず、速やかなゲル化が出来ないものであった。また、同様にクエン酸を用いなかった比較例14は、10分後のゲル強度に対する30分後のゲル強度が404%であり、経時的にゲルが硬くなりすぎるものであった。また、同様にクエン酸を用いなかった比較例18,19は、10分後でも30分後でもゲル化せず、ゲル化が出来ないものであった。
比較例15は、クエン酸カルシウム/クエン酸の含有質量比が規定範囲を下回るものであったため、10分後におけるゲルの硬さが3000N/m
2を超えており30分後におけるゲルの硬さが硬くなりすぎるものであった。
比較例16は、クエン酸カルシウム/クエン酸の含有質量比が規定範囲を超えるものであったため、10分後のゲル強度に対する30分後のゲル強度が318%であり、経時的にゲルが硬くなりすぎるものであった。
【0047】
〔茶飲料での評価〕
10℃の市販の茶飲料(商品名:おーいお茶 ほうじ茶 伊藤園(株)製)97gをスパーテルで撹拌しながら、実施例1の造粒物(ゼリー剤組成物)を3g添加したところ、ただちに液中全体に分散し溶解した。また、上記「硬さの測定」と同様の方法で、10℃で10分間静置後のゲルの硬さをレオメーターで測定したところ、1654N/m
2であった。また、10℃で30分間静置後の硬さは、1842N/m
2(10分後のゲル強度の111%)であった。30分後の硬さの測定後、上記茶飲料のゼリーを食したところ、酸味を感じることなく風味は良好で、適度な固さを有しており、舌でつぶしやすく飲み込みやすい物性であった。