(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.第1実施例:
図1および
図2は、本発明の検査装置の一実施例としての半導体検査装置(以下、単に検査装置とも呼ぶ)5の概略構成を示す。
図1は、検査装置5の概略立面図(
図2のA−A矢視)であり、
図2は、検査装置5の概略平面図(
図1のB−B矢視)である。検査装置5は、検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥、検査対象の表面上の異物の存在等を検査する装置である。検査対象としては、半導体ウエハ、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(およびテンプレート)、光学素子用基板、光回路用基板等を例示できる。異物としては、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等を例示できる。かかる異物は、例えば、絶縁物、導電物、半導体材料、または、これらの複合体などからなる。以下では、検査装置5によって半導体ウエハ(以下、単にウエハWとも呼ぶ)を検査するものとして説明する。ウエハの検査は、半導体製造工程においてウエハの処理プロセスが行われた後、または、処理プロセスの途中で行われる。例えば、検査は、成膜工程、CMPまたはイオン注入を受けたウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、配線パターンが未だに形成されていないウエハなどを対象として行われる。
【0022】
検査装置5は、
図1に示すように、カセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、主ハウジング30と、ローダハウジング40と、ステージ装置50と、電子光学装置70と、画像処理装置80と、制御装置84とを備えている。
図1および
図2に示す
ように、カセットホルダ10は、カセットCを複数個(
図2では2個)保持するようになっている。カセットCには、検査対象としての複数枚のウエハWが上下方向に平行に並べられた状態で収納される。本実施例では、カセットホルダ10は、昇降テーブル上の
図2に鎖線で示された位置にカセットCを自動的にセットできるように構成されている。カセットホルダ10にセットされたカセットCは、
図2に実線で示された位置、すなわち、後述するミニエンバイロメント装置20内の第1搬送ユニット61の回動軸線O−O(
図1参照)を向いた位置まで自動的に回転される。
【0023】
ミニエンバイロメント装置20は、
図1および
図2に示すように、ハウジング22と、気体循環装置23と、排出装置24と、プリアライナ25とを備えている。ハウジング22の内部には、雰囲気制御されるミニエンバイロメント空間21が形成されている。また、ミニエンバイロメント空間21内には、第1搬送ユニット61が設置されている。気体循環装置23は、清浄な気体(ここでは空気)をミニエンバイロメント空間21内で循環させて雰囲気制御を行う。排出装置24は、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して外部に排出する。これによって、第1搬送ユニット61によって塵埃が生じたとしても、塵埃を含んだ気体が系外に排出される。プリアライナ25は、ウエハを粗位置決めする。プリアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分)や、ウエハの外周縁に形成された1つ又はそれ以上のV型の切欠き、すなわち、ノッチを光学的または機械的に検出して、軸線O−Oの周りの回転方向におけるウエハの位置を予め位置決めできるように構成されている。
【0024】
第1搬送ユニット61は、軸線O−Oの周りを回転可能な多節のアームを有している。このアームは、半径方向に伸縮可能に構成されている。アームの先端には、ウエハWを把持する把持装置、例えば、機械式チャック、真空式チャックまたは静電チャックが設けられている。かかるアームは、上下方向に移動可能になっている。第1搬送ユニット61は、カセットホルダ10内に保持された複数のウエハのうちの所要のウエハWを把持し、後述するローダハウジング40内のウエハラック41に受け渡す。
【0025】
ローダハウジング40の内部には、
図1および
図2に示すように、ウエハラック41と第2搬送ユニット62とが設置されている。ミニエンバイロメント装置20のハウジング22と、ローダハウジング40とは、シャッタ装置27によって区切られており、シャッタ装置27は、ウエハWの受け渡し時のみに開かれる。ウエハラック41は、複数(
図1では2枚)のウエハWを上下に隔てて水平の状態で支持する。第2搬送ユニット62は、上述の第1搬送ユニット61と基本的に同じ構成を有している。第2搬送ユニット62は、ウエハラック41と、後述するステージ装置50のホルダ55との間で、ウエハWの搬送を行う。かかるローダハウジング40の内部は、高真空状態(真空度としては10
−5〜10
−6Pa)に雰囲気制御されるとともに、不活性ガス(例えば、乾燥純窒素)が注入される。
【0026】
主ハウジング30内には、
図1および
図2に示すように、ウエハWを移動させる移動部の一例としてのステージ装置50が設けられている。ステージ装置50は、底壁上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。Yテーブル52は、主ハウジング30の外部に設けられたアクチュエータであるサーボモータ56によって、Y方向に移動される。Xテーブル53は、主ハウジング30の外部に設けられたアクチュエータであるサーボモータ57によって、X方向に移動される。ホルダ55は、機械式チャックまたは静電式チャックで解放可能にウエハWをその載置面上に保持する。ホルダ55に保持されたウエハWのY方向の位置は、位置検出部(位置センサ)58によって検
知される。位置検出部58は、干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置であり、ホルダ55の載置面の基準位置を微細径レーザによって検知する。
図1および
図2において、位置検出部58の位置は、概略的に示している。位置検出部58は、例えば、Yテーブル52(またはホルダ55)に固定されたミラープレートに向けてレーザを照射し、レーザ干渉計によって、レーザの入射波と、ミラープレートからの反射波との位相差に基づいて、ウエハW、厳密には、Yテーブル52(またはホルダ55)の座標を検出する。レーザ干渉計は、主ハウジング30の内部に設けてもよいし、外部に設けてもよい。また、レーザ干渉計は、光ケーブルを介して、レーザの光路に設けられた光ピックアップに接続され、主ハウジング30から離れた位置に設けられていてもよい。
【0027】
電子光学装置70は、荷電粒子または電磁波のいずれか1つをビームとして、Y方向(
図2参照)に移動中のウエハWに照射し、それによって得られる二次荷電粒子の量を検出する。ウエハWの移動は、ステージ装置50によって行われる。電子光学装置70の詳細については、後述する。
【0028】
図1に示す画像処理装置80は、画像データ生成部81として機能し、電子光学装置70によって検出された二次荷電粒子の量に基づいて、画像データを生成する。生成される画像データは、輝度値を階調値として有する。画像処理装置80は、本実施例では、メモリとCPUとを備え、予め記憶されたプログラムを実行することによって、画像データ生成機能を実現する。なお、画像処理装置80の各機能部の少なくとも一部は、専用のハードウェア回路で構成されていてもよい。
【0029】
画像処理装置80によって生成された画像データは、任意の方法によって、ウエハWの表面に形成されたパターンの欠陥や異物の有無等の検査に用いられる。この検査は、情報処理装置などを用いて自動的に行われてもよい。例えば、情報処理装置は、輝度値が閾値以上に高い領域を検出してもよいし、生成された画像データと、予め用意された基準画像データとのパターンマッチングを行ってもよい。あるいは、検査は、画像データが表す画像、または、画像データを構成する各画素の階調値に基づいて、検査員によって行われてもよい。
【0030】
図1に示す制御装置84は、検査装置5の動作全般を制御する。例えば、制御装置84は、ステージ装置50に移動指令を送出して、ウエハWを保持するホルダ55を所定の移動速度でY方向に移動させる。制御装置84は、メモリとCPUとを備え、予め記憶されたプログラムを実行することによって、所要の機能を実現してもよい。あるいは、制御装置84は、ソフトウェアでの機能の実現に加えて、または、代えて、所要の機能の少なくとも一部を専用のハードウェア回路で実現してもよい。
【0031】
図3は、電子光学装置70の概略構成を示す。図示するように、電子光学装置70は、一次光学系72と、二次光学系73と、TDIセンサ75と、偏向電極91とを備えている。一次光学系72は、荷電粒子をビームとして生成し、当該ビームをホルダ55に保持されたウエハWに照射する。この一次光学系72は、光源71と、レンズ72a,72dと、アパーチャ72b,72cと、E×Bフィルタ72eと、レンズ72f,72h,72iと、アパーチャ72gとを備えている。光源71は、本実施例では、電子ビームを生成する電子銃である。ただし、光源71は、荷電粒子または電磁波のいずれかを発生させる任意の手段、例えば、UV(Ultraviolet)レーザ、DUV(Deep Ultraviolet)レーザ、EUV(Extreme Ultraviolet)レーザ、X線レーザなどとすることができる。なお、一次光学系72の構成、および、後述する二次光学系73の構成は、光源71の種類に応じて適宜変更される。
【0032】
荷電粒子をウエハWに照射することによって、ウエハWの状態(パターンの形成状態、
異物の付着状態など)に応じた二次荷電粒子が得られる。本明細書において、二次荷電粒子とは、二次放出電子、ミラー電子および光電子のいずれか、または、これらのうちの少なくとも2つが混在したものである。二次放出電子とは、二次電子、反射電子および後方散乱電子のいずれか、または、これらのうちの少なくとも2つが混在したものである。二次放出電子は、ウエハWの表面に電子線などの荷電粒子を照射したときに、ウエハWの表面に荷電粒子が衝突して発生する。ミラー電子は、ウエハWの表面に電子線などの荷電粒子を照射したときに、照射した荷電粒子がウエハWの表面に衝突せずに、当該表面近傍にて反射することによって発生する。光電子は、ウエハWの表面に電磁波を照射したときに、当該表面から発生する。
【0033】
レンズ72a,72dおよびアパーチャ72b,72cは、光源71によって生成された電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御し、斜め方向から入射するように電子ビームをE×Bフィルタ72eに導く。E×Bフィルタ72eに入射された電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受けて、鉛直下方向に偏向され、レンズ72f,72h,72iおよびアパーチャ72gを介してウエハWに向けて導かれる。レンズ72f,72h,72iは、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーを調整する。
【0034】
ウエハWへの電子ビームの照射によって、ウエハW上の異物がチャージアップされ、それによって、入射電子の一部がウエハWに接触せずに跳ね返される。これによって、ミラー電子が二次光学系73を介して、TDIセンサ75に導かれる。また、入射電子の一部がウエハW上に接触することによって、二次放出電子が放出される。
【0035】
電子ビームの照射によって得られた二次荷電粒子(ここでは、ミラー電子および二次放出電子)は、対物レンズ72i、レンズ72h、アパーチャ72g、レンズ72fおよびE×Bフィルタ72eを再度通過した後、二次光学系73に導かれる。二次光学系73は、電子ビームの照射によって得られた二次荷電粒子をTDIセンサ75に導く。二次光学系73は、レンズ73a,73cと、NAアパーチャ73bと、アライナ73dとを備えている。二次光学系73においては、レンズ73a、NAアパーチャ73bおよびレンズ73cを通過することによって二次荷電粒子が集められ、アライナ64によって整えられる。NAアパーチャ73bは、二次系の透過率・収差を規定する役割を有している。
【0036】
TDIセンサ75は、Y方向に所定の段数(複数)だけ配列された撮像素子を有しており、二次光学系73によって導かれた二次荷電粒子の量を検出する。本実施例では、TDIセンサ75の撮像素子は、X方向にも配列される。TDIセンサ75での検出は、ステージ装置50によってウエハWをY方向に沿って移動させつつ、ウエハWに電子ビームを照射し、それによって得られる二次荷電粒子の量(電荷)を時間遅延積分方式によってY方向に沿ってY方向の段数分だけ積算することによって行われる。ウエハWの移動方向と、TDIセンサ75による積算の方向は、同一の方向である。二次荷電粒子の量は、TDIセンサ75に転送クロックが入力されるごとに、1段分ずつ積算される。換言すれば、TDIセンサ75の1つの画素に蓄積された電荷は、転送クロックが入力されるごとに、Y方向の隣の画素に転送される。そして、Y方向の段数分だけ積算された検出量、すなわち、最終段まで積算された検出量(積算検出量とも呼ぶ)は、転送クロックが入力されるごとに、画像処理装置80に転送される。なお、TDIセンサ75の積算方向は、Y方向に限らず、X方向であってもよい。この場合、ウエハWは、X方向に移動される。
【0037】
このようにして得られる積算検出量(輝度データ)は、例えば、ウエハW上の異物の有無の状況を好適に反映したものとなる。これは、上述したミラー電子は、散乱しないのに対して、二次放出電子は、散乱するので、ウエハW上の異物が存在する領域から得られた二次荷電粒子の量は、その他の領域から得られた二次荷電粒子の量よりも大幅に多くなる
からである。つまり、異物が存在する領域は、異物が存在しない領域と比べて、輝度が高い領域として撮像される。
【0038】
本実施例では、転送クロックは、一定時間ごとにTDIセンサ75に入力される。この一定時間は、理想状態において、すなわち、ホルダ55の移動速度が完全に一定である状態において、ウエハW(ホルダ55)が1画素分移動するのに要する時間に設定される。しかし、TDIセンサ75での二次荷電粒子の量の積算中におけるウエハWの移動速度を厳密に一定に保つことは、現実的には困難である。このため、二次荷電粒子によって表される投影画像のTDIセンサ75への実際の投影位置は、理想位置からずれることになる。偏向電極(静電レンズ)91は、かかる投影画像の位置ずれによる画像データへの影響をEO補正によって抑制するために設けられる。具体的には、偏向電極91には、ホルダ55(ウエハW)の予め定められた目標位置の座標と、位置検出部58によって検出されるホルダ55(ウエハW)の実位置の座標との差分に応じた電圧が印加される。これにより、偏向電極91は、静電偏向によって、当該差分を相殺する方向に二次電荷粒子を偏向させる。なお、二次電荷粒子を偏向させる構成は、種々の電子レンズとすることができ、例えば、静電レンズに代えて、電磁レンズを採用することも可能である。以下、本実施例におけるEO補正について説明する。
【0039】
図4は、TDIセンサ75に投影される投影画像の理想位置と実位置とを模式的に示す。
図4(a)は、TDIセンサ75が備える画素の配列を示している。
図4(b)は、検査対象となる、ウエハWに形成されたパターンP1を示している。この例では、パターンP1のY方向の幅は、1画素分である。
図4(C)は、パターンP1が、Y方向に沿って移動する場合において、転送クロックが入力されるタイミングでのパターンP1の理想位置と実位置とを示している。図示するように、パターンP1の理想位置は、Y方向に沿って1画素分ずつ離間した位置Y1〜Y4である。すなわち、パターンP1は、転送クロックが入力されるごとに(一定時間が経過するごとに)、1画素ずつ正確に移動している。一方、パターンP1の実位置は、ホルダ55の移動速度の変動によって、理想位置からY方向において前後にずれている。EO補正は、このようなウエハWの理想位置と実位置とを補正するために導入される。
【0040】
図5は、ウエハWの実位置と、EO補正におけるウエハWの目標位置とを、直交座標系で示す。横軸は時間であり、縦軸はウエハWのY方向の位置である。期間T1〜T4の各々は、1つの転送クロックが入力されて、次の転送クロックが入力されるまでの時間である。本実施例では、転送クロックは、上述の通り一定時間ごとに入力されるので、期間T1〜T4は、相互に等しい時間となる。Y方向におけるウエハWの位置Y2〜Y4は、位置Y1から1画素分ずつ進んだ位置である。ウエハWの実位置APは、図示するように、Y方向における移動速度が変動することによって、複雑な曲線として表される。従来のEO補正における目標位置TP0は、図示するように、転送クロックが入力されるたびにウエハWが1画素進むように直線的に設定される。すなわち、従来の目標位置TP0は、ウエハWのY方向の移動速度が常に一定である場合に対応している。
【0041】
一方、本実施例のEO補正における目標位置TP1は、図示するように階段状に設定される。具体的には、目標位置TP1は、1つの転送クロックの入力から次の転送クロックの入力までの期間(例えば期間T1)以下の所定の時間だけ目標位置が同一の位置に維持された後に所定距離だけ立ち上がる階段状に設定される。本実施例では、目標位置TP1は、転送クロックと同期して、1つの転送クロックの入力から次の転送クロックの入力までの期間と同一の時間だけ同一の位置に維持された後に、縦軸に平行に、TDIセンサ75の1画素に相当する距離だけ立ち上がる。
【0042】
図6および
図7は、TDIセンサ75の各画素の受光量を模式的に示す。
図6は、
図5
に示した従来の目標位置TP0に基づくEO補正が実施された場合を示し、
図7は、
図5に示した本実施例の目標位置TP1に基づくEO補正が実施された場合を示す。
図6(a)は、TDIセンサ75に入力される転送クロックを示す。この転送クロックは、一定時間ごとに入力されている。
図6(b)に示すように、従来のEO補正では、予め設定された目標位置TP0に基づいて、TDIセンサ75に入力される転送クロックの1周期に相当する期間T1では、投影画像が位置Y1から位置Y2まで連続的に移動する。同様に、期間T2では、投影画像は、位置Y2から位置Y3まで移動する。なお、EO補正による投影画像の位置制御は、実位置と目標位置との差分に基づくフィードバック制御であるため、実際には、僅かな時間遅れを伴うが、
図6では、時間遅れがないものとして示している。
【0043】
このように投影画像が移動する場合、投影画像は、Y方向に隣接する2つの画素にまたがって投影される。例えば、
図6(c)に示すように、期間T1を4等分した期間T11〜T14におけるTDIセンサのY方向に隣接する2つの画素の受光量は、最も下の行の画素の受光量L1と、それよりも1行上の画素の受光量L2とを(L1,L2)として表し、期間T11〜T14の各々での全体の受光量を「10」とすれば、位置Y1での(10,0)から順次(8,2)、(5,5),(2,8)に変化し、最終的には、位置Y2で(0,10)になる。
図6(d)は、各画素の受光量が転送クロックに従って転送された際の積算受光量を示す。例えば、期間T11では、期間T1の前の期間T0において受光された受光量(10,0)が転送されるとともに(転送後は受光量(0,10)になる)、期間T11で受光された受光量(8,2)が加算されて、期間T11の終点において受光量(8,12)になっている。そして、期間T2の終期では、下から2行目および3行目の受光量(L2,L3)は、(30,60)になっている。このことは、1画素の幅のパターンP1が、2画素の幅のパターンとして撮像され、Y方向にぼやけた画像が得られることを意味している。
【0044】
一方、
図7(b)に示すように、本実施例のEO補正では、予め設定された目標位置TP1に基づいて、TDIセンサ75に入力される転送クロックの1周期に相当する期間T1の間、投影画像は、位置Y2に維持される。同様に、期間T2では、投影画像は、位置Y3に維持される。この場合、期間T1,T2における各画素の受光量は、
図7(c)に示すように、Y方向に配列された複数の画素のうちの1つの画素のみに受光される。このため、期間T2の終期では、下から2行目および3行目の受光量(L2,L3)は、(0,90)になっている。このことは、1画素の幅のパターンP1が、1画素の幅のパターンとして精度良く撮像されることを意味している。
【0045】
図8は、上述した本実施例のEO補正を実現するための構成の一例を示す。検査装置5の偏向部90は、EO補正器92とEO補正回路94とを備える。EO補正器92は、上述した偏向電極91と、アンプ(図示省略)とを備えている。EO補正回路94は、偏向電極91に印加される電圧、すなわち、偏向ゲインを制御する。
【0046】
制御装置84からステージ装置50(サーボモータ56)に移動指令が与えられると、Yテーブル52がY方向に移動される。このYテーブル52の移動量は、位置検出部58によって検出される。そして、位置検出部58によって検出された位置情報は、TDIクロック生成器74とEO補正回路94とに入力される。TDIクロック生成器74は、Yテーブル52の位置が所定の初期位置となったタイミングで、一定時間(
図5に示した期間T1に相当する)ごとのクロックの発生を開始する。このクロックは、転送クロックとしてTDIセンサ75に入力される。また、このクロックは、EO補正回路94にも入力される。EO補正回路94は、入力されるクロックに基づいて、TDIセンサ75への投影画像が実位置APから目標位置TP1に補正されるように、EO補正器92を制御する。
【0047】
図9は、EO補正回路94の一例を示す。EO補正回路94は、比較器95と、加減算器96と、レジスタ97と、加算器98と、減算器99とを備えている。EO補正処理は、EO補正回路94によって、以下のように実行される。まず、ユーザによって制御装置84にウエハWの撮像指令が入力されると、制御装置84は、撮像開始Y座標、すなわち、撮像の初期位置を比較器95と加算器98とに入力するとともに、1画素移動量、すなわち、1画素に相当する距離を加減算器96に入力する。
【0048】
位置検出部58は、検出した現在Y座標、すなわち、ウエハWの実位置を、随時、比較器95と減算器99とに入力する。比較器95は、入力された撮像開始Y座標と現在Y座標とが一致したときに、加減算器96とレジスタ97とにリセット信号を送出する。かかる処理は、撮像対象としてのウエハWのゼロ点補正を行うものである。
【0049】
加減算器96は、リセット信号が入力された後、入力された1画素移動量をレジスタ97に入力する。レジスタ97には、TDIクロック生成器74から転送クロックが入力される。レジスタ97は、この転送クロックが入力されるたびに、加減算器96から入力された値を加算器98に出力する。レジスタ97の出力は、加算器98に入力されると同時に、加減算器96に帰還される。加減算器96は、以後、この帰還された値に1画素移動量を加算して、レジスタ97に出力する。これによって、レジスタ97は、1画素移動量をNとすると、N,2N,3N,4Nといった具体に、Nずつ増加する値を、TDI転送クロックと同期して順次出力することになる。加算器98は、レジスタ97から入力された値と、制御装置84から入力された撮像開始Y座標値とを加算し、減算器99に出力する。
【0050】
減算器99は、加算器98から入力される値と、位置検出部58から入力される現在Y座標値との差分を算出し、EO補正におけるY方向の偏向ゲインとしてEO補正器92に出力する。以上の説明からも明らかなように、EO補正回路94は、目標位置TP1を生成するとともに、目標位置TP1と実位置APとの差分をEO補正器92に出力する。EO補正器92は、EO補正回路94から入力された偏向ゲインに基づいて、目標位置TP1と実位置APとの差分が相殺される方向に、TDIセンサ75に向かう二次荷電粒子を偏向させる。換言すれば、EO補正器92は、実位置APのウエハWの投影画像が目標位置TP1のウエハWの投影画像に一致するように、TDIセンサ75に向かう二次荷電粒子を偏向させる。かかる制御によって、
図7に示したような精度の良い撮像が可能になる。
【0051】
上述した本実施例の検査装置5によれば、EO補正を行う場合に、ウエハWの目標位置TP1が同一の位置に維持されている期間中は、投影画像が移動しないので、投影画像が理想位置、すなわち、撮像対象の1画素に相当する領域の投影画像が、TDIセンサ75の投影されるべき1画素のみに投影される位置から離れていくのを抑制できる。したがって、投影画像の理想位置と実位置APとのずれを低減でき、その結果、検査精度が向上する。特に、本実施例では、実位置APのウエハWの投影画像が目標位置TP1のウエハWの投影画像と完全に一致するので、投影画像が常に理想位置に維持され、検査精度がいっそう向上する。
【0052】
また、検査装置5によれば、転送クロックは、一定時間ごとにTDIセンサ75に入力されるので、TDIセンサ75の各撮像素子における露光時間が一定になる。したがって、ウエハWの移動速度が変動する場合であっても、各撮像素子における露光時間が変動することがないので、露光時間の変動による輝度ムラが、画像処理装置80によって生成される画像データに生じることがない。その結果、簡単な構成で検査対象を精度良く検査できる。
【0053】
B.第2実施例:
図10は、第2実施例における、ウエハWの実位置と、EO補正におけるウエハWの目標位置とを示す説明図であり、上述の
図5に対応している。第2実施例では、転送クロックは、ウエハWがY方向に1画素に相当する距離だけ移動するごとにTDIセンサ75に入力される。第2実施例においても、EO補正の目標位置TP2は、
図10に示すように階段状に設定される。具体的には、目標位置TP2は、転送クロックと同期して、1つの転送クロックの入力から次の転送クロックの入力までの期間と同一の時間だけ同一の位置に維持された後に、縦軸に平行に、TDIセンサ75の1画素に相当する距離だけ立ち上がる。
図10から明らかなように、ウエハWの搬送速度に変動が生じると、すなわち、実位置APが曲線形状であると、ウエハWが1画素移動するのに要する時間(図中の期間T21〜T24)は、それぞれ異なる時間になる。なお、
図10では、期間T21〜T24の違いを強調して図示している。
【0054】
図11は、第2実施例としての検査装置205の概略構成を示す。
図11において、検査装置205の構成要素のうちの第1実施例(
図1)と同一の構成要素については、
図1と同一の符号を付して、説明を省略する。検査装置205は、画像処理装置280を備えている。この画像処理装置280は、正規化部282としても機能する点が第1実施例の画像処理装置80と異なる。正規化部282の機能については、後述する。
【0055】
図12は、TDIセンサ75が、二次荷電粒子の量を積算する様子を模式的に示す。ここでは、説明の便を考慮し、TDIセンサ75は、Y方向に5画素配列され、X方向には配列されていないものとして説明する。
図12において、P1〜P5は、Y方向に配列された各撮像素子(画素)を示す。図示する例では、TDIセンサ75による検出の際に、ウエハWは、画素P1からP5に向かう方向に移動する。
図12において、T11〜T15は、ウエハWが1画素分移動するのに実際に要した時間(期間)を示す。例えば、時間T11は、画素P1に相当する距離の移動に要した時間であり、時間T12は、画素P2に相当する距離の移動に要した時間である。
【0056】
図12に示すように、TDIセンサ75による検出では、まず、時間T11の間に画素P1に、感知した二次荷電粒子の量に応じた電荷Q1が蓄積される。この電荷Q1は、時間T11の経過直後のタイミングでTDIセンサ75に入力される転送クロックに従って、画素P1に隣り合う画素P2に転送される。時間T11に続く時間T12の間に、画素P2には、画素P1から転送された電荷Q1に加えて、電荷Q2が蓄積される。その結果、時間T12の経過時には、画素P2には、電荷Q1+Q2が蓄積される。この電荷Q1+Q2は、時間T12の経過直後のタイミングで画素P3に転送される。時間T12に続く時間T13の間に、画素P3には、画素P2から転送された電荷Q1+Q2に加えて、電荷Q3が蓄積される。その結果、時間T13の経過時には、画素P3には、電荷Q1+Q2+Q3が蓄積される。このようにして、電荷が順次積算されることによって、時間T11〜T15の経過後には、画素P5に電荷Q1+Q2+Q3+Q4+Q5が蓄積され、画像処理装置280に転送される。
【0057】
このようにして画像処理装置280に転送される輝度データは、画像処理装置280の正規化部282の処理によって、正規化される。ここでの正規化とは、ウエハW(Yテーブル52)の移動速度のばらつき、すなわち、ウエハWの露光時間のばらつきに起因して生じる、積算検出値への影響(輝度ムラ)が緩和されるように、積算検出量を補正する処理である。この正規化処理は、TDIセンサ75での積算中にウエハWがY方向に沿って1画素に相当する距離だけ移動するのに要した時間に基づいて行われる。より具体的には、正規化処理は、実移動時間Tnと目標移動時間T0との比率である正規化係数Kを用いて、次式(1)によって行われる。IV0は、正規化前の積算検出量であり、IV1は、
正規化後の積算検出量である。
IV1=K×IV0・・・(1)
【0058】
正規化係数Kは、次式(2)によって算出される。Tnは、ウエハWを所定距離だけ移動するのに実際に要した時間(以下、実移動時間とも呼ぶ)である。本実施例では、所定距離は、TDIセンサ75のY方向の段数分の画素に相当する距離(
図12の例では、5画素に相当する距離)である。このため、実移動時間Tnは、TDIセンサ75から転送される積算検出量に対応する露光時間に等しい。目標移動時間T0は、所定距離移動するのに要する時間として予め想定された時間(以下、目標移動時間とも呼ぶ)である。目標移動時間T0は、ウエハWが所定距離移動するのに要する時間の設計値として捉えてもよい。
K=T0/Tn・・・(2)
【0059】
このようにして正規化部282によって正規化された積算検出量は、画像データ生成部81に出力される。画像データ生成部81は、正規化部282から受け取った積算検出値を合成して、Y方向およびX方向に配列された画素値(輝度値)によって構成される画像データを生成する。なお、正規化処理と画像データの生成処理との順序は、逆であってもよい。つまり、画像データ生成部81が、TDIセンサ75から転送されたデータを合成して画像データを生成し、その後、正規化部282が、生成された画像データに対して正規化処理を行ってもよい。
【0060】
図13は、正規化処理の具体例を示す。この例では、先に画像データが生成され、その後に正規化が行われる例を示している。
図13(a)は、正規化前の画像データの画素配置を示す。Y=1の画素群は、TDIセンサ75によって画像処理装置280に最初に転送された画素群である。Y=2の画素群は、Y=1の画素群の次に転送された画素群である。つまり、Y方向の数字の並びは、TDIセンサ75から転送された順番を表している。
図13(b)は、X方向に沿った画素群ごとの総露光時間を示す。例えば、露光時間T1は、
図12に示した時間T11〜T15の合計値である。つまり、露光時間T1は、上述の実移動時間Tnに相当する。
図13(c)は、積算検出値を合成して生成された画像データの各画素の画素値を表す。つまり、
図13(c)は、正規化前積算検出量IV0である。正規化前積算検出量IV0(画素値)は、ここでは、256階調の輝度値である。
図13(d)は、Y=n(ここでは、nは1〜8の整数)の画素群にそれぞれ適用される正規化係数Kを示す。
図13(e)は、
図13(c)に示した正規化前積算検出量IV0と、
図13(d)に示した正規化係数Kとに基づき、式(2)によって算出された正規化後積算検出量IV1である。
【0061】
かかる正規化処理を実現するための構成の一例を
図14に示す。図示する例は、正規化後に画像データを生成する場合の構成である。図示するように、正規化部282は、正規化用クロック生成器285と、カウンタ286と、除算部287と、乗算部288とを備えている。制御装置84からステージ装置50(サーボモータ56)に移動指令が与えられると、Yテーブル52がY方向に移動される。このYテーブル52の移動量は、位置検出部58によって検出される。そして、位置検出部58によって検出された位置情報は、TDIクロック生成器74に入力される。TDIクロック生成器74は、受け取った位置情報に基づいて、Yテーブル52がY方向に1画素移動するたびに、TDIクロック(転送クロック)をTDIセンサ75に入力する。TDIセンサ75は、このTDIクロックに従って、電荷を積算し、最終段まで積算された電荷を、内蔵のA/D変換部(図示省略)に転送する。A/D変換部によってデジタル値に変換された正規化前積算検出量IV0は、乗算部288に入力される。また、TDIセンサ75は、二次荷電粒子の量(電荷)を転送するたびに、転送を行ったことを表す転送信号をカウンタ286に入力する。
【0062】
一方、正規化部282では、カウンタ286は、正規化用クロック生成器285によって生成される時間計測用クロックを用いて、実移動時間Tnの計測を行う。具体的には、カウンタ286は、転送信号を直近の所定回数(
図12の例では、5回)だけ受信するのに要した時間を、時間計測用クロックを用いて計測し、計測された時間を実移動時間Tnとして除算部287に入力する。除算部287は、制御装置84から入力された目標移動時間T0と、カウンタ286から入力された実移動時間Tnとに基づいて、上記の式(2)を用いて、正規化係数Kを算出する。算出された正規化係数Kは、乗算部288に入力され、乗算部288での正規化処理、すなわち、上記の式(1)による演算が行われる。乗算部288の演算結果、すなわち、正規化後積算検出量IV1は、画像データ生成部81に入力される。
【0063】
図示は省略するが、画像データ生成部81が、TDIセンサ75から転送されたデータを合成して画像データを生成し、その後、正規化部282が、生成された画像データに対して正規化処理を行う場合には、正規化部282は、例えば、以下のようにして正規化処理を行うことができる。正規化部282は、まず、
図14と同様に、実移動時間Tnを順次計測し、あるいは、正規化係数Kを順次算出し、それぞれの実移動時間Tnまたは正規化係数Kをバッファに格納しておく。次に、正規化部282は、画像データ生成部81によって生成された画像データから、TDIセンサ75から1回の転送で受け取ったデータ群を、受け取った順に順次抽出する。そして、抽出されたデータ群に対して、正規化処理を行う。
【0064】
上述した検査装置205によれば、ウエハWの移動速度に変動が生じたとしても、1画素に相当する距離のウエハWの移動と、転送クロックとが完全に同期するので、TDIセンサ75への投影画像を理想位置に精度良く近づけることができる。したがって、ウエハWを精度良く検査できる。しかも、TDIセンサ75によって積算された正規化前積算検出量IV0が、ウエハWの実際の露光時間(実移動時間Tn)に基づいて、正規化される。したがって、ウエハWの移動速度、すなわち、露光時間にばらつきが生じても、露光時間のばらつきに起因する輝度ムラが緩和された画像データを生成できる。その結果、当該画像データを用いた検査の精度をいっそう向上できる。
【0065】
上述した正規化処理において、上記の式(2)に使用される実移動時間Tnは、TDIセンサ75のY方向の段数分の画素に相当する距離のうちの一部の距離だけウエハWが移動するのに要する時間であってもよい。この場合、目標移動時間T0は、当該一部の距離に対応する時間として設定すればよい。例えば、TDIセンサ75のY方向の段数が2048である場合には、実移動時間Tnは、2047の画素に相当する距離だけウエハWが移動するのに要する時間であってもよい。かかる構成によれば、正規化の精度に大きな影響を与えることなく、画像データの生成速度を高めることができる。
【0066】
上述した正規化処理は、上記以外の演算を含んでいてもよい。例えば、上記の式(1),(2)の演算に加えて、予め定められたオフセット量を正規化前積算検出量IV0または正規化後積算検出量IV1から減算する処理を行ってもよい。かかる減算処理は、暗電流ノイズを除去するために行われる。オフセット量には、ウエハWにビームを照射していない状態で、TDIセンサ75で撮像を予め行い、それによって得られた積算検出値が使用されてもよい。かかるオフセット量の設定は、検査装置205の起動時に行ってもよいし、所定数のウエハWについて検査を行うたびに行ってもよい。かかる構成によれば、暗電流ノイズの影響を低減した精度の高い画像データを生成できる。その結果、当該画像データを用いた検査の精度を向上できる。
【0067】
あるいは、正規化処理は、上記の式(1),(2)の演算に加えて、Y方向に沿って配列された撮像素子によって構成される撮像素子群ごとに予め定められた増減比率を積算検
出量に乗算する処理を行ってもよい。かかる乗算処理は、撮像素子群ごとの受光感度のばらつきを補正するために行われる。乗算する増減比率は、TDIセンサ75の各素子に同一の光源を当てて撮像を予め行い、それによって得られた積算検出値のX方向のばらつきが緩和されるように設定されてもよい。また、正規化処理には、正規化係数Kを使用する代わりに、正規化係数Kと増減比率とを予め乗算した係数を使用してもよい。かかる構成によれば、撮像素子群ごとの受光感度のばらつきが補正されるので、当該画像データを用いた検査の精度を向上できる。
【0068】
正規化処理は、デジタル値の積算検出量に対して行われる構成に限らず、アナログ値の積算検出量に対して行われてもよい。アナログ値の正規化には、リアルタイムアナログ計算ユニットが利用されてもよい。この場合、積算検出量は、正規化後にA/D変換されることになる。かかる構成によれば、量子化誤差が含まれない状態で正規化が行われるので、画像データの精度を高めることができる。
【0069】
本実施例では、正規化部282は、画像処理装置280に含まれる構成として示したが、正規化部282は、検査装置205全体として任意の場所に設けられていればよい。例えば、正規化部282は、TDIセンサ75と、画像処理装置280との間に設けられた中間処理器として構成されてもよい。あるいは、正規化部282は、TDIセンサ75が備える信号処理部(例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)として構成されていてもよい。
【0070】
C.第3実施例:
第3実施例では、上述した第2実施例と同一のEO補正が行われる。すなわち、EO補正における目標位置は、
図10に目標位置TP2として示した通りに設定され、転送クロックは、ウエハWがY方向に1画素に相当する距離だけ移動するごとにTDIセンサ75に入力される。また、第4実施例としての検査装置は、第1実施例の電子光学装置70(
図3参照)に代えて、電子光学装置370を備える。
【0071】
図15は、電子光学装置370の概略構成を示す。
図15において、第1実施例(
図3)と同一の構成要素には、
図3と同一の符号を付している。電子光学装置370は、
図3に示した構成に加えて、阻止部378を備えている。阻止部378は、ブランキング電極376とブランキングアパーチャ377とを備えている。ブランキング電極376は、光源71から照射され、レンズ72dを通過した電子ビームをブランキングする。具体的には、ブランキング電極376は、静電偏向によって、電子ビームをブランキングアパーチャ377の開口部の外側まで高速で偏向させて、電子ビームがE×Bフィルタ72eまで届かないように制御する。かかる阻止部378によれば、ウエハWの移動速度が一定でない場合であっても、TDIセンサ75から積算検出量が転送される間隔ごとのウエハWの露光時間を均一に制御できる。
【0072】
かかる露光時間の制御を行うための構成の一例を
図16に示す。
図16では、上述したステージ装置50および電子光学装置370の構成は、簡略化して図示している。また、この例では、ウエハWをY方向に移動させるアクチュエータとして、サーボモータ56に代えて、リニアモータ356を採用している。図示するように、ウエハWは、Yテーブル52がリニアモータ356によって移動されることによって、Y方向に移動する。このウエハWの移動量は、上述の通り、位置検出部58によって測定される。具体的には、位置検出部58は、光源としてのレーザ発振器58aと、レーザ干渉計58bと、Yテーブル52(またはホルダ55)に固定されたミラープレート58cと、座標検出部58dとを備えている。レーザ発振器58aから照射された光は、レーザ干渉計58bを通ってミラープレート58cに照射され、その反射光は、レーザ干渉計58bに戻る。レーザ干渉計58bは、レーザ発振器58aからの入射波と、ミラープレート58cからの反射波との
位相差を検出し、座標検出部58dに入力する。座標検出部58dは、入力された位相差に基づいて、ウエハW、厳密には、Yテーブル52(またはホルダ55)の座標を検出する。
【0073】
座標検出部58dによって検出された座標値は、ステージ装置50の制御を行うステージ制御部385にフィードバックされるとともに、座標差分値検出部386に入力される。座標差分値検出部386は、新たに入力された座標値と、前回入力された座標値との差分を演算し、パラレル・シリアル変換部387に入力する。パラレル・シリアル変換部387は、パラレルデジタル値として入力された座標値に基づいて、TDIセンサ75の1画素に相当する距離だけウエハWが移動したタイミングで、シリアル転送パルスをTDIセンサ75に入力する。この転送パルスは、一定パルス発生部388にも入力される。
【0074】
一定パルス発生部388は、転送パルスの入力を受けるたびに、ブランキング信号をアンプ389に入力する。ブランキング信号は、一定時間のパルス幅を有する1つのパルスである。このブランキング信号は、アンプ389によってハイ(H)レベルと、ロウ(L)レベルとが反転されて、ブランキング電極376に入力される。ブランキング電極376にハイレベルが印加されると、ブランキング電極376は、ブランキングアパーチャ377の開口部の外側に電子ビームを偏向させる。つまり、ブランキング信号がハイレベルである期間の間は、電子ビームがウエハWに向けて照射されるが、ブランキング信号がロウレベルである期間は、ブランキング電極376およびブランキングアパーチャ377によって、電子ビームのウエハW側への到達が阻止される。なお、本実施例では、ステージ制御部385、座標差分値検出部386、パラレル・シリアル変換部387および一定パルス発生部388は、制御装置84(
図1参照)に含まれる。ただし、これらの機能の少なくとも一部は、制御装置84とは別体であってもよい。
【0075】
図17は、第4実施例の検査装置において、ウエハWに電子ビームを照射するタイミングを示す。ここでのウエハWは、欠陥や異物の付着がないものとする。つまり、ウエハWから得られる二次荷電量は、ウエハWの全領域にわたって均一であるものとする。図示するように、第1の転送クロックが発生して、それに続く第2の転送クロックが発生するまでの期間T1、すなわち、ウエハWが1画素に相当する距離だけ移動する期間において、第1の転送クロックが立ち上がるタイミングから期間T11の間、ブランキング信号がハイレベルになる。この期間T11では、ウエハWに向けて電子ビームが照射されるので、TDIセンサ75の第1の画素に蓄積される電荷量は、ゼロから電荷Q1まで一定の速度で増加する。その後、期間T1の残りの期間T12では、ブランキング信号がロウレベルになるので、電子ビームのウエハW側への到達が阻止される。このため、期間T12では、TDIセンサ75の第1の画素に蓄積される電荷量は、電荷Q1のまま維持される。この電荷Q1は、第2の転送クロックが発生すると、第1の画素に隣接する第2の画素に転送されるので、第2の転送クロックが発生して、それに続く第3の転送クロックが発生するまでの期間T2の開始とともに、電荷量は、ゼロにリセットされる。この例では、期間T2は、期間T1よりも短い。すなわち、ウエハWの移動速度には、ばらつきが生じている。
【0076】
次に、期間T2において、第2の転送クロックが立ち上がるタイミングから期間T21の間、ブランキング信号がハイレベルになる。上述の通り、ブランキング信号のパルス幅は一定であるから、期間T11と期間T21とは、同じ時間である。このため、期間T12においては、期間T11と同様に、第1の画素に蓄積される電荷量は、ゼロから電荷Q1まで一定の速度で増加する。その後、期間T2の残りの期間T22では、ブランキング信号がロウレベルになるので、電子ビームのウエハW側への到達が阻止される。このため、第1の画素に蓄積される電荷量は、電荷Q1のまま維持され、期間T2の経過時に第2の画素に転送される。説明は省略するが、期間T2に続く、期間T2よりも短い期間T3
においても、第1の画素には、電荷Q1が蓄積される。なお、上述の例では、転送クロックの立ち上がりと、ブランキング信号の立ち上がりとは、同一であるものとして説明したが、転送クロックの立ち上がりから一定の期間遅れて、ブランキング信号が立ち上がってもよい。このように、本実施例では、ウエハWの移動速度にかかわらず、ウエハWに電子ビームを照射する時間が一定となる。
【0077】
一方、阻止部378を有していない場合には、
図18に示すように、期間T1,T2,T3において第1の画素に蓄積される電荷Q2,Q3,Q4は、露光時間に比例して、Q2>Q3>Q4となる。つまり、ウエハWの表面特性に領域分布が存在しない場合であっても、ウエハWの移動速度がばらつくことによって、電荷量が一定しない。
【0078】
上述した検査装置において、ブランキング信号のパルス幅は、ウエハWがTDIセンサ75の1画素に相当する距離だけ移動するのに要する時間の変動を考慮し、当該変動範囲の最小値を超えない範囲で極力大きく設定することが望ましい。こうすれば、ウエハWの各位置における露光時間を均一に保つことができる範囲内で露光時間を長くすることができ、その結果、TDIセンサ75で感度の良い撮像を行える。通常、ステージ装置50の速度変動は1%〜0.1%の範囲である。この速度変動の値は、最大速度で規定される事が多く、低速になった場合には増大する。例えば、移動速度が30mm/sであり、速度変動率が1%である場合には、多くのステージ装置においては、移動速度が3mm/sのときに概ね10%の速度変動率になってしまう。これは、速度にかかわらずサーボのループゲインが一定である事が要因の一つに挙げられる。この速度変動率よらず、輝度を一定に保つ為には、ブランキング信号のパルス幅は、速度変動により短縮されるTDIセンサ75の転送パルスの周期を考慮して決定することが望ましい。また、検出する二次電荷数を確保する為には、1周期の中の照射時間を出来るだけ長くする方が望ましい。低速時の平均転送パルス周期をt1とすると、t1±10%が転送パルス周期の範囲となる。転送パルス周期が長い場合は問題ないが、短くなった場合には変動を吸収出来ない可能性が出てくる。また、パルスの立上りおよび立下り時間や、ブランキング機構の応答時間等を考慮することが望ましい。そこで、例えば、平均転送パルス周期の概ね80%程度を1周期の中の照射時間に割り当て、すなわち、ブランキング信号のパルス幅とし、残りの20%程度を変動吸収代に割り当てる事が考えられる。もちろんこれは変動を吸収する事を可能とする上で、ステージ速度変動率等を所定の例として当てはめた値であり、速度変動率がさらに小さいステージを用いる場合には同様の考え方で夫々の値を当てはめればよい。
【0079】
上述した検査装置によれば、ウエハWの移動速度に変動が生じたとしても、1画素に相当する距離のウエハWの移動と、転送クロックとが完全に同期するので、TDIセンサ75への投影画像を理想位置に精度良く近づけることができる。したがって、ウエハWを精度良く検査できる。しかも、ウエハWの移動速度にかかわらず、ウエハWに電子ビームを照射する時間が一定となるので、ウエハWの表面特性に領域分布が存在しない場合には、TDIセンサ75の画素に蓄積される電荷量は、常に一定となる。したがって、ウエハWの移動速度、すなわち、露光時間にばらつきが生じても、露光時間のばらつきに起因する輝度ムラが緩和された画像データを生成できる。その結果、当該画像データを用いた検査の精度をいっそう向上できる。
【0080】
上述した検査装置は、ウエハW、換言すれば、ホルダ55またはYテーブル52の移動速度を監視する監視部を備えていてもよい。当該移動速度は、位置検出部58の測定結果を使用して容易に把握可能である。また、検査装置は、監視部による移動速度の監視結果に基づいて、ブランキング信号のパルス幅を設定する設定部を備えていてもよい。この設定部は、ウエハWの撮像を行う前にYテーブル52を試験的に移動させ、その際の監視部による監視結果に基づいて、ブランキング信号のパルス幅を設定してもよい。かかる構成とすれば、検査装置を量産する際に、Yテーブル52の移動特性の個体差に応じて、ブラ
ンキング信号のパルス幅を好適な値に設定できる。あるいは、所定のタイミング、例えば、所定期間ごと、所定数のウエハWの撮像を行うごとに、それまでの監視部による監視結果に基づいて、ブランキング信号のパルス幅を設定し直してもよい。かかる構成とすれば、Yテーブル52の移動特性に変動が生じた場合にも、ブランキング信号のパルス幅を好適な値に設定できる。監視部や設定部は、制御装置84の一部として構成されていてもよい。
【0081】
阻止部378の位置は、上述の例に限るものではなく、ビームのウエハW側への到達、または、二次荷電粒子のTDIセンサ75への到達のいずれかを実現できる位置であればよい。例えば、阻止部378は、TDIセンサ75と二次光学系73との間に設けられてもよいし、ステージ装置50と二次光学系73との間に設けられてもよい。
【0082】
阻止部378は、ブランキング手段に限らず、ビームのウエハW側への到達、または、二次荷電粒子のTDIセンサ75への到達を阻止することができる任意の構成とすることができる。例えば、光源71から電磁波が照射される場合には、阻止部378は、電磁波を遮断する開閉可能なシャッタであってもよい。
【0083】
D.変形例:
D−1.変形例1:
EO補正における目標位置は、上述の例に限らず、横軸を時間とし、縦軸を目標位置とする直交座標系で表す場合に、1つの転送クロックの入力から次の転送クロックの入力までの期間(以下、転送間隔期間とも呼ぶ)以下の所定の時間だけ目標位置が同一の位置に維持された後に所定距離だけ立ち上がる階段状に設定されるものであればよい。例えば、目標位置は、
図5に示した従来の目標位置TP0に対して、転送間隔期間(例えば、
図5の期間T2)よりも短い時間だけ、同一の位置に維持された後、縦軸に平行に立ち上がって目標位置TP0の線上に戻るように設定されてもよい。また、「階段状」とは、縦軸に平行に立ち上がる構成に限らず、縦軸に対して傾きを有していてもよい。これらの構成であっても、目標位置が目標位置TP0に設定される従来のEO補正と比べれば、ウエハWの投影画像が理想位置から離れていくのを抑制でき、検査精度を向上できる。
【0084】
D−2.変形例2:
上述した検査装置は、検査対象に電磁波(光)を照射し、検査対象上で反射した二次電磁波、すなわち反射光をTDIセンサ75で撮像するものであってもよい。この場合、反射光をTDIセンサ75に導く二次光学系は、二次電磁波の焦点をずらす偏向部を備えていてもよい。この偏向部は、第1実施例の偏向部90に相当するものであり、例えば、移動式レンズと、アクチュエータとを備える。偏向部は、アクチュエータを駆動させて、二次電磁波の光軸と直交する方向に移動式レンズを移動させることによって、二次電磁波の焦点をずらす。かかる偏向部は、第1実施例のEO補正と同様の機能を実現し、偏向量は、第1実施例のEO補正回路94と同様の構成によって決定することができる。
【0085】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。