(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0011】
本実施の形態の発光装置50は、
図1〜
図4に示すように、パッケージ10と、パッケージ10の凹部12内に配置されたサブマウント40と、サブマウント40の上に実装された発光素子42とを含んでいる。発光装置50は、発光素子42の上に載置された波長変換部材51と、凹部12に充填された封止樹脂52とを、さらに含むことができる。
【0012】
パッケージ10は、金属製のリードフレーム(本実施の形態では、第1リード81、第2リード82、第3リード83)を含んでいる。本実施の形態で使用されている3つのリードは、
図5に示すように、相対的に小さい2つのリード(第1リード81と第2リード82)がx方向において互いに離間して配置され、相対的に大きい第3リード83は、第1及び第2リード81、82に対してy方向に離間して配置されている。
【0013】
図2〜
図3から分かるように、第1リード81と第2リード82は、サブマウント40とボンディングワイヤBWで接続されており、サブマウント40上の発光素子42に通電する正負電極として機能している。また、
図2〜
図4に示すように、第3リード83は、サブマウント40を載置する部材として機能する。
【0014】
パッケージ10は、樹脂から成る樹脂成形体11をさらに含むことができる。この樹脂成形体11は、パッケージ10の凹部12を囲む壁部を構成し、さらに3つのリード81〜83の間の隙間を封止している。樹脂成形体11は、パッケージ10の凹部12内(凹部12の底面121)から3つのリード81〜83が各々露出するように成形されている。
【0015】
図6(a)に示すように、サブマウント40は、セラミック材料から成る基材41と、基材41の上面41aに形成された金属配線44とを含んでいる。金属配線44上には、1つ又は複数の発光素子42が金属バンプ71によって実装されており(
図4)、これにより、金属配線44を介して発光素子42に通電することができる。より具体的には、サブマウント40をはんだ層72によって第3リード83上に固定した後に、金属配線44と、第1リード81及び第2リード82とをボンディングワイヤBWによって接続することにより、第1リード91及び第2リード82から、金属配線44を介して発光素子42に通電することができる。
【0016】
図6(a)のサブマウント40はx方向に伸びた長方形であり、その表面には、複数の(この図では4つの)発光素子42を直列接続できるような金属配線44が設けられている。実際にサブマウント40上に発光素子42を配置すると、
図6(b)に示すように、4つの発光素子42がx方向に一列に並んで実装される。
【0017】
本発明の発光装置50では、サブマウント40にクラック45が設けられていることを特徴としている(
図7)。
発明者らは、リードフレーム上にサブマウント40をはんだ付けした発光装置50において、サブマウント40上に実装された発光素子42と、その実装時に使用する金属バンプ71との間で剥離が生じる、という不具合が起こり得ること、そして基材41にクラック45を設けることにより、その不具合を著しく低減できることを初めて見いだした。
発明者らの研究結果から推測すると、サブマウント40に設けるクラック45の効果は以下のようなものであると考えられる。
【0018】
本発明に係る発光装置50を製造する場合、まず、サブマウント40の金属配線44上に、発光素子42を金属バンプ71で実装し、その後、サブマウント40を第3リード83上にはんだ付けする工程(はんだリフロー)を行う。はんだ付けの工程は、
図8〜9に示すような現象を生じうる。なお、
図8〜9では、図面を簡略化するために、サブマウント40に実装される発光素子42の数を2つとした。
【0019】
図8(a)は、はんだリフローを行う直前の状態であり、第3リード83とサブマウント40との間にはんだペースト72’を挟んでいる。はんだペースト72’は軟質のペースト状であるため、第3リード83とサブマウント40とは未だ固定されていない。
次に、はんだペースト72’中のはんだを溶融させる(はんだをリフローさせる)ために加熱を行う。このとき、第3リード83を形成している金属の熱膨張率は、サブマウント40の基材41を形成しているセラミックの熱膨張率よりも高いため、第3リード83は、基材41に対して相対的に大きい寸法になる(
図8(b))。このとき、はんだ層72は溶融しているため、第3リード83と基材41との間には応力は発生しない。
【0020】
はんだ層72が完全に溶融した後に、加熱を停止して冷却すると、はんだ層72が凝固するとともに、第3リード83と基材41とは、冷却されて元の寸法に収縮しようとする。しかし、はんだ層72が凝固することにより、第3リード83と基材41との間が固定されるため、収縮量の多い第3リード83によって、収縮量の少ない基材41は、圧縮応力Fを受ける(
図9(a))。このとき、基材41は、第3リード83に固定されている基材41の下面41b側から圧縮応力Fを受けるため、下面41bは、圧縮応力Fの影響を強く受ける。それに比べると、第3リード83に固定されていない基材41の上面41a側にかかる圧縮応力Fは、相対的に弱い。上面41aと下面41bとの相対的な応力関係の結果、下面41bに圧縮応力、上面41aに引っ張り応力が生じる。その結果、基材41は上面41a側が突出するように湾曲すると考えられる(
図9(a))。なお、
図9の基材41は、湾曲していることを誇張して図示しているが、実際には、ごく僅かに湾曲しているだけであり、視認できるほどに湾曲することは殆どない。
さらに冷却が進んで、はんだ付け工程(はんだリフロー)が完了すると、第3リードの収縮の影響を受けて、基材41が湾曲すると考えられる(
図9(b))。
【0021】
このようにして、第3リード83上にはんだ付けされた基材41には、はんだリフローで生じた応力がそのまま残留しており、基材41の上面41aを湾曲させている。そして、基材41の上面41aに形成された金属配線44も、上面41aの湾曲形状に沿って湾曲する(
図9(b))。
ここで、金属配線44上に実装されている発光素子42について検討すると、発光素子42は、はんだリフロー前に金属配線44に実装されている(
図8(a))。そのため、金属配線44が湾曲すると、湾曲した金属配線44と湾曲していない発光素子42との間に不整合が生じて、金属配線44と発光素子42とをつなぐ金属バンプ71は、ずれ応力、引っ張り応力等の応力を受け得る。そして、金属バンプ71が受ける応力が大きくなって、金属バンプ71と発光素子42との間の接合力を超えると、金属バンプ71と発光素子42との間で剥離が生じ得る(
図9(b))。
なお、金属バンプ71と発光素子42との間の接合力よりも、金属バンプ71と金属配線44との間の接合力のほうが弱い場合には、発光素子42と金属配線44との間に剥離が生じることもある。
【0022】
発光素子42と金属バンプ71との間で剥離が生じれば発光素子42への通電ができなくなるので、発光素子42は点灯しなくなる不具合が生じる。もし、
図6のように、複数の発光素子42が直列配線されていれば、1つの発光素子42において金属バンプ71との間で剥離が生じれば、すべての発光素子42が点灯しなくなるだろう。
【0023】
ここで、
図10(a)〜(b)に示すように、サブマウント40の基材41にクラック45を設けると、基材41の上面41aに生じていた引っ張り応力が、クラック45によって緩和される。これにより、上面41aは、クラック45を境界として左右2つの平面に分離し、上面41aの湾曲は解消されると考えられる。そのため、上面41aに形成された金属配線44も平面に沿って平坦になる。よって、金属配線44と発光素子42とをつなぐ金属バンプ71に対して応力は生じず、金属バンプ71と発光素子42との間に剥離は殆ど生じない。
このようなメカニズムにより、サブマウント40に設けたクラック45によって、金属バンプ71と発光素子42との間の剥離、という不具合を著しく抑制することができると考えられる。
【0024】
なお、
図7及び
図10のクラック45は、視認しやすいようにV字状に開いて図示されているが、実際のクラックは線状であって、視認できるような隙間はあいていない。また、クラック45の左右にある2つの平面は、それぞれ異なる方向を向いているように作図されているが、実際には、いずれの平面もほぼz方向を向いている。
【0025】
基材41に設けるクラック45は、基材41の上面41aから下面41bまで貫通したクラック(第1のクラック)、基材41の上面41aから下面41b方向に向かって延び且つ基材41の厚さの途中で止まるクラック(第2のクラック:
図7、
図10)、又は基材41の下面41bから上面41a方向に向かって延び且つ基材41の厚さの途中で止まるクラック(第3のクラック)、の3つの形態が考えられる。
上述したような「上面41aの引っ張り応力を解消又は緩和する」という、クラック45の作用を考慮すると、クラック45は、上面41aに形成されている形態(つまり、第1のクラックと第2のクラック)であるのが好ましい。
一方、基材41全体の強度を維持する観点から、クラック45は、完全に貫通せずに途中で止まっている形態(つまり、第2のクラックと第3のクラック)であるのが好ましい。
【0026】
すなわち、クラック45の作用と、基材41全体の強度維持とを共に考慮すると、「基材41の上面41aから下面41b方向に向かって延び且つ基材41の厚さの途中で止まる」形態である第2のクラック(
図7)が最も好ましい。
また、
図7に図示したクラック45の深さdは、基材41の厚さT
1の30%〜70%であるのが好ましい。これにより、上面41aの引っ張り応力を解消又は緩和する作用が得られ、且つ基材41全体の強度を十分に維持することができる。
【0027】
クラック45を基材41に形成した状態において、金属配線44は、クラック45を横切って形成される場合がある。上述したように実際のクラック45は線状であって、視認できるような隙間はあいていないことと、金属配線44を形成する金属材料に展性があることから、クラック45を横切ることによって金属配線44の断線発生率が著しく増加することはない。特に、金属配線を形成している金属膜の厚さT
2を、通常の金属配線用の金属膜(厚さ1μm程度)よりも厚くすると、金属配線44の断線発生率を低く抑えることができるので好ましい。具体的には、金属膜の厚さT
2が1.5μm〜4μmであるのが好ましく、2〜3μmであるのが特に好ましい。
【0028】
クラック45の形成位置は、発光素子42の直下を外して形成するのが好ましい。これは、クラック45直上に発光素子42が位置していた場合、クラック45によって上面41aが2つの平面に分離したときに、発光素子42が何らかの悪影響を受ける可能性を完全に否定できないためである。
一方、クラック45による発光素子42−金属バンプ71間の剥離抑制効果を十分に得るためには、クラック45は、基材41の上面41aにおいて発光素子42が載置される範囲に近接する位置に設けられるのが好ましい。
【0029】
具体的なクラック45の形成位置について詳述すると、
図6(a)のようにサブマウント40を上面視したときに、発光素子42が載置される範囲(破線で示した2つの矩形領域)の辺に沿って(つまり、x方向又はy方向に沿って)、その範囲の外側かつ近傍に、クラック45を形成するのが好ましい。
クラックの形成幅は、発光素子42−金属バンプ71間の剥離抑制効果を考慮すると、発光素子42が載置される範囲に近接する位置に、少なくとも発光素子42の幅と同程度以上に設けられることが好ましい。さらに、サブマウントの端まで連続して設けられることがより好ましい。
【0030】
図6のような略長方形のサブマウント40の場合、基材41の上面41aが受ける引っ張り応力の大きさは方向によって異なり、上面41aの湾曲度も方向によって異なる。
図6であれば、長手方向(x方向)に生じる引っ張り応力が、それ以外の方向に生じる引っ張り応力よりも大きく、そのため、上面41aの湾曲度も、x方向に沿って測定したときに最も大きくなる。
ここで、サブマウント40の長手方向(x方向)と直交する方向(y方向)に沿ってクラック45を設けると、長手方向(x方向)に生じる上面41aの引っ張り応力を効果的に緩和できるので好ましい。
【0031】
また、サブマウント40が略正方形の場合には、サブマウント40の形状による好ましいクラック45の方向はない。しかしながら、サブマウント40がはんだ付けされる第3リード83の寸法形状によって、サブマウント40が受ける圧縮応力Fに異方性がある場合には、圧縮応力Fが最も大きい方向に測定したときの基材41の上面41aの湾曲度が最も大きくなる。よって、クラック45は、圧縮応力Fが最も大きい方向と直交する方向に沿って設けるのが好ましい。
【0032】
本発明では、サブマウント40に実装される発光素子42は、1つ又は2つ以上とすることができる。
実装される発光素子42が1つの場合には、上述したような観点から、クラック45の形成位置及び形成方向を決定することができる。
実装される発光素子42が2つ以上の場合には、クラック45は、隣接する2つの発光素子42の間に設けられているのが好ましい。これにより、いくつかの利点が得られる。第1に、2つの発光素子42に近接してクラック45を設けることができる。第2に、発光素子42の直下にクラック45が形成されることがない。第3に、クラック45の形成位置がいくつかに特定されるので、クラック45の形成位置の設計が容易になる。なお、複数の発光素子42を一列に配列する形態においては、長方形のサブマウント40を用いて、サブマウント40の長手方向に沿って発光素子42を配列することが多いことから、隣接する2つの発光素子42の間にクラック45を形成すれば、自動的に、サブマウント40の長手方向と直交する方向にクラック45を形成することができる。
【0033】
実装される発光素子42が3つ以上の場合には、「隣接する2つの発光素子42の間」というクラック45の形成位置が複数存在する。特に、発光素子42が4つ以上の場合には、より好ましいクラック45の形成位置が存在する。
図7には、4つの発光素子42をサブマウント40に実装した例を示している。「隣接する2つの発光素子42の間」は、3箇所(位置L、位置C、位置R)存在する。この3つのうち、いずれか1箇所だけにクラック45を形成する場合には、中央の位置Cにクラック45を形成するのが最も好ましい。例えば、位置Lにクラック45を形成した場合、位置Lより左側については上面41aの湾曲は大幅に緩和されるものの、位置Lより右側については上面41aの湾曲が十分に緩和できない。同様に、位置Rにクラック45を形成した場合、位置Rより右側については上面41aの湾曲は大幅に緩和されるものの、位置Rより左側については上面41aの湾曲が十分に緩和できない。これに対して、位置Cにクラック45を形成すると、位置Cより左側についても、位置Cより右側についても、上面41aの湾曲を緩和することができるため、全体としての湾曲緩和効果が高くなる。
【0034】
クラック45を複数形成する場合には、全体として上面41aの湾曲を緩和することを考慮して、形成位置を決定するとよい。例えば、サブマウント40の端部からクラック45までの距離と、2つのクラック45間の距離とが等しいほど、全体として同様の湾曲緩和効果が得られると考えられる。例えば
図7のようなサブマウント40であれば、位置Lと位置Rにクラック45を形成することにより、全体としてバランスよく上面41aの湾曲を緩和することができる。
【0035】
サブマウント40の金属配線44上には、さらにツェナーダイオード43も実装することができる。ツェナーダイオード43は、分離した金属配線44上にフリップチップ実装することができる。(
図6(a))。そして上述したように、金属配線44と、第1リード81及び第2リード82とをボンディングワイヤBWによって接続することにより、ツェナーダイオード43に給電することができる。
ツェナーダイオードをフェイスアップ実装する場合は、分離した金属配線44の一方にツェナーダイオードを実装し、ワイヤ等によってもう一方の金属配線44と接続することができる。
【0036】
サブマウント40に実装された発光素子42の上には、波長変換部材51が載置される。波長変換部材51は、発光素子42からの発光の波長を変換する材料(蛍光体等)を含有するガラスや樹脂から形成された部材である。本実施の形態では、4つの発光素子42を全て覆うことのできる寸法の波長変換部材51が配置されている(
図2〜
図3)。
【0037】
次に、
図1〜4に図示した発光装置50の製造方法を説明する。
【0038】
<1.サブマウント40の準備>
セラミック粉末を矩形の板状体に圧縮し、得られた圧縮成形体を焼結して、セラミック材料から成る基材41を得る。その後、基材41の上面41aに金属配線44を形成してサブマウント40を得る。
このとき、金属配線44を形成している金属膜の厚さT
2(
図7(a))が1.5μm〜4μmであると、後で基材41にクラック45を形成する際に、金属配線44が断線しにくくなるので好ましい。
【0039】
<2.発光素子42の実装>
サブマウント40の金属配線44上に、発光素子42を金属バンプ71で実装する。まず、金属配線44上の、発光素子42の電極と対応する位置に、金属バンプ71を形成する。次に、発光素子42の電極が金属配線44に向き合うように、発光素子42をサブマウント40に載置する。このとき、発光素子42の電極と金属バンプ71とを正確に位置合わせする。
図6(b)の例では、発光素子42を4つ実装する。また、同様にして、ツェナーダイオード43もサブマウント40の金属配線44上に実装する。
<3.パッケージ10の形成>
金属板をパンチングして、第1リード81、第2リード82及び第3リード83を含むリードフレームを形成する。このリードフレームを、パッケージ10成形用の金型で挟み込む。なお、金型には、パッケージ10の凹部12に対応する凸部設けられており、金型の凸部を第1〜第3リード81〜83に接触させることにより、パッケージ10の凹部12の底面121から、第1〜第3リード81〜83を露出させることができる。そして、金型の空隙に樹脂成形体11用の樹脂材料を注入し、樹脂材料を硬化後に金型を外すことにより、パッケージ10が得られる。
<4.サブマウント40のはんだ付け>
発光素子42を実装した後のサブマウント40を、パッケージ10の凹部12内に露出した第3リード83上に、はんだ付けする。
まず、第3リード83の上にはんだペースト72’を塗布し、その上にサブマウント40を載置することにより、第3リード83とサブマウント40の間にはんだペースト72’を配置する(
図8(a))。次に、はんだペースト72’を加熱して、はんだペースト72’内のはんだをリフロー(溶融)させる。その後、溶融したはんだを冷却して、はんだを凝固させる。このとき、強制冷却することにより、短時間ではんだを凝固させることができる。はんだリフローから冷却までのステップは、リフロー装置を用いて行うことができる。また、リフロー装置に入力する温度プロファイルを適宜設定することにより、加熱速度、リフロー温度、冷却速度等を任意に制御することができる。
【0040】
サブマウント40のはんだ付け工程は、クラックを形成する工程を含んでいる。具体的には、はんだを凝固させる際の冷却速度を制御することにより、サブマウント40の基材41にクラック45を設けることができる。特に、冷却速度を0.425℃/秒又はそれより早い冷却速度にすることにより、基材41にクラック45を形成することができる。
冷却を促進するように冷却速度を制御するためには、例えばファン等による空冷、冷却水による水冷等の強制冷却を行うことができる。
【0041】
2つ以上の発光素子42が実装されたサブマウント40の場合、冷却速度を十分に早くすること(例えば、0.425℃/秒又はそれより早い冷却速度にすること)により、クラック45を、隣接する2つの発光素子42の間に形成することができる。なお、隣接する2つの発光素子42の間に選択的にクラック45が形成される理由は定かではないが、サブマウント40に発光素子42を実装することにより、サブマウント40は発光素子42によって補強された状態となる。よって、発光素子42の直下には、クラック45が発生しにくくなると推測される。または、空冷で強制冷却する際に、冷却空気が、発光素子42の間の隙間を通って、サブマウント40を局所的に冷却するため、その局所的に冷却された部分(つまり、隣接する2つの発光素子42の間の直下)に選択的にクラック45が発生するためであるとも考えられる。
【0042】
サブマウント40を略長方形とすることにより、クラック45の形成方向を、サブマウント40の長手方向(
図6(a)のx方向)と直交する方向(y方向)に形成することができる。冷却速度を十分に早くすること(例えば、0.425℃/秒又はそれより早い冷却速度にすること)により、長手方向(x方向)における圧縮応力F(
図9(a))が他の方向における圧縮応力より大きくなるため、長手方向(x方向)での応力を緩和するように、x方向と直交するy方向に沿って、クラック45を選択的に形成することができる。
【0043】
クラック45を効率よく形成するためには、圧縮応力Fが大きくなるようにするとよい。すなわち、基材41を形成するためのセラミック材料の熱膨張率と、第3リード83を形成している金属材料の熱膨張率との差を大きくするのが好ましい。特に、基材41用のセラミック材料の熱膨張率が、第3リード83用の金属材料の熱膨張率よりも、10.8×10
−6/K以上小さいのが好ましい。
また、基材41の厚さT
1(
図7)が、0.1mm〜1.5mmであると、クラック45を効率よく形成することができるので好ましい。また、その厚さの範囲であると、クラック45の深さdを、基材41の厚さT
1の30%〜70%とすることができる。上述したように、クラック45の深さdがその範囲にあると、基材41の上面41aの引っ張り応力を解消又は緩和することができ、且つ基材41全体の強度を維持することもできるので好ましい。
【0044】
<5.サブマウント40と第1リード81及び第2リード82との接続〜封止樹脂52によるパッケージ10の凹部12の封止>
パッケージ10の第1リード81及び第2リード82とサブマウント40とをボンディングワイヤBWでワイヤボンドする。そして、発光素子42上に、波長変換部材51を樹脂で固定する。その後、パッケージ10の凹部12を封止樹脂52で封止する。例えば
図4に示すように2層の樹脂層から成る封止樹脂52の場合、まず凹部12内に第1封止樹脂(アンダーフィル)をポッティングして硬化させて、第1封止樹脂層521を形成する。次いで、第1封止樹脂層521を覆うように、凹部12内に第2封止樹脂(オーバーフィル)をポッティングして硬化させて、第2封止樹脂層522を形成する。これにより、2層の封止樹脂層から成る封止樹脂52を形成することができる。
【0045】
次に、発光装置50の各構成部材について説明する。
【0046】
(サブマウント40)
サブマウント40の基材41は、AlN、Al
2O
3、SiC等のセラミックを用いることができる。特に、AlNは熱伝導率が高く好ましい。
本実施の形態では矩形の基材41を例示したが、これに限定されるものではなく、正方形、多角形、円形、楕円形等の任意形状の基材41を用いることもできる。
サブマウント40の金属配線44は、基材41への密着性が良好で、導電性の高い金属材料から形成するのが好ましい。また、発光素子42からの発光がサブマウント40方向に進行したときに効率よく反射できるように、発光素子42からの発光に対する反射率の高い金属材料から形成すると、より好ましい。金属配線44を形成する金属膜としては、Ag膜、Al膜、Au膜、Cu膜等が利用でき、特にAg膜が好ましい。
【0047】
(リードフレーム(第1リード81、第2リード82、第3リード83))
リードフレームは、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅などのいずれか1つ以上からなる導電性材料を用いることができる。リードフレームは、金、銀およびそれらの合金などでメッキするのが好ましい。
【0048】
(樹脂成形体11)
樹脂成形体11の成形材料には、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂のほか、液晶ポリマー、ポリフタルアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂を用いることができる。また、成形材料中に酸化チタンなどの白色顔料などを混合して、樹脂成形体11の凹部12内における光の反射率を高めることもできる。
【0049】
(発光素子42)
発光素子42としては、半導体発光素子(例えばLED)を用いることができる。半導体発光素子は、基板上に、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等の半導体層を積層した積層構造体から構成されている。発光素子の基板としては、サファイア等の絶縁性基板や、SiC、GaN、GaAs等の導電性基板等が挙げられる。
絶縁性基板を用いた半導体発光素子では、積層構造体の上面にn側電極およびp側電極を形成する。導電性基板を用いた半導体発光素子では、積層構造体の上面に一方の電極(例えばn側電極)、導電性基板の下面に他方の電極(例えばp側電極)を形成する。
【0050】
(ボンディングワイヤBW)
ボンディングワイヤBWとしては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム等の金属およびそれらの合金から成る金属製のワイヤを用いることが出来る。
【0051】
(封止樹脂52)
封止樹脂52は、発光素子42を収容した樹脂成形体11の凹部12を封止するものであり、発光素子42を外部環境から保護している。封止樹脂52は単一層から形成することもできるが、複数層(例えば、第1封止樹脂層521と第2封止樹脂層522の2層)から構成することもできる。封止樹脂の材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂またはこれらを1つ以上含む樹脂を用いることができる。また、封止樹脂52には、酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、アルミナ、窒化アルミニウムなどの光散乱粒子を分散させてもよい。
【0052】
(波長変換部材51)
波長変換部材51は、発光素子42からの発光の波長を変換する材料(蛍光体等)を含有するガラスや樹脂から形成された部材であり、本実施の形態では、発光素子42の上面に配置されている。例えば白色光を発する発光装置50では、青色光を発光する発光素子42と、青色光を吸収して黄色光を発する波長変換部材51(例えば、ガラスにYAGを分散させたYAGガラス)とを組み合わせることができる。
【実施例1】
【0053】
<クラック45の発生率>
サブマウント40のはんだ付け工程における冷却速度と、基材41のクラック45の発生率との関係を調べた。
図6に示すような長方形のサブマウント40(AlN製、4.65mm×2.3mm×0.4mm)に、発光素子42を4つ実装した後に、リードフレーム(Cu製、厚さ0.5mm)上にはんだ付けした。はんだリフローに際しては、まず315℃まで加熱し、その後に、3つの異なる冷却速度で冷却した。1つの冷却速度につき、320個の試料で実験して、クラックの発生率を調べた。
実験条件とクラック発生率を表1の通りであった。
【0054】
表中の「温度低下」とは、冷却時間の間に低下した温度であり、「−α℃」とは、α℃下がったことを意味する。
冷却速度は、(温度低下)/(冷却時間)で求めたものであり、「−β℃/秒」とは、1秒あたり−β℃下がるような冷却速度であったことを意味する。なお、「冷却速度が速い」とは、冷却速度の絶対値が大きいことを意味する。
「クラック発生数」とは、320個中いくつの試料でクラックが確認されたかを意味している。
「クラック発生率」とは、(クラック発生数)/320×100(%)で求めたものである。
【0055】
【表1】
【0056】
この結果から、冷却速度が0.425℃/秒より早いと、クラックを意図的に形成することができることがわかった。特に冷却速度が1.58℃/秒より早いと、クラックの発生率が著しく上昇することがわかった。このことから、本発明において、冷却速度が0.425℃/秒より早いのが好ましく、1.58℃/秒より早いのが特に好ましいといえる。
【実施例2】
【0057】
<発光素子42−金属バンプ71間での剥離発生率>
サブマウント40にクラック45が設けられた発光装置50と、サブマウント40にクラック45のない発光装置50とについて2種類の耐久性試験を行って、発光素子42−金属バンプ71間での剥離発生率を調べた。
【0058】
・耐久性試験(1):吸湿リフロー炉パス試験
図1のように封止樹脂52で封止した発光装置50を試験に使用した。サブマウント40にクラック45のない発光装置50を100個、クラック45のある発光装置50を50個準備した。
まず、60℃の炉内に24時間放置して前処理を行った。前処理が完了したら、湿度85%、温度85℃で24時間放置し(吸湿処理)、その後に257℃に加熱して5秒間維持した後に冷却した(加熱処理)。吸湿処理→加熱処理で1パスとした。加熱処理後に、発光装置50に通電して、点灯しなかった個数(不灯個数)を調べた。同じ試料について「吸湿処理→加熱処理」を繰り返して、1パスごとに不灯個数を調べた。
実験結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2からわかるように、サブマウント40にクラック45のない発光装置50では、「吸湿処理→加熱処理」を繰り返すことにより、不灯発生率が上昇しているのに対して、サブマウント40にクラック45のある発光装置50では、不灯発生率が0%と非常に良好な耐久性を示した。
【0061】
・耐久性試験(2):HHS試験(はんだ熱衝撃試験)
図1のように封止樹脂52で封止した発光装置50を試験に使用した。サブマウント40にクラック45のない発光装置50を25個、クラック45のある発光装置50を50個準備した。
まず、60℃の炉内に24時間放置した後に、湿度85%、温度85℃で24時間放置して前処理を行った。前処理が完了したら、260℃の溶融はんだが入ったはんだ槽に10秒浸漬し(加熱処理)、その後に20℃の水が入った水槽に20秒浸漬した(冷却処理)。加熱処理→冷却処理で1パスとした。5パスごとに発光装置50に通電して、点灯しなかった個数(不灯個数)を調べた。
実験結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
表3からわかるように、サブマウント40にクラック45のない発光装置50では、「加熱処理→冷却処理」を繰り返すことにより、不灯発生率が上昇しているのに対して、サブマウント40にクラック45のある発光装置50では、不灯発生率が0%と非常に良好な耐久性を示した。