(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の主面及び第2の主面を有する基板であって、前記第1の主面において複数の凸部及び前記凸部間を接続する谷部が設けられた基板と、前記第1の主面側に設けられた半導体構造と、を有するウエハを準備する工程と、
第1分割予定線及び第2分割予定線に沿って前記第2の主面側からレーザ光を照射するレーザスクライブによってウエハを分割し、複数の発光素子を得る工程と、を備え、
前記凸部は、複数の頂点を有する多角形状の底面と、前記頂点から伸びる稜線と、前記稜線間を繋ぐ側面と、を有する錐体状又は錐台状であり、
前記谷部において複数の前記凸部のうち隣接する前記凸部の一側面によって囲まれる領域である包囲領域が、前記凸部の周囲に複数存在するように、前記凸部は規則的に配置されており、
前記第1分割予定線及び前記第2分割予定線は、1つの前記凸部の周囲に存在する複数の前記包囲領域の中心をそれぞれ結ぶ直線と交差する方向に伸びる線である
ことを特徴とする発光素子の製造方法。
最短距離で隣接する前記凸部は、平面視において、一方の前記凸部の前記稜線の延長線上に、他方の前記凸部の前記側面が位置するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の発光素子の製造方法。
第1の主面及び第2の主面を有する基板であって、前記第1の主面において複数の凸部及び前記凸部間を接続する谷部が設けられた基板と、前記第1の主面側に設けられた半導体構造と、を有するウエハを準備する工程と、
第1分割予定線及び第2分割予定線に沿って前記第2の主面側からレーザ光を照射するレーザスクライブによってウエハを分割し、複数の発光素子を得る工程と、を備え、
前記凸部は、円形状の底面と、前記底面に接続された側面と、を有する円錐状又は円錐台状であり、
前記谷部において複数の前記凸部のうち隣接する前記凸部によって囲まれる領域である包囲領域が、前記凸部の周囲に複数存在するように、前記凸部は規則的に配置されており、前記包囲領域の中心と前記凸部との最短距離は、前記凸部の前記底面の半径よりも小さく、
前記第1分割予定線及び前記第2分割予定線は、1つの前記凸部の周囲に存在する複数の前記包囲領域の中心をそれぞれ結ぶ直線と交差する方向に伸びる線である
ことを特徴とする発光素子の製造方法。
前記第1分割予定線及び前記第2分割予定線は、1つの前記凸部の周囲に存在する複数の前記包囲領域の中心をそれぞれ結ぶ直線と、1度以上で交差する方向に伸びる線であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
前記第1分割予定線及び前記第2分割予定線は、1つの前記凸部の周囲に存在する複数の前記包囲領域の中心をそれぞれ結ぶ直線のうち、隣り合う二直線の中間を通過する中間線と同じ方向に伸びる線であるか、もしくは、前記中間線に対して、5度以下で交差する方向に伸びる線であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態における発光素子の製造方法は、第1の主面及び第2の主面を有する基板であって、第1の主面において複数の凸部及び凸部間を接続する谷部が設けられた基板と、第1の主面側に設けられた半導体構造と、を有するウエハを準備する工程と、第1分割予定線及び第2分割予定線に沿って第2の主面側からレーザ光を照射するレーザスクライブによってウエハを分割し、複数の発光素子を得る工程と、を備える。そして、谷部において、複数の凸部のうち隣接する凸部によって囲まれる領域である包囲領域が、凸部の周囲に複数存在するように、凸部が規則的に配置されており、第1分割予定線及び第2分割予定線は、1つの凸部の周囲に存在する複数の包囲領域の中心をそれぞれ結ぶ直線と交差する方向に伸びる線である。これによって、レーザスクライブによる半導体構造の損傷を低減することができる。また、1つの発光素子内で連続して半導体構造が損傷することを抑制できるため、歩留りを向上させることができる。
【0011】
以下、図面を参照して、詳細に説明する。以下に示す各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための方法を例示するものであって、本発明を以下の実施形態に特定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0012】
[実施形態1]
(ウエハ準備工程)
まず、
図1〜
図3に示すように、基板11と、基板11の一主面側に設けられた半導体構造12を有するウエハ10を準備する。
図1は、本実施形態の工程を説明する模式的な平面図であり、ウエハ10の一部を拡大した図である。
図2は、
図1のA−A線における断面図であり、
図3は、
図2において楕円で囲んだ部分の拡大図である。
図2及び
図3に示すように、基板11は、第1の主面11aと第2の主面11bを有し、基板11の第1の主面11aには、複数の凸部13と凸部13間を接続する谷部14が設けられている。本実施形態では、後述する分割予定線が凸部13の配列された方向からずれるため、
図3のように分割予定線と平行な方向(発光素子40の発光部40aと平行な方向)に沿って断面視した場合には、凸部13の形状やサイズが不揃いなものとして観察される。
【0013】
図4に示すように、本実施形態では、すべての凸部13が同じ形状且つ同じサイズで形成されており、これらが規則的に配置されている。
図4は、基板1の第1の主面11aの一部を拡大した図であり、凸部13の配置の一例を示す平面図である。
図5に示すように、実施形態1の凸部13は、錐体状又は錐台状である。
図5は、実施形態1における凸部13の形状の一例を示す斜視図である。凸部13は、複数の頂点13aを有する多角形状の底面13bと、頂点13aから伸びる稜線13cと、稜線13c間を繋ぐ側面13dを有する。
【0014】
谷部14には、複数の凸部13のうち隣接する凸部13の一側面によって囲まれる領域である包囲領域15がある。ここで、囲まれるとは、少なくとも3つの凸部13の側面で包囲されることを指す。包囲領域15は、凸部13の周囲に複数存在する。
図4では、一例として包囲領域15を正三角形で示し、その中心を包囲領域の中心15aとした。包囲領域の中心15aは、包囲領域15を囲む複数の凸部13の中心をそれぞれ結んで成る図形の中心として特定することもできる。
【0015】
(ウエハ分割工程)
次に、
図6〜
図8に示すように、第1分割予定線21及び第2分割予定線22に沿って第2の主面11b側からレーザ光30を照射してレーザスクライブを行う。これによって、
図9及び
図10に示すように、ウエハ10を分割して複数の発光素子40を得る。
【0016】
図6は、本実施形態の工程を説明する模式的な平面図であり、
図7は、
図6のB−B線における断面図であり、
図8は、
図6のC−C線における断面図である。レーザスクライブでは、
図7に示すように、第1分割予定線21に沿ってレーザ光30を照射することにより、基板11に複数の第1変質部51を形成し、
図8に示すように、第2分割予定線22に沿ってレーザ光30を照射することにより、基板11に複数の第2変質部52を形成する。
【0017】
第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、1つの凸部13の周囲に存在する複数の包囲領域15の中心15aをそれぞれ結ぶ直線と交差する方向に伸びる線である。まず、
図9に、凸部13の配置の一例を平面図で示す。
図9に示すように、1つの凸部13の周囲には、包囲領域の中心15aが複数存在しており、これらをそれぞれ直線61で結ぶことができる。そして、直線61のいずれとも交差する方向に伸びる線を、第1分割予定線21及び第2分割予定線22として設定する。その一例を
図10に示す。
図10は、凸部13と第1分割予定線21及び第2分割予定線22の関係の一例を示す平面図である。
図10において、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は太線で示し、直線61は細線で示す。この例では、包囲領域の中心15aを結ぶ直線61が伸びる方向は6方向ある。
図10では、その6方向を1つの中心15aから伸びる直線61として示している。
図10に示すように、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、直線61のいずれとも交差する線である。なお、
図10では、凸部13の位置を円で示している。
【0018】
第1分割予定線21及び第2分割予定線22に沿ったレーザスクライブによって、
図11及び
図12に示すように、ウエハ10を分割して複数の発光素子40を得る。
図11は、本実施形態の工程を説明する模式的な平面図であり、
図12は、
図11のD−D線における断面図である。具体的には、第1変質部51及び第2変質部52に沿ってブレイキング等を行うことにより、ウエハ10を分割することができる。基板11の厚みやレーザ光30の照射条件によっては、第1変質部51及び/又は第2変質部52を形成した際に基板11が完全に分割されることがある。
【0019】
以上の発光素子40の製造方法によって、歩留りを向上させることができる。これについて、以下に詳しく述べる。
【0020】
レーザスクライブでは、例えば、半導体構造12が設けられた第1主面11aとは反対の側である第2主面11b側からレーザ光30を照射する。これは、レーザ光30の照射による半導体構造12の損傷を避けるためである。しかし、この場合にも、半導体構造の端部に損傷がみられることがあった。その一例を
図13〜
図15に示す。
図13は、従来構造の一例を示す平面図であり、
図14は、
図13のE−E線における断面図であり、
図15は、
図13の囲み部の拡大図である。
図13〜
図15に示す従来構造の発光素子140は、基板111上に、n型窒化物半導体層112a、発光層112b、p型窒化物半導体層112cが順に形成された半導体構造112を有する。レーザスクライブにおけるレーザ光の焦点位置は、基板111の下面寄りに設定されており、その位置に変質部151が形成される。また、基板111の上面には複数の凸部113が規則的な配置で設けられている。凸部113は
図15において破線で示す。
【0021】
本発明者は、半導体構造112の損傷の傾向について調査するために、レーザ光の出力の高い損傷が発生しやすい条件でウエハにレーザ光を照射し、損傷が発生したウエハを観察した。その結果、本発明者は、損傷の位置と凸部113の配置の間に規則性があることを見出した。
【0022】
典型的な例を
図15に示す。
図15に示すように、レーザスクライブによって生じた損傷痕190(黒色で示す)は、凸部113に囲まれた部分の直上に半導体構造112の端面がある場合に、際立って多く発生していた。凸部113の配置に沿って分割線を設定した従来構造の発光素子140において、損傷痕190が連続して発生しているのは、凸部113に囲まれた部分と半導体構造112の端面が一致する箇所が連続しているためであると考えられる。このような損傷が生じた発光素子140は、リークや低電圧破壊などを引き起こすことがある。量産工程においては、逆方向電流の検査によって規定値を超えるものを検出し、不良品として除外する。損傷箇所が増えるほど逆方向電流も増大する傾向にある。このため、
図15に示すように1つの発光素子140内に多数の損傷が生じた場合には、不良品となる可能性が極めて高い。なお、ここで示す半導体構造112の端面は、
図14に示すように、活性層112b及びp型窒化物半導体層112cの端面である。特に、Mgを含有したp型窒化物半導体層112cが損傷しやすい傾向にある。このような半導体構造112の損傷は、例えば、光学顕微鏡による外観観察や、フォトルミネッセンス(PL)強度測定、エミッション顕微鏡によるホットエレクトロン発光解析などによって確認することができる。
【0023】
凸部113に囲まれた部分と半導体構造112の端面が一致する箇所において損傷が発生しやすい理由は、以下のとおりであると考察される。
【0024】
レーザ光は、基板111の下面から照射され、変質部151が形成される位置を焦点位置として集光されるが、このとき、光は焦点位置から半導体構造112側へ向かって拡散する。基板111は例えばサファイア基板であり、基板111から半導体構造112へ進入する光は、それらの屈折率差によって凸部113の側面で屈折する。このため、基板111からの光は、凸部113に囲まれた部分の直上に集中しやすい。また、レーザ光を照射する際には、粘着シート等に半導体構造112を貼りつけるが、粘着シートの糊層と半導体構造112の端面の間には隙間ができやすい。通常、このような隙間は外気とほぼ同じであり、隙間を取り囲む糊層と半導体構造112はそれよりも屈折率が高い。屈折率の高い糊層及び半導体構造112の表面では臨界角反射が発生するので、このため、半導体構造112の端面付近に光が集中しやすいとも考えられる。
【0025】
以上のことから、凸部113に囲まれた部分の直上に半導体構造112の端面が配置された場合には、半導体構造112の端面付近に極めて光が集中しやすく、これによって、半導体構造112の損傷が引き起こされやすいものと考えられる。特に、錐体状又は錐台状の凸部13の場合には、サファイア基板11からの光が主に側面13dから出射されるため、側面13dに囲まれた部分に光が集中しやすいと考えられる。
【0026】
そこで、本実施形態では、上述したとおり、凸部13に囲まれた部分と半導体構造12の端面が一致する箇所が連続しないように、凸部13に囲まれた包囲領域15の中心15aを結ぶ直線61と交差する方向に沿って第1分割予定線21及び第2分割予定線22を設定する。第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、発光部40aの側面と、つまり、半導体構造12の端面と、大部分においてほぼ平行に設けられる。このため、包囲領域の中心15aを結ぶ直線61が伸びる方向、つまり包囲領域の中心15aが最短距離で連続する方向を避けてレーザスクライブを行うことで、半導体構造12が損傷しやすい箇所が連続しないようにでき、損傷の連続的な発生を防止することできる。これにより、
図15に示すように半導体構造12が損傷しやすい箇所が連続する場合と比較して、半導体構造12に損傷が発生する確率を低減することができる。また、半導体構造12に損傷が生じたとしても、1つの発光素子40内で損傷が連続して発生しにくいため(つまり、損傷の発生箇所がウエハ内の特定の領域に集中することなく分散されるため)、発光素子40の逆方向電流の増大を抑制することができ、歩留りを向上させることができる。
【0027】
実施形態1の発光素子の製造方法において用いる各部材について、以下、詳細に説明する。後述する実施形態2においても、凸部の形状以外は同様の部材を用いてよい。
【0028】
(基板11)
基板11として、半導体構造12を成長可能な成長用基板を用いることができる。半導体構造12が窒化物半導体であれば、基板11の材料は、結晶構造が六方晶系であるものが好ましい。また、凸部13によって特定の箇所に光が集中する問題は、基板11が半導体構造12と異なる材料からなる場合に発生しやすいと考えられる。このような異種基板としては、典型的にはサファイアが挙げられる。例えば、C面を主面とするサファイア基板を用いる。この場合、凸部13が形成される前の主面がC面であって、凸部13の形成後は谷部14の底面や凸部13の上面などの平坦な面にC面が現れる。
【0029】
基板11がC面を主面とするサファイア基板である場合、第1分割予定線21及び第2分割予定線22の両方がサファイア基板のA面及びM面の両方と交差するように凸部13を配置することが好ましい。基板11の分割面がA面及びM面と一致しないようにすることで、分割面が傾斜しにくくできる。基板11の側面の主面に対する角度が垂直に近づくことで、分割する際の切りしろ(ストリート幅)を小さくでき、1つのウエハからより多くの発光素子を得ることができる。この場合、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、それぞれ、A面及びM面との交差角度の最小値が1度以上15度以下であることが好ましい。最小の交差角度を15度付近に設定すれば、第1分割予定線21及び第2分割予定線22をA面とM面の中間位置に配置することができる。このため、実際のレーザスクライブ位置が第1分割予定線21及び第2分割予定線22からずれた場合であっても、割断した面がA面又はM面と一致しにくい。例えば、発光素子40の側面の、A面との最小の交差角度及びM面との最小の交差角度をそれぞれ10〜15度の間とする。基板11はその主面にオフアングルを有していてもよい。基板11の厚みは特に限定されないが、レーザ光30の照射により過度に破壊されることなく、且つ確実に分割することを考慮すると、40〜200μm程度であることが適している。レーザスクライブの際にこのような厚み範囲となっていればよく、例えば、半導体構造12を成長させた後で研磨等により基板11を薄くすることで上述の厚み範囲としてもよい。
【0030】
(半導体構造12)
半導体構造12は、例えば窒化物半導体からなる。具体的には、有機金属気相成長法(MOCVD)等により、基板11上にIn
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)からなる半導体層を複数積層したものを用いることができる。
図1〜
図3に示すように、半導体構造12は、基板11の側から順に、第1導電型半導体層12a(例えばn型半導体層)と、発光層12bと、第2導電型半導体層12c(例えばp型半導体層)と、を有する。
【0031】
基板11が絶縁性である場合は、その一部領域において、第2導電型半導体層12c及び発光層12bが除去されて第1導電型半導体層12aが露出されることで、第1導電型半導体層12a及び第2導電型半導体層12cにそれぞれ第1電極16及び第2電極17が形成される。第1電極16及び第2電極17は、積層膜ITO等の透明導電性酸化物、W、Al、Ti、Cr、Rh、Pt、Au、Ni等の金属又は合金の単層又は多層で形成することができる。これらの電極16,17や半導体構造12の表面を被覆するSiO
2膜等の保護膜を設けてもよい。なお、半導体構造12の厚みは、通常、基板11よりも小さく、例えば3μm〜20μm程度である。
【0032】
第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、個片化時の損傷を避けるために、通常、発光部40a以外の領域のみ、つまり発光層12bが存在しない領域のみを通過する線として設定する。このような領域は、例えば、第1導電型半導体層12aが露出した領域や基板11が露出した領域である。
【0033】
(凸部13)
基板11の表面には凸部13が設けられる。凸部13により半導体構造12内を伝播する光の一部が凸部13の表面で反射されて伝播方向が変化するため、光の取り出し効率を向上させることができる。凸部13は、基板11の表面の一部を除去することにより形成することができる。具体的には、適当な形状のマスクパターンを用いて、凸部となる部分以外をドライエッチング又はウェットエッチング等のエッチングにより除去する方法が挙げられる。例えば、多角形形状のマスクを用いてウェットエッチングをすると、多角形の辺に相当する部分が外側に湾曲した形状となり、多角形近似形状を容易に形成することができる。
【0034】
図4に示すように、凸部13は、例えば、三角格子の各格子点に対応する位置に配置される。三角格子は三角形の単位格子が二次元的に配置されたものである。三角格子の格子線は、隣接する格子点を結ぶ線であり、単位格子の辺を構成する線である。
図4に示す例では、単位格子は正三角形である。このように配置した凸部13によって、光の取り出し効率をさらに向上させることができる。なお、凸部13を繋ぐ谷部14は平坦な面であることが好ましい。
【0035】
凸部13の平面視形状(底面13bの形状と等しい)は、多角形、又は、多角形の辺が曲線に置換された多角形近似形であることが好ましい。
図4に示す凸部13の平面視形状は、正三角形の辺が曲線に置換された、正三角形の近似形状である。三角形又はその近似形状の凸部13は、上述した三角格子配置において高密度に配置しやすいため、光取り出し効率の向上の点から好ましい。凸部13は、すべての凸部13を同じ向きで配置してよい。また、最短距離で隣接する凸部13は、平面視において、一方の凸部13の稜線13cの延長線上に、他方の凸部13の側面13dが位置するように配置すると、高密度に配置しやすい。例えば、
図4に示すように、凸部13の平面視形状が三角形状又はその近似形状である場合には、凸部13の頂点13aが側面13dに面するように整列させればよい。
【0036】
凸部13の底面13bの形状は、三角形状、四角形状、又は六角形状であることが好ましい。ここで、三角形状等とは、三角形等の辺が曲線に置換された近似形状を含む。底面13bを三角形状とした場合には、凸部13は、三角錐状又は三角錐台状である。ここで、三角錐状又は三角錐台状とは、三角錐又は三角錐台の近似形状を含み、例えば、三角錐又は三角錐台の構成面や構成辺が曲面に置換された形状や、側面13dの傾斜角度が途中で変化する形状などを採用することができる。角錐又は多角錐台の近似形状は、少なくとも稜線13cを有する形状である。例えば、三角錐又は三角錐台の近似形状であれば、3つの稜線を有する。稜線13cは直線に限らず、曲線であってもよい。
【0037】
凸部の側面13dは、平坦な面であることが適している。側面13dが凹凸の少ない平らな面であれば、基板11からの光は半導体構造12に進入する際に散乱されにくく、特定の場所へ集光しやすいと考えられる。側面13dは、例えば、倍率1万倍で観察したSEM像において凹凸が確認されない程度であればよい。また、多角形の角錐又は錐台の場合は、少なくとも稜線13cが判別できる程度に側面13dが平坦であることが好ましい。
【0038】
凸部13の形状の別の例を
図16及び
図17に示す。凸部13は、
図16及び
図17に示す形状を底面とする錐体状又は錐台状で形成することができる。
図16は、凸部13の変形例1を示す平面図であり、凸部13の平面視形状(底面の形状)は正方形である。
図16に示すように、正方形の凸部13の場合は、例えば正方格子状に配置することができる。この場合、4つの凸部13の側面に囲まれた領域が包囲領域15であり、その中心15aを結ぶ直線61が伸びる方向が4方向ある。正方格子状の配置の場合は、包囲領域の中心15aと凸部13の側面の距離が比較的大きくなるが、一方で、1つの包囲領域15に面する凸部13の側面の数を多くできる。
【0039】
また、
図17は、凸部13の変形例2を示す平面図であり、凸部13の平面視形状は正六角形である。この例では、凸部13を正三角格子状に配置しており、3つの凸部13の側面に囲まれた領域が包囲領域15である。包囲領域の中心15aを結ぶ直線61が伸びる方向は6方向ある。1つの凸部13を構成する側面の数が増えると、1つの側面から出射する光の強さが相対的に小さくなるため、1つの凸部13の側面の数は、10以下が好ましく、さらには6以下が好ましい。例えば、底面13bの形状を、角数が10以下や6以下の多角形又はその近似形状とすればよい。
【0040】
凸部13を高密度に配置すると、光取り出し効率が向上する一方で、包囲領域15においてレーザ光30が集中した際の光の強度が大きくなり、半導体構造12が損傷しやすくなる。しかし、本実施形態の製造方法によれば、半導体構造12の損傷による歩留りの低下を抑制することができるので、良好な歩留りを維持しながら、発光素子40の光取り出し効率を向上させることができる。高密度配置と製造の容易性の兼ね合いから、凸部13間の最短距離(谷部14が最も狭くなる箇所の幅)は、0.2〜5μm程度、さらには0.2〜1μm程度が挙げられる。また、包囲領域の中心15aと凸部13との最短距離は、10μm以下、さらには0.2〜10μm程度が挙げられる。また、包囲領域の中心15aと凸部13との最短距離は、平面視で凸部13の中心と包囲領域の中心15aを結ぶ直線において、凸部13の中心から側面13dまでの距離よりも小さいものとすることができる。
【0041】
図10に示すように、包囲領域15の中心を結ぶ直線61と第1分割予定線21が交差する角度のうち最小の交差角度である第1角度θ1と、直線61と第2分割予定線22が交差する角度のうち最小の交差角度である第2角度θ2は、いずれも0より大きい。製造時のずれを考慮すると、第1角度θ1及び第2角度θ2は1度以上であることが好ましい。つまり、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、1つの凸部13の周囲に存在する複数の包囲領域の中心15aをそれぞれ結ぶ直線61と、1度以上で交差する方向に伸びる線であることが好ましい。交差角度は、3度以上とすることがさらに好ましい。
【0042】
また、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、隣り合う直線61の中間付近に配置することが好ましい。つまり、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、1つの凸部13の周囲に存在する複数の包囲領域の中心15aをそれぞれ結ぶ直線61のうち、隣り合う二直線の中間を通過する中間線と同じ方向に伸びる線であるか、もしくは、この中間線に対して、5度以下で交差する方向に伸びる線であることが好ましい。
図10に示す例では、直線61が30度ずつ傾いているため、第1分割予定線21及び第2分割予定線22と直線61が成す角の角度θ1,θ2を共に15度に設定すれば、第1分割予定線21及び第2分割予定線22を直線61の中間位置に配置することができる。このため、実際のレーザスクライブ位置が第1分割予定線21及び第2分割予定線22からずれた場合であっても、直線61と一致しにくい。この場合、例えば、レーザ光が破線状に照射されたレーザスクライブラインと直線61の最小の交差角度は7〜15度程度となる。
【0043】
凸部13の底面のサイズ、例えば、隣接する頂点13aを結ぶ線の距離又は任意の頂点13a間の最長距離は、0.1μm〜5μm程度が挙げられる。底面13bと側面13dの成す角は、30〜80度程度が挙げられ、40〜70度程度が好ましい。側面13dが傾斜していることで、半導体構造12内を伝播する光の伝播方向を半導体構造12の表面側へ変化させやすいため、光の取り出し効率をさらに向上させることができる。その一方で、側面13dが傾斜していると、垂直の場合と比較して、発光層12bや第2導電型半導体層12cなどレーザ光30によって損傷しやすい部分に基板11からの光が集まりやすい。しかし、本実施形態の製造方法によれば、損傷による歩留り低下を抑制しながら、光取り出し効率の向上を図ることができる。また、錐体状又は錐台状の構成面が曲面であってもよい。例えば、
図5に示す凸部13は、側面が曲面で構成された三角錐台状であって、その下底と上底はともに三角形近似形状であり、上底が下底よりも曲率が大きく円形に近い。
【0044】
凸部13の高さは、例えば、0.2μm程度以上、基板11上に設けられる半導体構造12の総厚さ以下であることが適している。さらには第1導電型半導体層12aの膜厚より小さいことが適している。発光素子40の発光波長をλとしたとき、高さがλ/4以上であることが好ましい。光を十分に散乱又は回折することができるとともに、半導体構造12の横方向における電流の流れを良好に維持し、発光効率を確保することができる。
【0045】
(第1分割予定線21、第2分割予定線22)
図6に示すように、第1分割予定線21及び第2分割予定線22はそれぞれ、一定の間隔で平行に並ぶ線である。第1分割予定線21と第2分割予定線22は交差している。矩形の発光素子40を得る場合には、第1分割予定線21と第2分割予定線22は直交させる。例えば、長方形の発光素子40を得る場合には第1分割予定線21が並ぶ間隔と第2分割予定線22が並ぶ間隔を異なるものとし、正方形の発光素子40を得る場合にはそれらの間隔を等しくする。
【0046】
(レーザ光30)
基板11に第1変質部51及び第2変質部52を形成するレーザ光30は、基板11を透過可能な波長のものが用いられる。例えば、基板11がサファイア基板である場合は、ピーク波長が250〜1100nmのものを用いることができる。一例として、ピーク波長が1000nm〜1100nm程度のレーザ光30を用いてレーザスクライブする。第1変質部51及び第2変質部52を形成する際のレーザ光30の照射条件等は、同じものを用いることができる。第1変質部51及び第2変質部52を形成するレーザ光30は、そのパルス幅が100フェムト秒以上500ナノ秒以下であることが好ましく、さらには10ピコ秒以下であることが好ましい。多光子吸収による変質部51,52を形成することで、レーザ光30の焦点位置に生じる加工部から亀裂が広がりやすく、ウエハを精度よく分割しやすい。また、多光子吸収による加工であれば基板11が変色しないため、変色部における光吸収による発光素子の出力低下を防止できる。レーザ光のパルスエネルギは0.5〜10μJ程度とすることができる。
【0047】
レーザ光の焦点位置は、第2主面11bよりも基板11の内側寄りが好ましく、且つ、第1主面11aよりも第2主面11bに近い位置に設定することが好ましい。例えば第2主面11bから5〜50μm程度内側の位置に10μm以下のスポット径にて焦点を結ぶように設定する。レーザ光30は、平面視においてその焦点位置が第1分割予定線21及び第2分割予定線22に重なるように狙って走査する。同じ分割予定線において焦点の深さを変えて複数回走査してもよい。しかしこの場合、平面視したときに複数の割断起点(レーザの焦点位置)が完全に一致するようにレーザを照射することは極めて困難であり、割断面はそれぞれの割断起点に対応した不連続な面になる。よって、1回の走査で分割可能な程度に亀裂が発生する照射条件とすることがより好ましい。
【0048】
なお、
図7等におけるレーザ光30は、レーザ光30の光路の一例を模式的に示すものであり、本実施形態のレーザ光30はこれに限られるものではない。例えば、フェムト秒レーザを透明材料の内部に集光すると、集光した位置からしばらくの距離を進む間はビームが一定のビーム径を保って伝播する自己束縛フィラメンテーション(Self-trapped filamentation)と呼ばれる現象が発生する場合があると考えられている。
【0049】
(発光素子40)
発光素子40の外形は、通常、略直方体であり、その場合、平面視形状は略正方形や略長方形などの略矩形である。例えば
図11及び
図12に示す例では、発光素子40はその平面視形状が長方形形状の略直方体である。発光素子40の平面視形状が、長方形形状などの長辺と短辺を含む形状である場合には、仮に短辺が包囲領域の中心15aが連続する方向と一致して半導体構造12の損傷が連続したとしても、発光素子40の全周に占める短辺の割合が小さいため逆方向電流の増大幅が比較的小さい。このことから、長辺を形成する分割予定線のみを包囲領域の中心15aが連続する方向からずらすこともできる。ただし、好ましくは、発光素子40のすべての辺を形成する分割予定線を、上述のように包囲領域の中心15aが連続する方向からずらしてレーザスクライブを行う。
【0050】
[実施形態2]
実施形態2の発光素子の製造方法について、
図18及び
図19を用いて説明する。実施形態2では、凸部73の形状が異なる以外は実施形態1と同様である。
【0051】
(ウエハ準備工程)
実施形態1と同様に、基板11と、基板11の一主面側に設けられた半導体構造12を有するウエハ10を準備する。基板11は、第1の主面11aと第2の主面11bを有し、基板11の第1の主面11aには、
図18に示すように、複数の凸部73と凸部73間を接続する谷部14が設けられている。
図18は、実施形態2における基板11の第1の主面11aの一部を拡大した図であり、凸部73の配置の一例を示す平面図である。
【0052】
実施形態2の凸部73は、円錐状又は円錐台状であり、円形状の底面と底面に接続された側面を有する。
図18に示すように、本実施形態では、すべての凸部73が同じ形状且つ同じサイズで形成されており、これらが規則的に配置されている。谷部14には、複数の凸部73のうち隣接する凸部73によって囲まれる領域である包囲領域15がある。ここで、囲まれるとは、少なくとも3つの凸部73で包囲されることを指す。包囲領域75は、凸部73の周囲に複数存在する。包囲領域の中心75aと凸部73の最短距離d
1は、凸部73の底面の半径d
2よりも小さい。なお、
図4では、一例として包囲領域75を円形で示し、その円の中心を包囲領域の中心75aとしたが、包囲領域の中心75aは、包囲領域75を囲む複数の凸部73の中心をそれぞれ結んで成る図形の中心として特定することもできる。
【0053】
(ウエハ分割工程)
実施形態1と同様に、第1分割予定線21及び第2分割予定線22に沿って第2の主面11b側からレーザ光30を照射してレーザスクライブを行う。これによって、ウエハ10を分割して複数の発光素子40を得る。
図19に示すように、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、1つの凸部73の周囲に存在する複数の包囲領域75の中心75aをそれぞれ結ぶ直線と交差する方向に伸びる線である。
図19は、実施形態2における凸部73と第1分割予定線21及び第2分割予定線22の関係の一例を示す平面図である。
図19において、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は太線で示し、直線62は細線で示す。この例では、包囲領域の中心75aを結ぶ直線62が伸びる方向は6方向ある。
図19において、その6方向を1つの中心75aから伸びる直線62として示す。
図19に示すように、第1分割予定線21及び第2分割予定線22は、直線62のいずれとも交差する方向に伸びる線である。
【0054】
凸部73が円錐状又は円錐台状である場合においても、光が集中しやすい箇所は、実施形態1の場合と同様に、多数の凸部73で囲まれた部分であると考えられる。ただし、凸部73におけるサファイア基板11からの光の出射強度は、いずれの向きにおいてもほぼ等しい。したがって、特に、包囲領域の中心75aと凸部73の最短距離d
1が凸部73の底面の半径d
2よりも小さくなる程度に凸部73が密集している場合に、包囲領域の中心75a付近における光密度が高くなりやすく、このような包囲領域の中心75aと半導体構造12の端部が一致した場合に損傷が発生しやすい傾向にある。
【0055】
そこで、実施形態2の発光素子の製造方法では、
図19に示すように、第1分割予定線21及び第2分割予定線22が、凸部73の側面に囲まれた包囲領域75の中心75aを連続して通過しないように設定し、レーザスクライブを行う。これによって、半導体構造12の損傷の発生確率を低減でき、また、1つの発光素子40内において損傷が連続して発生しにくいため歩留りを向上させることができる。
【0056】
なお、凸部73の配置やサイズ、側面の傾きなどは、上述の凸部13と同様のものを採用することができる。ただし、距離d
1を凸部73の底面の半径d
2よりも小さくするには、三角格子状の配置、特に正三角格子状の配置が適している。また、包囲領域の中心15aと凸部13との最短距離d
1は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、より一層好ましくは1μm以下とする。また、距離d
1の下限値は、凸部73同士が接触しない程度とする。凸部73間の最短距離(谷部14が最も狭くなる箇所の幅)は、0.2〜5μm程度、0.5〜5μm程度が挙げられる。