特許第6182206号(P6182206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182206
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20170807BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C08J3/24CES
   C08J3/24CEY
   C08J3/12 A
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-508860(P2015-508860)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公表番号】特表2015-515534(P2015-515534A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】KR2013003465
(87)【国際公開番号】WO2013162255
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0043435
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0044663
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、テ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チャン−スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギ−チュル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン−フン
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン−ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュ−パル
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン−ス
(72)【発明者】
【氏名】イム、ギュ
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−214016(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/026876(WO,A1)
【文献】 特開2002−121291(JP,A)
【文献】 特開2005−097593(JP,A)
【文献】 特開2003−192732(JP,A)
【文献】 特表2007−523254(JP,A)
【文献】 特開平11−060975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足することを特徴とする、高吸水性樹脂であり、
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2〜8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含む高吸水性樹脂
【数11】
前記数式1において、
D(90%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が90%となる粒子径であり、
D(10%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が10%となる粒子径であり、
D(50%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が50%となる粒子径であり、
【数12】
前記数式2において、
ARULは、加圧下での吸水速度(Absorbing rate under load)であり、AUP(10min)は、10分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)値であり、AUP(60min)は、60分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能値であり、
【数13】
前記数式3において、
Wa(g)は、吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和であり、
Wb(g)は、荷重(0.7psi)下、10分または60分の所定時間の間、前記吸水性樹脂に水分を供給した後の水分の吸収した吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和である。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含むモノマー組成物を形成する段階と、
重合反応器で前記モノマー組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階と、
前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、
前記分級された含水ゲル重合体それぞれに水および表面架橋剤を含む表面処理溶液を噴射して、含水ゲル重合体の表面を処理する段階とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法であって、
前記表面処理溶液は、噴射装置の油圧ノズルから10°〜30°の角度に調節して、分級された含水ゲル重合体が分布した基板に噴射される製造方法
【請求項4】
記表面架橋剤は、炭素数2〜8のジオールまたはグリコール系化合物を使用することを特徴とする、請求項3に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記表面処理溶液には、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールからなる群より選択された1種以上の有機溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記表面架橋剤は、全体表面処理溶液に対して0.1〜10重量%で含むことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記表面を処理する段階において、
分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、
120〜250℃の温度で、10分〜120分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させる段階を含むことを特徴とする、請求項3〜6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階において、
乾燥した含水ゲル重合体を、粒度が150〜850μmとなるように粉砕を進行させることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記分級する段階において、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、および粒度150μm以上850μm以下の粒子の2分に分級する段階、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、および粒度300μm以上850μm以下の粒子の3分に分級する段階、または
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、粒度300μm以上600μm未満の粒子、および粒度600μm以上850μm以下の粒子の4分に分級する段階を含むことを特徴とする、請求項3〜8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記含水ゲル重合体の表面を処理した後に、含水ゲル重合体を粉砕し、粒度150〜850μmの粒子に分級する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項3〜9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記含水ゲル重合体の乾燥段階の前に、重合された後の含水ゲル重合体を、粒度が1mm〜15mmに粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項3〜10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記重合は、UV重合または熱重合を進行させることを特徴とする、請求項3〜11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、
アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項3〜12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記重合開始剤は、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤、有機ハロゲン化物開始剤、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、およびその誘導体からなる群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項3〜13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項15】
モノマー組成物は、架橋剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3〜14のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期吸水性に優れ、時間経過後も、加圧時に水分が滲み出ない高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百〜1千倍程度の水分を吸収可能な機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などのそれぞれ異なる名前で命名している。このような高吸水性樹脂は、生理用具として実用化され始めて、今のところは子供用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0003】
このような高吸水性樹脂を製造する方法としては、逆相懸濁重合による方法または水溶液重合による方法などが知られている。逆相懸濁重合については、例えば、日本特開昭56−161408号、特開昭57−158209号、および特開昭57−198714号などに開示されている。水溶液重合による方法としては、軸を備えた捏和機内で重合ゲルを破断、冷却しながら重合する熱重合方法、および高濃度水溶液をベルト上で紫外線などを照射して重合と乾燥を同時に行う光重合方法などが知られている。
【0004】
また、より優れた物性を有する含水ゲル状重合体を得るために、重合、粉砕、乾燥および最終粉砕過程で得られた樹脂粉末に表面処理を施したり、前記重合、粉砕、乾燥段階の効率を高めるための多様な工程上の変形を試みている。
【0005】
一方、高吸水性樹脂の物性を評価する時、粒度と吸水能、保水能が重要因子として判断されてきており、これを改善すべく、多くの努力が行われている。また、吸水速度に対する概念が導入され、Vortexを利用した吸水速度として吸水の速さを評価する。
【0006】
しかし、既存の方法は、それぞれの物性の特徴だけを言及しており、前記物性が複合的に結合された場合のシナジー効果については言及していない。また、既存の方法の場合、高吸水性樹脂の無加圧状態での吸水速度だけが主に言及されている。さらに、従来は、吸水速度が速く、着用感が同時に優れた高吸水性樹脂を提示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高吸水性樹脂の表面処理を通じて、物性に優れていながら、特に初期吸水性に優れ、長時間経過後も、加圧状態で水分がほとんど滲み出ることなく、吸水能に優れた高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、吸水速度が速く、着用感が同時に優れた高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が約1.2以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足する、高吸水性樹脂を提供する。
【0010】
【数1】
【0011】
前記数式1において、
D(90%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が90%となる粒子径であり、
D(10%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が10%となる粒子径であり、
D(50%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が50%となる粒子径であり、
【0012】
【数2】
【0013】
前記数式2において、
ARULは、加圧下での吸水速度(Absorbing rate under load)であり、AUP(10min)は、10分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)値であり、AUP(60min)は、60分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能値であり、
【0014】
【数3】
【0015】
前記数式3において、
Wa(g)は、吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和であり、
Wb(g)は、荷重(0.7psi)下、10分または60分の所定時間の間、前記吸水性樹脂に水分を供給した後の水分の吸収した吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和である。
【0016】
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベースポリマーを、炭素数2〜8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含むことができる。
【0017】
また、本発明は、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含むモノマー組成物を形成する段階と、
重合反応器で前記モノマー組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階と、
前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、
前記分級された含水ゲル重合体それぞれに水および表面架橋剤を含む表面処理溶液を噴射して、含水ゲル重合体の表面を処理する段階とを含む、前記高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0018】
この時、前記表面架橋剤は、炭素数2〜8のジオールまたはグリコール系化合物を使用することができる。
【0019】
また、前記表面処理溶液には、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールからなる群より選択された1種以上の有機溶媒をさらに含むことができる。
【0020】
前記表面架橋剤は、全体表面処理溶液に対して0.1〜10重量%で含むことができる。
【0021】
前記表面処理溶液は、パイプの形態またはノズルを介して処理を行うことができるが、ノズルを介して含水ゲル重合体の表面に噴射されることが好ましい。
【0022】
また、前記表面を処理する段階において、
分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120〜250℃の温度で、10分〜120分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させる段階を含むことができる。
【0023】
また、前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階において、乾燥した含水ゲル重合体を、粒度が150〜850μmとなるように粉砕を進行させることができる。
【0024】
また、前記分級する段階において、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、および粒度150μm以上850μm以下の粒子の2分に分級する段階、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、および粒度300μm以上850μm以下の粒子の3分に分級する段階、または
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、粒度300μm以上600μm未満の粒子、および粒度600μm以上850μm以下の粒子の4分に分級する段階を含むことができる。
【0025】
前記含水ゲル重合体の表面を処理した後に、含水ゲル重合体を粉砕し、粒度150〜850μmの粒子に分級する段階をさらに含むことができる。
【0026】
前記含水ゲル重合体の乾燥段階の前に、重合された後の含水ゲル重合体を、粒度が1mm〜15mmに粉砕する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高吸水性樹脂の粒度、初期吸水能、および保水能にいずれも優れており、特に加圧状態での吸水速度(Absorbing rate under load、ARUL)が特定条件を満足して、加圧下で優れた吸水速度を示す効果がある。したがって、本発明の高吸水性樹脂は、一定時間が経過しても水分が滲み出る量(リウェット量、content of rewetting)が少なく、安らかで着用感に優れた衛生用品の製造に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明の具体的な実施形態にかかる高吸水性樹脂の製造方法について具体的に説明する。
【0029】
本発明は、高吸水性樹脂の製造時、粉砕工程での適切な分級により粒子径を調節し、特に表面架橋処理工程において、溶媒としてグリコール系溶剤を用い、表面架橋剤としてジオールまたはグリコール系を用いて表面処理量および条件を特定することによって、長時間の加圧状態でも吸水能に非常に優れた高吸水性樹脂の製造方法を提供する特徴がある。
【0030】
したがって、本発明によれば、高吸水性樹脂の粒度および物性に優れ、特に加圧状態での吸水比率(Absorbing rate under load、ARUL)が特定条件を満足して、加圧下で優れた吸水速度を示し、一定時間が経過しても加圧状態で水分が滲み出る量が少なく、着用感に優れた効果を提供することができる。したがって、本発明の特定パラメータ物性を満足する高吸水性樹脂は、多様な衛生用品だけでなく、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用可能である。
【0031】
このような本発明の方法は、発明の一実施形態により、下記の数式1で表されるスパン値(SPAN value)が1.2以下であり、下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を同時に満足する、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0032】
【数4】
【0033】
前記数式1において、
D(90%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が90%となる粒子径であり、
D(10%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が10%となる粒子径であり、
D(50%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が50%となる粒子径であり、
【0034】
【数5】
【0035】
前記数式2において、
ARULは、加圧下での吸水速度(Absorbing rate under load)であり、AUP(10min)は、10分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)値であり、AUP(60min)は、60分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能値であり、
【0036】
【数6】
【0037】
前記数式3において、
Wa(g)は、吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和であり、
Wb(g)は、荷重(0.7psi)下、10分または60分の所定時間の間、前記吸水性樹脂に水分を供給した後の水分の吸収した吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和である。
【0038】
本発明は、前記数式1および2で表される高吸水性樹脂の粒子サイズ分布に応じたパラメータと、一定時間が経過した後の加圧吸水能を通じた複合的な物性の結合でシナジー効果を提供することができる。したがって、本発明は、吸水体製造時の優れた物性と安らかな着用感を誘導することができる。
【0039】
この時、前記粒子サイズ分布は、「SPAN」として知られているパラメータによって計算できる。したがって、前記スパン(SPAN)は、製造された高吸水性樹脂の粒子サイズ分布により測定できる。前記数式1において、Dは、「μm」で表される高吸水性樹脂の粒子径であり、レーザ紛砕機で測定できるが、これに限定されない。また、D(10%)は、最終製造された150〜850μmの高吸水性樹脂粒子を均等に分級した後、前記高吸水性樹脂を粒子径の順に並べた時、前記分級された粒子の全体重量を基準として粒子径が最も小さい粒子からの累積が10重量%の粒子の粒子径を意味する。また、D(50%)は、高吸水性樹脂を粒子径の順に並べた時、前記分級された粒子の全体重量を基準として粒子径が最も小さい粒子からの累積が50重量%の粒子の粒子径を意味する。さらに、D(90%)は、高吸水性樹脂を粒子径の順に並べた時、前記分級された粒子の全体重量を基準として粒子径が最も小さい粒子からの累積が90重量%の粒子の粒子径を意味する。
【0040】
前記数式1で表されるスパン値が1.2以上の場合、粒度分布が均一でなく、物性の低下および粉塵の飛散現象の問題を引き起こす。また、前記数式2で表される加圧(荷重)下の吸水速度(ARUL)の条件が0.7未満の場合、加圧下の吸水速度が低下して、最終衛生製品において十分な吸水力を有することができず、水分が滲み出る問題がある。この時、前記ARUL数値に影響を与える要素としては、架橋重合体の架橋密度、表面処理密度、ベースポリマーの均一な粒度、表面処理剤の均一な分布などがある。したがって、本発明では、前記ARUL値が上述した化学式2の条件に符合するようにすることが重要であり、このために、後述する方法によって表面処理された架橋重合体を高吸水性樹脂として使用することが好ましい。
【0041】
また、本発明によれば、前記最終高吸水性樹脂を製造するために、ベースポリマーを製造して、これを分級した後、前記ベースポリマーの粒度分布を調節して優れた物性を付与することができる。
【0042】
つまり、前記ベースポリマーの分級後、このようなベースポリマーの粒度分布が150〜850ミクロンの場合に、本発明で実現しようとする優れた物性を示すことができる。具体的には、本発明は、300〜600ミクロンのベースポリマーの含有量が高くてこそ、高吸水性樹脂の粒度および物性を向上させることができる。例えば、300〜600ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約50重量%以上、あるいは約60重量%以上、例えば、約50〜80重量%で含まれ、600〜850ミクロンおよび150〜300ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約7重量%以上、あるいは約10重量%以上、例えば、7〜20重量%で含まれるように分級されたベースポリマーを得て、これを用いて高吸水性樹脂を製造することにより、本発明の優れた物性を達成することができる。この時、全体ベースポリマー中の残りの含有量は、それぞれ粒度分布が150ミクロン未満の粒子と850ミクロン以上の粒子が、それぞれ約1重量%未満、あるいは約0.8重量%未満で含まれるとよい。
【0043】
一方、上述した物性を満足する本発明の高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.2により測定した保水能が25g/g〜50g/gであってよい。また、EDANA法WSP270.2により測定した水可溶成分が15重量%以下であってよい。
【0044】
一方、前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2〜8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた架橋重合体を含むことができる。
【0045】
さらに、前記架橋重合体の架橋密度は、前記ARUL数値に影響を与える要素となり得るので、本発明にかかる方法によりベース樹脂を表面架橋させることが好ましい。
【0046】
また、前記物性を満足させる本発明の他の実施形態によれば、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含むモノマー組成物を形成する段階と、重合反応器で前記モノマー組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階と、前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階と、前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、前記分級された含水ゲル重合体それぞれに水および表面架橋剤を含む表面処理溶液を噴射して、含水ゲル重合体の表面を処理する段階とを含む前記高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0047】
つまり、本発明は、前記含水ゲル重合体の乾燥後、適切な分級処理を進行させ、分級された含水ゲル重合体の表面を処理時、特定の表面処理溶液および噴射条件によって、粒子大きさの調節が容易なだけでなく、均一な大きさを有し、初期吸水能と長時間加圧後の水分吸水能にいずれも優れた微粒子の高吸水性樹脂の製造方法を提供する。前記分級処理は、ベースポリマーを提供するためであり、したがって、前記分級された含水ゲル重合体は、ベースポリマーを含むことができる。このようなベースポリマーは、平均粒度分布が150〜850ミクロンであってよい。また、前記ベースポリマーは、粒度分布300〜600ミクロンのベースポリマー、600〜850ミクロンのベースポリマー、および150〜300ミクロンのベースポリマーの構成比を調節して優れた物性を達成できるようにする。具体的には、上述のように、300〜600ミクロンのベースポリマーの含有量は、全体ベースポリマーに対して約50重量%以上、あるいは約60重量%以上、例えば、約50〜80重量%で含まれ、600〜850ミクロンおよび150〜300ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約7重量%以上、あるいは約10重量%以上、例えば、7〜20重量%で含まれるように分級されたベースポリマーを使用することによって、初期吸水能に優れ、また、反対概念の無重力下の吸水倍率と加圧状態での吸水能を同時に向上させられるシナジー効果を提供することができる。
【0048】
また、前記粉砕された含水ゲル重合体は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂(つまり、ベースポリマー)であってよい。この時、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0049】
また、前記含水ゲル重合体の表面を処理する段階を通じて、本発明は、前記ベース樹脂に特定表面処理溶液を噴射することによって、分級された含水ゲル重合体の表面架橋密度を調節することができる。このような方法で製造された架橋重合体は、架橋濃度がベース樹脂対比0.1〜1.0重量%であってよい。
【0050】
一方、本発明にかかる表面処理溶液は、溶媒として水を含む水溶液であってよく、表面架橋剤は、ジオール系またはグリコール系を使用し、必要に応じて他の種類のジオールやメタノールなどの有機溶媒をさらに使用することができる。
【0051】
具体的には、前記表面処理溶液に使用する表面架橋剤は、炭素数2〜8のジオールまたはグリコール系化合物を使用することができる。具体的には、前記ジオール化合物は、1,3−プロパンジオール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、および1,2−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択された1種以上を使用することができる。前記グリコール系化合物は、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、およびポリグリセロールからなる群より選択される1種以上を使用することができる。より好ましくは、前記表面架橋剤として1,3−プロパンジオールを使用することができ、プロピレングリコールも使用することができる。さらに、本発明において、表面架橋剤を2種以上混合使用する場合、その混合重量比は、全体表面架橋剤の重量を基準として2:8〜8:2であってよい。
【0052】
また、本発明は、前記表面処理溶液に有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒は、有機アルコールおよびジオールの中から選択されたいずれか1つ以上を使用することができ、この時、ジオールは、上述した架橋剤としても使用され、有機溶媒としても使用可能である。さらに、必要に応じてグリコールエーテル系も追加的に使用可能である。
【0053】
好ましくは、前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリプロピレングリコールからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0054】
前記表面架橋剤は、全体表面処理溶液に対して0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜8重量%で含むことができる。この時、表面架橋剤の含有量が0.1重量%未満であれば、十分な反応を誘発できない問題があり、10重量%を超えると、過度な反応および粘度の上昇によって管理の困難がある。したがって、前記表面架橋剤は、本発明の範囲内で使用することが好ましい。
【0055】
そして、水は、表面処理溶液を水溶液に製造するための溶媒として使用されるものであるので、その含有量が特に限定されず、全体表面処理溶液の残量で含まれるとよい。また、前記表面処理溶液に有機溶媒がさらに含まれる場合、全体表面処理溶液に対して0.1〜10重量%で含まれるとよく、この場合も、残りの含有量は水で満たされるため、水の含有量は限定されない。
【0056】
前記表面処理溶液は、パイプの形態またはノズルを介して処理を行うことができるが、ノズルを介して含水ゲル重合体の表面に噴射されることが好ましい。
【0057】
この時、表面処理溶液の噴射速度は特に限定されないが、噴射角度および含有量は調節した方が良い。
【0058】
好ましくは、前記表面処理溶液の噴射角度は、噴射装置の油圧ノズルから1°〜45°、より好ましくは10〜30°の角度に調節して、分級された含水ゲル重合体が分布した基板に表面処理溶液を噴射することが好ましい。前記噴射角度が1°未満であれば、表面処理溶液が狭い領域にのみ集中的に噴射されて表面処理が均等でない問題があり、45°を超えると、表面を処理しようとする含水ゲル重合体が分布した領域の外部に噴射されて表面処理溶液の損失をもたらすことがある。
【0059】
また、前記表面処理溶液は、分級された含水ゲル重合体の100重量部あたり2〜10重量部、より好ましくは3〜8重量部の噴射量で噴射されるように表面を処理することが好ましい。
【0060】
本発明の表面処理溶液の噴射装置は、処理液の噴射角度および速度調節手段が別途に備えらてよく、必要に応じて温度調節手段も備えられてよい。
【0061】
また、前記表面を処理する段階において、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、120〜250℃の温度で、10分〜120分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させる段階を含むことができる。前記表面架橋反応器は、温度調節手段が備えられてよい。さらに、架橋反応時間が10分未満でその時間が短すぎる場合、十分な程度の架橋反応が起こらないことがある。また、架橋反応時間が120分を超える場合、過度な表面架橋反応によって高吸水性樹脂の物性がむしろ劣化することがあり、反応器で長期滞留による重合体の破砕が生じ得る。
【0062】
さらに、本発明によれば、前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階において、乾燥した含水ゲル重合体を、粒度が150〜850μmとなるように粉砕を進行させることができる。
【0063】
また、前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階では、粒度別に2分以上に分級することが好ましい。この場合、本発明は、前記粉砕された含水ゲル状重合体を、粒度別に2分以上に分級する段階において、粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、および粒度150μm以上850μm以下の粒子の2分に分級する段階、粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、および粒度300μm以上850μm以下の粒子の3分に分級する段階、または粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、粒度300μm以上600μm未満の粒子、および粒度600μm以上850μm以下の粒子の4分に分級する段階を含むことができる。さらに、粉砕された含水ゲル重合体中において少量で存在する850μm以上の粒子を分級する段階をさらに含むことができる。
【0064】
そして、上述した実施形態にかかる製造方法において、分級段階前の段階は、高吸水性樹脂製造のための、当該技術分野において通常使用される段階および方法を利用することができる。
【0065】
前記含水ゲル重合体の乾燥温度および時間は、製造された含水ゲル重合体の含水率に応じて適切に選択されて進行できるが、好ましくは160〜190℃の温度条件で、20分〜40分間進行することが好ましい。乾燥時、温度が160℃未満の場合には、乾燥効果がわずかで乾燥時間が過度に長くなり、含水量を10重量%以下だけ低くすることが難しい。また、乾燥温度が190℃を超える場合、含水ゲル重合体の表面だけが局部的に過度に乾燥されて製品の物性が低下するだけでなく、後に行われる粉砕段階で多量の微粉が発生して加圧吸水能が減少する傾向がある。
【0066】
前記乾燥工程時の装置の構成は特に限定されず、例えば、赤外線照射、熱風、極超短波照射、または紫外線照射により乾燥を行うことができる。また、乾燥温度および時間は、UV重合により重合された重合体の含水量に応じて適切に選択されて進行できるが、好ましくは、80〜200℃の温度条件で、20〜120分間進行することが好ましい。乾燥時、温度が80℃未満の場合には、乾燥効果がわずかで乾燥時間が過度に長くなる問題があり、200℃を超える温度で乾燥する場合、高吸水性樹脂が熱分解される問題がある。
【0067】
前記乾燥した含水ゲル重合体および表面処理された後の含水ゲル重合体の粉砕は、通常の樹脂粉砕のために使用される方法であれば構成の限定なく選択可能である。好ましくは、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル、ロールミルなどからなる群より選択されるいずれか1つの粉砕装置を選択して粉砕することができる。この時、最終高吸水性樹脂粒子の平均粒径が150〜850μmとなるように進行させることが好ましい。
【0068】
この時、重合で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は30〜60重量%であるが、前記乾燥過程を通じて得られた含水ゲル重合体の乾燥後の含水率は1〜10重量%であってよい。この時、含水ゲル重合体の含水率は、全体含水ゲル重合体の重量に対して、水分の占める含有量として含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。
【0069】
また、本発明では、前記含水ゲル重合体の表面を処理した後に、含水ゲル重合体を粉砕し、粒度150〜850μmの粒子に分級する段階をさらに含むことができる。
【0070】
本発明によれば、前記含水ゲル重合体の乾燥段階の前に、重合された後の含水ゲル重合体を、粒度が1mm〜15mmに粉砕する段階をさらに含むことができる。この時、前記含水ゲル重合体の粒度が1mm未満であれば、含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に困難であり、また、粉砕された粒子間で互いに凝集する現象が生じることもある。一方、含水ゲル重合体の粒度が15mm超えるように粉砕する場合、粉砕による後の乾燥段階の効率増大の効果がわずかになる。
【0071】
一方、本発明にかかる高吸水性樹脂の製造方法は、通常の含水ゲル重合体を製造するための反応器を備えた重合装置を用いて製造できる。また、前記方法は、含水ゲル重合体を2分以上に分級処理する装置と、含水ゲル重合体の表面処理液の噴射条件を調節可能な上述した噴射装置をさらに備えることができる。
【0072】
また、前記モノマー組成物の重合は、UV重合または熱重合を進行させることができ、その条件が特に限定されず、通常の方法を利用することができる。例えば、前記重合は、25〜99℃の温度で、10秒〜30分間進行できる。具体的には、熱重合は、25〜50℃の温度で、2〜30分間重合するレドックス重合方法と、40〜90℃の温度で2〜30分間重合する熱重合に分けられる。また、UV重合(光重合)は、温度による影響が多くないので、温度幅が広くて25〜99℃の温度で、10秒〜5分間光を照射することによって進行できる。さらに、UV照射時、紫外線の光量は0.1〜30のmW/cm2であってよい。UV照射時に使用する光源および波長の範囲も、当業界でよく知られている公知のものを使用することができる。
【0073】
また、前記モノマー組成物の熱重合またはUV重合を進行させる方法において、使用される重合装置は特に限定されない。例えば、通常、熱重合を進行させる場合、ニーダー(kneader)のような撹拌軸を有する反応器で進行可能であり、UV重合(光重合)を進行させる場合、連続移動が可能なコンベヤベルトを備えた反応器で進行できるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0074】
一例として、上述のように撹拌軸を備えたニーダー(kneader)のような反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合して得られた含水ゲル状重合体は、反応器に備えられた撹拌軸の形態により、反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は数センチメートル〜数ミリメートルの形態であってよい。具体的には、得られる含水ゲル状重合体の大きさは、注入されるモノマー組成物の濃度および注入速度などにより多様になり得るが、通常、粒度が2〜50mmの含水ゲル状重合体が得られる。
【0075】
また、上述のように移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で光重合を進行させる場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であってよい。この時、重合体シートの厚さは、注入されるモノマー組成物の濃度および注入速度によって異なるが、通常、0.5〜5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合には、過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚にわたって均等に起こらないことがある。
【0076】
前記モノマー組成物は、単量体および重合開始剤などの原料物質の供給部および溶媒供給部が連結設置された混合器で混合を進行させて製造することができる。
【0077】
以下、前記モノマー組成物を形成するための各単量体の構成について説明する。
【0078】
本発明において、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合は、水溶液状態で行われることが好ましい。
【0079】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造において通常使用される単量体であればその構成の限定なく使用可能である。大きく、陰イオン性単量体とその塩、非イオン系親水性含有単量体、およびアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されるいずれか1つ以上を使用することができる。
【0080】
例えば、水溶性エチレン系不飽和単量体は、上述のようなアクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタアクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を使用することができる。好ましくは、水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸とその塩を使用することができるが、これは物性に優れる点で有利である。
【0081】
前記モノマー組成物中の水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適切に選択して使用することができるが、好ましくは35〜50重量%であってよい。水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度が35重量%未満の場合、収率が低くて経済性が低い問題があり、50重量%以上の場合、モノマー溶解度低下の点で不利である。
【0082】
前記重合開始剤は、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤、有機ハロゲン化物開始剤、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル系化合物、およびその誘導体からなる群より選択されるいずれか1つを使用することができる。例えば、前記重合開始剤は、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル系化合物、およびその誘導体として、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ)−2−プロピルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン誘導体;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニル硫化物、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウム塩化物などのベンゾフェノン誘導体;チオキサントン(thioxanthone)系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド誘導体;2−ヒドロキシメチルプロピオンニトリル、2,2’−{アゾビス(2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのアゾ系化合物などからなる群より選択される1つ以上の光重合開始剤を使用することができる。
【0083】
前記重合開始剤は、全体モノマー組成物に対して0.01〜1.0重量%で使用することができる。
【0084】
また、本発明にかかる前記モノマー組成物は、架橋剤をさらに含むことができる。
【0085】
前記架橋剤の種類は、前記架橋剤は、エチレン系不飽和単量体の水溶性置換基、エチレン系不飽和単量体の水溶性置換基と反応可能な官能基を少なくとも1個有し、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する架橋剤、またはこれらの混合物;およびエチレン系不飽和単量体の水溶性置換基、ビニルモノマーの加水分解により生成する水溶性置換基と反応可能な官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤、およびこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つ以上を使用することができる。エチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤としては、炭素数8〜12のビスアクリルアミド、ビスメタアクリルアミド、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレート、および炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが使用され、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、およびプロピレングリコールからなる群より選択されたいずれか1つ以上を使用することができる。
【0086】
前記架橋剤は、全体モノマー組成物に対して0.01〜1.0重量%で使用することができる。
【0087】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるわけではない。
【0088】
実施例1
アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5g、UV開始剤としてジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド0.033g、50%苛性ソーダ水溶液(NaOH)83.3g、および水89.8gを混合して、単量体の濃度が45重量%のモノマー水溶液組成物を製造した。
【0089】
以降、前記モノマー水溶液組成物を連続移動するコンベヤベルトからなる重合器の供給部を介して投入した後、UV照射装置により紫外線を照射(照射量:2mW/cm2)し、2分間UV重合を進行させて、含水ゲル重合体を製造した。
【0090】
前記含水ゲル重合体を切断機に移送した後、0.2cmに切断した。この時、切断された含水ゲル重合体の含水率は50重量%であった。
【0091】
次に、前記含水ゲル重合体に対して160℃の温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥した含水ゲル重合体をピンミル紛砕機で粉砕した。その後、ふるい(sieve)を用いて、粒度(平均粒径の大きさ)が150μm未満の重合体と粒度150μm〜850μmの重合体を分級した。
【0092】
以降、分級された含水ゲル重合体に対する粒度調節により、SPAN1.0のベースポリマーBP−1を製造した。また、粒度調節により、SPAN1.1のベースポリマーBP−2を製造した。最後に、粒度調節により、SPAN1.3のベースポリマーBP−3を製造した。この時、各ベースポリマーの分類基準は表1の通りである。
【0093】
以降製造された、ベースポリマーBP−1 100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル1重量%、プロピレングリコール2重量%、および97重量%の水が含まれている表面処理溶液5重量部を噴射して、高吸水性樹脂の表面を処理した。この時、前記表面処理溶液は、噴射装置により15°の噴射角度で含水ゲル重合体の表面に噴射されるようにした。また、前記表面を処理する段階において、分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、130℃の温度で、40分間含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させた。
【0094】
前記表面処理後、含水ゲル重合体を粉砕し、ふるい(sieve)を用いて、平均粒径の大きさが150〜850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0095】
実施例2
1,3−プロパンジオール5重量%、プロピレングリコール5重量%、および90重量%の水が含まれている表面処理溶液を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0096】
実施例3
前記ベースポリマーBP−1の代わりにベースポリマーBP−2を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0097】
実施例4
前記ベースポリマーBP−1の代わりにベースポリマーBP−2を使用したことを除いては、実施例2と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0098】
比較例1
前記ベースポリマーBP−1の代わりにベースポリマーBP−3を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0099】
比較例2
前記ベースポリマーBP−1の代わりにベースポリマーBP−3を使用したことを除いては、実施例2と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0100】
試験例:高吸水性樹脂の含水率および物性評価
試験例1:含水率評価
前記実施例および比較例で使用されたベースポリマーの粒度は、EDANA法WSP220.2方法により測定を行い、各ベースポリマーの粒度結果は表1に示した。
【0101】
【表1】
【0102】
前記表1の結果を通じて、本発明の実施例は、比較例(BP−3)に比べて、90〜600μmの粒度分布が異なるベースポリマー(BP−1およびBP−2)を用いて物性を比較評価し、粒度の差を除いては、物性の類似するベースポリマーを構成した。
【0103】
つまり、実施例で使用されたベースポリマーは、300〜600ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約60重量%以上含まれ、600〜850ミクロンおよび150〜300ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対してそれぞれ約10重量%以上含まれるように分級されたベースポリマーを使用する。
【0104】
試験例2:物性評価
実施例および比較例の物性を評価するために、下記のような試験を進行させた。また、実施例および比較例による吸水性樹脂の物性は、下記のような方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0105】
(1)スパン値の測定
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、EDANA法WSP220.2の粒度分析方法により粒度を分析した後、次の式によりスパン値を測定した。
【0106】
【数7】
【0107】
前記数式1−1において、
D(90%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が90%となる粒子径であり、
D(10%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が10%となる粒子径であり、
D(50%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が50%となる粒子径である。
【0108】
(2)加圧状態での吸水速度(Absorbing rate under load、ARUL)の測定
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、次の式によりARUL値を測定した。
【0109】
【数8】
【0110】
前記数式2−1において、
ARULは、加圧下での吸水速度であり、AUP(10min)は、10分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)値であり、AUP(60min)は、60分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能値であり、
【0111】
【数9】
【0112】
前記数式3において、
Wa(g)は、吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和であり、
Wb(g)は、荷重(0.7psi)下、10分または60分の所定時間の間、前記吸水性樹脂に水分を供給した後の水分の吸収した吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和である。
【0113】
この時、加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)は、次の方法を測定した。
【0114】
つまり、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400meshの鉄網を装着させた。常温、湿度50%の条件下、鉄網上に吸水性樹脂0.90gを均一に散布し、その上に4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一にさらに付与可能なピストン(piston)は、外径が60mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量Wa(g)を測定した。
【0115】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmで厚さ5mmのガラスフィルタを置いて、0.90重量%の塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルとなるように投入した。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙の上に前記測定装置を載せ、溶液が一定荷重下で1時間吸収されるようにした。1時間後、測定装置を持ち上げて、その重量Wb(g)を測定した。
【0116】
(3)無荷重下の吸水倍率(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
EDANA法WSP241.2により、前記実施例および比較例の吸水性樹脂に対して、無荷重下の吸水倍率による保水能を測定した。
【0117】
つまり、実施例および比較例で得られた樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製袋に均一に入れて密封(seal)した後に、常温で、0.9重量%の生理食塩水に浸水した。また、高吸水性樹脂を用いずに同一の操作をした後に、その時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて、次の式によりCRC(g/g)を算出して保水能を確認した。
【0118】
【数10】
【0119】
前記数式4において、
W(g)は、吸水性樹脂の重量(g)であり、
W1(g)は、吸水性樹脂を入れていない不織布製袋を、常温で、0.9重量%の生理食塩水に30分間含浸した後、遠心分離機を用いて、250Gで3分間脱水した後に測定した装置重量であり、
W2(g)は、常温で、0.9重量%の生理食塩水に吸水性樹脂を入れた不織布製袋を30分間含浸した後に、遠心分離機を用いて、250Gで3分間脱水した後、吸水性樹脂を含んで測定した装置重量である。
(4)水可溶成分(Extractable content)
水可溶成分の測定は、EDANA法WSP270.2に開示されている手順と同様の方法で測定した。
【0120】
【表2】
【0121】
前記表2からみると、本発明の実施例1〜4は、比較例1および2と比較して、既存と同等以上の物性を示すことが分かる。つまり、本発明の実施例は、初期吸水能に優れ、また反対概念の無重力下の吸水倍率と加圧状態での吸水能を同時に向上させられるシナジー効果を示した。また、本発明の実施例は、300〜600ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約50重量%以上、あるいは約60重量%以上、例えば約50〜80重量%で含まれ、600〜850ミクロンおよび150〜300ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約7重量%以上、あるいは約10重量%以上、例えば、7〜20重量%で含まれるように分級されたベースポリマーを得て、これを高吸水性樹脂の製造に用いて、既存に比べて相対的に優れた物性を提供することができる。