特許第6182588号(P6182588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

特許6182588二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置
<>
  • 特許6182588-二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置 図000002
  • 特許6182588-二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置 図000003
  • 特許6182588-二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置 図000004
  • 特許6182588-二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置 図000005
  • 特許6182588-二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置 図000006
  • 特許6182588-二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182588
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20170807BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170807BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H02J7/00 Y
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-501269(P2015-501269)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2013080077
(87)【国際公開番号】WO2014129025
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-30322(P2013-30322)
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悦藏
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−278853(JP,A)
【文献】 特開2008−87654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を搭載した車両の運転状態を前記二次電池の電流値から判定する運転状態判定ステップと、
前記二次電池の開回路電圧OCVを取得する開回路電圧取得ステップと、
前記二次電池の放電中に電流及び端子間電圧を検出して前記二次電池の内部抵抗R1を算出する内部抵抗算出ステップと、
前記車両に搭載されて所定値以上の放電電流を伴う所定の負荷が起動されたときに前記放電電流の最大値である最大放電電流値Inewを検出する最大電流検出ステップと、
前記検出された最大放電電流値Inewをそれまでに保存されている最大放電電流値Isと比較して高い方に前記最大放電電流値Isを更新して保存する最大電流更新ステップと、
前記二次電池の温度を検出する温度検出ステップと、
前記二次電池の充電状態量を推定する充電状態量推定ステップと、
事前に作成された前記二次電池の充電状態量及び温度と内部抵抗との関係を表すテーブルまたは関係式を用いて前記充電状態量推定ステップで推定された充電状態量と前記温度検出ステップで検出された温度とから前記内部抵抗R1を所定の基準温度における内部抵抗R1cに補正する内部抵抗補正ステップと、
前記開回路電圧OCVと前記補正された内部抵抗R1cと前記最大放電電流値Isとから、前記負荷を起動させたときの前記二次電池の最低電圧Vsを、次式
Vs=OCV−R1c×Is
から算出する最低電圧算出ステップと、
前記開回路電圧OCVが第1閾値以上でかつ前記最低電圧Vsが第2閾値より低いときに前記二次電池が劣化したと判定する劣化判定ステップと、を有する
ことを特徴とする二次電池劣化判定方法。
【請求項2】
前記内部抵抗算出ステップでは、前記二次電池を所定の放電パターンで放電させ、前記所定の放電パターンでの放電中に電流及び端子間電圧を検出して前記二次電池の内部抵抗R1を算出し、
前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されたとき、前記開回路電圧取得ステップと、前記内部抵抗算出ステップと、を実行し、
前記運転状態判定ステップで前記負荷が起動されたと判定されたとき、前記最大電流検出ステップと、前記最大電流更新ステップと、を実行し、
前記二次電池の劣化判定を行うとき、前記温度検出ステップと、前記充電状態量推定ステップと、前記内部抵抗補正ステップと、前記最低電圧算出ステップと、前記劣化判定ステップと、を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項3】
前記所定の放電パターンは、前記負荷を起動させたときの放電電流の所定の放電周波数を含む略矩形波である
ことを特徴とする請求項2に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項4】
前記内部抵抗算出ステップは、前記車両が停止状態のときに所定の周期または所定の実行要求に従って実行される
ことを特徴とする請求項2または3に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項5】
前記内部抵抗算出ステップでは、前記負荷が起動される前後の負荷電流及び応答電圧を用いて前記二次電池の内部抵抗R1を算出し、
前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されたとき、前記開回路電圧取得ステップを実行し、
前記運転状態判定ステップで前記負荷が起動されたと判定されたとき、前記内部抵抗算出ステップと、前記最大電流検出ステップと、前記最大電流更新ステップと、を実行し、
前記二次電池の劣化判定を行うとき、前記温度検出ステップと、前記充電状態量推定ステップと、前記内部抵抗補正ステップと、前記最低電圧算出ステップと、前記劣化判定ステップと、を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項6】
前記開回路電圧取得ステップでは、前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されかつ前記二次電池からの放電電流が所定値以下となった時点から所定周期で前記二次電池の端子間電圧を取得し、取得された前記端子間電圧が所定点数になるとこれを時間を変数とする指数関数で近似し、前記指数関数を用いて前記開回路電圧OCVを推定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項7】
前記開回路電圧取得ステップでは、前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されかつ前記二次電池からの放電電流が所定値以下となった時点からさらに所定時間経過した時点で前記二次電池の端子間電圧を取得し、これを前記開回路電圧OCVに設定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項8】
前記充電状態量は、前記二次電池の充電率と成層化度と分極のいずれか1つ以上を含む
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項9】
前記内部抵抗補正ステップでは、前記内部抵抗R1を前記基準温度より所定温度差だけさらに低下させた温度における内部抵抗R1cに補正する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項10】
前記運転状態判定ステップではさらに、前記車両に搭載された通信装置の情報を用いて前記車両の運転状態を判定する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項11】
前記劣化判定ステップでは、前記開回路電圧OCVが前記第1閾値より低くかつ前記最低電圧Vsが前記第2閾値より低いときに前記二次電池が充電不足であると判定する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の二次電池劣化判定方法。
【請求項12】
二次電池の電流を検出する電流センサと、
前記二次電池の端子間電圧を検出する電圧センサと、
前記二次電池の温度を検出する温度センサと、
前記二次電池を搭載した車両の運転状態を前記電流センサから入力した電流値を用いて判定する運転状態判定手段と、
前記二次電池の開回路電圧OCVを取得する開回路電圧取得手段と、
前記二次電池の放電中に前記電流センサ及び前記電圧センサから電流及び端子間電圧を入力して前記二次電池の内部抵抗R1を算出する内部抵抗算出手段と、
前記車両に搭載されて所定値以上の放電電流を伴う所定の負荷が起動されたときに前記放電電流を前記電流センサから入力してその最大値である最大放電電流値Inewを検出する最大電流検出手段と、
前記最大電流検出手段で検出された最大放電電流値Inewをそれまでに保存されている最大放電電流値Isと比較して高い方に前記最大放電電流値Isを更新して保存する最大電流更新手段と、
前記二次電池の充電状態量を推定する充電状態量推定手段と、
事前に作成された前記二次電池の充電状態量及び温度と内部抵抗との関係を表すテーブルまたは関係式を保存する記憶部と、
前記記憶部から前記テーブルまたは関係式を読み出して前記充電状態量推定手段で推定した充電状態量と前記温度センサで検出した温度とから前記内部抵抗R1を所定の基準温度における内部抵抗R1cに補正する内部抵抗補正手段と、
前記開回路電圧OCVと前記補正された内部抵抗R1cと前記最大放電電流値Isとから、前記負荷を起動させたときの前記二次電池の最低電圧Vsを、次式
Vs=OCV−R1c×Is
から算出する最低電圧算出手段と、
前記開回路電圧OCVが第1閾値以上でかつ前記最低電圧Vsが第2閾値より小さいときに前記二次電池が劣化したと判定する劣化判定手段と、を備える
ことを特徴とする二次電池劣化判定装置。
【請求項13】
前記二次電池を所定の放電パターンで放電させる放電手段をさらに備え、
前記内部抵抗算出手段は、前記放電手段を用いて放電させたときの電流及び端子間電圧から前記内部抵抗R1を算出する
ことを特徴とする請求項12に記載の二次電池劣化判定装置。
【請求項14】
前記内部抵抗算出手段は、前記負荷が起動される前後の負荷電流及び応答電圧を用いて前記二次電池の内部抵抗R1を算出する
ことを特徴とする請求項12に記載の二次電池劣化判定装置。
【請求項15】
前記二次電池の充電制御手段を備え、前記劣化判定手段では、前記開回路電圧OCVが前記第1閾値より低くかつ前記最低電圧Vsが前記第2閾値より低いときに前記二次電池が充電不足であると判定し、前記充電制御手段における充放電収支ターゲットを、より充電側にシフトさせる
ことを特徴とする請求項12に記載の二次電池劣化判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の劣化判定を行う二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される二次電池の劣化判定を行う技術については、例えば、特許文献1、2に記載されているものが従来より知られている。特許文献1では、開回路電圧OCVとエンジン始動時の最低電圧Vstを測定し、OCVとVstとの関係を定めた特性マップを用いて二次電池の劣化を検知する技術が開示されている。特性マップは、OCV及びVstの大きさに対応して5つの領域に分けられており、各領域間の境界が対数曲線や直線で分割されている。
【0003】
また、特許文献2では、二次電池の劣化度に応じた開回路電圧OCVと内部抵抗Rとの関係マップを用いて、二次電池の劣化判定を行う技術が開示されている。ここでは、エンジン始動前の電流、電圧、及びエンジン始動後放電電流の積算値が所定電気量に達したときの電流、電圧を測定し、これらの測定値を用いて内部抵抗Rを算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4626559号
【特許文献2】特許第4457781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の二次電池の劣化判定方法及び劣化判定装置では、実際にエンジンを始動させたときの電流、電圧を用いて劣化判定を行っていることから、エンジンを始動させるまで二次電池の劣化を検知することができない、といった問題がある。例えば、車両を長期間停止させている間に二次電池の劣化が進んだ場合でも、エンジンを始動させるまで劣化を検知することができない。
【0006】
また、エンジン始動時の二次電池の最低電圧は、二次電池の温度によっても影響を受けることから、例えば二次電池の温度が高いときには最低電圧を高く見積もることになり、劣化判定を精度良く行うことができない、といった問題もある。そのため、例えば二次電池の温度が高い状態で正常と判断されたのちエンジンを停止させ、その後二次電池の温度が低下したときにエンジンを始動させようとしても始動しない、といったことが生じるおそれがある。
【0007】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、エンジン始動前であっても二次電池の劣化を事前に検知することが可能な二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二次電池劣化判定方法の第1の態様は、二次電池を搭載した車両の運転状態を前記二次電池の電流値から判定する運転状態判定ステップと、前記二次電池の開回路電圧OCVを取得する開回路電圧取得ステップと、前記二次電池の放電中に電流及び端子間電圧を検出して前記二次電池の内部抵抗R1を算出する内部抵抗算出ステップと、前記車両に搭載されて所定値以上の放電電流を伴う所定の負荷が起動されたときに前記放電電流の最大値である最大放電電流値Inewを検出する最大電流検出ステップと、前記検出された最大放電電流値Inewをそれまでに保存されている最大放電電流値Isと比較して高い方に前記最大放電電流値Isを更新して保存する最大電流更新ステップと、前記二次電池の温度を検出する温度検出ステップと、前記二次電池の充電状態量を推定する充電状態量推定ステップと、事前に作成された前記二次電池の充電状態量及び温度と内部抵抗との関係を表すテーブルまたは関係式を用いて前記充電状態量推定ステップで推定された充電状態量と前記温度検出ステップで検出された温度とから前記内部抵抗R1を所定の基準温度における内部抵抗R1cに補正する内部抵抗補正ステップと、前記開回路電圧OCVと前記補正された内部抵抗R1cと前記最大放電電流値Isとから、前記負荷を起動させたときの前記二次電池の最低電圧Vsを、次式
Vs=OCV−R1c×Is
から算出する最低電圧算出ステップと、前記開回路電圧OCVが第1閾値以上でかつ前記最低電圧Vsが第2閾値より低いときに前記二次電池が劣化したと判定する劣化判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記内部抵抗算出ステップでは、前記二次電池を所定の放電パターンで放電させ、前記所定の放電パターンでの放電中に電流及び端子間電圧を検出して前記二次電池の内部抵抗R1を算出し、前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されたとき、前記開回路電圧取得ステップと、前記内部抵抗算出ステップと、を実行し、前記運転状態判定ステップで前記負荷が起動されたと判定されたとき、前記最大電流検出ステップと、前記最大電流更新ステップと、を実行し、前記二次電池の劣化判定を行うとき、前記温度検出ステップと、前記充電状態量推定ステップと、前記内部抵抗補正ステップと、前記最低電圧算出ステップと、前記劣化判定ステップと、を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記所定の放電パターンは、前記負荷を起動させたときの放電電流の所定の放電周波数を含む略矩形波であることを特徴とする。
【0011】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記内部抵抗算出ステップは、前記車両が停止状態のときに所定の周期または所定の実行要求に従って実行されることを特徴とする。
【0012】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記内部抵抗算出ステップでは、前記負荷が起動される前後の負荷電流及び応答電圧を用いて前記二次電池の内部抵抗R1を算出し、前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されたとき、前記開回路電圧取得ステップを実行し、前記運転状態判定ステップで前記負荷が起動されたと判定されたとき、前記内部抵抗算出ステップと、前記最大電流検出ステップと、前記最大電流更新ステップと、を実行し、前記二次電池の劣化判定を行うとき、前記温度検出ステップと、前記充電状態量推定ステップと、前記内部抵抗補正ステップと、前記最低電圧算出ステップと、前記劣化判定ステップと、を実行することを特徴とする。
【0013】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記開回路電圧取得ステップでは、前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されかつ前記二次電池からの放電電流が所定値以下となった時点から所定周期で前記二次電池の端子間電圧を取得し、取得された前記端子間電圧が所定点数になるとこれを時間を変数とする指数関数で近似し、前記指数関数を用いて前記開回路電圧OCVを推定することを特徴とする。
【0014】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記開回路電圧取得ステップでは、前記運転状態判定ステップで前記車両が停止状態と判定されかつ前記二次電池からの放電電流が所定値以下となった時点からさらに所定時間経過した時点で前記二次電池の端子間電圧を取得し、これを前記開回路電圧OCVに設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記充電状態量は、前記二次電池の充電率と成層化度と分極のいずれか1つ以上を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記内部抵抗補正ステップでは、前記内部抵抗R1を前記基準温度より所定温度差だけさらに低下させた温度における内部抵抗R1cに補正することを特徴とする。
【0017】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記運転状態判定ステップではさらに、前記車両に搭載された通信装置の情報を用いて前記車両の運転状態を判定することを特徴とする。
【0018】
本発明の二次電池劣化判定方法の他の態様は、前記劣化判定ステップでは、前記開回路電圧OCVが前記第1閾値より低くかつ前記最低電圧Vsが前記第2閾値より低いときに前記二次電池が充電不足であると判定することを特徴とする。
【0019】
本発明の二次電池劣化判定装置の第1の態様は、二次電池の電流を検出する電流センサと、前記二次電池の端子間電圧を検出する電圧センサと、前記二次電池の温度を検出する温度センサと、前記二次電池を搭載した車両の運転状態を前記電流センサから入力した電流値を用いて判定する運転状態判定手段と、前記二次電池の開回路電圧OCVを取得する開回路電圧取得手段と、前記二次電池の放電中に前記電流センサ及び前記電圧センサから電流及び端子間電圧を入力して前記二次電池の内部抵抗R1を算出する内部抵抗算出手段と、前記車両に搭載されて所定値以上の放電電流を伴う所定の負荷が起動されたときに前記放電電流を前記電流センサから入力してその最大値である最大放電電流値Inewを検出する最大電流検出手段と、前記最大電流検出手段で検出された最大放電電流値Inewをそれまでに保存されている最大放電電流値Isと比較して高い方に前記最大放電電流値Isを更新して保存する最大電流更新手段と、前記二次電池の充電状態量を推定する充電状態量推定手段と、事前に作成された前記二次電池の充電状態量及び温度と内部抵抗との関係を表すテーブルまたは関係式を保存する記憶部と、前記記憶部から前記テーブルまたは関係式を読み出して前記充電状態量推定手段で推定した充電状態量と前記温度センサで検出した温度とから前記内部抵抗R1を所定の基準温度における内部抵抗R1cに補正する内部抵抗補正手段と、前記開回路電圧OCVと前記補正された内部抵抗R1cと前記最大放電電流値Isとから、前記負荷を起動させたときの前記二次電池の最低電圧Vsを、次式
Vs=OCV−R1c×Is
から算出する最低電圧算出手段と、前記開回路電圧OCVが第1閾値以上でかつ前記最低電圧Vsが第2閾値より小さいときに前記二次電池が劣化したと判定する劣化判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の二次電池劣化判定装置の他の態様は、前記二次電池を所定の放電パターンで放電させる放電手段をさらに備え、前記内部抵抗算出手段は、前記放電手段を用いて放電させたときの電流及び端子間電圧から前記内部抵抗R1を算出することを特徴とする。
【0021】
本発明の二次電池劣化判定装置の他の態様は、前記内部抵抗算出手段は、前記負荷が起動される前後の負荷電流及び応答電圧を用いて前記内部抵抗R1を算出することを特徴とする。
【0022】
本発明の二次電池劣化判定装置の他の態様は、前記二次電池の充電制御手段を備え、前記劣化判定手段では、前記開回路電圧OCVが前記第1閾値より低くかつ前記最低電圧Vsが前記第2閾値より低いときに前記二次電池が充電不足であると判定し、前記充電制御手段における充放電収支ターゲットを、より充電側にシフトさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エンジン始動前であっても二次電池の劣化を事前に検知することが可能な二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態の二次電池劣化判定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
図2】本発明の第1実施形態の二次電池劣化判定装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の二次電池劣化判定方法の劣化判定に用いる閾値の一例を示すグラフである。
図4】本発明の第2実施形態の二次電池劣化判定装置の構成を示すブロック図である。
図5】エンジン始動時にスタータを起動させたときの電流電圧応答の一例を示すグラフである。
図6】第1実施形態の二次電池劣化判定装置に充電制御手段を追加した応用例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施の形態における二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置を、図1、2を用いて説明する。図1は、本実施形態の二次電池劣化判定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。また図2は、本実施形態の二次電池劣化判定装置100の構成を示すブロック図である。
【0027】
車両に搭載された二次電池10には、エンジンを始動させるためのスタータや、ライト、エアコン等の負荷20が接続されている。本実施形態の二次電池劣化判定装置100は、このような車両に搭載された二次電池10の劣化を判定するものである。二次電池劣化判定装置100は、二次電池10の電流、電圧、及び温度をそれぞれ測定して取得するための電流センサ101、電圧センサ102、及び温度センサ103を備えている。
【0028】
本実施形態の二次電池劣化判定装置100は、車両の運転状態に応じて以下の処理を行う。まず、車両が停止状態で二次電池10からの放電が停止または十分に小さいときに、二次電池10の安定時開回路電圧OCV及び内部抵抗を取得する。この安定時開回路電圧OCVと内部抵抗を用いて、所定値以上の放電電流を伴う所定の負荷(以下では、対象負荷21とする)を起動したときの最低電圧Vsを算出し、これと安定時開回路電圧OCVとから二次電池10の劣化状態を判定する。以下では、二次電池10からの放電電流が大きいエンジン始動用のスタータを対象負荷21として説明するが、これに限定されるものではない。
【0029】
二次電池劣化判定装置100は、車両の運転状態を判定するために運転状態判定手段110を備えている。また、二次電池10の安定時開回路電圧OCV及び内部抵抗を取得する抵抗演算部120、エンジン始動時のスタータ21への放電電流の最大値(最大放電電流値)を取得する最大電流処理部130、及び二次電池10の劣化状態を判定する劣化判定処理部140を備えている。さらに、データを保存するための記憶部150を備えている。
【0030】
運転状態判定手段110は、電流センサ101から二次電池10の電流値を入力し、二次電池10からの放電電流が停止または十分に小さいときに車両が停止状態と判定する。車両が停止状態のとき、二次電池10からの放電電流は必ずしもゼロではなく、通信装置や防犯装置等の負荷に微弱の電流(暗電流)が流れていることがある。そこで、このような暗電流より高い閾値を用いて車両の停止状態を判定させるようにする。
【0031】
また、運転状態判定手段110は、電流センサ101から入力した電流値を用いてエンジン始動時のスタータ21の起動を判定する。この判定には、スタータ21を起動要求する制御信号等を用いるようにすることもできる。運転状態判定手段110は、車両の運転状態を判定すると、その判定結果を抵抗演算部120及び最大電流処理部130に通知する。
【0032】
抵抗演算部120は、二次電池10の安定時開回路電圧OCVを取得する開回路電圧取得手段121、二次電池10の内部抵抗R1を算出する内部抵抗算出手段122、二次電池10を所定の放電パターンで放電させる放電手段123、二次電池10の充電状態量を推定する充電状態量推定手段124、及び内部抵抗R1を所定の基準温度における補正内部抵抗R1cに補正する内部抵抗補正手段125を備えている。
【0033】
抵抗演算部120は、運転状態判定手段110から車両が停止状態であるとの判定結果を入力すると、所定のタイミングで開回路電圧取得手段121、及び内部抵抗算出手段122を実行させる。また、放電手段123は、内部抵抗算出手段122からの要求により実行される。さらに、充電状態量推定手段124及び内部抵抗補正手段125は、劣化判定処理部140からの要求により実行される。
【0034】
開回路電圧取得手段121は、二次電池10が開回路状態で安定しているときの端子間電圧である安定時開回路電圧OCVを取得する。安定時開回路電圧OCVを取得する方法として下記の2通りの方法があり、何れの方法を用いてもよく、あるいは両方を用いてもよい。取得された安定時開回路電圧OCVは、例えば記憶部150に保存しておく。
【0035】
安定時開回路電圧OCVを取得する第1の方法は、車両エンジンが停止して二次電池10からの放電電流が所定値以下となった時点から所定周期で端子間電圧(開回路電圧)を取得し、電圧値が所定点数になるとこれを時間を変数とする指数関数で近似する。短時間に取得した所定点数の電圧値を用いて指数関数の近似式を求めることで、二次電池10からの放電を停止または十分に低くして長時間経過したときの安定時開回路電圧OCVを推定することができる。
【0036】
安定時開回路電圧OCVを取得する第2の方法は、車両エンジンが停止して二次電池10からの放電電流が所定値以下となった時点からさらに所定時間経過した時点において、二次電池10の端子間電圧(開回路電圧)を取得し、これを安定時開回路電圧OCVとして用いるものである。この方法では、放電電流が所定値以下となってからの経過時間をおよそ1日程度とする必要がある。そこで、車両停止後先ず第1の方法で安定時開回路電圧OCVを取得し、その後停止期間が1日以上となるときは第2の方法で安定時開回路電圧OCVを取得して更新するのが好ましい。
【0037】
本実施形態の内部抵抗算出手段122は、運転状態判定手段110で車両が停止状態と判定されたときに実行される。内部抵抗算出手段122は、車両停止後の所定のタイミングで放電手段123を実行させる。放電手段123は、直列接続された半導体スイッチや抵抗素子等を用いて構成され、二次電池10から所定の放電パターンで放電させる。放電手段123の放電パターンは、対象負荷であるスタータ21を起動させたときの放電電流の所定の放電周波数を含むように設定されるのが好ましい。放電パターンとして、例えば略矩形波を用いることができる。あるいは、所定の放電周波数の正弦波とすることができる。
【0038】
内部抵抗算出手段122は、放電手段123を用いて二次電池10から放電させたときの電流及び端子間電圧を、それぞれ電流センサ101、電圧センサ102から取得する。そして、このときの電流電圧応答から二次電池10の内部抵抗R1を算出する。得られた二次電池10の内部抵抗R1は、例えば記憶部150に保存しておく。
【0039】
一方、運転状態判定手段110でスタータ21の起動が判定されると、最大電流処理部130の処理が実行される。最大電流処理部130は、最大電流検出手段131及び最大電流更新手段132を備えており、まず最大電流検出手段131が実行される。最大電流検出手段131は、スタータ21が起動されてエンジンが始動する間の放電電流を電流センサ101から取得し、その間の放電電流の最大値(最大放電電流値)Inewを検出する。最大電流検出手段131で最大放電電流値Inewが検出されると、つぎに最大電流更新手段132が実行される。
【0040】
最大電流更新手段132は、記憶部150に保存されているそれまでの最大放電電流値Isを入力し、これと最大電流検出手段131で検出された最新の最大放電電流値Inewとを比較する。そして、最新の最大放電電流値Inewがそれまでの最大放電電流値Isより高いときは、記憶部150に保存されている最大放電電流値Isを最新の最大放電電流値Inewで更新して保存する。
【0041】
劣化判定処理部140による二次電池10の劣化判定は、適宜行われるようにするのが好ましく、例えばエンジン始動直前に行われるのがよい。あるいは、一定期間毎に定期的に行わせるようにしてもよい。車両が停止中であっても、劣化判定処理部140を適宜行わせることで、エンジン始動前の早い段階で二次電池10の劣化を知ることができる。
【0042】
劣化判定処理部140は、最低電圧算出手段141と劣化判定手段142を備えている。劣化判定処理部140の処理が開始されると、まず抵抗演算部120に備えられた充電状態量推定手段124と内部抵抗補正手段125が順次実行される。そして、内部抵抗補正手段125で補正された二次電池10の内部抵抗を用いてエンジン始動時の最低電圧を最低電圧算出手段141により算出し、この最低電圧をもとに劣化判定手段142において二次電池10の劣化判定を行う。
【0043】
充電状態量推定手段124は、劣化判定処理部140による劣化判定が行われるときの二次電池10の充電状態量を推定する。ここで、充電状態量には二次電池10の充電率が含まれ、さらに二次電池10の内部の分極や成層化度等が含まれるようにすることができる。充電率は、充放電電流を積算する等の方法で算出することができる。あるいは、開回路電圧取得手段121で算出された安定時開回路電圧を用いて、所定の相関式から充電率を算出することができる。また、分極や成層化度は、例えば充放電履歴等に基づいて所定のテーブルまたは関数を用いて推定することができる。
【0044】
内部抵抗補正手段125は、温度センサ103から二次電池10の温度を入力する。また、内部抵抗算出手段122で算出された内部抵抗R1、及び充電状態量推定手段124で推定された充電状態量を入力する。さらに、事前に作成して記憶部150に保存している二次電池10の充電状態量及び温度と内部抵抗との関係を表すテーブルまたは関係式を記憶部150から読み出す。
【0045】
読み出したテーブルまたは関係式と二次電池10の温度及び充電状態量より、内部抵抗R1を基準温度における内部抵抗に補正し、これを補正内部抵抗R1cとして最低電圧算出手段141に出力する。記憶部150に保存されている充電状態量及び温度と内部抵抗との関係を表す関係式を例えばf(T,SOC)とするとき、補正内部抵抗R1cを次式
R1c=R1×f(T,SOC)
で算出するようにすることができる。ここで、Tは二次電池10の温度を表し、SOCは充電状態量の一つである充電率を表す。
【0046】
最低電圧算出手段141は、抵抗演算部120から補正内部抵抗R1cと安定時開回路電圧OCVを入力し、最大電流処理部130で更新された更新最大放電電流値Isを記憶部150から入力する。そして、次式より最低電圧Vsを算出する。
Vs=OCV−R1c×Is
上式で算出された最低電圧Vsは、エンジン始動時の放電に伴う電圧降下によって生じる二次電池10の最低電圧である。
【0047】
劣化判定手段142は、最低電圧算出手段141で算出された最低電圧Vsと安定時開回路電圧OCVを入力し、所定の閾値に基づいて二次電池10の劣化を判定する。劣化判定手段142で劣化判定に用いる閾値の一例を図3に示す。劣化判定手段142は、安定時開回路電圧OCVに対する第1の閾値Vt1と、最低電圧Vsに対する第2の閾値Vt2とを用いて二次電池10の劣化判定を行う。
【0048】
図3において、安定時開回路電圧OCVが第1の閾値Vt1以上でかつ最低電圧Vsが第2の閾値Vt2より低いとき、二次電池10が劣化していると判定する。また、安定時開回路電圧OCVが第1の閾値Vt1より低くかつ最低電圧Vsが第2の閾値Vt2より低いとき、二次電池10は充電不足であると判定する。最低電圧Vsが第2の閾値Vt2以上のときは、安定時開回路電圧OCVにかかわらず二次電池10は適正な状態であると判定する。
【0049】
本実施形態の二次電池劣化判定装置100において、二次電池10の劣化判定を行う本実施形態の二次電池劣化判定方法の処理の流れを、図1を用いてさらに詳細に説明する。図1(a)は、車両の運転状態に基づいて行われる処理の流れを示し、同図(b)は、所定のタイミングで実施される劣化判定の処理の流れを示している。
【0050】
図1(a)に示す運転状態に基づく処理では、運転状態判定手段110が例えば所定の周期で電流センサ101から電流値を入力し、これを用いて車両の運転状態を判定する(ステップS1)。運転状態の判定の結果、車両が停止状態であると判定されたときはステップS2に進み、スタータ(対象負荷)21が起動したと判定されたときはステップS5に進む。
【0051】
ステップS2では、開回路電圧取得手段121を用いて安定時開回路電圧OCVを取得する。続くステップS3では、内部抵抗算出手段122からの要求で放電手段123が実行され、二次電池10から所定の放電パターンで放電が行われる。そして、ステップS4において、内部抵抗算出手段122により放電中の電流電圧応答から二次電池10の内部抵抗R1が算出される。なお、開回路電圧取得手段121によるステップS2の処理と、内部抵抗算出手段122によるステップS3、S4の処理は、何れを先に行ってもよい。 また、内部抵抗算出手段122による内部抵抗R1の取得は、車両停止後1回実行するだけでなく、例えば車両停止後所定時間経過する毎に実行させるようにしてもよい。
【0052】
一方ステップS1でスタータ21が起動したと判定されたときは、ステップS5において、最大電流検出手段131によりスタータ21が起動中の最大放電電流値Inewを取得する。ステップS6では、取得された最新の最大放電電流値Inewを記憶部150に保存されているそれまでの最大放電電流値Isと比較し、最新の最大放電電流値Inewがそれまでの最大放電電流値Isより大きいときは、ステップS7で最大放電電流値Isを最新の最大放電電流値Inewで更新する。ステップS6、S7の処理は、最大電流更新手段132で行われる。
【0053】
つぎに、同図(b)を用いて劣化判定を行うときの処理の流れを説明する。ステップS11で劣化判定が開始されると、ステップS12で充電状態量推定手段124によりそのときの二次電池10の充電状態量を推定する。続くステップS13では、内部抵抗補正手段125により二次電池10の温度、充電状態量、及び所定のテーブルまたは関数を用いて内部抵抗R1を基準温度における内部抵抗R1cに補正する。ステップS14では、最低電圧算出手段141により安定時開回路電圧OCV、更新最大放電電流値Is、及び補正内部抵抗R1cを用いて最低電圧Vsを算出する。
【0054】
ステップS15では、劣化判定手段142により安定時開回路電圧OCVと第1の閾値Vt1との比較、及び最低電圧Vsと第2の閾値Vt2との比較が行われる。その結果、安定時開回路電圧OCVが第1の閾値Vt1以上でかつ最低電圧Vsが第2の閾値Vt2より低いときは、二次電池10が劣化していると判定してステップS16に進む。また、安定時開回路電圧OCVが第1の閾値Vt1より低くかつ最低電圧Vsが第2の閾値Vt2より低いときは、二次電池10が充電不足であると判定してステップS17に進む。さらに、ステップS15でそれ以外の判定結果のときは、ステップS18に進んで処理を終了する。
【0055】
ステップS16では、二次電池10が劣化していると判定されたときの処理を行う。一例として、運転者に二次電池10が劣化したことを通知し、その交換をガイドする。またステップS17では、二次電池10が充電不足であることを運転者に通知するようにすることができる。
【0056】
本実施形態の二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置100によれば、車両を停止している期間においても、内部抵抗算出手段122により二次電池10の内部抵抗R1を定期的に算出し、劣化判定処理部140により二次電池10の劣化判定を行うことが可能なことから、車両を長期間停止状態にした場合でもエンジン始動前に二次電池10が劣化しているか否かを判定することができる。
【0057】
また、本実施形態の二次電池10の劣化判定では、内部抵抗を所定の基準温度における内部抵抗に補正して用いていることから、例えばエンジンルーム内が高温かあるいは低温かにかかわらず高精度に劣化判定を行うことができる。さらに、二次電池10の充電率や内部の成層化(電解液不均一)、分極等の充電状態量の影響に対しても内部抵抗を補正して用いていることから、二次電池10の充放電履歴によらず劣化判定を高精度に行うことができる。本実施形態では、最低電圧を算出して劣化判定に用いているが、最低電圧の算出に用いる最大放電電流値として、それまでのエンジン始動における放電電流の最大値を用いていることから、最も厳しい条件で二次電池10の劣化判定を行うことができる。
【0058】
なお、上記説明の実施形態では、内部抵抗補正手段125が内部抵抗算出手段122で算出された内部抵抗R1を基準温度における内部抵抗に補正して補正内部抵抗R1cを算出するようにしていた。基準温度は例えば25℃に設定されるが、基準温度に限定されず、これとは別の所定温度に内部抵抗を補正するようにしてもよい。一例として、基準温度より所定温度差だけ低い温度(例えば10℃とする)における内部抵抗に補正したものを補正内部抵抗R1cに用いるようにすることができる。低い温度では二次電池の内部抵抗が大きくなることから、エンジン始動時の放電に伴う電圧降下も大きくなり、それによって生じる二次電池10の最低電圧は低くなる。これより、基準温度における内部抵抗を用いる場合より厳しい条件で二次電池10の劣化判定を行うことができる。図1に示したステップS13では、内部抵抗補正手段125により、充電状態量及び温度と内部抵抗との関係を表すテーブルまたは関係式と二次電池10の温度及び充電状態量を用いて内部抵抗R1を基準温度より所定温度差だけ低い温度における内部抵抗R1cに補正する。以下、ステップS14〜S17の処理を行って二次電池10の劣化判定を行う。
【0059】
本実施形態の応用例を図6に示す。図6は、第1実施形態の二次電池劣化判定装置100に充電制御手段160を追加した応用例100'の構成を示している。充電制御手段160は、オルタネータ30に接続され、二次電池10の状態に応じて、二次電池10の充電を制御する機能を有する。具体的には、二次電池10が満充電に近い場合には、オルタネータ30の出力を下げ、二次電池10から負荷20への放電電流を増加させる。逆に、二次電池10の充電率が低い場合には、オルタネータ30の出力を上げ、二次電池10から負荷20への放電電流を低下させる、あるいは二次電池10へ充電する。本実施形態では、図1におけるステップS17で、二次電池10が充電不足であると判断される場合には、充電制御手段160は二次電池10を充電する方向に制御する。このような充電制御手段160を設けることにより、二次電池10の充電不足を早期に解消し、充電不足により負荷の動作に支障を生じることを未然に防ぐことができる。
【0060】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置を、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の二次電池劣化判定装置200の構成を示すブロック図である。
【0061】
本実施形態の二次電池劣化判定装置200は、第1実施形態の二次電池劣化判定装置100と比較して、抵抗演算部220に放電手段123を備えない構成としている。本実施形態では、二次電池10の内部抵抗R1を取得するために、車両停止時に所定の放電パターンで放電する代わりに、所定値以上の放電電流を伴う対象負荷21を起動したときの電流電圧応答を用いて内部抵抗R1を取得するようにしている。対象負荷21として、ここでもエンジン始動用のスタータを対象として説明する。
【0062】
エンジン始動時にスタータ21を起動させたときの電流電圧応答の一例を図5に示す。同図において、スタータ21を起動する前の二次電池10の電圧及び電流をそれぞれVa、Iaとし、スタータ21の起動を検出してから所定時間経過したときの電圧及び電流をそれぞれVb、Ibとしている。本実施形態の内部抵抗算出手段222は、スタータ21の起動前後の電圧Va、Vb及び電流Ia、Ibを電圧センサ102及び電流センサ101から取得する。
【0063】
内部抵抗算出手段222では、電圧Va、Vb及び電流Ia、Ibを用いて次式により内部抵抗R1を算出する。
R1=(Vb−Va)/(Ib−Ia)
劣化判定処理部140により二次電池10の劣化判定が行われるとき、第1実施形態と同様に、上式により算出された内部抵抗R1が内部抵抗補正手段125により補正されて最低電圧Vsの算出に用いられる。
【0064】
本実施形態では、二次電池10の内部抵抗をエンジン始動時のスタータ21を起動したときの電流電圧応答を用いて取得するようにしているが、これに限定されず、所定値以上の放電電流を伴う別の負荷を起動するときの電流電圧応答、あるいは充電時の電流電圧応答を用いて内部抵抗を取得するようにしてもよい。本実施形態の二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置200によれば、内部抵抗を取得するための放電を行う必要がなくなることから、二次電池10からの放電を抑制することができる。
【0065】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における二次電池劣化判定方法及び二次電池劣化判定装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 二次電池
20 負荷
30 オルタネータ
100、200 二次電池劣化判定装置
101 電流センサ
102 電圧センサ
103 温度センサ
110 運転状態判定手段
120 抵抗演算部
121 開回路電圧取得手段
122、222 内部抵抗算出手段
123 放電手段
124 充電状態量推定手段
125 内部抵抗補正手段
130 最大電流処理部
131 最大電流検出手段
132 最大電流更新手段
140 劣化判定処理部
141 最低電圧算出手段
142 劣化判定手段
150 記憶部
160 充電制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6