【実施例】
【0063】
実施例1
3−ブロモ−SBFの合成
ステップ1:3−ブロモフルオレノンの合成
【化17】
三口フラスコに、60mlの水を8.9mlの塩酸(HCl、37%w/w、2.1モル当量)に添加し、媒質を0℃に冷却した。50mlの水に溶解させたNaNO
2(1.5モル当量)を0℃で滴下しながら添加した。添加の終了時に、アセトン/水(400/230ml)の混合中に溶解させた4−アミノ−2−ブロモベンゾフェノン(1当量、15.0g、51.6mモル)を注意深く添加した。室温で30分後、混合物を温め、60℃で3時間維持した。
【0064】
塩化メチレンで抽出し、有機相を蒸発させた後、茶色の固体を回収し(17.4g)、フラッシュクロマトグラフィーを実施した。ヘキサンによる結晶化後、純粋な化合物を回収した(4.2g、32%収率)。
【0065】
ステップ2:3−ブロモ−SBF
【化18】
この化合物は、ステップ1の3−ブロモフルオレノンから2段階で製造した。最初に、2−ブロモビフェニル(1.05当量、4.0g、16.5mモル)を102mlの無水ジエチルエーテルに溶解させる。この溶液を−60℃に冷却し、n−BuLi(1.16当量)を滴下しながら添加する。この温度で10分後、白色の沈殿物が現れたが、これは、媒質を室温まで温めて、再溶解させた。次に、3−ブロモフルオレノンを添加し、反応混合物を45℃で一晩維持した。
【0066】
NH
4Cl(5%水溶液、260ml)を添加し、ジエチルエーテルで抽出した後、7.0gのアルコールを取得した。この固体を141mlの酢酸に溶解させた後、78mlのHCl/ジオキサン(10%モル、20当量)の添加により加水分解した。溶媒の蒸発後、固体を順相フラッシュクロマトグラフィーに付すことによって、5.86gの目標化合物を得た(94%収率)。
【0067】
ステップ3:3−フェノキサジル−SBF
【化19】
500mlフラスコ中で、320mlのトルエンを2時間にわたりガス抜きした。3−ブロモSBF(9.9g、0.025モル)、ナトリウムtert−ブチレート(tBuONa、4.92g、0.05モル)及びフェノキサジン(4.6g、0.025モル)を添加し、30分後、事前に調製したビス−ジベンジリデンアセトンパラジウム(Pd(dba)
2)及びトリス−tert−ブチルホスフィン(P(tBu)
3)の混合物をゆっくりと添加した。
【0068】
溶液を110℃まで1時間かけて温めた後、セライトパッドで濾過した。溶媒の蒸発後、回収した固体をエタノール中で再結晶化することにより、9.4gの白色の固体を得た(77%収率)。
【0069】
実施例2
3−クロロ−SBFの合成
ステップ1:1−ブロモ−7−クロロ−ビフェニルの合成
【化20】
窒素雰囲気下の50ml丸底フラスコに、Pd(OAc)
2(1.07g、0.0047モル)、PPh
3(5.0g、0.0032モル)及びジオキサン(35ml)を順次充填した。この混合物を、ジオキサン(150ml)中の1−クロロ−3−ヨードベンゼン(13.6g、0.056モル)、2N水性炭酸ナトリウム(180ml)及び2−ブロモフェニルボロン酸(12.3g、0.059モル)をすでに充填した500ml丸底フラスコに添加した。この混合物をN
2下の還流で1.5時間加熱し、室温まで冷却した。反応媒質を水と酢酸エチルの間に分配した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、MgSO
4で乾燥させた後、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2/ヘキサン)によって精製することにより、76.6%の収率で所望の生成物を得た。
【0070】
ステップ2:3−クロロ−SBF
【化21】
−78℃に冷却した無水THF(100ml)中の1−ブロモ−7−クロロ−ビフェニル(10g、0.037モル)の溶液に、ヘキサン(0.037モル、23.2ml)中の1.6M n−BuLiの溶液を滴下しながら添加した。反応混合物を−78℃で1時間撹拌した後、無水THF(25ml)中のフルオレノン(0.031モル、5.58g)の溶液を滴下しながら添加した。添加後、混合物を室温まで温めて、2時間撹拌した。混合物を飽和NH
4Cl(200ml)でクエンチングした後、酢酸エチルで抽出した(3
*125ml)。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO4(又はMgSO
4)で乾燥させた後、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製することにより、約20%の収率で目標化合物を得た。
【0071】
ステップ3:9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジンの調製
2−(フェニルアミノ)安息香酸(50g、0.23モル)をメタノール(1L)に溶解させ、氷浴中に配置し、10分間撹拌した。そこに0℃でSOCl
2(60mL、0.58モル)をゆっくり添加した後、混合物を90℃、還流下で12時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を蒸留水で洗浄した後、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、回転式蒸発器により溶媒を蒸発させた後、展開溶媒として酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製によって、2−(フェニルアミノ)安息香酸メチル(47g、92%)を取得した。
【0072】
90gの2−(フェニルアミノ)安息香酸メチル(90g、0.3モル)をTHF(1.5L)に添加し、臭化メチルマグネシウム(462mL、1.38モル)をゆっくりと混合物に添加した後、これを室温で12時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を蒸留水で中和してから、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、回転式蒸発器により溶媒を蒸発させた後、展開溶媒として酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製によって、80g(90%)の
【化22】
を得た。
【0073】
前ステップで取得した化合物80g(0.35モル)を1.7Lのリン酸に添加し、混合物を室温で12時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を蒸留水で中和してから、生成された固体を水で洗浄しながら、濾過した。固体をジクロロメタンに溶解させ、抽出した後、水酸化ナトリウムで中和した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、回転式蒸発器により溶媒を蒸発させた後、ヘキサン中の再結晶化によって64gの9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン(87%)を得た。
【0074】
:3−(9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン)−SBF
【化23】
触媒Pd(dba)
2(5%モル、490mg)及びホスフィンP(tBu)
3(4%モル、トルエン中0.675mLの1M P(tBu)
3)を室温で二口フラスコ中のトルエン(10mL、無水かつ、十分にガス抜きしたもの)に導入した。窒素下で15分後、別の試薬3Cl−SBF(1当量、5.98g、16.9mモル)、9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン(1当量、3.53g、16.9mモル)及びtBuONa(3当量、5.0g、60.6mモル)を導入し、反応媒質を3時間にわたり90℃に温めた。反応の終了時に、媒質を珪藻土(セライト)で濾過し、溶媒を真空下で蒸発させた。固体をシリカゲル上に吸収させ、乾燥フラッシュクロマトグラフィーを実施した(塩化メチレン/ヘキサン)。溶媒の蒸発後、固体をヘキサン中で再結晶化させた(m=7.66g、収率=87%)。
【0075】
HOMOレベルを−5.29eV、LUMOレベルを−1.49eV、三重項エネルギーを−2.88eVと決定した。
【0076】
HOMOレベル(E
HOMO)は、最初の酸化(E
1OX1/2)から得られる半波電位から、以下の等式:
E
HOMO−(−4.8)=−[E
1OX1/2−E
OX1/2(Fc/Fc
+)]
(式中、E
HOMO(フェロセン)は、真空レベルを下回る4.8eVに等しいとみなされている)
を用いて算出されている。
【0077】
E LUMO(CV)は、第1還元電位から算出されている。
【0078】
三重項エネルギーは、77Kの2−MetTHFにおける最も高いエネルギーりん光ピークから算出されている。
【0079】
素子実施例
素子実施例はすべて、スピンコート技術によって付着させた正孔注入層以外は、高度真空蒸着法によって作製した。アノード電極は、120nmのインジウム酸化スズ(ITO)である。素子はすべて、作製直後、窒素グローブボックス(<1ppmのH
2O及びO
2)内で、エポキシ樹脂で封止したガラスリッドでカプセル化し、パッケージ内に水分ゲッターを導入した。HAMAMATSU製のC9920−12 External Quantum Efficiency Measurement Systemを用いて、素子を光学的及び電気的に特性決定した。EQEとは、%で表される外部量子効率を指し、室温にて直流で素子を駆動することによって、操作安定性試験を行った。LT
50は、寿命の尺度であり、素子を定電流で駆動しているとき、光出力が初期値の50%まで低減するのにかかる時間に相当する。
【0080】
OLEDスタックは、順に、ITO表面、スピンコートで付着させて、20分間200℃の加熱板上で乾燥させた30nmのPlexcore OC(Plextronics Inc.から供給される自己ドーピングポリマー:ポリ(チオフェン−3−[2−[(2−メトキシエトキシ)エトキシ]−2,5−ジル))から構成された。HILの上に、正孔輸送層(HTL)として15nmのNPBを真空蒸着法により付着させた。
【0081】
次に、様々な量のドーパント化合物Cでドーピングした化合物Bの30nm層を発光層(EML)として真空蒸着法により付着させた。化合物Aの5nm層を真空蒸着法により正孔阻止層(HBL)として付着させた。続いて、Alq3の40nm層を電子輸送層(ETL)として真空蒸着法により付着させた。カソードは、1nmのLiFと、これに続く100nmのアルミニウムから構成された。
【0082】
本明細書で用いるα−NPD、化合物A、化合物B、化合物C及びAlq3は以下の構造を有する。
【化24】
【0083】
素子構造の概略を
図2に示し、表1には、作製した素子についての測定結果を示す。化合物Bは、ホストとして用い、化合物Cは、ドーパントとして用いた。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例から認めることができるように、電力効率は、ドーパント濃度が増加するにつれ上昇する。素子の寿命は、ホストの量に対して、15〜20重量%のドーパント濃度範囲で最大を示す。色座標は、ほぼ一定のままであるが、EQEは、10重量%ドーパントの場合、より高い濃度と比較して低い。
【0086】
以上の実施例から、本発明の化合物は、有機発光ダイオードのホスト材料として好適であることが明らかである。