特許第6183499号(P6183499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183499
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】回路接続材料及び回路基板の接続構造体
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20170814BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20170814BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170814BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20170814BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20170814BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20170814BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20170814BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20170814BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J9/02
   C09J11/04
   C09J11/08
   H01R11/01 501A
   H01R11/01 501C
   H05K1/14 J
   H05K3/32 B
   H01B1/20 D
   H01B5/16
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-110141(P2016-110141)
(22)【出願日】2016年6月1日
(62)【分割の表示】特願2013-523067(P2013-523067)の分割
【原出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2016-196646(P2016-196646A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-150991(P2011-150991)
(32)【優先日】2011年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】永原 憂子
(72)【発明者】
【氏名】高井 健次
(72)【発明者】
【氏名】市村 剛幸
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4238124(JP,B1)
【文献】 特開2006−206843(JP,A)
【文献】 特開2007−056209(JP,A)
【文献】 特開2010−006912(JP,A)
【文献】 特開平08−113654(JP,A)
【文献】 特開2009−275102(JP,A)
【文献】 特開2011−080033(JP,A)
【文献】 特開2007−110062(JP,A)
【文献】 特開2006−196850(JP,A)
【文献】 特開2007−246875(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01584657(EP,A1)
【文献】 特開2005−126658(JP,A)
【文献】 特開2011−233633(JP,A)
【文献】 特開2001−164232(JP,A)
【文献】 特開平07−133466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01B 1/20
H01B 5/16
H01R11/01
H05K 1/14
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤成分、導電粒子、平均粒径が7〜75nmであるシリカフィラー及び平均粒径が130〜2000nmである有機フィラーを含有し、
前記シリカフィラーの含有量が、前記接着剤成分の全質量を基準として、10質量%以上80質量%未満であり、
前記有機フィラーの含有量が、前記接着剤成分の全質量を基準として、5〜20質量%である、回路接続材料。
【請求項2】
接着剤成分、導電粒子、平均粒径が7〜75nmであるシリカフィラー及び平均粒径が130〜2000nmである有機フィラーを含有し、
前記シリカフィラーの含有量が、前記接着剤成分の全体積を基準として、5体積%以上40体積%未満であり、
前記有機フィラーの含有量が、前記接着剤成分の全体積を基準として、5〜20体積%である、回路接続材料。
【請求項3】
前記シリカフィラーの平均粒径は、7〜50nmである、請求項1又は2記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記シリカフィラーの平均粒径は、7〜15nmであり、
前記有機フィラーの平均粒径は、130〜1500nmである、請求項1〜3のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項5】
前記シリカフィラーの表面に疎水化処理が施されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項6】
前記疎水化処理は、重合度が10〜500のシリコーンオイルを前記表面に付着又は結合させる処理である、請求項5記載の回路接続材料。
【請求項7】
前記有機フィラーは、シリコーンゴムからなる、請求項1〜6のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項8】
前記導電粒子の平均粒径をD1とし、前記シリカフィラーの平均粒径をD2としたときに、D1/D2が13.3〜1428.6である、請求項1〜7のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項9】
前記導電粒子の単分散率は、80%以上である、請求項1〜8のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項10】
3000μm以下の面積の電極を有する回路基板と、他の回路基板とを電気的に接続するために用いられる、請求項1〜9のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項11】
12μm以下の間隔を空けて配置された複数の電極を有する回路基板と、他の回路基板とを電気的に接続するために用いられる、請求項1〜10のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項12】
第一の電極を有する第一の回路基板と、
第二の電極を有する第二の回路基板と、
前記第一の回路基板及び前記第二の回路基板の間に介在する回路接続材料の硬化物と、
を備え、
前記第一の回路基板と前記第二の回路基板とは、前記第一の電極と前記第二の電極とが対向するように配置され、
前記第一の電極と前記第二の電極とは、前記硬化物を介して電気的に接続され、
前記回路接続材料は、請求項1〜11のいずれか一項記載の回路接続材料である、
回路基板の接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料及び回路基板の接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)実装の2種類に大別することができる。COG実装では、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いて液晶用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方、COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、その後、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。なお、ここでいう異方導電性とは、加圧方向に導通性を有しつつ非加圧方向には絶縁性を保つという意味である。
【0003】
従来のCOG実装では、導電粒子を含有する導電性接着剤層と、導電粒子を含有しない絶縁性接着剤層とからなる二層タイプの回路接続材料が、ガラスパネル側に導電性接着剤層が対向するようにして使用される(下記特許文献1参照)。この方式では、実装時に絶縁性接着剤層が流動しやすいために導電粒子の流動を抑えることができ、導電粒子の電極上捕捉率を向上させることができる。また、チップ側には絶縁性接着剤層が対向するようにして使用されるため、バンプ間への導電粒子の入り込みを減少させることができ、ショートの発生を抑制することができる。
【0004】
一方、フィラーを添加することにより、接着剤にチキソトロピー性を付与して樹脂粘度を増加させ、比重の高い導電粒子の沈降を防ぐ検討も行われてきた(下記特許文献2参照)。
【0005】
また、帯電させた接着剤層に対し、その逆電荷に帯電させた導電粒子を散布して一層の導電粒子層を作製する方法も開発されている。導電粒子を帯電させることによって粒子同士が反発するため、分散性が向上する。そのため使用する導電粒子数が少なく、コストを削減することができる(下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−194359号公報
【特許文献2】特開2003−064330号公報
【特許文献3】特開平10−302926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、液晶パネルの小型化、薄型化が進行する中、接続回路面積の狭小化が要求される状況にある。このような状況において、回路接続材料(接着剤)中の導電粒子が隣接する複数の回路電極の間に流出してショートを発生させることがより問題となっている。また、対向する回路電極の間(例えばバンプとガラスパネル上の電極との間)から導電粒子が流出することにより、回路電極の間に捕捉される導電粒子数が減少して、対向する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良が発生することもより問題となっている。上記特許文献に記載の接着剤では、このような問題に対し充分に対応することが困難である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、隣接する回路電極間の優れた絶縁特性と、対向する回路電極間の優れた導電特性を両立することができ、かつフィルム成形性が良好な回路接続材料、及びこの回路接続材料を用いた回路基板の接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、シリカフィラーを回路接続材料中に高充填することで回路接続材料に含まれる接着剤成分の流動性を低下させ、対向する回路電極間に捕捉される導電粒子の数(導電粒子捕捉率)を向上することが可能となると考えた。同時に、粒子径の大きい有機フィラーを回路接続材料中に充填し、導電粒子間に有機フィラーを適度に存在させることにより、充分な導電粒子間距離を確保でき、隣接する回路電極間の絶縁特性の向上も可能となると考えた。
【0010】
本発明は、接着剤成分、導電粒子、平均粒径が7〜75nmであるシリカフィラー及び平均粒径が130〜2000nmである有機フィラーを含有し、シリカフィラーの含有量が、接着剤成分の全質量を基準として、10質量%以上80質量%未満であり、有機フィラーの含有量が、接着剤成分の全質量を基準として、5〜20質量%である、回路接続材料を提供する。
【0011】
本発明はまた、接着剤成分、導電粒子、平均粒径が7〜75nmであるシリカフィラー及び平均粒径が130〜2000nmである有機フィラーを含有し、シリカフィラーの含有量が、接着剤成分の全体積を基準として、5体積%以上40体積%未満であり、有機フィラーの含有量が、接着剤成分の全体積を基準として、5〜20体積%である、回路接続材料を提供する。
【0012】
このような回路接続材料であれば、隣接する回路電極間の優れた絶縁特性と、対向する回路電極間の優れた導電特性とを両立することができ、かつフィルム形成性が良好である。一般に、シリカフィラーは粒径100nm以下の極小微粒子の作成が可能であるが、特に平均粒径7〜75nmのシリカフィラーであれば、好適に樹脂の流動性を制御することができる。そのため、対向する回路電極間に捕捉される導電粒子の数を向上することが可能である。また、平均粒径130〜2000nmの有機フィラーであれば、比較的大粒径であるとともに樹脂(接着剤成分)との相溶性が良好であるため分散性が良い。そのため、導電粒子間距離を好適に保つことが可能となり、隣接する回路電極間の絶縁特性の向上につながる。そして、これらのシリカフィラー及び有機フィラーを上記範囲で含有させた回路接続材料であれば、シリカフィラーのみを高充填した場合よりも、フィルムの成形性が向上する。
【0013】
シリカフィラー及び有機フィラーの含有量がこのような範囲にあることで、前述した絶縁特性と導電特性をより確実に両立することができる。また、フィルム形成性にもより優れる回路接続材料を得ることができる。
【0014】
シリカフィラーの平均粒径は、7〜50nmであることが好ましい。なお、シリカフィラーの平均粒径は7〜15nmであることがより好ましく、有機フィラーの平均粒径は、130〜1500nmであることが好ましい。
【0015】
このような平均粒径を有するシリカフィラー及び有機フィラーであれば、分散性に優れ接着剤成分中により好適に分散させることができる。そのため、より優れた絶縁特性と導電特性を両立することができ、かつフィルム形成性がさらに良好である回路接続材料とすることができる。
【0016】
また、シリカフィラーの表面に疎水化処理が施されていることが好ましい。
【0017】
特に、この疎水化処理は、重合度が10〜500のシリコーンオイルをシリカフィラー表面に付着又は結合させる処理であることがより好ましい。
【0018】
シリカフィラーを疎水化処理することにより、接着剤成分中での分散性をより向上させることができる。これにより、シリカフィラーを接着剤成分中に高充填しても、シリカフィラーが凝集することをより確実に抑制することができる。そのため、例えば回路接続材料をフィルム化する場合にも、凝集したシリカフィラーに起因する塗工傷や物性バラツキや厚みバラツキをより良好に改善することができる。また、具体的な機構は明らかではないものの、このようなシリカフィラーの疎水化処理により、通常、シリカフィラーの高充填に従って低下する回路接続材料のタック力の低下もより良好に抑制することができる。
【0019】
また、本発明の回路接続材料に含有される有機フィラーは、シリコーンゴムからなる有機フィラーであることが好ましい。これにより、接着剤成分中でより好適に分散するため、絶縁特性と導電特性をより確実に両立できる。また、凝集がより確実に抑制されるため、フィルム形成性も良好である。
【0020】
本発明の回路接続材料において、導電粒子の平均粒径をD1とし、シリカフィラーの平均粒径をD2としたときに、D1/D2が13.3〜1428.6であることが好ましい。
【0021】
導電粒子及びシリカフィラーの平均粒径の関係がこのような数値範囲にある場合、隣接する回路電極間の良好な絶縁特性及び対向する回路電極間の良好な導電特性をより確実に達成することができ、フィルム形成性が良好な回路接続材料を得ることができる。
【0022】
また、導電粒子の単分散率は、80%以上であることが好ましい。このように導電粒子が好適に分散していることにより、絶縁特性をより確実に向上することができる。
【0023】
本発明の回路接続材料は、3000μm以下の面積の電極を有する回路基板と、他の回路基板とを電気的に接続するために好適に用いられる。
【0024】
また、本発明の回路接続材料は、12μm以下の間隔を空けて配置された複数の電極を有する回路基板と、他の回路基板とを電気的に接続するために好適に用いられる。
【0025】
本発明の回路接続材料は、このような電極面積の小さな電極や、12μm以下のピッチを有する電極群を有する回路基板と、他の回路基板とを接続するために用いた場合でも、隣接する回路電極間の優れた絶縁特性と、対向する回路電極間の優れた導電特性とを両立することができる。
【0026】
また、本発明は、第一の電極を有する第一の回路基板と、第二の電極を有する第二の回路基板と、第一の回路基板及び第二の回路基板の間に介在する回路接続材料の硬化物と、を備え、第一の回路基板と第二の回路基板とは、第一の電極と第二の電極とが対向するように配置され、第一の電極と第二の電極とは、硬化物を介して電気的に接続され、回路接続材料は、前述の回路接続材料である、回路基板の接続構造体を提供する。
【0027】
このような回路基板の接続構造体は、第一の電極を有する第一の回路基板と第二の電極を有する第二の回路基板とが、本発明の回路接続材料の硬化物を介して接続されているため、前述した絶縁特性と導電特性とが共に優れている。
【0028】
このように、本発明の回路接続材料において、シリカフィラーを回路接続材料に高充填することにより、回路接続材料の流動性制御が容易となり、導電粒子捕捉性向上により接続抵抗を低下させることができる。また、大粒径で分散性が良好な有機フィラーを回路接続材料に添加することで、導電粒子間の距離を広くすることができるため、絶縁特性の向上が可能となる。また、必要に応じてシリカフィラーを疎水化処理することにより、シリカフィラーの凝集をより確実に抑えられ、シリカフィラーを高充填しても回路接続材料のフィルム成形性をより確実に維持することができる。また、このような疎水化処理により、シリカフィラーの吸水率をより低下することができるため、本発明の回路接続材料を用いた回路基板の接続構造体において、ショートの発生をより確実に抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、隣接する回路電極間の優れた絶縁特性と、対向する回路電極間の優れた導電特性を両立することができ、かつフィルム成形性が良好な回路接続材料、及びこの回路接続材料を用いた回路基板の接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の回路基板の接続構造体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施形態について、場合により図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
[回路接続材料]
本実施形態の回路接続材料は、シリカフィラー及び有機フィラーが高濃度で充填されていることを特徴とする。具体的には、本実施形態の回路接続材料は、接着剤成分、導電粒子、平均粒径が7〜75nmであるシリカフィラー及び平均粒径が130〜2000nmである有機フィラーを含有し、シリカフィラーの含有量が、接着剤成分の全質量又は全体積を基準として、それぞれ10質量%以上80質量%未満又は5体積%以上40体積%未満であり、有機フィラーの含有量が、接着剤成分の全質量又は全体積を基準として、それぞれ5〜20質量%又は5〜20体積%であることを特徴とする。なお、回路接続材料はペースト状で使用してもよく、フィルム状に成形して使用してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0033】
(A:シリカフィラー)
本実施形態において使用されるシリカフィラーの平均粒径は7〜75nmであるが、7〜50nmであることが好ましく、7〜30nmであることがより好ましく、7〜20nmであることがさらに好ましく、7〜15nmであることが非常に好ましく、10〜15nmであることが極めて好ましい。シリカフィラーの平均粒径が7nm以上であると、シリカフィラーが凝集し難く分散性が良好となり、75nm以下であると、増粘効果又はチキソ性の改善効果を充分に得ることができる。
【0034】
シリカフィラーの回路接続材料への高充填化を容易にするために、シリカフィラーの表面に疎水化処理を施すことが好ましい。この疎水化処理により、シリカフィラー表面に反応性有機基を担持させることができる。この反応性有機基は、本実施形態における接着剤成分と反応し、かつ硬化反応等に特に悪影響を及ぼさないものであることが好ましい。このような反応性有機基としては、例えば、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、ウレイド基、ヒドロキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。これらの反応性有機基のうち、活性水素を有するアミノ基(−NH)、メルカプト基(−SH)、カルボキシル基(−COOH)、ウレイド基(−NHCONH)、ヒドロキシ基(−OH)は、接着剤成分中の親水基、例えばエポキシ樹脂の端部に存在するエポキシ基(オキシラン環)に付加ないし、エポキシ基と水素結合を形成すると考えられるため好ましい。また、グリシジル基は、エポキシ基とアミン系触媒の存在下で開環付加反応すると考えられるため好ましい。
【0035】
これらの反応性有機基をシリカフィラー表面に担持させるためには、例えば、この反応性有機基とシリカ表面に結合し得る官能基とを分子内に併せ持つ化合物を用いてシリカフィラーの表面処理を行えばよい。このような化合物としては、シランカップリング剤、シリコーンオイル等が挙げられる。特に、シリコーンオイルが好ましく、その重合度が10〜500であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態におけるシリカフィラーの表面処理に好適に用いられるシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等に代表されるシリコーンオイルにおいて、末端または側鎖のアルキル基の水素原子を、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、ウレイド基、ヒドロキシ基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換してなる変性シリコーンオイルが挙げられる。これらの変性シリコーンオイルは下記化学式(1)で表されるような構造(繰返し単位)を有する。
【0037】
【化1】
【0038】
式(1)中、Aは、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、ウレイド基、ヒドロキシ基又はカルボキシル基を示し、Rはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基(好ましくはメチル基)を示し、Rはメチレン基等の低級アルキレン基を示し、x及びyはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。なお、変性シリコーンオイルにおいて、変性されたシロキサン単位はブロック状に連続していてもよいが、一般的には、これらAなる置換基を導入する際、置換基は分子内のシロキサン単位に含まれる水素原子を規則的にあるいはランダムに置換する。そのため、変性シリコーンオイルにおいて、変性されたシロキサン単位は分子内に規則的にあるいはランダムに存在する。これらの置換基によりシリコーンオイルと接着剤成分との反応が可能となると考える。
【0039】
置換基の導入量は、シリカフィラーの全質量を基準として、0.01〜2.0質量%程度であることが好ましい。この導入量が0.01質量%以上であると接着剤成分との反応が充分に行われ、チキソ性等の改善効果が好適な水準に達し易い傾向があり、2.0質量%以下であるとシリコーンオイルとしての特性が損なわれ難く、シリカフィラー表面との結合性がより向上する傾向がある。変性シリコーンオイルは、重合度が10〜500程度のものが好ましい。重合度が10以上であると揮発性が低くシリカフィラーを表面処理する際に加熱により揮散し難い傾向があり、500以下であると粘度が高くなり過ぎずシリカフィラー表面を均一に処理し易い傾向がある。このような変性シリコーンオイルは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
シリカフィラーの含有量は、接着剤成分の全質量を基準として、10質量%以上80質量%未満であるが、10〜70質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。また、シリカフィラーの含有量は、接着剤成分の全体積を基準として、5体積%以上40体積%未満であるが、10〜35体積%であることが好ましく、15〜20体積%であることがより好ましい。シリカフィラーの含有量を10質量%以上又は5体積%以上とすることで、接着剤成分のチキソ性を充分高くすることができ、すなわち実装時の接着剤成分の流動性を充分低くすることができ、電極における導電粒子の捕捉率を充分確保することができる。なお、含有量が80質量%未満又は40体積%未満であると、フィルム状に成形する際に必要な溶剤量が過剰にならず、塗工が容易になるため、フィルム成形性が向上する。更に、塗工筋が発生し難くなる。
【0041】
(B:有機フィラー)
本実施形態において使用される有機フィラーの平均粒径は130〜2000nmであるが、130〜1500nmであることが好ましく、300〜1200nmであることがより好ましく、500〜1000nmであることがさらに好ましい。平均粒径が130nm以上であることにより、接着剤成分中での凝集を抑制することができ、隣接する回路電極間の絶縁性を向上することができる。また、平均粒径が2000nm以下であることにより、導電粒子の導通阻害を引き起こすことがない。このような有機フィラーとしてはアクリル粒子、スチレン粒子、ゴム粒子等が挙げられる。この中でもゴム粒子が好ましく、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等からなる粒子を用いることができる。特に、表面をシランカップリング剤で処理された有機フィラーであれば、熱反応性樹脂や光反応性樹脂に対する分散性が向上するのでより好ましい。また、有機フィラーとしては、例えば、ゴム粒子等からなるコアに、ポリマーを被覆したものも使用することができる。このような有機フィラーは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
ゴム粒子の中でシリコーンゴム粒子は、耐溶剤性に優れる他、分散性にも優れるため好適なゴム粒子として用いることができる。シリコーンゴム粒子はシラン化合物若しくはメチルトリアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を、苛性ソーダ、アンモニア等の塩基性物質によりpH>9に調整したアルコール水溶液に添加し、加水分解、重縮合させる方法、又はオルガノシロキサンを共重合する方法等で得ることができる。また、分子末端もしくは分子内側鎖にヒドロキシ基、エポキシ基、イミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等の官能基を有するシリコーンゴム粒子は、反応性樹脂への分散性が良好であるため好ましい。
【0043】
有機フィラーの含有量は、接着剤成分の全質量を基準として、5〜20質量%であるが、5〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。また、有機フィラーの含有量は、接着剤成分の全体積を基準として、5〜20体積%であるが、5〜15体積%が好ましく、5〜10体積%がより好ましい。有機フィラーの含有量が5質量%以上又は5体積%以上であると、絶縁抵抗値を充分確保することができ、20質量%以下又は20体積%以下であると、シリカフィラーと同様に塗工が容易となる。
【0044】
(C:接着剤成分)
本実施形態における回路接続材料に用いられる接着剤成分としては、例えば、熱反応性樹脂と硬化剤との混合物を好適に用いることができる。このうち、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物を用いることが好ましい。潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。また、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物との混合物、紫外線等により硬化するエネルギー線硬化性樹脂(光反応性樹脂)等も接着剤成分として用いることができる。
【0045】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂;ナフタレン環を含む骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂;グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、エレクトロマイグレーション防止の観点から、不純物イオン(Na、Cl等)、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。
【0046】
さらに接着剤成分には、接着後の応力を低減するため、又は接着性を向上するために、上述の成分に加えてブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴム成分を混合することもできる。また、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を含有させることもできる。
【0047】
さらに、フィルム形成性の観点から接着剤成分にフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂(フィルム形成性高分子)を配合することが好ましい。これらのフィルム形成性高分子を配合することは、反応性樹脂の硬化時の応力を緩和できる観点からも好ましい。また、接着性向上の観点から、フィルム形成性高分子が水酸基等の官能基を有することがより好ましい。
【0048】
(D:導電粒子)
導電粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、カドミウム等の金属、ITO、はんだなどの金属粒子、又はカーボン等の粒子などが挙げられる。導電粒子は、核となる粒子を1又は2以上の層で被覆し、最外層が導電性の層である粒子であってもよい。この場合、最外層はニッケル、金、パラジウム等が好ましい。また、導電粒子は、ニッケル等の遷移金属類の表面を金やパラジウムで被覆したものでもよい。
【0049】
さらに、導電粒子として、例えば、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等の絶縁粒子に、上述した金属等の導電性物質を被覆したものも使用することができる。例えば、導電粒子が、絶縁粒子に導電性物質を被覆したものであって、最外層を金又はパラジウム、核となる絶縁粒子をプラスチックとしたものである場合、又は導電粒子が熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧による変形性を有するため、接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。このような導電粒子は、例えば、核となる絶縁粒子に金属をめっき等により被覆することによって作製することができる。この被覆する方法としては、例えば、無電解めっき、置換めっき、電気めっき、スパッタリング等の方法が挙げられる。
【0050】
導電粒子の平均粒径は、接続する回路の電極高さより低くすると隣接電極間の短絡が減少する等の点から、1〜10μmであると好ましく、1〜8μmであるとより好ましく、2〜6μmであるとさらに好ましく、3〜5μmであると非常に好ましく、3〜4μmであると極めて好ましい。また、10%圧縮弾性率(K値)が100〜1000kgf/mmの導電粒子を適宜選択して使用することができる。
【0051】
なお、導電粒子の平均粒径をD1とし、シリカフィラーの平均粒径をD2としたとき、D1/D2が13.3〜1428.6であれば、シリカフィラーの凝集による接続抵抗への影響をより小さくすることができるため好ましい。このような観点から、D1/D2は、150〜714であることがより好ましく、200〜400であることがさらに好ましい。
【0052】
さらに必要に応じて、これら導電粒子を絶縁被覆処理することができる。絶縁被覆処理としては、例えば、絶縁性小粒子を導電粒子に付着又は結合する方法、導電粒子の表面に絶縁性樹脂による膜を形成する方法等が挙げられる。
【0053】
上記絶縁性小粒子としては、例えば、無機酸化物微粒子、有機微粒子が挙げられるが、対向する回路電極間の導通性を充分高くする観点から、無機酸化物微粒子であることが好ましい。無機酸化物微粒子としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム、マグネシウムより選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物からなる微粒子を好適に用いることができる。これらの中でも、隣接する回路電極間の絶縁性を良好にする観点から、シリカであることが好ましく、粒子径を制御した水分散コロイダルシリカ粒子であることがより好ましい。
【0054】
絶縁性小粒子の粒子径は、20〜500nmであることが好ましい。この粒子径が20nm以上であると、導電粒子を被覆する絶縁性小粒子が絶縁層として機能し、同一基板上で互いに隣り合う回路電極間のショートを充分に抑制し易い傾向がある。一方、500nm以下であると、対向する回路電極間の導通性を確保し易い傾向がある。このような導電粒子は単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
上記導電粒子の含有量は、隣接する回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性を良好にする観点から、接着剤成分の全体積に対して、0.1〜30体積%であることが好ましく、1〜25体積%であることがより好ましい。
【0056】
導電粒子の単分散率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。なお、単分散率の好ましい上限値は100%である。ここで、導電粒子の単分散率とは、上記回路接続材料中の導電粒子全体において凝集せずに単独で存在する導電粒子(単独粒子)の割合を意味し、下記式(1)で表される。単分散率がこのような範囲にあることで、隣接する回路電極間の絶縁特性が向上するという効果を奏する。なお、導電粒子の単分散率とは、導電粒子全体において凝集せずに単独で存在している導電粒子(単独粒子)の割合を意味し、例えば次のようにして測定することができる。まず、接着剤成分のみからなる接着剤層を作製し、これをフィルム状回路接続材料とラミネートしたものを1mm角に切断する。また、接着剤層を別途作成し、これを3mm角に切断する。これらをそれぞれカバーガラスに乗せ、それらを貼り合わせて、3mm角の接着剤層、1mm角のフィルム状回路接続材料、1mm角の接着剤層がこの順で積層された積層体を得る。これを、(株)東レエンジニアリング製高精細自動ボンダ(FC−1200)を用いて80℃で40秒間圧延した後、さらに200℃で20秒間加熱加圧する。加熱加圧後の積層体を主面側から、キーエンス製光学顕微鏡(VH−Z450)を用いて1000倍にて撮像する。得られた画像から下記式(1)に従い導電粒子の単分散率を計算する。なお、圧延条件や加熱加圧条件は、測定対象であるフィルム状回路接続材料の特性に合わせて適宜変更することができる。
【0057】
導電粒子の単分散率(%)=(単独粒子数/測定した全導電粒子数)×100 ・・・(1)
【0058】
なお、本実施形態における各種粒子の平均粒径は、次のようにして求めることができる。すなわち、1個の粒子を任意に選択し、これを走査型電子顕微鏡で観察してその最大径及び最小径を測定する。この最大径及び最小径の積の平方根をその粒子の粒径とする。この方法で、任意に選択した粒子50個について粒径を測定し、その平均値を各種粒子の平均粒径とする。
【0059】
[回路接続材料の製造方法及び使用方法]
本実施形態の回路接続材料は、例えば、エポキシ樹脂、アクリルゴム及び潜在性硬化剤を含む接着剤成分を有機溶剤に溶解又は分散して液状化し、それに導電粒子、シリカフィラー及び有機フィラーを加えて分散させることで作製することができる。なお、必要に応じ、さらにこれをフィルム状に成形することもできる。その場合、得られた回路接続材料を剥離性基材上に塗布して硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより、フィルム状の回路接続材料が得られる。なお、有機溶剤としては、例えば、接着剤成分の溶解性向上の観点から、芳香族炭化水素系と含酸素系との混合溶剤が好ましい。
【0060】
また、本実施形態の回路接続材料は、接着剤成分と導電粒子とを含むACF(Anisotoropic Conductive Film)層と、接着剤成分を含み、導電粒子を含まないNCF(Non−Conductive Film)層との少なくとも二層からなるフィルム状の回路接続材料とすることができる。なお、この際、本実施形態におけるシリカフィラーはACF層及びNCF層の両方に含有させることができるが、ACF層に含有させる場合には、ACF層の接着剤成分の総量に対して10質量%以上又は5体積%以上含有させることが好ましい。
【0061】
このようなフィルム状の回路接続材料の厚みは、導電粒子の粒径及び回路接続材料の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。厚みが1μm以上であると充分な接着性を得易い傾向があり、100μm以下であると対向する回路電極間の導通性を得るために多量の導電粒子を必要としないため、コスト等の観点から現実的である。
【0062】
また、本実施形態の回路接続材料は、導電粒子の電極上への捕捉性が向上することから、3000μm以下の面積の電極を有する回路基板等を電気的に接続する材料として好適に使用することができる。ただし、電極上に導通特性を発現する導電粒子を必要最低限捕捉する観点から、このような回路基板の電極の面積は1500μm以上であることが好ましい。また、本実施形態の回路接続材料は、12μm以下のピッチを有する電極群(すなわち、12μm以下の間隔を空けて配置された複数の電極)を有する回路基板等を電気的に接続する材料として好適に使用することができる。ただし、電極ピッチ間が狭すぎる場合、導電粒子が電極間で凝集して絶縁破壊を起こす可能性があるため、電極のピッチは8μm以上であることが好ましい。
【0063】
図1は、本実施形態の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。回路接続材料1はフィルム状であり、シリカフィラー、有機フィラー及び接着剤成分を含有する樹脂組成物層3を有している。そして複数の導電粒子5が、樹脂組成物層3中に分散している。
【0064】
フィルム状の回路接続材料1は、対向する一対の回路部材同士間に挟まれた状態で加熱及び加圧されたときに、溶融流動して対峙する回路電極同士を電気的に接続した後、硬化して接着強度を発現する。
【0065】
上記フィルム状の回路接続材料1は、例えば、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、又はプリント基板のような回路部材同士を接続するための材料として有用である。すなわち、第一の電極を有する第一の回路基板と第二の電極を有する第二の回路基板とを、第一の電極と第二の電極とが対向するように配置し、対向配置した第一の電極と第二の電極との間に、上記本実施形態の回路接続材料を介在させ、加熱加圧して、第一の電極と第二の電極とを電気的に接続させることにより、回路基板同士を接続することができる。
【0066】
これにより、第一の電極を有する第一の回路基板と、第二の電極を有する第二の回路基板と、第一の回路基板及び第二の回路基板の間に介在する回路接続材料の硬化物と、を備え、第一の回路基板と第二の回路基板とは、第一の電極と第二の電極とが対向するように配置され、第一の電極と第二の電極とは、硬化物を介して電気的に接続され、回路接続材料は、本実施形態の回路接続材料である、図2に示すような断面を有する、本実施形態の回路基板の接続構造体が得られる。
【0067】
図2は、本実施形態の回路基板の接続構造体の一実施形態を示す概略断面図である。図2に示す回路基板の接続構造体101は、第一の回路基板11及びこれの主面上に形成された第一の回路電極13を有する第一の回路部材10と、第二の回路基板21及びこれの主面上に形成された第二の回路電極23を有する第二の回路部材20とが、上述のフィルム状の回路接続材料1が硬化した硬化物からなりかつ第一及び第二の回路部材10、20の間に形成された回路接続部材1aによって接続されたものである。回路基板の接続構造体101においては、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが電気的に接続されていると共に接着している。
【0068】
回路接続部材1aは、シリカフィラー、有機フィラー及び接着剤成分を含有する樹脂組成物層3の硬化物3a、並びに、これに分散している導電粒子5から構成される。第一の回路電極13と第二の回路電極23とは、導電粒子5を介して電気的に接続されている。
【0069】
第一の回路基板11は、例えば、ポリエステルテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む樹脂フィルムである。
【0070】
回路電極13は、電極として機能し得る程度の導電性を有する材料(好ましくは金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種)で形成されている。複数の回路電極13が、第一の回路基板11の主面上に形成されている。
【0071】
第二の回路基板21は、例えば、ガラス基板であり、第二の回路基板21の主面上には、複数の第二の回路電極23が形成されている。
【0072】
回路基板の接続構造体101は、例えば、第一の回路部材10と、上記フィルム状の回路接続材料1と、第二の回路部材20とを、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙するようにこの順に積層した積層体を加熱及び加圧することにより、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが電気的に接続されるように第一の回路部材10と第二の回路部材20とを接続する方法、によって、得られる。
【0073】
この方法においては、例えば、まず、支持フィルム上に形成されているフィルム状の回路接続材料1を第二の回路部材20上に貼り合わせた状態で加熱及び加圧して回路接続材料1を仮接着する。その後、上記支持フィルムを剥離し、支持フィルムが剥離された面上に第一の回路部材10を、回路電極の位置を調整しながら載せて、積層体を準備する。そして、上記積層体を加熱及び加圧することで本接着し、回路基板の接続構造体101を得ることができる。
【0074】
上記積層体を加熱及び加圧する条件は、回路接続材料中の接着剤成分の硬化性等に応じて、回路接続材料が硬化して充分な接着強度が得られるように、適宜調整される。
【0075】
このような回路基板の接続構造体としては、例えば、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品と、プリント基板等の回路部材とを接続した構造などが挙げられる。これらの回路部材には電極が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられており、回路部材の少なくとも一組を、それらの回路部材に設けられた電極の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した電極間に本実施形態の回路接続材料を介在させ、加熱加圧して、対向配置した電極同士を電気的に接続して、前述したような回路基板の接続構造体を得ることができる。このとき、対向配置した電極同士は、異方導電性接着剤(回路接続材料)の導電粒子を介して電気的に接続される。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
[シリカフィラー分散液及び有機フィラー分散液の調製]
(シリカフィラー1)
シリカフィラーとして平均粒径12nmの乾式シリカ微粒子(日本アエロジル社製、製品名:Aerosil 200)200gを15リットルの反応槽にとり、シリコーンオイル(信越化学工業社製、製品名:KF96、重合度:10)を26g添加した。さらに攪拌しながら系内を窒素ガスで置換し、窒素ガスを流したまま280℃まで昇温、20分間保持後室温まで冷却した。このようにして、シリコーンオイルで疎水化処理したシリカフィラー(シリカフィラー1)を得た。これを酢酸エチルに分散させて、濃度13質量%のシリカフィラー1の酢酸エチル分散液を調製した。
【0078】
(シリカフィラー2)
シリカフィラーとして平均粒径75nmのシリカ微粒子(扶桑化学工業株式会社 クォートロンPL−7)を用いた以外は、シリカフィラー1と同様にして、シリカフィラー2の酢酸エチル分散液を調製した。
【0079】
(シリカフィラー3)
シリカフィラーとしてトリメチルシリル基で疎水化処理された平均粒径7nmのシリカ微粒子(日本アエロジル社製、製品名:Aerosil R812)を用いた以外は、シリカフィラー1と同様にして、シリカフィラー3の酢酸エチル分散液を調製した。
【0080】
(有機フィラー1)
有機フィラー1として、ゴム状アクリルポリマーのコアとガラス状高Tgポリマーのシェルからなる平均粒径130nmの有機フィラー(ガンツ化成株式会社製、製品名:スタフィロイドAC−3364P)を用いた。この有機フィラー1を酢酸エチルに分散させて、濃度15質量%の有機フィラー1の酢酸エチル分散液を調製した。
【0081】
(有機フィラー2)
有機フィラー2として平均粒径800nmのシリコーンレジンフィラー(信越ポリマー社製、製品名:X52−854)を用いたこと以外は、有機フィラー1と同様にして、有機フィラー2の酢酸エチル分散液を調製した。
【0082】
(有機フィラー3)
有機フィラー3として平均粒径2000nmのシリコーンレジンフィラー(信越ポリマー社製、製品名:KMP−590)を用いたこと以外は、有機フィラー1と同様にして、有機フィラー3の酢酸エチル分散液を調製した。
【0083】
(有機フィラー4)
有機フィラー4として平均粒径3500nmのシリコーンレジンフィラー(信越ポリマー社製、製品名:KMP−701)を用いたこと以外は、有機フィラー1と同様にして、有機フィラー4の酢酸エチル分散液を調製した。
【0084】
(実施例1)
[フィルム状回路接続材料の作製]
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、製品名:PKHC)35gを酢酸エチル80gに溶解し、またアクリルゴム30gを、酢酸エチル70gに溶解し、これらを混合することでポリマー濃度が30質量%の溶液を得た。なお、アクリルゴムとしては、ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、及びグリシジルメタクリレート3質量部の共重合体を用いた。アクリルゴムの重量平均分子量は85万であった。この溶液に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(旭化成エポキシ株式会社製、製品名:ノバキュアHX−3941、エポキシ当量185)50gを加えて撹拌し、接着剤溶液を作製した。この接着剤溶液に、シリカフィラー1の含有量が接着剤成分の総量に対して40質量%(20体積%)となるように、シリカフィラー1の酢酸エチル分散液を35g添加し、さらに有機フィラー1の含有量が接着剤成分の総量に対して5質量%(5体積%)となるように、有機フィラー1の酢酸エチル分散液を添加し攪拌した。この溶液100gに対して、平均粒径が3.0μmの絶縁被覆導電粒子20gを混合して分散液を作製した。なお、実施例1において、導電粒子の平均粒径D1をシリカフィラーの平均粒径D2で除した値、すなわち、D1/D2の値は表1に示すとおりであった。絶縁被覆導電粒子としては、プラスチック粒子に対しニッケルめっき及び金めっきをこの順に施した導電粒子に、コロイダルシリカが被覆されている粒子を用いた。分散液中の絶縁被覆導電粒子の含有量は、接着剤成分の総量に対して9体積%に調整した。
【0085】
この分散液をセパレータ(厚み40μm)上にロールコータで塗布し、80℃で5分間乾燥して厚み25μmのフィルム状回路接続材料を作製した。なお、セパレータとしては、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルムを用いた。
【0086】
[接続構造体サンプルの作製]
作製したフィルム状回路接続材料を用いて、金バンプ付きチップ(1.7mm×17mm、厚み:0.5mm)と、ITO回路付きガラス基板(ジオマテック製、厚み:0.7mm)との接続を、以下のとおり行った。なお、金バンプの面積は30μm×90μmであった。金バンプ間のスペース(ピッチ)は10μmであった。金バンプの高さは15μmであった。バンプ数は362であった。
【0087】
まず、フィルム状回路接続材料を所定のサイズ(2mm×19mm)に切断した。そして、フィルム状回路接続材料のセパレータが設けられた面とは反対側の面を、ITO回路付きガラス基板のITO回路が形成された面に向けて、ITO回路付きガラス基板の表面上に80℃、0.98MPa(10kgf/cm)で貼り付け、仮接着した。その後、ITO回路付きガラス基板に貼り付けたフィルム状回路接続材料からセパレータを剥離し、フィルム状回路接続材料を介した状態で、チップの金バンプとITO回路付きガラス基板との位置合わせを行った。次いで、チップの金バンプが設けられた面を、フィルム状回路接続材料のITO回路付きガラス基板が貼り付けられた面とは反対側の面に向けて、190℃、40g/バンプ、10秒間の条件で加熱及び加圧を行って本接着(本接続)を行い、接続構造体サンプルを得た。
【0088】
(実施例2)
シリカフィラーの分散液として、シリカフィラー2の酢酸エチル分散液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0089】
(実施例3)
シリカフィラーの分散液として、シリカフィラー3の酢酸エチル分散液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0090】
(実施例4)
シリカフィラー1の含有量が接着剤成分の総量に対して10質量%(5体積%)となるように、シリカフィラー1の酢酸エチル分散液を8.75g用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0091】
(実施例5)
シリカフィラー1の含有量が接着剤成分の総量に対して60質量%(30体積%)となるように、シリカフィラー1の酢酸エチル分散液を52.5g用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0092】
(実施例6)
有機フィラー1の含有量が接着剤成分の総量に対して20質量%(20体積%)となるように、有機フィラー1の酢酸エチル分散液を27g添加した以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0093】
(実施例7)
有機フィラーの分散液として、有機フィラー2の酢酸エチル分散液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0094】
(実施例8)
有機フィラーの分散液として、有機フィラー3の酢酸エチル分散液を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0095】
(比較例1)
有機フィラー4の含有量が接着剤成分の総量に対して5質量%(5体積%)となるように、有機フィラー4の酢酸エチル分散液を6.8g添加した以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0096】
(比較例2)
有機フィラー1の含有量が接着剤成分の総量に対して1質量%(1体積%)となるように、有機フィラー1の酢酸エチル分散液を1.4g添加した以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0097】
(比較例3)
有機フィラー1の酢酸エチル分散液を添加しない以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0098】
(比較例4)
シリカフィラー1の酢酸エチル分散液を添加しない以外は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0099】
(比較例5)
シリカフィラー1の含有量が接着剤成分の総量に対して80質量%(40体積%)となるように、シリカフィラー1の酢酸エチル分散液を70g添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルを作製した。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られたフィルム状回路接続材料及び接続構造体サンプルについて、それぞれ以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
(接続抵抗値)
接続構造体サンプルの接続抵抗を4端子法により測定した。(株)アドバンテスト製の定電流電源装置R−6145を用いて、一定電流(1mA)を接続構造体サンプルのチップ電極−基板電極間(接続部分)に印加した。電流の印加時における接続部分の電位差を、(株)アドバンテスト製のデジタルマルチメーター(R−6557)を用いて測定した。電位差は任意の10点で測定し、その平均値を求めた。電位差の平均値を接続抵抗値に換算した。得られた接続抵抗値を下記の基準に基づき評価した。
A:1Ω未満
B:1Ω以上5Ω未満
C:5Ω以上10Ω以下
D:10Ω超
【0103】
(絶縁抵抗値)
接続構造体サンプルについて、直流(DC)50Vの電圧を1分間印加した後の絶縁抵抗を、2端子測定法を用いマルチメータで測定した。ここで、絶縁抵抗とは隣り合う回路電極間(金バンプ間)の抵抗を意味する。各接続構造体サンプルが有する任意の10対の金バンプ間の絶縁抵抗値を測定してその平均値を求めた。そして、絶縁抵抗値の平均値を下記の基準に基づき評価した。
A:1010Ω超
B:10Ω以上1010Ω以下
C:10Ω以上10Ω未満
D:10Ω未満
【0104】
(導電粒子の単分散率)
接着剤成分のみからなる接着剤層を作製し、これを各フィルム状回路接続材料とラミネートしたものを1mm角に切断した。また、接着剤層を別途作成し、これを3mm角に切断した。これらをそれぞれカバーガラスに乗せ、それらを貼り合わせて、3mm角の接着剤層、1mm角のフィルム状回路接続材料、1mm角の接着剤層がこの順で積層された積層体を得た。これを、(株)東レエンジニアリング製高精細自動ボンダ(FC−1200)を用いて80℃で40秒間圧延した後、さらに200℃で20秒間加熱加圧した。加熱加圧後の積層体を主面側から、キーエンス製光学顕微鏡(VH−Z450)を用いて1000倍にて撮像した。得られた画像から導電粒子の単分散率を計算した。なお、導電粒子の単分散率とは、導電粒子全体において凝集せずに単独で存在している導電粒子(単独粒子)の割合を意味し、具体的には以下の数式(1)から求めた。
【0105】
導電粒子の単分散率(%)=(単独粒子数/測定した全導電粒子数)×100 ・・・(1)
【0106】
(フィルム成形性)
フィルム状回路接続材料の作製時において、分散液をセパレータ上にロールコータで塗布した際の塗工傷、白点の有無、塗工後のフィルムの割れ、タック力を評価した。評価は以下のとおり行った。
A:塗工傷、白点、フィルムの割れが無く、タック力が充分に高い
B:塗工傷、白点、フィルムの割れが発生している、又はタック力が低い
C:塗工傷、白点、フィルムの割れが発生しており、タック力が低い
【0107】
【表2】
【0108】
実施例1〜8のフィルム状回路接続材料はフィルム形成性が良好であると共に、導電粒子の単分散率も良好であった。また、このフィルム状回路接続材料を用いた接続構造体において、隣接する回路電極間の優れた絶縁特性と、対向する回路電極間の優れた導電特性を両立することができた。
【0109】
本実施例では、シリカフィラーに加え、粒子径の大きな有機微粒子(有機フィラー)を添加することで、導電粒子間距離を適切に保つことが可能となり、特に隣接する回路電極間の絶縁抵抗値を向上することができたものと考えられる。なお、本実施例では、疎水化処理を行ったシリカフィラーを用いることで、接着剤成分中にシリカフィラーをより多量に添加することが可能であった。そのため、接着剤成分のチキソトロピー性がより一層向上して、実装時(接続構造体作製時)の接着剤成分の流動性を好適に制御することができたと考えられる。このことはまた、バンプ上の粒子捕捉数を向上させ、接続抵抗値の低下に繋がった。
【符号の説明】
【0110】
1…回路接続材料、1a…回路接続部材、3…樹脂組成物層、3a…硬化物、5…導電粒子、10…第一の回路部材、11…第一の回路基板、13…第一の回路電極、20…第二の回路部材、21…第二の回路基板、23…第二の回路電極、101…回路基板の接続構造体。
図1
図2