(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面(
図1乃至
図4)を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
本発明に関係する発光装置は、基板と、基板上に実装される発光素子と、発光素子を封止する封止部材と、基板と封止部材との間に剥離層を有している。そして、剥離層において、封止部材を基板から取り外す。
【0013】
本発明に関係する別の発光装置は、基板と、基板上に実装される発光素子と、発光素子を封止する封止部材と、基板と封止部材との間に空気層が設けられている。そして、封止部材を基板から取り外す。
【0014】
(基板101,201,301,401)
基板は、発光素子が実装される部材である。
【0015】
基板は、いわゆる実装基板、パッケージ基材等を意味する。その材料は特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂などの樹脂(フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の剛性の材料、BTレジン、PPA、ポリイミド、PET、PEN、PVDF、液晶ポリマー等の可撓性を有する材料等)、セラミックス、ガラス等の絶縁性材料により形成されているもの、あるいは銅、アルミ、ニッケル、鉄、タングステンなどの金属や合金、及び金属や合金の表面に各種鍍金を施したものや絶縁層を設けたものなどが挙げられる。
【0016】
形状は特に限定されず、板状、シート状、発光素子が収容される凹部を有する形状などが好適に挙げられる。
【0017】
基板の表面は、光反射率が高いことが好ましい。具体的には、アルミナや酸化チタン、酸化ケイ素を含有させたPPAやエポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの白色の絶縁材、シリコーン樹脂に酸化チタンを含有させた白色レジストで被覆されたポリイミドフィルム等を用いることができる。
【0018】
基板の発光素子が実装される面には、少なくとも1つの発光素子の一対の電極に対応するように、互いに分離された少なくとも2つの配線が存在する。また、基板の発光素子が実装される面の表面に配線が存在する限り、発光素子が実装される面の反対側の表面に配線があってもよく、内部に配線が一層または多層に埋め込まれたものであってもよい。このような配線パターンの形状は、特に限定されず、種々の形態とすることができる。
【0019】
配線の材料は、導電性材料により形成されるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミ等の金属又は合金等が挙げられる。また、これらの材料により鍍金によって形成されたものでもよく、そのほかにも、導電性ペーストやインク等を用いて配線を形成されたものであってもよい。また、これらの材料が積層されたものであってもよい。また、発光素子が実装される最表面には、光反射率の高い材料を用いることが好ましく、特に銀が好適である。
【0020】
なお、基板が導電性である場合には、基板が配線を兼ねていてもよい。
【0021】
(発光素子102,202,302,402)
発光素子としては、半導体発光素子(例えばLED)を用いることができる。半導体発光素子は、基板上にInN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等の半導体層を積層した積層構造体から構成されている。発光素子の基板としては、サファイア等の絶縁性基板や、SiC、GaN、GaAs等の導電性基板等が挙げられる。
【0022】
絶縁性基板を用いた半導体発光素子では、積層構造体の上面にn側電極およびp側電極を形成する。導電性基板を用いた半導体発光素子では、積層構造体の上面に一方の電極(例えばn側電極)、導電性基板の下面に他方の電極(例えばp側電極)を形成する。
発光素子がフリップチップ実装される場合には、サファイアやSiC等透光性を有する基板を用いることが好ましい。また、基板と発光素子の間に、樹脂等のアンダーフィル208,308を設けることもできる。
【0023】
(接合部材103,203,303,403)
本発明の発光素子は、接合部材を用いて基板ないし基板上の配線に実装される。
【0024】
接合部材の材料としては、公知のものを利用することができ、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂をはじめとする樹脂、銀ペースト、金ペースト等の樹脂に導電性材料を含有させたもの、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Bi系、Sn−Zn系、Au−Sn系などの半田や、Au等の金属のバンプ等を用いることができる。
【0025】
なかでも、半田を用いることが好ましい。半田は、レーザ照射やハロゲンランプ、ホットプレート(ヒータ)、ホットエアブロー、半田ゴテなどで局所的に加熱・溶融させることで、不良とされた発光素子を容易に取り外すことができる。また、加熱により溶融した半田は、基板からの除去が容易であるため、取り外した後の同じ部分に発光素子を実装することができるため、好ましい。
【0026】
なお、上記の接合部材で発光素子を実装した後、発光素子の上面に設けられた電極と配線の間で、導電性のワイヤを用いて電気的接続を取ることもできる。このようなワイヤとしては、Au、Ag、Al、Cuなどの金属及びその合金やメッキされた合金の細線などを好適に用いることができる。
【0027】
(封止部材104,204,304,404)
封止部材は、発光素子を封止する部材である。
【0028】
封止部材の形状は、本実施形態においては、発光素子を中心とする略半球形状であるが、これに限られるものではない。
【0029】
このような封止部材の材料としては、公知のものを利用することができ、透光性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂等)が好適にあげられる。なかでも、エポキシ樹脂は、密着性(接着力)が高く、取り外しが困難であるため、本発明の効果が高い。
【0030】
封止部材は、光拡散やチクソ性の制御等の目的で、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン等のフィラーを含有していてもよい。
【0031】
また、発光素子からの光を吸収して異なる波長の光を出す蛍光体等の波長変換部材を含有していることが好ましい。このような波長変換部材としては、例えば、酸化物系や硫化物系,窒化物系蛍光体等が挙げられ、発光素子に青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用い、青色光を吸収して黄色〜緑色系発光するYAG系、LAG系、緑色発光するSiAlON系や赤色発光するSCASN、CASN系の蛍光体を単独で又は組み合わせて用いることが好ましい。特に、液晶ディスプレイやテレビのバックライト等の表示装置に用いる発光装置は、SiAlON系蛍光体とSCASN蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。また、照明用途としては、YAG系またはLAG系の蛍光体とSCASNまたはCASN蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。
【0032】
このような波長変換部材を含有させた封止部材は、取り外し後に基板上に残ると、封止部材を再び設ける際に封止部材の形状のばらつきの原因となる、完成後の発光装置の色ばらつき等の原因となる等のおそれがあるため、取り外しを容易とすることができる本発明の効果が高い。
【0033】
(剥離層105および空気層206,306,406)
本発明の発光装置においては、基板と封止部材との間に、剥離層、または、空気層が設けられている。これにより、封止部材を容易に取り外すことが可能となる。
【0034】
(設ける位置)剥離層や空気層は、少なくとも基板と封止部材との間の一部に設けられていればよいが、発光素子の下部以外の封止部材の下面全域に設けられていることが好ましい。これにより、封止部材を容易に取り外すことができる。
【0035】
(形状)剥離層や空気層の形状は、封止部材の取り外しを容易にできるものであれば、どのようなものでもよいが、封止部材の下面(基板と対向している面)と略同じ大きさ・略同じ平面視形状で面状に設けられていることが好ましい。その他、点状、線状、格子状、発光素子を中心とする同心円状、放射状等、様々な平面視形状に設けることができる。なお、剥離層や空気層を封止部材の下面の全面に設けた場合には、封止部材は基板と直接接しないが、このような場合であっても、本明細書においては「封止部材を基板から取り外す」と呼ぶ。
【0036】
空気層を設ける場合、発光素子や接合部材等が封止部材の外部雰囲気と接することによる汚染や腐食を防止し、信頼性の高い発光装置とするため、発光素子、接合部材、配線等の部材は、封止部材によって発光装置の外部と遮断されるよう設けられることが好ましい。
例えば、
図3に示すように、発光素子や接合部材等を封止部材によって被覆し、その部分の外側に空気層を設けることができる。
【0037】
また、このような空気層は、発光素子を取り囲むように封止部材の一部が基板と接触していることで構成されてもよい。例えば、
図4に示すように、発光素子を取り囲むように封止部材の一部が基板と接触しており、空気層が封止部材と基板との接触部分から発光素子に近い領域に設けられている、つまり、空気層が封止部材によって取り囲まれており、発光装置の外部と連続していないように設けることができる。封止部材の基板と接する部分の形状は特に限定されないが、例えば発光素子を中心とする同心円状などとすることができる。
【0038】
さらに、封止部材は、最外周部と発光素子の周囲とで基板と接触するように設けられ、その接触した部分と発光素子との間に空気層を有することが好ましい。これにより、封止部材を安定して固定することができる。
【0039】
(厚み)剥離層・空気層の厚みは、特に限定されないが、印刷などの簡便で安価な工法で形成できるため15〜50μm程度であることが好ましく、光取り出し効率の低下を低減するために15〜30μm程度がより好ましい。
【0040】
(剥離層の材料)剥離層には、封止部材と基板との密着性よりも、封止部材との密着性が低いか、高い部材が用いられる。封止部材との密着性が低い場合には、封止部材は剥離層と封止部材との界面で取り外され、高い場合には、封止部材は、基板と剥離層との界面で取り外される。具体的な材料としては、撥油性の樹脂等を用いることができ、封止部材や基板との密着性を考慮して、適宜選択することができ、具体的にはフッ素樹脂やシリコーン樹脂を利用することができる。特に、取り外しを容易にできるフッ素樹脂が好ましい。
【0041】
その他、剥離層は、透光性ないしは光反射性を有することが好ましく、具体的には、白色の酸化チタンや酸化珪素等が含有されていることが好ましい。これにより、光取出し効率を高めることができる。基板の光反射率が低い場合には、特に好ましい。
【0042】
(剥離層の形成方法)剥離層は、基板上や封止部材の下面に印刷・塗布・スピンコート・スプレー・インクジェット等の方法で形成することができる。
【0043】
(空気層)
空気層を用いる場合には、新たな部材を基板上に設けることなく、封止部材の取り外しが容易な発光装置とできるほか、取り外した封止部材が基板上に残りにくいため、再封止が容易となり、好ましい。
【0044】
(空気層の形成方法)空気層は、空気層を設ける部分に対応して基板上にあらかじめ他の部材を設け、封止部材を設けた後にその部材を除去する等の方法で形成することができる。例えば、シリコーンオイルを塗布・硬化した状態で封止を行い、シリコーンオイルを溶剤等で溶かして除去することで空気層を形成できる。この他、成形済みの封止部材を発光素子上に接着する方法によっても空気層を形成することができる。
【0045】
(剥離層と空気層の組み合わせ)
なお、本発明の発光装置は、空気層と剥離層の両方を備えるよう構成されてもよい。これにより、封止部材をより容易に剥離することができるとともに、発光装置の信頼性を高めることができる。例えば、封止部材の発光素子や接合部材を被覆した部分の下方に剥離層を設け、剥離層の外側の封止部材の下方に空気層を設けることができる。また例えば、基板上に発光素子を取り囲むように空気層を設け、空気層の周囲の基板上に封止部材と接する剥離層を設けることができる。
【0046】
(封止部材の取り外し方法)
封止部材の取り外し方法は、特に限定されず、封止部材の上面を吸着し引き上げる、封止部材の側面に水平に荷重を加える、基板が可撓性を有する場合には基板を曲げる、等の手段があげられる。
【0047】
なお、発光素子が不良である場合には、封止部材と発光素子とを同時に取り外すことが好ましい。これにより、工程の数を削減することができる。このため、封止部材と発光素子とは、密着性が高いことが好ましく、特に、剥離層を用いる場合には、封止部材と剥離層との密着性よりも高いことが好ましい。発光素子の接合部材に半田を用いることで、該半田を溶融させることにより、容易に封止部材と発光素子とを同時に取り外すことができ、好ましい。
【0048】
(封止部材の取り外し後)
封止部材が取り外された後、必要に応じて、封止部材が設けられていた場所に、新たに封止部材を設ける(再封止する)ことができる。また、発光素子も同時に取り外された場合には、取り外した発光素子が設けられていた場所又はその近傍に発光素子を実装し、さらに封止部材を設けることができる。これにより、不良の封止部材または発光素子を容易に良品に交換することができ、発光装置を廃棄することなく利用することができるため、廃棄物の削減やコストを低減することが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の発光装置の封止部材の取り外し方法に関する実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0050】
(実施例1)
本実施例の発光装置110は、褐色のポリイミドフィルム101a上に、一対の銅の配線101bと、該配線が一部露出するように設けられるシリコーン樹脂に酸化チタンが含有された白色レジスト101cとが順に設けられた基板101と、基板の配線上にフリップチップ実装されるサファイア基板を有する窒化ガリウム系発光素子102と、基板101と発光素子102とを接合する接合部材であるSn−Cu系の半田103と、発光素子102を封止する、透光性のシリコーン樹脂にYAG蛍光体が含有された封止部材104とを備え、基板101と封止部材104との間の全面に、剥離層である厚み25μmのフッ素樹脂層105が設けられている。ここで、フッ素樹脂層105は、封止部材104と基板101との密着性よりも封止部材104との密着性が低い。
【0051】
この発光装置110の封止部材104を取り外すには、基板101の裏面(ポリイミドフィルム側)から、近赤外レーザを照射し、約290度まで加熱し、半田103を溶融させる。その後、半田103が溶融した状態で、封止部材104の上面を吸着ノズル107で吸着し、発光素子102と封止部材104を基板101から取り外す。
【0052】
本実施例では、封止部材104を容易に取り外すことができる。
【0053】
(実施例2)
本実施例の発光装置210は、アルミナの板上に一対の銀の配線が設けられ、該配線上の発光素子との接合部のみに金の鍍金が施された基板201と、フリップチップ実装される発光素子202と、基板201の配線上に発光素子202を接合する接合部材である組成比が略1:9であるAu−Sn系の半田203と、発光素子202と基板201との間を充填するよう設けられたアンダーフィル208と、発光素子202を封止する透光性のエポキシ樹脂からなる封止部材204とを備え、基板201と封止部材204との間に空気層206が設けられている。
【0054】
この発光装置210の封止部材204を取り外すには、発光装置210をホットプレート(図示せず)で加熱し、半田203を溶融させる。その後、半田203が溶融した状態で、封止部材204の側面をジグ207で基板201と水平方向に押し、発光素子201と封止部材204とを取り外す。
【0055】
本実施例では、実施例1と同様に、封止部材204を容易に基板201から取り外すことができる。