特許第6182355号(P6182355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

特許6182355圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法
<>
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000002
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000003
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000004
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000005
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000006
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000007
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000008
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000009
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000010
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000011
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000012
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000013
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000014
  • 特許6182355-圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182355
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20170807BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20170807BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20170807BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/62 B
   H01R43/048
   H01R13/52 301F
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-99788(P2013-99788)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-220167(P2014-220167A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】川村 幸大
(72)【発明者】
【氏名】岳田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】外池 翔
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−080682(JP,A)
【文献】 特開2011−233328(JP,A)
【文献】 実開昭60−090771(JP,U)
【文献】 特開2004−071437(JP,A)
【文献】 特開2013−004409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/62
H01R 13/52
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の電線導体を絶縁性の絶縁被覆で被覆した被覆電線と、
少なくとも、前記絶縁被覆の先端近傍を除去して前記電線導体を露出させた導体露出部の圧着接続を許容する圧着部を有する圧着端子とが備えられ、
前記圧着部と前記導体露出部が圧着して接続された圧着接続構造体であって、
前記圧着端子における前記圧着部は、
前記導体露出部及び前記絶縁被覆の先端近傍の挿入が許容される、前記被覆電線の長手方向に延びる略筒状のクローズドバレル形式で構成されるとともに、
挿入された前記絶縁被覆を圧着する被覆圧着部と、前記導体露出部を圧着する導体圧着部と、前記圧着部における前記導体露出部側に、前記長手方向に向けて延設するとともに、前記長手方向における先方側を封止した封止部とが、前記長手方向の後方からこの順番に構成され、
前記長手方向における前記絶縁被覆と前記被覆圧着部の後方端部との境界近傍に、
前記長手方向に沿って形成した止水部が備えられ、
前記止水部は、
前記被覆圧着部及び前記絶縁被覆の境界線を跨ぐとともに、前記被覆圧着部の外周面から前記絶縁被覆の外周面までを周方向の全周に沿って連続して覆うように形成され、
前記導体圧着部が前記被覆圧着部よりも断面積が小さい筒状で構成され、
前記封止部は、前記導体圧着部における前記長手方向の先方側を板状に閉塞されるとともに、前記長手方向と交差する幅方向に沿って溶接された溶接封止部を有する
圧着接続構造体。
【請求項2】
導電性の電線導体を絶縁性の絶縁被覆で被覆した被覆電線と、
少なくとも、前記絶縁被覆の先端近傍を除去して前記電線導体を露出させた導体露出部の圧着接続を許容する圧着部を有する圧着端子とが備えられ、
前記圧着部で前記導体露出部が圧着して接続された圧着接続構造体であって、
前記圧着端子における前記圧着部は、
前記導体露出部及び前記絶縁被覆の先端近傍の挿入が許容される、前記被覆電線の長手方向に延びる略筒状のクローズドバレル形式で構成されるとともに、
挿入された前記絶縁被覆を圧着する被覆圧着部と、前記導体露出部を圧着する導体圧着部と、前記圧着部における前記導体露出部側に、前記長手方向に向けて延設するとともに、前記長手方向における先方側を封止した封止部とが、前記長手方向の後方からこの順番に構成され、
前記長手方向における前記絶縁被覆と前記被覆圧着部の後方端部との境界近傍に、
前記長手方向に沿って形成した止水部が備えられ、
前記被覆圧着部は、前記長手方向と交差する幅方向の外側に向けて突出した突出部分が形成され、
前記止水部は、
前記突出部分に対応する範囲における前記被覆圧着部及び前記絶縁被覆の境界線を跨ぐとともに、前記被覆圧着部の外周面から前記絶縁被覆の外周面にかけて連続して覆うように形成された
圧着接続構造体。
【請求項3】
前記止水部は、
前記絶縁被覆の周方向における全周に沿って形成された
請求項2に記載の圧着接続構造体。
【請求項4】
前記圧着部は、
筒状に形成された周方向において対向する端部同士を、前記長手方向に沿って突き合わせて溶接された突合わせ溶接部が設けられた
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の圧着接続構造体。
【請求項5】
前記止水部は、
硬化性の合成樹脂材を塗布するとともに、硬化させて形成された
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の圧着接続構造体。
【請求項6】
前記電線導体が、アルミ系材料で構成されるとともに、
少なくとも前記圧着部が、銅系材料で構成された
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の圧着接続構造体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の圧着接続構造体における前記圧着端子をコネクタハウジング内に配置した
コネクタ。
【請求項8】
導電性の電線導体を絶縁性の絶縁被覆で被覆した被覆電線と、少なくとも、前記絶縁被覆の先端近傍を除去して前記電線導体を露出させた導体露出部の圧着接続を許容する圧着部を有する圧着端子とを備え、前記圧着部で前記導体露出部を圧着して接続した圧着接続構造体の製造方法であって、
前記被覆電線の長手方向に延びる略筒状のクローズドバレル形式の前記圧着端子における前記圧着部は、
前記絶縁被覆を圧着する被覆圧着部と、前記導体露出部を圧着する導体圧着部と、前記圧着部における前記導体露出部側に、前記長手方向に向けて延設するとともに、前記長手方向における先方側を封止した封止部とが、前記長手方向の後方からこの順番で構成されるとともに、
前記封止部を、前記導体圧着部における前記長手方向の先方側を板状に閉塞するとともに、前記長手方向と交差する幅方向に沿って溶接し、
前記圧着部に、前記導体露出部及び前記絶縁被覆の先端近傍を挿入し、
少なくとも前記圧着部と前記導体露出部とを、前記導体圧着部が前記被覆圧着部よりも断面積の小さい筒状となるように圧着し、
前記圧着端子と前記被覆電線とが圧着接続した圧着接続状態において、
前記長手方向における前記絶縁被覆と前記圧着部の端部との境界近傍に、
前記被覆圧着部の外周面から前記絶縁被覆の外周面にかけて前記長手方向に沿うとともに、前記絶縁被覆の周方向全周に沿って連続する止水部を形成する
圧着接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用ワイヤーハーネスのコネクタ等に装着されるような圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に装備された電装機器は、被覆電線を束ねたワイヤーハーネスを介して、別の電装機器や電源装置と接続して電気回路を構成している。この際、ワイヤーハーネスと電装機器や電源装置とは、それぞれに装着したコネクタ同士を雌雄嵌合することで接続されている。そして、コネクタの内部には、被覆電線と圧着端子とを接続した圧着接続構造体における圧着端子が装着されている。
【0003】
このようなコネクタは、様々な環境下で使用されているため、雰囲気温度の変化による結露などによって意図しない水分が被覆電線の表面に付着することがある。そして、被覆電線の表面を伝ってコネクタ内部、及び圧着端子に水分が侵入すると、被覆電線の先端より露出している電線導体の表面が腐食するという問題がある。
そこで、圧着端子で圧着された電線導体への水分の侵入を防止する様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の圧着端子は、被覆電線における電線導体の露出部分、及び被覆体の前端近傍を囲繞して圧着部を形成して、被覆電線を圧着接続するバレル片を備えるとともに、バレル片における被覆体側の内面に、被覆電線の長手方向と直交する方向に沿って略帯状の幅方向シールを設けている。この幅方向シールにより、特許文献1の圧着端子は、被覆体側から圧着部の内部に水分が侵入することを防止するとされている。
【0005】
しかしながら、自動車のエンジンルームなどのように過酷な環境下において、特許文献1の圧着端子は、経年劣化や熱影響によって、幅方向シールの接着力が低下して、止水性が低下することがある。
また、幅方向シールの代わりに、例えば、バレル片の内面に凹凸形状のセレーションを形成し、凹凸形状が被覆体に食い込むことで止水性を向上した圧着端子の場合、熱影響によって圧着端子が熱膨張する、あるいは絶縁被覆の劣化が促進することで、被覆圧着部が絶縁被覆を圧縮する圧縮力が低下することがある。これにより、圧着接続構造体は、被覆圧着部と絶縁被覆との間に水分の侵入経路が形成されるおそれがあった。
【0006】
このため、圧着部の内周面と絶縁被覆の外周面との隙間を閉塞するように、被覆電線に対して圧着端子を圧着のみによって接続した圧着接続構造体では、絶縁被覆側から圧着部の内部に水分が侵入して、安定した止水性を確保できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−69449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、絶縁被覆側からの水分の侵入を確実に防止することができる圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、導電性の電線導体を絶縁性の絶縁被覆で被覆した被覆電線と、少なくとも、前記絶縁被覆の先端近傍を除去して前記電線導体を露出させた導体露出部の圧着接続を許容する圧着部を有する圧着端子とが備えられ、前記圧着部と前記導体露出部が圧着して接続された圧着接続構造体であって、前記圧着端子における前記圧着部は、前記導体露出部及び前記絶縁被覆の先端近傍の挿入が許容される、前記被覆電線の長手方向に延びる略筒状のクローズドバレル形式で構成されるとともに、挿入された前記絶縁被覆を圧着する被覆圧着部と、前記導体露出部を圧着する導体圧着部と、前記圧着部における前記導体露出部側に、前記長手方向に向けて延設するとともに、前記長手方向における先方側を封止した封止部とが、前記長手方向の後方からこの順番に構成され、前記長手方向における前記絶縁被覆と前記被覆圧着部の後方端部との境界近傍に、前記長手方向に沿って形成した止水部が備えられ、前記止水部は、前記被覆圧着部及び前記絶縁被覆の境界線を跨ぐとともに、前記被覆圧着部の外周面から前記絶縁被覆の外周面までを周方向の全周に沿って連続して覆うように形成され、前記導体圧着部が前記被覆圧着部よりも断面積が小さい筒状で構成され、前記封止部は、前記導体圧着部における前記長手方向の先方側を板状に閉塞されるとともに、前記長手方向と交差する幅方向に沿って溶接された溶接封止部を有することを特徴とする。
【0010】
上記止水部は、防水性を有する合成樹脂材などで構成することができ、電線導体の周方向における全周、あるいは周方向における一部の範囲に形成することができる。また、止水部は、塗布やモールド成形などによって形成することができる。
【0011】
この発明により、絶縁被覆側からの水分の侵入を確実に防止することができる。
具体的には、少なくとも圧着部の外周面から絶縁被覆の外周面にかけて連続するように形成しているため、止水部は、圧着部の外周面、圧着部と絶縁被覆との段差、及び絶縁被覆の外周面に密着することができる。
【0012】
このため、例えば、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続した場合、圧着部の内外径変化や絶縁被覆の外径変化などによって、圧着部が絶縁被覆を圧縮する圧縮力が低下し、圧着部と絶縁被覆との間に水分の侵入経路が形成されても、圧着接続構造体は、止水部により絶縁被覆側から圧着部の内部への水分の侵入を防止することができる。
【0013】
あるいは、配索状態や振動によって被覆電線が湾曲することで、圧着部と絶縁被覆との間に隙間が生じても、圧着接続構造体は、止水部により絶縁被覆側からの圧着部への水分の侵入を防止することができる。
これにより、圧着接続構造体、及び圧着接続構造体の製造方法は、長期間に渡って安定した止水性を確保することができるため、安定した導電性を確保することができる。
【0014】
加えて、圧着部と絶縁被覆とを熱収縮チューブで覆った場合、熱収縮チューブを装着する工程、及び熱収縮チューブを過熱する工程が必要であるのに対して、圧着接続構造体、及び圧着接続構造体の製造方法は、例えば、塗布やモールド成形などによって、止水部を容易に形成することができる。
【0015】
さらに、例えば圧着部における導体露出部側の端部をシールする、あるいは封止することで、圧着部の長手方向両端から内部に水分が侵入することを確実に防止することができる。
従って、圧着接続構造体、及び圧着接続構造体の製造方法は、長期間に渡って絶縁被覆側からの水分の侵入を確実に防止することができ、安定した導電性を確保することができる。
【0016】
またこの発明により、圧着接続構造体は、より容易に止水性を向上するとともに、より安定した導電性を確保することができる。
具体的には、圧着部と絶縁被覆との境界が露出した圧着状態では外気と触れることにより、圧着部の腐食や絶縁被覆の劣化が生じることがある。このため、例えば、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続した場合、圧着部と絶縁被覆との間に隙間が生じて止水性が低下するおそれがある。
【0017】
これに対して、止水部を周方向における全周に形成することで、圧着接続構造体は、絶縁被覆と圧着部の端部との境界近傍において、圧着部及び絶縁被覆が外気と直接的に接触することを防止できる。このため、圧着接続構造体は、外気と触れることによる圧着部の腐食や絶縁被覆の劣化を止水部によって防止することができる。これにより、圧着接続構造体は、長期間に渡って安定した止水性、及び導電性を確保することができる。
【0018】
さらに、周方向の全周に止水部を形成することで、圧着接続構造体は、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続することなく、絶縁被覆側からの水分の侵入を防止することができる。このため、圧着接続構造体は、例えば、圧着部の内面における絶縁被覆と接する部分にセレーションを形成する、あるいは圧着部の内面と絶縁被覆との間に接着材を介在させることなどを不要にすることができる。
従って、圧着接続構造体は、止水部を周方向に形成することで、より容易に止水性を向上するとともに、より安定した導電性を確保することができる。
【0019】
またこの発明により、圧着端子は、圧着部における導体露出部側の開口からの水分の侵入を防止することができる。
さらに、封止部、及び上述の止水部により、圧着接続構造体は、圧着状態における圧着部の内部を密閉状態にすることができる。これにより、圧着接続構造体は、圧着部の内部への水分の侵入をより確実に防止することができる。
【0020】
従って、圧着接続構造体は、圧着状態における圧着部の内部を密閉状態にすることで、確実な止水性を確保するととともに、より安定した導電性を確保することができる。
【0021】
この発明の態様として、前記止水部を、硬化性の合成樹脂材を塗布するとともに、硬化させて形成することができる。
上記合成樹脂材は、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、あるいはアクリル系樹脂などとすることができる。
上記硬化させるとは、熱硬化させる、紫外線硬化させる、湿気硬化させる、空気遮断により硬化させる、あるいは化学反応などにより硬化させることを含むことができる。
【0022】
より詳しくは、上記硬化性の合成樹脂は、例えば、熱、紫外線、外力などの外的要因により誘発される化学反応によって、又は、硬化剤、水分などの外的要因との化学反応によって、硬化する樹脂(化学反応型硬化樹脂)とすることができる。
化学反応型硬化樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線(UV)硬化樹脂、硬化剤混合型樹脂、湿気硬化型樹脂、嫌気硬化型樹脂、或いは、加圧により硬化する加圧硬化樹脂を挙げることができる。
【0023】
具体的には、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどすることができる。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)などすることができる。
【0024】
また、紫外線(UV)硬化樹脂としては、例えば、アクリルレート、不飽和ポリエステルを主成分とするラジカル型、又は、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテルを主成分とするカチオン型などすることができる。
例えば、ラジカル型としてのUV硬化型シリコン樹脂の場合は、主成分である多官能性シリコンオリゴマーに、光重合開始剤を含有させたものであり、紫外線の照射を受けると、この光重合開始剤が励起状態となって前記シリコンオリゴマーを重合させるためのラジカルを生成する構成となっている。
【0025】
また、硬化剤混合型樹脂としては、エポキシ樹脂などの本剤と硬化剤との2液を混合させて硬化する樹脂などすることができる。
また、湿気硬化型樹脂は、触媒の存在下、例えば、空気中の湿気と反応して硬化する樹脂であり、例えば、湿気硬化型シリコン樹脂や、湿気硬化型ウレタン系接着性樹脂などすることができる。
また、嫌気硬化型樹脂は、金属部で空気を遮断すると硬化する樹脂であり、例えば、アクリレート系(アクリル系樹脂)などすることができる。
【0026】
この発明により、圧着接続構造体は、外的要因による止水性の低下をより確実に防止して、安定した止水性と導電性とを確保することができる。
具体的には、例えば、圧着端子及び被覆電線を熱収縮チューブで覆った場合、自動車のような過酷な使用環境下では、熱収縮チューブが劣化する、あるいは熱影響によって熱収縮チューブが軟化したり、膨張収縮することで、安定した止水性を確保できないおそれがある。
【0027】
これに対して、合成樹脂で止水部を形成した場合、高温、低温、高湿度、紫外線等の使用環境に適した合成樹脂を選定することで、圧着接続構造体は、止水性が低下することを防止できる。このため、熱収縮チューブで覆って止水性を確保した場合に比べて、圧着接続構造体は、自動車のような過酷な使用環境下であっても、長期間に渡って安定した止水性を確保することができる。
【0028】
さらに、振動などによる外力が被覆電線に加わった際、圧着接続構造体は、硬化させた止水部によって、圧着部における絶縁被覆側の端部に対する被覆電線の揺動角を小さくすることができる。このため、圧着接続構造体は、圧着部の端部と接触して絶縁被覆が損傷することを防止するとともに、圧着部の外周面及び絶縁被覆の外周面から止水部が容易に剥離することを防止できる。
従って、圧着接続構造体は、合成樹脂材を硬化させて止水部を形成することで、外的要因による止水性の低下を防止するとともに、より長期間に渡って安定した止水性と導電性とを確保することができる。
【0029】
また、この発明の態様として、前記圧着部と前記絶縁被覆とを圧着接続した状態において、前記止水部を、前記絶縁被覆の周方向における所定の範囲に形成することができる。
上記所定の範囲は、圧着部による絶縁被覆の圧縮が不十分となる範囲などとすることができる。
【0030】
この発明により、圧着接続構造体は、重量やサイズの増加を抑えて、より安定した止水性を確保することができる。
具体的には、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続することにより、圧着接続構造体は、圧着部が絶縁被覆を圧縮することで、圧着部の内周面と絶縁被覆の外周面との隙間を閉塞することができる。
【0031】
この際、例えば、一対の雌雄金型で圧着部と絶縁被覆とを圧着接続すると、一対の雌雄金型の形状に沿って圧着端子の圧着部が塑性変形するため、圧着後の圧着部の外周面には、一対の雌雄金型の境界部分に沿ってパーティングラインのように突出した突出部分が形成される。
【0032】
この圧着部における突出部分は、他の部分に対して塑性変形が十分でないため、他の部分に対して絶縁被覆を圧縮する圧縮力が小さい部分となる。換言すると、圧着部における突出部分は、絶縁被覆の反発力が不足して絶縁被覆との密着性が低下した部分となる。このため、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続しても、圧着接続構造体は、絶縁被覆の圧縮率が小さい部分を介して圧着部の内部に水分が侵入するおそれがあった。
【0033】
これに対して、周方向において、圧着部による絶縁被覆の圧縮が不十分となる範囲、つまり上述したような突出部分に対応する範囲に止水部を形成することにより、圧着接続構造体は、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続した際における止水性を向上することができる。
【0034】
さらに、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続することで、圧着接続構造体は、必要最低限の範囲に止水部を形成することができる。このため、圧着接続構造体は、止水部の形成に要する工数を削減するとともに、重量やサイズの増加を抑制することができる。
従って、圧着接続構造体は、圧着部と絶縁被覆とを圧着接続するとともに、止水部を形成することで、重量の増加を抑えて、より安定した止水性を確保することができる。
【0035】
また、この発明の態様として、前記電線導体を、アルミ系材料で構成するとともに、少なくとも前記圧着部を、銅系材料で構成することができる。
この発明により、銅線による電線導体を有する被覆電線に比べて軽量化できるとともに、上述した確実な止水性により、いわゆる異種金属腐食(以下において電食という)を防止することができる。
【0036】
詳しくは、被覆電線の電線導体に従来用いられていた銅系材料をアルミニウムあるいはアルミニウム合金などのアルミ系材料に置き換え、そのアルミ系材料製の電線導体を圧着端子に圧着した場合においては、端子材料の錫めっき、金めっき、銅合金等の貴な金属との接触により、卑な金属であるアルミ系材料が腐食される現象、すなわち電食が問題となる。
【0037】
なお、電食とは、貴な金属と卑な金属とが接触している部位に水分が付着すると、腐食電流が生じ、卑な金属が腐食、溶解、消失等する現象である。この現象により、圧着端子の圧着部に圧着されたアルミ系材料製の導体部分が腐食、溶解、消失し、やがては電気抵抗が上昇する。その結果、十分な導電機能を果たせなくなるという問題があった。
しかしながら、上述した確実な止水性により、銅系材料による導体部分を有する被覆電線に比べて軽量化を図りながら、いわゆる電食を防止することができる。
【0038】
また、この発明は、上述した圧着接続構造体における圧着端子をコネクタハウジング内に配置したコネクタとすることができる。
この発明により、圧着端子と電線導体を構成する金属種によらず、安定した導電性を確保したまま圧着端子を接続することができる。
【0039】
詳述すると、例えば、雌型のコネクタと雄型のコネクタを互いに嵌合して、各コネクタのコネクタハウジング内に配置した圧着端子を互いに接続する際、止水性を確保したまま各コネクタの圧着端子を互いに接続することができる。
従って、コネクタは、確実な導電性を備えた接続状態を確保することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、絶縁被覆側からの水分の侵入を確実に防止できる圧着接続構造体、コネクタ、及び圧着接続構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】圧着接続構造体における上方から外観を示す外観斜視図。
図2】被覆電線、及び圧着端子における上方から外観を示す外観斜視図。
図3】圧着部における溶接について説明する説明図。
図4図1中のA−A矢視断面図。
図5】圧着端子と被覆電線との圧着工程を説明する説明図。
図6】止水部の形成工程を説明する説明図。
図7】メス型コネクタとオス型コネクタとの接続対応状態を示す外観斜視図。
図8】別の圧着接続構造体におけるA−A矢視断面図。
図9】実施例2における圧着接続構造体の上方からの外観を示す外観斜視図。
図10】実施例2における圧着接続構造体の底面を示す底面図。
図11図9中のB−B矢視断面図。
図12図11中のC−C矢視における圧着接続構造体の一部断面を示す部分断面図。
図13】実施例2の圧着工程における圧着前のB−B矢視断面図。
図14】実施例2の圧着工程における圧着接続状態のB−B矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0043】
まず、実施例1における圧着接続構造体1について、図1から図4を用いて詳しく説明する。
なお、図1は圧着接続構造体1における上方からの外観斜視図を示し、図2は被覆電線100、及び圧着端子200における上方からの外観斜視図を示し、図3は圧着部230における溶接について説明する説明図を示し、図4図1中のA−A矢視断面図を示している。
【0044】
また、図1中において、矢印Xは長手方向を示し(以下「長手方向X」とする)、矢印Yは幅方向を示している(以下、「幅方向Y」とする)。さらに、長手方向Xにおいて、後述するボックス部210側(図1中の左側)を前方とし、ボックス部210に対して後述する被覆電線100側(図1中の右側)を後方とする。加えて、図1中の上側を上方とし、図1中の下側を下方とする。
【0045】
圧着接続構造体1は、図1に示すように、被覆電線100と、被覆電線100に対して圧着接続した圧着端子200と、圧着端子200の後端近傍に設けた止水部300とで構成している。
被覆電線100は、図2に示すように、複数のアルミニウム素線101aを束ねたアルミニウム芯線101を、絶縁性樹脂で構成する絶縁被覆102で被覆して構成している。例えば、アルミニウム芯線101は、断面が0.75mmとなるように、アルミニウム合金線を撚って構成している。さらに、被覆電線100は、先端から長手方向Xに所定の長さだけ絶縁被覆102を剥がしてアルミニウム芯線101を露出させることで導体露出部103を構成している。
【0046】
圧着端子200は、図1及び図2に示すように、メス型端子であり、長手方向Xの前方から後方に向かって、図示を省略するオス型端子のオスタブの挿入を許容するボックス部210と、ボックス部210の後方で、所定の長さのトランジション部220を介して配置された圧着部230とを一体に構成している。
【0047】
この圧着端子200は、表面が錫メッキ(Snメッキ)された黄銅等の銅合金条(図示せず)を、平面展開した端子形状に打ち抜いた後、中空四角柱体のボックス部210と後方視略O型の圧着部230とからなる立体的な端子形状に曲げ加工するとともに、圧着部230を溶接して構成したクローズドバレル形式の端子である。
【0048】
ボックス部210は、図1及び図2に示すように、底面部211(図4参照)における幅方向Yの両側に立設された側面部212の一方を、他方の端部に重なり合うように折り曲げて、長手方向Xの前方側から見て略矩形の倒位の中空四角柱体で構成されている。
【0049】
さらに、ボックス部210の内部には、底面部211における長手方向Xの前方側を延設して、長手方向Xの後方に向かって折り曲げて形成するとともに、挿入されるオス型端子の挿入タブ(図示省略)に接触する弾性接触片213を備えている(図4参照)。
【0050】
圧着部230は、図1及び図4に示すように、絶縁被覆102を圧着する被覆圧着部231と、導体露出部103を圧着する導体圧着部232とを一体で構成するとともに、導体圧着部232より前方端部を略平板状に押し潰すように変形させた封止部233とで構成している。なお、圧着部230は、長手方向Xの後方から、被覆圧着部231、導体圧着部232、及び封止部233の順番に配置して形成している。
【0051】
この圧着部230は、図3に示すように、端子形状に打ち抜いた銅合金条を被覆電線100の外径と略同等、もしくは被覆電線100の外径より僅かに大きい内径で被覆電線100の外周を包囲するように丸めるとともに、丸めた端部230a,230b同士を突き合わせて長手方向Xの溶接個所W1に沿って溶接して後方視略O型に形成している。換言すると、圧着部230は、幅方向Yにおける断面形状を閉断面形状に形成している。
【0052】
さらに、圧着部230の封止部233は、図3に示すように、圧着部230の長手方向Xの前端を閉塞するように幅方向Yの溶接個所W2に沿って溶接して封止している。
つまり、圧着部230は、長手方向Xの前端、及び端部230a,230b同士を溶着して閉塞して、長手方向Xの後方に開口を有する略筒状に形成している。
【0053】
止水部300は、図1及び図4に示すように、圧着部230の後端近傍において、被覆圧着部231及び被覆電線100の外周面に密着するとともに、全周を覆うように形成している。
より詳しくは、止水部300は、長手方向Xにおいて、被覆圧着部231における所定の長さの範囲と、絶縁被覆102における所定の長さの範囲とを連続して覆うように形成している。
【0054】
さらに、止水部300は、幅方向Yの断面において、圧着部230及び被覆電線100の周方向における全周を覆うように形成している。なお、止水部300は、防水性を有する硬化性の合成樹脂、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂で構成している。
【0055】
次に、このような構成の圧着端子200の圧着部230に被覆電線100を挿入し、圧着部230を加締めて圧着するとともに、止水部300を形成して圧着接続構造体1を構成する工程について、図5及び図6を用いて詳しく説明する。
なお、図5は圧着端子200と被覆電線100との圧着工程を説明する説明図を示し、図6は止水部300の形成工程を説明する説明図を示している。
【0056】
また、図5(a)は圧着前における圧着端子200と被覆電線100とのA−A矢視断面図を示し、図5(b)は圧着接続状態における圧着端子200と被覆電線100とのA−A矢視断面図を示している。
さらに、図5において、要部を明確にするため、圧着端子200におけるボックス部210の図示を省略している。
【0057】
まず、圧着端子200の圧着部230に対して、導体露出部103を形成した被覆電線100を、図5(a)に示すように、導体露出部103が導体圧着部232に到達するまで後方から前方へ挿入する。この際、被覆電線100の外径に対して圧着部230の内径が略同等、あるいは僅かに大きく形成されているため、被覆電線100は、図5(a)に示すように、圧着部230に対して緩挿される。
【0058】
その後、被覆電線100を挿入した圧着端子200の圧着部230に対して、上下方向に分割された一対の圧着金型10で挟み込むようにして加締める。
この一対の圧着金型10は、図5に示すように、圧着端子200に対して下方に位置するアンビル11、及び圧着端子200に対して上方に位置するクリンパ12で構成している。さらに、上下方向に組み合わせた圧着金型10の内面形状は、圧着後における導体圧着部232及び被覆圧着部231の外面形状に応じた形状に形成されている。
【0059】
この一対の圧着金型10で、被覆電線100を挿入した圧着端子200の圧着部230を挟み込むようにして加締めて、導体露出部103及び絶縁被覆102を圧着接続して圧着接続状態を構成する。
より詳しくは、圧着接続状態における圧着端子200及び被覆電線100は、図5(b)に示すように、圧着金型10で導体圧着部232を加締めることで、導体圧着部232と導体露出部103とが導通可能に圧着接続される。さらに、圧着金型10で被覆圧着部231を加締めることで、被覆圧着部231が絶縁被覆102を圧縮するようにして圧着接続される。
【0060】
その後、圧着接続状態における圧着端子200及び被覆電線100に対して、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布して止水部300を形成する。
具体的には、例えば、図6に示すように、エポキシ樹脂及び硬化剤を射出する塗布機20などを用いて、上述した被覆圧着部231及び絶縁被覆102の範囲に対して、硬化剤を添加したエポキシ樹脂を塗布するとともに、エポキシ樹脂を硬化させて止水部300を形成する。
【0061】
この際、圧着接続状態における圧着端子200及び被覆電線100を、長手方向Xを回転軸とする回転方向Rに回転させて、圧着部230における被覆圧着部231の外周面、圧着部230と絶縁被覆102との段差、及び絶縁被覆102の外周面を覆うようにして、硬化剤を添加したエポキシ樹脂を塗布する。
【0062】
このようにして圧着端子200の圧着部230を加締めて被覆電線100を圧着接続して、導体露出部103と導体圧着部232との導通性を確保するとともに、圧着部230の後端における止水性を確保した圧着接続構造体1を構成する。
【0063】
次に、上述した圧着接続構造体1をコネクタハウジングの内部に装着したコネクタについて図7を用いて説明する。
なお、図7はメス型コネクタ31とオス型コネクタ41との接続対応状態の外観斜視図を示し、図7中においてオス型コネクタ41を二点鎖線で図示している。
【0064】
メス型コネクタハウジング32は、圧着端子200を長手方向Xに沿って装着可能な複数の開口を内部に有して、幅方向Yにおける断面形状が略矩形状のボックス形状に形成している。このようなメス型コネクタハウジング32の内部に対して、上述した圧着端子200で構成した複数の圧着接続構造体1を長手方向Xに沿って装着してメス型コネクタ31を備えたワイヤーハーネス30を構成する。
【0065】
また、メス型コネクタハウジング32に対応するオス型コネクタハウジング42は、メス型コネクタハウジング32と同様に、オス型の圧着端子(図示省略)を装着可能な複数の開口を内部に有して、幅方向Yにおける断面形状が略矩形状であってメス型コネクタハウジング32に対して凹凸対応して接続可能に形成している。
【0066】
このようなオス型コネクタハウジング42の内部に対して、オス型の圧着端子で構成した圧着接続構造体1を長手方向Xに沿って装着してオス型コネクタ41を備えたワイヤーハーネス40を構成する。
そして、メス型コネクタ31とオス型コネクタ41とを嵌合することで、ワイヤーハーネス30とワイヤーハーネス40とを接続する。
【0067】
以上のような構成を実現する圧着接続構造体1、メス型コネクタ31、オス型コネクタ41、及び圧着接続構造体1の製造方法は、絶縁被覆102側からの水分の侵入を確実に防止することができる。
具体的には、圧着部230の外周面から絶縁被覆102の外周面にかけて連続するように塗布しているため、止水部300は、圧着部230の外周面、圧着部230と絶縁被覆102との段差、及び絶縁被覆102の外周面に密着することができる。
【0068】
このため、被覆圧着部231の内外径変化や絶縁被覆102の外径変化などによって被覆圧着部231が絶縁被覆102を圧縮する圧縮力が低下し、被覆圧着部231と絶縁被覆102との間に水分の侵入経路が形成された場合、圧着接続構造体1は、止水部300により絶縁被覆102側から圧着部230の内部への水分の侵入を防止することができる。
【0069】
あるいは、配索状態や振動によって被覆電線100が湾曲することで、被覆圧着部231と絶縁被覆102との間に隙間が生じた場合、圧着接続構造体1は、止水部300により絶縁被覆102側から圧着部230の内部への水分の侵入を防止することができる。
これにより、圧着接続構造体1、及び圧着接続構造体1の製造方法は、長期間に渡って安定した止水性を確保することができるため、安定した導電性を確保することができる。
【0070】
加えて、例えば、圧着部230と絶縁被覆102とを熱収縮チューブで覆った場合、熱収縮チューブを装着する工程、及び熱収縮チューブを過熱する工程が必要であるのに対して、圧着接続構造体1、及び圧着接続構造体1の製造方法は、塗布によって止水部300を容易に形成することができる。
従って、圧着接続構造体1、及び圧着接続構造体1の製造方法は、長期間に渡って絶縁被覆102側からの水分の侵入を確実に防止することができ、安定した導電性を確保することができる。
【0071】
また、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布するとともに、熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させて止水部300を形成することにより、圧着接続構造体1は、外的要因による止水性の低下をより確実に防止して、安定した止水性と導電性とを確保することができる。
具体的には、例えば、圧着端子200及び被覆電線100を熱収縮チューブで覆った場合、自動車のような過酷な使用環境下では、熱収縮チューブの劣化が促進する、あるいは熱影響によって熱収縮チューブが軟化することで、安定した止水性を確保できないおそれがある。
【0072】
これに対して、熱硬化エポキシ樹脂で止水部300を形成したことで、圧着接続構造体1は、熱によって止水部300が軟化して、止水性が低下することを防止できる。このため、圧着接続構造体1は、自動車のような過酷な使用環境下であっても、長期間に渡って安定した止水性を確保することができる。
【0073】
さらに、振動などによる外力が被覆電線100に加わった際、圧着接続構造体1は、硬化した止水部300によって、被覆圧着部231の後端近傍における被覆電線100の揺動角を小さくすることができる。このため、圧着接続構造体1は、被覆圧着部231の後端と接触して絶縁被覆102が損傷することを防止するとともに、被覆圧着部231の外周面及び絶縁被覆102の外周面から止水部300が容易に剥離することを防止できる。
【0074】
従って、圧着接続構造体1は、熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させて止水部300を形成することで、外的要因による止水性の低下を防止するとともに、より長期間に渡って安定した止水性と導電性とを確保することができる。
【0075】
また、周方向における全周に止水部300を形成したことにより、圧着接続構造体1は、より容易に止水性を向上するとともに、より安定した導電性を確保することができる。
具体的には、例えば、圧着部230と絶縁被覆102との境界が露出した圧着状態では、長期間に渡って外気と触れることにより、被覆圧着部231の腐食や絶縁被覆102の劣化が生じることがある。このため、被覆圧着部231と絶縁被覆102との間に隙間が生じて止水性が低下するおそれがある。
【0076】
これに対して、止水部300を周方向における全周に形成することで、圧着接続構造体1は、圧着部230の後端近傍において、被覆圧着部231及び絶縁被覆102が外気と直接的に接触することを防止できる。このため、圧着接続構造体1は、外気と触れることによる被覆圧着部231の腐食や絶縁被覆102の劣化を止水部300によって防止することができる。
【0077】
これにより、圧着接続構造体1は、長期間に渡って安定した止水性、及び導電性を確保することができる。
従って、圧着接続構造体1は、止水部300を周方向に形成することで、より容易に止水性を向上するとともに、より安定した導電性を確保することができる。
【0078】
また、圧着部230に封止部233を備えたことにより、圧着端子200は、圧着部230における導体露出部103側の開口からの水分の侵入を防止することができる。さらに、封止部233、及び止水部300により、圧着接続構造体1は、圧着状態における圧着部230の内部を密閉状態にすることができる。これにより、圧着接続構造体1は、圧着部230の内部への水分の侵入をより確実に防止することができる。
従って、圧着接続構造体1は、圧着状態における圧着部230の内部を密閉状態にすることで、確実な止水性を確保するととともに、より安定した導電性を確保することができる。
【0079】
また、被覆電線100の芯線をアルミニウム合金で構成するとともに、圧着部230を銅合金で構成することにより、圧着接続構造体1は、銅線による芯線を有する被覆電線に比べて軽量化することができる。さらに、封止部233、及び止水部300による確実な止水性により、異種金属で構成された圧着端子200と被覆電線100とによる電食の発生を防止することができる。
【0080】
また、圧着接続構造体1における圧着端子200をメス型コネクタハウジング32内に配置したメス型コネクタ31を構成したことにより、メス型コネクタハウジング32の内に配置した圧着端子200にオス型コネクタ41の圧着端子を接続する際、止水性を確保したままメス型コネクタ31の圧着端子200をオス型コネクタ41に接続することができる。
従って、メス型コネクタ31は、確実な導電性を備えた接続状態を確保することができる。
【0081】
なお、上述の実施例1において、圧着接続状態における圧着端子200及び被覆電線100を回転させて熱硬化性エポキシ樹脂を塗布したが、これに限定せず、塗布機20を回転させる、あるいは手作業で熱硬化性エポキシ樹脂を塗布してもよい。
また、導体露出部103及び絶縁被覆102を圧着部230で圧着接続する構成としたが、これに限定せず、少なくとも導体圧着部232で導体露出部103を圧着接続する構成であればよい。
【0082】
例えば、別の圧着接続構造体1におけるA−A矢視断面図を示す図8のように、導体圧着部232と導体露出部103とを圧着接続し、被覆圧着部231と絶縁被覆102とを圧着接続していない圧着接続状態において、止水部300を周方向の全周に形成した圧着接続構造体1であってもよい。
【0083】
この際、周方向の全周に止水部300を形成することで、圧着接続構造体1は、圧着部230と絶縁被覆102とを圧着接続することなく、絶縁被覆102側からの水分の侵入を防止することができる。このため、圧着接続構造体1は、例えば、圧着部230の内面にセレーションを形成する、あるいは圧着部230の内面と絶縁被覆102との間に接着材を介在させることを不要にすることができる。
【実施例2】
【0084】
次に、上述の実施例1に対して、止水部の形成範囲が異なる圧着接続構造体2について、図9から図12を用いて詳しく説明する。
なお、図9は実施例2における圧着接続構造体2の上方からの外観斜視図を示し、図10は実施例2における圧着接続構造体2の底面図を示し、図11図9中のB−B矢視断面図を示し、図12図11中のC−C矢視における圧着接続構造体2の部分断面図を示している。
また、上述の実施例1と同じ構成は同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0085】
実施例2における圧着接続構造体2は、図9に示すように、被覆電線100と、被覆電線100に対して圧着接続した圧着端子200と、圧着端子200の後端近傍に設けた2つ一組の止水部301とで構成している。
圧着端子200は、上述の実施例1における圧着端子200と同一の構成であるが、図11に示すように、被覆電線100を圧着した圧着接続状態において、幅方向Yにおける外側に向けて突出した2つの突出部分234が被覆圧着部231に形成されている。なお、突出部分234については、後ほど詳しく説明する。
【0086】
止水部301は、図10から図12に示すように、圧着部230の後端近傍において、被覆圧着部231及び被覆電線100の外周面に密着するとともに、突出部分234を覆うように形成している。
より詳しくは、止水部300は、長手方向Xにおいて、被覆圧着部231における所定の長さの範囲と、絶縁被覆102における所定の長さの範囲とを連続して覆うように形成している。さらに、止水部300は、幅方向Yの断面において、周方向における突出部分234の近傍の範囲を覆うように形成している。なお、止水部300は、防水性を有する硬化性の合成樹脂、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂で構成している。
【0087】
次に、このような構成の圧着端子200の圧着部230に被覆電線100を挿入し、圧着部230を加締めて圧着するとともに、止水部301を形成して圧着接続構造体2を構成する工程について、図13及び図14を用いて詳しく説明する。
なお、図13は実施例2の圧着工程における圧着前のB−B矢視断面図を示し、図14は実施例2の圧着工程における圧着接続状態のB−B矢視断面図を示している。
【0088】
まず、上述の実施例1と同様に、圧着端子200の圧着部230に対して、長手方向Xの後方から、導体露出部103が導体圧着部232に到達するまで被覆電線100を挿入する。
そして、被覆電線100を挿入した圧着部230を所定の圧着金型で加締めて、導体露出部103と導体圧着部232とを圧着接続するとともに、絶縁被覆102と被覆圧着部231とを圧着接続する。この際、被覆圧着部231を、図13に示すように、上下二分割された一対の雌雄金型50で加締めて圧着する。
【0089】
この一対の雌雄金型50は、図13及び図14に示すように、被覆圧着部231を圧着可能な長手方向Xの長さを有して、上下二分割されたオス金型51とメス金型52とで構成している。
オス金型51は、幅方向Yにおける断面形状が、圧着端子200における圧着部230の外径より僅かに小さい幅方向Yの長さを有する断面略矩形に形成している。そして、オス金型51の上面には、幅方向Yにおける両端に設けた平面部51aの間に介在して、圧着部230の外径に対して僅かに小さい直径で下方に向けて凹設した断面略半円状のオス側凹部51bを形成している。
【0090】
メス金型52は、オス金型51が嵌合可能な大きさで、圧着部230の外径に対して僅かに小さい直径で略逆U字状に凹設したメス側凹部52aによって、幅方向Yにおける断面形状を略門型形状に形成している。
なお、オス側凹部51b、及びメス側凹部52aは、オス金型51とメス金型52とを上下方向で組み合わせた際、断面略円形状の内面形状となるよう形成している。
【0091】
被覆電線100を挿入した圧着部230の被覆圧着部231に対して、上述した一対の雌雄金型50を上下方向から押圧して加締めると、被覆圧着部231は、図14に示すように、一対の雌雄金型50の内面形状に沿うようにして塑性変形する。
より詳しくは、被覆圧着部231の内周面は、図14に示すように、被覆電線100の絶縁被覆102を圧縮するようにして縮径される。一方、被覆圧着部231の外周面は、オス側凹部51b及びメス側凹部52aに沿うように縮径するとともに、オス金型51の2つの平面部51aと断面略逆U字状のメス側凹部52aとによって、幅方向Yに突出して長手方向Xに延びる2つの突出部分234が形成される。
【0092】
この突出部分234は、幅方向Yの外側に向けて塑性変形しているため、被覆圧着部231の他の部分が絶縁被覆102を圧縮する圧縮力に対して、絶縁被覆102を圧縮する圧縮力が小さくなる。このため、突出部分234によって、被覆圧着部231には、その圧縮率が小さい低圧縮部分102aが形成される。
このように被覆電線100を挿入した圧着端子200の圧着部230を、一対の雌雄金型50で挟み込むようにして加締めて、導体露出部103及び絶縁被覆102の前端近傍を圧着接続して圧着接続状態を構成する。
【0093】
その後、圧着接続状態における圧着端子200及び被覆電線100に対して、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布して止水部301を形成する。
具体的には、例えば、エポキシ樹脂及び硬化剤を射出する塗布機(図示省略)などを用いて、上述した被覆圧着部231の突出部分234における後端近傍の範囲に対して、硬化剤を添加したエポキシ樹脂を塗布するとともに、エポキシ樹脂を硬化させて止水部301を形成する。
【0094】
この際、圧着接続状態の圧着端子200及び被覆電線100、あるいは塗布機を長手方向Xに移動させて、圧着部230における被覆圧着部231の外周面、圧着部230と絶縁被覆102との段差、及び絶縁被覆102の外周面に密着するように硬化剤を添加したエポキシ樹脂を塗布する。
このように圧着端子200の圧着部230を加締めて被覆電線100を圧着接続して、導体露出部103と導体圧着部232との導通性を確保するとともに、圧着部230の後端における止水性を確保した圧着接続構造体2を構成する。
【0095】
以上のような構成を実現する圧着接続構造体2は、重量やサイズの増加を抑えて、絶縁被覆102側からの水分の侵入を確実に防止することができる。
具体的には、被覆圧着部231と絶縁被覆102とを圧着接続することにより、圧着接続構造体2は、被覆圧着部231が絶縁被覆102を圧縮することで、被覆圧着部231の内周面と絶縁被覆102の外周面との隙間を閉塞することができる。
【0096】
この際、一対の雌雄金型50で被覆圧着部231と絶縁被覆102とを圧着接続すると、一対の雌雄金型50の内面形状に沿って圧着端子200の被覆圧着部231が塑性変形するため、圧着後の被覆圧着部231の外周面には、一対の雌雄金型50の境界部分に沿ってパーティングラインのように突出した2つの突出部分234が形成される。
【0097】
この被覆圧着部231における突出部分234は、他の部分に対して塑性変形が十分でないため、他の部分に対して絶縁被覆102を圧縮する圧縮力が小さい部分となる。換言すると、圧着部230における突出部分234は、絶縁被覆102の反発力が不足して絶縁被覆102との密着性が低下した部分となる。このため、被覆圧着部231と絶縁被覆102とを圧着接続しても、圧着接続構造体2は、低圧縮部分102aを介して圧着部230の内部に水分が侵入するおそれがあった。
【0098】
これに対して、周方向において、圧着部230による絶縁被覆102の圧縮が不十分となる範囲、つまり上述したような突出部分234近傍の範囲に止水部301を形成することにより、圧着接続構造体2は、被覆圧着部231と絶縁被覆102とを圧着接続した際における止水性を向上することができる。
【0099】
さらに、被覆圧着部231と絶縁被覆102とを圧着接続することで、圧着接続構造体2は、必要最低限の範囲に止水部301を形成することができる。このため、圧着接続構造体2は、止水部301の形成に要する工数を削減するとともに、重量やサイズの増加を抑制することができる。
従って、圧着接続構造体2は、被覆圧着部231と絶縁被覆102とを圧着接続するとともに、止水部301を形成することで、重量やサイズの増加を抑えて、より安定した止水性を確保することができる。
【0100】
なお、上述の実施例2において、突出部分234を覆うように止水部301を形成したが、これに限定せず、上述の実施例1と同様に周方向の全周を覆うように止水部を形成してもよい。
また、上述の実施例1及び実施例2において、塗布機を用いて熱硬化性エポキシ樹脂を塗布したが、これに限定せず、熱硬化性エポキシ樹脂を手作業で塗布してもよい。
【0101】
また、熱硬化性エポキシ樹脂を塗布して止水部300,301を形成したが、これに限定せず、止水部300,301を形成できる方法であれば適宜の方法としてもよい。例えば、モールド成形で止水部300,301を形成する、熱硬化性エポキシ樹脂を滴下して止水部300,301を形成する、あるいは熱硬化性エポキシ樹脂を噴射して止水部300,301を形成するなどしてもよい。
【0102】
また、硬化性の合成樹脂として熱硬化性エポキシ樹脂を用いて説明したが、これに限定せず、熱硬化する、紫外線硬化する、湿気硬化する、空気遮断により硬化する、あるいは化学反応により硬化するシリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、あるいはアクリル系樹脂などであってもよい。
【0103】
また、圧着端子200の被覆圧着部231における内周面に、長手方向Xにおける断面形状が凸凹状で、周方向に沿って溝状に形成したセレーションを設けてもよい。あるいは、被覆圧着部231の内周面と絶縁被覆102との間に、止水性を有する接着材などを設けてもよい。
【0104】
また、被覆電線100における芯線をアルミニウム合金とし、圧着端子200を黄銅等の銅合金としたが、これに限定せず、被覆電線100における芯線、及び圧着端子200を黄銅等の銅合金やアルミニウム合金などの同一金属で構成してもよい。
また、圧着端子200をメス型の圧着端子としたが、これに限定せず、メス型の圧着端子に対して長手方向Xに嵌合するオス型の圧着端子であってもよい。あるいは、ボックス部210ではなく略U字状あるいは環状の平板などであってもよい。
【0105】
また、端子形状に打ち抜いた銅合金条を丸めた端部230a,230b同士を突き合わせて溶着して圧着部230を形成したが、これに限定せず、重ね合わせた端部を溶着して一体にした閉断面形状の圧着部230であってもよい。
また、被覆圧着部231と導体圧着部232とが略同径の大きさとなるよう打ち抜いた銅合金条で圧着部230を形成したが、これに限定せず、被覆圧着部231及び導体圧着部232の内径がそれぞれ異なる大きさになるように打ち抜いた銅合金条で圧着部230を形成してもよい。
【0106】
また、圧着部230を円筒状に形成したが、これに限定せず、被覆電線100を挿入可能な閉断面形状であれば適宜の形状としてもよい。
また、圧着部230のアルミニウム芯線101側先端に封止部233を形成したが、これに限定せず、圧着部230の導体露出部103側先端を別部材でシールしてもよい。あるいは、封止部233などを設けず圧着部230の導体露出部103側先端が開口した圧着部230としてもよい。
【0107】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の電線導体は、実施形態のアルミニウム芯線101に対応し、
以下同様に、
硬化性の合成樹脂材は、熱硬化性エポキシ樹脂に対応し、
所定の範囲は、突出部分234の近傍に対応し、
コネクタハウジングは、メス型コネクタハウジング32、及びオス型コネクタハウジング42に対応し、
コネクタは、メス型コネクタ31、及びオス型コネクタ41に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0108】
1…圧着接続構造体
2…圧着接続構造体
31…メス型コネクタ
32…メス型コネクタハウジング
41…オス型コネクタ
42…オス型コネクタハウジング
100…被覆電線
101…アルミニウム芯線
102…絶縁被覆
103…導体露出部
200…圧着端子
230…圧着部
233…封止部
300…止水部
301…止水部
X…長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14