特許第6181941号(P6181941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6181941ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6181941
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 51/00 20060101AFI20170807BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20170807BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C01G51/00 B
   H01M4/86 T
   H01M4/88 T
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-37557(P2013-37557)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-162706(P2014-162706A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 心
(72)【発明者】
【氏名】本田 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】永富 晶
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187311(JP,A)
【文献】 特表平02−502180(JP,A)
【文献】 特開2000−302445(JP,A)
【文献】 特開2005−216774(JP,A)
【文献】 特開2012−138256(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0247511(US,A1)
【文献】 特開2006−062942(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094516(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G25/00−47/00,49/10−99/00
H01M4/86−4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式La1−xSrCo1−yFe3−z(0<x<1、0<y<1、0<z<1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を湿式混合して得られた混合溶液を中和することによってペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させ、この前駆体のウエットケーキを得た後、このウエットケーキをペレット状に成形し、このウエットケーキのペレット状の成形体を200〜400℃で乾燥させることによって、非晶質のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を得ることを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法。
【請求項2】
前記出発原料が、ランタン(La)とストロンチウム(Sr)とコバルト(Co)と鉄(Fe)の各々の硝酸塩であることを特徴とする、請求項に記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法。
【請求項3】
前記非晶質のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末が、粉末X線回折法による回折線上に不純物であるSrCOのピークを含まないことを特徴とする、請求項1または2に記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法。
【請求項4】
前記成形体の乾燥が、前記成形体を1〜3時間乾燥させることによって行われることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法。
【請求項5】
前記ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末の水分値が5%以下であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法に関し、特に、固体酸化物型燃料電池の空気極の材料に適したペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC(Solid Oxide Fuel Cell))は、一般に、酸化物からなる空気極と固体電解質と燃料極とからなる単セルをインターコネクタによって接続したスタック構造を採っている。このような固体酸化物型燃料電池の動作温度は、通常1000℃程度である。近年、固体酸化物型燃料電池の動作温度が低温化されているが、実用化されている固体酸化物型燃料電池の最低温度は600℃以上と依然として高温である。
【0003】
このようなセル構造と高い動作温度のため、固体酸化物型燃料電池の空気極の材料は、基本的に、酸素イオン導電性が高く、電子伝導性が高く、熱膨張が電解質と同等あるいは近似し、化学的な安定性が高く、他の構成材料との適合性が良好であり、焼結体が多孔質であり、一定の強度を有することなどの特性が要求される。
【0004】
このような固体酸化物型燃料電池の空気極の材料として、組成式(L1−xAE1−y(Fe1−z)O3+δで表され、Lはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)および希土類元素からなる群より選ばれた一種または二種以上の元素であり、AEはカルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)の群からなる一種または二種の元素であり、Mはマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)からなる群より選ばれた一種または二種以上の元素であり、0<x<0.5、0<y≦0.04、0≦z<1であるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を主成分とするセラミックス粉体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、固体電解質型燃料電池の空気極の材料として、一般式ABOで表され、AがLaおよび希土類元素の群から選ばれる1つ以上の元素と、Sr、CaおよびBaの群から選ばれる1つ以上の元素からなり、BがMn、Co、Fe、NiおよびCuの群から選ばれる1つ以上の元素からなるペロブスカイト複合酸化物粉体であって、平均粒子径が1μm以下であり、且つ粒度分布の所定範囲内に制限された固体電解質型燃料電池の空気極原料粉体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−35447号公報(段落番号0007)
【特許文献2】特開2006−32132号公報(段落番号0009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を主成分とするセラミックス粉体は、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物の組成式の組成比で出発原料として構成元素の酸化物、炭酸塩、硝酸塩などをエタノールなどの有機溶媒を用いて湿式混合などにより混合し、乾燥して溶媒を揮発させた後、空気中において800〜1200℃で5〜20時間仮焼して得られるが、焼結後の複合酸化物の組成の均一性が不十分で、酸素イオン導電性が高い空気極材料として不十分な場合があった。特に、特許文献1の実施例のように、原料として酸化ランタン、炭酸ストロンチウム、酸化コバルトおよび酸化鉄を乳鉢で混合し、加圧成形した後、仮焼する方法(乾式混合による固相法)では、原料を均一に混合するのが難しく、焼結後の複合酸化物の組成の均一性が不十分で、酸素イオン導電性が高い空気極材料として不十分であった。
【0008】
また、特許文献2の固体電解質型燃料電池の空気極原料粉体は、La、Sr、CoおよびFeの硝酸塩を出発原料として所定の割合で水に溶解させ、この溶液に中和剤としてNHOHを添加して各元素を含む塩を共沈させ、得られた共沈塩を水洗し、乾燥し、仮焼して得られるが、この湿式混合による共沈法でも中和や乾燥の条件によって、焼結後の複合酸化物の組成の均一性が不十分で、酸素イオン導電性が高い空気極材料として不十分であった。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、均一な組成のペロブスカイト型複合酸化物の製造に適したペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を湿式混合した後、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させ、この前駆体を乾燥させて粉末X線回折法による回折線上に不純物のピークを含まない非晶質のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を得ることにより、均一な組成のペロブスカイト型複合酸化物の製造に適したペロブスカイト型複合酸化物を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法は、ペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を湿式混合した後、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させ、この前駆体を乾燥させて粉末X線回折法による回折線上に不純物のピークを含まない非晶質のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を得ることを特徴とする。
【0012】
このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法において、ペロブスカイト型複合酸化物が、組成式La1−xSrCo1−yFe3−z(0<x<1、0<y<1、0<z<1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であるのが好ましい。この場合、出発原料が、ランタン(La)とストロンチウム(Sr)とコバルト(Co)と鉄(Fe)の各々の硝酸塩であるのが好ましい。この場合、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の析出が、ペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を湿式混合して得られた混合溶液を中和することによって行われるのが好ましい。
【0013】
また、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させた後、乾燥させる前に、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキを得て、このウエットケーキをペレット状に成形するのが好ましい。この場合、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥が、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキのペレット状の成形体を200〜400℃で1〜3時間乾燥させることによって行われるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末の水分値が5%以下であるのが好ましい。
【0014】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末は、粉末X線回折法による回折線上に不純物のピークを含まない非晶質のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末であることを特徴とする。このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末において、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末の水分値が5%以下であるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物が、組成式La1−xSrCo1−yFe3−z(0<x<1、0<y<1、0<z<1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸素放出速度が高く、固体酸化物型燃料電池の空気極の材料に適した均一な組成で酸素放出速度が高いペロブスカイト型複合酸化物の製造に適したペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1〜3および比較例1〜6で得られたペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末についての粉末X線回折法(XRD)による測定結果を示す図である。
図2】実施例3および比較例3で得られた焼成後のペロブスカイト型複合酸化物についてのXRDによる測定結果を示す図である。
図3図2の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法の実施の形態では、ペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を湿式混合した後、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させ、この前駆体を乾燥させて粉末X線回折法による回折線上に不純物のピークを含まない非晶質のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を得る。
【0018】
このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の製造方法の実施の形態において、ペロブスカイト型複合酸化物は、組成式La1−xSrCo1−yFe3−z(0<x<1、0<y<1、0<z<1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物(LSCF)であるのが好ましい。この場合、出発原料として、ランタン(La)とストロンチウム(Sr)とコバルト(Co)と鉄(Fe)の各々の硝酸塩、炭酸塩または酸化物を使用することができるが、ランタン(La)とストロンチウム(Sr)とコバルト(Co)と鉄(Fe)の各々の硝酸塩を使用するのが好ましい。この場合、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の析出が、ペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を湿式混合して得られた混合溶液に炭酸アンモニウムなどのアルカリを添加して、混合溶液を中和することによって行われるのが好ましい。
【0019】
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させた後、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキを得て、このウエットケーキを素早く乾燥させるのが好ましく、ウエットケーキを乾燥させ易くするために、例えば、ウエットケーキを円柱形または角柱形のペレット状(棒状)に成形するのが好ましく、直径2〜10mmのペレット状に形成するのが好ましい。この場合、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥が、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキのペレット状の成形体を200〜400℃で1〜3時間乾燥させることによって行われるのが好ましい。
【0020】
この乾燥後のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末の水分値は5%以下であるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末は、600〜1300℃で焼成するのが好ましく、600〜1000℃で焼成するのがさらに好ましい。
【0021】
なお、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させた後に前駆体のウエットケーキを乾燥させるまでの経過時間が長く、乾燥が不十分であると、前駆体に含まれるストロンチウムが水分中または空気中の炭酸ガスと反応して炭酸ストロンチウムが結晶化して析出し、不均一な状態の前駆体になり易い。この不均一な状態の前駆体を焼成してペロブスカイト型複合酸化物を得ても、ペロブスカイト型複合酸化物の組成の均一性が不十分であるため、酸素放出速度が低く、酸素イオン導電性が低くなる。
【0022】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末の実施の形態は、粉末X線回折法による回折線上に不純物のピークを含まない非晶質のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末である。このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末において、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末の水分値が5%以下であるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物が、組成式La1−xSrCo1−yFe3−z(0<x<1、0<y<1、0<z<1)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であるのが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0024】
[実施例1〜3]
硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)4.47kgと、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)1.61kgと、硝酸鉄九水和物(Fe(NO・9HO)5.58kgと、硝酸コバルト六水和物(Co(NO・6HO)1.12kgをそれぞれイオン交換水102.2kgに溶解させ、これらの溶液の濃度を溶解種の合計で約0.20mol/Lとして混合し、硝酸塩の混合溶液Aを作成した。
【0025】
また、イオン交換水36.6kgと炭酸アンモニウム8.33kgを溶解槽に入れ、攪拌しながら水温を15℃になるよう調整した。この炭酸アンモニウム溶液を、硝酸塩の混合溶液Aに徐々に加えて中和反応を行い、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させた後、この前駆体を30分間熟成させて反応を完了させた。
【0026】
このようにして得られた前駆体を濾過した後に水洗し、得られたウエットケーキを直径5mmの細長い円柱形のペレット状に成形した。この成形後直ぐにペレット状の成形体に空気を通風しながら250℃で2時間加熱して乾燥させ、黒色の乾燥粉末を得た。このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末について、粉末X線回折法(XRD)による測定を行ったところ、図1の下側の回折線に示すように、非晶質(アモルファス)の結晶構造であった。また、前駆体の乾燥粉末中の水分値をJIS K0068(2001年)のカールフィッシャー滴定法に準拠して測定したところ、4%であった。
【0027】
次に、このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を大気中においてそれぞれ600℃(実施例1)、800℃(実施例2)、1000℃(実施例3)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、結晶性のペロブスカイト型複合酸化物であるLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8粉末を得た。なお、実施例3で得られた焼成後のペロブスカイト型複合酸化物について、XRDによる測定を行ったところ、図2および図3の下側の回折線に示すように、LSCFの単一相であった。
【0028】
また、実施例3で得られたペロブスカイト型複合酸化物20mgを採取して、アルミナ製の測定セル中に装填した後、このセルを示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA測定装置)(セイコーインスツルメンツ株式会社製)にセットして、Nを500mL/分の流量で流しながらN雰囲気中において600℃まで昇温した。温度が安定した後、Nを流すのを止めて600℃に保持したまま、1体積%のHと9体積%のHeと90体積%のNの混合ガスを500mL/分の流量で流しながら複合酸化物の重量減少がなくなるまで還元処理を行った。この還元処理による複合酸化物の重量減少を測定して、重量減少曲線の傾きから酸素放出速度を算出したところ、0.20μmol/g・分であった。
【0029】
また、実施例1〜3で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、BET測定装置(カンタクロム社製のMONOSORB)を用いてBET比表面積を測定したところ、それぞれ31.1m/g(実施例1)、16.1m/g(実施例2)、3.6m/g(実施例3)であった。
【0030】
[比較例1〜3]
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキを厚さ5mm、幅2〜3cmのブロック状に形成し、150℃で2時間加熱して乾燥した以外は、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を得た。このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末について、XRDによる測定を行ったところ、アモルファスの回折線(図1の上側の回折線)上に僅かに炭酸Sr(SrCO)のピークが確認された。また、前駆体の乾燥粉末中の水分値を実施例1と同様の方法により測定したところ、5%であった。
【0031】
次に、このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を大気中においてそれぞれ600℃(比較例1)、800℃(比較例2)、1000℃(比較例3)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、結晶性のペロブスカイト型複合酸化物であるLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8粉末を得た。なお、比較例3で得られた焼成後のペロブスカイト型複合酸化物について、XRDによる測定を行ったところ、図2および図3の上側の回折線に示すように、LSCFのピークと共に僅かにSrFeOのピークが確認された。
【0032】
また、比較例3で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により酸素放出速度を算出したところ、0.03μmol/g・分であった。
【0033】
また、比較例1〜3で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法によりBET比表面積を測定したところ、それぞれ39.7m/g(比較例1)、16.2m/g(比較例2)、3.6m/g(比較例3)であった。
【0034】
[比較例4〜6]
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキを80℃で24時間加熱して乾燥した以外は、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の薄赤色の乾燥粉末を得た。このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末について、XRDによる測定を行ったところ、アモルファスの回折線(図1の上側の回折線)上に僅かに炭酸Sr(SrCO)のピークが確認された。また、前駆体の乾燥粉末中の水分値を実施例1と同様の方法により測定したところ、4%であった。
【0035】
次に、このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を大気中においてそれぞれ600℃(比較例4)、800℃(比較例5)、1000℃(比較例6)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、結晶性のペロブスカイト型複合酸化物であるLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8粉末を得た。
【0036】
また、比較例5〜6で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法によりBET比表面積を測定したところ、それぞれ17.1m/g(比較例5)、3.9m/g(比較例6)であった。
【0037】
[比較例7〜8]
酸化ランタン(La)2.13kgと、四酸化三コバルト(Co)0.36kgと、三酸化二鉄(Fe)1.41gと、炭酸ストロンチウム(SrCO)1.44gとを原料としてサンプルミルで2分間粉砕して混合し、混合粉末を得た。この混合粉末についてXRD測定したところ、各原料の結晶構造が重なった回折線が得られた。
【0038】
次に、この混合粉末を大気中においてそれぞれ800℃(比較例7)、1000℃(比較例8)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、複合酸化物を得た。この複合酸化物について、XRDによる測定を行ったところ、不純物ピークと共に結晶性のペロブスカイト型複合酸化物La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8のピークが確認された。
【0039】
また、比較例8で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により酸素放出速度を算出したところ、0.02μmol/g・分であった。
【0040】
また、比較例7〜8で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法によりBET比表面積を測定したところ、それぞれ4.5m/g(比較例7)、1.8m/g(比較例8)であった。
【0041】
これらの実施例および比較例のペロブスカイト型複合酸化物の製造条件および特性を表1および表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を1000℃より高い温度で焼成すると、ペロブスカイト型複合酸化物のXRD測定において単一相になる。表1および表2からわかるように、比較例1〜8のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を600〜1000℃の低い温度で焼成すると、複数相になるか、ほぼ単一相になっても、(図2および図3の上側の回折線に示すようにペロブスカイト型複合酸化物La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8の主相ピークに対して2%以上の強度比のSrFeO相のピークが不純物相として確認され、)僅かにSrFeO3を含んでいるが、実施例1〜3のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のように、粉末X線回折法による回折線上に不純物のピークを含まない非晶質(アモルファス)の結晶構造の前駆体を600〜1000℃の低い温度で焼成すると(ペロブスカイト型複合酸化物La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8の主相ピークに対する不純物相のピークの強度比が2%未満の)単一相になる。
【0045】
表2からわかるように、実施例3のペロブスカイト型複合酸化物は、比較例3および8のペロブスカイト型複合酸化物に比べて、酸素放出速度が極めて速く(Oのモビリティーが高く)、固体酸化物型燃料電池の空気極に使用する酸化物イオン伝導物質として有効である。
【0046】
また、固体酸素の放出は粒子表面で進行するため、粒子内部(バルク)の酸素は、結晶構造の欠陥を通って表面まで移動する必要があるが、実施例1〜3のLa1−xSrCo1−yFe3−zの(LSCF)系のペロブスカイト型複合酸化物は、完全酸素放出時間が短いため、バルク内の酸化物イオンの移動がスムーズに進行できる材料であると考えられる。
【0047】
また、バルク内の酸化物イオンの移動は、ペロブスカイト構造の組成の均一性に影響を受けると考えられるため、実施例1〜3のLSCFは、組成の均一性が高いと考えられる。
【0048】
さらに、実施例3のペロブスカイト型複合酸化物は、比較例3および8のペロブスカイト型複合酸化物と比較すると、同程度の比表面積でも酸素放出速度が非常に高くなっているので、より均一な組成によって酸素移動度が高くなると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末は、均一な組成で酸素放出速度が極めて速く、固体酸化物型燃料電池の空気極の材料として使用するペロブスカイト型複合酸化物の製造に使用することができる。
図1
図2
図3