【実施例】
【0044】
次に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
【0045】
実施例および比較例で作製したゴルフクラブ用シャフトの材料を以下に示す。
【0046】
プリプレグA:炭素繊維プリプレグ MRX350E100R(厚さ0.093mm、三菱レイヨン株式会社製)
プリプレグB:炭素繊維プリプレグ HSX350C100S(厚さ0.076mm、三菱レイヨン株式会社製)
プリプレグC:炭素繊維プリプレグ MR350J050S(厚さ0.050mm、三菱レイヨン株式会社製)
プリプレグD:炭素繊維プリプレグ MRX350C100R(厚さ0.084mm、三菱レイヨン株式会社製)
プリプレグE:炭素繊維プリプレグ MRX350C150S(厚さ0.127mm、三菱レイヨン株式会社製)
プリプレグF:炭素繊維プリプレグ TR350E125S(厚さ0.113mm、三菱レイヨン株式会社製)
(実施例1)
<マンドレル>
図3に示す形状のマンドレル11(鉄製)を用意した。このマンドレル11は、全体の長さL27にあって、その細径端P21から長さL21の位置(切換点)P22まで、その外径が直線的に漸増し、同様にP22から長さL22の位置P23まで、P23から長さL23の位置P24まで、P24から長さL24の位置P25まで、P25から長さL25の位置P26まで、その外径が直線的に漸増している。そして、切換点P26から長さL26の大径端P27まで、その外径は一定である鉄製の円筒体からなる。本実施例による前記マンドレル11の各部位における具体的な外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
【0047】
細径端P21の外径は4.20mm、切換点P22の外径は5.80mm、切換点P23の外径は7.30mm、切換点P24の外径は10.50mm、切換点P25の外径は12.10mm、切換点P26の外径は13.50mm、この切換点P26から太径端P27までは同一外径であり、その外径は13.50mmである。細径端P21から切替点P22までの長さL21は200mm、切替点P22から切替点P23までの長さL22は100mm、切替点P23から切替点P24までの長さL23は330mm、切替点P24から切替点P25までの長さL24は200mm、切替点P25から切替点P26までの長さL25は200mm、切替点P26から太径端P27までの長さL26は470mmである。マンドレル11の全体長さL27は1500mmとなる。
【0048】
また、細径端P21から切替点P22までのテーパー度は8.00/1000、切替点P22から切替点P23までのテーパー度は15.00/1000、切替点P23から切替点P24までのテーパー度は9.70/1000、切替点P24から切替点P25までのテーパー度は8.00/1000、切替点P25から切替点P26までのテーパー度は7.00/1000となっている。
【0049】
<プリプレグの裁断および巻きつけ>
図4のパターン1〜7に示す形状に各種プリプレグ(プリプレグA〜F)を裁断した。これら全てのパターンを、マンドレル11の細径端部から90mmの位置を巻き付け位置の基準点とし、パターンの細径端側をこの基準点に合わせて巻き付ける。これにより、得られるゴルフクラブ用シャフトの細径端部より370mmから770mmにおける領域において、テーパー度が3段階に亘って漸減する形状となる。
【0050】
パターン1では、プリプレグAのサイズを、シャフトの長手軸方向に繊維が配向し、
図4中のla、lbが、それぞれ、la=110mm、lb=100mmであり、laの範囲では巻き回数が3回となり、lbの範囲では巻き回数が漸減するよう調整した。
【0051】
パターン2では、シャフトの長手軸方向に対し+45°裁断したプリプレグB、同様に−45°に裁断したプリプレグBを、これらが実質的に半周ずれるようずらして貼り合わせた。そして、この2枚を貼り合わせたプリプレグBのサイズを、全長が1190mmで、巻き回数が3回となるよう調整した。
【0052】
パターン3では、プリプレグCのサイズを、シャフトの長手軸方向に対し90°に繊維が配向し、全長が1190mmであり、巻き回数が1回となるよう調整した。
【0053】
パターン4〜6では、プリプレグD,Eのサイズを、シャフトの長手軸方向に繊維が配向し、全長が1190mmであり、巻き回数が1回となるよう調整した。
【0054】
パターン7では、プリプレグDのサイズを、シャフトの長手軸方向に繊維が配向し、
図4中のlc、ldが、それぞれ、lc=170mm、ld=140mmであり、lcの範囲では巻き回数が2回となり、ldの範囲では巻き回数が漸減するよう調整した。
【0055】
パターン8では、プリプレグFのサイズを、シャフトの長手軸方向に繊維が配向し、細径端部の外径が8.70mm程度になるよう調整した。
【0056】
次に、それぞれ裁断したプリプレグをパターン1〜7の順番にマンドレル11に巻き付けた。巻き付けは、マンドレルの細径端部から90mmを巻き付けの端部とした。
次に、厚さ20μm、幅30mmの熱収縮性を有するポリプロピレンテープ(不図示)を巻き付けピッチ2mmで巻き付け固定し、マンドレル11に形成したシャフト素管を得た。
【0057】
<樹脂の硬化、およびシャフト素管表面の研磨>
シャフト素管を硬化炉に入れ、145℃で2時間加熱してプリプレグの樹脂の硬化処理を行った後、ポリプロピレンテープとマンドレル11とを取り除いた。得られたゴルフクラブ用シャフト素管の両端を11mmカットして全長を1168mmとした。研磨前のシャフトの片持ちフレックス(細径端から920mmの位置を固定して、シャフト細径端から10mmの位置に3kgの錘を掛けたときのシャフト細径端のたわみ量)は136mmであった。また研磨前のゴルフクラブ用シャフト素管の細径端の外径は8.71mm、太径端の外径は15.27mmであった。
【0058】
このゴルフクラブ用シャフト素管を、細径端の外径が8.50mm、片持ちフレックスが152mmとなるよう、円筒研磨機で表面の研磨仕上げを行い、実施例のゴルフクラブ用シャフトを得た。また、得られたゴルフクラブ用シャフトの外径を測定した結果、
図11に示す通り、細径端部より370mmから770mmにおける領域において、テーパー度が3段階に亘って漸減する形状が得られた。
【0059】
実施例のゴルフクラブ用シャフトの質量は59.1g、シャフトのねじれ角(シャフト細径端から1035mmの位置を固定し、シャフト細径端〜シャフト細径端から50mmの位置に、138.5kgf・mmのトルクを掛けたとき、シャフトがねじれた角度。)は3.8度であった。
【0060】
<シャフトのEI値の測定>
本発明で採用しているシャフトの曲げ剛性EI値は、特開2001−120696公報に記載の方法で求めた。すなわち、
図5のように、シャフトを支点間距離300mmで支持し、シャフトの細径端部からの距離L(mm)の位置に荷重20kgを加え、距離L(mm)における曲げたわみ量(mm)を求めた。そして、支点間距離をa(mm)、荷重をb(kg)、曲げたわみ量をc(mm)とし、これらの値から下記式により、距離L(mm)におけるEI値[kgf・mm
2]を求めた。
【0061】
EI値=(1/48)×(b・a
3/c)
そして、シャフト上の所定位置の曲げ剛性EI
L(mm)を計測する計測工程と、シャフトが下部支持ジグに接する位置を太径側に所定の長さずつ移動させて距離Lを増加させて、計測工程を繰り返す反復工程と、計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,EI
L)を得る。次に、細径端部より370mmから770mmの領域における50mmごとの距離L(mm)と、前記距離Lの位置における曲げ剛性EI
L(×10
6kgf・mm
2)とからなる曲げ剛性群(L,EI
L)を(x,y)とし、該(x,y)を最小二乗法により、下記式(A)に直線回帰した後、下記式(A)の相関係数の二乗R
12を算出すると、0.9994であった(
図10参照)。
y=−a
1x+b
1・・・(A)
<外径の測定>
シャフトの距離L=350〜800mmにおける外径は、マイクロメーターを使用し、25mm間隔で測定した(
図11参照)。
【0062】
<ゴルフクラブヘッド、およびグリップの取り付け>
実施例のゴルフクラブ用シャフトに、市販のチタン製ドライバー用ゴルフクラブヘッド(体積440cm
3、質量203g、ロフト角9.5°)をエポキシ樹脂接着剤で細径端部に取り付けた。さらに、シャフト太径端部を70mmカットし、このシャフトに市販のゴム製グリップを、両面テープを使って取り付け、実施例のゴルフクラブを製作した。
【0063】
<打球の評価>
実施例のゴルフクラブを株式会社ミヤマエ製ゴルフ試打ロボット「SHOTROBO−IV」を用いてゴルフボールを5回打球し、ISG社製「TRACKMAN」にて飛距離計測等の測定を実施した。測定した結果を表1に示す。なお、表1中、回転軸の平均値は、飛球方向を0°とし、回転軸右方向(スライス)を正(+)とし、かつ回転軸左方向(フック)を負(−)として、10回の打球で測定されたそれらの値を足して合算値を算出し、その合算値を打球の回数(5回)で除することで求められた。
【0064】
図
6に示す形状のマンドレル12(鉄製)を用意した。このマンドレル12は、全体の長さL35にあって、その細径端P31から長さL31の位置(切換点)P32まで、その外径が直線的に漸増し、同様にP32から長さL32の位置P33まで、P33から長さL33の位置P34まで、その外径が直線的に漸増している。そして、切換点P34から長さL34の太径端P35まで、その外径は一定である鉄製の円筒体からなる。本比較例による前記マンドレル12の各部位における具体的な外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
【0065】
細径端P31の外径は4.15m、切換点P32の外径は5.90mm、切換点P33の外径は7.35mm、切換点P34の外径は13.50mm、この切換点P34から太径端P35までは同一外径であり、その外径は13.50mmである。細径端P31から切替点P32までの長さL31は200mm、切替点P32から切替点P33までの長さL32は100mm、切替点P33から切替点P34までの長さL33は700mm、切替点P34から太径端P35までの長さL34は500mmである。マンドレル12の全体長さL35は1500mmとなる。
【0066】
また、細径端P31から切替点P32までのテーパー度は8.75/1000、切替点P32から切替点P33までのテーパー度は14.50/1000、切替点P33から切替点P34までのテーパー度は8.79/1000となっている。
【0067】
このマンドレル12を使用した以外は、実施例と同様にシャフトを作製し、各評価を実施した。評価結果を
図10,11に示す。
【0068】
なお、マンドレル12を使用した場合は、得られるゴルフクラブ用シャフトの細径端部より370mmから770mmにおける領域において、
図11に示す通り、テーパー度は均一に漸減する形状となる。特許文献1、および特許文献3では、本比較例1と同様のテーパー形状のマンドレルを使用しており、同様の結果が得られると推測される。
【0069】
比較例1のゴルフクラブ用シャフトの質量は59.4g、シャフトのねじれ角(シャフト細径端から1035mmの位置を固定し、シャフト細径端〜シャフト細径端から50mmの位置に、138.5kgf・mmのトルクを掛けたとき、シャフトがねじれた角度。)は3.8度であった。この比較例1のゴルフクラブ用シャフトを用い、実施例と同様にゴルフクラブを作製して評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0070】
図
8に示す形状のマンドレル13(鉄製)を用意した。このマンドレル13は、全体の長さL47にあって、その細径端P41から長さL41の位置(切換点)P42まで、その外径が直線的に漸増し、同様にP42から長さL42の位置P43まで、P43から長さL43の位置P44まで、P44から長さL44の位置P45まで、P45から長さL45の位置P46まで、その外径が直線的に漸増している。そして、切換点P46から長さL46の太径端P47まで、その外径は一定である鉄製の円筒体からなる。本比較例による前記マンドレル13の各部位における具体的な外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
【0071】
細径端P41の外径は4.20m、切換点P42の外径は5.80mm、切換点P43の外径は7.30mm、切換点P44の外径は10.75mm、切換点P45の外径は12.50mm、切換点P46の外径は13.50mm、この切換点P46から太径端P47までは同一外径であり、その外径は13.50mmである。細径端P41から切替点P42までの長さL41は200mm、切替点P42から切替点P43までの長さL42は100mm、切替点P43から切替点P44までの長さL43は330mm、切替点P44から切替点P45までの長さL44は220mm、切替点P45から切替点P46までの長さL45は230mm、切替点P46から太径端P47までの長さL46は420mmである。マンドレル13の全体長さL47は1500mmとなる。
【0072】
また、細径端P41から切替点P42までのテーパー度は8.00/1000、切替点P42から切替点P43までのテーパー度は15.00/1000、切替点P43から切替点P44までのテーパー度は10.45/1000、切替点P44から切替点P45までのテーパー度は7.95/1000、切替点P45から切替点P46までのテーパー度は4.35/1000となっている。
【0073】
このマンドレル13を使用した以外は、実施例と同様にシャフトを作製し、各評価を実施した。評価結果を
図10,11に示す。
【0074】
なお、マンドレル13を使用した場合は、得られるゴルフクラブ用シャフトの細径端部より370mmから770mmにおける領域において、
図11に示す通り、テーパー度が3段階に亘って漸減する形状となるが、本領域における曲げ剛性分布を直線回帰した後、直線近似式の相関係数の二乗R
12を算出すると、0.9975であった。
【0075】
比較例2のゴルフクラブ用シャフトの質量は59.1g、シャフトのねじれ角(シャフト細径端から1035mmの位置を固定し、シャフト細径端〜シャフト細径端から50mmの位置に、138.5kgf・mmのトルクを掛けたとき、シャフトがねじれた角度。)は3.7度であった。この比較例2のゴルフクラブ用シャフトを用い、実施例と同様にゴルフクラブを作製して評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
表1の通り、実施例におけるゴルフクラブ用シャフトを用いたゴルフクラブでは、比較例に対してヘッドスピードが速くなると同時にバックスピン量も抑えることが出来、平均した飛距離も大きい結果となった。比較例においては、ヘッドスピードが実施例に対して遅く、バックスピン量も多いことから、平均飛距離を損失する結果となった。
【0077】
このように、実施例におけるゴルフクラブ用シャフトでは、ヘッドスピードが速くなると同時にバックスピン量が減少させることが出来るので、平均飛距離の増大が期待できる。