【実施例】
【0023】
以下、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の前駆体粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0024】
[実施例1〜3]
硝酸ランタン六水和物(La(NO
3)
3・6H
2O)4.47kgと、硝酸ストロンチウム(Sr(NO
3)
2)1.61kgと、硝酸鉄九水和物(Fe(NO
3)
3・9H
2O)5.58kgと、硝酸コバルト六水和物(Co(NO
3)
2・6H
2O)1.12kgをそれぞれイオン交換水102.2kgに溶解させ、これらの溶液の濃度を溶解種の合計で約0.20mol/Lとして混合し、硝酸塩の混合溶液Aを作成した。
【0025】
また、イオン交換水36.6kgと炭酸アンモニウム8.33kgを溶解槽に入れ、攪拌しながら水温を15℃になるよう調整した。この炭酸アンモニウム溶液を、硝酸塩の混合溶液Aに徐々に加えて中和反応を行い、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させた後、この前駆体を30分間熟成させて反応を完了させた。
【0026】
このようにして得られた前駆体を濾過した後に水洗し、得られたウエットケーキを直径5mmの細長い円柱形のペレット状に成形した。この成形後直ぐにペレット状の成形体に空気を通風しながら250℃で2時間加熱して乾燥させ、黒色の乾燥粉末を得た。このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末について、粉末X線回折法(XRD)による測定を行ったところ、
図1の下側の回折線に示すように、非晶質(アモルファス)の結晶構造であった。また、前駆体の乾燥粉末中の水分値をJIS K0068(2001年)のカールフィッシャー滴定法に準拠して測定したところ、4%であった。
【0027】
次に、このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を大気中においてそれぞれ600℃(実施例1)、800℃(実施例2)、1000℃(実施例3)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、結晶性のペロブスカイト型複合酸化物であるLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3粉末を得た。なお、実施例3で得られた焼成後のペロブスカイト型複合酸化物について、XRDによる測定を行ったところ、
図2および
図3の下側の回折線に示すように、LSCFの単一相であった。
【0028】
また、実施例3で得られたペロブスカイト型複合酸化物20mgを採取して、アルミナ製の測定セル中に装填した後、このセルを示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA測定装置)(セイコーインスツルメンツ株式会社製)にセットして、N
2を500mL/分の流量で流しながらN
2雰囲気中において600℃まで昇温した。温度が安定した後、N
2を流すのを止めて600℃に保持したまま、1体積%のH
2と9体積%のHeと90体積%のN
2の混合ガスを500mL/分の流量で流しながら複合酸化物の重量減少がなくなるまで還元処理を行った。この還元処理による複合酸化物の重量減少を測定して、重量減少曲線の傾きから酸素放出速度を算出したところ、0.20μmol/g・分であった。
【0029】
また、実施例1〜3で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、BET測定装置(カンタクロム社製のMONOSORB)を用いてBET比表面積を測定したところ、それぞれ31.1m
2/g(実施例1)、16.1m
2/g(実施例2)、3.6m
2/g(実施例3)であった。
【0030】
[比較例1〜3]
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキを厚さ5mm、幅2〜3cmのブロック状に形成し、150℃で2時間加熱して乾燥した以外は、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を得た。このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末について、XRDによる測定を行ったところ、アモルファスの回折線(
図1の上側の回折線)上に僅かに炭酸Sr(SrCO
3)のピークが確認された。また、前駆体の乾燥粉末中の水分値を実施例1と同様の方法により測定したところ、5%であった。
【0031】
次に、このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を大気中においてそれぞれ600℃(比較例1)、800℃(比較例2)、1000℃(比較例3)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、結晶性のペロブスカイト型複合酸化物であるLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3粉末を得た。なお、比較例3で得られた焼成後のペロブスカイト型複合酸化物について、XRDによる測定を行ったところ、
図2および
図3の上側の回折線に示すように、LSCFのピークと共に僅かにSrFeO
3のピークが確認された。
【0032】
また、比較例3で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により酸素放出速度を算出したところ、0.03μmol/g・分であった。
【0033】
また、比較例1〜3で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法によりBET比表面積を測定したところ、それぞれ39.7m
2/g(比較例1)、16.2m
2/g(比較例2)、3.6m
2/g(比較例3)であった。
【0034】
[比較例4〜6]
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のウエットケーキを80℃で24時間加熱して乾燥した以外は、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の薄赤色の乾燥粉末を得た。このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末について、XRDによる測定を行ったところ、アモルファスの回折線(
図1の上側の回折線)上に僅かに炭酸Sr(SrCO
3)のピークが確認された。また、前駆体の乾燥粉末中の水分値を実施例1と同様の方法により測定したところ、4%であった。
【0035】
次に、このペロブスカイト型複合酸化物の前駆体の乾燥粉末を大気中においてそれぞれ600℃(比較例4)、800℃(比較例5)、1000℃(比較例6)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、結晶性のペロブスカイト型複合酸化物であるLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3粉末を得た。
【0036】
また、比較例5〜6で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法によりBET比表面積を測定したところ、それぞれ17.1m
2/g(比較例5)、3.9m
2/g(比較例6)であった。
【0037】
[比較例7〜8]
酸化ランタン(La
2O
3)2.13kgと、四酸化三コバルト(Co
3O
4)0.36kgと、三酸化二鉄(Fe
2O
3)1.41gと、炭酸ストロンチウム(SrCO
3)1.44gとを原料としてサンプルミルで2分間粉砕して混合し、混合粉末を得た。この混合粉末についてXRD測定したところ、各原料の結晶構造が重なった回折線が得られた。
【0038】
次に、この混合粉末を大気中においてそれぞれ800℃(比較例7)、1000℃(比較例8)で2時間焼成した後、乾式粉砕処理を行って、複合酸化物を得た。この複合酸化物について、XRDによる測定を行ったところ、不純物ピークと共に結晶性のペロブスカイト型複合酸化物La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3のピークが確認された。
【0039】
また、比較例8で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により酸素放出速度を算出したところ、0.02μmol/g・分であった。
【0040】
また、比較例7〜8で得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法によりBET比表面積を測定したところ、それぞれ4.5m
2/g(比較例7)、1.8m
2/g(比較例8)であった。
【0041】
これらの実施例および比較例のペロブスカイト型複合酸化物の製造条件および特性を表1および表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
ペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を1000℃より高い温度で焼成すると、ペロブスカイト型複合酸化物のXRD測定において単一相になる。表1および表2からわかるように、比較例1〜8のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を600〜1000℃の低い温度で焼成すると、複数相になるか、ほぼ単一相になっても、(
図2および
図3の上側の回折線に示すようにペロブスカイト型複合酸化物La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3の主相ピークに対して2%以上の強度比のSrFeO
3相のピークが不純物相として確認され、)僅かにSrFeO3を含んでいるが、実施例1〜3のペロブスカイト型複合酸化物の前駆体のように、粉末X線回折法による回折線上に不純物のピークを含まない非晶質(アモルファス)の結晶構造の前駆体を600〜1000℃の低い温度で焼成すると(ペロブスカイト型複合酸化物La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3の主相ピークに対する不純物相のピークの強度比が2%未満の)単一相になる。
【0045】
表2からわかるように、実施例3のペロブスカイト型複合酸化物は、比較例3および8のペロブスカイト型複合酸化物に比べて、酸素放出速度が極めて速く(O
2のモビリティーが高く)、固体酸化物型燃料電池の空気極に使用する酸化物イオン伝導物質として有効である。
【0046】
また、固体酸素の放出は粒子表面で進行するため、粒子内部(バルク)の酸素は、結晶構造の欠陥を通って表面まで移動する必要があるが、実施例1〜3のLa
1−xSr
xCo
1−yFe
yO
3−zの(LSCF)系のペロブスカイト型複合酸化物は、完全酸素放出時間が短いため、バルク内の酸化物イオンの移動がスムーズに進行できる材料であると考えられる。
【0047】
また、バルク内の酸化物イオンの移動は、ペロブスカイト構造の組成の均一性に影響を受けると考えられるため、実施例1〜3のLSCFは、組成の均一性が高いと考えられる。
【0048】
さらに、実施例3のペロブスカイト型複合酸化物は、比較例3および8のペロブスカイト型複合酸化物と比較すると、同程度の比表面積でも酸素放出速度が非常に高くなっているので、より均一な組成によって酸素移動度が高くなると考えられる。