(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182692
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】静電チャック付き搬送ロボットの制御システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20170807BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20170807BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20170807BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/68 A
H02J50/90
B25J15/00 Z
B65G49/07 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-521682(P2017-521682)
(86)(22)【出願日】2016年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2016002519
(87)【国際公開番号】WO2016194336
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-110015(P2015-110015)
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 傑之
(72)【発明者】
【氏名】川久保 大輔
(72)【発明者】
【氏名】南 展史
(72)【発明者】
【氏名】武者 和博
【審査官】
儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/014428(WO,A1)
【文献】
特表2012−514544(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/040401(WO,A1)
【文献】
特開2003−051524(JP,A)
【文献】
特開2004−165198(JP,A)
【文献】
特開平03−050654(JP,A)
【文献】
特開2002−313897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/00
B65G 49/07
H02J 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して所定の処理を実施する複数の処理室を有する処理装置にて、処理室間でワークを静電吸着して搬送する静電チャック付き搬送ロボットの制御システムにおいて、
処理装置の作動を統括制御する統括制御手段に通信自在に接続され、統括制御手段からの制御信号に応じて搬送ロボットの作動を制御するロボット制御手段と、静電チャックに対するワークの静電吸着または解除を制御する静電チャック制御手段とを備え、
静電チャック制御手段は、統括制御手段とロボット制御手段との通信内容を監視し、この監視する通信内容を基に静電チャックによるワークの静電吸着または解除を制御するように構成されることを特徴とする静電チャック付き搬送ロボットの制御システム。
【請求項2】
前記静電チャック制御手段は、対向配置される一対の電極間で機械的に分離され、一方の電極と他方の電極との電極間距離を一定に維持しながら相対移動するように他方の電極が搬送ロボットの可動部分に設けられるキャパシタと、一方の電極に接続される給電回路ユニットと、他方の電極と静電チャックの吸着用電極との間に接続される受電回路ユニットとを有して静電チャックの吸着用電極に対して非接触式の給電するものであり、給電回路ユニットの作動を制御する給電回路制御部で、統括制御手段とロボット制御手段との通信内容を監視するように構成されることを特徴とする請求項1記載の静電チャック付き搬送ロボットの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック付き搬送ロボットの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコンウエハやガラス基板等のワークに対して所定の処理を実施する真空処理装置VMとして、
図1に示すように、搬送ロボットTrを配置した中央の搬送室Aを囲うようにして、ロードロック室Bと複数の処理室C1〜C3とをゲートバルブGvを介して配置し、ロードロック室Bに投入したワークWを搬送ロボットTrによりいずれかの処理室C1〜C3に搬送し、所定の処理を実施するように構成したもの(所謂、クラスタツール)が知られている。搬送ロボットTrとしては、例えば、同心に配置される2本の回転軸と、各回転軸に連結されて回転軸の回転角に応じて旋回及び伸縮するロボットアームとを備え、ロボットアームの先端にワークを載置した状態で支持するロボットハンドを設けたものが用いられる。
【0003】
このような搬送ロボットの中には、ロボットハンドに正負の電極を設けて所謂双極型の静電チャックを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、ワークを静電吸着することで、搬送途中でロボットハンドからワークが脱離したり、位置ずれしたりしないようにできる。また、真空中で可動する搬送ロボットのロボットハンドに設けた電極に対する給電方法としては、非接触式のものが例えば特許文献2で知られている。このものは、キャパシタと、交流電源部を有して静電チャックの両電極への給電をオンオフ制御(ワークの静電吸着または解除)する静電チャック制御手段とを備える。キャパシタは、対向配置される一対の電極間で機械的に分離され、一方の電極は、回転軸の周囲に固定配置すると共に静電チャック制御手段からの出力が接続され、静電チャックの電極に接続される他方の電極は、電極間距離を一定に維持しながら相対移動するように搬送ロボットの回転軸に取り付けられると共に交流電源部の負荷に接続される。
【0004】
ここで、
図1に示す真空処理装置VMでは、通常、真空ポンプ、搬送室Aと、ロードロック室B及び各処理室C1〜C3とを夫々仕切るゲートバルブGvや各処理室C1〜C3内での処理を実施する部品などの各構成要素の作動を統括制御する、シーケンサー、マイコンやメモリー等の公知の制御機器を備える統括制御手段Mcが設けられ、搬送ロボットTrの作動を制御する、公知の制御機器を備えるロボット制御手段Rcが別途設けられている。ロボット制御手段Rcは、統括制御手段Mcに通信自在に接続されてこの統括制御手段からの制御信号に応じて搬送ロボットの作動を制御することが一般である。
【0005】
ところで、搬送ロボットのロボットハンドに静電チャックを設ける場合、静電チャック制御手段もまた、統括制御手段Mcに通信自在に接続し、統括制御手段Mcからの制御信号に応じて静電吸着または解除を制御することが考えられる。然し、静電チャックによるワークの静電吸着または解除と搬送ロボットの動作とが連動しているため、上記制御では、統括制御手段と、ロボット制御手段と静電チャックとの一方の通信を待って、その他方と統括制御手段との通信が行われることとなり、ロボットアームの旋回、伸縮や、静電チャックの静電吸着、解除のための応答時間が長くなるという不具合が生じる。しかも、搬送ロボットを備えた既存の処理装置に静電チャックを後付けしようとすると、統括制御手段自体の動作プログラムに大幅な変更を加える必要が生じるという問題を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−63885号公報
【特許文献2】再表2012/077296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、搬送ロボットに静電チャックを設ける場合でも、応答性よく静電チャックを動作させることができる静電チャック付き搬送ロボットの制御システムを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、ワークに対して所定の処理を実施する複数の処理室を有する処理装置にて、処理室間でワークを静電吸着して搬送する本発明の静電チャック付き搬送ロボットの制御システムは、処理装置の作動を統括制御する統括制御手段に通信自在に接続され、統括制御手段からの制御信号に応じて搬送ロボットの作動を制御するロボット制御手段と、静電チャックに対するワークの静電吸着または解除を制御する静電チャック制御手段とを備え、静電チャック制御手段は、統括制御手段とロボット制御手段との通信内容を監視し、この監視する通信内容を基に静電チャックの静電チャックに対するワークの静電吸着または解除を制御するように構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、静電チャック制御手段が、統括制御手段とロボット制御手段との通信内容を監視し、この監視する通信内容を基に、即ち、例えば統括制御手段とロボット制御手段との間で特定の制御信号が出力されたときに、静電チャックに対するワークの静電吸着または解除を行うため、統括制御手段と、ロボット制御手段と静電チャック制御手段との一方の通信を待って、その他方と統括制御手段との通信を行うものと比較してその応答時間を短くすることができる。その上、統括制御手段自体の動作プログラムを大幅に変更する必要がなく、搬送ロボットを備えた既存の処理装置に静電チャックを後付けしようとする場合に有利となる。
【0010】
なお、本発明においては、前記静電チャック制御手段は、対向配置される一対の電極間で機械的に分離され、一方の電極と他方の電極との電極間距離を一定に維持しながら相対移動するように他方の電極が搬送ロボットの可動部分に設けられるキャパシタと、一方の電極に接続される給電回路ユニットと、他方の電極と静電チャックの吸着用電極との間に接続される受電回路ユニットとを有して静電チャックの吸着用電極に対して非接触式の給電するものであり、給電回路ユニットの作動を制御する給電回路制御部で、統括制御手段とロボット制御手段との通信内容を監視する構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】搬送ロボットを備える真空処理装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、搬送ロボットTrをそのロボットハンドに静電チャックを備えるものとし、また、ワークをシリコンウエハ(以下、「ウエハW」という)とし、この搬送ロボットTrが
図1に示す真空処理装置VMの搬送室Aに設けられている場合を例に本発明の実施形態の静電チャック付き搬送ロボットの制御システムRSを説明する。なお、搬送ロボットTrのロボット制御手段Rcの構成や動作制御及び、統括制御手段Mcとの通信等については公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0013】
図2及び
図3を参照して、静電チャック付き搬送ロボットの制御システムRSは、真空処理装置VMの作動を統括制御する統括制御手段Mcに通信自在に接続され、統括制御手段Mcと相互通信しながら搬送ロボットTrの作動を制御するロボット制御手段Rcと、静電チャックの両電極への給電をオンオフ制御(ワークの静電吸着または解除)する静電チャック制御手段Ccとを備える。
【0014】
搬送ロボットTrとしては所謂フログレッグ式のものであり、同心状に配置され、図外の駆動源により夫々回転駆動される2本の回転軸1a,1bと、この回転軸1a,1bに夫々連結され、先端にロボットハンド2を有するロボットアーム3とで構成される。ロボットハンド2には、静電チャックを構成する吸着用電極4a,4bが夫々設けられている。特に図示して説明しないが、回転軸1a,1bに直動モータやエアーシリンダ等の昇降手段が付設され、ロードロック室Bや各処理室C1〜C3にてウエハWを受取りまたは受渡しする際に、回転軸1a,1b、ひいては、ロボットハンド2を鉛直方向に昇降できるようにしている。
【0015】
静電チャック制御手段Ccは、対向配置される一対の電極間で機械的に分離された、径方向外側に位置する回転軸1bの外表面に一体に設けられる一方の電極5aと、電極間距離を一定に維持しながら相対移動するように、回転軸1bに外挿した金属製の筒状部材からなる他方の電極5bとで構成されるキャパシタ(所謂エアーギャップ式のもの)5と、電極5bに配線6aを介して接続される給電回路ユニット7と、一方の電極5aと吸着用電極4a,4bとの間に配線6bを介して接続される受電回路ユニット8とを備える。両電極5a,5bの表面積や両電極5a,5b相互間の距離は、用途に応じて、キャパシタ5に加わる電圧がパッシェンの法則で制限される放電電圧以下であるように適宜選択され、また、両電極5a,5bの対向する面積は同一である必要はない。
【0016】
給電回路ユニット7は、キャパシタ5を含む共振回路の共振周波数で発振する自励発振器71と、振幅変調を加える変調器72と、これらの作動を統括制御する、マイコンやメモリー等を備えた公知の給電回路制御部73とを備える。自励発振器71及び変調器72として、例えば公知の構造を有するオシレーターを用いることができ、その駆動周波数が100kHz〜数十MHzのものであり、高周波帯域の駆動周波数を含むものである。受電回路ユニット8は、例えばロボットアーム3の下面に取り付けられた金属製の筺体8a内に収納され、吸着用電極4a,4bに並列に設けた抵抗81と、キャパシタ5を通してこの抵抗81の両端に供給された搬送波を整流する整流回路82と、これらの作動を制御する、マイコンやメモリー等を備えた公知の受電回路制御部83とを備える。
【0017】
給電回路制御部73により自励発振器71から所定周波数の電力供給用の搬送波が出力されると、変調器72にて振幅変調がかけられ、キャパシタ5を通して、抵抗81の両端に変調された搬送波が供給される。そして、この搬送波が整流回路82で整流され、吸着用電極4aに、ウエハWの静電吸着に必要な(正)高電圧が印加されてウエハWがロボットハンド2に静電吸着される。この場合、特に図示して説明しないが、倍電圧整流方式などで昇圧するようにしてもよい。他方で、給電回路制御部73により自励発振器71から電力供給用の搬送波の出力が停止されると、吸着用電極4aへの電圧印加が停止されてロボットハンド2でのウエハWの吸着が解除される。なお、給電回路制御部73と受電回路制御部83は、例えば無線通信できるようにしている。また、一方の吸着用電極4bは、ロボットハンド2にアース接地され、また、抵抗81は、筺体8aにアース接地されている。
【0018】
ところで、上述したように搬送ロボットTrを構成した場合、各電極4a,4bへの給電のオンオフによるウエハWの静電吸着または解除は、搬送ロボットTrの動作と連動して行われる。この場合、静電チャック制御手段Ccを統括制御手段Mcに通信自在に接続し、統括制御手段Mcからの制御信号に応じて静電吸着または解除を制御することが考えられるが、これでは、統括制御手段Mcと、ロボット制御手段Rcと静電チャック制御手段Ccとの一方の通信を待って、その他方と統括制御手段Mcとの通信が行われることとなるので、応答時間が短くできるように構成することが望まれる。
【0019】
本実施形態では、静電チャック制御手段Ccが、統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの通信内容を監視し、この監視する通信内容を基に静電チャックによるウエハWの静電吸着または解除を制御するように構成した。即ち、例えば、統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとが給電回路ユニット7の給電回路制御部73を経由して相互通信するように構成され、給電回路制御部73が、統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの通信内容を常時監視するように構成されている。そして、統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの間で特定の制御信号が出力されたとき、給電回路制御部73により自励発振器71から所定周波数の電力供給用の搬送波が出力され、吸着用電極4aに、ウエハWの静電吸着に必要な(正)高電圧が印加されてウエハWがロボットハンド2に静電吸着される。
【0020】
このような制御信号としては、例えば、ロードロック室Bと処理室C1との間でウエハWを搬送する場合を例に説明すると、ロードロック室Bに存在するウエハWを受取る場合、先ず、統括制御手段Mcは、ロードロック室Bと処理室C1との間のゲートバルブGvを開けた後、ロボット制御手段Rcに対して、回転軸1a,1bを駆動してロボットハンド2の先端がロードロック室Bを指向する位置に旋回する制御信号を出力する。ロボットアーム3の旋回が終了すると、ロボット制御手段Rcは、統括制御手段Mcに対して旋回終了の制御信号を出力する。
【0021】
次に、統括制御手段Mcは、ロボット制御手段Rcに対して、回転軸1a,1bを更に駆動してロボットハンド2がロードロック室Bの所定位置に移動するようにロボットアーム3が伸びる制御信号を出力する。ロボットアーム3の伸びが終了すると、ロボット制御手段Rcは、統括制御手段Mcに対して伸び終了の制御信号を出力する。そして、統括制御手段Mcは、回転軸1a,1bに付設した昇降手段を介してロボットハンド2を上昇する制御信号を出力する。ロボットハンド2の上昇が終了すると、ロボット制御手段Rcは、統括制御手段Mcに対して上昇終了の制御信号を出力する。このとき、ロボット制御手段Rcの統括制御手段Mcに対する制御信号を監視している給電回路制御部73は、上昇終了という特定の制御信号を基に、自励発振器71から所定周波数の電力供給用の搬送波を出力し、吸着用電極4aに、ウエハWの静電吸着に必要な(正)高電圧が印加する。これにより、ウエハWがロボットハンド2に吸着保持される。
【0022】
次に、ロードロック室Bに存在するウエハWを受取った後、処理室C1に受け渡す場合には、上記と同様に通信して、ロボットハンド2の先端が処理室C1を指向する位置に旋回し、ロボットアーム3を伸ばす。そして、統括制御手段Mcは、昇降手段を介してロボットハンド2が下降を開始する制御信号を出力する。このとき、給電回路制御部73は、下降開始という特定の制御信号を基に、給電回路制御部73により自励発振器71から電力供給用の搬送波の出力が停止されると、吸着用電極4aへの電圧印加が停止されてロボットハンド2でのウエハWの吸着が解除される。
【0023】
以上の実施形態によれば、静電チャック制御手段Ccが、統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの通信内容を監視し、この監視する通信内容を基に、即ち、例えば統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの間で特定の制御信号が出力されたときに、ロボットハンド2でのウエハWの静電吸着または解除を行うため、統括制御手段Mcと、ロボット制御手段Rcと静電チャック制御手段Ccとの一方の通信を待って、その他方と統括制御手段Mcとの通信を行うものと比較してその応答時間を短くすることができる。その上、統括制御手段Mc自体の動作プログラムを変更する必要がなく、搬送ロボットTrを備えた既存の処理装置に静電チャックを後付けしようとする場合に有利となる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、所謂双極型のものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、単極型のものにも本発明は適用でき、また、静電チャックへの給電方法は上記のものに限定されるものではない。また、統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの通信を監視できるのであれば、静電チャック制御手段Ccの統括制御手段Mcやロボット制御手段Rcへの接続方法は上記に限定されるものではない。
【0025】
また、上記実施形態では、静電チャック制御手段Ccが監視する通信内容を基に静電チャックによるワークの静電吸着または解除を制御する場合の例として、統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの間で、ロボットアームの伸縮や昇降など搬送ロボットTrの動作に起因した特定の制御信号が出力されたときに制御するものを挙げたが、これに限定されるものではなく、搬送ロボットTrがワークを搬送するときの統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの間で出力される制御信号から適宜選択することができる。例えば、搬送ロボットTrがそのロボットハンド2に設置されるワークの存在を検知する機能を持ち、ロボット制御手段Rcから統括制御手段Mcに対してウエハの存在を検知した信号を出力する機能を持っているような場合には、そのときの統括制御手段Mcとロボット制御手段Rcとの通信を基に静電チャック制御手段Ccが静電チャックによるワークの静電吸着を制御することができ、静電チャックでワークを静電吸着している状態で、ロボットアーム3の伸び動作に起因した特定の制御信号が出力されたときに静電吸着の解除を制御することができる。
【0026】
他方で、上述したロードロック室Bと処理室C1との間でウエハWを搬送する場合の例では、給電回路制御部73が、上昇終了などの特定の制御信号を基に吸着用電極4aにウエハWの静電吸着に必要な(正)高電圧を印加したり、高電圧の印加を停止したりしているが、ロボット制御手段Rcは、統括制御手段Mcからロボットアーム3の伸びや縮みを出力を受けた時点でその動作完了までに要する時間が判っていることから、上昇終了などの特定の制御信号を待たずに、タイマーなどを用いた上記時点からのタイミング処理で、給電回路制御部73により吸着用電極4aにウエハWの静電吸着に必要な(正)高電圧を印加したり、電圧印加を停止したりすることもできる。
【0027】
更に、統括制御手段Mcが、例えば搬送ロボットTrによりワークの搬送を開始しようとするときに、静電チャック制御手段Ccにより静電チャックの吸着用電極に給電し、この状態でウエハWを受け取るように制御することができる。他方で、消費電力や静電チャックの残留電荷の増加等を考慮して、搬送ロボットTrによるウエハの搬送中にウエハに、所定以上の加速度が加わるようなときにだけ静電チャックの吸着用電極に給電するように構成してもよい。このような場合、特定の制御信号が出力された時点からのタイミング処理で給電回路制御部73により吸着用電極4aにウエハWの静電吸着に必要な(正)高電圧を印加したり、電圧印加を停止したりすればよい。
【0028】
また、上記実施形態では、吸着用電極4aにウエハWの静電吸着に必要な(正)高電圧を印加したり、電圧印加を停止したりするものを例に説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、吸着用電極4aに静電吸着されているウエハWを脱離する際に、吸着用電極4aに逆電位を印加したり、接地したりする制御回路が設けられているような場合にも本発明を適用してそのような制御回路の動作を制御することができる。
【符号の説明】
【0029】
VM…真空処理装置(処理装置)、Tr…搬送ロボット、Mc…統括制御制御手段、Cc…静電チャック制御手段、Rc…搬送ロボット制御手段、2…ロボットハンド、4a,4b…吸着用電極、5…キャパシタ、7…給電回路ユニット、73…給電回路制御部(静電チャック制御手段)。