(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電解製錬は、電気分解を利用する金属の精錬法である。電解製錬では、電解液が収容された電解槽に、所望の金属と不純物とを含む粗金属と種板を浸漬した状態で、粗金属と種板との間に通電する。すると、粗金属中の目的金属は、電解液に溶出したのち種板に析出付着する。種板として所望の金属板(純度の高い金属板)を使用すれば、種板を含んだ、純度の高い所望の金属板を得ることができる。また、種板として所望の金属以外の金属から形成された板を使用した場合には、種板の表面に所望の金属からなる金属板を形成することができる。
【0003】
例えば、銅電解精錬では、ステンレス製の板(SUS板)を陰極板(種板)として使用する、パーマネントカソード法と呼ばれる方法が広く知られている。このパーマネントカソード法では、SUS板の両面に銅が付着して銅板(電気銅板)が形成される。そして、ISA法を作用した場合には、剥ぎ取り機によってSUS板の両面から電気銅板を剥がせば、純度の高い2枚の電気銅板を得ることができる。
【0004】
このパーマネントカソード法では、種板にSUS板を使用するが、SUS板はその表面の平面性(平滑性)が極めて良好であるので、高品質の電気銅板が得られるという利点を有している。しかも、SUS板は、丈夫でありかつ繰り返し使用が可能であるので、種板として銅板を使用する場合に比べて、種板を製造する工程が不要になるため、生産効率が向上する等の利点がある。
【0005】
ところで、パーマネントカソード法のように、種板から剥がした目的金属の金属板(目的金属板)を回収する場合、目的金属板は搬送コンベアなどによって搬送される。従来、剥がした目的金属板を直接搬送コンベア上に落下させて、目的金属板を搬送コンベアに載せることが行われている。この方法を採用した場合、目的金属板を搬送コンベア上に落下させた衝撃によって大きな音や振動を発生するので、作業環境の悪化や設備不具合の原因になってしまうという問題点がある。したがって、目的金属板を直接搬送コンベア上に落下させる方法を採用しつつ、これらの問題を防ぐためには、目的金属板と搬送コンベアが接触したときにおける衝撃を小さくすることが必要である。
【0006】
特許文献1には、目的金属板を落下させたときに発生する衝撃を緩和できる可能性がある技術が開示されている。
【0007】
特許文献1の技術では、複数のカソードを保持する受台と、受台の下方に配置されたコンベアと、を備えた剥離装置が開示されている。そして、特許文献1の剥離装置では、カソードから剥離された析出金属板はコンベア上に落とされ、コンベアに落とされた析出金属板をコンベアで搬送するように構成されている。
【0008】
一方、特許文献1の剥離装置では、コンベアの上方にクッションプレートを設けている。このクッションプレートは、カソードから剥離されて落下する析出金属板を一時的に保持するものである。つまり、特許文献1の剥離装置では、コンベアに落とす前に、一旦、クッションプレートで析出金属板を受け止める。すると、直接コンベア上に落下する場合に比べて、析出金属板が落下する高さを低くできるので、析出金属板が落下したときの衝撃を緩和できる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、特許文献1の技術では、クッションプレートの本来的な機能は、落下する析出金属板を一時的に保持することであり、落下の衝撃を軽減するものではない。このため、直接コンベア上に落下する場合に比べて落下の衝撃を緩和できる可能性があるものの、クッションプレートと析出金属板とが衝突した際の衝撃はそれほど緩和できない。したがって、特許文献1の技術では、析出金属板が落下したときの衝撃によって発生する騒音や振動を改善することは難しい。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、種板から剥離された金属板を搬送手段に載せる際に発生する騒音を抑制することができる剥離板の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の剥離板の搬送装置は、剥離装置によって種板から剥離された金属板を搬送する搬送装置であって、前記剥離装置の下方に設けられた搬送手段と、該搬送手段の上方に配置された、前記金属板を一時的に受け止めて前記搬送手段に移載する受板テーブルと、を備えており、前記受板テーブルが、その上面に緩衝材を備えており、その上面に沿って平行に移動可能に設けられていることを特徴とする
第2発明の剥離板の搬送装置は、第1発明において、前記緩衝材が、樹脂ローラであることを特徴とする。
第3発明の剥離板の搬送装置は、第1または第2発明において、前記受板テーブルは、その上面が水平面に対して傾斜しており、その上面の傾斜方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする。
第4発明の剥離板の搬送装置は、第1、第2または第3発明において、前記受板テーブルが、前記種板の一方の面側にのみ設けられており、前記搬送手段は、前記金属板を、前記種板の他方の面側から一方の面側に移動させるように設けられていることを特徴とする。
第5発明の剥離板の搬送装置は、第1、第2、第3または第4発明において、前記種板が、ステンレス板であり、前記金属板が、電気銅板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、剥離した金属板を受板テーブルで受けとめ、その後、受板テーブルが移動して、自重により金属板を搬送手段に落下させる。搬送手段よりも上方に位置する受板テーブルで一旦金属板を受け止めているので、搬送手段に直接金属板が落下する場合に比べて、落下した時の衝撃を軽減できる。しかも、受板テーブルは緩衝材を有しているので、金属板が受板テーブル上に落下した時の騒音を軽減することができるし、金属板および/または受板テーブルの損傷を抑えることができる。
第2発明によれば、緩衝材が樹脂ローラであるので、受板テーブルから搬送手段にスムースに金属板を移載することができ、移載の際に、金属板および/または受板テーブルの損傷などを防止することができる。
第3発明によれば、受板テーブルを傾斜方向の上方に移動させれば、金属板をスムースに搬送手段上に落下させることができる。
第4発明によれば、種板の一方の面から剥離された金属板は受板テーブル上に落下し、種板の他方の面から剥離された金属板は直接搬送手段上に落下する。その状態から、搬送手段上の金属板を種板の一方の面側に移動させて受板テーブル上の金属板を搬送手段上に落下させれば、金属板を重ねることができる。
第5発明によれば、種板としてSUS板を使用して得られた電気銅板の品質低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の剥離板の搬送装置は、電解製錬で種板の表面に形成された金属板を搬送する装置であって、種板から剥離された金属板を搬送装置に移載する際に発生する騒音や設備などの損傷を防止することができるようにしたことに特徴を有している。
【0016】
なお、本発明の剥離板の搬送装置によって搬送される金属板は、とくに限定されない。金属板としては、例えば、パーマネントカソード法においてステンレス板(SUS板)を種板として製造された電気銅板や、チタン板を種板として製造された電気ニッケル板等を挙げることができる。
以下では、パーマネントカソード法によって形成された電気銅板を搬送する場合を代表として説明する。
【0017】
(SUS板)
まず、SUS板の表面に電気銅板が表面に形成された合板Pについて説明する。
図4に示すように、合板Pは、銅電解製錬において陰極版として使用されるSUS板PSの両面に電気銅板CPが形成されたものである。電気銅板CPは、銅電解製錬において銅が析出付着して形成される。
【0018】
SUS板PSは、陰極ビームBに2つの吊手Hを介してステンレス製のプレートBPが吊り下げられた構成を有している。そして、プレートBPの側端縁には、絶縁素材からなる電着防止部材Dが設けられており、電着防止部材Dが設けられている部分(つまりプレートBPの側端縁)に銅電解製錬の際に銅が付着することを防止している。かかる構成であるので、プレートBPの全体を銅が覆ってしまうことを防止できる。そして、後述する電気銅板回収設備Sの剥取装置S3において、合板Pの側端縁からプレートBPと電気銅板CPとの間にチス刃等を挿入すれば、電気銅板CPをプレートBPから剥がすことができるのである。
【0019】
(電気銅板回収システムの概略説明)
つぎに、本実施形態の剥離板の搬送装置1を説明する前に、本実施形態の剥離板の搬送装置1が採用される電気銅板回収設備Sの概略を説明する。
【0020】
図3に示す電気銅板回収設備Sは、いわゆるISA法を採用した設備である。つまり、電気銅板回収設備Sは、搬入部S1と、洗浄装置S2と、剥取装置S3と、積載装置S4と、梱包装置S5と、銅板搬出部S6と、SUS搬出部S7と、不良品摘出部S8と、を備えている。本実施形態の剥離板の搬送装置1は、剥取装置S3から積載装置S4に搬送するための装置として設けられている。
【0021】
なお、合板Pは、搬入部S1〜剥取装置S3の区間、陰極ビームBを搬送装置に吊り下げられた状態で搬送される。また、電気銅板CPが剥ぎ取られたSUS板PSは、剥取装置S3〜SUS搬出部S7の区間、陰極ビームBを搬送装置に吊り下げられた状態で搬送される。
【0022】
この電気銅板回収設備Sでは、まず、電気銅板CPが表面に形成された合板Pが搬入部S1に搬入される。搬入部S1に搬入されたとの合板Pは、搬送装置によって洗浄装置S2まで搬送され洗浄される。この間、合板Pは、その表面と垂直な方向(表面の法線方向)に沿って移動される。そして、洗浄装置S2によって洗浄された合板Pは、その搬送方向がその表面と平行な方向に切り替えられて剥取装置S3に搬送される。
【0023】
剥取装置S3に搬送されると、合板Pは、そのプレートBPから電気銅板CPが剥ぎ取られ、2枚の電気銅板CPとSUS板PSに分離される。
【0024】
剥取装置S3で剥ぎ取られた2枚の電気銅板CPは、本実施形態の剥離板の搬送装置1によって重ねられて、積載装置S4に搬送される。
【0025】
積載装置S4では、2枚重ねで搬送される電気銅板CPを、所定の枚数又は重量となるように積層する。そして、所定の枚数又は重量で積層された電気銅板CPは、搬送装置によって梱包装置S5に搬送され、適当な包装物にて梱包される。その後、梱包された電気銅板CPは、搬送装置によって銅板搬出部S6に送られて回収される。
【0026】
一方、剥取装置S3によって2枚の電気銅板CPから分離されたSUS板PSは、搬送装置によってSUS搬出部S7に搬送され、所定の枚数毎にまとめて回収される。
【0027】
また、剥取工程中に引き剥がしを失敗した不良品(不良電気銅板)は、剥取装置S3によって検出されて不良品摘出部S8に搬送されて、不良品摘出部S8で回収される。
【0028】
なお、不良品を剥取装置S3から不良品摘出部S8に搬送する方法はとくに限定されない。例えば、変位センサーにより厚みを計測しプレートBP以上の厚みのある板は、シリンダー機構により、SUS搬出部S7に向かう方向とは反対方向に稼働するコンベアに移載する等の方法で、剥取装置S3から不良品摘出部S8に搬送することができる。
【0029】
(本実施形態の剥離板の搬送装置1を説明)
つぎに、本実施形態の剥離板の搬送装置1を説明する。
上述したように、本実施形態の剥離板の搬送装置1は、剥取装置S3から積載装置S4に搬送するための装置として設けられている。そして、上述した電気銅板回収設備Sでは、合板Pから剥がされた2枚の電気銅板CPを重ねた状態で搬送できるように構成されている。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の剥離板の搬送装置1(以下単に搬送装置1という)は、電気銅板CPを積載装置S4に搬送する搬送手段2と、この搬送手段2の上方に設けられた受板テーブル5と、を備えている。
【0031】
(搬送手段2)
図1に示すように、搬送手段2は、剥取装置S3の下方に設けられている。この搬送手段2は、一対のコンベアチェーン3,3と、一対のコンベアチェーン3,3間に設けられた複数のローラ4と、を備えている。そして、複数のローラ4上に電気銅板CPを載せて一対のコンベアチェーン3,3を駆動させれば、電気銅板CPを剥取装置S3から積載装置S4に搬送できるように構成されている。
【0032】
なお、一対のコンベアチェーン3,3には、電気銅板CPを確実に一対のコンベアチェーン3,3とともに移動させるために、所定の間隔を空けてフックfが設けられている。
また、
図1に積載装置S4は図示されていないが、剥取装置S3に対して、右方向に積載装置S4が設けられている。
【0033】
図1に示すように、複数のローラ4は樹脂ローラであって、回転軸4aと電気銅板CPが載せられるロール部4bとから構成されている。各ローラ4の回転軸4aは、その両端が一対のコンベアチェーン3,3によって回転可能に保持されている。また、各ローラ4のロール部4bは、その表面または全体がゴムやエンジニアリングプラスチックなどの樹脂によって形成されている。そして、各ローラ4のロール部4bは、その上端が一対のコンベアチェーン3,3の上面よりも上方に位置する程度の大きさに形成されている。
【0034】
このため、搬送手段2上に電気銅板CPが載せられても、電気銅板CPはローラ4のロール部4bと接触する。したがって、搬送手段2上に電気銅板CPが載せられたときの衝撃を緩和できるから、騒音や振動の発生を抑制できる。そして、ローラ4と接触したことによる電気銅板CPの損傷を防止することができる。
【0035】
なお、本明細書において、樹脂ローラとは、ローラ全体が樹脂で形成されているものや、
回転軸は樹脂以外で形成されているが、ロール部が樹脂で形成されているもの、また、ロール部の表面だけが樹脂で形成されているものを含む概念である。
【0036】
(受板テーブル5)
図1に示すように、受板テーブル5は、搬送手段2の上方(例えば20〜180mm程度上方)であって、剥取装置S3に配置された合板Pに対して、一方の面側(
図1では右側の面側)にのみ設けられている。具体的には、受板テーブル5は、剥取装置S3に配置された合板Pに対して積載装置S4側にのみ設けられている。
【0037】
この受板テーブル5は、略板状の本体部6と、この本体部6に設けられた複数のローラ7と、を備えている。
【0038】
図1に示すように、本体部6は、その上面が略平坦面に形成された部材である。この本体部6は、複数のローラ7が取り付けられる上面が開口した空間を有している。
なお、本体部6は、複数のローラ7を保持しておくことができるように形成されていればよい。例えば、中空な箱状の部材の上面に開口を設けて本体部6を形成してもよいし、複数のローラ7を保持するフレームだけで本体部6を形成してもよい(
図1(B)参照)。
【0039】
図1に示すように、複数のローラ7は、実質的に搬送手段2のローラ4と同等の構成を有している。つまり、複数のローラ7は、樹脂ローラであって、回転軸7aとロール部7bとから構成されている。各ローラ7の回転軸7aは、その両端が本体部6によって回転可能に取り付けられている。また、各ローラ7のロール部7bは、その表面または全体がゴムやエンジニアリングプラスチックなどの樹脂によって形成されている。そして、各ローラ7のロール部7bは、その上端が本体部6の上面よりも上方に位置する程度の大きさに形成されている。したがって、受板テーブル5上に電気銅板CPが載せられると、電気銅板CPは、複数のローラ7のロール部7bにのみ接触するように、複数のローラ7が設けられている。
【0040】
このため、受板テーブル5上に電気銅板CPが載せられても、電気銅板CPは複数のローラ7のロール部7bと接触する。したがって、受板テーブル5上に電気銅板CPが載せられた際の衝撃を緩和できるので、騒音や振動の発生を抑制できる。そして、ローラ7と接触したことによる電気銅板CPの損傷を防止することができる。
【0041】
また、受板テーブル5は、その本体部6の上面と平行な方向に移動可能に設けられている(
図1の矢印の方向)。具体的には、剥取装置S3に配置された合板Pの一方の面(
図1では右側の面)に対して、接近離間するように設けられている。
【0042】
このため、受板テーブル5上に電気銅板CPが載せられた状態で受板テーブル5を合板P側から離間するように移動させれば、受板テーブル5上の電気銅板CPを、受板テーブル5上から搬送手段2上に移載することができる(
図2参照)。つまり、受板テーブル5を移動させると、電気銅板CPはその自重による慣性力でその位置にとどまろうとする。しかも、電気銅板CPは複数のローラ7上に載せられているので、電気銅板CPは受板テーブル5に対して相対的に移動しやすくなっている。したがって、電気銅板CPは受板テーブル5の移動に追従することができないので、受板テーブル5を移動させることによって、電気銅板CPを受板テーブル5から搬送手段2上に落下させることができる。
【0043】
そして、電気銅板CPが受板テーブル5に対して相対的に移動する際に、電気銅板CPが複数のローラ7上に載せられているので、受板テーブル5の本体部6と電気銅板CPの接触(摩擦)を少なくすることができる。したがって、受板テーブル5から搬送手段2に電気銅板CPを移載する際に、電気銅板CPや受板テーブル5の本体部6が損傷することを防止することができる。
【0044】
(本実施形態の剥離板の搬送装置1の作動)
つぎに、
図2に基づいて、本実施形態の剥離板の搬送装置1によって、電気銅板CPを搬送する作業を説明する。
なお、以下では、剥取装置S3において一つの合板Pから2枚の電気銅板CPを剥ぎ取って、剥ぎ取った2枚を重ねて積載装置S4に搬送する場合を説明する。
【0045】
まず、剥取装置S3に合板Pが配置されると、剥取装置S3によって合板PのプレートBPの両面から2枚の電気銅板CPがそれぞれ剥がされる。そして、剥がされた2枚の電気銅板CPは、その下端を支点として上端が下方に揺動するように倒れて、各電気銅板CPは、受板テーブル5および搬送手段2に落下する(
図2(A))。
【0046】
このとき、各電気銅板CPは、それぞれ搬送手段2の複数のローラ4および受板テーブル5の複数のローラ7上に落下する。つまり、各電気銅板CPは、搬送手段2の一対のコンベアチェーン3,3や受板テーブル5の本体部6には直接接触しない。しかも、樹脂によって形成された、複数のローラ4のロール部4bおよび複数のローラ7のロール部7bに接触するので、各電気銅板CPの落下の衝撃を緩和できるし、金属同士の接触を防ぐことができる。したがって、各電気銅板CPが搬送手段2および受板テーブル5に落下したときに発生する騒音や振動を小さくできる。また、この際に発生する音は、ゴム等の樹脂上に重量物が落下する低音の音であるので、作業環境の悪化を防ぐことができる。
【0047】
2枚の電気銅板CPが搬送手段2および受板テーブル5にそれぞれ載せられた状態になると、搬送手段2によって、搬送手段2上の電気銅板CPは受板テーブル5の下方まで移動される(
図2(B))。
【0048】
搬送手段2上の電気銅板CPは受板テーブル5の下方まで移動すると、剥取装置S3が保持しているSUS板PS(プレートBP)から離間するように受板テーブル5が移動される。受板テーブル5上の電気銅板CPは受板テーブル5の移動に追従できないので、この電気銅板CPは受板テーブル5上から搬送手段2に向かって落下する。すると、受板テーブル5の下方には、搬送手段2に載せられた電気銅板CPが配置されているので、2枚の電気銅板CPを重ねることができる(
図2(C))。つまり、一つの合板Pからを剥ぎ取られた2枚の電気銅板CPを、搬送手段2上に重ねることができる。
【0049】
その状態で、搬送手段2を移動させれば、積み重ねられた状態で、2枚の電気銅板CPを積載装置S4に供給することができる。
【0050】
以上のごとく、本実施形態の剥離板の搬送装置1によって、一つの合板Pからを剥ぎ取られた2枚の電気銅板CPを積み重ねて搬送するようにすれば、騒音や振動を抑制することができ、作業環境の悪化も防ぐことができる。
【0051】
(ローラ4、7について)
搬送手段2の複数のローラ4や受板テーブル5の複数のローラ7において、そのロール部4bやロール部7bを形成する素材はとくに限定されない。電気銅板CPと接触したときに、その衝撃をある程度軽減できる樹脂で形成されていればよい。例えば、上述したゴムやエンジニアリングプラスチック以外にも、ウレタンや高密度ポリエチレン、ポリカーボネート等の樹脂を使用することができる。また、耐摩耗性を考慮すれば、硬質ゴムを使用することが好ましい。さらに、樹脂以外でも、上記機能を有するのであれば、有機・無機繊維を混紡したものに樹脂を含浸させたものや、木材、圧密成形された不織布等を使用することも可能である。
【0052】
(緩衝材について)
上記例では、受板テーブル5の複数のローラ7が特許請求の範囲にいう緩衝材に相当するが、緩衝材は必ずしも上記のごときローラ7でなくてもよい。つまり、受板テーブル5上に電気銅板CPが落下したときの衝撃を緩和できるものであれば、種々の部材を緩衝材として採用することができる。例えば、本体部6の表面全面に、ゴムなどを素材とする樹脂シートや樹脂層を設けて緩衝材としてもよい。また、本体部6の表面にスポット状にゴムなどの樹脂などからなる部材を設けて緩衝材としてもよい。しかし、上記のごときローラ7を採用した場合には、受板テーブル5から搬送手段2上に電気銅板CPを移載する際に、電気銅板CPをスムースに移動させることができるという利点が得られる。もちろん、緩衝材として、電気銅板CPとの摩擦係数が小さい素材を使用すれば、ローラ7を設けた場合と同等程度に電気銅板CPをスムースに移動させることができる可能性はある。
【0053】
(受板テーブル5の移動方法について)
受板テーブル5を合板Pに対して接近離間するように移動させる方法はとくに限定されない。例えば、受板テーブル5の側方に案内レールを設けて、この案内レールに沿って移動するように、受板テーブル5を案内レールに取り付ける。そして、シリンダー機構やコンベア機構(ギア駆動)等によって受板テーブル5を移動させるようにすれば、受板テーブル5を安定した状態で移動させることができる。
【0054】
(受板テーブル5の高さ)
受板テーブル5は、搬送手段2の上方に配置されていればよく、その設置高さはとくに限定されない。しかし、搬送手段2から受板テーブル5までの距離が短ければ短いほど、落下の際の音の発生を抑制できる。また、20〜180mm程度上方に配置されていれば、電気銅板のバリや捻じれの影響を受けないという点でも好ましい。
【0055】
(受板テーブル5の配設方法について)
また、受板テーブル5は、本体部6の上面が水平面に対して若干傾斜した状態となるように設けられていてもよい。つまり、合板P側の端部が合板Pから離れた側の端部よりも若干下がった状態(合板P側に向かって下傾した状態)となるように、受板テーブル5を設けてもよい。この場合、上面の傾斜方向に沿って受板テーブル5を上方(合板Pから離れる方向)に移動させれば、受板テーブル5を移動させた際に、電気銅板CPには、電気銅板CPを受板テーブル5上面に沿って滑り落とす方向に力が加わる。すると、受板テーブル5を水平にしている場合に比べて、電気銅板CPが受板テーブル5の移動に追従しにくくなる。したがって、受板テーブル5の移動速度をある程度遅くしても、受板テーブル5から搬送手段2上に電気銅板CPを落下させることができる。
【0056】
受板テーブル5を傾斜させる場合、その傾斜角度は特に限定されないが、受板テーブル5上(上記例では複数のローラ7上)に電気銅板CPが載せられただけでは、受板テーブル5上から電気銅板CPが滑り落ちない程度に形成するのはいうまでもない。例えば、ISA法で形成される一般的な電気銅板CPを受板テーブル5上に載せる場合は、水平面に対する傾斜角度は2〜15°程度が望ましい。
【0057】
(電気銅板CPの追従防止について)
そして、受板テーブル5を移動させた際に電気銅板CPが追従することを防止するのであれば、電気銅板CPの移動を規制するストッパ等を設けてもよい。
【0058】
(受板テーブル5の設置数について)
また、上記例では、剥取装置S3に配置された合板Pの片側だけに受板テーブル5を設ける場合を説明した。しかし、搬送手段2に直接電気銅板CPを落下させたくない場合、例えば、騒音の発生を大幅に低減したい場合等には、剥取装置S3に配置された合板Pの両側に受板テーブル5を設けてもよい。しかし、片側だけに受板テーブル5を設けた場合には、騒音を低減しつつ設備を簡素化できる。また、ISA法を採用した設備の場合であれば、両方の受板テーブル5を移動させて2枚の電気銅板CPを搬送手段2に供給するよりも、上述したように、受板テーブル5を一つだけ設けた方が、電気銅板CPを搬送する速度を速くできる。
【0059】
(搬送手段2について)
上記例では、搬送手段2としてチェーンコンベアを採用した場合を説明した。
しかし、搬送手段2は、電気銅板CPを上面に載せて搬送できる構成であればよく、上記のごとき構成に限定されない。例えば、ローラコンベアやベルトコンベアなどを採用することも可能である。この場合でも、ローラコンベアであれば、ローラを樹脂ローラとすれば、電気銅板CPが落下したときの衝撃を緩和することができる。また、ベルトコンベアであれば、樹脂製のベルトを使用したり、ベルトの表面に樹脂などの緩衝材を設けたりしておけば、電気銅板CPが落下したときの衝撃を緩和することができる。
【実施例】
【0060】
本発明の剥離板の搬送装置を採用した場合における騒音低減効果を確認した。
【0061】
ゴムローラを受板テーブルおよび搬送手段に設置した状態において剥取装置から本発明の搬送装置に電気銅板を落下させた場合(実施例)と、ゴムローラを搬送手段だけに設置して剥取装置から電気銅板を落下させた場合(比較例)で、発生する騒音を比較した。
【0062】
なお、比較例の受板テーブルには、実施例の受板テーブルからゴムローラを取り外したものを使用した。
また、騒音は、騒音測定器(株式会社アコー製、Type6224)を使用して、作業者の作業位置で測定した。
【0063】
まず、比較例では、剥取装置から電気銅板を落下させた際の騒音測定値は95dBであり、作業環境としては不適な状態であった。
また、一枚の合板を処理するだけで、受板テーブルの表面には電気銅板による擦り傷がついていた。銅電解精錬設備では、剥取装置によって一日に数千枚の合板を処理するため、比較例の受板テーブルでは、一日操業するだけで、かなりの磨耗による損傷が進んでしまうことが懸念された。
【0064】
一方、実施例では、比較例と比べて、剥取装置から電気銅板を落下させた際の騒音測定値を、−3〜−10dBとすることできた。
また、実施例では、一枚の合板を処理しただけでは、受板テーブルに傷などの損傷は見られず、受板テーブルの耐久性を高くできることが確認された。
【0065】
以上の結果より、本発明の剥離板の搬送装置を採用した場合には、剥取装置から電気銅板を落下させた際の騒音を低減でき、作業者の作業環境を改善できることが確認された。
また、受板テーブルの損傷を防ぐことができ、受板テーブルの耐久性を高くすることができることが確認された。