(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びそれに対応するメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
【0023】
[架橋ポリマー粒子]
本実施形態の架橋ポリマー粒子は、ポリメタクリル酸メチルを含有するシード粒子を、下記式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物を含有するモノマーを含む乳化液中で膨潤した後、上記モノマーをシード重合して得られる粒子であり、該架橋ポリマー粒子の平均粒径Dと180℃における圧縮破壊強度Bとが、下記式(2)で表される関係を満足し、かつ、平均粒径Dが2〜10μmである。
B(mN)≧[8.3988×D(μm)−15.17(mN)] (2)
【0024】
上記式(2)を満足する架橋ポリマー粒子の好適な実施形態について、以下に説明する。
【0025】
(シード粒子)
上記シード粒子は、メタクリル酸メチルの重合により得られる粒子である。シード粒子としては、メタクリル酸メチルのホモポリマーであるポリメタクリル酸メチルからなる粒子を用いることができるが、メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合により得られるアクリル系樹脂からなる粒子であってもよい。上記アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルをモノマー単位として90mol%以上含むことができる。
【0026】
シード粒子は、例えば、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法等の公知の方法で合成することができる。
【0027】
ポリメタクリル酸メチルを含有するシード粒子は、樹脂粒子同士が凝集して融着し難いため、大粒子の生成を抑制できる。ポリメタクリル酸メチルをシード粒子として用いることで、モノマーである上記ジ(メタ)アクリレート化合物との間の相互作用が大きくなるため、架橋ポリマー粒子の破壊強度を、ポリスチレン系シード粒子を用いた場合に比較して、向上させることが可能となる。その結果、本実施形態に係る架橋ポリマー粒子から作製される導電性粒子は、良好な圧縮特性を発現できる。ここで、大粒子とは、架橋ポリマー粒子の粒度分布を測定した際に、メインピークより粒径が大きい粒子をいう。
【0028】
シード粒子の重量平均分子量(Mw)は、大きくなるとモノマーの吸収能力が低下したり、モノマーと相分離したりして力学強度が低下し易くなり、小さくなると粒径が均一になり難くなる。そのため、シード粒子のMwは、3000〜50000が好ましく、4000〜40000がより好ましく、5000〜30000が更に好ましい。なお、本明細書で規定するMwとは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値である。
【0029】
シード粒子の平均粒径は得られる架橋ポリマー粒子の設計粒径に応じて調製することができる。シード粒子の平均粒径が大きくなるとモノマーの吸収に時間がかかり、平均粒径が小さくなると粒径が不均一になり真球性も低下し易くなる。シード粒子の平均粒径は、0.1〜2.0μmが好ましく、0.5〜2.0μmがより好ましく、0.5〜1.5μmが更に好ましい。
【0030】
シード粒子の粒径(直径)の変動係数であるCv値は、大きくなると得られる架橋ポリマー粒子の均一性が低下し易くなることから、10%以下にすることが好ましく、7%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。
【0031】
シード粒子の平均粒径及び粒径のCv値は、走査型電子顕微鏡(SEM)で対象となるシード粒子を100個観察して粒径を測定することにより算出することができ、マイクロトラック(日機装製)のような粒度分測定装置を用いて測定される粒径から算出することも可能である。
【0032】
(架橋ポリマー粒子の製造方法)
架橋ポリマー粒子は、上記シード粒子を、特定のジ(メタ)アクリレート化合物を含有するモノマーを含む乳化液中で膨潤した後、モノマーをシード重合して得られる。シード重合法は、公知の方法を参考にして行うことができる。以下にシード重合法の一般的な方法を説明するが、この方法に限定されるものではない。
【0033】
まず、モノマーと水性媒体とを含む乳化液に、シード粒子を添加する。シード粒子は、乳化液に直接添加してもよく、シード粒子を水性分散体に分散させた形態で添加してもよい。
【0034】
乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、モノマーを水性媒体に添加して、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により水性媒体に分散させることで、乳化液を得ることができる。乳化液には、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、モノマーに予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、重合開始剤とモノマーとを別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた乳化液中のモノマー液滴の粒径は、シード粒子の粒径よりも小さいほうが、モノマーがシード粒子に効率よく吸収され易くなる。
【0035】
シード粒子を乳化液へ添加した後、シード粒子を膨潤させてモノマーを吸収させる。この吸収は、通常、シード粒子を添加した後の乳化液を、室温で1〜24時間攪拌することで行うことができる。また、乳化液を30〜50℃程度に加温することによりモノマーの吸収を促進することができる。
【0036】
シード粒子は、モノマーの吸収により膨潤する。シード粒子に対するモノマーの混合比率が小さくなると、モノマーのシード重合により作製される架橋ポリマー粒子の粒径の増加が小さくなり、架橋ポリマー粒子の生産性が低下する傾向にある。一方、モノマーの混合比率が大きくなるとシード粒子に吸収されないで、水性媒体中でモノマーが独自に懸濁重合してしまい、目的とする粒径以外の粒子が生成することがある。なお、モノマーの吸収の終了は、光学顕微鏡を用いてシード粒子を観察して粒径の拡大を確認することにより判定できる。
【0037】
子粒子及び大粒子の生成を抑制する観点から、シード粒子の質量に対して、モノマーである式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物の質量比は20〜300倍であることが好ましく、50〜250倍がより好ましく、70〜200倍が更に好ましい。ここで、子粒子とは、架橋ポリマー粒子の粒度分布を測定した際に、メインピークより粒径が小さい粒子をいう。
【0038】
シード粒子に吸収させるモノマーが、下記式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物を含有することで、架橋ポリマー粒子は低弾性を維持しつつ、優れた圧縮回復特性を有することができる。式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物の含有量は、モノマー全量を基準として、80mol%以上であることが好ましく、85mol%以上であることがより好ましく、90mol%以上であることが更に好ましい。
【0039】
【化2】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、L
1は炭素数4〜12のアルキレン基を示し、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。
【0040】
式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
モノマーとして、式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物と共に、他の多官能モノマー及び/又は単官能モノマーを、モノマー全量を基準として、0〜20mol%の範囲で併用することができる。
【0042】
多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン等のジビニル化合物;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;ジアリルフタレート及びその異性体;トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体が挙げられる。これらモノマーの中でも、新中村化学工業(株)製のNKエステル(A−TMPT−6P0、A−TMPT−3E0、A−TMM−3LMN、A−GLYシリーズ、A−9300、AD−TMP、AD−TMP−4CL、ATM−4E、A−DPH)等が、商業的に入手可能である。これらの多官能性モノマーは、単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0043】
単官能性モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン又はその誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピル等の含フッ素化モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
水性媒体としては、水、又は、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤が含まれている。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれも用いることができる。
【0045】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0046】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0047】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコン系ノニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0048】
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤及び亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0049】
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、モノマーの重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0050】
必要に応じて添加される重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤は、モノマー100質量部に対して、0.1〜7.0質量部の範囲で使用するとよい。
【0051】
次に、シード粒子に吸収させたモノマーを重合させることで、架橋ポリマー粒子が得られる。
【0052】
重合温度は、モノマー及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。重合反応は、シード粒子が十分に膨潤し、モノマー及び任意に重合開始剤が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。シード重合が終了した後は、必要に応じて重合液から遠心分離により水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥することで架橋ポリマー粒子が単離される。
【0053】
上記重合工程において、シード粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を添加してもよい。
【0054】
高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)及びポリビニルピロリドンが挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、モノマー100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0055】
水中でモノマーが単独に乳化重合した粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
【0056】
架橋ポリマー粒子の平均粒径は、10μm以下、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは4μm以下である。また、架橋ポリマー粒子の平均粒径の下限値は、2μm以上、好ましくは2μm超、より好ましくは2.5μm以上である。平均粒径が小さくなると、架橋ポリマー粒子が凝集し易くなる可能性がある。
【0057】
架橋ポリマー粒子の粒径(直径)のCv値は、15%以下であることが好ましい。Cv値が15%を超えると、架橋ポリマー粒子の各種用途における性能が低下する傾向がある。例えば、架橋ポリマー粒子が異方性導電剤を構成する導電性粒子に用いられたときの接続信頼性が低下したり、架橋ポリマー粒子が生体検査素子に用いられたときの定量性が低下したりすることがある。同様の観点から、架橋ポリマーの粒径のCv値は、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、より一層好ましくは4%以下である。
【0058】
架橋ポリマー粒子の平均粒径及び粒径のCv値は、下記測定法により求めることができる。
1)粒子を、超音波分散装置を使用して水に分散させ、1質量%の粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス製)を用いて、上記分散液中の粒子約10万個の画像を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平均粒径及び粒径のCv値を算出する。
【0059】
架橋ポリマー粒子の圧縮特性を表す圧縮回復率は、以下の方法で測定することができる。
【0060】
圧縮回復率は、微小圧縮試験機(Fisher製)を用い、室温又は加温(180℃)条件にて荷重負荷速度0.33mN/秒で、四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により架橋ポリマー粒子を中心から5mNまで圧縮した後、逆に0.33mN/秒の速度で荷重を減らして行く際の、荷重値と圧縮変位との関係を測定して得られる。荷重を反転させる点から最終除荷値までの変位(L1)と、反転の点から初期荷重値までの変位(L2)との比(L1/L2)を%にて表した値が圧縮回復率である。本実施形態では5回測定した平均値を用いている。なお、本実施形態において「室温」とは、25℃である。
【0061】
架橋ポリマー粒子の室温及び180℃における圧縮回復率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
【0062】
架橋ポリマー粒子の圧縮回復増加率は、以下の式によって算出される。圧縮回復増加率は、好ましくは−5%以上であり、より好ましくは0%以上である。
圧縮回復増加率(%)=[(180℃での圧縮回復率)−(室温での圧縮回復率)]/(室温での圧縮回復率)×100
【0063】
架橋ポリマー粒子を圧縮した際の圧縮弾性率及び圧縮破壊強度は、以下の方法で測定することができる。
【0064】
微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて、室温又は加温(180℃)条件にて荷重負荷速度1mN/秒で、四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により架橋ポリマー粒子を50mNまで圧縮したときの荷重及び圧縮変位を測定する。得られた測定値から、架橋ポリマー粒子が30%圧縮変形したときの圧縮弾性率(30%K値)を下記式により求めることができる。また、上記測定中の変位量が最も大きく変化する点の荷重を破壊強度(mN)とする。
【0065】
30%K値(kgf/mm
2=9.81×10
6N/m
2)=(3/2
1/2)・F・S
−3/2・R
−1/2
F:架橋ポリマー粒子が30%圧縮変形したときの荷重(mN)
S:架橋ポリマー粒子が30%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:架橋ポリマー粒子の半径(mm)
【0066】
架橋ポリマー粒子は、30%圧縮変形したときの圧縮弾性率が、50〜400kgf/mm
2(4.90×10
8〜3.92×10
9N/m
2)であることが好ましく、100〜300kgf/mm
2(9.81×10
8〜2.94×10
9N/m
2)であることがより好ましい。
【0067】
30%K値が小さすぎると、架橋ポリマー粒子の柔軟性が高くなりすぎて、架橋ポリマー粒子の表面に導電層を形成した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて電極間を接続する際に、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を十分に排除でき難くなる。30%K値が大きすぎると、架橋ポリマー粒子の柔軟性が低すぎて、導電性粒子により電極が損傷することがある。
【0068】
上述した本実施形態の架橋ポリマー粒子は、平均粒径Dと180℃における圧縮破壊強度Bとが、下記式(2)で表される関係を満足することにより、架橋ポリマー粒子を用いて作製される導電性粒子の導通信頼性が向上する。なお、圧縮破壊強度Bの上限は特に限定されないが100mN程度である。
B(mN)≧[8.3988×D(μm)−15.17(mN)] (2)
【0069】
ポリメタクリル酸メチルを含有するシード粒子を用いることで、上記式(1)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物を含有するモノマーとの相互作用が増加し、上記式(2)を満足する架橋ポリマー粒子を作製することができる。
【0070】
[導電性粒子]
本実施形態の導電性粒子は、上記架橋ポリマー粒子と、該架橋ポリマー粒子の表面に形成された金属被膜とを有する。
図1は、本実施形態に係る導電性粒子を示す模式断面図である。
図1に示すように、導電性粒子10は、架橋ポリマー粒子1と、架橋ポリマー粒子1の表面を被覆している金属被膜(金属層)2とを有する。
【0071】
金属層2を構成する金属は、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金及び錫−鉛−銀合金が挙げられる。なかでも、金属層2は、ニッケル、銅、金又は錫−銀合金を含むことが好ましい。
【0072】
架橋ポリマー粒子1の表面に金属層2を形成する方法は特に限定されない。金属層2を形成する方法として、例えば、無電解めっき法、電気めっき法、物理的蒸着法、金属粉末を含むペーストを架橋ポリマー粒子1の表面に塗布する方法が挙げられる。物理的蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング又はイオンスパッタリングを用いることができる。金属層2を形成する方法としては、無電解めっき法が好ましい。
【0073】
金属層2は、単層であっても、2層以上が積層された複数の金属層であってもよい。電極間の接続抵抗を低減する観点から、導電性粒子10の表面(金属層2の最外層)は、金層、パラジウム層又は錫−銀合金層であることが好ましい。
【0074】
金属層2の厚みは、0.02〜1μmであることが好ましく、0.02〜0.5μmであることがより好ましい。金属層2の厚みが0.02μm以上であれば、良好な導電性が発現し易くなり、1μm以下であれば、接続の際に導電性粒子が変形し易くなる。金属層2の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより求めることができる。
【0075】
導電性粒子10の平均粒径は、2.02〜11μmが好ましく、2.5〜10μmがより好ましく、2.5〜7μmが更に好ましく、2.5〜5μmがより一層好ましい。
【0076】
導電性粒子10の粒径のCV値は、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。導電性粒子10のCV値が10%以下であることにより、電気的な接続信頼性をより高くすることができる。
【0077】
導電性粒子10の平均粒径及び粒径のCV値は、架橋ポリマー粒子1と同様の方法で測定することが可能である。
【0078】
[異方性導電材料]
本実施形態の異方性導電材料は、上記導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。
図2は、本実施形態に係る異方性導電材料を示す模式断面図である。異方性導電材料40は、絶縁性のバインダー樹脂20と、バインダー樹脂20中に分散された導電性粒子10とを備える。
【0079】
バインダー樹脂20としては、熱硬化性樹脂、硬化剤、フィルム形成性ポリマー等を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0080】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、耐熱性の観点からエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物を用いることができ、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、グリシジルアミン化合物、グリシジルエーテル化合物及びグリシジルエステル化合物が挙げられる。
【0081】
エポキシ樹脂として、不純物イオン(Na
+、Cl
−等)、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いると、エレクトロマイグレーションを防止し易くなる。
【0082】
硬化剤としては特に限定されないが、潜在性硬化剤を用いることができる。潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩及びジシアンジアミドが挙げられる。
【0083】
フィルム形成性ポリマーは、異方性導電材料をフィルム状に形成することができるものであれば特に限定されない。フィルム形成性ポリマーとしては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0084】
バインダー樹脂20には、接着後の応力を低減するため又は接着性を向上するために、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を混合することができる。
【0085】
バインダー樹脂20には、無機フィラーを配合することもできる。無機フィラーとして、例えば、シリカ、マグネシア、ベントナイト、スメクタイト、アルミナ又は窒化ホウ素からなるフィラーを用いることができる。
【0086】
なお、バインダー樹脂20は、熱硬化性樹脂及び硬化剤に代えて、ラジカル重合性樹脂及び有機過酸化物等の光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物であってもよい。
【0087】
異方性導電材料40は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤及びフィルム形成性ポリマーを含有する熱硬化性樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤に溶解又は分散させて液状化してバインダー樹脂20を調製する。次いで、バインダー樹脂20中に導電性粒子10を分散させることで液状の異方性導電材料40が作製される。有機溶剤としては、樹脂成分を溶解することができ、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。
【0088】
液状の異方性導電材料40は、そのまま回路部材の接続に用いることができるが、フィルム状に成形して用いることができる。フィルム状の異方性導電材料40は、液状の異方性導電材料40を離型性フィルム上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で有機溶剤を除去した後、離型性フィルムから剥離することにより作製することができる。離型性フィルムとしては、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリオレフィンフィルム等の樹脂フィルムが好適に用いられる。異方性導電材料40は、フィルムの形状で使用すると、取扱性の点から便利である。
【0089】
フィルム状の異方性導電材料40の厚みは、導電性粒子10の粒径及び異方性導電材料40の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmであることがより好ましい。異方性導電材料40の厚みが1μm未満では十分な接着性が得られ難く、100μmを超えると導電性を得るために多量の導電性粒子10を必要とするために現実的ではない。
【0090】
[接続構造体]
本実施形態に係る回路部材の接続構造体は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、第1の回路部材と第2の回路部材との間に介在する接続部と、を備える。第2の回路部材は、第2の回路電極が第1の回路電極と対向するように配置されており、接続部は、上記本実施形態に係る導電性粒子を含む。
【0091】
図3は、本実施形態に係る異方性導電材料を用いた回路部材の接続構造体の作製方法を示す模式断面図である。
【0092】
まず、
図3の(a)に示すように、第1の回路電極5が形成された第1の回路基板4と、第2の回路電極7が形成された第2の回路基板6とを準備し、異方性導電材料40をその間に配置する。このとき、第1の回路電極5と第2の回路電極7とが対向するように位置を調整する。その後、第1の回路基板4と第2の回路基板6とを、第1の回路電極5と第2の回路電極7とが対向する方向で加圧加熱しつつ積層して、
図3の(b)に示す導電接続構造体42を得る。接続構造体42は、異方性導電材料40の硬化物により電気的に接続されている。
【0093】
第1の回路基板4及び第2の回路基板6としては、ガラス基板、ポリイミド等のテープ基板、ドライバーIC等のベアチップ及びリジット型のパッケージ基板が挙げられる。
【0094】
本実施形態に係る架橋ポリマー粒子は、低弾性でありながら圧縮回復性に優れ、高い破壊強度を有することから、導電性粒子を構成する樹脂粒子として用いた場合に、安定した接続信頼性を発揮することができる。また、本実施形態に係る架橋ポリマー粒子は、電材分野だけでなく、塗料、コーティング剤、光拡散剤、化粧料、医薬又は生体検査素子、農薬、建築材料等の広範囲の分野において有用である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
<シード粒子の合成>
合成例1
500mLの三口フラスコに、メタクリル酸メチル(MMA)70g、オクタンチオール(OCT)2.1g、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)0.7g及び水400gを一括して仕込み、70℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間撹拌をして、シード粒子を形成させた。
【0097】
合成例2
スチレン(ST)30g、オクタンチオール(OCT)3g、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)0.5g及び水400gを使用した以外は、合成例1と同様にしてシード粒子を形成させた。
【0098】
合成例3
MMAの代わりにアクリル酸ブチル(BA)を使用した以外は合成例1と同様にしてシード粒子を形成した。
【0099】
合成例4
MMAの代わりにアクリル酸ヘキシル(HA)を使用した以外は合成例1と同様にしてシード粒子を形成した。
【0100】
合成例5
OCTの量を1.4gに変更した以外は合成例1と同様にしてシード粒子を形成した。
【0101】
合成例6
OCTの量を0.7gに変更した以外は合成例1と同様にしてシード粒子を形成した。
【0102】
各合成例で得られたシード粒子の粒径をマイクロトラックで測定し、平均粒径を算出した。また、GPCを用いて、得られたシード粒子の分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
(遠心分離後の分散性評価)
各合成例で得られたシード粒子の水溶液の遠心分離を行い、上澄みを除去し、除去した上澄み分のイオン交換水を添加した後、再分散させた。上記操作を2回行った後、マイクロトラック法にて遠心分離後のシード粒子の粒径を測定した。また、粒子の分散性は、遠心分離前後の粒径変化が20nm未満の場合を「A」、20〜50nmの場合を「B」、50nmを超える場合を「C」と評価した。
【0104】
【表1】
【0105】
[架橋ポリマー粒子の作製]
(実施例1)
過酸化ベンゾイル4gをブタンジオールジアクリレート(BDDA)400gに溶解したモノマーを、ドデシル硫酸トリエタノール20.4gが溶解したイオン交換水6800gと混合し、超音波ホモジナイザーで10分間処理して乳化液を調製した。
【0106】
この乳化液に、合成例1のシード粒子の分散液300g(固形分2.52g)を加えて室温で12時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(日本合成化学、商品名「GH−17」)を6質量%含む水溶液1000gを加えて80℃で8時間重合を行い、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0107】
(実施例2)
BDDAの代わりにヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0108】
(実施例3)
BDDAの代わりにメチルペンタンジオールジアクリレート(MPDA)を用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0109】
(実施例4)
BDDAの代わりにノナンジオールジアクリレート(NDDA)を用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0110】
(実施例5)
BDDAの代わりにデカンジオールジアクリレート(DDA)を用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0111】
(実施例6)
BDDAの代わりにドデカンジオールジアクリレート(DDDA)を用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0112】
(実施例7)
合成例1のシード粒子の分散液の代わりに、合成例5のシード粒子の分散液300g(固形分量1.69g)を用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0113】
(実施例8)
合成例1のシード粒子の分散液の代わりに、合成例6のシード粒子の分散液300g(固形分量1.78g)を用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0114】
(実施例9)
合成例1のシード粒子の分散液の代わりに、合成例6のシード粒子の分散液300g(固形分量1.34g)を用いた以外は、実施例1と同様にして架橋ポリマー粒子を合成した。
【0115】
(実施例10)
合成例1のシード粒子の分散液300g(固形分4g)に変更した以外は、実施例1と同様にして架橋ポリマー粒子を合成した。
(実施例11)
BDDAの代わりにBDDA82mol%及びMMA18mol%を含むモノマー400gを用いた以外は実施例1と同様にして、架橋ポリマー粒子を合成した。
【0116】
(比較例1)
合成例1のシード粒子の分散液の代わりに、合成例2のシード粒子の分散液300g(固形分量2.46g)を用いた以外は、実施例1と同様にして架橋ポリマー粒子を合成した。
【0117】
(比較例2)
BDDAの代わりにポリテトラメチレングリコールジアクリレート(日立化成社製、商品名「FA−PTG9A」)200g及びジビニルベンゼン(DBV、純度96%)200gを用いた以外は、比較例1と同様にして架橋ポリマー粒子を合成した。
【0118】
(比較例3)
BDDAの代わりにグリセリンプロポキシトリアクリレート(ダイセルサイテック社製、商品名「OTA480」)400gを用いた以外は、実施例1と同様にして架橋ポリマー粒子を合成した。
【0119】
なお、合成例3及び4のシード粒子は分散性が悪いため架橋ポリマー粒子の合成に用いることができなかった。
【0120】
各実施例及び比較例で得られた架橋ポリマー粒子の粒径をフロー型粒径測定装置で測定し、平均粒径及び粒径のCv値を算出した。なお、大粒子含有率は、モード径(粒度分布の極大値)から1μm以上大きい粒子を大粒子として算出した。結果を表2及び3に示す。なお、表中、膨潤比とは、シード粒子の質量に対するシード重合に用いたモノマーの質量比である。
【0121】
また、微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて架橋ポリマー粒子を圧縮したときの荷重及び圧縮変位を上述した条件で測定することで、室温及び180℃での圧縮回復率、180℃での圧縮破壊強度及び30%K値を算出した。また、室温での圧縮回復率と180℃での圧縮回復率とから圧縮回復増加率を算出した。結果を表2及び3に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
図4は、実施例及び比較例で作製した架橋ポリマー粒子の平均粒径と180℃における圧縮破壊強度との関係を示すグラフである。
図4から、実施例1〜11の架橋ポリマー粒子は、平均粒径と180℃における圧縮破壊強度とが式(2)の関係を満足していることが確認できる。
【0125】
[導電性粒子の作製]
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた架橋ポリマー粒子表面に、それぞれ厚み0.2μmのニッケル層を無電界めっき法で形成し、さらにそのニッケル層の外側に厚み0.04μmのパラジウム層を形成して、導電性粒子1〜9をそれぞれ作製した。
【0126】
[異方性導電材料の作製]
上記導電性粒子を用いて、異方性導電材料の作製を行った。
【0127】
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名「PKHC」)5質量部、アクリルゴム(ブチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリロニトリル及びグリシジルメタクリレートの共重合体、共重合比(質量)40/30/30/3、Mw85万)18質量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YL−983U」)15質量部を酢酸エチル10質量部に溶解した溶液に、カチオン系硬化剤(三新化学工業株式会社製、商品名「SI−60」)を2質量部添加し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。次いで、上記熱硬化性樹脂組成物に、シリカフィラー(日本アエロジル社製、商品名「Aerosil R805」)10質量部の酢酸エチル分散液30質量部を加え混合した後、導電性粒子20質量部及び酢酸エチル10質量部を加えて超音波分散を行い、液状の異方性導電材料を作製した。
【0128】
液状の異方性導電材料を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み40μm、以下、「PETフィルム」と表記する)上にロールコータで塗布し、80℃で5分間乾燥して厚み23μmのフィルム状の異方性導電材料を作製した。
【0129】
[接続構造体の作製]
作製したフィルム状の異方性導電材料を用いて、金バンプ(面積:30μm×90μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンプ数:362)付きチップ(1.7mm×17mm、厚み:0.5mm)と、ITO回路付きガラス基板(ジオマテック製、厚み:0.7mm)との接続を、以下のとおり行い、接続構造体を作製した。
【0130】
所定のサイズ(2mm×19mm)に切断したフィルム状異方性導電材料のPETフィルムが設けられた面とは反対側の面を、ITO回路付きガラス基板のITO回路が形成された面上に、80℃、0.98MPa(10kgf/cm
2)、5秒間の条件で貼り付けた。その後、PETフィルムを剥離し、異方性導電材料を介して、チップの金バンプとITO回路付きガラス基板との位置合わせを行い、170℃、70MPa、5秒間の条件で加熱及び加圧を行って本接続を行い、実装サンプル(接続構造体)を得た。
【0131】
(導通抵抗試験)
作製した実装サンプル(接続構造体)の導通抵抗試験を以下のようにして行った。評価結果を表4にまとめて示す。
【0132】
各実装サンプルのチップ電極/ガラス電極間の導通抵抗に関しては、14箇所測定したときの平均値を取った。なお、導通抵抗は、初期値と、温度85℃、湿度85%の条件で500時間放置する信頼性試験(吸湿耐熱試験)後の値とを測定した。異方性導電材料はチップ電極間の絶縁抵抗が高く、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗が低いことが重要である。信頼性試験後の導通抵抗が5Ω未満の場合を「A」、5〜10Ωの場合を「B」、10Ωを超える場合を「C」とした。
【0133】
(圧痕の確認)
オリンパス社製BH3−MJL液晶パネル検査用顕微鏡を用いて、ノマルスキー微分干渉観察によりガラス基板側から圧痕の状態を観察した。はっきり輪郭を確認できる場合を良好、それ以外を不明瞭とした。
【0134】
【表4】
【0135】
本発明の構成を備える架橋ポリマー粒子は低弾性でありながら圧縮回復性に優れ、高い破壊強度を有することが確認された。また、該架橋ポリマー粒子を用いて形成した導電性粒子を用いることで、導電信頼性に優れる回路部材の接続構造体が作製できることが確認された。