(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6182743
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/015 20060101AFI20170814BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
A23D7/015 500
A23D7/005
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-72659(P2013-72659)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-195427(P2014-195427A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 三希
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 孝
【審査官】
伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−194300(JP,A)
【文献】
特開2009−278916(JP,A)
【文献】
特開平07−039303(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/029672(WO,A1)
【文献】
特開2009−279012(JP,A)
【文献】
特開平04−211330(JP,A)
【文献】
米国特許第05279844(US,A)
【文献】
特開昭63−104643(JP,A)
【文献】
特表2007−529214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンのいずれか1種以上を0.1〜30重量%およびゼリー強度が170g以上260g以下のゼラチンを0.1〜30重量%、乳化剤を含有することを特徴とする油相が10〜40重量%である油中水型乳化組成物。
【請求項2】
前記酸化デンプンおよび/またはヒドロキシプロピルデンプンを0.5〜20重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項3】
前記ゼラチンを0.5〜20重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項4】
前記乳化剤を0.015〜4.0重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンのいずれか1種以上およびゼラチンを含有することを特徴とする油相が10〜40重量%である油中水型乳化組成物に関する。本発明は、乳化安定性、組織状態、充填適性、風味発現性が良好であり、微生物育成が抑制され、また、その製造方法が簡便な油中水型乳化組成物を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、低脂肪スプレッドを製造するために多種の方法が取られてきた。例えば、非結晶水和澱粉を用いる方法(特許文献1)、リン脂質と乳化剤を用いる方法(特許文献2)、乳化剤とゼラチンを用いる方法(特許文献3)、さらに、微細孔を有する多孔膜を用いる方法(特許文献4)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−145046号公報
【特許文献2】WO1999/027797号パンフレット
【特許文献3】特開平6−237690号公報
【特許文献4】特開平5−284909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、得られた低脂肪スプレッドの乳化安定性、組織状態、充填適性、風味発現性、微生物育成の全てを満足することは難しく、また、その製造方法も必ずしも簡便なものではなかった。
特許文献1では、非結晶水和澱粉の架橋型デンプンおよび保存料のソルビン酸カリウムを用いてマーガリンを調製し、微生物学的安定性等を評価しているが、用いるデンプンは非結晶水和澱粉であり、かつ、カビ耐性が良好でなく、ソルビン酸カリウム等の保存料を使用する必要があった。特許文献2や特許文献3では、離水防止のためにスプレッドにゼラチンを用いることが開示されているが、酸化デンプンやヒドロキシプロピルデンプンについての開示はない。特許文献4は、微細孔径を有する多孔膜を通して圧入した水相と、これとは異なる粒子径の水相とを油相中に有してなる混合油中水型エマルションを調製し、この混合油中水型エマルションを急冷可塑化することを特徴とするスプレッドの製造法が開示されているが、多孔膜等の新たな設備が必要となっていた。
【0005】
本発明の目的は、乳化安定性、組織状態、充填適性、風味発現性が良好であり、微生物育成が抑制された油中水型乳化組成物、またその製造方法が簡便な油中水型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンのいずれか1種以上およびゼラチンを含有することにより前記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンのいずれか1種以上およびゼラチンを含有することを特徴とする油相が10〜40重量%である油中水型乳化組成物。
(2)前記酸化デンプンおよび/またはヒドロキシプロピルデンプンを0.1〜30重量%含有することを特徴とする上記(1)に記載の油中水型乳化組成物。
(3)前記ゼラチンを0.1〜30重量%含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の油中水型乳化組成物。
(4)さらに乳化剤を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
(5)前記乳化剤を0.015〜4.0重量%含有することを特徴とする上記(4)に記載の油中水型乳化組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乳化安定性、組織状態、充填適性、風味発現性が良好であり、微生物育成が抑制された油相10〜40重量%の油中水型乳化組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の油中水型乳化組成物について詳細に説明する。
本発明の油中水型乳化組成物は、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンのいずれか1種以上およびゼラチンを含有することを特徴とする油相が10〜40重量%である油中水型乳化組成物である。本発明における油中水型乳化組成物とは、油相が10〜40重量%の油中水型乳化組成物をいう。本発明の油中水型乳化組成物としては、油相が10〜40重量%であるいわゆる低脂肪マーガリン、低脂肪スプレッドや低脂肪食品油脂加工品を例示できるが、油相が該範囲に入る油中水型乳化油脂組成物であれば特に限定されるものではない。
【0009】
本発明における油脂原料としては、通常のマーガリンやスプレッド等の油中水型乳化組成物の製造で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ナタネ油、大豆油、パーム油、コーン油、サフラワー油、ヤシ油、オリーブ油等の植物油脂、乳脂肪、魚油、牛脂、豚脂等の動物油脂およびこれらの硬化油、エステル交換油、分別油等のいずれでも、あるいはこのような油脂を組み合わせたものであっても使用することができる。好ましくは、栄養成分基準に基づくコレステロールの表示がゼロで、米国食品医薬品局(FDA)に基づくトランス脂肪酸の表示がゼロ、デンマーク基準に合致するものを使用することができる。これらの油脂原料量により、油中水型乳化油脂組成物の油相を10〜40重量%に調整することができる。
【0010】
本発明における酸化デンプンとしては、食品添加物として許容されるものであればよく、例えば、酸化度の低いものから高いものまで使用することができ、好ましくは低いものから中程度のものを使用することができるが特に限定されるものではない。
このような酸化デンプンの配合量は、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%が更に好ましい。0.1重量%未満であると離水がややあり、組織状態がやや悪く、風味発現性もやや劣り、30重量%を超えると濃い色の組織と薄い色の組織がやや混在するやや均一ではない組織になり、風味発現性もやや劣り、微生物育成抑制がやや劣る場合がある。
【0011】
本発明におけるヒドロキシプロピルデンプンとしては、食品添加物として許容されるものであればよく、例えば、エーテル化度の低いものから極めて高いものまで、更に酸処理で低粘度化したものを使用することができ、好ましくはエーテル化度の高いものから極めて高いものを使用することができるが、特に限定されるものではない。
このようなヒドロキシプロピルデンプンの配合量は、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%が更に好ましい。0.1重量%未満であると離水がややあり、組織状態がやや悪く、風味発現性もやや劣り、30重量%を超えると濃い色の組織と薄い色の組織がやや混在するやや均一ではない組織になり、風味発現性がやや劣り、微生物育成抑制がやや劣る場合がある。なお、酸化デンプンとヒドロキシプロピルデンプンを合わせて用いることもできる。
【0012】
本発明におけるゼラチンとしては、食品添加物として許容されるものであればよく、例えば、牛アルカリ処理ゼラチン、豚酸処理ゼラチン、豚アルカリ処理ゼラチン、魚ゼラチンが挙げられ、ゼリー強度では60〜330gのものを使用することができ、好ましくはゼリー強度170〜260gのものを使用することができるが特に限定されるものではない。ゼリー強度は、JIS K6503−2001に準じて測定したものである。
このようなゼラチンの配合量は、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%が更に好ましい。0.1重量%未満であるとナイフで表面を削るとやや滑らかではなく、組織状態がやや悪く、風味発現性もやや劣り、30重量%を超えると充填時にキレがやや悪くて容器ふちに内容物が付着する等充填適性がやや悪く、風味発現性もやや劣り、微生物育成がやや劣る場合がある。
【0013】
本発明においては、水系原料として酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンのいずれか1種以上、およびゼラチン等を含有するが、通常のマーガリンやスプレッド等の油中水型乳化組成物の製造で用いられる水系原料であれば特に限定されず、必要に応じて用いることができる。
【0014】
本発明においては、さらに油系原料としての乳化剤を含有させてもよい。乳化剤としては、食品添加物として許容されるものであればよく、例えば、キラヤ抽出物、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン酢酸エステル)、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、植物性ステロール、植物レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、分別レシチン、卵黄レシチン、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、およびポリソルベート80を使用することができ、好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、より好ましくはHLB5以下のグリセリン脂肪酸エステルとHLB2以下のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)を組み合わせて使用することができるが特に限定されるものではない。
このような乳化剤の配合量は、0.015〜4.0重量%が好ましく、0.06〜1.5重量%がより好ましく、0.15〜0.8重量%が更に好ましい。0.015重量%未満であると、乳化安定性がやや悪く、組織状態もやや悪く、4.0重量%を超えると組織状態がやや悪く、風味発現性もやや劣る場合がある。複数の乳化剤を組み合わせる場合は、その総量が前記配合量であることが好ましい。なお、通常のマーガリンやスプレッド等の油中水型乳化組成物の製造で用いられる油系原料を必要に応じて用いることができる。
【0015】
次に、本発明の油中水型乳化組成物の製造について説明する。本発明の油中水型乳化組成物の製造における各処理操作は、公知の方法に従って行うことが出来る。例えば、まず油脂原料、油系原料等を用いて油相を調製した後、水系原料等を含有する水相を調製する。そして、先に調製した油相に水相を乳化、分散させて乳化物を得る。この乳化物を必要に応じて、定法により殺菌、冷却、急速可塑化して練圧することにより油中水型乳化組成物を得ることができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
表1に示す配合に従い油脂原料が19重量%の低脂肪スプレッドを調製した。
【0018】
【表1】
【0019】
まず、油脂原料に油系原料(乳化剤)を添加し、60℃に保持しながら撹拌し、乳化剤を溶解させて油相を調製した。次いで、60〜80℃の温水に水系原料を添加、混合して溶解して水相とした。油相に水相を撹拌しながら添加して乳化させた。得られた乳化物を90℃まで昇温させ殺菌した後40℃まで冷却し、コンビネーターを急冷可塑化機として用い、15℃に冷却、練圧することによりスプレッド9種(実施例品1、2、比較例品1〜7)を得た。
【0020】
得られたスプレッドを容器に充填して5℃に保存した後、組織状態、充填適性、風味発現性、微生物育成について評価した。なお、乳化安定性は前述の乳化物について評価した。乳化安定性、組織状態、充填適性については目視評価を、風味発現性については官能評価の訓練を積んだ専門パネル10名によって5点法で実施した。また、微生物の育成は、表面にカビ培養液を散布したスプレッドを25℃で30日間保存し、表面(8.5×11cm)のカビ数を計測することにより実施した。結果は、次の評価基準に基づいて評価した。更に、総合評価として上記指標を総合的に判断した結果を5点法で実施した。
【0021】
(乳化安定性)
5:乳化が極めて安定している。
4:乳化が安定している。
3:乳化がやや安定している。
2:乳化がやや不安定である。
1:乳化が不安定で転相している。
【0022】
(組織状態)
5:組織が良好であり、離水がない。
4:組織がやや良好であり、離水がない。
3:組織がやや良好であり、離水がややある。
2:組織がやや良好であるが、離水がある。
1:組織が荒い、および/又は離水が多い。
【0023】
(充填適性)
5:充填ノズルからミックスが垂れない。
4:充填ノズルからミックスが極稀に垂れる。
3:充填ノズルからミックスが稀に垂れる。
2:充填ノズルからミックスが時々垂れる。
1:充填ノズルからミックスが常に垂れる。
【0024】
(風味発現性)
5:風味の発現が良好である。
4:風味の発現がやや良好である。
3:風味の発現が普通である。
2:風味の発現がやや悪い。
1:風味の発現が悪い。
【0025】
(微生物育成)
3:育成が抑制されている(表面のカビ数が0である)。
2:育成がやや抑制されている(表面のカビ数が5未満である)。
1:育成が抑制されない(表面のカビ数が5以上である)。
【0026】
(総合評価)
5:油中水型乳化組成物として極めて好ましい。
4:油中水型乳化組成物として好ましい。
3:油中水型乳化組成物としてやや好ましい。
2:油中水型乳化組成物としてやや劣る。
1:油中水型乳化組成物として劣る。
【0027】
結果を表2に示した。表2から明らかなように、実施例品1および2は、全ての評価項目で良好であった。一方、比較例品1〜7のものは、いずれかの評価項目が良好ではなく総合評価も低かった。
【0028】
【表2】
【0029】
[実施例2]
表3−1、表3−2に示す配合に従い、油脂原料が15重量%の低脂肪スプレッドを調製した。調製方法、および評価方法は実施例1と同様に行った。
【0030】
【表3-1】
【0031】
【表3-2】
【0032】
結果を表4−1、表4−2に示した。表から明らかなように、酸化デンプンの配合量が0.1〜30重量%、特に0.5〜20重量%、更に1〜10重量%で評価が高かった。
【0033】
【表4-1】
【0034】
【表4-2】
【0035】
[実施例3]
表5−1、表5−2に示す配合に従い、油脂原料が39重量%の低脂肪スプレッドを調製した。調製方法、および評価方法は実施例1と同様に行った。
【0036】
【表5-1】
【0037】
【表5-2】
【0038】
結果を表6−1、表6−2に示した。表から明らかなように、ヒドロキシプロピルデンプンの配合量が0.1〜30重量%、特に0.5〜20重量%、更に1〜10重量%で評価が高かった。
【0039】
【表6-1】
【0040】
【表6-2】
【0041】
[実施例4]
表7−1、表7−2に示す配合に従い、油脂原料が10重量%の低脂肪スプレッドを調製した。調製方法、および評価方法は実施例1と同様に行った。
【0042】
【表7-1】
【0043】
【表7-2】
【0044】
結果を表8−1、表8−2に示した。表から明らかなように、ゼラチンの配合量が0.1〜30重量%、特に0.5〜20重量%、更に1〜10重量%で評価が高かった。
【0045】
【表8-1】
【0046】
【表8-2】
【0047】
[実施例5]
表9−1、表9-2に示す配合に従い、油脂原料が20重量%の低脂肪スプレッドを調製した。調製方法、および評価方法は実施例1と同様に行った。
【0048】
【表9-1】
【0049】
【表9-2】
【0050】
結果を表10−1、表10−2に示した。表から明らかなように、乳化剤の含有量が0.015〜4.0重量%、特に0.06〜1.5重量%、更に0.15〜0.8重量%で評価が高かった。
【0051】
【表10-1】
【0052】
【表10-2】
【0053】
本発明は、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンのいずれか1種以上およびゼラチンを含有する油相が10〜40重量%である油中水型乳化組成物に関し、本発明の油中水型乳化油脂組成物は、乳化安定性、組織状態、充填適性、風味発現性が良好であり、微生物育成が抑制され、また、その製造方法が簡便な油中水型乳化組成物であり、低脂肪マーガリン、低脂肪スプレッド、各種低脂肪食品油脂加工品として提供できる。