(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
照明光でマスクを照明する照明光学系と、前記マスクのパターン像を基板上に投影する投影光学系と、を有し、前記照明光に対して前記マスクと前記基板をそれぞれ相対移動して前記基板を走査露光する露光装置であって、
前記投影光学系を支持するメトロロジーフレームと、前記投影光学系の上方に配置され、前記照明光が通過する開口を有する定盤と、を有するボディ機構と、
前記照明光が通過する開口内で前記マスクを保持するチャック部材を有し、前記走査露光において前記マスクが移動される、前記投影光学系の光軸と直交する第1方向に関して移動可能なスライダを有し、前記定盤上に配置されるステージと、
前記定盤上で前記ステージを移動する駆動系と、
前記投影光学系の光軸と直交する所定面内で前記第1方向と垂直な第2方向に関して離れて配置される複数のヘッドを有し、前記ステージの位置情報を計測するエンコーダシステムと、
前記エンコーダシステムで計測される位置情報に基づいて前記駆動系を制御するコントローラと、
前記照明光学系と前記ステージとの間で前記照明光の光路を含む第1空間を形成するための隔壁部材と、を備え、
前記エンコーダシステムでは、前記複数のヘッドが前記投影光学系の上端側に設けられ、計測面が前記第2方向に関して前記スライダの開口の両側に配置され、それぞれ前記第1方向に延設されるように前記スライダに設けられ、それぞれ反射型格子が形成される前記開口の両側の前記計測面に対して、前記定盤の開口を介して前記複数のヘッドからそれぞれ計測ビームを照射し、
前記走査露光において、前記隔壁部材、前記ステージ、および前記マスクによって前記第1空間がほぼ気密に形成されるように、前記ステージはその上面が前記隔壁部材の下面の一部と近接しつつ移動され、
前記隔壁部材は、前記光路を囲む筒状部と、前記筒状部の下端側に配置され、前記筒状部に対して前記第1方向の一側と他側にそれぞれ延設され、前記走査露光においてその下方で移動される前記ステージの上面と近接して対向可能な下面を有し、前記下面が前記所定面と実質的に平行となるように配置された一対の板状部と、を有することを特徴とする露光装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0024】
図1には、第1の実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる)である。後述するように本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXに平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルRとウエハWとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0025】
露光装置100は、照明ユニットIOP、レチクルRを保持してXY平面に平行な面内で移動するレチクルステージRSTを含むレチクルステージ装置20、投影光学系PL、ウエハWをXY2次元方向に駆動するウエハステージWST、及びこれらの制御系、並びにレチクルステージ装置20及び投影光学系PLを保持するコラム34等を備えている。
【0026】
照明ユニットIOPは、光源及び照明光学系を含み、その内部に配置された視野絞り(マスクキングブレード又はレチクルブラインドとも呼ばれる)により規定される矩形又は円弧状の照明領域に照明光(露光光)ILを照射し、回路パターンが形成されたレチクルRを均一な照度で照明する。照明ユニットIOPと同様の照明系は、例えば米国特許第5,534,970号明細書などに開示されている。ここでは、一例として照明光ILとして、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられるものとする。また、照明光学系内部に配置されたビームスプリッタにより照明光ILの一部が取り出され、インテグレータセンサとも呼ばれるパワーモニタからの照度信号が、主制御装置50(
図6参照)に与えられている。
【0027】
レチクルステージ装置20は、照明ユニットIOPの下方に所定間隔を隔ててほぼ平行に配置されたレチクルステージ定盤RBS、該レチクルステージ定盤RBS上に配置されたレチクルステージRST、該レチクルステージRSTを取り囲む状態でレチクルステージ定盤RBS上に配置された枠状部材から成るカウンタマス18、及びレチクルステージRSTを駆動するレチクルステージ駆動系340(
図6参照)等を備えている。
【0028】
レチクルステージ定盤RBSは、
図1に示されるように、コラム34の天板部32a上に複数(例えば3つ)の防振ユニット14(
図1における紙面奥側の防振ユニットは不図示)を介して略水平に支持されている。レチクルステージ定盤RBS上に、レチクルステージRSTが配置され、レチクルステージRST上にレチクルRが保持されている。なお、レチクルステージ装置20の具体的な構成等については後にさらに詳述する。
【0029】
投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば、両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4あるいは1/5)を有する。このため、照明ユニットIOPからの照明光ILによって照明領域が照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のレチクルの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の投影像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置され、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の照明領域に共役な領域(露光領域)に形成される。
【0030】
そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では、照明ユニットIOP及び投影光学系PLによって、ウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0031】
投影光学系PLの鏡筒の高さ方向のほぼ中央に、フランジFLGが設けられている。
【0032】
コラム34は、床面Fにその下端部が固定された複数(例えば3本)の脚部32b(
図1における紙面奥側の脚部は不図示)と、3本の脚部32bにより略水平に支持された天板部32aとを含んでいる。天板部32aの中央部には、上下方向(Z軸方向)に貫通した開口34aが形成されている。開口34a内に投影光学系PLの上端部が挿入されている。
【0033】
天板部32aの下面側に一端が固定された3つの吊り下げ支持機構137(ただし紙面奥側の吊り下げ支持機構は不図示)の他端がフランジFLGに接続され、これにより投影光学系PLが天板部32aに吊り下げ支持されている。3つの吊り下げ支持機構137のそれぞれは、例えば柔構造の連結部材であるコイルばね136とワイヤ135とを含む。コイルばね136は、投影光学系PLの光軸(Z軸)に垂直な方向には振り子のように振動するため、投影光学系PLの光軸に垂直な方向の除振性能(床の振動が投影光学系PLに伝達するのを防止する性能)を有している。また、光軸に平行な方向に関しても、高い除振性能を有している。なお、投影光学系PLは吊り下げ支持することなく、例えばフランジFLGを介してコラム34の脚部32bで支持しても良い。また、投影光学系PLはフランジFLGを介して、例えば鏡筒定盤あるいはメトロロジーフレームなどと呼ばれる支持部材(フレーム部材)に載置し、この支持部材を天板部32aに吊り下げ支持する、あるいはコラム34の脚部32bで支持しても良い。
【0034】
また、コラム34の各脚部32bのZ軸方向に関する中央部近傍には凸部134aが内側に突設され、各凸部134aと投影光学系PLのフランジFLGの外周部との間には、駆動系440が設けられている。駆動系440は、例えば投影光学系PLを鏡筒の半径方向に駆動するボイスコイルモータと、投影光学系PLを光軸方向(Z軸方向)に駆動するボイスコイルモータとを含んでいる。3本の脚部32bに設けられた3つの駆動系440により投影光学系PLを6自由度方向に変位させることができる。
【0035】
投影光学系PLのフランジFLGには、投影光学系PLの6自由度方向の加速度を検出するための加速度センサ234(
図1では不図示、
図6参照)が設けられており、加速度センサ234で検出される加速度情報に基づいて、主制御装置50(
図1では不図示、
図6参照)が、投影光学系PLがコラム34及び床面Fに対して静止した状態となるように駆動系440のボイスコイルモータの駆動を制御する。なお、加速度センサの代わりに振動センサ又は変位センサなど、他のセンサを用いても良い。
【0036】
投影光学系PLのフランジFLGの下面からは、リング状の計測マウント51が複数(ここでは例えば3本)の支持部材53(ただし、紙面奥側の支持部材は不図示)を介して吊り下げ支持されている。3本の支持部材53は、実際には、その両端部に支持部材53の長手方向以外の5自由度方向の変位が可能なフレクシャ部を有するリンク部材を含んで構成され、計測マウント51とフランジFLGとの間に応力が殆ど生じることなく計測マウント51を支持することができるようになっている。
【0037】
計測マウント51には、ウエハ干渉計58、マーク検出系としてのウエハアライメント系(以下、アライメント系と称する)ALG(
図1では不図示、
図6参照)、及び不図示の多点焦点位置検出系などが保持されている。アライメント系ALGとしては、例えば米国特許第5,721,605号明細書などに開示される画像処理方式のFIA系を用いることができる。また、多点焦点位置検出系としては、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示される多点焦点位置検出系を用いることができる。なお、前述の支持部材(メトロロジーフレームなどと呼ばれる)に投影光学系PLを載置する場合には、計測マウント51を設けることなく、干渉計58やウエハアライメント系ALGなどを前述の支持部材で保持しても良い。
【0038】
ウエハステージWSTは、投影光学系PLの下方に水平に配置されたステージ定盤BSの上面に、その底面に設けられたエアベアリングなどを介して浮上支持されている。
【0039】
ここで、ステージ定盤BSは、直接的に床面F上に据え付けられており、その+Z側の面(上面)は、その平坦度が非常に高くなるように加工されており、ウエハステージWSTの移動基準面(ガイド面)とされている。なお、ステージ定盤BSは複数の防振機構を介して床面F上に載置しても良い。
【0040】
ウエハステージWSTは、ウエハホルダ125を介してウエハWを真空吸着等により保持し、主制御装置50により、ウエハステージ駆動系122(
図1では不図示、
図6参照)を介して、ステージ定盤BSの上面に沿ってXY平面内で自在に駆動されるようになっている。なお、ウエハステージ駆動系122として例えば平面モータを用いても良く、この場合、ウエハステージWSTを磁気力にてステージ定盤BS上で浮上支持しても良い。
【0041】
次に、レチクルステージ装置20及びその近傍の構成部分についてさらに詳述する。
【0042】
図2にはレチクルステージ装置20の外観が斜視図にて示されている。レチクルステージ定盤RBSは、平面視(上方から見て)略長方形の板状部材から成り、その中央部には、照明光ILの通路となる開口RBSa(
図1及び
図4(B)等参照)が形成されている。開口RBSaは、前述した天板部32aの開口34aとZ軸方向に連通した状態となっている。また、レチクルステージ定盤RBSの上面の、中心から−X方向及び+X方向に等距離離れた位置には、凸状部分RBSb、RBSc(
図4(B)参照)がY軸方向に延設されている。凸状部分RBSb,RBScの上面(+Z側の面)は、平坦度が非常に高くなるように加工され、レチクルステージRSTの移動の際のガイド面が形成されている。
【0043】
また、レチクルステージ定盤RBSの上面の外周部近傍には、不図示ではあるが、所定間隔で複数のエアパッドが固定されている。これらの複数のエアパッド上にカウンタマス18が配置されている。これらの複数のエアパッドの一部、例えばレチクルステージ定盤RBSの4隅にあるエアパッドは、カウンタマス18をレチクルステージ定盤RBSの上面(+Z側の面)上で非接触で支持している。残りのエアパッドは、真空吸引力と吹き出し圧力とのバランスの調整が可能であり、カウンタマス18の下面とレチクルステージ定盤RBSの上面との間を所定間隔に維持している。
【0044】
レチクルステージ定盤RBSと天板部32aとの間に設けられた
図1に示される複数(例えば3つ)の防振ユニット14は、それぞれがエアダンパ又は油圧式のダンパ等の機械式のダンパを含んでいる。この防振ユニット14により、例えばエアダンパ又は油圧式のダンパによって比較的高周波の振動がレチクルステージRSTへ伝達するのを回避することができる。また、レチクルステージ定盤RBSと天板部32aとの間には、レチクルステージ定盤RBSにX軸方向の駆動力を作用させるXボイスコイルモータ66X、Y軸方向の駆動力を作用させるYボイスコイルモータ66Y、及びZ軸方向の駆動力を作用させるZボイスコイルモータ66Z(いずれも、
図2では不図示、
図6参照)が設けられている。
【0045】
これらボイスコイルモータとしては、例えば、Xボイスコイルモータ66XとYボイスコイルモータ66Yの少なくとも一方を2つ、Zボイスコイルモータ66Zを3つ設けることとすることができる。すなわち、Xボイスコイルモータ66XとYボイスコイルモータ66Yの少なくとも一方を2つ設けることで、レチクルステージ定盤RBSをX軸方向及びY軸方向のみならず、θz方向にも微小駆動することが可能であり、また、Zボイスコイルモータ66Zを3つ設けることで、レチクルステージ定盤RBSをZ軸方向のみならず、θx方向及びθy方向にも微小移動することが可能である。従って、ボイスコイルモータ66X,66Y,66Zにより、レチクルステージ定盤RBSを6自由度方向に微小駆動することが可能である。なお、レチクルステージ定盤RBSの位置は、定盤干渉計240やZエンコーダ81(いずれも
図6参照)により投影光学系PLを基準として計測される。
【0046】
ここで、例えば3つのZボイスコイルモータ66Zは、レチクルステージ定盤RBSと天板部32aとの間の一直線上に無い3箇所に設けられている。この3つのZボイスコイルモータ66Zに加えて、レチクルステージ定盤RBSと天板部32aとの間に、変形抑制部材(例えばボイスコイルモータなど)を複数配置しても良い。このようにすると、Zボイスコイルモータ66Zのみにより、レチクルステージ定盤RBSをZ軸方向、θx方向、θy方向に駆動した(変位させた)場合に、Zボイスコイルモータ66Zの推力の作用点同士が離れていることに起因してレチクルステージ定盤RBSに撓みあるいはねじれが発生するような場合でも、主制御装置50が、3つのZボイスコイルモータ66Zの発生推力に応じて、その複数の変形抑制部材の発生する推力を制御(推力分配)することで、レチクルステージ定盤RBSを、その変形が極力抑制された状態でZ、θx、θy方向に駆動する(変位させる)ことが可能となる。
【0047】
レチクルステージRSTは、
図2及び
図4(A)に示されるように、レチクルステージ本体22と、レチクルステージ本体22のX軸方向の両端部に固定された一対の可動子30A、30Bとを有している。
【0048】
レチクルステージ本体22は、平面視(上方から見て)矩形状の板状部22
0と、板状部22
0の±X端にそれぞれ固定されたY軸方向を長手方向とする直方体状のエアスライダ部22
1,22
2とを有している。ここで、板状部22
0のほぼ中央には、照明光ILの通路となる開口22a(
図4(B)参照)が形成されている。
【0049】
板状部22
0上面の開口22aのX軸方向の両側の部分には、レチクルRの裏面を吸着保持する一対のバキュームチャック95,96が配置されている。
【0050】
また、板状部22
0上面の開口22aの−Y側の部分には、一対のストッパ(位置決め部材)93,94が、X軸方向に関して所定距離(レチクルRのX軸方向に関する幅より幾分短い距離)隔てて配置され、固定されている。これらのストッパ93,94は、レチクルRの−Y側の端面(側面)に当接してそのレチクルRを位置決めする。
【0051】
また、板状部22
0上面の開口22aの+Y側の部分には、一対の回動アームから成るクランパ(押圧部材)91、92が取り付けられている。クランパ91、92は、それぞれストッパ93、94と組を成し、レチクルRをY軸方向の一側と他側から挟持するクランプ装置を、それぞれ構成する。
【0052】
一方のクランパ91は、X軸方向を長手方向とし、その−X端を支点(回転中心)として回動可能に板状部22
0に取り付けられている。また、このクランパ91の−Y側の面の+X端部には、ストッパ93に対向してほぼ半球状の凸部が設けられている。そして、このクランパ91は、その凸部がレチクルRの+Y側の端面に圧接するように、不図示のゼンマイバネなどから成る付勢部材によって時計回りに常に付勢されている。他方のクランパ92は、左右対称ではあるが、クランパ91と同様に構成されている。
【0053】
レチクルRは、開口22aを上方から塞ぐ状態で、板状部22
0(レチクルステージRST)上に載置されている。そして、レチクルRは、その−Y側の面がストッパ93,94に接触して位置決めされ、クランパ91,92により+Y側の面に所定の押圧力が加えられて固定される。レチクルRは、このようにしてクランパ91,92及びストッパ93,94によって固定された後、バキュームチャック95,96により、その下面のX軸方向両端部が吸着される。レチクルRをレチクルステージRST上からアンロードする場合には、吸着を解除した後、クランパ91,92を付勢力に抗して、レチクルRから離し、例えば上方から吸盤等でレチクルRの上面(パターン面と反対側の面)を吸着して持ち上げる。あるいは、レチクルRのパターン領域の外部をフック等で引っ掛けて持ち上げる。あるいは後述する第2の実施形態のようにレチクルRを上下動部材で下方から一旦持ち上げ、上下動部材から搬送アームに渡すなどしても良い。なお、クランパ91,92を常時付勢する構成に換えて、アクチュエータ(例えばモータあるいはエアシリンダなど)により、クランパ91,92の半球状凸部が、レチクルRに当接する第1位置と、レチクルRから離間する第2位置とで切り替え可能な構成を採用しても良い。また、回動式に限らず、スライド式のクランパを用いることもできる。
【0054】
その他、板状部22
0上には、各種計測部材が設けられている。例えば、板状部22
0の開口22aの±Y側には、X軸方向を長手方向とする矩形状の開口がそれぞれ形成されている。これらの開口を上方から塞ぐ状態で、空間像計測用基準マークが形成されたレチクルフィデューシャルマーク板(以下、「レチクルマーク板」と略述する)LF1,LF2が、レチクルRと並ぶように配置され、板状部22
0に固定されている。このレチクルマーク板LF1,LF2は、レチクルRと同材質のガラス素材、例えば合成石英やホタル石、フッ化リチウムその他のフッ化物結晶などから構成されている。レチクルマーク板の詳細については、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書等に開示されている。
【0055】
本実施形態では、
図4(B)から分かるように、レチクルRは、そのパターン面(下面)がレチクルステージ本体22(レチクルステージRST)の中立面(レチクルステージ本体22の重心を通るXY平面に平行な面)に略一致する状態で支持される。
【0056】
エアスライダ部22
1,22
2は、
図4(A)にエアスライダ部22
1について、その上面の一部を破断して示されるように、その内部に強度を維持するための格子状のリブが設けられ、この格子状のリブによってその内部空間が区画された中空部材から成る。換言すれば、エアスライダ部22
1,22
2は、軽量化を図るべく、リブ部のみが残るように肉抜きされた直方体状の部材から成る。
【0057】
エアスライダ部22
1,22
2の底面のX軸方向の外側半部、すなわち
図4(B)に示されるようにレチクルステージ定盤RBSの前述の凸状部分RBSc、RBSbに対向する部分には、給気溝と該給気溝のX軸方向両側の一対の排気溝(いずれも不図示)とが、Y軸方向の全長に渡って形成されている。給気溝は、Y軸方向に延びる幹溝と、該幹溝のX軸方向両側に連通状態とされ、かつY軸方向に所定間隔で形成されたT字状の複数の表面絞り溝と、を有している。給気溝と一対の排気溝とのそれぞれの少なくとも一部に対向してレチクルステージ定盤RBSには、凸状部分RBSc、RBSbの上面に、給気口と一対の排気口とがそれぞれ形成されている。このように、本実施形態では、いわゆる定盤給気タイプの差動排気型気体静圧軸受が用いられている。定盤給気タイプの差動排気型気体静圧軸受の詳細は、例えば米国特許第7,489,389号明細書などに詳細に開示されている。
【0058】
本実施形態では、給気口を介して供給され表面絞り溝から凸状部分RBSc、RBSbの上面に噴き付けられる加圧気体の静圧と、レチクルステージRST全体の自重とのバランスにより、凸状部分RBSc、RBSbの上に数ミクロン程度のクリアランス(間隔/ギャップ)を介して、レチクルステージRSTが非接触で浮上支持される。ここで、加圧気体としては、クリーンドライエア(CDA)、窒素、又はヘリウムなどの希ガスなどが用いられる。
【0059】
一対の可動子30A、30Bのそれぞれは、
図3、
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、エアスライダ部22
1の+X側の面、エアスライダ部22
2の−X側の面に固定されている。
【0060】
一方の可動子30Aは、Z軸方向に所定間隔で相互に平行に配置されたY軸方向を長手方向とする3つの可動子部24,25,26を含む。ここで、3つの可動子部24,25,26はレチクルステージ本体22の中立面(重心を通り、XY平面に平行な面)を基準として上下対称に配置されており、中央に位置する可動子部の中立面が、レチクルステージ本体22の中立面に一致している。
【0061】
可動子部24,25,26それぞれには、
図4(B)に示されるように、Y軸方向に沿って所定間隔で配列された複数の永久磁石を有する磁石ユニットが内蔵されている。以下では、これらの磁石ユニットを、対応する可動子部と同一の符号を用いて磁石ユニット24,25,26とも表記する。磁石ユニット24,25,26のそれぞれでは、Y軸方向に関して隣接する永久磁石同士の極性が、交互に逆極性となるように、複数の永久磁石が配置されている。また、磁石ユニット24,25,26の内部に配置され、上下方向(Z軸方向)に関して隣接する永久磁石同士は、互いに同一極性とされている。
【0062】
磁石ユニット24,25,26のうち、磁石ユニット25には、
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、Y軸方向の中央部に突出部25
0が設けられている。突出部25
0内にY軸方向を長手方向とする1つの永久磁石25Xが収容されている。
【0063】
他方の可動子30Bは、3つの可動子部27,28,29を含み、可動子30Aと左右対称ではあるが同様に構成されている。従って、可動子部27,28,29それぞれには、Y軸方向に沿って配列された複数の永久磁石を有する磁石ユニットが内蔵され(
図4(B)参照)。可動子部27,28,29、すなわち磁石ユニット27,28,29のうち、磁石ユニット28には、Y軸方向の中央部に突出部28
0が設けられ、該突出部28
0内にY軸方向を長手方向とする1つの永久磁石28Xが収容されている(
図4(A)及び
図4(B)参照)。
【0064】
可動子31A,31Bのそれぞれは、
図2に示されるように、固定子40A、40Bに係合する。
【0065】
一方の固定子40Aは、
図4(B)に示されるように、Z軸方向に所定間隔隔てて平行に配置された一対の固定子部36,37を含む。固定子部36,37は、
図2等に示されるように、その長手方向(Y軸方向)両端部がカウンタマス18の+Y側の内面及び−Y側の内面に固定支持されるとともに、その長手方向に直交する方向(X軸方向)の一端部(+X端部)がカウンタマス18のX軸方向の一側の内面(−X側の内面)に固定支持されている。
【0066】
固定子部36、37の内部には、
図4(B)に示されるように、それぞれ、Y軸方向に沿って配列された複数の電機子コイルを含む電機子ユニットが内蔵されている。以下では、これらの電機子ユニットを、対応する固定子部と同一の符号を用いて電機子ユニット36,37とも表記する。
【0067】
ここで、磁石ユニット24,25,26のそれぞれの内部で、Y軸方向に関して隣接する2つの永久磁石(便宜上、第1及び第2磁石と呼ぶ)に1つの電機子コイル(第1コイルと呼ぶ)のY軸方向の両辺部(コイル部)が同時に対向したとき、その第1コイルにY軸方向の一側と他側で隣接する一対の電機子コイル(便宜上、第2、第3コイルと呼ぶ)は、第1及び第2磁石にY軸方向の一側と他側で隣接する永久磁石(第3、第4磁石と呼ぶ)にその中央の空間(又はコア)がそれぞれ対向するように、固定子部36、37の内部の電機子コイルのY軸方向の間隔が、定められている。
【0068】
また、固定子部36、37の内部には、
図4(B)に示されるように、+X側の端部にY軸方向に細長い長方形の単一のコイル36X、37Xが収容されている。
【0069】
他方の固定子40Bは、
図4(B)に示されるように、一対の固定子部38,39(電機子ユニット38,39とも表記する)を含み、固定子40Aと左右対称ではあるが、同様に構成されている。固定子部38,39の内部には、
図4(B)に示されるように、−X側の端部にY軸方向に細長い長方形の単一のコイル38X、39Xが収容されている。
【0070】
本実施形態では、4つの電機子ユニット36〜39と6つの磁石ユニット24〜29とから、4組のYリニアモータが構成される。より詳細には、磁石ユニット24,25とこれらに上面及び下面が対向する電機子ユニット36とにより、ムービングマグネット型のYリニアモータ(以下では、その固定子部を構成する電機子ユニットと同一の符号を用いてYリニアモータ36と表記する)が構成される。同様に、磁石ユニット25,26とこれらに上面及び下面が対向する電機子ユニット37とにより、ムービングマグネット型のYリニアモータ(以下では、その固定子部を構成する電機子ユニットと同一の符号を用いてYリニアモータ37と表記する)が構成される。すなわち、磁石ユニット(可動子部)25は、上下一組のYリニアモータ36,37によって共用される。
【0071】
同様に、磁石ユニット27,28とこれらに上面及び下面が対向する電機子ユニット38とにより、ムービングマグネット型のYリニアモータ(以下では、その固定子部を構成する電機子ユニットと同一の符号を用いてYリニアモータ38と表記する)が構成される。同様に、磁石ユニット28,29とこれらに上面及び下面が対向する電機子ユニット39とにより、ムービングマグネット型のYリニアモータ(以下では、その固定子部を構成する電機子ユニットと同一の符号を用いてYリニアモータ39と表記する)が構成される。すなわち、磁石ユニット(可動子部)28は、上下一組のYリニアモータ38,39によって共用される。
【0072】
そして、これら二組、合計4つのYリニアモータ36,37,38,39のそれぞれによって、レチクルステージRSTを、Y軸方向及びθz方向に駆動する第1駆動系340a(
図6参照)が構成される。
【0073】
第1駆動系340aでは、固定子40A,40Bの電機子ユニット36〜39に属する複数の電機子コイルのうち、対応する磁石ユニット(可動子部)の永久磁石に対向する電機子コイル(1つおきの電機子コイル)に同等(大きさ、向きが同じ)電流を供給することにより、可動子部24〜29のそれぞれに同等のY軸方向の駆動力が作用する。これにより、レチクルステージRSTをY軸方向に並進駆動することができる。ここで、可動子部24〜29がレチクルステージRSTの中立面を基準として対称に配置されているため、レチクルステージRSTにピッチングモーメントが殆ど作用しない。また、この場合において、電機子ユニット36,37に属する電機子コイルと電機子ユニット38,39に属する電機子コイルとに供給する電流の大きさを互いに異ならせることにより、レチクルステージRSTをZ軸回りの回転方向(θz方向)に微小駆動することもできる。
【0074】
さらに、電機子ユニット36、37に属する複数の電機子コイルのうち、中央の空間(又はコア部)が対応する磁石ユニット(可動子部)の永久磁石に対向する電機子コイルを対象とし、その対象となる電機子コイルに対し、電機子ユニット36側と電機子ユニット37側とで逆向きの電流を供給することで、可動子30Aを固定子40Aに対して、+Z方向、又は−Z方向に微小駆動することもできる。+Z方向、−Z方向は、供給される電流の向きに応じて定まる。同様に、電機子ユニット38、39に属する複数の電機子コイルのうち、中央の空間(又はコア部)が対応する磁石ユニット(可動子部)の永久磁石に対向する電機子コイルを対象とし、その対象となる電機子コイルに対し、電機子ユニット38側と電機子ユニット39側とで逆向きの電流を供給することで、可動子30Bを固定子40Bに対して、+Z方向、又は−Z方向に微小駆動することもできる。従って、第1駆動系340aでは、レチクルステージRSTをZ軸方向、θy方向(Y軸回りの回転方向)に微小駆動することもできる。また、例えば、可動子30Aを固定子40Aに対して、+Z方向、又は−Z方向に微小駆動する際に、同一の電機子ユニットに属する電機子コイルに供給する電流の大きさ(又は向き)を、電機子コイルのY軸方向の位置に応じて異ならせることで、可動子30Aをθx方向(X軸回りの回転方向)に微小駆動することもできる。同様に、可動子30Bをθx方向に微少駆動することもできる。
【0075】
また、コイル36X,37X、及びこれらに上下の磁極面が対向する永久磁石25Xを含み、Xボイスコイルモータ(以下では、その可動子部を構成する永久磁石と同一の符号を用いてXボイスコイルモータ25Xと表記する)が構成される。同様に、コイル38X,39X、及びこれらに上下の磁極面が対向する永久磁石28Xを含み、Xボイスコイルモータ(以下では、その可動子部を構成する永久磁石と同一の符号を用いてXボイスコイルモータ28Xと表記する)が構成される。
【0076】
そして、これらのXボイスコイルモータ25X,28Xによって、レチクルステージRSTを、X軸方向に駆動する第2駆動系340b(
図6参照)が構成される。
【0077】
上述のようにして構成された第2駆動系340bでは、可動子部(永久磁石)25X、28XはレチクルステージRSTの中立面上に配置されているため、レチクルステージRSTにローリングモーメントが殆ど作用しない。
【0078】
本実施形態では、レチクルステージ駆動系340が、第1駆動系340aと第2駆動系340bとを含んで構成されている。
【0079】
エアスライダ部22
1,22
2の底面には、
図4(B)に示されるように、それぞれ、グレーティングRG1,RG2がY軸方向のほぼ全長に渡って延接されている(
図5参照)。グレーティングRG1,RG2のそれぞれの表面には、X軸方向及びY軸方向を周期方向とする反射型の2次元回折格子が形成されている。
【0080】
なお、本実施形態では、レチクルステージは上述の構成に限られることはなく、例えば、レチクルステージ定盤RBSを天板部32a上に(防振ユニットを介して)固定にし、その上を移動する粗微動ステージによってレチクルステージを構成しても良い。この場合の粗微動ステージとしては、X軸、Y軸、及びθzの各方向に移動する粗動ステージと、該粗動ステージ上に配置され、レチクルRを保持して6自由度方向に微動可能な微動ステージによって構成しても良い。この場合、レチクルステージ定盤RBSの位置計測が不要になる。
【0081】
投影光学系PLの最上面には、
図5に示されるような中央に矩形の開口PLaが形成された平面視六角形の上面部材60が、固定されている(
図4(B)参照)。開口PLaは、レチクルRのパターン面を透過し、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaを透過した照明光ILの光路(通路)となる。上面部材60の上面のX軸方向の両端部(開口PLaの両側)に各3つのエンコーダヘッド72,73,74、及び77,78,79が固定されている。エンコーダヘッド72,77は開口PLaの+Y側の角部近傍に、エンコーダヘッド74,79は−Y側の角部近傍に、エンコーダヘッド73,78は開口PLaの中心(すなわち投影光学系PLの光軸)と同じY位置に、配置されている。
【0082】
各3つのエンコーダヘッド72,73,74、及び77,78,79は、それぞれ、前述したグレーティングRG1,RG2に対向している。
【0083】
本実施形態では、エンコーダヘッド72〜74,77〜79として、グレーティング(計測面)に平行な一方向(グレーティングの一周期方向)と、計測面に垂直な方向との二方向を計測方向とする2次元エンコーダヘッドが採用されている。かかるヘッドの一例は、例えば米国特許第7,561,280号明細書などに開示されている。
【0084】
ここで、4つのエンコーダヘッド72,74,77,79はY軸方向とZ軸方向とを計測方向とし、2つのエンコーダヘッド73,78はX軸方向とZ軸方向とを計測方向とする。
【0085】
エンコーダヘッド72,73,74は、
図4(B)に示されるように、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaを介して、レチクルステージRST(エアスライダ部22
1)の底面のグレーティングRG1に計測ビームを下方から照射し、グレーティングRG1にて発生する複数の回折光を受光して、それぞれの計測方向に関するグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置情報を求める(計測する)。
【0086】
ここで、グレーティングRG1,RG2はX軸方向とY軸方向との両方向を周期方向とするため、コヒーレントな計測ビームを照射する(入射させる)ことにより、X軸方向とY軸方向との両方向に複数の角度(回折角)で回折光が発生する。そこで、エンコーダヘッド72,74は、Y軸方向に発生する複数の回折光を受光し、それぞれの計測ビームの照射点を計測点として、Y軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置情報を求める(計測する)。
【0087】
エンコーダヘッド73は、X軸方向に発生する複数の回折光を受光し、計測ビームの照射点を計測点として、X軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置情報を求める(計測する)。
【0088】
エンコーダヘッド72,73,74によって、レチクルステージRSTのX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に関する位置情報を求める(計測する)、計測自由度が6自由度の第1エンコーダシステム71(
図6参照)が構成されている。第1エンコーダシステム71(エンコーダヘッド72,73,74)の計測情報は、主制御装置50(
図6参照)に送られている。
【0089】
エンコーダヘッド77,78,79は、上述のエンコーダヘッド72,73,74と同様に、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaを介して、レチクルステージRST(エアスライダ部22
2)の底面のグレーティングRG2に計測ビームを下方から照射し、グレーティングRG2にて発生する複数の回折光を受光して、それぞれの計測方向に関するグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置情報を求める(計測する)。
【0090】
ここで、エンコーダヘッド77,79は、Y軸方向に発生する複数の回折光を受光し、それぞれの計測ビームの照射点を計測点として、Y軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置情報を求める(計測する)。エンコーダヘッド78は、X軸方向に発生する複数の回折光を受光し、計測ビームの照射点を計測点として、X軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置情報を求める(計測する)。
【0091】
エンコーダヘッド77,78,79によって、レチクルステージRSTのX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に関する位置情報を求める(計測する)、計測自由度が6自由度の第2エンコーダシステム76(
図6参照)が構成されている。
【0092】
第2エンコーダシステム76(エンコーダヘッド77,78,79)の計測情報は、主制御装置50(
図6参照)に送られる。
【0093】
主制御装置50は、第1及び第2エンコーダシステム71,76(エンコーダヘッド72〜74,77〜79)の計測情報に基づいて、投影光学系PLの中心(光軸)を基準とするレチクルステージRSTの6自由度方向、すなわち、X軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向,θy方向,及びθz方向に関する位置情報を求める(算出する)。第1及び第2エンコーダシステム71,76を含んで、レチクルエンコーダシステム70が構成されている(
図6参照)。
【0094】
ここで、本実施形態のレチクルエンコーダシステム70は、6つの2次元エンコーダヘッドを備えているため、12個の計測情報が得られる。そこで、主制御装置50は、例えば、エンコーダヘッド72,74で計測されたY軸方向の位置の計測値の平均よりレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1のY位置(Y
1)を求め、エンコーダヘッド73で計測されたX軸方向の位置の計測値からレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1のX位置(X
1)を求める。同様に、主制御装置50は、エンコーダヘッド77,79で計測されたY軸方向の位置の計測値の平均よりレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2のY位置(Y
2)を求め、エンコーダヘッド78で計測されたX軸方向の位置の計測値からレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2のX位置(X
2)を求める。さらに、主制御装置50は、Y
1とY
2の平均及び差より、それぞれ、レチクルステージRSTのY位置及びθz位置(θz方向の回転量、すなわちヨーイング量)を求め、X
1とX
2の平均よりレチクルステージRSTのX位置を求める。
【0095】
また、主制御装置50は、エンコーダヘッド73,78で計測されたZ軸方向の位置の計測値の平均及び差より、それぞれレチクルステージRSTのZ位置及びθy位置(θy方向の回転量、すなわちローリング量)を求める。また、エンコーダヘッド72,74と77,79でそれぞれ計測されたZ軸方向の位置の計測値の差よりエアスライダ部22
1と22
2のθx位置(θx
1、θx
2)を求め、θx
1とθx
2の平均よりレチクルステージRSTのθx位置(θx方向の回転量、すなわちピッチング量)を求める。ここで、レチクルステージRSTのX、Y、Z、θx位置は、エンコーダシステム70で計測された上述の各方向の2つの計測値を平均して求めることなく、いずれかの計測値をそのまま用いても良い。
【0096】
主制御装置50は、上述のようにして求めたレチクルステージRSTの6自由度方向についての位置情報に基づいて、前述のレチクルステージ駆動系340を介して、レチクルステージRSTを駆動(制御)する。
【0097】
図6には、本実施形態の露光装置100の制御系を中心的に構成する主制御装置50の入出力関係が、ブロック図にて示されている。主制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する。
【0098】
次に、上述のようにして構成された露光装置100による露光動作の流れについて簡単に説明する。
【0099】
まず、主制御装置50の管理の下、不図示のレチクルローダによって、レチクルステージRST上へのレチクルRのロード、及び不図示のウエハローダによって、ウエハステージWST上へのウエハWのロードが行なわれ、また、アライメント系ALG(
図6参照)及びレチクルアライメント系(不図示)等を用いて、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに開示される所定の手順に従ってレチクルアライメント、アライメント系ALGのベースライン計測等の準備作業が行なわれる。なお、レチクルアライメント系に代えて、ウエハステージWST上に設けられた不図示の空間像計測器を用いてレチクルアライメントを行っても良い。
【0100】
その後、主制御装置50により、アライメント系ALGを用いて例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示されているEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントが実行され、ウエハアライメントの終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式と同様であるのでその説明は省略するものとする。
【0101】
この露光動作にあたって、主制御装置50の管理の下、ウエハステージWSTとレチクルステージRSTとがY軸方向に相対駆動される。その際、主制御装置50は、レチクルエンコーダシステム70の計測結果に基づいて、レチクルステージ駆動系340(Yリニアモータ36,37,38,39及びXボイスコイルモータ25X,28X)を制御し、レチクルステージRSTを駆動する。
【0102】
また、主制御装置50は、レチクルステージ定盤RBSが所定の状態を維持するように、定盤干渉計240の計測結果に基づいて上述したXボイスコイルモータ66X,Yボイスコイルモータ66Yを制御するとともに、Zエンコーダ81の計測結果に基づいてZボイスコイルモータ66Zを制御してレチクルステージ定盤RBSのZ方向及びθx、θy方向に関する位置を調整することにより、間接的にレチクルRのZ方向及びθx、θy方向に関する位置を調整する。
【0103】
以上説明したように、本実施形態の露光装置100が備えるレチクルステージ装置20によると、カウンタマス18に固定された固定子40Aと対応する可動子30Aでは、3つの磁石ユニット(可動子部)のうち、Z軸方向に関して中央に位置する磁石ユニット(可動子部)25及びその+Z側に位置する磁石ユニット(可動子部)24と、電機子ユニット(固定子部)36とにより、レチクルステージRSTをY軸方向に駆動するYリニアモータ36が構成される。また、固定子40Aと対応する可動子30Aでは、磁石ユニット(可動子部)25及びその−Z側に位置する磁石ユニット(可動子部)26と、電機子ユニット(固定子部)37とにより、レチクルステージRSTをY軸方向に駆動するYリニアモータ37が構成される。
【0104】
また、カウンタマス18に固定された固定子40Bと対応する可動子30Bでは、3つの磁石ユニット(可動子部)のうち、Z軸方向に関して中央に位置する磁石ユニット(可動子部)28及びその+Z側に位置する磁石ユニット(可動子部)27と、電機子ユニット(固定子部)38とにより、レチクルステージRSTをY軸方向に駆動するYリニアモータ38が構成される。また、固定子40Bと対応する可動子30Bでは、磁石ユニット(可動子部)28及びその−Z側に位置する磁石ユニット(可動子部)29と、電機子ユニット(固定子部)39とにより、レチクルステージRSTをY軸方向に駆動するYリニアモータ39が構成される。従って、これら2対のYリニアモータ36,37、38,39により高出力でレチクルステージRSTをY軸に平行な方向に駆動することができる。
【0105】
また、レチクルステージ装置20によると、磁石ユニット(可動子部)25をYリニアモータ36,37によって共用し、磁石ユニット(可動子部)28をYリニアモータ38,39によって共用するので、各対のYリニアモータ36,37、Yリニアモータ38,39が全く別々である場合に比べて、レチクルステージ装置20の可動部を軽量化することが可能になる。これにより、レチクルステージRST及びこれに保持されたレチクルRの更なる高加速度化及び位置制御性の向上を図ることが可能になる。
【0106】
また、本実施形態のレチクルステージ装置20によると、投影光学系PLに設置されたエンコーダヘッド72〜74,77〜79を用いて、レチクルステージRST(エアスライダ部22
1,22
2)の底面に設けられたグレーティングRG1,RG2にその直下から計測ビームを照射して、レチクルステージRSTの位置情報を求める(計測する)レチクルエンコーダシステム70が採用されている。この構成の位置計測システムを採用することにより、高精度なレチクルステージRSTの位置計測が可能となる。これに加え、レチクルステージRSTに干渉計用の反射面を設ける必要がなくなるので、中立面の高さの位置に、前述の磁石ユニット(可動子部)25、28を配置することが可能になり、結果的に、上述の構成のレチクルステージ駆動系340を採用することが可能となる。
【0107】
また、本実施形態の露光装置100によると、レチクルRをレチクルステージ装置20により高精度に駆動することが可能になるので、走査露光により、高精度にレチクルRに形成されたパターンをウエハW上に精度良く転写することが可能になる。
【0108】
なお、上記実施形態では、可動子30Aと固定子40Aとを含むレチクルステージRSTの+X側の駆動系と、可動子30Bと固定子40Bとを含むレチクルステージRSTの−X側の駆動系との両者で、Y軸方向に関して対称であるものの同一の構成を採用したが、これに限らず、少なくとも一方の駆動系でZ軸方向の中央に位置する可動子部(上記実施形態では磁石ユニット)を上下一対の固定子部(上記実施形態で電機子ユニット)が共用する構成(以下、本発明に係る可動子部共用の構成と呼ぶ)を採用しても良い。一方の駆動系でのみ、本発明に係る可動子部共用の構成を採用する場合には、移動体の第2軸に平行な方向に関する他方の駆動系側の端面に反射面を設けて、干渉計により移動体の第2軸方向に関する位置を計測することとしても良い。
【0109】
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態について、
図7〜
図12に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略若しくは省略する。
【0110】
図7には、本第2の実施形態の露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置50の入出力関係が、ブロック図にて示されている。
図7と
図6とを比較すると明らかなように、本第2の実施形態の露光装置では、主制御装置50に、前述の第1の実施形態と同様の構成部分が接続されるとともに、補助エンコーダシステム87、温調装置コントローラ280、駆動部46、X線イオナイザ42が、さらに接続されている。以下では、これら補助エンコーダシステム87、温調装置コントローラ280、駆動部46、X線イオナイザ42を含み、前述の第1の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0111】
本第2の実施形態の露光装置では、
図9(B)に示されるように、照明ユニットIOPの下端(射出端)に位置する光透過窓部材(例えば、ガラス板又はレンズなど)を照明ユニットIOPのハウジングに固定するための環状の固定部材90の下方に、パージカバー80が設けられている。パージカバー80は、平面視でX軸方向に細長い矩形の筒状部82
1と、筒状部82
1の上端部に設けられたフランジ部82
2と、筒状部82
1の下端から+Y方向及び−Y方向にそれぞれ延設された一対のプレート部82
3、82
4とを有している。
【0112】
フランジ部82
2は、その上面が、固定部材90の下面に固定されている。筒状部82
1は、照明ユニットIOPからの射出される照明光ILの照射領域を取り囲んでいる。筒状部82
1のX軸方向の長さは、レチクルステージRSTのエアスライダ部22
1,22
2の外縁間のX軸方向に関する距離より幾分長く設定されている。
【0113】
プレート部82
3は、筒状部82
1の+Y側の下端から+Y側に向かって延びるXY平面に平行なプレート状の部分である。このプレート部82
3の下面に、薄板状の近接冷却デバイス110Aが固定されている。近接冷却デバイス110Aの下面は、レチクルステージRSTの上端面より僅かに高い位置に位置している。
【0114】
プレート部82
4は、筒状部82
1の−Y側の下端から−Y側に向かって延びるXY平面に平行なプレート状の部分である。このプレート部82
4の下面に、薄板状の近接冷却デバイス110Bが固定されている。近接冷却デバイス110Bの下面は、近接冷却デバイス110Aの下面と同一のXY平面上に位置している。
【0115】
また、レチクルステージRSTの+Y側の端部には、その上端と先端とを覆う側面視L字状の端部カバー23
1が取り付けられている。同様に、レチクルステージRSTの−Y側の端部には、その上端と先端とを覆う側面視L字状の端部カバー23
2が取り付けられている。
【0116】
この場合、端部カバー23
1は、エアスライダ部22
1,22
2の+Y側の端面及び上面の+Y端部を覆い、端部カバー23
2は、エアスライダ部22
1,22
2の−Y側の端面及び上面の−Y端部を覆う。このため、レチクルRの載置された空間は、前後左右の四方を、端部カバー23
1、23
2及びエアスライダ部22
1,22
2によって囲まれている。
【0117】
近接冷却デバイス110Aの下面と端部カバー23
1との間、及び近接冷却デバイス110Bの下面と端部カバー23
2との間には、それぞれ所定のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)、例えば数μm〜数mm(最大でも3mm)のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)が形成されている。
【0118】
近接冷却デバイス110A、110BのX軸方向の長さは、筒状部82
1のX軸方向の長さと同程度又は僅かに短く設定されている。また、近接冷却デバイス110Aは、レチクルステージRSTの走査露光時のY軸方向に関する移動範囲内では、その位置にかかわらず、その下面が端部カバー23
1に対して少なくとも一部対向し得るように、そのY軸方向の長さ及び設置位置が設定されている。同様に、近接冷却デバイス110Bは、レチクルステージRSTの走査露光時のY軸方向に関する移動範囲内では、その位置にかかわらず、その下面が端部カバー23
2に対して少なくとも一部対向し得るように、そのY軸方向の長さ及び設置位置が設定されている。
【0119】
以上のようにして、本実施形態では、パージカバー80と、近接冷却デバイス110A,110Bと、端部カバー23
1、23
2と、エアスライダ部22
1,22
2と、レチクルRとによって、ほぼ気密状態の空間181が形成されている。この空間181内に、パージガスとして、例えば湿度が1%以下のクリーンドライエア(CDA)が、不図示の供給口から供給され、不図示の排気口を介して外部に排気されている。すなわち、空間181の内部ガス(空気)が、CDAでパージされている。CDAは、レチクル(マスク)のヘイズ生成反応加速物質である水蒸気を含む割合が、通常の空気に比べて極端に小さい。空間181は、ほぼ気密状態のパージ室となっている。以下では、この空間を第1のパージ空間181と呼ぶ。ここで、第1のパージ空間181は、その内部の湿度の制御精度を所定レベルで維持できる状態、例えば湿度は1%のCDAでその内部をパージした場合に、その湿度を2%程度には維持できる程度の気密状態となっている。また、第1のパージ空間181は、水蒸気の存在に起因する該空間181に接する照明ユニットのレンズ等の光学部材の曇の発生を抑制できる、例えば露光に支障を与えない程度に抑制できる程度の気密状態となっている。
【0120】
近接冷却デバイス110A,110Bは、不図示の冷却配管の内部を通る冷媒との熱交換によって冷却されるようになっている。この近接冷却デバイス110A,110Bの温度は、不図示の温度センサでモニタされ、その温度信号は温調装置コントローラ280(
図7参照)に伝えられ、後述するようにして目標値に制御されるようになっている。近接冷却デバイス110A,110Bの温度制御は、前記冷媒の温度を変えることでも達成できるし、近接冷却デバイス110A,110Bと冷媒の間に、不図示の半導体ペルチェ素子を設置し、これに流す電流を制御することによって、能動的に伝熱量を制御することによっても達成可能である。後者の場合には、近接冷却デバイス110A,110Bの温度制御の応答が早くなるという利点がある。本第2の実施形態では、近接冷却デバイス110A,110Bは、レチクルR及びレチクルステージRSTに非接触で、それらの冷却を行う。すなわち、近接冷却デバイス110A,110BによりレチクルR(及びレチクルステージRST)が輻射伝熱により冷却される。
【0121】
また、レチクルステージ定盤RBSと投影光学系PLとの間は、
図8及び
図10に示されるように、例えば非接触シールの一種であるラビリンスシールLBを介してシールされている。なお、
図8では、レチクルステージRSTを駆動するリニアモータ(30A,40A、)及び(40A,40B)、並びにカウンタマス18等の図示は省略されている(
図5参照)。
【0122】
図8に示されるラビリンスシールLBは、開口RBSaの周囲を取り囲む状態で、レチクルステージ定盤RBSと投影光学系PLとの間に取り付けられている。この場合、ラビリンスシールLBは、レチクルステージ定盤RBSの下面に開口RBSaの周囲を取り囲む状態でその上端が固定された環状の上部材と、該上部材に非接触で係合し、上面部材60を取り囲む状態でその下面が投影光学系PLの上面に固定された下部材とを有している。上部材は、−Z方向から見て同心でかつ多重の突起部を有し、下部材は、上部材より僅かに外側に位置し、上部材に非接触で係合する+Z方向から見て同心でかつ多重の突起部を有する(
図10参照)。ただし、2つの突起部は、レチクルステージ定盤RBSが微小駆動されても、互いに接触することなく、常時非接触で係合する。
【0123】
このため、本第2の実施形態の露光装置では、
図8、
図9(B)に示されるように、レチクルR及びレチクルステージ本体22と、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaの内壁面と、投影光学系PLの上面と、ラビリンスシールLBとで区画されたほぼ気密状態の空間182が形成されている。この空間182の内部にレチクルステージ定盤RBSの開口RBSaの内壁面の一部に設けられた吹き出し口192(
図8参照)からCDAが供給され、不図示の排気口を介して外部に排気されている。すなわち、空間182の内部ガス(空気)が、CDAでパージされている。空間182は、ほぼ気密状態のパージ室となっている。以下では、この空間を第2のパージ空間182と呼ぶ。第2のパージ空間182も、前述した第1のパージ空間181と同程度の気密状態に設定されている。
【0124】
さらに、本第2の実施形態では、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSa内に位置する第2エンコーダシステム76(エンコーダヘッド77,78,79)から+Y方向に所定距離離れたレチクルステージ定盤RBS上面には、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、所定深さの長方形の凹部RBSdが、凸状部分RBSb、RBScに隣接して形成されている。凹部RBSd内部の+X側の端部には、前述のエンコーダヘッド77,78,79と同じY軸方向の直線上に一対のエンコーダヘッド83,84が配置されている。また、凹部RBSd内部の−X側の端部には、一対のエンコーダヘッド83,84に対称な配置で、一対のエンコーダヘッド85,86が配置されている。エンコーダヘッド85,86は、前述のエンコーダヘッド72,73,74と同じY軸方向の直線上に配置されている。
【0125】
エンコーダヘッド83,84,85,86として、前述のエンコーダヘッド72〜74,77〜79と同様の2次元エンコーダヘッドが用いられている。ここで、2つのエンコーダヘッド83,85はY軸方向とZ軸方向とを計測方向とし、2つのエンコーダヘッド84,86はX軸方向とZ軸方向とを計測方向とする。
【0126】
エンコーダヘッド85,86は、
図12に示されるように、レチクルステージRST(エアスライダ部22
2)の底面のグレーティングRG2に計測ビームを下方から照射し、グレーティングRG2にて発生する複数の回折光を受光して、それぞれの計測方向に関するグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置情報を求める(計測する)。
【0127】
エンコーダヘッド83,84は、上述のエンコーダヘッド85,86と同様に、レチクルステージRST(エアスライダ部22
1)の底面のグレーティングRG1に計測ビームを下方から照射し、グレーティングRG1にて発生する複数の回折光を受光して、それぞれの計測方向に関するグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置情報を求める(計測する)。エンコーダヘッド83,84,85,86によって、レチクルステージRSTが、第1エンコーダシステム71、第2エンコーダシステム76の少なくとも一部のエンコーダヘッドの計測範囲から+Y方向に外れたときのレチクルステージRSTの位置の計測を行う補助エンコーダシステム87が構成されている。補助エンコーダシステム87の各エンコーダヘッドの計測情報は、主制御装置50(
図7参照)に送られる。
【0128】
また、凹部RBSd内部の中央部には、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、平面視でX軸方向に細長い長方形状のX線イオナイザ42が、そのヘッドを上方に向けて固定されている。このX線イオナイザ42としては、一例としてイオン生成方式(光電離:Photoionization)を利用した光イオン化システムが用いられている。この光イオン化システムは、イオン生成バランスが均等であるため、逆帯電を起こすことがなく、帯電体近傍の分子をイオン化させて除電するため、除電効率が極めて高い。また、塵、電磁ノイズ、オゾン等が発生しない。X線イオナイザ42は、オン・オフを含め、主制御装置50によって制御される(
図7参照)。
【0129】
さらに、凹部RBSd内部には、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、X線イオナイザ42を挟むY軸方向の両端部に、各一対の上下動部材44が設けられている。各上下動部材44は、駆動部46によってZ軸方向に駆動される。これら4つの上下動部材44は、レチクルステージRSTが真上に来たとき、レチクルステージ本体22の板状部22
0に形成された開口22aを介して、その上部に出没可能となるような位置関係で、配置されている。また、4つの上下動部材44は、レチクルステージ本体22に載置されたレチクルRのパターン領域のY軸方向の両外側に対向する位置にそれぞれ配置されている。従って、レチクルRを保持したレチクルステージRSTが4つの上下動部材44の真上に来たとき、前述のバキュームチャック95,96によるレチクルRの吸着が解除され、クランパ91,92によるレチクルRの固定が解除された状態で、4つの上下動部材44が上昇駆動されることで、そのレチクルRが、レチクルステージ本体22の上方に持ち上げられる。4つの上下動部材44の駆動部46は、主制御装置50によって制御される(
図7参照)。
【0130】
さらに、本第2の実施形態では、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、平面視U字状の搬送アーム140が、レチクルRの搬送経路内に設けられている。この搬送アーム140は、不図示の駆動系によりY軸方向に往復駆動される。この搬送アーム140と、4つの上下動部材44との間で、後述するようにして、レチクルRの受け渡しが行われる。搬送アーム140の駆動系(不図示)も、主制御装置50によって制御される。
【0131】
本実施形態では、搬送アーム140の移動経路を含むレチクルRの搬送路の少なくとも下流側(照明ユニットIOPに近い側)の部分は、
図11に示されるようにカバー150で覆われ、その内部がクリーンドライエア(CDA)でパージされるパージ空間183とされている。
【0132】
本第2の実施形態の露光装置は、その他の部分の構成は、前述した第1の実施形態の露光装置100と同様になっている。
【0133】
次に、上述のようにして構成された本第2の実施形態の露光装置による動作の流れについて簡単に説明する。
【0134】
まず、主制御装置50により、次のようにして、レチクルステージRST上へのレチクルRのロードが行われる。
【0135】
図11に示されるように、主制御装置50により搬送アーム140の駆動系(不図示)が制御され、レチクルRを保持した搬送アーム140が、パージ空間183内を経由して、レチクル交換位置に待機しているレチクルステージRSTの上方に向かって−Y方向に進む。この移動中に搬送アーム140及びレチクルRの周囲の空気がCDAでパージされる。これにより、搬送中にレチクルRにヘイズが生じるのが効果的に抑制されている。
【0136】
上記の搬送アーム140の移動と並行して、主制御装置50により駆動部46を介して4つの上下動部材44が
図11に示される位置まで上昇駆動される。そして、レチクルRを保持した搬送アーム140が、レチクルステージ本体22の真上まで来ると、主制御装置50は、その位置で搬送アーム140を停止させるとともに、4つの上下動部材44をさらに上昇駆動する。この4つの上下動部材44の上昇の途中で、レチクルRは、搬送アーム140から4つの上下動部材44に渡され、4つの上下動部材44はさらに上昇して停止する。
【0137】
次に、主制御装置50は、搬送アーム140を、元の位置に戻すため+Y方向の駆動を開始する。そして、搬送アーム140が、レチクルステージRST上方から退避すると、主制御装置50は、4つの上下動部材44を下降駆動する。これにより、
図12に示されるように、4つの上下動部材44に支持されたレチクルRがレチクルステージRST(レチクルステージ本体22)にロードされる。そして、レチクルRがレチクルステージ本体22に載置されると同時又はその直前に、主制御装置50は、X線イオナイザ42を起動してレチクルRの除電、すなわちレチクルRが帯びた静電気の除去を開始する。
【0138】
ここで、本第2の実施形態では、搬送中のレチクルRのヘイズの発生を抑制するため、搬送路の空間をCDAでパージしているので、レチクルRの搬送アーム140から上下動部材44への受け渡しの際には、雰囲気の湿度が低く、剥離帯電による静電気が発生し易くなっている。このため、レチクルRの搬送アーム140から上下動部材44への受け渡しの直後にレチクルRの除電を行うことは、実に有益である。また、本第2の実施形態では、レチクルRのパターン面側からイオン生成方式にて除電が行われるので、効率的な除電が可能である。
【0139】
上述の除電と並行して、主制御装置50により、バキュームチャック95,96を用いたレチクルRの吸着、上下動部材44の下降駆動、エンコーダヘッド83〜86を用いたレチクルステージRSTの位置計測が行われる。
【0140】
そして、主制御装置50により、レチクルステージRSTが−Y方向に所定距離駆動され、レチクルエンコーダシステム70の一部のエンコーダヘッドと、エンコーダヘッド83〜86とを用いたレチクルステージRSTの位置計測が可能になると、エンコーダヘッド83〜86の計測値とレチクルエンコーダシステム70による計測値とのつなぎを行い、所定の位置で停止する。
【0141】
上記の一連のレチクルロード動作と並行して、不図示のウエハローダによって、ウエハステージWST上へのウエハWのロードが行なわれる。そして、主制御装置50により、前述の第1の実施形態と同様に、レチクルアライメント、アライメント系ALGのベースライン計測等の準備作業、EGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメント、及びステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。
【0142】
この露光動作にあたって、主制御装置50の管理の下、ウエハステージWSTとレチクルステージRSTとがY軸方向に相対駆動されるが、その際には、主制御装置50は、レチクルエンコーダシステム70の計測結果に基づいて、レチクルステージ駆動系340を制御し、レチクルステージRSTを駆動する。このとき、レチクルステージRSTが、Y軸方向に関して所定範囲内で往復移動するが、この移動によって、パージ空間182は勿論、パージ空間181においても、その気密状態が維持され、CDAパージが効果的に行われる。また、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作では、レチクルステージRSTがY軸方向に関して往復移動動作を繰り返すが、このとき、温調装置コントローラ280により、Y軸方向に離れて設けられた一対の近接冷却デバイス110A,110Bを介して、効率良く、レチクルR及びレチクルステージRSTが輻射伝熱により冷却される。
【0143】
主制御装置50は、前述したパワーモニタ(インテグレータセンサ)からの照度信号に基づいて露光時間比率(シャッタ開閉のデューティ比)を演算し、この演算結果と既知の照度と、レチクルRのパターン開口率、反射率等のデータに基づいて露光エネルギを算出し、この算出結果に基づいてレチクルRに与えられる熱量Qを予測する。そして、主制御装置50は、この熱量Qが、輻射冷却時にレチクルRから近接冷却デバイス110A,110Bに与えられる熱量qに一致するように、所定の数式を用いて近接冷却デバイス110A,110Bの温度目標値を決めて、温調装置コントローラ280に指令値を伝える。これにより、温調装置コントローラ280によって近接冷却デバイス110A,110Bの温度が制御され、レチクルRの温度が所定範囲になるように調整される。
【0144】
以上説明したように、本第2の実施形態の露光装置によると、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。これに加え、本第2の実施形態の露光装置によると、以下のような種々の効果を得ることができる。
【0145】
すなわち、本第2の実施形態の露光装置は、照明光ILの照射領域のY軸方向の一側(+Y側)に位置するレチクルRの搬送路上でレチクルステージ定盤RBS上に配置されたX線イオナイザ42を備えている。このため、X線イオナイザ42により、レチクルステージRST上に載置されたレチクルRが帯びた静電気が、レチクルの搬送路上で、換言すれば照明光ILの照射領域にレチクルRを保持したレチクルステージRSTが移動する前に、除去される。また、この場合、X線イオナイザ42は、レチクルステージ定盤RBS側(レチクルRのパターン面側から)からレチクルRが帯びた静電気を除去する。従って、スループットを低下させることなく、効率的なレチクルの除電が可能となる。
【0146】
また、本第2の実施形態の露光装置は、照明ユニットIOPとレチクルRとの間の照明光ILを遮らない領域に、レチクルステージRST及びレチクルRの+Z側(照明ユニットIOP側)の一面に所定のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)を介して対向して配置された、近接冷却デバイス110A,110Bを備えている。そして、照明ユニットIOPと投影光学系PLとの間の照明光ILの光路を含む空間181がパージガス、例えばCDAでパージされる第1のパージ空間とされるとともに、近接冷却デバイス110A,110Bが第1のパージ空間181を外気に対して隔離する隔壁を兼ねている。このため、近接冷却デバイス110A,110Bにより、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作中にレチクルステージRSTに保持されたレチクルRの温度制御(冷却)を行うことができる。特に、本実施形態では、照明領域に対してY軸方向の両側に配置された近接冷却デバイス110A,110Bを備えているので、レチクルRの温度分布をも制御する、例えばレチクルRの全面が均一な温度となるように制御することも可能になる。
【0147】
また、レチクルステージRST、より正確には端部カバー23
1,23
2と近接冷却デバイス110A,110Bとの間のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)を、ガスの流通をほぼ阻止するような微小な寸法に設定することにより、パージカバー80と、近接冷却デバイス110A,110Bと、レチクルステージRST及び/又はレチクルRとで囲まれるほぼ気密状態の前記第1のパージ空間181を、作り出すことができる。すなわち、レチクルRを保持するレチクルステージRSTを、大きな気密型の遮蔽容器で取り囲む必要が無くなる。また、上記のほぼ気密状態の空間が、パージガスでパージされる第1のパージ空間181とされているので、パージガスの特性に応じた種々のメリットが生じる。例えば、パージガスとして、CDAを用いる場合には、レチクルRのヘイズを効果的に防止できる。さらに、近接冷却デバイス110A,110Bが第1のパージ空間181を外気に対して隔離する隔壁部材の一部を兼ねているので、この点においても、パージが行われる空間を、装置を必要以上に大型化することなく確保することができる。
【0148】
本第2の実施形態の露光装置では、上述の如く、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作中にレチクルステージRSTに保持されたレチクルRの温度制御(冷却)を行うことができるので、スループットの低下を招くことなく、レチクルの熱膨張に起因するパターンの歪みの発生を抑制することができ、結果的に重ね合わせ精度の向上が期待される。また、近接冷却デバイス110A,110Bにより輻射伝熱を利用してレチクルRの冷却が行われるので、パーティクル(いわゆるゴミ)の巻き上げ、該パーティクルのレチクルに対する付着等の回路素子の不良の発生等を抑制することができる。これに加え、レチクルRのヘイズを効果的に防止することができるので、レチクル上に成長したヘイズがウエハに転写されることにより生ずるパターン欠陥及びCD(Critical Dimension)の変化の発生を未然に阻止することが可能になる。また、これらの欠陥を防ぐために、レチクルの検査を頻繁に行う必要がないので、結果的に生産性の低下の防止、ひいては生産性の向上を図ることが可能になる。
【0149】
なお、上記第2の実施形態では、レチクルステージRSTが、本体部22と、該本体部22のX軸方向の両端部に固定され、Y軸方向の長さが本体部22より長い一対のエアスライダ部22
1,22
2とを有していることに鑑みて、端部カバー23
1、23
2を用いてエアスライダ部22
1,22
2の+Y端と−Y端とを囲む場合について説明した。しかし、これに限らず、レチクルステージRSTが前後左右の四方の側壁で、レチクルRを囲むような構造であれば、端部カバーは必ずしも設ける必要がない。要は、一対のカバー部材(上記第2の実施形態中の近接冷却デバイス110A,110Bがこれに相当)がレチクルステージの上面に所定のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)を介して対向することで、レチクルRの上方かつ照明ユニットIOPの下方に、ほぼ気密状態の空間を形成できれば良い。なお、一対のカバー部材は、近接冷却デバイスである必要はなく、レチクルステージの上面に所定のクリアランス(隙間/間隔/間隙(ギャップ)/空間距離)を介して対向できる所定面積の平面を有する部材であれば良い。この部材は、全面が平面の部材である必要はなく、走査露光時のレチクルステージの移動を妨げず、かつその移動の際に、レチクルステージRSTとの間の気密性が、ほぼ保たれるX軸方向の長さの平面部があれば足りる。すなわち、その平面部のX軸方向の外側の部分は、下方又は上方に折れ曲がる、あるいは突出するなどしていても構わない。
【0150】
また、上記第2の実施形態では、第1のパージ空間181及び第2のパージ空間182、並びにカバー150の内部のパージ空間183が、いずれも湿度が1%以下のCDAでパージされる場合について説明したが、湿度10%以下のCDAをパージガスとして用いることができる。また、これに限らず、パージ空間181、182、183のうちの1つ又は2つで、使用するパージガスの種類を他のパージ空間と異ならせても良い。また、パージガスとしては、CDAのように水蒸気を含む割合が通常の空気に比べて小さいガスを用いても良いが、これに限らず、ヘイズ原因物質、例えば硫酸アンモニウム又は炭酸アンモニウム、炭化水素、カルボン酸、シアヌル酸、又は他の炭素を含有する分子などの分子状汚染物質を含まず、かつ照明光ILを殆ど吸収しない、窒素やヘリウムなどの希ガスを、パージガスとして用いても良い。
【0151】
なお、第2実施形態では、必ずしも、レチクルステージRSTの位置情報を計測する計測システムは、エンコーダシステムに限られず、干渉計システムなどの他の計測システムであっても良い。また、X線イオナイザ42などの除電装置を必ずしも併用しなくても良い。また、近接冷却デバイス110A,110Bが、パージ空間の隔壁を兼ねる必要はなく、レチクルステージ上部空間のCDAなどのガスパージと併用しなくても良いし、搬送アーム140の移動経路を含むレチクルRの搬送路をCDAによるパージ空間にしなくても良い。要は、レチクルステージRSTの位置情報を計測するエンコーダシステム、除電装置、冷却デバイス、レチクルステージ上部空間のCDAなどのガスパージ、及びレチクル搬送中のCDAパージを、単独で実施しても良いし、任意に少なくとも2つを組み合わせて採用しても良い。
【0152】
また、上記第2の実施形態では、近接冷却デバイス110A,110Bが、照明領域、照明光ILの照射領域のY軸方向の両側に設けられる場合について説明したが、片側のみに設けても良い。また、近接冷却デバイス110A,110Bの冷却面の大きさは、レチクルと同等でも良いし、そのパターン領域と同等でも良い。非露光動作中(例えばウエハ交換中など)では、レチクルステージRSTを移動させて、レチクルRを一方の近接冷却デバイスと対向させて冷却を行うことができる。また、この場合には、近接冷却デバイスとレチクルRとが接触する等のおそれがないので、露光時よりも両者を近接させて冷却を行っても良い。
【0153】
なお、冷却デバイスによってレチクルを冷却(温調)することで、レチクルの熱膨張変形の防止だけでなく、その変形に伴うパターン面のZ軸方向への変位をも防止することができる。
【0154】
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態について、
図13〜
図15(C)に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略若しくは省略する。
【0155】
図13には、本第3の実施形態の露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置50の入出力関係が、ブロック図にて示されている。
図13と
図6とを比較すると明らかなように、本第3の実施形態の露光装置では、主制御装置50に、前述の第1の実施形態と同様の構成部分が接続されるとともに、レチクルAFセンサ130と、補助エンコーダシステム170とが、さらに接続されている。以下では、これらレチクルAFセンサ130及び補助エンコーダシステム170を含み、前述の第1の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0156】
図14(A)及び
図14(B)には、レチクルAFセンサ130及び補助エンコーダシステム170の構成(各構成部分の配置を含む)が、平面図及び側面図にてそれぞれ示されている。
【0157】
レチクルAFセンサ130は、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaの+Y側に形成された凹部RBSdの内部に配置された5つのZ干渉計130
1〜130
5を備えている。Z干渉計130
1〜130
5は、レチクルステージRST上に載置されたレチクルRのパターン面(−Z側面)に対向し得るように、そのヘッドの射出端を+Z側に向けて設置されている。Z干渉計130
1〜130
5は、走査方向(Y軸方向)に垂直な非走査方向(X軸方向)に一直線上に等間隔で配列されている。ここで、Z干渉計130
1〜130
5の中心に位置するZ干渉計130
3のX位置は、レチクルステージRST(すなわちレチクルステージRSTに載置されるレチクルR)のX軸方向の中心にほぼ一致している。また、Z干渉計130
1〜130
5の配列距離(最も−X側に位置するZ干渉計130
1と最も+X側に位置するZ干渉計130
5との離間距離)は、レチクルステージRST(レチクルステージ本体22)に形成された開口22aのX軸方向の幅より僅かに短く、照明光ILによって照明されるレチクルRの照明領域のX軸方向の幅にほぼ等しい。
【0158】
Z干渉計130
1〜130
5として、例えば国際公開第2007/087301号に開示されている干渉計システムを採用することができる。Z干渉計130
1〜130
5のそれぞれは、開口22aを介して、レチクルRのパターン面に計測ビームを照射し、パターン面からの反射ビームを受光することにより、計測ビームの照射点におけるパターン面の面位置(Z軸方向の位置)を計測する。
【0159】
レチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)の計測情報は、主制御装置50(
図13参照)に送られる。主制御装置50は、レチクルAFセンサ130の計測情報から、レチクルRのパターン面の面位置分布(いわゆるフォーカスマップ)を求める。フォーカスマップを作成するためのフォーカスマッピングの詳細については後述する。
【0160】
補助エンコーダシステム170(
図13参照)は、AFマッピングの際のレチクルステージRSTの位置情報の取得(計測)に用いられる。補助エンコーダシステム170は、第3及び第4レチクルエンコーダシステム(以下、第3及び第4エンコーダシステムと呼ぶ)171,176を備えている(
図13参照)。
【0161】
図15(A)には、第3及び第4エンコーダシステム171、176が備えるエンコーダヘッド172,173,174、177,178,179と、エンコーダヘッド172〜174,177〜179それぞれの計測対象であるグレーティングRG1,RG2(レチクルステージRST)との配置(位置関係)が示されている。
【0162】
エンコーダヘッド172〜174,177〜179は、レチクルステージ定盤RBSの凹部RBSd内に設置されている。ここで、レチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)の+X側に3つのエンコーダヘッド172〜174が、−X側に残りの3つのエンコーダヘッド177〜179が配置されている。エンコーダヘッド173,178はレチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)と同じY位置に配置されている。
【0163】
エンコーダヘッド172〜174,177〜179間のX軸方向の離間距離は、レチクルステージRSTのエアスライダ部22
1,22
2の底面に設けられたグレーティングRG1,RG2のX軸方向の離間距離にほぼ等しい。従って、レチクルステージRSTがY軸方向に関して所定の計測可能範囲にあるとき、エンコーダヘッド172〜174がグレーティングRG1に対向するとともに、エンコーダヘッド177〜179がグレーティングRG2に対向する。
【0164】
エンコーダヘッド172〜174,177〜179として、前述のエンコーダヘッド72〜74,77〜79と同様の2次元エンコーダヘッドが採用されている。ここで、4つのエンコーダヘッド172,174,177,179はY軸方向とZ軸方向を計測方向とし、2つのエンコーダヘッド173,178はX軸方向とZ軸方向を計測方向とする。
【0165】
第3エンコーダシステム171が備えるエンコーダヘッド172〜174は、レチクルステージRST(エアスライダ部22
1)の底面に設けられたグレーティングRG1に計測ビームを照射する。これにより、グレーティングRG1から複数の回折ビームが発生する。エンコーダヘッド172,174は、グレーティングRG1にてYZ面内で(Y軸方向に)発生する複数の回折光を受光し、それぞれの計測ビームの照射点を計測点として、Y軸方向及びZ軸方向に関するグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置を計測する。エンコーダヘッド173は、XZ面内で(X軸方向に)発生する複数の回折光を受光し、計測ビームの照射点を計測点として、X軸方向及びZ軸方向に関するグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置を計測する。
【0166】
第4エンコーダシステム176が備えるエンコーダヘッド177〜179は、上述のエンコーダヘッド172〜174と同様に、レチクルステージRST(エアスライダ部22
2)の底面に設けられたグレーティングRG2に計測ビームを照射する。これにより、グレーティングRG2から発生する複数の回折光を、エンコーダヘッド177,179、及びエンコーダヘッド178が、エンコーダヘッド172,174、及びエンコーダヘッド173と同様にして、それぞれ受光する。そして、エンコーダヘッド177,179、及びエンコーダヘッド178は、それぞれの計測ビームの照射点を計測点として、Y軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置、及びX軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置を計測する。
【0167】
第3及び第4エンコーダシステム171,176(エンコーダヘッド172〜174,177〜179)の計測情報は、主制御装置50(
図13参照)に送られる。
【0168】
主制御装置50は、第3及び第4エンコーダシステム171,176(エンコーダヘッド172〜174,177〜179)の計測情報に基づいて、レチクルステージRSTの6自由度(X,Y,Z,θx,θy,θz)方向についての位置を求める。
【0169】
ここで、エンコーダヘッド172〜174,177〜179のレチクルAFセンサ130の中心(Z干渉計130
3の計測点(計測ビームの照射点))に対する位置関係は、レチクルエンコーダシステム70が備えるエンコーダヘッド72〜74,77〜79の投影光学系PLの光軸に対する位置関係に等しい。そこで、主制御装置50は、先と同様に、少なくともAFマッピング動作においては補助エンコーダシステム170(エンコーダヘッド172〜174,177〜179)の計測情報から、レチクルステージRSTの6自由度方向についての位置を求める。
【0170】
本第3の実施形態の露光装置は、その他の部分の構成は、前述した第1の実施形態の露光装置100と同様になっている。
【0171】
次に、本第3の実施形態の露光装置において行われるレチクルRのパターン面の面位置分布(フォーカスマップ)の作成ためのフォーカスマッピングについて説明する。
【0172】
フォーカスマッピングに先立ち、主制御装置50は、レチクルエンコーダシステム70の計測情報に基づいてレチクルステージ駆動系340を制御して、レチクルステージ定盤RBS上のレチクルAFセンサ130の上方に板状部22
0が位置するように、レチクルステージRSTをY軸方向に移動させる。レチクルステージRSTの移動により、エンコーダヘッド177〜179(172〜174)の計測ビームの照射点がグレーティングRG2(RG1)上に位置するようになる。そこで、主制御装置50は、補助エンコーダシステム170を用いてレチクルステージRSTの位置情報を求める(計測する)。この場合において、直前のレチクルステージRSTの位置をレチクルエンコーダシステム70で計測していた場合には、そのレチクルエンコーダシステム70を用いた位置計測から補助エンコーダシステム170を用いた位置計測に切り換えることとなる。
【0173】
レチクルステージRSTがレチクルAFセンサ130上に移動すると、主制御装置50は、
図15(A)に示されるように、レチクルステージRSTを−Y方向(
図15(A)中の矢印方向)の走査(スキャン)を開始する。さらに走査開始後、主制御装置50は、レチクルステージRSTが−Y方向に移動して、レチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)の測長ビームの照射点がレチクルステージRST上に載置されたレチクルRのパターン面内に入るまでに、レチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)を作動させる(ONにする)。これにより、
図15(B)に示されるように、Z干渉計130
1〜130
5の測長ビームがレチクルRのパターン面上に照射されることとなる。
【0174】
レチクルステージRSTの走査(スキャン)中、主制御装置50は、所定のサンプリング間隔で、補助エンコーダシステム170が備えるエンコーダヘッド173,178によって計測されるグレーティングRG1,RG2の面位置情報(Z軸方向の位置情報)と、レチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)によって計測されるレチクルRのパターン面の面位置情報(Z軸方向の位置情報)とを、補助エンコーダシステム170によって計測されるレチクルステージRSTのXY位置情報に対応付けて収集(サンプリング)する。主制御装置50は、収集した計測情報を、メモリ(不図示)に逐次記録する。
【0175】
Z干渉計130
1〜130
5の測長ビームの照射点がレチクルRのパターン面から外れると、主制御装置50は、上述のサンプリングを終了する。
【0176】
主制御装置50は、上で収集した計測情報を基に、レチクルRのパターン面の面位置分布(フォーカスマップ)を作成する。ここで、フォーカスマップは、レチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)によって計測されたレチクルRのパターン面の面位置情報をエンコーダヘッド173,178によって計測されたグレーティングRG1,RG2の面位置情報を基準とする面位置情報に変換することによって作成される。
【0177】
詳述すると、主制御装置50は、
図15(C)に示されるように、エンコーダヘッド173によって計測されたグレーティングRG1の面位置、すなわちエンコーダヘッド173の計測ビームの照射点(第1基準点P
1)におけるグレーティングRG1の面位置の計測結果と、エンコーダヘッド178によって計測されたグレーティングRG2の面位置情報、すなわちエンコーダヘッド178の計測ビームの照射点(第2基準点P
2)におけるグレーティングRG2の面位置の計測結果と、を結ぶ直線(
図15(C)中の破線)から、面位置の基準を定める。そして、主制御装置50は、Z干渉計130
1〜130
5のそれぞれの計測結果を、面位置の基準からのずれとしての面位置データZ
1〜Z
5に変換する。
【0178】
主制御装置50は、上述の変換を、収集した全ての面位置情報ついて行う。さらに、主制御装置50は、変換した面位置データZ
1〜Z
5を、補助エンコーダシステム170によって計測されたレチクルステージRSTのXY位置情報を用いて、対応するZ干渉計130
1〜130
5の測長ビームのパターン面上での照射点の位置の関数として編集する。ここで、面位置データZ
1〜Z
5は、パターン面上の有限個の離散点について求められている。そこで、必要に応じて、求められた面位置データZ
1〜Z
5を補完して、パターン面上の位置についての連続関数に変換することとしても良い。これにより、レチクルRのパターン面のフォーカスマップが作成される。
【0179】
上述のようにして作成されたフォーカスマップは、例えば、露光の際に利用される。主制御装置50は、レチクルエンコーダシステム70が備えるエンコーダヘッド73,78を用いて、第1及び第2基準点P
1,P
2におけるレチクルステージRSTのZ位置(レチクルステージRSTに設けられたグレーティングRG1,RG2の面位置)を計測する。主制御装置50は、これらの結果を用いて、レチクルRのパターン面の面位置の基準を求める。この基準をフォーカスマップに適用することにより、そのフォーカスマップを、レチクルステージRST上に載置されたレチクルRのパターン面のフォーカスマップとして利用することが可能となる。主制御装置50は、基準を適用したフォーカスマップを基にしてレチクルステージ駆動系340を介してレチクルステージRSTのZ位置、傾斜θx及びθyを制御することにより、レチクルRのパターン面の面位置(Z位置、傾斜θx及びθy)を制御する。これにより、パターン面に形成されたパターンを投影光学系PLを介してウエハW上に正確に転写することが可能となる。
【0180】
なお、走査露光のためにレチクルステージRSTを駆動すること(レチクルステージRSTに駆動力を加えること)により、レチクルステージRST上に載置されたレチクルRが歪むことがある。ここで、レチクルRの歪みが上述のレチクルRのパターン面の面位置分布(すなわち凹凸)と比べて無視できない場合、レチクルRの歪みも考慮してフォーカスマッピングを行う必要がある。その場合、主制御装置50は、フォーカスマッピングの際、走査露光時と同じ駆動力でレチクルステージRSTを駆動する。また、主制御装置50は、走査方向(+Y方向(プラススキャン)及び−Y方向(マイナススキャン))毎にフォーカスマップを作成する。あるいは、駆動力、走査方向等を含む複数の駆動条件毎にフォーカスマップを作成する。そして、主制御装置50は、走査露光時と同じ条件において作成されたフォーカスマップを基にして、レチクルRのパターン面の面位置を制御する。
【0181】
さらに、レチクルRの歪みとレチクルステージRSTの駆動力との関係を予め計測し、その結果とフォーカスマップを基にして、レチクルステージRSTに適当な駆動力を加えて駆動することによりレチクルRの歪みを解消することも可能である。
【0182】
また、レチクルステージRSTのピッチング(X軸回りの回転)θxによりレチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)の計測結果(すなわちフォーカスマップ)が変わる場合(変化が無視できない場合)、主制御装置50は、フォーカスマップのピッチング補正を行う。具体的には、主制御装置50は、フォーカスマッピングの際、補助エンコーダシステム170が備えるエンコーダヘッド172,174,177,179を用いてレチクルステージRSTのピッチングθxを計測し、その結果を基にしてレチクルステージ駆動系340を制御することにより走査露光時におけるレチクルステージRSTのピッチングθxを維持する。あるいは、主制御装置50は、フォーカスマッピングの際、レチクルステージRSTのピッチングθxを計測し、その計測結果をレチクルAFセンサ130(Z干渉計130
1〜130
5)によって計測されるレチクルRのパターン面の面位置情報とともにサンプリングする。そして、主制御装置50は、面位置情報を変換する際に、ピッチングθxの計測結果を用いて走査露光時におけるピッチングθxを基準とする面位置情報に補正する。補正された面位置情報を基に、フォーカスマップが作成される。
【0183】
本第3の実施形態の露光装置では、前述した第1の実施形態の露光装置100と同様に、主制御装置50の管理の下、レチクルステージRST上へのレチクルRのロード、及びウエハステージWST上へのウエハWのロードが行なわれるとともに、上述のレチクルRのフォーカスマッピング動作等が、準備作業として行なわれる。そして、これに続いてレチクルアライメント、アライメント系ALGのベースライン計測が準備作業として行われる。その後、主制御装置50により、EGA等のウエハアライメントが実行された後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。
【0184】
上記の露光動作にあたって、主制御装置50の管理の下、ウエハステージWSTとレチクルステージRSTとがY軸方向に相対駆動されるが、その際、主制御装置50は、前述の通り、先に作成したレチクルRのフォーカスマップを基にしてレチクルRのパターン面の面位置を制御する。また、主制御装置50は、前述と同様、レチクルステージ定盤RBSが所定の状態を維持するように、定盤干渉計240の計測結果に基づいて上述したXボイスコイルモータ66X,Yボイスコイルモータ66Yを制御するとともに、Zエンコーダ81の計測結果に基づいてZボイスコイルモータ66Zを制御して、間接的にレチクルRのZ方向及びθx、θy方向に関する位置を調整する。
【0185】
以上説明したように、本第3の実施形態の露光装置によると、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。これに加え、本第3の実施形態の露光装置によると、以下のような種々の効果を得ることができる。
【0186】
すなわち、本第3の実施形態の露光装置によると、補助エンコーダシステム170が備えるエンコーダヘッド172〜174,177〜179は、レチクルAFセンサ130の中心に対するXY平面内における位置関係が、投影光学系PLの光軸AXに対するエンコーダヘッド72〜74,77〜79のXY平面内における位置関係と等しくなる配置で、凹部RBSdの内部に配置されている。このため、主制御装置50は、露光に先だって(予め)エンコーダヘッド173,178によって計測されたグレーティングRG1,RG2の面位置、すなわちエンコーダヘッド173,178の計測ビームの照射点を第1及び第2基準点P
1,P
2とし、これら第1及び第2基準点P
1,P
2の面位置情報を基準とするレチクルRの面位置情報(Z位置の分布の情報、すなわちレチクルRのパターン面の面位置分布(フォーカスマップ))を取得しておく。そして、露光の際に、主制御装置50は、レチクルエンコーダシステム70が備えるエンコーダヘッド73,78を用いて、第1及び第2基準点P
1,P
2におけるレチクルステージRSTのZ位置(レチクルステージRSTに設けられたグレーティングRG1,RG2の面位置(Z位置))を計測し、これらの計測結果を用いて、レチクルRのパターン面の面位置の基準を求める。この基準をフォーカスマップに適用することにより、そのフォーカスマップを、レチクルステージRST上に載置されたレチクルRのパターン面のフォーカスマップとして利用することが可能となる。主制御装置50は、基準を適用したフォーカスマップを基にしてレチクルステージ駆動系340を介してレチクルステージRSTのZ位置、傾斜θx及びθyを制御することにより、レチクルRのパターン面の面位置(Z位置、傾斜θx及びθy)を制御する。これにより、レチクルRに形成されたパターンを、デフォーカスによる露光不良の発生を抑制しつつ投影光学系PLを介してウエハW上に正確に転写することが可能となる。
【0187】
なお、上記第3の実施形態において、エンコーダヘッド172〜174によって計測されたグレーティングRG1の面位置(Z位置)の平均を、第1基準点P
1における面位置とし、エンコーダヘッド177〜179によって計測されたグレーティングRG1の面位置(Z位置)の平均を、第2基準点P
2における面位置として、フォーカスマップの面位置の基準を求めることとしても良い。
【0188】
また、上記第3の実施形態において、レチクルステージRSTに対するレチクルの搬入及びレチクルステージRSTからのレチクルの搬出を行う、ローディングポジションが、レチクルステージ定盤RBSの+Y側の端部近傍にあるときには、そのローディングポジションでレチクルステージRSTにロードされたレチクルのフォーカスマッピングを、前述と同様の手順で、レチクルステージRSTを投影光学系PLの上方に移動させるのに先立って、又は並行して行うこととしても良い。
【0189】
なお、上記第3の実施形態では、レチクルAFセンサ130が、Z干渉計130
1〜130
5を備えている場合について説明したが、これに限らず、レチクルAFセンサ130は、干渉計以外の他のセンサによって構成しても良い。また、前述した第2実施形態で説明したレチクルステージRSTの位置情報を計測するエンコーダシステム、除電装置、冷却デバイス、レチクルステージ上部空間のCDAなどのガスパージ、及びレチクル搬送中のCDAパージの少なくとも一部の構成を併用しても良い。
【0190】
《第4の実施形態》
次に、第4の実施形態について、
図16〜
図18(B)に基づいて、説明する。ここで、前述した第1、第3の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を簡略若しくは省略する。
【0191】
図16には、本第4の実施形態の露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置50の入出力関係が、ブロック図にて示されている。
図16と前述の
図13とを比較すると明らかなように、本第4の実施形態の露光装置では、第3の実施形態に係るレチクルエンコーダシステム70に代えて、レチクルエンコーダシステム70Aが設けられている。以下では、レチクルエンコーダシステム70Aを含み、前述の第3の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0192】
本第4の実施形態の露光装置では、第1、第3の実施形態と同様に、
図17及び
図18(A)に示されるように、投影光学系PLの最上面に、レチクルRのパターン面を透過し、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaを透過した照明光ILの光路(通路)となる矩形の開口PLaが、その中央に形成された平面視六角形の上面部材60が、固定されている。
【0193】
図18(A)に示されるように、上面部材60の上面のX軸方向の両端部(開口PLaの両側)には、それぞれ、3行2列のマトリクス状に配置された各6つのエンコーダヘッド72,73,74,72
0,73
0,74
0及び77,78,79,77
0,78
0,79
0が、固定されている。このうち、エンコーダヘッド72,77は開口PLaの+Y側の角部近傍に、エンコーダヘッド74,79は−Y側の角部近傍に、エンコーダヘッド73,78は開口PLaの中心(すなわち投影光学系PLの光軸)と同じY位置に、配置されている。
【0194】
エンコーダヘッド72
0,73
0,74
0は、それぞれ、エンコーダヘッド72,73,74と同じY位置に、+X側に等距離隔てて配置されている。エンコーダヘッド77
0,78
0,79
0は、それぞれ、エンコーダヘッド77,78,79と同じY位置に、−X側に等距離隔てて配置されている。
【0195】
グレーティングRG1,RG2は、前述の通り、投影光学系PLの上方に配置されるレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1,22
2の底面に設けられている。ここで、エンコーダヘッド72〜74とエンコーダヘッド77〜79とのX軸方向の離間距離は、グレーティングRG1とグレーティングRG2とのX軸方向の離間距離にほぼ等しく設定されている。このため、エンコーダヘッド72〜74がグレーティングRG1に対向すると同時に、エンコーダヘッド77〜79がグレーティングRG2に対向するようになっている(例えば
図17参照)。
【0196】
また、グレーティングRG1のX軸方向の幅は、エンコーダヘッド72〜74とエンコーダヘッド72
0〜74
0との間の離間距離より大きい。同様に、グレーティングRG2のX軸方向の幅は、エンコーダヘッド77〜79とエンコーダヘッド77
0〜79
0との間の離間距離より大きい。従って、エンコーダヘッド72〜74とともにエンコーダヘッド72
0〜74
0がグレーティングRG1に対向する。同時に、エンコーダヘッド77〜79とともにエンコーダヘッド77
0〜79
0がグレーティングRG2に対向する。
【0197】
ここで、4つのエンコーダヘッド72,74,77,79はY軸方向とZ軸方向とを計測方向とし、2つのエンコーダヘッド73,78はX軸方向とZ軸方向とを計測方向とする。また、エンコーダヘッド72
0〜74
0,77
0〜79
0として、少なくとも計測面(グレーティングRG1,RG2)に垂直な方向(Z軸方向)を計測方向とするエンコーダヘッドが採用される。本実施形態では、エンコーダヘッド72
0〜74
0,77
0〜79
0として、エンコーダヘッド72〜74,77〜79と同様の2次元エンコーダヘッドが採用されているものとする。
【0198】
エンコーダヘッド72,73,74,72
0,73
0,74
0は、
図17に示されるように、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaを介して、レチクルステージRST(エアスライダ部22
1)の底面のグレーティングRG1に計測ビームを下方から照射し、グレーティングRG1にて発生する複数の回折光を受光して、それぞれの計測方向に関するグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置情報を求める(計測する)。
【0199】
ここで、グレーティングRG1,RG2はX軸方向とY軸方向との両方向を周期方向とするため、コヒーレントな計測ビームを照射する(入射させる)ことにより、X軸方向とY軸方向との両方向に複数の角度(回折角)で回折光が発生する。そこで、エンコーダヘッド72,74,72
0,74
0は、Y軸方向に発生する複数の回折光を受光し、それぞれの計測ビームの照射点を計測点として、Y軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置情報を求める(計測する)。
【0200】
エンコーダヘッド73,73
0は、X軸方向に発生する複数の回折光を受光し、計測ビームの照射点を計測点として、X軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG1(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
1)の位置情報を求める(計測する)。
【0201】
本実施形態では、6つのエンコーダヘッド72,73,74,72
0,73
0,74
0によって、レチクルステージRSTのX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に関する位置情報を求める(計測する)、計測自由度が6自由度の第1エンコーダシステム71A(
図16参照)が構成されている。第1エンコーダシステム71A(エンコーダヘッド72,73,74,72
0,73
0,74
0)の計測情報は、主制御装置50(
図16参照)に送られている。
【0202】
6つのエンコーダヘッド77,78,79,77
0,78
0,79
0は、上述のエンコーダヘッド72,73,74,72
0,73
0,74
0と同様に、レチクルステージ定盤RBSの開口RBSaを介して、レチクルステージRST(エアスライダ部22
2)の底面のグレーティングRG2に計測ビームを下方から照射し、グレーティングRG2にて発生する複数の回折光を受光して、それぞれの計測方向に関するグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置情報を求める(計測する)。
【0203】
ここで、エンコーダヘッド77,79,77
0,79
0は、Y軸方向に発生する複数の回折光を受光し、それぞれの計測ビームの照射点を計測点として、Y軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置情報を求める(計測する)。エンコーダヘッド78,78
0は、X軸方向に発生する複数の回折光を受光し、計測ビームの照射点を計測点として、X軸方向とZ軸方向についてのグレーティングRG2(すなわちレチクルステージRSTのエアスライダ部22
2)の位置情報を求める(計測する)。
【0204】
本実施形態では、6つのエンコーダヘッド77,78,79,77
0,78
0,79
0によって、レチクルステージRSTのX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に関する位置情報を求める(計測する)、計測自由度が6自由度の第2エンコーダシステム76A(
図16参照)が構成されている。
【0205】
第2エンコーダシステム76A(エンコーダヘッド77,78,79,77
0,78
0,79
0)の計測情報は、主制御装置50(
図16参照)に送られる。
【0206】
主制御装置50は、第1及び第2エンコーダシステム71A,76A(エンコーダヘッド72〜74,72
0〜74
0,77〜79,77
0〜79
0)の計測情報に基づいて、投影光学系PLの中心(光軸)を基準とするレチクルステージRSTの6自由度方向、すなわち、X軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向,θy方向,及びθz方向に関する位置情報を求める(算出する)。第1及び第2エンコーダシステム71A,76Aを含んで、レチクルエンコーダシステム70Aが構成されている(
図16参照)。
【0207】
ここで、本第4の実施形態のレチクルエンコーダシステム70Aは、前述した第1の実施形態と同様に、2次元エンコーダヘッド72〜74,77〜79を備えているため、全12個の計測情報が得られる。そこで、主制御装置50は、エンコーダヘッド72,74、及び73の計測値をそれぞれ用いて、前述した第1の実施形態と同様にして、レチクルステージRSTのエアスライダ部22
1のY位置(Y
1)、及びX位置(X
1)を、求める。また、主制御装置50は、エンコーダヘッド77,79、及び78の計測値をそれぞれ用いて、前述した第1の実施形態と同様にして、レチクルステージRSTのエアスライダ部22
2のY位置(Y
2)、及びX位置(X
2)を、求める。さらに、主制御装置50は、Y
1とY
2の平均及び差より、それぞれ、レチクルステージRSTのY位置及びθz位置(θz方向の回転量、すなわちヨーイング量)を求め、X
1とX
2の平均よりレチクルステージRSTのX位置を求める。
【0208】
また、主制御装置50は、エンコーダヘッド73,78で計測されたZ軸方向の位置の計測値の平均及び差より、それぞれレチクルステージRSTのZ位置及びθy位置(θy方向の回転量、すなわちローリング量)を求める。また、エンコーダヘッド72,74と77,79でそれぞれ計測されたZ軸方向の位置の計測値の差よりエアスライダ部22
1と22
2のθx位置(θx
1、θx
2)を求め、θx
1とθx
2の平均よりレチクルステージRSTのθx位置(θx方向の回転量、すなわちピッチング量)を求める。ここで、レチクルステージRSTのZ位置は、エンコーダヘッド73,78で計測されたX、Y、Z、θx位置は、上述の如く各方向の2つの計測値を平均して求めることなく、いずれかの計測値をそのまま用いても良い。
【0209】
さらに、本実施形態のレチクルエンコーダシステム70Aは、6つの2次元エンコーダヘッド72〜74,77〜79に加え、2次元エンコーダヘッド72〜74,77〜79それぞれのX軸方向の外側に位置する別の6つの2次元エンコーダヘッド72
0〜74
0,77
0〜79
0をも備えているので、追加の12自由度の計測情報(位置情報)が得られる。そこで、主制御装置50は、例えば、エンコーダヘッド73,73
0,78,78
0による計測情報(Z軸方向に関する位置情報)を用いて、レチクルステージRSTのX軸方向に関する曲がり(撓み)を求める。なお、レチクルステージRSTの曲がり(撓み)は、X軸方向に互いに離間する3つのエンコーダヘッドによる計測情報(計測された位置情報)から求めることができる。なお、以下では、エンコーダヘッドによる計測情報を、計測結果とも呼ぶ。
【0210】
主制御装置50は、同様に、エンコーダヘッド72,72
0,77,77
0の計測結果及びエンコーダヘッド74,74
0,79,79
0の計測結果のそれぞれからも、レチクルステージRSTのX軸方向に関する曲がり(撓み)を求め、求められた3つの曲がり(撓み)の情報からY軸方向に関するレチクルステージRSTのねじれを求めることもできる。
【0211】
また、主制御装置50は、エンコーダヘッド72
0,74
0(77
0,79
0)の計測結果の差よりエアスライダ部22
1(エアスライダ部22
2)の傾斜θx(θx
10(θx
20))を求め、前述のθx
1とθx
2と合わせてθx
10,θx
20(あるいはθx
1とθx
2とθx
10,θx
20との一方)よりX軸方向に関するレチクルステージRSTのねじれを求めることもできる。
【0212】
主制御装置50は、上述のようにして求めたレチクルステージRSTの6自由度方向に関する位置情報及びレチクルステージRSTの曲がり及びねじれを含む形状情報に基づいて、レチクルステージ駆動系340を介して、レチクルステージRSTを駆動(制御)する。
【0213】
本第4の実施形態の露光装置は、その他の部分の構成は、前述した第3の実施形態の露光装置と同様になっている。
【0214】
ここで、本第4の実施形態の露光装置で、主制御装置50により、レチクルエンコーダシステム70Aによって計測されるレチクルステージRSTの形状(計測結果)に基づいて行われるレチクルRの積極変形(別の言い方をすれば、たわみ補正)について簡単に説明する。
【0215】
すなわち、主制御装置50は、レチクルステージ駆動系340を介してレチクルステージRSTを変形させることで、レチクルステージRSTに保持されたレチクルRのパターン面の形状を変更(調整)する。主制御装置50は、例えば
図18(B)に示されるように、レチクルステージRSTを−Z方向に微小駆動する、詳述すると、カウンタマス18に固定された固定子部36〜39に対してレチクルステージRSTの端部に固定された可動子部24〜29を、
図18(B)中の白抜き矢印で示されるように、−Z方向に微小駆動する。これにより、レチクルステージRSTを非接触支持するレチクルステージ定盤RBSの凸状部分RBSc、RBSbをそれぞれ支点にしてレチクルステージ本体22の−X側端部、+X側端部に反時計回り、時計回りの曲げモーメントが作用し、これによりレチクルステージ本体22上に保持されたレチクルRの中央が、
図18(B)中の黒塗り矢印で示されるように+Z方向に持ち上げられ、そのパターン面が+Z側が凸の形状となるように曲がる(撓む)。
【0216】
また、逆に、固定子部36〜39に対してレチクルステージRSTの端部に固定された可動子部24〜29を、+Z方向に微小駆動することにより、レチクルステージ本体22及びその上に載置されたレチクルRのパターン面が−Z側が凸の形状となるように曲がる(撓む)。主制御装置50は、フォーカスマップとレチクルエンコーダシステム70AによるレチクルステージRSTの形状(撓み)の計測結果に基づいて、レチクルステージRSTをZ軸方向に駆動制御することにより、レチクルRのパターン面の形状(撓み)を制御する。これにより、パターン面に形成されたパターンを投影光学系PLを介してウエハW上に正確に転写することが可能となる。
【0217】
以上説明したように、本第4の実施形態の露光装置によると、前述した第3の実施形態と同等の効果を得ることができる。これに加え、本第4の実施形態の露光装置によると、以下のような効果を得ることができる。
【0218】
すなわち、本第4の実施形態の露光装置によると、主制御装置50は、レチクルエンコーダシステム70Aによって計測されるレチクルステージRSTの形状(計測結果)に基づいて、レチクルステージ駆動系340を用いてレチクルステージRSTを変形させることにより、レチクルステージRSTに保持されるレチクルRのパターン面を変形させる。このため、主制御装置50は、計測されたレチクルステージRSTの形状に応じた所望の形状にレチクルRのパターン面を変形させることができ、例えばレチクルRのパターン面をXY平面に平行な理想的な平面に変形させることもできる。これにより、レチクルRに形成されたパターンを、パターン面の変形に起因するパターン像の歪曲及びデフォーカスなどによる露光不良の発生を抑制しつつ、投影光学系PLを介してウエハW上に精度良く(正確に)転写することが可能となる。
【0219】
なお、本第4の実施形態の露光装置によると、レチクルエンコーダシステム70AによりレチクルステージRSTの撓みだけでなくねじれも計測することができる。そこで、ねじれも考慮して、レチクルステージRSTを変形することとしても良い。また、レチクルエンコーダシステム70Aが備えるエンコーダヘッド72〜74,77〜79は、それぞれ、エンコーダヘッド72
0〜74
0,77
0〜79
0と対を成す。そこで、対を成す各2つのエンコーダヘッドの計測結果の平均を用いて、レチクルステージRSTの位置情報を算出することも可能である。
【0220】
なお、本第4の実施形態の露光装置が、投影光学系PLによるパターンの投影像の形成状態を補正する補正装置を備えている場合には、主制御装置50は、その補正装置の補正能力を考慮して、レチクルステージRSTを変形させることとしても良い。すなわち、主制御装置50は、変形後のパターン面のパターンの投影像のディストーション等を補正装置で補正が可能となるようにレチクルステージRSTを介してレチクルRを変形させることとしても良い。
【0221】
また、本第4の実施形態の露光装置によると、レチクルエンコーダシステム70Aは合計で12個の二次元エンコーダヘッドを備えているため、レチクルステージRSTの形状として撓みだけでなくねじれも計測することができる。ここで、レチクルステージRSTの形状として撓みのみを考慮する場合には、例えばレチクルステージRSTの位置計測用に使用するエンコーダヘッド72〜74,77〜79と、2つのエンコーダヘッド73
0,78
0とを備えていれば良い。
【0222】
なお、上記第4の実施形態は、説明を簡単にするため、第3の実施形態の変形例として説明したが、第3の実施形態の特徴的な構成(AFセンサなど)との併用は必ずしも前提ではなく、第4の実施形態の追加エンコーダを、第1又は第2実施形態と組み合わせても良い。
【0223】
また、第4の実施形態では、レチクルエンコーダシステム70Aによって計測されるレチクルステージRSTの形状(計測結果)に基づいて行われるレチクルRの積極変形が、レチクルの撓み補正に用いられる場合について説明したが、このレチクルRの積極変形を、露光動作時のウエハのオートフォーカス制御のために併用しても良い。
【0224】
なお、上記第1〜第4の各実施形態に係るレチクルエンコーダシステム70又は70Aは、6つの2次元エンコーダヘッドを備えているため、全12個の計測結果が得られる。そこで、前述のレチクルステージRSTの6自由度(X,Y,Z,θx,θy,θz)方向の位置に限らず、例えば、中心を通るX軸に平行な軸周りのレチクルステージRSTのねじれ、エアスライダ部22
1,エアスライダ部22
2のY軸方向についての撓み等、を計測することも可能である。
【0225】
また、上記各実施形態では、第1駆動系340aを構成する可動子部の一部に第2駆動系340bを構成する永久磁石が設けられた場合について例示したが、これに限定されるものではない。また、移動体装置では、上記実施形態の第2駆動系340bに対応する構成部分は必ずしも設けられていなくても良い。
【0226】
また、上記各実施形態では、レチクルステージRST(移動体)にグレーティングRG1,RG2がそれぞれ形成された面(計測面)が配置され、レチクルステージRSTの外部に複数のヘッド72〜74、77〜79が配置された場合について説明したが、これに限定されるものではない。上記各実施形態では、移動体の外部に配置された、2次元平面(移動体の移動面)に平行な計測面に、移動面に直交する軸に平行な計測ビームを照射し、計測面からの光を受光する複数のヘッドが移動体に配置されていても良い。また、エンコーダヘッドは、2次元ヘッド(2DOFセンサ)に限らず、1次元ヘッド(1DOFセンサ)又はX軸、Y軸及びZ軸方向の3方向を計測方向とする3次元ヘッド(3DOFセンサ)でも良い。
【0227】
なお、上記各実施形態では、レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報をレチクルエンコーダシステムにより求める(計測する)場合について例示したが、これに限らず、エンコーダシステムに代えて、あるいはエンコーダシステムとともに、干渉計システムを用いて計測しても良い。
【0228】
また、上記第1〜第4の実施形態のうち、任意の2つ以上の実施形態を組み合わせても良い。この場合、各実施形態の全ての構成ではなくその一部のみを他の実施形態と組み合わせても良い。
【0229】
なお、上記各実施形態では、露光装置が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置である場合について説明したが、これに限らず、例えば国際公開第99/49504号、欧州特許出願公開第1,420,298号明細書、国際公開第2004/055803号、米国特許第6,952,253号明細書などに開示されているように、投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する露光装置にも上記各実施形態を適用することができる。また、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示される、液浸露光装置などにも、上記実施形態を適用することができる。
【0230】
また、上記各実施形態では、露光装置が、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置である場合について説明したが、これに限らず、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも上記各実施形態は適用することができる。さらに、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも上記各実施形態を適用できる。また、例えば国際公開第2005/074014号などに開示されているように、ウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備える露光装置にも上記各実施形態は適用が可能である。
【0231】
また、上記各実施形態の露光装置における投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系は屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0232】
また、照明光ILとしては、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、F
2レーザ光(波長157nm)などの他の真空紫外光は勿論、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの遠紫外光、あるいは超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(波長436nmのg線、波長365nmのi線等)を用いることも可能である。また、真空紫外光としては、例えば米国特許第7,023,610号明細書などに開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外域に波長変換した高調波を用いても良い。
【0233】
また、上記各実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことは言うまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SOR又はプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも上記各実施形態を好適に適用することができる。このほか、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記各実施形態は適用できる。
【0234】
また、国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記各実施形態を適用することができる。
【0235】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書などに開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記各実施形態を適用することができる。
【0236】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0237】
また、上記実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0238】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した各実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記各実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。