(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態をその図面を参照して具体的に説明する。
本実施の形態に係るステージ装置は、例えば被加工物、被検査物等の試料、製造装置、検査装置等を載置したステージをリニアモータの駆動力により一方向に移動する。
【0011】
実施の形態1
図1は、ステージ装置10の正面図である。ステージ装置10は、下部ステージ部20及び上部ステージ部30を含む。下部ステージ部20は、上部ステージ部30を略水平面内の一定方向に移動するステージ装置に対応する。上部ステージ部30は、ステージ(第二ステージ)31を水平面内の方向であって、下部ステージ部20に係る移動方向と略直交方向に移動させるステージ装置に対応する。
図1は、下部ステージ部20が上部ステージ部30を移動させる移動方向から見たステージ装置10の正面図である。
【0012】
下部ステージ部20は、基台21、直動軸受支持体22、直動軸受23、ヨーイングキャンセルプレート(板状部材)24、スラスト軸受(支持部材)25、上軸ベース(ステージ)26、エアパッド(噴出部、第二噴出部)27及びリニアモータ28を含む。
基台21は、複数の角型パイプ状鋼管211を相互に溶接して一体化した台であり、平たい略直方体状をなす。角型パイプ状鋼管211は、例えば平面視「H」字状、「日」の字状、「目」の字状、「口」の字状に一体化される。
なお、角型パイプ状鋼管211の重量を増大させるために、内部に例えば非焼成セラミックスが充填されてもよい。非焼成セラミックスを充填することで、剛性が高く効果的な制振作用を得ることが期待できる。また、基台21は、石定盤で構成されてもよい。
【0013】
直動軸受支持体22は、基台21上にて略同一方向へ配向された2本の四角柱である。直動軸受支持体22は、夫々基台21と溶接により結合されている。2本の直動軸受支持体22は、夫々直動軸受23を支持する機能を有している。
【0014】
直動軸受23は、レール231及びリニアブロック(移動体)232を含む。直動軸受23は、レール231に案内されて転動体が回転することにより、当該転動体を有するリニアブロック232が直線運動をする機械要素部品である。リニアブロック232は、直方体状をなし、予めレール231に組み付けられている。
1本のレール231に、2つのリニアブロック232が組み付けられている。
図1は、レール231の軸方向からリニアブロック232を描いているため、奥側のリニアブロック
232は隠れている。
なお、1本のレール231に組み付けられるリニアブロック232の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
また、直動軸受23は、圧縮空気を介してリニアブロック232がレール231に案内されるものでもよい。
【0015】
下部ステージ部20は、一対の直動軸受23を含む。レール231夫々は、レール231及び直動軸受支持体22の長手方向が略同一になるように、直動軸受支持体22の上面にねじで各々固定されている。これにより、各直動軸受23は、直動軸受支持体22を介して基台21に固定されている。
【0016】
図2は、下部ステージ部20の上面図である。
図2は上軸ベース26を取り除いた状態における下部ステージ部20を示しているが、参考のために
図2では上軸ベース26が二点鎖線で描かれている。また、4つのリニアブロック232が破線で描かれている。
【0017】
ヨーイングキャンセルプレート24は、自身の移動方向と略平行な辺を短辺とする矩形板状をなす。ヨーイングキャンセルプレート24の下面における4つの角部付近は、4つのリニアブロック232の上面と接合されている。
図2において、左上及び右下のリニアブロック232と、左下及び右上のリニアブロック232とは、夫々ヨーイングキャンセルプレート24の下面の中心に対して点対称に配置している。また、左上及び右上のリニアブロック232と、左下及び右下のリニアブロック232とは、夫々ヨーイングキャンセルプレート24の中心点を通り、かつヨーイングキャンセルプレート24の移動方向と略平行な鉛直面に対して面対称に配置している。
【0018】
スラスト軸受25は、上軸ベース26を含む上部の部材の荷重を受ける軸受である。スラスト軸受25は、内輪251及び外輪252を含む。スラスト軸受25は、内輪251と外輪252との間で玉が転がる構造を有している。スラスト軸受25の外輪252は、ヨーイングキャンセルプレート24の上面の略中央に例えばねじで固定されている。スラスト軸受25の内輪251は、矩形板状をなす上軸ベース26の下面の略中央に例えばねじで固定されている。
【0019】
なお、スラスト軸受25を上下方向に反転させて、内輪251及び外輪252を夫々ヨーイングキャンセルプレート24の上面及び上軸ベース26の下面に固定してもよい。
また、スラスト軸受25は、金属棒を捻るときの反発力を利用したねじり棒ばね(トーションバースプリング、支持部材)で代替されてもよい。
【0020】
上軸ベース26は、上部ステージ部30を載置する基台である。上軸ベース26は、ヨーイングキャンセルプレート24よりも厚い矩形板状体である。上軸ベース26の下面中央にスラスト軸受25の一部を内嵌保持する窪みが設けられており(
図1における破線部分)、スラスト軸受25の上部は、当該窪みに嵌合している。上記で述べたスラスト軸受25の内輪251は、より詳しくは、当該窪みの底面に固定されている。
上側から見た場合、上軸ベース26の中心位置と、ヨーイングキャンセルプレート24の中心位置とは略一致し、上軸ベース26及びヨーイングキャンセルプレート24の各辺が夫々略平行となるように、上軸ベース26は配置されている。
【0021】
エアパッド27は、エアベアリングとも呼ばれ、円板状をなす。エアパッド27は、多孔質の例えばカーボン材又はセラミックスから構成されている。エアパッド27は、図示しない空気配管を介して、図示しない空気供給源から供給された加圧空気を、一面から噴出する。空気供給源は、例えばエアコンプレッサである。
なお、エアパッド27は、例えば円錐台状又は矩形板状をなしてもよい。
【0022】
下部ステージ部20は、4個のエアパッド27を含む。各エアパッド27は、上軸ベース26の下面の各角部付近に設けられている。各エアパッド27は、より詳しくは、上側から見た場合、その中心位置が4つのリニアブロック232の中心位置と夫々略一致するように設けられている。あるいは、
図2において、左上及び左下のエアパッド27と、右上及び右下のエアパッド27とは、夫々レール231の中心線上に対応するように位置決めされている。
【0023】
4個のエアパッド27に取り付けられた空気配管は、上軸ベース26の内部又は外部で束ねられ、1本の空気配管に接続されている。当該1本の空気配管は、空気供給源に接続されている。空気供給源は、空気の圧力を制御する機能を有している。空気供給源により制御された加圧空気は、空気配管を通って、各エアパッド27からヨーイングキャンセルプレート24の上面に向けて噴出される。
【0024】
なお、エアパッド27の個数は、4個に限らない。各レール231の中心線上に対応する上軸ベース26の下面に、夫々1個以上でありかつ同数のエアパッド27が設けられてよい。本実施の形態に係る直動軸受23は対をなすため、エアパッド27の総数は、偶数である。
【0025】
ステージ装置10が動作していない場合(エアパッド27から空気が噴出していない場合)、エアパッド27における空気の噴出面と、ヨーイングキャンセルプレート24の上面とは、接触している。スラスト軸受25とエアパッド27との中間位置におけるヨーイングキャンセルプレート24及び上軸ベース26の間には、僅かな隙間が生じるように、エアパッド27の高さは決められている。そのため、スラスト軸受25とエアパッド27との中間位置におけるヨーイングキャンセルプレート24及び上軸ベース26は、隔離した状態で対向している。
【0026】
下部ステージ部20は、一対のリニアモータ28を含む。棒状をなす各リニアモータ28の固定子281は、直動軸受23のレール231と略平行に配向されて、直動軸受23の外側の基台21上に固定されている。レール231の長手方向に対する上軸ベース26の両側面に、リニアモータ28の固定子に延びる階段状の脚部261が1つずつ設けられている。各脚部261の先端に、リニアモータ28の固定子281に遊嵌可能な可動子282が取り付けられている。
【0027】
ステージ装置10は、上軸ベース26のヨーイング又は姿勢を検出する検出部(図示せず)と、当該検出部が検出した上軸ベース26のヨーイング又は姿勢に基づいて、一対のリニアモータ28の駆動を夫々制御する制御部(図示せず)とを含む。なお、検出部は、上軸ベース26のヨーイング又は姿勢に加えて、上軸ベース26の位置を検出してもよい。
検出部が上軸ベース26のヨーイングを検出した場合、制御部は上軸ベース26のヨーイングを低減する方向に、一対のリニアモータ28の駆動を夫々制御する。その際、制御部は、一対のリニアモータ28に供給する電流を夫々変更する。
【0028】
上記検出部は、例えば上軸ベース26に取り付けられたエンコーダ、ジャイロスコープ、角速度センサ、加速度センサ、電子コンパスである。
あるいは、上記検出部は、例えばステージ装置10の固定部に取り付けられたレーザ装置、上軸ベース26に取り付けられた反射鏡、及びレーザ装置から放射された光が反射鏡で反射された反射角を検出するオートコリメータである。
上記制御部は、回路で構成されてもよいし、コンピュータ及びプログラムで構成されてもよい。
【0029】
上部ステージ部30は、ステージ31、上軸直動軸受32及び上部リニアモータ(第二リニアモータ、図示せず)を含む。ステージ31は、矩形板状をなし、例えばアルミニウムから構成されている。ステージ31の上面に、被加工物、装置等が載置される。
【0030】
上軸直動軸受32は、レール321及びリニアブロック322を含む。レール321及びリニアブロック322のハードウェア構成は、夫々下部ステージ部20における直動軸受23のレール231及びリニアブロック232と同じである。
上部ステージ部30は、一対の上軸直動軸受32を含む。一対のレール321は、その長手方向が下部ステージ部20のレール231の長手方向と略直角で立体交差するように、上軸ベース26の上面にねじで夫々固定されている。
【0031】
上部リニアモータのハードウェア構成は、リニアモータ28と同じである。一対の上部リニアモータの固定子は、その延在方向がレール321の長手方向と略平行になるように配向され、レール321の外側に対応する上軸ベース26の上面に夫々取り付けられている。レール321の長手方向に対するステージ31の両側面には、上部リニアモータの可動子が上部リニアモータの固定子に遊嵌可能に取り付けられている。
【0032】
次に、ステージ装置10の動作について説明する。
空気供給源を動作させて、空気供給源から加圧空気をエアパッド27に送り込む。空気圧を例えばバルブ(図示せず)で調整し、徐々に空気圧を上げていく。上軸ベース26の下面に取り付けられたエアパッド27からヨーイングキャンセルプレート24の上面に向けて加圧空気が噴出する。噴出した加圧空気は、ヨーイングキャンセルプレート24とエアパッド27との間に極めて薄い空気層を形成し、ヨーイングキャンセルプレート24に対して上軸ベース26を浮揚させる。一対のリニアモータ28を同期して駆動させることにより、上軸ベース26は移動を開始する。その際、上軸ベース26は、直動軸受23に案内されて、レール231の長手方向へ移動する。
【0033】
ここで、レール231の曲りに起因して、リニアブロック232に固定されたヨーイングキャンセルプレート24がヨーイングを開始したとする。ヨーイングキャンセルプレート24がヨーイングを開始した場合、ヨーイングキャンセルプレート24がスラスト軸受25を縦軸回りに捻る力は、スラスト軸受25の外輪252を回転させる。しかし、外輪252と内輪251との間で玉が転動することにより、ヨーイングキャンセルプレート24がスラスト軸受25を縦軸回りに捻る力は、内輪251が固定されている上軸ベース26には伝達しない。よって、上軸ベース26は、ヨーイングを開始することなく、慣性の法則に従って直線運動を継続する。
【0034】
ヨーイングキャンセルプレート24とエアパッド27との間に広がる空気層の厚さは、極めて薄い。そのため、スラスト軸受25が接合するヨーイングキャンセルプレート24及び上軸ベース26との接合面に特別な負荷がかかるわけではない。
なお、空気層が生じて上軸ベース26が浮揚した場合、上軸ベース26が平坦になるように、エアパッド27が取り付けられる上軸ベース26の部分は予め若干下側へ反っていてもよい。
【0035】
上述では、ステージ装置10は、上部ステージ部30を含んでいた。しかし、ステージ装置10は、上部ステージ部30を含んでいなくてもよい。かかる場合、ステージ装置10の上軸ベース26が被加工物、装置等を載置するステージに対応する。
【0036】
上述では、エアパッド27は、上軸ベース26の下面に取り付けられていた。しかし、エアパッド27は、ヨーイングキャンセルプレート24の上面に設けられてもよい。かかる場合のエアパッド27の位置は、上軸ベース26の下面に設けられた位置と上下方向に重畳する位置である。ヨーイングキャンセルプレート24の上面に設けられたエアパッド27は、上軸ベース26の下面に向けて加圧空気を噴出する。
【0037】
上述では、ステージ装置10は、エアパッド27を含んでいた。しかし、ステージ装置10は、エアパッド27を含んでいなくてもよい。かかる場合、スラスト軸受25のサイズを
図1及び
図2に示したサイズよりも大きくする。
図2において、スラスト軸受25の直径を、ヨーイングキャンセルプレート24の短辺の例えば5割〜9割程のサイズにする。スラスト軸受25は、スラスト軸受25よりも外側におけるヨーイングキャンセルプレート24及び上軸ベース26を接触させることなく、ヨーイングキャンセルプレート24に対してスラスト軸受25を回動可能に支持する。
【0038】
ステージ装置10によれば、上軸ベース26のヨーイングを安価に低減することができる。
レール231の曲りに起因するヨーイングがヨーイングキャンセルプレート24に発生した場合、スラスト軸受25の内輪251及び外輪252が相対的に回転することにより、上軸ベース26にヨーイングを発生させる力は伝わらない。そのため、上軸ベース26は、慣性の法則に従って、無回転状態(ヨーイングしていない状態)を維持する。
更に、エアパッド27がヨーイングキャンセルプレート24と上軸ベース26との間に噴出した空気は、たいへん薄い空気層を形成し、ヨーイングキャンセルプレート24に対して上軸ベース26を浮揚させる。そのため、上軸ベース26は、スラスト軸受25のみを介して直動軸受23に案内されるので、ヨーイングを発生させる力を受けない。つまり、直動軸受23の案内に伴い発生するヨーイングに係る力は、スラスト軸受25までに及び、スラスト軸受25よりも上方に配置された部材には及ばない。
なお、スラスト軸受25の代わりにねじり棒ばねを用いた場合、直動軸受23の案内に伴い発生するヨーイングに係る力は、ねじり棒ばねよりも上方に配置された部材に僅かに及ぶ。
【0039】
加工精度が高い高価な基台を用いてヨーイングを低減する場合に比較して、ステージ装置10は加工精度が低い安価な基台21を用いてヨーイングを低減することができる。況してや加工精度が高い高価な基台を用いる場合、ステージ装置10は更にヨーイングを低減することができる。ヨーイングの原因には、一定位置へのレール231の取付精度も関与する。ステージ装置10は、レール231の取付精度が低くても、上軸ベース26のヨーイングを低減することができるので、基台21へのレール231の取付作業がより容易になり、取付作業時間も短縮される。ステージ装置10は、過剰な電流をリニアモータ28に流してヨーイングを低減する必要がないので、リニアモータ28にかかる負荷と発熱量とを低減することができる。従って、ステージ装置10は、リニアモータ28の長寿命化にも資する。
【0040】
エアパッド27からヨーイングキャンセルプレート24に噴出された空気の圧力はヨーイングキャンセルプレート24を変形させることが考えられる。ヨーイングキャンセルプレート24が不均一にしなった場合、ヨーイングキャンセルプレート24の質量分布が変化し、ヨーイングキャンセルプレート24のヨーイングが増大しかねない。しかし、エアパッド27は、直動軸受23のレール231又はリニアブロック232の直上に配置されている。そのため、エアパッド27から噴出した空気圧に基づく力は直動軸受23に伝わりやすく、ヨーイングキャンセルプレート24を不均一に変形させ難い。従って、エアパッド27の配置は、ヨーイングキャンセルプレート24のヨーイングを、ひいては上軸ベース26のヨーイングを低減する効果を有している。
【0041】
実施の形態2
実施の形態2は、エアパッド27からヨーイングキャンセルプレート24の上面及び下面に空気を噴出する形態に関する。
なお、実施の形態2において、実施の形態1と同様である構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
図3は、ステージ装置10の正面図である。
図4は、下部ステージ部20の上面図である。
図3は、
図1と同様に、下部ステージ部20が上部ステージ部30を移動させる移動方向から見たステージ装置10の正面図である。
図4は、
図2と同様に、上軸ベース26を取り除いた状態における下部ステージ部20を示しているが、参考のために
図4では上軸ベース26が二点鎖線で描かれている。また、4つのリニアブロック232が破線で描かれている。
【0043】
図4において、ステージ装置10のヨーイングキャンセルプレート24には、2つの長辺(ヨーイングキャンセルプレート24の移動方向と略直交方向の辺)の略中央に夫々矩形状の切欠き241が1つずつ設けられている。各切欠き241は、ヨーイングキャンセルプレート24の移動方向と略直交方向に延びている。そのため、ヨーイングキャンセルプレート24は、ヨーイングキャンセルプレート24の移動方向に対して、平面視H字状をなす。
【0044】
上軸ベース26の下面に、ヨーイングキャンセルプレート24の切欠き241の短辺付近で曲成され、ヨーイングキャンセルプレート24の下面まで回り込む立面視L字状の垂下部材29が4つ垂設されている(
図3、
図4)。なお、垂下部材29の立面視形状は、J字状でもよい。4つの垂下部材29は、各切欠き241を構成する2つの短辺付近の切欠き241部分夫々と対向する上軸ベース26の下面部分から垂設されている。
図4において、左上及び右下の垂下部材29と、左下及び右上の垂下部材29とは、夫々スラスト軸受25に対して点対称な位置に配置している。左上及び右上の垂下部材29と、左下及び右下の垂下部材29とは、上軸ベース26の中心点を通り、かつ夫々上軸ベース26の移動方向と略平行な鉛直面に対して面対称な位置に配置している。
【0045】
4つの垂下部材29の各先端には、空気の噴出面が上方を向くように配向されたエアパッド27が1つずつ取り付けられている。垂下部材29の先端に取り付けられたエアパッド27は、ヨーイングキャンセルプレート24の下面に加圧空気を噴出する。上側から見て、ヨーイングキャンセルプレート24の下面に加圧空気を噴出する4つのエアパッド27は、ヨーイングキャンセルプレート24の上面に加圧空気を噴出する4つのエアパッド27の内側かつスラスト軸受25の外側に配置している。以下、ヨーイングキャンセルプレート24の上面に加圧空気を噴出するエアパッド27を上側のエアパッド27又は外側のエアパッドと呼ぶ。ヨーイングキャンセルプレート24の下面に加圧空気を噴出するエアパッド27を下側のエアパッド27又は内側のエアパッド27と呼ぶ。
【0046】
図5は、上側のエアパッド27直上における上軸ベース26内部の説明図である。
エアパッド27は、ボールジョイント272を介して、外面にねじ溝が切られたボルト271に接続されている。上軸ベース26の内部には、ボルト271が螺合するねじ穴が設けられている。エアパッド27直上に位置する上軸ベース26の上面には、ボルト271のねじ頭部273と、上軸ベース26に対してボルト271の位置を固定するロックナット274とが配設されている。ねじ頭部273を例えば六角レンチで回転することにより、上軸ベース26に対するエアパッド27の上下方向における取り付け位置の調整及びロックナット274による固定が行われる。その際、ボルト271がエアパッド27直上における上軸ベース26を突っ張ることにより、上軸ベース26は僅かに変形する。併せてエアパッド27から加圧空気を噴出することで、空気の圧力により上軸ベース26は更に僅かに変形する。
【0047】
図6は、上軸ベース26の縦断面形状を誇張して示した説明図である。上軸ベース26内に描かれた下に凸の曲線は、上側のエアパッド27の取り付け及び加圧空気の噴出により生じる上軸ベース26の変形を示している。スラスト軸受25直上の上軸ベース26部分はほとんど変形しないが、上軸ベース26の周辺部分は、中心部に対して相対的に上方に反ったように変形している。
図6に示した上軸ベース26の形状は、不均質な上軸ベース26の質量分布を生じさせ、上軸ベース26のヨーイングを増大させる要因になり得る。
【0048】
次に、ステージ装置10の下部ステージ部20の動作について説明する。
空気供給源を動作させて、上側のエアパッド27と、下側のエアパッド27とから、夫々ヨーイングキャンセルプレート24の上面と下面とに加圧空気を噴出する。下方に噴出した加圧空気は、極めて薄い空気層を形成し、ヨーイングキャンセルプレート24に対して上軸ベース26を浮揚させる。
【0049】
他方、上方に噴出した加圧空気は下側のエアパッド27及び垂下部材29を介して上軸ベース26を下方へ引っ張る力を上軸
ベース26及び垂下部材29の接合面付近(スラスト軸受25と上側のエアパッド27との中間位置)に発生させる。上軸ベース26を下方へ引っ張る当該力は、スラスト軸受25の上面端部を支点にして、スラスト軸受25と上側のエアパッド27との中間位置における上軸ベース26部分を下方へ曲げるように変形させる。その結果、
図6に示す上側のエアパッド27の取り付け及び加圧空気の噴出により上方へ反った上軸ベース26の外側は下方へ撓み、上軸ベース26の全体形状はより平坦な方向へ変形する。よって、上軸ベース上に載置したレール321の変形を抑えることができる。結果として、上部ステージ部30の移動精度の低下を抑えることができる。
【0050】
ステージ装置10の下部ステージ部20によれば、ヨーイングキャンセルプレート24の上面に加圧空気を噴出する上側のエアパッド27よりも、より内側に位置する下側のエアパッド27がヨーイングキャンセルプレート24の下面に加圧空気を噴出する。これにより、上側のエアパッド27の取り付け及び加圧空気の噴出により変形した上軸ベース26の形状を、より平坦な形状に戻すことができ、上軸ベース26におけるヨーイングをより低減することができる。
【0051】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0052】
また、各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。