特許第6182391号(P6182391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6182391エポキシ樹脂組成物、感光性樹脂および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182391
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、感光性樹脂および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20170807BHJP
   C08G 59/72 20060101ALI20170807BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C08G59/62
   C08G59/72
   H05K3/28 D
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-171078(P2013-171078)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40236(P2015-40236A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147810
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼沼 宗憲
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 圭
(72)【発明者】
【氏名】上地 宏樹
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−116892(JP,A)
【文献】 特開平05−273753(JP,A)
【文献】 特開2010−026278(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117619(WO,A1)
【文献】 特開2006−259268(JP,A)
【文献】 特開2011−201803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 1/00−101/14
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C07F 1/00−5/06
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂と、
(B)フェノール系硬化剤と、
(C)次式(1)で表される光酸発生剤と、
【化1】
(D)増感剤と
を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物の全重量に対し、前記(C)が0.5〜10質量%含まれる
ことを特徴とする請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)が、次式(2)で表される構造を含むポリビニルフェノールである(ただし、n=10〜100)
【化2】
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(E)カップリング剤をさらに含む
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(F)消泡剤をさらに含む
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(G)ゴム成分をさらに含む
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
膜厚100μmで波長365nmまたは405nmの紫外線を100〜500mJ/cm2照射されると硬化する
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いた感光性樹脂。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、感光性樹脂および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の表面を保護するための保護膜として、ポリイミド系の樹脂が広く用いられている。ポリイミド系の樹脂には、吸湿性が高いためクラックが発生しやすいという問題があり、他の材料系の保護膜が開発されている。樹脂を硬化させる方法としては熱によるもの(熱硬化)と光によるもの(光硬化)とがあるが、配線等のパターニングを行うには光硬化性(感光性)の樹脂が用いられる。例えば、特許文献1は、感光性を有するエポキシ系の樹脂組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−259268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された樹脂組成物は溶剤を含んでおり、硬化の際には、溶剤を乾燥させる必要がある。樹脂組成物を塗布した後、溶剤を乾燥させる工程において、塗膜の表面に凹凸ができやすい(平坦性が悪くなる)という問題がある。また、特許文献1においては、膜厚30μmの塗膜を硬化させるのに2J/cm2の紫外線が照射されており、低照射量(例えば500mJ/cm2程度)で厚い(例えば100μm程度)塗膜を硬化させる用途には適さないという問題があった。
さらに、樹脂組成物を半導体装置における保護膜として用いる場合には、信頼性の観点から、パッケージや電極の金属を腐食しないものであることが望ましい。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、低照射量で硬化させることが可能であり、金属を腐食せず、かつ、無溶剤で用いることができる、エポキシ樹脂組成物、感光性樹脂、およびこの樹脂組成物を用いた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)液状エポキシ樹脂と、(B)フェノール系硬化剤と、(C)次式(1)で表される光酸発生剤とを含むエポキシ樹脂組成物を提供する。
【化1】
【0007】
好ましい態様において、前記エポキシ樹脂組成物の全重量に対し、前記(C)が0.5〜10質量%含まれる。
【0008】
別の好ましい態様において、前記(B)が、次式(2)で表される。
【化2】
【0009】
さらに別の好ましい態様において、このエポキシ樹脂組成物は、(D)増感剤をさらに含む。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、このエポキシ樹脂組成物は、(E)カップリング剤をさらに含む。
【0011】
さらに別の好ましい態様において、このエポキシ樹脂組成物は、(F)消泡剤をさらに含む。
【0012】
さらに別の好ましい態様において、このエポキシ樹脂組成物は、(G)ゴム成分をさらに含む。
【0013】
さらに別の好ましい態様において、このエポキシ樹脂組成物は、膜厚100μmで所定の波長の紫外線を100〜500mJ/cm2照射されると硬化する。
【0014】
また、本発明は、上記いずれかのエポキシ樹脂組成物を用いた感光性樹脂を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、上記いずれかのエポキシ樹脂組成物を含む半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低照射量で硬化させることが可能であり、かつ、無溶剤で用いることができる、エポキシ樹脂組成物および感光性樹脂、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】硬化性評価における表面の状態を例示する図。
図2】金属腐食性評価における銅板の状態を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)液状エポキシ樹脂、(B)フェノール系硬化剤、および(C)光酸発生剤を含む。ここで、(C)成分の光酸発生剤は、次式(1)で表されるボレート系スルホニウム塩である。
【化3】
(C)成分は、硬化性の観点から、エポキシ樹脂組成物の全重量に対し0.1〜15質量%(0.50質量%以上15質量%以下)含まれることが好ましく、0.5〜10質量%含まれることがさらに好ましい。(C)成分が少なすぎても多すぎても、硬化性が悪化する可能性がある。
【0019】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、膜厚100μmで塗布した場合に、所定の波長の紫外線を100〜500mJ/cm2照射することにより硬化することが好ましい。なお、これは、本発明のエポキシ樹脂組成物が膜厚100μmで使用されることに限定する趣旨ではない。
【0020】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、無溶剤で用いられることが好ましい。さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、金属を腐食しないことが好ましい。
【0021】
(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シロキサン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、およびナフタレン環含有エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。(A)成分は、エポキシ樹脂組成物の全重量に対し50〜90質量%含まれることが好ましく、60〜80質量%含まれることがさらに好ましい。
【0022】
(B)成分としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類が挙げられる。エポキシ樹脂組成物において、ここで例示した化合物は単独で用いられてもよいし、2つ以上のものが混合して用いられてもよい。このうち、次式(2)で表されるポリビニルフェノールが好ましい。(B)成分は、エポキシ樹脂組成物の全重量に対し5〜45質量%含まれることが好ましく、10〜35質量%含まれることがさらに好ましい。なお、式(2)において、n=10〜100であることが好ましい。
【化4】
【0023】
エポキシ樹脂組成物は、上記の(A)、(B)、および(C)成分に加えて、(D)増感剤、(E)カップリング剤、(F)消泡剤、および(G)ゴム成分のうち少なくとも1つを含んでもよい。(D)成分としては、例えば、アントラセン系化合物が挙げられる。(D)成分は、エポキシ樹脂組成物の全重量に対し0.10〜5.0質量%含まれることが好ましく、0.25〜3.0質量%含まれることがさらに好ましい。(E)成分としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。(G)成分としては、例えば、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムが挙げられる。ゴム成分を配合することで接着界面に発生する応力を小さくし、密着性を向上させることができる。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、原料を、所定の配合で、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合することにより製造される。なお、エポキシ樹脂組成物は、これ以外の方法により製造されてもよい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無溶剤で用いることができ、低照射量でも硬化する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、感光性(光硬化性)を有する樹脂(感光性樹脂)として、例えば電極のパターニングに用いられる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体素子等の電子デバイスの保護膜(封止材)として用いられてもよい。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は100μm程度の膜厚の塗膜でも低照射量で硬化するので、2層以上の多層配線を用いた半導体装置においてパターニングに用いた塗膜をそのまま保護膜として用いる用途に適している。
【実施例】
【0026】
(1)エポキシ樹脂組成物の調整
表1および表2は、実施例1〜13および比較例1のエポキシ樹脂組成物の組成、および後述する評価の結果を示す。表1および表2において、エポキシ樹脂組成物の組成は質量部で表されている。表1および表2の例では、(A)成分としては、ビスフェノール型エポキシ、シロキサン系エポキシ、脂環系エポキシのうち少なくとも1つが用いられた。ビスフェノール型エポキシとしては、新日鐵化学株式会社製のYDF8170が用いられた。シロキサン系エポキシとしては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTSL9906が用いられた。脂環系エポキシとしては、ダイセル化学工業株式会社製の2021Pが用いられた。これらのエポキシ樹脂はそれぞれ粘度が異なっており、所望の粘度を得るために複数のエポキシ樹脂が混合されて用いられる。
【0027】
(B)成分としては、ポリビニルフェノールまたはノボラックフェノールが用いられた。ポリビニルフェノールとしては、丸善化学株式会社製のマルカリンカーS2Pが用いられた。ノボラックフェノールとしては、明和化成株式会社のMEH−8005が用いられた。
【0028】
(C)成分としては、実施例1〜13においてはボレート系スルホニウム塩(具体的には4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)が用いられた。比較例1においては、(C)成分の代わりに、リン系スルホニウム塩(具体的にはジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート)が用いられた。
【0029】
(D)成分としては、9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業株式会社製のUVS−1331)が用いられた。(E)成分としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製のKBM−403)が用いられた。(F)成分としては、楠本化成株式会社製の1970が用いられた。
【0030】
実施例1〜13および比較例1に対し、硬化性の評価および金属腐食性の評価を行った。評価の方法は以下のとおりである。
【0031】
(2)硬化性の評価
ステンレス鋼板上に、印刷により100μmの膜厚でエポキシ樹脂組成物を塗布した。塗膜に対し所定の波長の光を所定量照射した。露光(光照射)後、試料を80℃で30分熱処理(ポストベーク)した。熱処理後、目視の外観検査により膜の状態を確認した。外観検査の結果、表面が平坦であったものを「良好(○)」、表面にシワが発生していたものを「不良(×)」と判定した。なお、露光条件としては、以下の3条件が用いられた。以下の条件のうち、露光条件1は高照射量の条件であり、露光条件2および3は低照射量の条件である。
(a)露光条件1
紫外線波長:混線(365nm)
照射量:2000mJ/cm2
(b)露光条件2
紫外線波長:混線(365nm)
照射量:300mJ/cm2
(c)露光条件3
紫外線波長:単線(405nm)
照射量:300mJ/cm2
【0032】
図1は、硬化性評価における表面の状態を例示する図である。図1(A)は硬化性が良好(○)と判定された例を、図1(B)は不良(×)と判定された例を、それぞれ示している。
【0033】
(3)金属腐食性の評価
銅板上の一部の領域に、印刷により100μmの膜厚でエポキシ樹脂組成物を塗布した。塗膜に対し上記の露光条件1で紫外線を照射した。光照射後、試料を80℃で30分熱処理(ポストベーク)した。ポストベーク後、試料をPCT(Pressure Cooker Test)に投入した。PCTは、温度121℃、湿度100%の条件で20時間行った。PCT後、目視の外観検査により銅板の状態を確認した。外観検査の結果、エポキシ樹脂組成物の膜との境界で腐食が発生していたものを「不良(×)」、腐食が発生していなかったものを「良好(○)」と判定した。
【0034】
図2は、金属腐食性評価における銅板の状態を例示する図である。図2(A)は金属腐食性が不良(×)と判定された例を、図2(B)は良好(○)と判定された例を、それぞれ示している。
【0035】
(4)評価結果
【表1】
【表2】
【0036】
(C)成分としてボレート系スルホニウム塩を用いていない比較例1は、低照射量では硬化せず、また、金属腐食性も不良であった。しかし、(C)成分としてボレート系スルホニウム塩を用いた実施例1〜13は、露光条件2の低照射量で硬化し、また、金属腐食性も良好であった。実施例1〜8および12〜13は露光条件3の低照射量では硬化しなかったが、増感剤を使用することにより露光条件3の低照射量でも硬化した(実施例9〜11)。
図1
図2