(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182566
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム
(51)【国際特許分類】
H02G 9/00 20060101AFI20170807BHJP
B63B 35/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
H02G9/00
B63B35/00 T
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-111563(P2015-111563)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-226194(P2016-226194A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】力久 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 博紀
(72)【発明者】
【氏名】籠浦 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆博
(72)【発明者】
【氏名】山口 武治
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−009109(JP,A)
【文献】
特開2014−093902(JP,A)
【文献】
特開2015−100188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/00
B63B 35/00
H02G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流すボンプであって、
前記冷媒は海水であり、
前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項2】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流すボンプであって、
前記冷媒は海水であり、
前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項3】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記保護管は、前記保護管の内部への冷媒を流すための注入口と、冷媒を排出する排出口とを具備し、
前記冷媒は海水であり、
前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項4】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記保護管は、前記保護管の内部への冷媒を流すための注入口と、冷媒を排出する排出口とを具備し、
前記冷媒は海水であり、
前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項5】
前記注入口と、前記排出口が、いずれも気中側に設けられることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項6】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを 冷却可能であり、
前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流す圧送機であって、前記冷媒は空気であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項7】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流す圧送機であって、前記冷媒は空気であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項8】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記洋上風力発電設備の出力に応じて、前記保護管を冷却する冷媒の流量を変化させることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項9】
洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、
洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、
前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記洋上風力発電設備の出力に応じて、前記保護管を冷却する冷媒の流量を変化させることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【請求項10】
前記保護管または前記海底ケーブルの温度を測定または推定するモニタ装置を具備し、
前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、洋上風力発電設備が増加している。それに伴って、洋上風力発電設備用海底ケーブルも増えている。通常、洋上風力発電設備に接続される海底ケーブルは、保護管に挿通される(例えば、特許文献1)。この保護管は、その形状から、JチューブやIチューブと呼ばれる。また、管路内の電力ケーブルにヒートパイプを沿わせて配置して、海底ケーブルを冷却する方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−93902号公報
【特許文献2】特開平11-98667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洋上風力発電設備は、例えば、以下のように施工される。まず、風車の基礎の設置時に、予め海底ケーブル用の保護管が設置される。この保護管は、基礎の脇や基礎の内部に設置される。基礎の設置が完了した後に、海底ケーブルが敷設される。この敷設時に、保護管がガイドとして利用される。保護管があると、海底ケーブルの基礎への固定が容易になる。
【0005】
しかし、この保護管が海底ケーブルの送電を阻害するおそれがある。その理由は、以下である。まず、海底ケーブルは電流が流れると発熱する。また、保護管があると、この熱は保護管内にこもる。すると、海底ケーブルの温度が上昇する。さらに、海底ケーブルの温度が上昇しすぎると、海底ケーブルが損傷する。このような海底ケーブルの破壊を防ぐために、従来は、電流量を落とす必要があった。
【0006】
特に、保護管の気中部分は、直射日光が当たるため、海底ケーブルの温度が上昇しやすかった。
【0007】
これに対し、海底ケーブルの損傷を抑えるため、海底ケーブルの導体を太くしていた。しかし、海底ケーブルの導体を太くすると、海底ケーブル自体の径が太くなる。すると、重量やコストが増加していた。
【0008】
また、従来は、海底ケーブルの温度をモニタしていなかった。そのため、海底ケーブルの温度上昇量を把握できなかった。その結果、温度上昇に応じた、処置を行えなかった。例えば、送電量を調整して、許容可能な温度内に収められなかった。または、強制冷却システムの冷却能力を調整できなった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものである。つまり、海底ケーブルの温度上昇を抑制することが可能な洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流すボンプであって、前記冷媒は海水であり、前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0011】
また、本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、
前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流すボンプであって、前記冷媒は海水であり、前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0012】
また、本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、
前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、前記保護管は、前記保護管の内部への冷媒を流すための注入口と、冷媒を排出する排出口とを具備し、前記冷媒は海水であり、前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0013】
また、本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、前記保護管は、前記保護管の内部への冷媒を流すための注入口と、冷媒を排出する排出口とを具備し、前記冷媒は海水であり、前記保護管の外周面には複数の孔が設けられ、前記冷媒が、前記孔から外部へ流出可能であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0014】
前記注入口と、前記排出口が、いずれも気中側に設けられてもよい。
【0015】
また、本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを 冷却可能であり、前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流す圧送機であって、前記冷媒は空気であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0016】
また、本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、前記冷却装置は、前記保護管の内部に、冷媒を流す圧送機であって、前記冷媒は空気であることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0017】
また、本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、少なくとも一部が気中に露出している保護管と、前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記海底ケーブルを冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、前記洋上風力発電設備の出力に応じて、前記保護管を冷却する冷媒の流量を変化させることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0018】
また、本発明は、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムであって、洋上風力発電設備に設けられ、上部が気中に露出して、かつ、下部が海水に浸る保護管と、前記保護管に挿通される海底ケーブルと、前記保護管を冷却する冷却装置と、を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であり、前記洋上風力発電設備の出力に応じて、前記保護管を冷却する冷媒の流量を変化させることを特徴とする洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムである。
【0019】
前記保護管または前記海底ケーブルの温度を測定または推定するモニタ装置を具備し、前記冷却装置は、少なくも気中に露出する部位の前記保護管内部の前記海底ケーブルを冷却可能であってもよい。
【0020】
本発明によれば、洋上設備に設けられる保護管であって、気中に露出する部位を冷却できる。このため、海底ケーブルを太くすることなく、保護管内部の海底ケーブルの温度上昇を抑制できる。
【0021】
特に、保護管の内部に海水などの冷媒をポンプで注入すれば、効率良く保護管や海底ケーブルを冷却できる。
【0022】
この際、保護管に冷媒を流すための注入口と排出口を設ければ、海底ケーブルと干渉することなく、確実に冷媒を保護管の内部に注入できる。
【0023】
特に、注入口と排出口が保護管の気中側に形成されれば、貝等の付着によって注入口と排出口が塞がらない。
【0024】
また、保護管の外周面に複数の孔が設けられれば、保護管内に注入した冷媒が孔から保護管の外部に染み出すため、この気化熱によって保護管を効率良く冷却できる。
【0025】
また、洋上風力発電設備の発電量に応じて、冷媒の流量を制御すれば、効率よく保護管を冷却できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、海底ケーブルの温度上昇を抑制可能な洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図10】他の保護管3の冷却方法を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態にかかる洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムについて説明する。
図1は洋上風力発電設備20を示す図である。洋上風力発電設備20は、洋上に配置される。なお、洋上風力発電設備20は、浮体型であってもよい。この場合には、洋上風力発電設備20は、洋上に浮いた状態で、下部が海底に係留索で固定される。
【0029】
洋上風力発電設備20には、海底ケーブル1が接続される。海底ケーブル1は、洋上設備に固定された保護管に挿通され、気中において、洋上風力発電設備20と接続される。海底ケーブル1は、他の洋上設備や地上の変電所などに接続され、風力発電によって得られた電気を送電する。
【0030】
保護管3は、洋上風力発電設備20の外側に設置される。保護管3としては、例えば、防食塗料が塗布されたステンレス製の管体が使用できる。あるいは、樹脂製のフレキシブルな管体が使用できる。
【0031】
洋上風力発電設備20には、冷却装置10が設けられる。冷却装置10は、ポンプ5および注入管7からなる。冷却装置10は、保護管3および海底ケーブル1を冷却する装置である。注入管7は、ポンプ5と接続される。ポンプ5は、海中に浸漬された取水管によって、海水を取水し、注入管7へ海水を吐出する。なお、洋上風力発電設備20と、洋上風力発電設備20に接続される海底ケーブル1を冷却する冷却装置10とを合わせて、洋上風力発電設備用海底ケーブルの冷却システムと称する。
【0032】
図2は、保護管3の断面図である。なお、以下の図において、ポンプ5の図示を省略する。前述した様に、保護管3の内部には、海底ケーブル1が挿通される。保護管3は、海中から気中まで設けられ、上部が気中に露出して、下部が海水に浸る。すなわち、保護管3の少なくとも一部は、気中に露出する。
【0033】
保護管3の上端であって、海底ケーブル1が挿入される開口部には、注入管7の先端が差し込まれる。すなわち、保護管3の上端が注入口9となる。注入管7からは、ポンプ5によって海水が吐出する。すなわち、保護管3の内部に、海水が注入される(図中矢印A)。保護管3に注入された海水は、保護管3の下端から海中に排出される(図中矢印B)。
【0034】
保護管3に注入された海水は、保護管3および海底ケーブル1を冷却する冷媒として機能する。特に、気中に露出する保護管3は、太陽などによって温度が上昇し、内部の海底ケーブル1は、自然風による冷却も受けないため、海底ケーブル1の温度上昇が懸念される。本実施形態によれば、気中に露出した保護管3および保護管3の内部の海底ケーブル1の温度上昇を抑制できる。
【0035】
なお、ポンプ5は、例えば、洋上風力発電設備20で発電された電力を利用できる。この時、洋上風力発電設備20の発電出力に応じて、ポンプ5による海水の流量を変えてもよい。例えば、発電量が大きくなると、海底ケーブル1を流れる電流量が多くなり、発熱量が多くなる。このため、この場合には、ポンプ5による海水の流量を増やせば、より確実に保護管3および海底ケーブル1を冷却できる。
【0036】
また、海底ケーブル1や保護管3内の温度を監視するモニタ装置を用いることもできる。例えば、
図3に示した洋上風力発電設備20aには、温度計測用の温度モニタ装置21が配置される。具体的には、温度モニタ装置21として光ファイバや熱電対を用いることができる。
【0037】
以降は、温度モニタ装置21として光ファイバを用いた例について、詳細を説明する。光ファイバを海底ケーブル1の内部に配置すると、温度に応じて光ファイバが歪む。その歪に応じて、光路長等が変わるので、光ファイバを通過したレーザ光を用いると、歪の量を検出できる。その歪の量から温度を換算できる。すると、その温度計測装置を用いて、海底ケーブル1の長手方向の温度分布を直接監視できる。また、複数の光ファイバを海底ケーブル1の異なる部位に配置しても良い。そして、複数の光ファイバから検出される温度値の差と、海底ケーブル1の構造とから、海底ケーブル1の光ファイバ以外の部位の温度を推定しても良い。例えば、光ファイバを配置することができない導体やシース、あるいは高温に弱い部位の温度を推定しても良い。
【0038】
また、温度モニタ装置21を、保護管3に予め備えても良い。以降は、温度モニタ装置21として熱電対を用いた例について、詳細を説明する。熱電対を保護管3に備えれば、保護管3の温度を直接に測定できる。あるいは、保護管3の温度から、保護管3内部の海底ケーブル1の温度を推定できる。さらに、海底ケーブル1と保護管3との双方の温度を計測したり、推定したりしても良い。
【0039】
温度の計測結果や、温度の推定結果を記録装置に保存しても良い。このとき、計測時刻や、推定時刻もともに記録しても良い。
【0040】
これらの測定した温度、推定した温度、記録した温度、これらの温度から演算されたパラメータ(海底ケーブル寿命等)に応じて、海水の流量を変化させるように制御してもよい。例えば、環境温度が上昇した場合や、電流が増加した場合には、将来温度が上昇すると判断し、その温度上昇を予測するとともに、これに応じた量の海水を注入しても良い。
【0041】
これらの測定した温度、推定した温度、記録した温度、これらの温度から演算されたパラメータ(海底ケーブル寿命等)に応じて、洋上風力発電設備の発電量や送電量を制御しても良い。
【0042】
複数の洋上風力発電設備20aから、海底ケーブル1や保護管3の温度を取得しても良い。取得する温度は、測定した温度や推定した温度、あるいは記録した温度のいずれでも良い。そして、それらの温度やそれらの温度から演算されたパラメータ(海底ケーブル寿命等)から、複数の洋上風力発電設備20aの発電量や送電量を制御しても良い。あるいは、送電経路を決定しても良い。特に、複数の洋上風力発電設備20aがウインドファームを形成して、その送電網に、複数の送電経路の選択肢がある場合には、これらの温度から、最適な選択肢を選択しても良い。
【0043】
さらに、海底ケーブル1の環境温度と海底ケーブル1に流れる電流とから、将来の海底ケーブル1の温度変化を予測し、これに応じて海水の流量を制御してもよい。例えば、環境温度が上使用した場合や、電流が増加した場合には、将来温度が上昇すると判断し、その温度上昇を予測して、これに応じた量の海水を注入する。
【0044】
また、測定した温度、推定した温度、記録した温度、これらの温度から演算されたパラメータ(海底ケーブル寿命等)が規定した値を超えた場合は、複数の洋上風力発電設備20aに配置された温度アラーム装置22によってアラームを発することもできる。このようなアラームによって、例えば、ポンプ5の異常や、注入口などの詰まりを発見できる。
【0045】
以上、本実施の形態によれば、少なくも気中に露出する部位の保護管3および、この部位における保護管3内部の海底ケーブル1を確実に冷却できる。特に、気中に露出する保護管3を効率よく冷却するため、最も温度条件の悪い部分を冷却できる。
【0046】
なお、冷媒としては海水を用いる例を示したが、本発明では、例えば、空気を保護管3内に吹き込んでもよい。
図4は、洋上風力発電設備20bを示す図である。洋上風力発電設備20bは、洋上風力発電設備20とほぼ同様であるが、ポンプ5に代えて圧送機5aが配置される。この場合には、送風機やコンプレッサやエアコン等の圧送機5aで空気を保護管3に注入すればよい。あるいは、空気を保護管3から吸い込んでも良い。この場合には、圧送機5aで空気を保護管3から吸引すればよい。以下の説明では、冷媒として、海水を用いる例について説明する。
【0047】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態にかかる保護管3の部分断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を奏する構成については
図1〜
図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0048】
第2の実施形態は第1の実施形態とほぼ同様であるが、保護管3の外周面に複数の孔11が設けられる。孔11は貫通孔であり、保護管3の内外の空間が連通する。孔11は、少なくとも保護管3の気中に露出する範囲に形成される。孔11の径は、例えば、1mm程度である。
【0049】
本実施形態において、注入管7によって保護管3に海水を注入すると、保護管3の内部を流れる海水は、保護管3と海底ケーブル1を冷却する。一方、海水の一部は孔11を介して保護管3の外周面に染みだす。保護管3の外周に染み出した海水は、保護管3の外周面を濡らし、海水が蒸発する際の気化熱によって保護管3の温度を低下させる。したがって、効率よく保護管3を冷却できる。
【0050】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる。また、孔11によって、海水の一部を保護管3の外周面に染み出させ、気化熱を利用して保護管3を冷却する。すると、より効率よく海底ケーブル1の温度上昇を抑制できる。
【0051】
なお、孔11が海水の蒸発時に析出する塩などで塞がらないように、孔11が設けられた保護管3の外周を、スポンジなどの吸水部材で被覆してもよい。
【0052】
次に、第3の実施形態について説明する。
図6は、第3の実施形態にかかる保護管3の断面図である。
【0053】
第3の実施形態は第1の実施形態とほぼ同様である。ただし、保護管3の側面に保護管3の内部への冷媒を流すための注入口9と冷媒を排出する排出口13が形成される。すなわち、冷媒の注入部および排出部が、海底ケーブル1が挿通される保護管3の端部の開口部とは別に設けられる。図示した例は、注入口9が気中側に設けられ、排出口13が海中側に設けられる。
【0054】
このように、注入口9と排出口13を、保護管3の側面に設けると、保護管3と海底ケーブル1との隙間が小さい場合でも、確実に保護管3の内部に冷媒を注入でき、また、冷媒を保護管3から排出できる。
【0055】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。このように、本発明では、注入口9と排出口13を保護管3の任意の位置に配置できる。
【0056】
次に、第4の実施形態について説明する。
図7は、第4の実施形態にかかる保護管3の断面図である。
【0057】
第4の実施形態は第3の実施形態とほぼ同様であるが、保護管3の気中側に注入口9と排出口13が形成される。すなわち、冷媒の注入部および排出部が、海底ケーブル1が挿通される保護管端部の開口部とは別に設けられ、いずれも気中に配置される。
【0058】
注入口9と排出口13には配管15が接続される。配管15は、保護管3の内部に設けられる。配管15は、一方の端部が注入口9に接続され、注入口9から下方に向けて配置され、海中部分において上方に屈曲されて、他端が排出口13と接続される。配管15は、冷媒の流路となる。
【0059】
なお、配管15は、図示した様なU字状でなくてもよく、例えば、スパイラル状に形成し、配管15を海底ケーブル1の外周に螺旋状に配置してもよい。
【0060】
注入口9から冷媒を注入すると、冷媒が配管15を流れる際に、保護管3および海底ケーブル1と熱交換を行い、保護管3および海底ケーブル1を冷却できる。したがって、効率よく海底ケーブル1の温度上昇を抑制できる。
【0061】
なお、
図8に示すように、配管15を、保護管3の外周に配置しても良い。この場合、気中の注入口9から空気を注入すると、空気は配管15を介して気中の排出口13に排出される。配管15を保護管3の外に配置すると、保護管3に海底ケーブル1を挿入する時に、配管15が海底ケーブル1の挿入を妨げない。また、保護管3を流れる空気だけでなく、配管15を流れる空気によって、保護管3を冷却することができる。
【0062】
第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果が得られる。また、注入口9と排出口13がいずれも気中に配置されるため、貝や海藻等によって注入口9や排出口13が塞がれることがない。
【0063】
次に、第5の実施形態について説明する。
図9は、第5の実施形態にかかる保護管3の断面図である。
【0064】
第5の実施形態は第3の実施形態とほぼ同様であるが、排出口13が保護管3の気中側に形成される。排出口13には直接ポンプ5が接続される。ポンプ5を稼働すると、排出口13から内部の海水が吸引されて、排出される。なお、図示した例では、海水は、保護管3の下端から吸い込まれるが、別途注入口9を、保護管3の海中の側面に設けてもよい。
【0065】
第5の実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果が得られる。このように本発明では、冷媒の流れる方向はいずれの方向であってもよい。
【0066】
次に、第6の実施形態について説明する。
図10は、第6の実施形態にかかる保護管3の断面図である。
【0067】
第6の実施形態は第1の実施形態とほぼ同様であるが、保護管3の内部に冷媒を注入するのではなく、保護管3の外周に冷媒を噴射して保護管3の外周側から冷却を行うものである。なお、図示した例では、保護管3の外周面に直接冷媒を噴射する例を示すが、保護管3の外周に別途配管を設け、配管内に冷媒を流して、保護管3を冷却してもよい。
【0068】
第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。このように本発明では、必ずしも冷媒を保護管3の内部に注入する必要はない。
【0069】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0070】
1………海底ケーブル
3………保護管
5………ポンプ
7………注入管
9………注入口
10………冷却装置
11………孔
13………排出口
15………配管
20………洋上風力発電設備
21………温度モニタ装置
22………温度アラーム生成装置