特許第6182717号(P6182717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182717
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】印刷インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/033 20140101AFI20170814BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20170814BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C09D11/033
   C09D11/10
   B41M1/06
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-81170(P2013-81170)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-201713(P2014-201713A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】向井 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】杉田 達也
(72)【発明者】
【氏名】笠井 正紀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章雄
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−013344(JP,A)
【文献】 特開2010−059333(JP,A)
【文献】 特開昭58−140288(JP,A)
【文献】 特許第4923577(JP,B2)
【文献】 特開2007−112965(JP,A)
【文献】 特開2008−007684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00〜11/54
B41M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、水分散性樹脂(A)、沸点130℃以上の水溶性高沸点有機溶媒(B)、及び水(C)を含有する水なし平版インキであって、
前記水分散性樹脂(A)と前記水溶性高沸点有機溶媒(B)との比〔(a)/(b)〕(重量比)が0.8〜2.2であり、
且つ、前記水溶性高沸点有機溶媒(B)/水(C)との比〔(b)/(c)〕が0.8〜2.5であり、
前記水溶性高沸点有機溶媒(B)がグリセリンであることを特徴とする印刷インキ。
【請求項2】
前記水分散性樹脂(A)が、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、及び、α−オレフィンマレイン酸樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂である請求項1記載の印刷インキ。
【請求項3】
前記水分散性樹脂(A)の重量平均分子量が、5,000〜100,000である請求項1記載の印刷インキ。
【請求項4】
前記水分散性樹脂(A)が、スチレンアクリル樹脂であり、該樹脂の酸価が、30〜350である請求項2記載の印刷インキ。
【請求項5】
前記水分散性樹脂(A)が、α−オレフィンマレイン酸樹脂であり、該樹脂の酸価が、30〜450である請求項2記載の印刷インキ。
【請求項6】
前記水分散性樹脂(A)、水溶性高沸点有機溶媒(B)、水(C)を、(A)/(B)/(C)が1/1/1となるように均一に混合した場合、その液状混合物の動的粘弾性測定(25℃・1Hz)における粘度が100〜400Pa・S、且つ、tanδが1〜5である請求項1〜5のいずれか1つに記載の印刷インキ。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1つに記載の印刷インキを、印刷機周辺を加湿しながら印刷する印刷方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1つに記載の印刷インキを印刷機上で水分を添加しながら印刷する印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水なし平版インキに好適な印刷インキ、該印刷インキを用いた印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷は、高速、大量、安価に印刷物を供給するシステムとして広範に用いられている。平版印刷は非画線部に湿し水を供給し、湿し水とインキ反発性を利用し画像部と非画像部を形成してなるシステムである。近年、湿し水に関わる作業、環境上の問題を解決する方法として、水なし平版印刷法が提案され、特に湿し水に代わってインキ反発性を示すことを目的として非画線部にシリコーンゴムを設けて印刷する水無し印刷方法が実用化されている。
【0003】
このような技術としては、例えば、高速印刷適性、着肉性、汚れ耐性に優れ、且つ、水洗浄可能な水性平版印刷インキとして、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、α−オレフィンマレイン酸樹脂等の樹脂、植物油または植物油由来脂肪酸エステルと水とを必須成分とする印刷インキが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、該技術を輪転印刷等の高速印刷に用いる場合は、印刷インキ中の水分及び高沸点の有機溶剤成分を加熱除去して、瞬時にインキ皮膜を乾燥する必要があり、多くの乾燥エネルギーが必要であった。更に、乾燥時に水とともに揮発する有機溶剤成分大気中に放出しないように、アフターバーナーを設置して、燃焼除去することが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4923577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、印刷インキの乾燥性を向上するとともに、印刷及び乾燥時に有機溶剤成分の揮発を必要とせず、乾燥排気ガスの燃焼処理を要しない印刷インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決すべく、鋭意検討の結果、特定の樹脂、高沸点の水溶性溶剤、及び、水を必須成分とする印刷インキ組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、顔料、水分散性樹脂(A)、沸点130℃以上の水溶性高沸点有機溶媒(B)、及び水(C)を含有する水なし平版インキであって、
前記水分散性樹脂(A)と前記水溶性高沸点溶媒(B)との比〔(a)/(b)〕(重量比)が0.8〜2.2であり、
且つ、前記水溶性高沸点溶媒(B)/水(C)との比〔(b)/(c)〕が0.8〜2.5であることを特徴とする印刷インキ、該印刷インキを用いた印刷方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷時に、有機溶剤成分を、大気中に放出せずに乾燥皮膜を得ることができ、高速印刷適性、着肉性、汚れ耐性に優れ、乾燥エネルギーの低減された印刷インキを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いる顔料としては、無機顔料および有機顔料を示すことができる。無機顔料としては硫酸バリウム、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉等が、有機顔料としては、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系、β−オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系モノアゾ、アセト酢酸アリリド系ジスアゾ、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系等)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系等の多環式顔料および複素環式顔料等の種々の顔料が使用可能である。
【0011】
本発明に用いる水分散性樹脂(A)としては、水分散性、或いは、水溶性の合成樹脂であれば特に限定されないが、例えば、それぞれ、水分散性、或いは、水溶性のアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、α−オレフィンマレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂(アルキド樹脂も含む)、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。前記樹脂類は、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、及び、α−オレフィンマレイン酸樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルから選ばれる1種以上の単量体を付加重合して得られる樹脂である。水酸基、エポキシ基、アミノ基等の官能基を分子中に含有する共単量体を用いることもできる。さらに酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル単量体を一部共重合することも可能である。
【0012】
なお、これらの樹脂を水溶化または水分散化するには、アクリル酸、メタクリル酸等の酸基含有単量体を共重合した後に、塩基性化合物で中和することが必要である。酸価は30〜350がインキ保存安定性の点で好ましい。また、分子内に、ポリオキシアルキレン骨格を含有する単量体類を共重合させて、ポリオキシアルキレン構造を導入することより水溶化または水分散化することも可能である。これらの樹脂は、特に、良好なインキ保存安定性、高速印刷適性が得られることから、重量平均分子量は3000〜100000であることが好ましい。
【0013】
前記塩基性化合物としては、沸点が130℃以上、より好ましくは200℃以上の化合物が、印刷時の乾燥排気ガスの燃焼処理を要しないことから好ましい。これらの化合物としては、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、シクロヘクシルジエタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン等が挙げられる。なお、以下に挙げる樹脂についても、同様の手法で、水溶化または水分散化可能である。
【0014】
前記スチレンアクリル樹脂としては、前記アクリル樹脂において、スチレンを単量体成分として含有する樹脂である。これらの樹脂の酸価は30〜350がインキ保存安定性の点で好ましい。また、分子内にポリエチレンオキサイド基を含有する単量体の共重合により水溶化または水分散化することも可能である。良好なインキ保存安定性、高速印刷適性の点から、重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0015】
前記スチレンマレイン酸樹脂としては、スチレンと無水マレイン酸を必須成分とした単量体を共重合して得られる樹脂である。他の単量体を一部共重合することもできる。また、必要に応じて、さらに、水酸基含有化合物やアミノ基含有化合物で一部変性してもよい。酸無水物基または変性後の酸基の一部または全部を塩基性化合物で中和することにより水溶性または水分散性樹脂を得ることができる。酸価は30〜450がインキ保存安定性の点で好ましい。重量分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0016】
前記α−オレフィンマレイン酸樹脂としては、α−オレフィンと無水マレイン酸を単量体の必須成分として、共重合して得られる樹脂である。更に、他の単量体を一部共重合することもできる。また、水酸基含有化合物やアミノ基含有化合物で一部変性してもよい。酸無水物基または変性後の酸基の一部または全部を塩基性化合物で中和することにより水溶性または水分散性樹脂を得ることができる。酸価は30〜450がインキ保存安定性の点で好ましい。重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂としては、ポリエステル鎖の一部に親水性基を導入した樹脂、或いは、カルボキシル基を有するアルキド樹脂等が挙げられ、酸価は30〜450がインキ保存安定性の点で好ましい。重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0018】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートと親水性基を有するアルコール成分とを反応したものが挙げられる。酸価は30〜450がインキ保存安定性の点で好ましい。重量平均分子量は5,000〜100,000が好ましい。
【0019】
本発明で用いる130℃の水溶性高沸点有機溶媒(B)としては、沸点が130℃以上であれば特に限定されるものではないが、沸点200℃以上の有機溶媒がより好ましい。これらの例としては、良好な樹脂溶解性を有するために、2価以上のポリオール化合物が好ましい。これらの2価以上のポリオール化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、アセチレンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンが好ましい。
【0020】
また、前記水分散性樹脂(A)と前記水溶性高沸点溶媒(B)との比〔(a)/(b)〕(重量比)が0.8〜2.2であることが必須であり、特に0.8〜2.0であることが好ましい。
前記〔(a)/(b)〕が0.8未満の場合、乾燥後のインキ皮膜中に残留する高沸点溶媒に対する樹脂の比率が小さすぎるため、高沸点溶媒がインキ皮膜から分離し、乾燥皮膜が得られない。
前記〔(a)/(b)〕が2.2超の場合、インキ中の樹脂含有量が多くなり、インキ粘度及びタックが高くなりすぎて、版の画線部への着肉が悪く、安定な印刷物が得られない。
【0021】
本発明で用いる水は、前記水溶性高沸点溶媒(B)/水(C)との比〔(b)/(c)〕が0.8〜2.5であることが必須であり、特に1.0〜2.5であることが好ましい。
前記〔(b)/(c)〕が0.8未満の場合、インキ中の水分含有量が多く、また樹脂含有量が少なすぎるため、インキ粘度及びタックが低すぎて、版の非画線部からインキが剥がれ辛く、安定な印刷物が得られない。
【0022】
前記〔(b)/(c)〕が2.5超の場合、インキ中の水分含有量が少なすぎるため、印刷中にインキ中の水分含有量が揮発等により減少した場合、急激にインキ粘度及びタックが増大して、安定な印刷物が得られない。
【0023】
また、前記水分散性樹脂(A)、水溶性高沸点溶剤(B)、水(C)を(A)/(B)/(C)を1.0/1.0/1.0(重量比)で均一に混合した場合、その液状混合物の25℃の粘度が100〜400Pa・S、であり、且つ、その液状混合物の動的粘弾性測定(25℃・1Hz)におけるtanδが1〜5であることが好ましい。
【0024】
粘度が高すぎる場合、或いは、tanδが低すぎる場合は、それらを用いて構成されるインキの流動性が小さすぎるため、十分なインキ転移性が得られない場合がある。また、粘度が低すぎる場合、或いは、tanδが高すぎる場合は、それらを用いて構成されるインキの弾性が小さすぎるため、水なし平版上で地汚れを発生し、良好な印刷物が得られない場合がある。
【0025】
なお、前記粘度、tanδは、HAAKE社製、粘度・粘弾性測定装置RS600を用いて得られた値である。
【0026】
本発明の水なし平版インキには、必要に応じて、界面活性剤を添加してもよい。この場合、使用可能な界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系及びノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる顔料としては、特に限定されず、種々の顔料を用いることができる。例えば、無機顔料および有機顔料を示すことができる。無機顔料としては硫酸バリウム、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉等が、有機顔料としては、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系、β−オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系モノアゾ、アセト酢酸アリリド系ジスアゾ、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系等)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系等の多環式顔料および複素環式顔料等の種々の各種顔料が使用可能である。
【0028】
本発明の印刷インキは、必要に応じて、植物油または植物油由来脂肪酸エステルを配合してもよい。例えば、植物油としては、本発明に用いられる植物油として、大豆油、亜麻仁油、キリ油、ひまし油、脱水ひまし油、コーン油、サフラワー油、南洋油桐油、再生植物油、カノール油等の油類及びこれらの熱重合油、酸化重合油がある。また、本発明に用いられる植物油脂肪酸エステルとしては、アマニ油脂肪酸メチルエステル、アマニ油脂肪酸エチルエステル、アマニ油脂肪酸プロピルエステル、アマニ油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸エチルエステル、大豆油脂肪酸プロピルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸エチルエステル、パーム油脂肪酸プロピルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、ひまし油脂肪酸メチルエステル、ひまし油脂肪酸エチルエステル、ひまし油脂肪酸プロピルエステル、ひまし油脂肪酸ブチルエステル、再生植物油のエステル、南洋油桐油のエステル等が挙げられる。また、本発明に用いられる植物油を原料とするエーテルの例としては、ジ−n−オクチルエーテル、ジ−ノニルエーテル、ジヘキシルエーテル、ノニルヘキシルエーテル、ノニルブチルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルオクリルエーテル等が挙げられる。
【0029】
本発明の水なし平版インキを用いて、印刷する際には、下記の方法を採用することが好ましい。
(1)前記水なし平版インキを用いて印刷する印刷方法であって、前記水なし平版インキ中の水のみを揮発させる印刷方法。
(2)前記水なし平版インキを、印刷機周辺を加湿しながら印刷する印刷方法。
(3)前記水なし平版インキを印刷機上で水分を添加しながら印刷する印刷方法。
【実施例】
【0030】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、例中の部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0031】
製造例1
還流冷却器、攪拌機、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール500部を仕込んで撹拌を開始し、80℃まで昇温した。ここに窒素気流下で、スチレン100部、メチルメタクリレート160部、ブチルアクリレート140部、アクリル酸100部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とを5時間かけて連続滴下した。80℃で2時間攪拌後、IPAを減圧脱溶剤にて留去することにより固形アクリル樹脂(R−1)を得た。この固形アクリル樹脂(R−1)の酸価は156mgKOH/gであった。
【0032】
製造例2
還流冷却器、攪拌機、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール500部を仕込んで撹拌を開始し、80℃まで昇温した。ここに窒素気流下で、スチレン100部、メチルメタクリレート220部、ブチルアクリレート164部、アクリル酸16部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とを5時間かけて連続滴下した。80℃で2時間撹拌後、IPAを減圧脱溶剤にて留去することにより固形アクリル樹脂(R−2)を得た。この固形アクリル樹脂(R−2)の酸価は25mgKOH/gであった。
【0033】
実施例1〜4、比較例1〜3
下記表1−1、1−2に示す組成で、ワニス1〜7を調製した。なお、表中のDMEAはジメチルエタノールアミンを表す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
次いで、下記表2に示す組成で、印刷インキを製造し、次いで、後述する方法で評価した。得られた結果を表2−1、2−2に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
・粘度、tanδ
Thermo ELECTRON CORPORATION社製の粘度・粘弾性測定装置「HAAKE RheoStress 600」を用いて、温度:25℃、周波数:1Hz、応力:50Pa、Rotor:PP35、ギャップ:0.5mmの条件でワニスの粘度、およびtanδを測定した。
【0040】
・印刷適性
画線が形成されたプレステック社製の水なし版を上部ゴムロールに貼り付けた東洋精機(株)製インコメーターに、インキ0.5ccを塗布し、ローラー温度32℃で回転スピードを50rpmにした場合と100rpmにした場合の2条件にて、1分間回転させた時の版上の画線の形成度合いを目視で観察して、水なし印刷適性を評価した。
A:印刷適性に優れる。・・・・・・・回転スピード50、100rpmともに画線が再現されている。
B:印刷適性が実用レベル。・・・・・回転スピード50では非画線にインキが付着したままで画線が形成されないが、100rpmでは画線が再現されている。
C:印刷適性が実用レベルにない。・・・回転スピード50,100rpmともに非画線にインキの汚れが付着したままで画線が形成されなかったり、或いは画線へのインキ着肉が悪かったりして、画線が再現できない。
【0041】
・乾燥性
インキを印刷用紙上にバーコーター(No.6)で塗布して印刷試料片を作成。IRドライヤーを用いて当試料片の紙面温度を100℃となるまで加熱。その後冷却させた試料片のインキ塗膜の硬化状態を指触で確認して乾燥性を評価した。
A:乾燥性に優れる。・・・・・・・塗膜表面にベタツキはなく、白紙で表面を擦ると滑る。
B:乾燥性が実用レベル。・・・・・塗膜表面にベタツキは感じられないが、白紙で表面を擦ると、多少抵抗がある。
C:乾燥が実用レベルにない。塗膜表面にベタツキがあり、白紙で表面を擦ると白紙にインキ塗膜が付着する。
【0042】
・光沢
インキを印刷用紙上にバーコーター(No.6)で塗布して印刷試料片を作成。IRドライヤーを用いて当試料片の紙面温度を100℃となるまで加熱。その後冷却させた試料片のインキ塗膜表面の光沢を、BYK Gardner社製 マイクロ−トリ−グロス光沢計(入射/反射=60°/60°)を用いて測定した。
A:光沢に優れる。・・・・・・・現行の通常オフ輪インキに比べて光沢が高い。
B:光沢が実用レベル。・・・・・現行の通常オフ輪インキに比べて光沢が同程度。
C:光沢が実用レベルにない。・・現行の通常オフ輪インキに比べて光沢が低い。