【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも、先端側の前記絶縁被覆を剥がして前記導体を露出させた導体先端部に対して、圧着端子における中空状に形成した圧着部をかしめて圧着接続した圧着接続構造体であって、
前記圧着部は、前記導体先端部を圧着して接続された導体圧着部と、前記絶縁被覆を圧着して接続された被覆圧着部とが長手方向に沿って先端側からこの順で一体に設けられ、前記導体圧着部は、前記長手方向と直交する直交断面において中央部分が窪んだU字形状に形成され、前記被覆圧着部の前記直交断面の形状が、多角形状に形成されたことを特徴とする。
【0009】
上述した構成によれば、被覆電線の先端側において絶縁被覆側から圧着部の内部への水分の浸入を確実に防止することができる。
詳しくは、導体先端部と圧着部とを圧着する際に、圧着部の外周に配置した上述した3つ以上の圧着構成型のそれぞれによって圧着部を圧着することにより、クリンパとアンビルとの2つ一組で成る従来の圧着構成型で圧着する場合と比較して、圧着に伴って圧着部に加わる荷重を圧着部の周方向全体において分散させた状態で圧着部を圧着できる。このため、例えば、圧着に伴って塑性変形した圧着部の肉が、互いに隣り合う圧着構成型間の隙間に入り込むことにより、圧着部の外周面にバリ、尖り、パーティングラインなど(以下、「バリ等」という。)のように大きく突出した突出部分が形成されることを防ぎ、圧着部を、円形状、又は円形状に近い多角形状に圧着することができる。
【0010】
従って、例えば、絶縁被覆と圧着部との圧着部分において、圧着部を絶縁被覆に対してしっかりと密着させることができ、絶縁被覆側から圧着部の内部への水分の浸入を確実に防止することができる。
【0011】
上述した構成によれば、直交断面における外周面にバリのような大きな突出部分が存在しない円形、又は略円形状
に近い多角形状の圧着部を備えた圧着接続構造体を構成することができる。
【0012】
この発明は、前記接続構造体を複数備えるとともに、前記接続構造体における前記圧着端子を収容可能なコネクタハウジングを備え、前記圧着端子を前記コネクタハウジング内に配置したワイヤハーネスであることを特徴とする。
【0013】
上述した構成によれば、直交断面における外周面にバリのような大きな突出部分が存在しない円形、又は略円形状の圧着部を備えた複数の圧着接続構造体を構成できるため、このような複数の圧着接続構造体をコネクタハウジングに確実に配置することができる。従って、止水性が高く、コネクタ部分がコンパクトであるワイヤハーネスを構成することができる。
【0014】
この発明は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも、先端側の前記絶縁被覆を剥離した導体先端部を、圧着端子における中空状に形成した圧着部に挿入した状態で、前記圧着部を圧着型でかしめて圧着する端子圧着装置であって、
前記圧着部をかしめるかしめ位置と
、該かしめ位置よりも径外方向で前記圧着部に対して離間した非かしめ位置との間において前記圧着型を移動させる移動手段が備えられ、
前記圧着型が、長手方向に沿って、前記導体先端部が圧着されて接続される導体圧着部と、前記絶縁被覆が圧着されて接続される被覆圧着部とが先端からこの順で一体に設けられた前記圧着部のうちの前記導体圧着部を、長手方向と直交する断面形状がU字状となるようにかしめて圧着する導体圧着型と、前記被覆圧着部をかしめて圧着する端子圧着型とで構成され、前記端子圧着型は、3以上の配置数で備えられ、前記被覆圧着部の外周側において周方向で隣り合うそれぞれが互いに面接触状態で配置され、前記被覆圧着部と対向する対向面に、前記被覆圧着部を圧着する圧着面が構成され、前記被覆圧着部と対向しない非対向面に、前記圧着面に沿って周方向で隣接する端子圧着型を摺動させる摺動面が構成され、それぞれの前記圧着面が、前記被覆圧着部を多角形状に囲繞するように形成されたことを特徴とする。
【0015】
またこの発明は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも、先端側の前記絶縁被覆を剥離した導体先端部を、圧着端子における中空状に形成した圧着部に挿入した状態で、前記圧着部をかしめて圧着する圧着型であって、前記圧着部をかしめて圧着する複数の圧着構成型を構成し、前記圧着構成型を、3以上の配置数で備えるとともに、前記圧着部の外周側に、周方向で隣り合うそれぞれが互いに面接触状態に配置し、前記圧着部をかしめるかしめ位置と、該かしめ位置よりも径外方向で前記圧着部に対して離間した非かしめ位置との間において、周方向で隣り合うそれぞれが互いに摺動しながら径方向に移動可能に構成し、前記圧着構成型における前記圧着部との対向面に、前記圧着部を圧着する圧着面を形成するとともに、前記圧着構成型における前記圧着部と対向しない非対向面に、周方向で隣接する圧着構成型における前記圧着面上を摺動する摺動面を形成したことを特徴とする。
【0016】
上述した構成によれば、被覆電線の先端側において絶縁被覆側から圧着部の内部への水分の浸入を確実に防止することができる。
詳しくは、導体先端部と圧着部とを圧着する際に、圧着部の外周に配置した上述した3つ以上の圧着構成型のそれぞれによって圧着部を圧着することにより、クリンパとアンビルとの2つ一組で成る従来の圧着構成型で圧着する場合と比較して、圧着に伴って圧着部に加わる荷重を圧着部の周方向全体において分散させた状態で圧着部を圧着できる。このため、例えば、圧着に伴って塑性変形した圧着部の肉が、互いに隣り合う圧着構成型間の隙間に入り込むことにより、圧着部の外周面にバリ、尖り、パーティングラインなど(以下、「バリ等」という。)のように大きく突出した突出部分が形成されることを防ぎ、圧着部を、円形状、又は円形状に近い多角形状に圧着することができる。
【0017】
従って、例えば、絶縁被覆と圧着部との圧着部分において、圧着部を絶縁被覆に対してしっかりと密着させることができ、絶縁被覆側から圧着部の内部への水分の浸入を確実に防止することができる。
【0018】
また上述した構成によれば、圧着部の外周側に配置した複数の前記圧着構成型のそれぞれを、互いに協動させながら正確、且つ容易に移動させて圧着部と導体先端部とを圧着接続できるため、高品質の圧着接続構造体を大量に生産することが可能となる。
【0019】
ここで前記端子圧着型は、圧着端子の圧着部の軸方向における、絶縁被覆の先端側を圧着する被覆圧着部をかしめる部分と、導体先端部を圧着する導体圧着部をかしめる部分とで別体に構成しても、一体に構成してもよい。
【0020】
この場合、端子圧着型を構成する3以上の複数の前記圧着構成型は、被覆圧着部と導体圧着部との双方に同一の配置数又は、異なる配置数で配置するに限らず、例えば、導体圧着部の外周側には、クリンパとアンビルから成る従来の圧着型を配置するとともに、被覆圧着部の外周側には、本発明の圧着構成型を配置するなど、本発明の前記圧着構成型は、導体圧着部と被覆圧着部とのうち、少なくとも一方側の外周側にのみに配置してもよい。
【0021】
また、複数備えた前記圧着構成型は、それぞれを同一の形状、大きさで構成するに限らず、異なる形状、大きさで構成してもよい。
【0022】
前記移動手段は、例えば、前記圧着構成型を保持する保持手段、前記圧着構成型を駆動させる駆動手段、前記駆動手段の駆動を前記圧着構成型に伝達する駆動伝達手段などで備えて構成することができる。
【0023】
前記駆動手段は、例えば、モータ、或いは油圧ポンプなどの油圧装置、又はコンプレッサなどの空気圧装置で構成することができるが特に限定しない。
【0024】
前記駆動伝達手段は、例えば、減速器、ガイド機構などで構成することができるが特に限定しない。
【0025】
前記移動手段は、例えば、モータ等の駆動源を備えた構成に限らず、前記駆動伝達手段のみで構成してもよい。この場合、前記端子圧着装置は、人手により圧着可能な圧着工具のように構成することができる。
【0026】
この発明の態様として、前記圧着構成型を、多角形状にかしめた圧着後の前記圧着部における外周面の突部の数に対応した任意の整数nの配置数で備え、
前記圧着面と前記摺動面とが成す内角であるかしめ角度を、360/n度となるように構成することができる。
【0027】
上述したように、前記圧着面と前記摺動面とが成す内角であるかしめ角度を、360/n度となるように構成することにより、前記圧着部に対して外周側に配置した複数の前記圧着構成型のそれぞれを、それぞれの圧着面によって前記圧着部を囲繞する囲繞空間を同一形状に保ちながら前記圧着部に向けて縮小する径内方向へ移動させて、複数の前記圧着構成型によって前記圧着部を、前記囲繞空間と同一形状にかしめることができる。
【0028】
これにより、複数の前記圧着構成型のそれぞれ異なる変位量で移動して圧着部を強く圧着することがなく、複数の前記圧着構成型のそれぞれによって、圧着部を外周側から均等にかしめることができるため、圧着部の外周面に形成される突部が極端に大きく突出した構成となることを防ぐことができる。
【0029】
また、複数の前記圧着構成型のそれぞれを均等に移動させることが可能であるため、複数の前記圧着構成型を備えた構成であっても、それぞれの前記圧着構成型を移動させる制御を容易に、且つ、正確に行うことが可能となる。
【0030】
ここで、前記かしめ角度は、例えば、前記圧着面や前記摺動面の一部に、凹部や凸部を有していても、これら凹部や凸部が存在しないものとして、前記圧着面や前記摺動面の主要部分を構成する平坦な面よって成す内角を示すものとし、これら凹部や凸部によって実質的な値に影響を受けることがないものとする。
また、前記突部は、多角形状の前記圧着構成型の頂角を有する部分を示すものとする。
【0031】
またこの発明の態様として、前記圧着構成型を、前記圧着面と前記摺動面との双方の面に直交する直交断面形状が正n角形となるように構成することができる。
【0032】
上記構成によれば、前記直交断面形状が正n角形になるように構成することで前記圧着構成型の全ての突部における内角(頂角)を、前記かしめ角度と同じ角度、すなわち、360/n度となるように構成することができる。
【0033】
これにより、前記圧着構成型を配置する姿勢に応じて、前記圧着構成型における、いずれの前記突部の内角についてもかしめ角度とすることができるため、前記圧着構成型をいずれの隅角部分においても、前記圧着面と前記摺動面との間の隅角部分として配置することが可能となる。
【0034】
よって、前記圧着構成型を圧着部の外周に配置する際に、その姿勢を意識せずにスムーズ、且つ、正確に配置することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、複数の前記圧着構成型のうち、少なくとも一つの前記圧着構成型を、所定の圧着構成型に設定し、前記所定の着構成型における前記摺動面に、圧着面が対向した状態で隣接する圧着構成型を、摺動面隣接側圧着構成型に設定し、前記所定の圧着構成型の前記圧着面から前記摺動面隣接側圧着構成型の前記圧着面に沿って突出する曲面形成突片を、前記摺動面隣接側圧着構成型の前記圧着面と前記所定の圧着構成型の前記圧着面との間の隅角部分に備え、前記曲面形成突片の内周面を、曲面形状で形成することができる。
【0036】
上述した構成によれば、圧着構成型によって圧着部を圧着する際に、圧着部における、隣り合う圧着構成型間に相当する部分を前記曲面形成突片の内周面によって、かしめることができる。これにより、圧着後の圧着部を、バリ等のように大きく突出した突出部分が外周面に存在しない圧着形状で構成することができる。
【0037】
ここで前記曲面形成突片は、前記所定の圧着構成型の一部として一体に形成しても、前記所定の圧着構成型に対して着脱自在に別体で構成してもよい。
【0038】
例えば、前記曲面形成突片のみを、圧着構成型よりも強度を高めるために、該圧着構成型の本体部分に対して別部材で形成する、或いは、熱処理などの強度を高めるための処理を施してもよい。
【0039】
前記曲面形状は、例えば、孤状、直線状、波状など連続する面形状であれば特に限定しない。
【0040】
またこの発明の態様として、前記圧着構成型を、前記圧着部に対して外周側に6つ備え、前記曲面形成突片の内周面を、所定の半径を有する円弧状に形成することができる。
【0041】
上述したように、前記圧着構成型を、前記圧着部に対して外周側に6つ備えることで、6つの前記圧着構成型の内周面によって圧着部を囲繞する囲繞空間が6角形になるように構成することができるため、6つの前記圧着構成型によって、圧着部が6角形になるようにかしめることができる。
【0042】
これにより、例えば、圧着部が5角形以下の多角形状にかしめた場合と比較して圧着部の外周面をより円に近い多角形状に圧着することができる。しかも、圧着構成型の数が例えば、7以上である場合と比較して圧着構成型の配置数が多くなりすぎないため、圧着部を圧着する際に、それぞれの前記圧着構成型を移動させるための構成が複雑にならず、又は、前記圧着構成型の管理を容易に行うことができる。
【0043】
さらに、前記曲面形成突片の内周面を、所定の半径を有する円弧状に形成することで、圧着部の外周面における突部を曲面形成突片によってかしめる際に、6角形の圧着部の突部に相当する部分を円弧状にかしめることができるため、圧着部を6角形よりもさらに円形、又は略円形に近い形状に圧着することができる。
【0044】
従って、例えば、絶縁被覆と圧着部との圧着部分において、圧着部を絶縁被覆に対してしっかりと密着させることができ、絶縁被覆側から圧着部の内部への水分の浸入を確実に防止することができる。
【0045】
またこの発明は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも、先端側の前記絶縁被覆を剥離した導体先端部を、圧着端子における中空状に形成した圧着部に挿入した状態で、前記圧着部を圧着型でかしめて圧着する端子圧着装置であって、上述した端子圧着型を構成する複数の前記圧着構成型を前記かしめ位置と前記非かしめ位置との間において移動させる移動手段を備えたことを特徴とする。
【0046】
上述した構成によれば、圧着部の外周側に配置した複数の前記圧着構成型のそれぞれを、互いに協動させながら正確、且つ容易に移動させて圧着部と導体先端部とを圧着接続できるため、高品質の圧着接続構造体を大量に生産することが可能となる。
【0047】
前記移動手段は、例えば、前記圧着構成型を保持する保持手段、前記圧着構成型を駆動させる駆動手段、前記駆動手段の駆動を前記圧着構成型に伝達する駆動伝達手段などで備えて構成することができる。
【0048】
前記駆動手段は、例えば、モータ、或いは油圧ポンプなどの油圧装置、又はコンプレッサなどの空気圧装置で構成することができるが特に限定しない。
【0049】
前記駆動伝達手段は、例えば、減速器、ガイド機構などで構成することができるが特に限定しない。
【0050】
前記移動手段は、例えば、モータ等の駆動源を備えた構成に限らず、前記駆動伝達手段のみで構成してもよい。この場合、前記端子圧着装置は、人手により圧着可能な圧着工具のように構成することができる。
【0051】
この発明は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも、先端側の前記絶縁被覆を剥離した導体先端部を、圧着端子における中空状に形成した圧着部に挿入した状態で、前記圧着部を圧着型でかしめて圧着する端子圧着方法であって、
前記圧着型は、前記導体先端部が圧着して接続する導体圧着部と、前記絶縁被覆が圧着して接続する被覆圧着部とが長手方向に沿って先端側からこの順で一体に設けられた前記圧着部のうち、前記導体圧着部をかしめて圧着する導体圧着型と、前記被覆圧着部をかしめて圧着する端子圧着型とで構成され、前記導体圧着部を前記長手方向と直交する直交断面の形状がU字形状となるように前記導体圧着型でかしめて圧着し、3以上の配置数で備え
られ、前記被覆圧着部の外周側に周方向で隣り合うそれぞれが互いに面接触状態
で配置され
た前記端子圧着型における前記被覆圧着部と対向しない非対向面に形成された摺動面を、周方向で隣接するそれぞれの端子圧着型における前記被覆圧着部と対向する対向面に前記被覆圧着部を圧着するように形成された前記圧着面に沿って摺動して、前記長手方向と直交する断面形状における、周方向で隣接するそれぞれの前記端子圧着型における前記圧着面が形成した多角形状に、前記被覆圧着部をかしめて圧着させることを特徴とする。
【0052】
上述した構成によれば、例えば、絶縁被覆と圧着部との圧着部分において、圧着部を絶縁被覆に対してしっかりと密着させることができ、絶縁被覆側から圧着部の内部へ水分の浸入を確実に防止することができる端子圧着方法を提供することができる。
【0053】
またこの発明の態様として、前記端子圧着型は、多角形状にかしめた圧着後の前記
被覆圧着部における外周面の突部の数に対応した任意の整数nの配置数で備え、前記圧着面と前記摺動面とが成す内角であるかしめ角度は、360/n度となる構成であり、前記端子圧着型のそれぞれを、前記
圧着面が形成する多角形状の囲繞空間が同一形状に保ちながら縮小するように径内方向へ移動させて、複数の前記端子圧着型によって前記被覆圧着部を、前記囲繞空間と同一形状にかしめることができる。
【0054】
上述した構成によれば、複数の前記圧着構成型を、ぞれぞれの圧着面によって構成する囲繞空間を同一形状に保ちながら前記圧着部に向けて縮小する径内方向へ移動させて、前記圧着部を、前記囲繞空間と同一形状にかしめることにより、複数の前記圧着構成型のそれぞれによって、圧着部を外周側からより均等に圧着することができるため、前記圧着構成型の間部分に塑性変形した圧着部の肉が逃げてバリのような大きな突出部分が形成されることなく、圧着部を略円形状にかしめることができる端子圧着方法を提供することができる。