【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1態様によれば、物体平面に配置されるパターンを像平面内に結像するマイクロリソグラフィ投影対物レンズが提供され、第1対物レンズ部と、第2対物レンズ部と、少なくとも一つの第3対物レンズ部とを備え、第2対物レンズ部は、第1対物レンズ部における光伝搬方向および第3対物レンズ部における光伝搬方向と異なる光伝搬方向を規定し、かつ第1対物レンズ部と第2対物レンズ部との間および第2対物レンズ部と第3対物レンズ部との間に少なくとも一つのビーム偏向装置をさらに備え、少なくとも一つのシールドは、第1対物レンズ部から第3対物レンズ部内への直接光漏れが少なくとも減少するようにしてビーム偏向装置の領域に配置される。
【0017】
第2対物レンズ部を抜かしつつ第1対物レンズ部から第3対物レンズ部内への直接光漏れを、ビーム偏向装置の領域にシールドを設けることによって回避することができる。ビーム偏向装置を通り過ぎて第1対物レンズ部から第3対物レンズ部内へ直接漏れ、かつパターンの像平面内への結像を歪める一因となる可能性のある反射は、シールドによって無害となる。像平面の迷光または偽光の部分は、ビーム偏向装置の領域に少なくとも一つのシールドを設けることによって少なくとも減少する。
【0018】
シールドは、好ましくは、結像ビーム経路を制限しないように配置および/または設計されるべきである。
本発明による投影対物レンズの場合に設けられるようなシールドは、システム開口絞りまたはそのような投影対物レンズに通常設けられる開口絞りと区別される。システム開口絞りは結像ビーム経路を制限し、一方シールドは、開口としてまたは開口がないシールド板として設計されるなら、結像に用いられる光の部分をできる限り制限または減少させてはならない。
【0019】
公知の投影対物レンズの場合のように、ビーム偏向装置が互いに対してある角度で配置される第1反射面および第2反射面を有するなら、少なくとも一つのシールドは、ビーム偏向装置の角頂点から第2対物レンズ部の方向に、すなわち部分的に該第2対物レンズ部内へ延びている。
この場合、シールドは、好ましくは板であり、好ましくは吸収性物質から、たとえば吸収性金属から作られる。あるいは、板上の吸収層によって吸収を達成することもできる。理想的には、吸収特性は用いる光の波長となる。
【0020】
シールドに加えて、ビーム偏向装置の領域では、投影対物レンズが第2および/または第3対物レンズ部に少なくとも一つの中間像を生成するときはいつでも、少なくとも一つのさらなる迷光シールドを中間像の領域に配置するのがさらに好ましい。
このようにして、像平面に入りかつ像平面においてパターンの像を悪化させる迷光および偽光の部分をさらに減少させることが可能である。
【0021】
中間像の領域に配置されるシールドは、好ましくは結像ビーム経路を制限しない迷光絞りである。
さらに、少なくとも一つの迷光シールドをその活性断面に対して位置調整することができおよび/または可変であるのが好ましい。
この場合、迷光の減少を、少なくとも一つの迷光シールドの活性断面の位置調整および/または設定によって、たとえば板状のシールドを拡大または縮小することによって、それぞれの投影対物レンズについて最適化することができ、少なくとも一つの迷光シールドの活性断面の位置調整または設定によって結像ビーム経路が少なくとも実質的に制限されないという点で、最適化工程が制限されるのは有利である。
【0022】
迷光シールドの活性断面の位置調整および/または設定は、好ましくは用いられる対物レンズ視野サイズの開口の照明モード(設定)に基づいて行われる。
すでに上述したように、先に記載した迷光絞りのみが、投影対物レンズの迷光または偽光のレベルを減少するが、照明ビーム経路を制限しないという機能を有している。
本発明による投影対物レンズは、特にカタディオプトリック投影対物レンズであり、その場合第2対物レンズ部がたとえばカタディオプトリックであり、かつ第3対物レンズ部がディオプトリック(屈折)であり、後者はこのように屈折光学素子からのみ構成される。
【0023】
本発明のさらなる態様にしたがって、物体平面に配置されるパターンを像平面内に結像するマイクロリソグラフィ投影対物レンズが提供され、少なくとも一つの光学作用表面をそれぞれ有する複数の光学部品を備え、複数の光学作用表面のうち、投影対物レンズ作動中、パターンを像平面内に結像する結像ビーム経路によって用いられない第1表面領域を有する少なくとも一つの第1光学作用表面を有する少なくとも一つの第1光学部品が存在し、少なくとも一つの第1光学作用表面には、偽光を抑制するために第1光学作用表面の、結像ビーム経路によって用いられない第1表面領域をマスクする少なくとも一つの第1シールドが割り当てられる。
【0024】
本発明の本態様の基本的な考え方は、特に、ステッパー/スキャナーとして設計される投影露光機において用いられるそれらの投影対物レンズの場合、およびウェハ上の四角または長方形視野が露光される場合、レンズまたは鏡であってもよい光学部品のいくつかは、結像ビーム経路によってそれらの表面全体にわたって用いられないということである。ここで、投影対物レンズにおいて偽光の伝搬を回避するためには、本発明による投影対物レンズの場合、少なくとも一つの光学部品、好ましくは多数の光学部品、特にレンズの未使用表面領域は、結像ビーム経路のために用いられないこれらの光学部品の表面領域内を偽光が伝搬できないように、少なくとも一つのシールドによってマスクされる。それによって、偽光の効果的な抑制を達成することが可能である。
【0025】
この場合には、少なくとも一つの第1シールドが、少なくとも一つの第1光学作用表面の直近傍に配置される板または開口絞りであることが好ましく、該開口絞りは、好ましくは結像ビーム経路の断面形状に適合する開口部を開口の位置に有している。
シールドとしての開口部を有する板または開口絞りの存在は、板または開口が可動設計のものであってもよいという利点を有し、その結果として、板または開口を適切に位置決めすることによって、偽光の抑制を最適化することが可能である。さらに、開口絞りは、簡単な手段によって、全視野照明用投影対物レンズから除去されてもよい。
【0026】
開口部は、少なくとも一つのシールドが開口部を有する開口絞りである場合、好ましくは実質的に長方形である。
開口絞りの形態である少なくとも一つのシールドは、この手段によって、ステッパーまたはスキャナーに存在するような長方形の結像ビーム経路に最適に適合される。
少なくとも一つの第1シールドは、結像ビーム経路によって用いられない光学部品の少なくとも一つの第1光学作用表面の第1表面領域上の遮蔽コーティングである場合特に好ましい。
【0027】
本手段の利点は、光学部品を製造する際に、このようなコーティングがすでに設けられているということにあり、光学部品の有効表面領域を計算によって事前に決定することが可能であるということである。
少なくとも一つのシールドが、板または開口絞りの形態で設けられるかコーティングの形態で設けられるかにかかわらず、少なくとも一つの第1シールドが、結像に用いられる光の波長について反射性である場合がさらに好ましい。
【0028】
あるいは、または偽光の反射に加えて、少なくとも一つの第1シールドが結像に用いられる光の波長について吸収性であるか、または該シールドに吸収コーティングが設けられる場合がさらに好ましい。
反射偽光と対比した吸収偽光の利点は、偽光のさらにより有効な抑制にある。
シールドの吸光度は、好ましくは少なくとも約95%であり、好ましくは少なくとも約98%である。
【0029】
このようにして、偽光は吸収によって特に有効に抑制され、かつ有害なフレアーは大幅に回避される。
さらに、吸収シールドの場合には、少なくとも一つの第1シールドが光触媒特性を有する場合が好ましい。
光触媒特性を用いて、少なくとも一つのシールドが少なくとも一つの光学部品の表面上で板または開口絞りの形態であってもコーティングの形態であっても、さらに、シールドの表面上で吸収された物質を分解または該分解を補助するのに有利な方法で用いることが可能である。たとえば、炭化水素等の有害物質の光触媒分解は、投影対物レンズの気層におけるこのような物質の濃度を減少させ、かつそれによって、透過または反射における減少をともなうような物質は、投影対物レンズの、たとえばレンズまたは鏡の有効領域上に沈殿しないようにする。
【0030】
さらなる好ましい改良形態では、少なくとも一つの第1シールドが割り当てられる少なくとも一つの第1光学作用表面は、近傍表面、特に結像ビーム経路の中間像の近傍または像平面もしくは物体平面の近傍に位置決めされる表面である。
投影対物レンズの他の光学部品と比較して、視野、特に中間像の近傍に配置される光学部品は、小さな光学使用表面のみを有し、一方光学表面の大きな部分は、結像ビーム経路には用いられない。特にこれらの部品にコーティングの形態のシールドが割り当てられるとき、偽光を抑制するのに特に好適であるのはまさにそのような部品である。特に、シールドを、物体平面と第1レンズとの間および/または最後のレンズと像平面との間に設けることができる。
【0031】
少なくとも一つの光学活性表面に少なくとも一つのシールドが割り当てられる光学部品は、鏡または他のレンズであってもよい。
さらに、本発明の第1態様による投影対物レンズの場合のように、少なくとも一つの第1シールドをその活性断面に対して位置調整および/または可変設定することができる場合が好ましい。
【0032】
同様に、少なくとも一つの第1シールドの設定を、結像ビーム経路を制限する投影対物レンズの開口の設定と共通して行うことができる場合もやはり好ましい。
少なくとも一つの第1シールドの設定は、好ましくは特にステッパーまたはスキャナー用の投影対物レンズと同様に、この場合結像のために用いられる像視野の大きさに応じたものとなる。
【0033】
少なくとも一つの第1シールドの設定は、好ましくは照明設定に応じて行われる。
照明設定は、使用される視野の大きさ、およびレティクル(パターン)を照明するために用いられる光の角度分布として理解される。
本発明の第2態様は、好都合なことに、カタディオプトリック投影対物レンズと同様に、特に、レティクルとウエハとの間に一つ以上の中間像を生成するそれらの投影対物レンズに使用される。
【0034】
そのような場合、複数の光学部品は、投影対物レンズの作動中、パターンを像平面内に結像するための結像ビーム経路によって用いられないさらなる表面領域を有する、少なくとも一つのさらなる光学作用表面を有する少なくとも一つのさらなる光学動作部品を有し、少なくとも一つのさらなる光学作用表面には、さらなる光学動作表面の結像ビーム経路によって用いられないさらなる表面領域をマスクする少なくとも一つのさらなるシールドが割り当てられる。
【0035】
特にコーティングの形態のシールドが割り当てられるウエハ上にレティクルを結像するための結像ビーム経路によって光学作用表面のみが用いられる光学部品が多いほど、より効果的に偽光を抑制することができ、それによって投影対物レンズの結像特性はさらに改良される。
本発明の第2態様を、好都合なことに、特に複数の光学部品が少なくとも2つの鏡または少なくとも4つの鏡を有する投影対物レンズの場合に使用することができる。
【0036】
さらに、本発明は、いわゆる乾式対物レンズの場合に使用されるだけでなく、投影対物レンズのウエハと終端素子との間に、光の有効波長を減少させかつ開口数を増加させる浸液が存在する液浸対物レンズに使用することができる。
本発明のまたさらなる態様によれば、物体平面に配置されるパターンを像平面内に結像するマイクロリソグラフィ投影対物レンズが提供され、少なくとも一つの鏡を含む複数の光学部品を備え、パターンを像平面内に結像するために用いることができる結像ビーム経路は、少なくとも一つの鏡の領域において、互いに対して斜めに延び、重複領域で少なくとも部分的に互いに重複し、かつ重複領域の外部で間隙によって互いに間隔が開けられているビーム経路セグメントを有し、偽光を抑制するための少なくとも一つのシールドが間隙に配置される。
【0037】
本発明の本態様の基本的な考え方は、少なくとも一つの鏡を有するカタディオプトリック対物レンズの場合に、少なくとも一つの鏡における反射によって少なくとも部分的に重複するが、重複領域の外部で別々に延び、そのときその間に確かに狭い間隙を残しておく、結像ビーム経路のビーム経路セグメントがあるということである。
そのようなビーム経路セグメントは、特にビーム経路が繰り返し通過する光学素子を有するカタディオプトリック投影対物レンズにおいて見られる。
【0038】
本発明の第3態様によれば、偽光の伝搬を抑制するために、シールドがこの間隙に導入される。それによって、偽光を抑制するためのシールドは2つのビームまたはビーム経路セグメント間の隙間を埋める。この場合、シールドは適切な結像ビーム経路と干渉しないが、偽光が間隙を越えて伝搬しないようにする。
本発明の第3の態様は、複数の光学部品が少なくとも一つの第1鏡および少なくとも一つの第2鏡を含む投影対物レンズの場合に特に有効に用いることができ、ビーム経路セグメントの一つは、第2鏡によって反射されるビーム経路セグメントであり、かつビーム経路セグメントの他の一つは、第1鏡によって反射されるビーム経路セグメントであり、該少なくとも一つのシールドは第1鏡と少なくとも一つの第2鏡との間に配置されている。
【0039】
この場合、2つの鏡間に配置されるシールドは、具体的には第2鏡の方へ伝搬するビームがシールドの像側でさえぎられ、一方シールドを通過する光ビームが、第2鏡での反射の後シールドの物体側によってさえぎられるということによって、両側で作用することができることが有利である。
2つの鏡間の空間の多くの順次導入されたシールドによっても遮断効果を達成することができる。
【0040】
好ましくは、少なくとも一つのシールドとして開口部を有する板または開口を提供することが可能であり、該少なくとも一つのシールドは好ましくは、第1または第2鏡上に固定される。
しかしながら、本発明の第3態様を、2つの鏡を有する投影対物レンズに使用することができるのみならず、好都合なことに3つ以上の鏡を有する他のカタディオプトリック対物レンズに使用することもできる。
【0041】
本発明の第4態様によれば、物体平面に配置されるパターンを像平面内に結像するマイクロリソグラフィ投影対物レンズが提供され、複数の光学部品と、第1瞳孔平面および少なくとも第2瞳孔平面とを備え、システム開口を規定する第1開口絞りは第1瞳孔平面の近くに少なくとも配置され、かつ少なくとも第2開口絞りをさらに備える。
本発明の本態様によれば、本発明によるマイクロリソグラフィ投影対物レンズには、少なくとも2つの開口絞りが設けられ、一方は公知の投影対物レンズにすでに存在するシステム開口を規定し、少なくとも一つのさらなる開口絞りは、物体平面から出るオーバ開口光を、このオーバ開口光が像平面に達するのを妨げるように遮蔽するのに特に役に立つことがある。該少なくとも一つの第2開口絞りは、好ましくは、オーバ開口光線が結像に用いられる光線から分離される投影対物レンズにおけるある位置に配置される。
【0042】
好ましくは、少なくとも一つの第2開口絞りは、特にオーバ開口光が結像のために用いられる光線からこの第2瞳孔平面において分離される場合、投影対物レンズの第1または第2瞳孔平面の近くまたは第2瞳孔平面に配置される。
少なくとも第2開口絞りがオーバ開口光をマスクするために用いられる場合、好ましくは、結像に用いられる光線からのオーバ開口光線の分離が最大である位置に配置される。
【0043】
少なくとも一つの第2開口絞りは、好ましくは、瞳孔平面からのある距離Lに配置され、Lは0.5D<L<2Dとなるように選択され、式中Dは複数の光学部品のうちの光学部品の最大直径を有する一つの光学部品の直径である。
さらに好ましい実施形態では、少なくとも一つの第2開口絞りは、複数の光学部品のうちの一つの光学部品上の非透過コーティングによって形成される。
【0044】
本手段は、開口絞りとして板を導入するのに十分な空間がない場合に有利である。非透過コーティングを、たとえばそれぞれの光学部品の表面の一部を黒くすることによって形成することができる。
少なくとも一つの第2開口絞りを、オーバ開口光線をマスクするためだけでなく、システム開口絞りと共動してビーム経路を遮断するために用いることができる。
【0045】
投影対物レンズに少なくとも第2開口絞りを設けることは、投影対物レンズが、非球面光学作用表面を有する少なくとも一つの光学部品を有する場合に特に有利である。
少なくとも一つの第2開口絞りを設けることは、投影対物レンズが、中間像平面によって分離される少なくとも2つの瞳孔平面を有する場合にも有利である。
少なくとも第2開口絞りを設けることのさらなる利点は、少なくとも一つの第2開口絞りが、最大開口のためのシステム開口絞りの機能にとって代わることができるので、調整可能なシステム開口絞りによって提供される最大口径の機械公差に対する要求を引き下げることができるということである。
【0046】
本発明のまたさらなる利点によれば、マイクロリソグラフィ投影露光機は、前述した種類の投影対物レンズを有する。
本発明のまたさらなる態様によれば、半導体部品および他の微細構造部品を製造するための方法が提供され、規定パターンを有するマスクが設けられ、マスクは、規定波長の紫外光で照射され、投影対物レンズの像平面の領域に配置される感光性基板上にパターンが結像される。
【0047】
さらなる利点および特徴は、次の説明から明らかとなろう。
以下でなお説明する上記の特徴を、それぞれ特定された組み合わせのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく単独で用いることができる。