(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記近赤外線吸収色素(A)を含む透明樹脂(B)からなる近赤外線吸収層が650〜750nmに極大吸収波長を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
近赤外線吸収層において、近赤外線吸収色素(A)と透明樹脂(B)の合量に対する近赤外線吸収色素(A)の質量の含有割合が、0.1〜20%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
近赤外線吸収層の一主面上に選択波長遮蔽層を有し、選択波長遮蔽層が、屈折率が1.45〜1.55の誘電体膜と、屈折率が1.6〜2.6の誘電体膜とを交互に積層した誘電体多層膜である請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(近赤外線カットフィルタ)
本フィルタは、式(A1)で示される近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上の近赤外線吸収色素(A)を含有する透明樹脂(B)からなる近赤外線吸収層を有する。該近赤外線吸収層を単独で本フィルタとしてもよく、他の機能層と組合せて本フィルタとしてもよい。他の機能層としては、近赤外線吸収層を保持する透明基板や、近赤外線吸収層の保持とともに自らも近赤外線を吸収する基板、特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する選択波長遮蔽層等が挙げられる。
【0016】
図1は、本フィルタの実施形態の一例の断面図である。(a)は、透明基板に隣接して近赤外線吸収層が積層されている本フィルタの断面図である。(b)は、近赤外線吸収層の両主面上に選択波長遮蔽層を有する本フィルタの断面図である。(c)は、(a)の両主面上に選択波長遮蔽層を有する本フィルタの断面図である。
なお、本フィルタは
図1(a)〜(c)の構成に限定されない。また、
図1(a)〜(c)の構成において、図示しない他の機能層をさらに有してもよい。
【0017】
本フィルタは、近赤外線吸収層の一主面上に透明基板を有することが好ましい。これにより、近赤外線吸収層を平坦にできる。
【0018】
本フィルタは、近赤外線吸収層の一主面上に選択波長遮蔽層を有することが好ましい。この層が光を反射または吸収することにより、撮像素子に不要な光を遮蔽できる。
【0019】
(近赤外線吸収色素(A))
本フィルタに含まれる近赤外線吸収色素(A)は、下記式(A1)で示される色素(A1)を1種以上含む。
色素(A1)は、スクアリリウム色素であって、分子内にアミド基を2つ有し、両アミド基間が連結されていることを特徴とする。色素(A1)は、可視域の光を透過し、650〜750nmに極大吸収波長を有する。また、色素(A1)は、両アミド基間が連結されているため、耐熱性に優れる。そのため、色素(A1)を含む近赤外線吸収層は耐熱性に優れ、該近赤外線吸収層を有する本フィルタは耐熱性に優れる。
【0021】
R
1は1以上の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよい下記式(1)または式(2)を示す。
−(CH
2)
n1− …(1)
式(1)中のn1は、4〜16の整数である。
−(CH
2)
n2−O−(CH
2)
n3− …(2)
式(2)中のn2とn3はそれぞれ独立して1〜15の整数であり、n2+n3は4〜16である。
R
2は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12の飽和環状炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜13のアルアリール基を示す。
R
3およびR
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基もしくはアルコキシ基または、R
3とR
4が炭素数1〜12のアルキル基で連結した構造を示す。
R
5は、炭素数1〜12のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
R
6およびR
7は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0022】
R
1において、式(1)のn1は5〜16が好ましい。n1がこの範囲にあれば、色素(A1)を透明樹脂(B)に十分溶解できる。n1は、6〜12がより好ましい。n1がこの範囲にあれば、合成時において、反応収率を高くできる。
【0023】
R
1において、式(2)のn2+n3が上記した範囲にあれば、色素(A1)を透明樹脂(B)に十分溶解できる。n2+n3は、6〜12がより好ましい。n2+n3が6〜12であれば、合成時において、反応収率を高くできる。
【0024】
R
1における置換基は、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。置換基がアルキル基であれば、色素(A1)の極大吸収波長を容易に調整できる。
R
1は下記式(3)で表される基が好ましい。
−CY
1Y
2−(CH
2)
n4−CY
3Y
4― …(3)
式(3)中において、n4は、2〜14の整数であり、Y
1〜Y
4はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基である。色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性を高める観点から、n4は6〜16の整数がより好ましい。また、色素(A1)の合成における反応収率を高める観点から、n4は6〜12の整数がさらに好ましい。
式(3)において、Y1〜Y4にアルキル基を有することにより、色素(A1)の極大吸収波長を短波長側にシフトさせることが可能となる。
【0025】
R
2は独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12の飽和環状炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基または炭素数7〜13のアルアリール基を示す。色素(A1)の耐熱性を高くする観点から、R
2は炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。なお、アルキル基は分岐を有するものであってもよい。
【0026】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基もしくはアルコキシ基または、R
3とR
4が互いに連結して員数が4〜7の環構造を示す。
R
3およびR
4のアルキル基およびアルコキシ基の炭素数は、合成の容易性の観点から、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
また、R
3とR
4が互いに連結して環構造を形成する場合、耐熱性を高くする観点から、連結した環構造の員数は4〜6が好ましく、5がより好ましい。なお、環構造のアルキレン基には、炭素数1〜9の置換基を有してもよい。
【0027】
R
5は、炭素数1〜12のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。R
5の炭素数は、合成の容易性の観点から、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0028】
R
6およびR
7は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。R
6およびR
7に水素原子以外の基を導入することで、極大吸収波長を調整できる。分光スペクトルの極大吸収ピークがシャープであり、650nm以下の吸収が小さい点で、R
6およびR
7は水素原子が好ましい。
【0029】
色素(A1)は、公知の方法、例えば、米国特許第5,543,086号明細書に記載された方法で合成できる。具体的には、色素(A1)は、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン(以下、スクアリン酸ともいう)と、スクアリン酸と結合して式(A1)に示す構造を形成可能な縮合環を有する化合物とを反応させることで製造できる。例えば、色素(A1)は、スクアリン酸1当量に対して上記範囲で所望の構造の縮合環を有する化合物1当量を反応させればよい。
【0030】
以下に、具体例として、色素(A11)を得る際の反応経路を示す。下記反応式(F1)においてスクアリン酸を(s)で示す。なお、反応式中のTHFはテトラヒドロフランを表す。
【0032】
本フィルタにおいて、近赤外線吸収色素(A)は、上記式(A1)で表される色素(A1)から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2以上を併用してもよい。また、近赤外線吸収色素(A)は、色素(A1)を1以上有していれば、色素(A1)以外の近赤外線吸収特性を有する色素を含んでもよい。
【0033】
色素(A1)以外の近赤外線吸収特性を有する色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、アミニウム系色素、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、ポルフィリン系色素、ジイモニウム系色素等が挙げられる。
【0034】
(透明樹脂(B))
本フィルタが有する近赤外線吸収層は、色素(A)を含む透明樹脂(B)からなる。透明樹脂(B)として使用できる樹脂としては例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。透明樹脂(B)は、これらの樹脂の中から選ばれる1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
透明樹脂(B)は、溶媒乾燥時の加熱の際や、近赤外線吸収層の主面上に加熱蒸着等で誘電体多層膜を形成する際において、樹脂の熱劣化、変形が伴わない樹脂が好ましい。このような樹脂として、BR50、BR52(三菱レイヨン社製)のような熱可塑性アクリル樹脂、OKPH4HT、OKPH4、B−OKP2(大阪ガス化学社製)のようなポリエステル樹脂、LeXanML9103(sabic社製)、SP3810、SP1516(帝人化成社製)のようなポリカーボネート樹脂、ARTON(JSR社製)、ZEONEX(日本ゼオン社製)のような環状オレフィンポリマーが挙げられる。
【0036】
近赤外線吸収層の耐熱性を高くするために透明樹脂(B)はガラス転移温度が高い樹脂を用いることが望ましい。ガラス転移温度は、70℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。
【0037】
透明樹脂(B)は、原料成分の分子構造を調整する等により、屈折率を所望の範囲に調整できる。具体的には、原料成分のポリマーの主鎖や側鎖に特定の構造を有することが挙げられる。例えば、屈折率を調整できる構造としては、下記式(B1)で示されるフルオレン骨格が挙げられる。フルオレン骨格のうちでも、透明樹脂(B)の屈折率をより高くでき、耐熱性を高くできる点で、下記式(B2)で示される9,9−ビスフェニルフルオレン骨格が好ましい。
【0039】
前記フルオレン骨格を含む樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂およびポリエステル樹脂が好ましい。また、共重合により、上記フルオレン骨格をこれらの樹脂に含有させてもよい。耐熱性、入手の容易さ、透明性の観点からポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0040】
フルオレン骨格を含むアクリル樹脂としては、例えば、9,9−ビスフェニルフルオレンの2個のフェニル基に、末端に(メタ)アクリロイル基を有する置換基を導入した9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体を含む原料成分を重合させて得られるアクリル樹脂が挙げられる。
【0041】
フルオレン骨格を含むポリエステル樹脂としては、例えば、下記式(B2−1)に示される9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体が芳香族ジオールとして導入されたポリエステル樹脂が挙げられる(ただし、式(B2−1)中、R
41は炭素数が2〜4のアルキレン基、R
42、R
43、R
44およびR
45は、各々独立に水素原子、炭素数が1〜7の飽和炭化水素基、または炭素数が6〜7のアリール基を表す。)。この場合、上記芳香族ジオールと反応させるジカルボン酸の種類は特に制限されない。このようなポリエステル樹脂は、屈折率値や可視光領域における透明性の点から透明樹脂(B)として好適に用いられる。フルオレン骨格を含むポリエステルとしては、例えば、OKPH4HT、OKPH4、B−OKP2(大阪ガス化学社製)が挙げられる。
【0043】
(近赤外線吸収層)
本フィルタが有する近赤外線吸収層は、近赤外線吸収色素(A)を含む透明樹脂(B)からなる。
近赤外線吸収層において、近赤外線吸収色素(A)と透明樹脂(B)の合量に対する近赤外線吸収色素(A)の質量の含有割合は、0.01〜20%が好ましい。近赤外線吸収色素(A)の質量の含有割合が前記範囲にあれば、近赤外線吸収層は撮像素子に不要な光を遮蔽できる。前記含有割合は、0.1〜15%がより好ましく、1〜10%が特に好ましい。
【0044】
近赤外線吸収層の極大吸収波長は、使用目的や他の機能層の分光特性に応じて適宜設定される。
本フィルタが前記選択波長遮蔽層を有する場合、基板に入射する光の角度に応じて、本フィルタの透過スペクトルが変化するおそれがある。この場合、近赤外線吸収層の吸収波長を、選択波長遮蔽層の透過波長域から遮蔽波長域へと変化する波長域に調整することで、本フィルタの透過スペクトルの角度依存性を低減することが可能となる。
近赤外線吸収層の極大吸収波長は、650〜750nmにあることが好ましい。極大吸収波長がこの範囲にあれば、本フィルタの可視光透過率を高くできる。近赤外線吸収層の極大吸収波長は、670〜750nmにあることがより好ましく、690〜720nmにあることがさらに好ましい。
【0045】
近赤外線吸収層の膜厚は、用途、すなわち使用する装置内の配置スペースや要求される吸収特性等に応じて適宜定められる。中でも膜厚は0.1〜100μmが好ましい。膜厚が0.1μm以上であれば、所望の光学特性を発揮するための色素(A)の含有量を低くできる。また、膜厚が100μm以下であれば、膜を平坦にできヘイズを低くできる。近赤外線吸収層の膜厚は、0.1〜50μmがより好ましい。この範囲にあれば、近赤外線吸収能と膜厚の平坦性を両立できる。
【0046】
近赤外線吸収層は、色素(A)および透明樹脂(B)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の成分を含有してもよい。
【0047】
他の成分として、具体的には、赤外線吸収剤、色調補正色素、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等が挙げられる。近赤外線吸収層における他の成分の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、合計で15質量部以下が好ましい。
【0048】
上記赤外線吸収剤としては、可視波長領域における透過率を、吸収や散乱によって低減させないものが使用される。このような赤外線吸収剤として、無機微粒子が好ましく使用できる。具体的には、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony−doped Tin Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタン等を主成分とする微粒子が挙げられる。なかでも、ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視波長領域の光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域も含めた広範囲の光吸収性を有するため、赤外波長領域の光の遮蔽性を必要とする場合に特に好ましい。
【0049】
上記無機微粒子の数平均凝集粒子径は、散乱を抑制し、透明性を維持する点から、5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましく、5〜70nmがさらに好ましい。ここで、本明細書において、数平均凝集粒子径とは、検体微粒子を水、アルコール等の分散媒に分散させた粒子径測定用分散液について、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値をいう。
【0050】
近赤外線吸収層は、上記した以外に、例えば、シランカップリング剤、熱もしくは光重合開始剤、重合触媒に由来する成分等を含んでいてもよい。これらの成分は、以下に説明する近赤外線吸収層を形成する際の塗工液に添加される。シランカップリング剤の種類は、組合せて使用する透明樹脂(B)に応じて適宜選択される。シランカップリング剤の含有量は、該塗工液において、透明樹脂(B)100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
【0051】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランのようなアミノシラン類や、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシシラン類、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランのようなビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−ウレイドプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
(近赤外線吸収層の製造)
近赤外線吸収層は、透明樹脂(B)または透明樹脂(B)の原料成分と色素(A)とを溶媒に分散し、溶解させて調製した塗工液を基板上に塗工し、乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させることで製造できる。このような方法で成膜することで、近赤外線吸収層を所望の膜厚で均一に製造できる。該基板は、本フィルタの構成部材として適用することが可能な透明基板でもよく、近赤外線吸収層を成形する際のみに用いる剥離性の基板でもよい。
【0053】
上記溶媒としては、透明樹脂(B)または透明樹脂(B)の原料成分と色素(A)とを安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であれば、特に限定されない。なお、本明細書において「溶媒」の用語は、分散媒および溶媒の両方を含む概念で用いられる。該溶媒として、具体的には、ケトン類、エーテル類、エステル類、アルコール類、炭化水素類、シクロヘキサン、アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0054】
塗工液における溶媒の量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、10〜5,000質量部が好ましく、30〜2,000質量部が特に好ましい。なお、塗工液中の不揮発成分(固形分)の含有量は、塗工液全量に対して2〜50質量%が好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
【0055】
塗工液の調製には、マグネチックスターラー、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等の撹拌装置を使用できる。高い透明性を確保するためには、撹拌を十分に行うことが好ましい。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0056】
塗工液の塗工には、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、インクジェット法、またはコンマコーター法等のコーティング法を使用できる。その他、バーコーター法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等も使用できる。
【0057】
塗工液を塗工する剥離性の基板は、フィルム状であっても板状であってもよく、剥離性を有するものであれば、材料も特に限定されない。具体的には、ガラス板や、離型処理された透明樹脂フィルム、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等からなるフィルム、ステンレス鋼板等が使用される。
【0058】
表面に上記塗工液が塗工され、その後適宜処理されて得られる近赤外線吸収層とともに、そのまま本フィルタの構成部材となる透明基板としては、後述の透明基板が挙げられる。
【0059】
これら基板上に上記塗工液を塗工した後、乾燥させることで該基板上に近赤外線吸収層が形成される。塗工液が透明樹脂(B)の原料成分を含有する場合には、さらに硬化処理を行う。反応が熱硬化の場合は乾燥と硬化を同時に行うことができるが、光硬化の場合は、乾燥と別に硬化処理を設ける。また、剥離性の基板上に形成された近赤外線吸収層は剥離して本フィルタの製造に用いる。
【0060】
本フィルタに係る近赤外線吸収層は、透明樹脂(B)の種類によっては、押出成形によりフィルム状に製造することも可能であり、さらに、このように製造した複数のフィルムを積層し熱圧着等により一体化させてもよい。
【0061】
(他の機能層)
前記選択波長遮蔽層は、可視領域の光を透過し、前記近赤外線吸収層の遮光域以外の波長の光を遮蔽する分光特性を有する層である。このような選択波長遮蔽層としては、金属の蒸着膜、無機微粒子が分散した樹脂膜、屈折率の異なる層を交互に積層した誘電多層膜等が挙げられる。中でも、選択波長遮蔽層の分光特性を調整しやすい点で、誘電多層膜が好ましい。
【0062】
選択波長遮蔽層は、下記(i−1)および(i−2)の分光特性を満たすことが好ましい。
(i−1)420〜695nmの波長域において透過率が90%以上。
(i−2)上記近赤外線吸収層の波長域650〜800nmの透過スペクトルにおける透過率が1%となる最も長い波長λ
bから1100nmまでの波長域において透過率が2%以下。
選択波長遮蔽層が、条件(i−1)を満たせば、本フィルタは可視光領域の光の利用効率を高められる。条件(i−1)において、420〜695nmの波長域の透過率は95%以上がより好ましい。
選択波長遮蔽層が、条件(i−2)を満たすことで、本フィルタは近赤外および赤外領域の光を遮蔽できる。その結果、撮像素子への近赤外域の光の入射を抑制できる。
【0063】
選択波長遮蔽層は、400nm以下の光の透過率が1%以下であることがより好ましい。さらに、選択波長遮蔽層は、410nm以下の光の透過率が1%以下であることが特に好ましい。
【0064】
本フィルタにおいて、選択波長遮蔽層を1層有してもよく、複数層有してもよい。すわなち、一層で所定の波長領域の光を遮蔽してもよく、複数層を組み合わせて所定の波長領域の光を遮蔽してもよい。
選択波長遮蔽層を複数層有する場合、選択波長遮蔽層を前記近赤外線吸収層の両側に配置してもよく、他の機能層を介して、同じ側に複数有してもよい。なお、配置される選択波長遮蔽層の数は制限されない。
【0065】
前記透明基板は、近赤外線吸収層や他の機能層を支持する機能を有する。透明基板の形状は、ブロック状、板状またはフィルム状が挙げられる。
【0066】
透明基板は、可視波長領域の光を透過するものであれば、構成する材料は特に制限されない。透明基板の材料としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶、ガラス、透明樹脂フィルムが挙げられる。
中でも、基板の剛性が高く、耐熱性に優れるため、結晶またはガラスが好ましい。
【0067】
透明基板に使用されるガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、フツリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス等が挙げられる。安価で加工性に優れる点でソーダライムガラスが好ましい。また、透明基板が紫外線領域および/または近赤外線領域の波長に対して吸収特性を有するものとする場合、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラスが好ましい。吸収型のガラスで構成することにより、可視域の透過率を高くでき、700nm以上の光を遮蔽できる。そのため、吸収型のガラスを使用すれば、選択波長遮蔽層と併用する場合に、選択波長遮蔽層の入射角度依存性の影響を軽減できる。その結果、撮像装置において、フレアやゴースト等の発生を抑制できる。
【0068】
透明基板がガラス板の場合、ガラス板の厚みは、装置の小型化、薄型化、および取り扱い時の破損を抑制する点から、0.03〜5mmの範囲が好ましい。軽量化および強度の点から、0.05〜1mmの範囲がより好ましい。
【0069】
水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置において、モアレや偽色を低減するためのローパスフィルターや波長板の材料として使用されている。そのため、透明基板の材料として、これらの結晶を用いれば、本フィルタに、ローパスフィルターや波長板の機能を付与できる。その結果、本フィルタを使用することで撮像装置をさらに小型化または薄型化できる。
【0070】
上記撮像装置の固体撮像素子または固体撮像素子パッケージには、該固体撮像素子を保護するカバーが気密封着されている。カバー材として本フィルタを使用すれば、撮像装置をさらに小型化または薄型化できる。
【0071】
透明樹脂の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレートおよびポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、またはポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0072】
透明基板がフィルムである場合、透明基板に近赤外線吸収層を形成する前に、フィルムの表面にコロナ処理や易接着処理を施すことが好ましい。これにより、近赤外線吸収層との密着性を向上できる。
【0073】
透明基板がフィルムである場合、透明基板の他方の主面を粘着剤または接着剤を介してガラス板に貼着してもよい。ガラス板としては、透明基板の材料として例示したものと同様のものを使用できる。特に、加工が容易で、光学面における傷や異物等の発生が抑えられるため、ホウケイ酸ガラスが好ましい。
【0074】
透明基板が透明樹脂フィルムである場合、フィルムの厚みは、10〜300μmが好ましい。
【0075】
前記誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層して得られる。これにより、光の干渉を利用して特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する機能を発現できる。ただし、低屈折率と高屈折率とは、隣接する層の屈折率に対して高い屈折率と低い屈折率を有することを意味する。
【0076】
前記高屈折率の誘電体膜は、低屈折率の誘電体膜よりも屈折率が高ければ、特に限定されない。前記高屈折率の屈折率は、1.6〜2.6が好ましく、2.2〜2.5がより好ましい。このような屈折率を有する誘電体の材料としては、Ta
2O
5(屈折率:2.22)、TiO
2(屈折率:2.41)、Nb
2O
5(屈折率:2.3)などが挙げられる。これらのうち、成膜性と屈折率等をその再現性、安定性を含め総合的に判断して、TiO
2等がより好ましい。
【0077】
一方、前記低屈折率の屈折率は、1.45以上1.55未満が好ましく、1.45〜1.47がより好ましい。このような屈折率を有する誘電体の材料としては、SiO
2(屈折率:1.46)、SiO
xN
y(屈折率:1.46以上1.55未満)などが挙げられる。これらのうち、屈折率、成膜性における再現性、安定性、経済性などの点から、SiO
2がより好ましい。
【0078】
近赤外線カットフィルタの分光特性においては、透過光波長と遮光波長の境界波長領域で透過率を急峻に変化させる性能が求められる場合が多い。透過光波長と遮光波長の境界波長領域で透過率を急峻に変化させる性能を得るためには、誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜との合計積層数として15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。合計積層数が増えると製作時のタクトが長くなり、誘電体多層膜の反りなどが発生するため、また、誘電体多層膜の膜厚が増加するため、100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がさらに好ましい。低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜の積層順は交互であれば、最初の層が低屈折率誘電体膜であっても高屈折率誘電体膜であってもよい。
【0079】
誘電体多層膜の膜厚としては、上記好ましい積層数を満たした上で、近赤外線カットフィルタの薄型化の観点からは、薄い方が好ましい。このような誘電体多層膜の膜厚としては、選択波長遮蔽特性によるが、2〜10μmが好ましい。なお、誘電体多層膜を反射防止層として用いる場合には、その膜厚は0.1〜1μmが好ましい。また、近赤外線吸収層の両面、もしくは透明基板と該透明基板上に形成された近赤外線吸収層の各々の面に誘電体多層膜を配設する場合、誘電体多層膜の応力により反りが生じる場合がある。この反りの発生を抑制するために各々の面に成膜される誘電体多層膜の膜厚の差は、所望の選択波長遮蔽特性を有するように成膜した上で、可能な限り少ない方が好ましい。
【0080】
誘電体多層膜は、その形成にあたっては、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0081】
本フィルタは、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置や自動露出計等の近赤外線カットフィルタ、PDP用の近赤外線カットフィルタ等として使用できる。
【0082】
本フィルタは、上記撮像装置において好適に用いられ、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間や撮像レンズの被写体側に配置される。
【実施例】
【0083】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下で説明する実施形態および実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
(耐熱性試験)
下記で製造した近赤外線カットフィルタの耐熱性を評価した。耐熱性の評価は以下の手順で行った。
近赤外線カットフィルタを、樹脂面を空気側とし、ガラス基板をホットプレートに接するようにしてホットプレートに置いた。近赤外線カットフィルタを170℃で3時間加熱し、加熱前後での近赤外線カットフィルタの吸収特性の変化を評価した。
【0085】
吸収特性は、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−3310型分光光度計)を用いて測定した。吸収特性の変化は、下記の式G−1に従い、加熱前後での波長680nmにおける吸光度を比較して、色素残存率を算出した。吸光度は、近赤外線カットフィルタの吸光度と色素の入っていない樹脂膜のみの吸光度との差分を用いた。
色素残存率(単位:%)=(焼成後の吸光度−樹脂のみの吸光度)/(焼成前の吸光度−樹脂のみの吸光度)×100・・・・(式G−1)
(極大吸収波長)
下記で合成した化合物を有する近赤外線吸収層について極大吸収波長を測定した。
下記で製造した近赤外線カットフィルタを使用し、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−3310型分光光度計)を用いて測定した。近赤外線カットフィルタの基板のみのスペクトルから透過率分をベース値とした。400〜800nmにおける透過率スペクトルにおいて、透過率が最も低い波長を極大吸収波長とした。
【0086】
(色素の合成)
以下の方法により、各例に使用する色素を合成した。
【0087】
(化合物A11−1の合成)
F2に示す反応経路で化合物A11−1を合成した。
【0088】
【化6】
【0089】
(化合物(d−1)の製造)
500mlのナスフラスコに化合物1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドリンを(25g、140mmol)、メタノール(360ml)を加え、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(9.0g、220mmol)をゆっくり加えた。添加後、ゆっくりと室温にもどし、室温で3時間撹拌した。反応終了後、水をゆっくり加え、その後、炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルで分液を行った。分液後、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥しロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。展開溶媒は酢酸エチル:ヘキサン=1:4とした。結果、化合物(d−1)(23g、130mmol、収率91%)をた。
【0090】
(化合物(e−1)の製造)
2Lナスフラスコに化合物(d−1)(20g、110mmol)、濃硫酸(80g、810mmol)を加え、0℃に冷却した。その後、質量比で濃硝酸:濃硫酸=1:5の混合溶液(55g)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応温度を徐々に室温に戻し、同温度で16時間撹拌した。反応終了後、再び0℃に冷却して、水酸化ナトリウム水溶液をpHが9になるまでゆっくり加えた。沈殿物をろ過して、水とメタノールで十分洗浄した。洗浄後、得られた固形物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。展開溶媒はジクロロメタン:ヘキサン=1:5とした。結果、化合物(e−1)(17g、77mmol、収率67%)を得た。
【0091】
(化合物(f−1)の製造)
窒素雰囲気下、500mlのナスフラスコに、化合物(e−1)(15g、68mmol)、メタノール(150ml)、テトラヒドロフラン(150ml)、ギ酸アンモニウム(23.5g、370mmol)および10wt%パラジウム炭素(12g)を加え、その後、反応系を開放して大気雰囲気下室温で12時間撹拌した。反応終了後、混合物のセライトろ過を行い、得られたろ液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1:4)。結果、化合物(f−1)(9.7g、51mmol、収率75%)を得た。
【0092】
(化合物(h−1)の製造)
窒素雰囲気下、300mlのナスフラスコに、ジカルボン酸としてピメリン酸(0.5g、3.1mmol)、ジクロロメタン(100ml)、オキサリルクロリド(1.8ml、21mmol)を加え、その後、N,N−ジメチルホルムアミド(0.1ml)を添加し、窒素雰囲気下室温で30分撹拌した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、ジクロロメタン(50ml)を加え、化合物(f−1)(1.3g、6.8mmol)、トリエチルアミン(1.1ml、8.2mmol)、ジクロロメタン(200ml)の入った500mlのナスフラスコに、窒素下で氷浴のもと、ゆっくりと滴下した。1時間の反応を行った後、水を加え、酢酸エチルを用いて分液を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1:2)。結果、化合物(h−1)(1.1g、2.2mmol、収率70%)を得た。
【0093】
(化合物(A11−1)の製造)
500mlのナスフラスコにDean−Stark管を取り付け、化合物(h−1)(1.1g、2.2mmol)、トルエン(300ml)、1−ブタノール(200ml)、スクアリン酸(0.20g、1.8mmol)を加え、アゼオトロープ加熱還流条件下で3時間撹拌した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて反応溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1:3)。結果、色素A11−1(0.22g、0.4mmol、収率22%)を得た。
化合物A11−1の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl
3、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.1−1.3(18H)、 1.5(2H)、 1.9(4H)、 2.5(4H)、 3.0(6H)、3.5(2H)、7.5(2H)、8.0(2H)、12.3(2H)であった。
【0094】
(化合物A11−2の合成)
式F2の合成において化合物(h−1)を合成する際に用いたピメリン酸の代わりにスベリン酸を用いた以外は同様にして、下記化合物A11−2を合成した。
化合物A11−2の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl
3、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.1−1.3(18H)、 1.7(4H)、 1.9(4H)、 2.5(4H)、 3.0(6H)、3.5(2H)、7.9(2H)、8.3(2H)、12.1(2H)であった。
【0095】
【化7】
【0096】
(化合物A11−3の合成)
式F2の合成において化合物(h−1)を合成する際に用いたピメリン酸の代わりにアゼライン酸を用いた以外は同様にして、下記化合物A11−3を合成した。
化合物A11−3の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl
3、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.1−1.3(18H)、 1.4−1.5(6H)、 1.8(4H)、 2.5(4H)、 3.0(6H)、3.5(2H)、7.9(2H)、8.3(2H)、12.0(2H)であった。
【0097】
【化8】
【0098】
(化合物A11−4の合成)
式F2の合成において化合物(h−1)を合成する際に用いたピメリン酸の代わりにセバシン酸を用いた以外は同様にして、下記化合物A11−4を合成した。
化合物A11−4の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl
3、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.1−1.3(18H)、 1.4−1.5(8H)、 1.8(4H)、 2.5(4H)、 3.0(6H)、3.5(2H)、8.0(2H)、8.3(2H)、12.1(2H)であった。
【0099】
【化9】
【0100】
(化合物A11−5の合成)
式F2の合成において化合物(h−1)を合成する際に用いたピメリン酸の代わりにドデカン二酸を用いた以外は同様にして、下記化合物A11−5を合成した。
化合物A11−5の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl
3、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.1−1.5(30H)、1.8(4H)、 2.6(4H)、 3.0(6H)、3.5(2H)、8.0(2H)、8.4(2H)、11.9(2H)であった。
【0101】
【化10】
【0102】
(化合物A11−6の合成)
式F2の合成において化合物(h−1)を合成する際に用いたピメリン酸の代わりに2,2,7,7−テトラメチルオクタン二酸を用いた以外は同様にして、下記化合物A11−6を合成した。
化合物A11−6の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl
3、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.1−1.3(30H)、1.5(4H)、 2.0(4H)、3.0(6H)、3.5(2H)、8.0(2H)、8.3(2H)、11.5(2H)であった。
【0103】
【化11】
【0104】
(化合物A12−1の合成)
化合物A12−1は式F3に示す方法により、合成した。
【0105】
【化12】
【0106】
(化合物(b−2)の製造)
500mlのナスフラスコに2,3,3−トリメチルインドレニン(31.5g、197mmol)、2−ヨードプロパン(134g、79mmol)を加え、24時間110℃で加熱還流を行い反応させた。反応終了後、析出した固形物をヘキサンで十分に洗浄を行い、濾過することで化合物(b−2)(63.9g、190mmol、収率98%)を得た。
【0107】
(化合物(c−2)の製造)
1Lナスフラスコに化合物2(63.9g、190mmol)、水200mlを加え、その後、水200mlに溶解させた水酸化ナトリウム(40g、98.7mmol)をゆっくり滴下した。室温で4h反応させたのち、水を加え、ジクロロメタンを用いて分液を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=3:7)。結果、化合物(c−2)(33.6g、190mmol、収率98.7%)を得た。
その後の工程は実施例2の工程と同様に行うことにより、化合物A12−1を合成した。
化合物A12−1の1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl
3、内部標準:TMS)は、δ(ppm):1.1−1.6(34H)、1.8(4H)、 2.4(4H)、 3.7(2H)、4.0(2H)、8.0(2H)、8.2(2H)、12.1(2H)であった。
【0108】
比較例で使用した化合物R−1〜R−5を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
(例1)
透明樹脂として、フルオレン骨格を含むポリエステル樹脂であるB−OKP2(大阪ガス化学社製)を用いた。シクロヘキサノンに樹脂の含有量が5.5質量%となるようにして混合し、溶解させて樹脂液を作製した。
次に、この樹脂液中に色素(化合物A11−1)を混合し塗工液を調整した。色素の含有量は、樹脂液中の樹脂に対し、質量比で樹脂:色素=97.5:2.5となるようにした。
【0111】
得られた塗工液を、ソーダガラス基板上にスピンコートによって塗布した。次に、90℃で5分乾燥し、その後150℃で60分乾燥した。これにより、ソーダガラス基板上に近赤外吸収層(1)を有する近赤外線カットフィルタを得た。近赤外線吸収層の膜厚は、0.3μmであった。
【0112】
(例2)
例1において、使用する色素を化合物A11−2とし、樹脂液中に含まれる樹脂と色素の質量比を樹脂:色素=92:8とすること以外は同様にして近赤外線カットフィルタを得た。
【0113】
(例3〜12)
例2において、使用する色素を表2に記載のとおりとすること以外は同様にして、例3〜12の近赤外線カットフィルタを得た。
【0114】
全ての例について耐熱性試験を行った。結果を表1に示す。例1〜7で使用した近赤外線吸収色素は、式(A1)で示す色素である。本フィルタは、式(A1)で示す色素を含む近赤外線吸収層を有するため、いずれも色素残存率が高い。
これに対して、例8〜12で使用した色素は式(A1)で示せない。また、これらを有する近赤外線カットフィルタは、色素残存率が低い。
以上から、式(A1)で表される化合物は耐熱性が高く、この化合物を含む近赤外線吸収層は耐熱性に優れることが分かる。さらに、この色素を含む近赤外線吸収層を有する近赤外線カットフィルタも耐熱性に優れることが分かる。
【0115】
【表2】