(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の電荷輸送性ワニスは、式(1)で表されるアミン化合物と、式(2)〜(4)から選ばれる同一または異種の2価の有機基が2つ以上連続した構造を有する分子量300〜5000の電荷輸送性化合物と、電子受容性物質と、有機溶媒とを含む。
ここで、同一の2価の有機基が2つ以上連続した構造とは、式(2)が2つ以上連続した構造、式(3)が2つ以上連続した構造、または式(4)が2つ以上連続した構造を意味するが、それぞれの場合において、複数存在するX
1同士、X
2同士、およびX
3同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。一方、異種の2価の有機基が2つ以上連続した構造とは、式(2)と式(3)とがそれぞれ任意の個数かつ任意の順序で連続した構造、式(2)と式(4)とがそれぞれ任意の個数かつ任意の順序で連続した構造、式(3)と式(4)とが任意の個数かつ任意の順序で連続した構造を意味し、この態様においても、X
1、X
2、X
3が各構造単位中にそれぞれ複数存在する場合、X
1同士、X
2同士、およびX
3同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、本発明の電荷輸送性化合物は、式(2)〜(4)から選ばれる同一または異種の2価の有機基が2つ以上連続した構造を有している限り、式(2)〜(4)以外の構造単位を含んでいてもよい。
また、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性と同義である。電荷輸送性化合物とは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、電子受容性物質と共に用いた際に電荷輸送性があるものでもよい。また、電荷輸送性ワニスとは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、それにより得られる固形膜が電荷輸送性を有するものでもよい。
【0011】
上記式(1)において、A
1は、水素原子、またはZ
3で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数6〜20のアリール基を表し、A
2およびA
3は、それぞれ独立して、Z
3で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基(これらアルキル基およびアリール基は互いに結合していてもよい。)を表し、Z
3は、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基を表す。
【0012】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基などが挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0013】
また、A
2およびA
3のアルキル基およびアリール基が互いに結合して形成される2価の基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の2〜40のアルキレン基;ビフェニル−2,2’−ジイル基、1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル基、1,1’−ビアントリル−2,2’−ジイル基、1,1’−ビフェナントリル−2,2’−ジイル基等の炭素数12〜40のアリーレン基;(1,2−フェニレン)メチレン基、(1,2−フェニレン)エチレン基、(1,2−フェニレン)トリメチレン基、(1,3−フェニレン)テトラメチレン基、(1,3−フェニレン)メチレン基、(1,3−フェニレン)エチレン基、(1,3−フェニレン)トリメチレン基、(1,3−フェニレン)テトラメチレン基等の炭素数7〜40のアラルキレン基などが挙げられる。
【0014】
A
1としては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基が好ましく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基がより一層好ましい。
A
2およびA
3としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または互いに結合してなる、炭素数2〜40のアルキレン基、炭素数12〜40のアリーレン基もしくは炭素数7〜40のアラルキレン基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、または互いに結合してなる炭素数2〜40のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、または互いに結合してなる炭素数4〜10のアルキレン基がより一層好ましい。
A
1〜A
3において、Z
3としては、ハロゲン原子、特にフッ素原子が好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより好ましい。
【0015】
式(1)で示されるアミン化合物の具体例としては、市販品として入手可能なまたは公知の方法で合成可能な、二級アミンまたは三級アミンが挙げられる。
二級アミンとしては、例えば、N−エチルメチルアミン〔HN(Me)(Et)〕、N−メチル−n−プロピルアミン〔HN(Me)(n−Pr)〕、N−メチルイソプロピルアミン〔HN(Me)(i−Pr)〕、N−メチル−n−ブチルアミン〔HN(Me)(n−Bu)〕、N−メチル−s−ブチルアミン〔HN(Me)(s−Bu)〕、N−メチル−t−ブチルアミン〔HN(Me)(t−Bu)〕、N−メチルイソブチルアミン〔HN(Me)(i−Bu)〕、ジエチルアミン〔HN(Et)
2〕、N−エチル−n−プロピルアミン〔HN(Et)(n−Pr)〕、N−エチルイソプロピルアミン〔HN(Et)(i−Pr)〕、N−エチル−n−ブチルアミン〔HN(Et)(n−Bu)〕、N−エチル−s−ブチルアミン〔HN(Et)(s−Bu)〕、N−エチル−t−ブチルアミン〔HN(Et)(t−Bu)〕、ジプロピルアミン〔HN(Pr)
2〕、N−n−プロピルイソプロピルアミン〔HN(n−Pr)(i−Pr)〕、N−n−プロピル−n−ブチルアミン〔HN(n−Pr)(n−Bu)〕、N−n−ブロピル−s−ブチルアミン〔HN(n−Pr)(s−Bu)〕、ジイソプロピルアミン〔HN(i−Pr)
2〕、N−n−ブチルイソプロピルアミン〔HN(i−Pr)(n−Bu)〕、N−t−ブチルイソプロピルアミン〔HN(i−Pr)(t−Bu)〕、ジ(n−ブチル)アミン〔HN(n−Bu)
2〕、ジ(s−ブチル)アミン〔HN(s−Bu)
2〕、ジイソブチルアミン〔HN(i−Bu)
2〕、アジリジン(エチレンイミン)、2−メチルアジリジン(プロピレンイミン)、2,2−ジメチルアジリジン、アゼチジン(トリメチレンイミン)、2−メチルアゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、3−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン,2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、オクタメチレンイミン等といったジアルキルアミン;ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、1,1’−ジナフチルアミン、2,2’−ジナフチルアミン、1,2’−ジナフチルアミン、カルバゾール、7H−ベンゾ[c]カルバゾール、11H−ベンゾ[a]カルバゾール、7H−ジベンゾ[c,g]カルバゾール、13H−ジベンゾ[a,i]カルバゾール等といったジアリールアミン;N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−n−プロピルアニリン、N−イソプロピルアニリン、N−n−ブチルアニリン、N−s−ブチルアニリン、N−イソブチルアニリン、N−メチル−1−ナフチルアミン、N−エチル−1−ナフチルアミン、N−n−プロピル−1−ナフチルアミン、インドリン、イソインドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン等のアルキルアリールアミンなどが挙げられる。
三級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルエチルアミン〔N(Me)
2(Et)〕、N,N−ジメチル−n−プロピルアミン〔N(Me)
2(n−Pr)〕、N,N−ジメチルイソプロピルアミン〔N(Me)
2(i−Pr)〕、N,N−ジメチル−n−ブチルアミン〔N(Me)
2(n−Bu)〕、N,N−ジメチル−s−ブチルアミン〔N(Me)
2(s−Bu)〕、N,N−ジメチル−t−ブチルアミン〔N(Me)
2(t−Bu)〕、N,N−ジメチルイソブチルアミン〔N(Me)
2(i−Bu)〕、N,N−ジエチルメチルアミン〔N(Me)(Et)
2〕、N−メチルジ(n−プロピル)アミン〔N(Me)(n−Pr)
2〕、N−メチルジイソプロピルアミン〔N(Me)(i−Pr)
2〕、N−メチルジ(n−ブチル)アミン〔N(Me)(n−Bu)
2〕、N−メチルジイソブチルアミン〔N(Me)(i−Bu)
2〕、トリエチルアミン〔N(Et)
3〕N,N−ジエチル−n−ブチルアミン〔N(Et)
2(n−Bu)〕、N,N−ジイソプロピルエチルアミン〔N(Et)(i−Pr)
2〕、N,N−ジ(n−ブチル)エチルアミン〔N(Et)(n−Bu)
2〕、トリ(n−プロピル)アミン〔N(n−Pr)
3〕、トリ(i−プロピル)アミン〔N(i−Pr)
3〕、トリ(n−ブチル)アミン〔N(n−Bu)
3〕、トリ(i−ブチル)アミン〔N(i−Bu)
3〕、1−メチルアセチジン、1−メチルピロリジン、1−メチルピペリジン等のトリアルキルアミン;トリフェニルアミン等のトリアリールアミン;N−メチルジフェニルアミン、N−エチルジフェニルアミン、9−メチルカルバゾール、9−エチルカルバゾール等のアルキルジアリールアミン;N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(n−プロピル)アニリン、N,N−ジ(i−プロピル)アニリン、N,N−ジ(n−ブチル)アニリン等のジアルキルアリールアミンなどが挙げられる。
【0016】
上記式(2)〜(4)において、X
1は、−NY
1−、−O−、−S−、または単結合を表すが、−NY
1−、−S−、または単結合が好ましく、−NY
1−がより好ましい。なお、電荷輸送性化合物中に、式(2)の有機基が2つ以上存在する場合、各X
1は互いに同一でも異なっていてもよい。
X
2は、−NY
2−、−O−、または−S−を表すが、−NY
2−または−S−が好ましく、−NY
2−がより好ましい。なお、電荷輸送性化合物中に、式(3)の有機基が2つ以上存在する場合、各X
2は互いに同一でも異なっていてもよい。
X
3は、−NY
3−または−CR
13R
14−を表すが、−NY
3−が好ましい。なお、電荷輸送性化合物中に、式(4)の有機基が2つ以上存在する場合、各X
3は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0017】
Y
1〜Y
3は、それぞれ独立して、水素原子、Z
1で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、またはZ
2で置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0018】
炭素数2〜20のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
【0019】
炭素数2〜20のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0020】
炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、2−チエニル、3−チエニル、2−フラニル、3−フラニル、2−オキサゾリル,4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル,4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル基等が挙げられる。
その他、炭素数1〜20のアルキル基および炭素数6〜20のアリール基としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、Y
1〜Y
3は、水素原子またはZ
1で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子がより一層好ましい。
【0022】
R
1〜R
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z
1で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基、−NHY
4、−NY
5Y
6、−C(O)Y
7、−OY
8、−SY
9、−SO
3Y
10、−C(O)OY
11、−OC(O)Y
12、−C(O)NHY
13、または−C(O)NY
14Y
15基を表し、Y
4〜Y
15は、それぞれ独立して、Z
1で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、またはZ
2で置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
これらR
1〜R
14およびY
4〜Y
15のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0023】
R
1〜R
14では、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0024】
これらの中でも、R
1〜R
14は、水素原子、ハロゲン原子、Z
1で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
2で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはY
5およびY
6がZ
2で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基である−NY
5Y
6基が好ましい。
特に、R
1〜R
12は、水素原子、ハロゲン原子、Z
1で置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基、Z
2で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、またはY
5およびY
6がZ
2で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基である−NY
5Y
6基がより好ましく、水素原子がより一層好ましい。
また、R
13およびR
14は、水素原子、Z
1で置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基、またはZ
2で置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、水素原子がより一層好ましい。
【0025】
本発明の電荷輸送性ワニスに用いる電荷輸送性化合物は、電荷輸送性をより高める観点から、上記式(2)で表される2価の有機基が2つ連続した式(5)で表される構造を2つ以上有することが好ましく、特に、式(6)で表される態様で、式(5)で表される構造を2つ以上有していることがより好ましい。
【化7】
(式中、R
1〜R
4およびY
1は、上記と同じ意味を示す。)
【0026】
【化8】
(式中、R
1〜R
4およびY
1は、前記と同じ意味を表し、X
4は、−NY
1−、−O−、−S−、−(CR
13R
14)
l−または単結合を表し、R
13およびR
14は、前記と同じ意味を表し、lは、1〜20の整数であり、mおよびnは、それぞれ独立して、1〜10の整数であり、m+n≦10を満たす。)
【0027】
式(5)および式(6)において、R
1〜R
4としては、水素原子、ハロゲン原子、Z
1で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
2で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはY
5およびY
8がZ
2で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基である−NY
5Y
6基が好ましく、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、またはフッ素原子で置換されてもよい炭素数12〜40のジアリールアミノ基がより好ましく、水素原子、またはジフェニルアミノ基がより一層好ましい。
Y
1としては、水素原子、またはZ
1で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子、またはメチル基がより好ましく、水素原子がより一層好ましい。
特に、R
1〜R
4が、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、またはフッ素原子で置換されてもよい炭素数12〜40のジアリールアミノ基、かつ、Y
1が、水素原子、またはメチル基の組み合わせが好適であり、R
1〜R
4が、水素原子またはジフェニルアミノ基、かつ、Y
1が水素原子の組み合わせがより好適である。
mおよびnは、互いに独立して、1〜10の整数であるが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である。
【0028】
また、式(6)において、X
4は、−NY
1−または単結合が好ましい。
lは、−(CR
13R
14)−で表される2価のアルキレン基の繰り返し単位数を表し、1〜20の整数であるが、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、より一層好ましくは1または2である。
なお、lが2以上である場合、各R
13は、互いに同一でも異なっていてもよく、各R
14も、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
特に、本発明においては、式(7)で表されるオリゴアニリン誘導体を用いることが好ましい。
【0030】
【化9】
(式中、R
1〜R
4、X
4、Y
1、mおよびnは、上記と同じ意味を示し、R
15およびR
16は、上記R
1と同じ意味を示す。)
【0031】
式(7)において、R
1〜R
4としては、水素原子、ハロゲン原子、またはZ
1で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、またはフッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、水素原子がより一層好ましい。
R
15およびR
16としては、水素原子、ハロゲン原子、またはY
5およびY
8がZ
2で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基である−NY
5Y
6基が好ましく、水素原子、フッ素原子、またはフッ素原子で置換されてもよい炭素数12〜40のジアリールアミノ基がより好ましく、同時に水素原子またはジフェニルアミノ基がより一層好ましい。
X
4としては、−NY
1−または単結合が好ましい。
Y
1としては、水素原子、またはZ
1で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子、またはメチル基がより好ましく、水素原子がより一層好ましい。
特に、R
1〜R
4が、水素原子、フッ素原子、またはフッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、R
15およびR
16が、水素原子、フッ素原子、またはフッ素原子で置換されてもよい炭素数12〜40のジアリールアミノ基、X
1が、−NY
1−または単結合、かつ、Y
1が、水素原子、またはメチル基の組み合わせが好ましく、R
1〜R
4が、水素原子、R
15およびR
16が、同時に水素原子またはジフェニルアミノ基、X
1が、−NY
1−、または単結合、Y
1が、水素原子の組み合わせがより一層好ましい。
【0032】
なお、上記Y
1〜Y
15およびR
1〜R
16のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはZ
3で置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基であるZ
1で置換されていてもよく、Y
1〜Y
15およびR
1〜R
16のアリール基およびヘテロアリール基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはZ
3で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基であるZ
2で置換されていてもよく、これらの基は、さらにハロゲン原子、ニトロ基またはシアノ基であるZ
3で置換されていてもよい(ハロゲン原子としては、上記と同様のものが挙げられる。)。
【0033】
特に、Y
1〜Y
15およびR
1〜R
16において、置換基Z
1は、ハロゲン原子、シアノ基、またはZ
3で置換されてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フッ素原子、またはZ
3で置換されてもよいフェニル基が好ましく、存在しないこと(すなわち、Y
1〜Y
15およびR
1〜R
16が非置換であること)がより一層好ましい。
また、置換基Z
2は、ハロゲン原子、シアノ基、またはZ
3で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、フッ素原子、またはZ
3で置換されてもよい炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、存在しないこと(すなわち、Y
1〜Y
15およびR
1〜R
16が非置換であること)がより一層好ましい。
そして、Z
3は、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましく、存在しないこと(すなわち、置換基Z
1およびZ
2が非置換であること)がより一層好ましい。
【0034】
本発明の電荷輸送性化合物の分子量は、通常300〜5000であるが、溶解性を高める観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下であり、より一層好ましくは2000以下である。
なお、上記説明した電荷輸送性化合物の合成法としては、特に限定されるものではないが、ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)(1994年 第67巻 p.1749−1752)、シンセティック・メタルズ(Synthetic Metals)(1997年、第84巻、p.119−120)、国際公開第2008/032617号、国際公開第2008/032616号、国際公開第2008/129947号などに記載の方法が挙げられる。
【0035】
なお、本発明の電荷輸送性ワニスには、上述した電荷輸送性化合物の他に、導電性高分子等の公知のその他の電荷輸送性化合物を用いることもできる。
【0036】
一方、本発明の電荷輸送性ワニスに含まれる他の成分である電子受容性物質としては、特に限定されるものではなく、無機系の電子受容性物質、有機系の電子受容性物質のいずれも使用できる。
【0037】
無機系の電子受容性物質としては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl
3)、四塩化チタン(IV)(TiCl
4)、三臭化ホウ素(BBr
3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF
3・OEt
2)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、塩化銅(II)(CuCl
2)、五塩化アンチモン(V)(SbCl
5)、五フッ化アンチモン(V)(SbF
5)、五フッ化砒素(V)(AsF
5)、五フッ化リン(PF
5)、トリス(4−ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等の金属ハロゲン化物;Cl
2、Br
2、I
2、ICl、ICl
3、IBr、IF
4等のハロゲン;リンモリブデン酸、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸などが挙げられる。
【0038】
有機系の電子受容性物質としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p−スチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7−ジブチル−2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3−ドデシル−2−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4−ヘキシル−1−ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2−オクチル−1−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7−へキシル−1−ナフタレンスルホン酸、6−ヘキシル−2−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7−ジノニル−4−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、2,7−ジノニル−4,5−ナフタレンジスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号に記載されているアリールスルホン酸化合物、国際公開第2009/096352号に記載されているアリールスルホン酸化合物、ポリスチレンスルホン酸等の芳香族スルホン化合物;10−カンファースルホン酸等の非芳香族スルホン化合物;7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)等の有機酸化剤が挙げられる。
これら無機系および有機系の電子受容性物質は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
特に、電荷輸送性ワニスの保存安定性を向上させることを考慮すると、電子受容性物質は、芳香族スルホン酸化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、さらに、得られるワニスの塗布性を向上させることを考慮すると、分子量が2000以下の芳香族スルホン酸化合物を少なくとも1種類含むことが好ましい。
【0040】
電荷輸送性化合物および電子受容性物質のワニス総質量に対する濃度は、両物質の合計で、通常0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
また、電荷輸送性化合物と、電子受容性物質の物質量(mol)比は、通常、電荷輸送性化合物1に対し、0.1〜10であるが、好ましくは0.5〜1.5である。
そして、電子受容性物質と式(1)で表されるアミン化合物の物質量(mol)比は、通常、電子受容性物質1に対し、アミン化合物0.1〜5程度である。
【0041】
以上説明した電荷輸送性化合物、特に式(5)もしくは(6)で表される構造を有する、または式(7)で表される電荷輸送性化合物は、電子受容性物質、特に芳香族スルホン酸化合物と組み合わせて用いた場合、高い電荷輸送性を実現できるものの、使用する有機溶媒の種類によっては、これら電荷輸送性化合物および電子受容性物質からなる電荷輸送性材料の溶解性が低下することがよくある。
本発明では、このような電荷輸送性材料とともに、式(1)で表されるアミン化合物を用いて電荷輸送性ワニスを調製することで、電荷輸送性材料の有機溶媒に対する溶解性を高め、用い得る有機溶媒の種類や量、用い得る電荷輸送性材料の量等の幅を広げることが可能となる。
【0042】
また、このような溶解性の低下がワニス調製の際に問題とならない組成(溶媒の種類、電荷輸送性材料と電荷輸送性物質との組み合わせ、電荷輸送性材料の濃度)を採用する場合であっても、式(1)で表されるアミン化合物を用いて調製したワニスから得られる電荷輸送性薄膜によって、これを用いずに調製したワニスから得られる薄膜の場合と比較して、有機EL素子の輝度特性の向上を図ることができる。
本発明において、式(1)で表されるアミン化合物は、用い得る有機溶媒の種類や量、用い得る電荷輸送性材料の量等の幅を広げること、ワニスから得られる薄膜を有する有機EL素子の輝度特性や電流密度特性を向上させることのいずれか一方または両方を目的としてワニスに加えられるが、結果として、当該ワニスから得られた薄膜を、有機EL素子の正孔注入層または正孔輸送層、特に正孔注入層用いることで、有機EL素子の輝度特性や電流密度特性を向上し得る。
【0043】
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる溶媒としては、得られる薄膜を備えた有機EL素子の輝度特性や電流密度特性を改善するという観点からは、電荷輸送性化合物および電子受容性物質をそれぞれ単独で溶解し得、かつ、これら2つを併用した場合に溶け残りが発生する溶媒、それぞれ単独でも溶解し得、かつ、併用した場合でも溶解し得る溶媒、それぞれ単独では溶け残りが発生するが、併用した場合には溶解し得る溶媒のいずれを用いることもできる。
ただし、上述のように、本発明において、電荷輸送性ワニスへのアミン添加の目的の1つは、電荷輸送性化合物および電子受容性物質を、それぞれ単独で溶解し得、かつ、これら2つを併用した場合に溶け残りが発生する溶媒を用いた場合における電荷輸送性化合物および電子受容性物質の溶解性の改善にある。
【0044】
ワニス調製に用い得る溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトンアルコール、エチルラクテート、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、シクロへキサノン、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
【0045】
また、本発明の電荷輸送性ワニスに、20℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも一種類含有させることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、平坦性の高い薄膜を再現性良く与える、用いる塗布方法に応じたワニス調整が容易になる。
本発明のワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%であることが好ましい。
【0046】
このような溶媒としては、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられる。
【0047】
以上で説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることで基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
溶媒の蒸発法としても特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する薄膜を得ることが可能である。
焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃が好ましい。この場合、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。
【0048】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で電荷注入層として用いる場合、5〜200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0049】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いてOLED素子を作製する場合の使用材料や作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を予め行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0050】
本発明の電荷輸送性ワニスを正孔輸送性ワニスとしてOLED素子に使用する場合、以下の方法を挙げることができる。
陽極基板上に当該正孔輸送性ワニスを塗布し、上記の方法により蒸発、焼成を行い、電極上に正孔輸送性薄膜を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着してOLED素子とする。発光領域をコントロールするために任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
【0051】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体(TPD)、(α−ナフチルジフェニルアミン)ダイマー(α−NPD)、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー(Spiro−TAD)等のトリアリールアミン類、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のスターバーストアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられる。
【0052】
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq
3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)および4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、電子輸送材料または正孔輸送材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
電子輸送材料としては、Alq
3、BAlq、DPVBi、(2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられる。
【0053】
発光性ドーパントとしては、キナクリドン、ルブレン、クマリン540、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)
3)、(1,10−フェナントロリン)−トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオナート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)
3phen)等が挙げられる。
【0054】
キャリアブロック層を形成する材料としては、PBD、TAZ、BCP等が挙げられる。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al
2O
3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、Liq、Li(acac)、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0055】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いたPLED素子の作製方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
上記OLED素子作製において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の真空蒸着操作を行う代わりに、正孔輸送性高分子層、発光性高分子層を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を含むPLED素子を作製することができる。
具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して上記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送性高分子層、発光性高分子層を順次形成し、さらに電子注入層、陰極電極を順次蒸着してPLED素子とする。
【0056】
使用する電子注入層を形成する材料並びに陰極および陽極材料としては、上記OLED素子作製時と同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
正孔輸送性高分子層および発光性高分子層の形成法としては、正孔輸送性高分子材料もしくは発光性高分子材料、またはこれらにドーパント物質を加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、正孔注入層または正孔輸送性高分子層の上に塗布した後、それぞれ溶媒の蒸発により成膜する方法が挙げられる。
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1’−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1’−ペンテン−5’−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップド ウィズ ポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(4,4’−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)などのポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0057】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解または均一分散法としては撹拌、加熱撹拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
溶媒の蒸発法としては、不活性ガス下または真空中、オーブンまたはホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例で使用した装置は以下のとおりである。
(1) 基板洗浄:長州産業(株)製 基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(2)ワニスの塗布:ミカサ(株)製 スピンコーターMS−A100
(3)膜厚測定:(株)小坂研究所製 微細形状測定機 サーフコーダET−4000
(4)塗布性の評価:Lasertec製共焦点レーザー顕微鏡 VL−2000
(5)膜特性の評価:(株)島津製作所製 可視紫外線吸収スペクトル測定装置UV−3100PC
(6)EL素子の作製:長州産業(株)製 多機能蒸着装置システムC−E2L1G1−N
(7)EL素子の輝度等の測定:(有)テック・ワールド製 I−V−L測定システム
【0059】
[1]化合物の合成
[合成例1]
実施例および比較例で使用する式(10)で表されるアニリン誘導体(以下、アニリン誘導体Aという)を、下記反応式に従い、次の方法により合成した。
【0060】
【化10】
【0061】
4,4’−ジアミノジフェニルアミン10.00g(50.19mmol)、4−ブロモトリフェニルアミン34.17g(105.40mmol)、およびキシレン(100g)の混合懸濁液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.5799g(0.5018mmol)およびターシャルブトキシナトリウム10.13g(105.40mmol)を加え、窒素下130℃で14時間撹拌した。
その後、反応混合液を濾過し、その濾液を飽和食塩水で分液処理をした後、得られた有機層から溶媒を留去した。次いで、得られた固体を1,4−ジオキサンを用いて再結晶し、アニリン誘導体Aを得た(収量:22g,収率:65%)。
1H−NMRスペクトルを測定し、アニリン誘導体Aの構造を確認した。
1H−NMR(CDCl
3)δ:7.83(S,2H),7.68(S,1H),7.26−7.20(m,8H),7.01−6.89(m,28H).
【0062】
[合成例2]
実施例および比較例で使用する式(13)で表される芳香族スルホン酸化合物(以下、アリールスルホン酸Bという)を、国際公開第2006/025342号の記載に基づき、下記反応式に従い合成した。
【0063】
【化11】
【0064】
よく乾燥させた1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸ナトリウム11g(31.59mmol)に、窒素雰囲気下で、パーフルオロビフェニル4.797g(14.36mol)、炭酸カリウム4.167g(30.15mol)、およびN,N−ジメチルホルムアミド100mlを順次加え、反応系を窒素置換した後、内温100℃で6時間撹拌した。
室温まで放冷後、反応後に析出しているNSO−2を再溶解させるために、N,N−ジメチルホルムアミドをさらに500ml加え、室温で90分間撹拌した。撹拌終了後、この溶液を濾過して炭酸カリウム残渣を除去し、減圧濃縮した。さらに、残存している不純物を除去するために、残渣にメタノール100mlを加え、室温で30分間撹拌した。撹拌終了後、懸濁溶液を濾過し、濾物を濾取した。濾物に超純水300mlを加えて溶解し、陽イオン交換樹脂ダウエックス650C(ダウ・ケミカル社製、Hタイプ約200ml、留出溶媒:超純水)を用いたカラムクロマトグラフィーによりイオン交換した。
pH1以下の分画を減圧下で濃縮乾固し、残渣を減圧下で乾固してアリールスルホン酸Bを得た(収量:11g,収率:85%)。
【0065】
[2]溶解性試験
アミン化合物を加えることによる溶解性向上効果の試験を以下の方法で行った。
アニリン誘導体A0.069g(0.1mmol)、アリールスルホン酸B0.135g(0.15mmol)、および表1に示される各種有機溶媒20gを混合し、そこへトリブチルアミン0.088g(0.48mmol)を加えた場合の、アミン添加前後のアニリン誘導体Aおよびアリールスルホン酸Bの溶解性を確認し、溶け残りなしを「○」、溶け残りありを「×」として評価した。結果を表1に示す。
なお、本試験に先立って調製した、アニリン誘導体Aのみを含む溶液は青色であり、アリールスルホン酸Bのみを含む溶液は無色であった(溶媒はジエチレングリコールモノエチルエーテル)。
【0066】
【表1】
【0067】
アニリン誘導体Aおよびアリールスルホン酸Bを組み合わせて用いた場合、これらはジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびテトラヒドロフルフリルアルコールには、アミンを加えなくても完全に溶解した。また、そこへアミンを加えても、溶液の色は緑から青へ変化したが、析出することはなかった。
一方、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、または安息香酸エチルを溶媒として用いた場合、アニリン誘導体Aおよびアリールスルホン酸Bは完全には溶け切らなかった。しかし、そこへトリブチルアミンを加えると、溶液の色は緑から青へ変化し、溶け残った固形分は完全に溶解した。
溶解性試験における、色の変化を考慮すると、アニリン誘導体A等の電荷輸送性化合物とアリールスルホン酸B等の電荷輸送性材料が溶液に共存する場合、相互作用によりこれらの溶解性が低下するが、アミン化合物を添加することで、その相互作用が切断されると考えられる。
以上の結果から、アミン化合物を加えることで、電荷輸送性物質と電子受容性物質とを組み合わせて用いた場合に起こり得る溶解性の低下を抑制できることがわかった。
【0068】
[3]電荷輸送性ワニスおよび電荷輸送性薄膜の作製
[実施例1]
アニリン誘導体A0.082g(0.12mmol)とアリールスルホン酸B0.163g(0.18mmol)とを、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン4gに完全に溶解させた。得られた溶液に、貧溶媒であるシクロヘキサノール12gと2,3−ブタンジオール4gを加えて撹拌した。さらにこの溶液にピペリジン0.192g(1.44mmol)を加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを作製した。
得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO電極基板に塗布した後、大気中50℃で5分間乾燥し、さらに230℃で15分間焼成し、ITO電極基板に膜厚30nmの均一な薄膜を形成した。同様にして、得られたワニスを、スピンコーターを用いて石英基板に塗布した後、大気中50℃で5分間乾燥し、さらに230℃で15分間焼成し、石英基板に膜厚30nmの薄膜を形成した。
なお、ITO電極基板と石英基板は、プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用いて表面上の不純物を除却してから使用した。
【0069】
[実施例2〜5]
ピペリジン0.192gの代わりに、N−ブチルエチルアミン0.224g(1.44mmol)、トリエチルアミン0.227g(1.44mmol)、トリブチルアミン0.213g(1.44mmol)、ジイソプロピルエチルアミン0.219g(1.44mmol)をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスおよび電荷輸送性薄膜を作製した。
【0070】
[比較例1]
ピペリジン0.192gを加えなかった以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスおよび電荷輸送性薄膜を作製した。
【0071】
[比較例2〜9]
ピペリジン0.192gの代わりに、エチレンジアミン0.211g(1.44mmol)、ベンジルアミン0.168g(1.44mmol)、n−オクチルアミン0.211g(1.44mmol)、1,3−ジアミノペンタン0.192g(1.44mmol)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン0.18g(1.44mmol)、2−メチルアミノエタノール0.176g(1.44mmol)、ピリジン0.169g(1.44mmol)、トリブチルフォスフィン0.202g(1.44mmol)をそれぞれ加えた以外は、実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスおよび電荷輸送性薄膜を作製した。
【0072】
[比較例10]
ピペリジン0.192gの代わりに、0.1MNaOH水溶液を加えた以外は実施例1と同様の方法で電荷輸送性ワニスおよび電荷輸送性薄膜を作製した。
なお、NaOH水溶液は、徐々に加えて溶液の色が緑色から青色に変化した時点まで添加した。
【0073】
ワニスの塗布性および薄膜の膜特性の評価を以下の方法で行った。結果を表2に示す。
薄膜の膜面を観察し、薄膜表面に塗布ムラある場合を「×」、塗布ムラがない場合を「○」として、塗布性の評価をした。
また、添加剤を加えていないワニスを用いて作製した膜(比較例1)を基準とし、紫外・可視光領域におけるスペクトルが大きく変化した場合を「×」、それ以外の場合を「○」として各薄膜の膜特性の評価をした。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示されるように、式(1)で表されるアミン化合物を含むワニス(実施例1〜5)は、アミン化合物等を含まない電荷輸送性ワニス(比較例1)と同様の塗布性に良好な塗布性を示し、これ得られる薄膜のスペクトルも、比較例1で得られた薄膜のそれと比較して大きく差はなかった。
一方、それ以外のアミン(比較例2〜8)を含むワニスに関しては、その塗布性および膜特性の一方または両方が悪かった。また、式(1)のアミン化合物に構造上類似するトリブチルフォスフィンや、水酸化ナトリウム溶液を加えたワニスも、同様に、これらの特性が悪かった。
以上のことから、式(1)で表されるアミン化合物を用いることで初めて、ワニスの良好な膜特性と薄膜の膜特性を実現可能となり、その他のアミン化合物やフォスフィン化合物、水酸化ナトリウムいった無機アルカリ溶液を用いても、これら2つの特性を維持することは困難であることがわかった。
【0076】
[4]有機EL素子の作製
[実施例6]
実施例1で作製した電荷輸送性ワニスを、スピンコーターを用いてITO電極基板に塗布した後、50℃で5分間乾燥し、さらに230℃で15分間焼成し、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。薄膜を形成したITO基板上に対し、蒸着装置を用いてα−NPD30nm、Alq
340nm、フッ化リチウム0.5nm、アルミニウム120nmの各薄膜を順次積層させた。蒸着後、封止基板を用いて封止を行い、有機EL素子を作製した。この際、保水剤としてダイニック(株)製HD−071010W−40を封止基板内に収めた。封止のための接着材としては、ナガセケムテックス(株)製XNR5516Z−B1を使用した。封止は、貼り合わせた基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6000mJ/cm
2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させて行った。
【0077】
[実施例7〜9]
実施例1で作製した電荷輸送性ワニスの代わりに、実施例2,4,5で作製した電荷輸送性ワニスを用いた以外は、実施例6と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0078】
[比較例11]
実施例1で作製した電荷輸送性ワニスの代わりに、比較例1で作製した電荷輸送性ワニスを用いた以外は、実施例6と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0079】
OLED素子の電気特性を評価した。駆動電圧5Vにおける電流密度、輝度および電流効率を以下表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
表3に示されるように、式(1)で表されるワニスから得られる薄膜を有する有機EL素子(実施例6〜9)は、これを含まないワニスから得られる薄膜を有する有機EL素子(比較例11)と比較して、高い輝度および電流密度を示した。
以上のことから、式(1)で表されるアミン化合物を含む電荷輸送性ワニスを用いて作製した電荷輸送性薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いることで、有機EL素子の輝度特性や電流密度特性を向上できることがわかった。