(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該プラズマ含有源が、水素プラズマ、ヘリウムプラズマ、ネオンプラズマ、アルゴンプラズマ、キセノンプラズマ、水素/ヘリウムプラズマ、水素/アルゴンプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素、窒素/ヘリウム、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、窒素/アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、NF3プラズマ、メチルアミンプラズマ、ジメチルアミンプラズマ、トリメチルアミンプラズマ、エチルアミンプラズマ、ジエチルアミンプラズマ、トリメチルアミンプラズマ、エチレンジアミンプラズマ及びそれらの混合物、からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
該オルガノケイ素前駆体が、1−クロロ−1,4−ジシラペンタン、1−クロロ−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ジクロロ−1,5−ジシラヘキサン、2,6−ジクロロ−2,6−ジシラヘプタン、1−ジメチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−ジエチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−ジメチルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−ジエチルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、2−ジメチルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−ジエチルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−ジ−イソ−プロピルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−ジメチルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−ジエチルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−ジ−イソ−プロピルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(ジエチルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,5−ビス(ジメチルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(ジエチルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(ジメチルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(ジエチルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,6−ビス(ジメチルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(ジエチルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、1,2−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−n−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−イソ−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−tert−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1,2−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−n−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−イソ−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−tert−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロヘキサン、1,2,5−トリメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−n−プロピル−2,5−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−イソ−プロピル−2,5−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1,2,6−トリメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−n−プロピル−2,6−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−イソ−プロピル−2,6−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、及び1−tert−ブチル−2,6−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本明細書に記載されているのは、シリコン系誘電体膜、並びにそれを形成する方法及び組成物である。明細書全体にわたり、本明細書で用いられる用語「シリコン系膜」及び「誘電体膜」は互換的であり、ケイ素、炭素及び任意に窒素及び水素(これは膜中に存在する可能性があるが、XPSにより測定することができない)を含み、化学量論的な又は非化学量論的なシリコンカーバイド、炭窒化ケイ素、及びそれらの混合物からなる群より選択される膜を指す。ある実施形態において、シリコン系膜は、酸素を含まない又は酸素を「実質的に含まない」。これらの実施形態において、本明細書で用いられる用語「実質的に含まない」は、XPSによって測定した場合に、2原子質量%(at.wt.%)以下、又は1at.wt.%以下、又は0.5at.wt.%以下の酸素を含む膜を意味する。
【0010】
シリコン系誘電体膜は、以下の特徴のうち少なくとも1又は複数を示す:熱ケイ素酸化物と比較して比較的低いウェットエッチ速度(希HFに暴露する場合など);より低い漏洩電流;良好なウェーハ内均一性(この均一性は、ウェーハの異なる領域(例えば5点マップ)における測定と標準偏差計算により得ることができる);コンフォーマリティ;気相プロセス(例えば、酸化性プラズマなど)に対する耐性;及びそれらの組み合わせ。その特徴に関して、このシリコン系膜は、熱ケイ素酸化物と比較して、特性及び膜構造における変化が比較的少ないか変化がない。上述のものに加えて、シリコン系膜は、以下の利点のうち1又は複数を提供する:高熱安定性(例えば、対象が約600〜1000℃の範囲の1又は複数の温度に供されるスパイクアニール処理ステップに耐える能力)、環境安定性(例えば、1〜24時間の環境への暴露の後、屈折率(RI)又は他の膜特性がほとんど変化を示さない又は10%以下、5%以下、2%以下、又は1%以下の変化を示すこと)、炭素高含有膜(C及び/又はNドープアモルファスシリコン系膜であり、<50原子%のSiを有し、炭素含有量がSi含有量と同じか又はそれより大きい)を含む調節可能な組成、及びこれらの組み合わせ。
【0011】
一つの具体的な実施形態において、本明細書に記載のシリコン系膜は、低いエッチ速度(又は測定不能のエッチ速度)、高密度(例えば、2.0g/cc以上の膜密度を有すること)、低減されたSi−Si結合の量(例えば、ラマン分光法により測定される全結合の<5%)、及びXPSにより測定される50%原子wt.%未満のSi、を示す。
【0012】
集積化処理において、フォトレジスト剥離は絶対に必要なステップである。フォトレジスト除去は一般に、酸素(O
2)プラズマドライアッシングステップを用いて実施される。フォトレジストに隣接するケイ素含有誘電体膜の特性は、O
2プラズマ処理の間に劣化する可能性がある。遭遇する一般的な問題は、以下のうち1又は複数である:膜の酸化、炭素の損失、膜の収縮、膜の高密度化、及び/又は剥離後の膜の吸湿の増加。これらの効果は、以下のうち1又は複数によって評価することができる:アッシングの前後の値により評価される、膜の屈折率(RI)の変化;XPSによって測定した場合に膜中のC at.wt.%の減少により示される、炭素含有量の低下;そのアッシング前の比誘電率(k)値と比較してより高い比誘電率(k)値;そのアッシング前の密度測定値と比較してより高い密度測定値;及びそのアッシング前の厚さ測定値と比較してより低いアッシング後の膜厚さ。高密度(例えば、2g/cc以上)及び良好なSi−C−Siカーバイド結合(FTIRスペクトルにおいて、〜800cm
-1にあるピークにより確かめられる)の膜が、より良好な酸素アッシング耐性を提供するだろう、と期待される。
【0013】
本明細書に記載のケイ素含有誘電体膜は、以下の特徴:屈折率、比誘電率、密度、厚さ、ウェットエッチ耐性、膜厚さ、又はそれらの組み合わせ、のうち1又は複数において、酸素アッシング処理ステップ、温度スパイクアニールプロセス、及び/又は1〜24時間の範囲の環境大気への暴露の前後で同じ特徴を比較したときに、+又は−20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下の変化を示す。
【0014】
本明細書に記載のケイ素含有誘電体膜は、2つのケイ素原子、少なくとも1つのSi−Me基、及び少なくとも1つのC
2又はC
3結合を有する、オルガノケイ素前駆体化合物を含む組成物から堆積される。C
2又はC
3結合は、アルカン−1,2−ジイル、アルカン−1,3−ジイルからなる群より選択されるジラジカル鎖である。アルカン−1,2−ジイル及びアルカン−1,3−ジイルジラジカル鎖の例としては、エチレン(−CH
2CH
2−)、置換されたエチレン(−CHMeCH
2−、−CH(Me)CH(Me)−)、プロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)、及び置換されたプロピレンが含まれるが、これらに限定されない。オルガノケイ素化合物の例としては、1,4−ジシラペンタン(「1,4−DSP」)及び同様の構造を有する他のオルガノケイ素化合物が含まれる。本明細書に記載の前駆体から堆積されたシリコン系誘電体膜は、他の前駆体(1,4−ジシラブタン(「1,4−DSB」)など)を超える独特の膜特性を有することが示された(炭素高含有であること(例えば、40原子%より多いCを有する)、シリコンカーバイド膜中のSi、C含有量を調節する能力又は結果として生じる炭窒化ケイ素膜中のSi、C、及びN含有量を調整する能力、など)。
【0015】
ケイ素、炭素、及び任意に窒素を含む誘電体膜を形成するために、ある実施形態においては、オルガノケイ素前駆体は酸素を含まないことが望ましい。ある実施形態においては、前駆体が、比較的低い温度(例えば、600℃以下)で膜を堆積するのに十分反応性であることも望ましい。前駆体の反応性を望むにもかかわらず、前駆体はまた、顕著に経時的に劣化しない又は変化しない(例えば、1%未満/年の変化)ように十分に安定したものでもあるべきである。ケイ素原子の間にエチレン又はプロピレン架橋を有する、本明細書に記載のオルガノケイ素化合物(1,4−DSPなどであるが限定されない)は、高い温度でC−Si結合を開裂させる特殊な傾向を有する。1つのケイ素基がエチレン架橋から開裂すると、橋頭の炭素原子にフリーラジカル又はカチオンが形成される。β位に位置する別のケイ素は、超共役を通してラジカル又はカチオンに安定を提供する、すなわち、Si−C結合の満たされたδ軌道は、空の又は単一占有p−軌道に電子を供与する。これは、βケイ素効果としても知られている。この超共役中間体は、第2のSi−C結合の開裂を伴いさらに分解する。最終結果は、揮発性の副生成物としてのエチレン又はプロピレン架橋の除去、及び化学的に反応性のケイ素種(その一部はSi−Me基を有する)の発生、であり、その結果他の反応性のケイ素種と反応してシリコン系膜を基材の上に堆積する。いかなる理論にも縛られるものではないが、Si−Meは、結果として得られるシリコン系膜に組み込まれることができ、それ故にSi−Me基を全く有しない1,4−ジシラブタンから堆積された比較膜より高い炭素含有量を提供する。
【0016】
一つの態様において、ケイ素、炭素、及び任意に窒素膜を含む誘電体膜を堆積するための組成物は、以下の式A〜Dを有する少なくとも1つのオルガノケイ素化合物を含む。
【化2】
上記式A〜Dにおいて、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハライド原子、及び式NR
1R
2(式中、R
1は直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択され、R
2は水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、C
6〜C
10アリール基、直鎖C
1〜C
6フッ素化アルキル基、分岐C
3〜C
6フッ素化アルキル基、電子吸引基、及びC
4〜C
10アリール基から選択され、任意にR
1及びR
2は共に結合して置換又は非置換の芳香環又は置換又は非置換の脂肪族環から選択される環を形成する)を有するオルガノアミノ基から選択され;R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子及びメチル(CH
3)基から選択され;R
6は、水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択される。
【0017】
本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、用語「直鎖アルキル」は、1〜10の又は3〜6の炭素原子を有する直鎖官能基を意味する。典型的な直鎖アルキル基には、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n−Pr)、イソ−プロピル(イソ−Pr又は
iPr)、ブチル(n−Bu)、イソブチル(
sBu)、sec−ブチル(
sBu)、tert−ブチル(
tBu)、ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ペンチル(アミル)、ヘキシル、イソ−ヘキシル、及びネオヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、用語「分岐アルキル」は、3〜10の又は3〜6の炭素原子を有する分岐官能基を意味する。典型的な分岐アルキル基には、イソ−プロピル(イソ−Pr又は
iPr)、イソブチル(
sBu)、sec−ブチル(
sBu)、tert−ブチル(
tBu)、イソ−ペンチル、tert−ペンチル(アミル)、イソ−ヘキシル、及びネオヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、用語「環状アルキル」は、3〜10の又は4〜10の炭素原子、又は5〜10の炭素原子を有する環状官能基を意味する。典型的な環状アルキル基には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、用語「アリール」は、5〜12の炭素原子又は6〜10の炭素原子を有する芳香族環状官能基を意味する。典型的なアリール基には、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、及びo−キシリルが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、用語「アルケニル基」は、1又は複数の炭素−炭素二重結合を有し、かつ3〜10の又は3〜6の又は3〜4の炭素原子を有する基を意味する。
【0021】
本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、用語「アルキニル基」は、1又は複数の炭素−炭素三重結合を有し、かつ3〜10の又は3〜6の又は3〜4の炭素原子を有する基を意味する。
【0022】
本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、用語「ジアルキルアミノ基」は、窒素原子に結合した2つのアルキル基を有し、かつ2〜10の又は2〜6の又は2〜4の炭素原子を有する基を意味する。
【0023】
本明細書に記載の式において及び明細書全体にわたり、本明細書で用いられる用語「電子吸引基」は、Si−N結合から電子を引き抜くように働く原子又はその基を表す。適した電子吸引基又は置換基の例には、ニトリル(CN)が含まれるが、これに限定されない。ある実施形態において、電子吸引置換基は、式A〜Dのうち任意の1つ中のNに隣接又は近接することが可能である。さらに、電子吸引基の非限定的な例には、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、RSO、及び/又はRSO
2(式中RはC
1〜C
10アルキル基(メチル基などだが限定はされない)又は別の基が可能である)が含まれる。
【0024】
上記の式において及び明細書にわたり、本明細書で用いられる用語「不飽和(の)」は、官能基、置換基、環又は架橋が、1又は複数の炭素二重結合又は三重結合を有することを意味する。不飽和の環の例としては、限定はされないが、フェニル環などの芳香環が可能である。用語「飽和(の)」は、官能基、置換基、環又は架橋が、1又は複数の二重結合又は三重結合を有しないことを意味する。
【0025】
ある実施形態において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ジアルキルアミノ基、アリール基、及び/又は電子吸引基のうち1又は複数は、置換されるか、又は例えば水素原子の代わりに置換された1又は複数の原子又は原子団を有してよい。典型的な置換基には、酸素、硫黄、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、I、又はBr)、窒素、及びリンが含まれるが、これらに限定されない。他の実施態様において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ジアルキルアミノアリール基、及び/又は電子吸引基のうち1又は複数は、非置換であってよい。
【0026】
ある実施形態において、前駆体中のR
1及びR
2はオルガノアミノ基NR
1R
2であり、式A〜B中で結合して環構造を形成する。これらの実施形態において、R
2は水素原子ではない。例えば、R
1及びR
2が共に結合して環を形成する実施形態において、R
2はR
1に結合するための不飽和結合を(水素置換基の代わりに)有する。それ故に、上記の例において、R
2は、C
1〜C
10アルケニル部分又は直鎖又は分岐C
1〜C
10アルキニル部分から選択してよい。これらの実施形態において、化合物の環構造は、不飽和(例えば、環状アルキル環)、又は飽和(例えば、アリール環)であることができる。さらに、これらの実施形態において、環構造はまた、置換される又は置換されることができる。一つの具体的な実施形態において、オルガノケイ素化合物は、脂肪族の、置換された環(5〜10の炭素原子及び少なくとも1つの窒素原子を有するヘテロ原子環状官能基など)を含む。典型的なオルガノアミノ基NR
1R
2(式中、R
1及びR
2は、式A〜B中で結合して環構造を形成する)には、2,6−ジメチルピペリジノ、ピペリジノ、2−メチル−ピロリジノ、2,5−ジメチル−ピロリジノが含まれるが、これらに限定されない。他の実施態様において、R
1及びR
2は、式A〜B中で結合していない。
【0027】
ある実施形態において、オルガノケイ素前駆体化合物は、本明細書に記載の式Aを有する。これらの特定の実施形態の典型的な化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:1−クロロ−1,4−ジシラペンタン、1,4−ジクロロ−1,4−ジシラペンタン、1−ジメチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−ジエチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−メチルエチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−ジ−n−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−イソ−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−sec−ブチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−tert−ブチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、1−(2,6−ジメチルピペリジノ)−1,4−ジシラペンタン、1−ピペリジノ−1,4−ジシラペンタン、1−(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1−(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(ジエチルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(メチルエチルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(ジ−n−プロピルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(ジ−イソ−プロピルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(イソ−プロピルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(sec−ブチルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、ビス(tert−ブチルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(2,6−ジメチルピペリジノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(ピペリジノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、1,4−ビス(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−1,4−ジシラペンタン、2−クロロ−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ジクロロ−ジシラヘキサン、2−ジメチルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−ジエチルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−メチルエチルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−ジ−n−プロピルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−ジ−イソ−プロピルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−イソ−プロピルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−sec−ブチルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−tert−ブチルアミノ−2,5−ジシラヘキサン、2−(2,6−ジメチルピペリジノ)−2,5−ジシラヘキサン、2−ピペリジノ−2,5−ジシラヘキサン、2−(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2−(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(ジメチルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(ジエチルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(メチルエチルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(ジ−n−プロピルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(ジ−イソ−プロピルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(イソ−プロピルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(sec−ブチルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(tert−ブチルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(2,6−ジメチルピペリジノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(1−ピペリジノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、2,5−ビス(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−2,5−ジシラヘキサン、及びそれらの組み合わせ。
【0028】
ある実施形態において、オルガノケイ素前駆体化合物は、本明細書に記載の式Bを有する。これらの特定の実施形態の典型的な化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:1−クロロ−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ジクロロ−1,5−ジシラヘキサン、1−ジメチルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−ジエチルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−メチルエチルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−ジ−n−プロピルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−イソ−プロピルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−sec−ブチルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−tert−ブチルアミノ−1,5−ジシラヘキサン、1−(2,6−ジメチルピペリジノ)−1,5−ジシラヘキサン、1−ピペリジノ−1,5−ジシラヘキサン、1−(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1−(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(ジメチルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(ジエチルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(メチルエチルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(ジ−n−プロピルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(ジ−イソ−プロピルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(イソ−プロピルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(sec−ブチルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(tert−ブチルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(2,6−ジメチルピペリジノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(1−ピペリジノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、1,5−ビス(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−1,5−ジシラヘキサン、2−クロロ−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ジクロロ−ジシラヘプタン、2−ジメチルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−ジエチルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−メチルエチルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−ジ−n−プロピルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−ジ−イソ−プロピルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−イソ−プロピルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−sec−ブチルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−tert−ブチルアミノ−2,6−ジシラヘプタン、2−(2,6−ジメチルピペリジノ)−2,6−ジシラヘプタン、2−ピペリジノ−2,6−ジシラヘプタン、2−(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2−(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(ジメチルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(ジエチルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(メチルエチルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(ジ−n−プロピルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(ジ−イソ−プロピルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(イソ−プロピルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(sec−ブチルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(tert−ブチルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(2,6−ジメチルピペリジノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(1−ピペリジノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、2,6−ビス(n−プロピル−イソ−プロピルアミノ)−2,6−ジシラヘプタン、及びそれらの組み合わせ。
【0029】
ある実施形態において、オルガノケイ素前駆体化合物は、本明細書に記載の式Cを有する。これらの特定の実施形態の典型的な化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:1,2−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−n−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−イソ−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−sec−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−tert−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1,2,5−トリメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−n−プロピル−2,5−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−イソ−プロピル−2,5−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−sec−ブチル−2,5−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、及びそれらの組み合わせ。
【0030】
ある実施形態において、オルガノケイ素前駆体化合物は、本明細書に記載の式Dを有する。これらの特定の実施形態の典型的な化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:2−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−n−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−イソ−プロピル−2−メチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−sec−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−tert−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1,2,6−トリメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−n−プロピル−2,6−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−イソ−プロピル−2,6−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−sec−ブチル−2,6−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、1−tert−ブチル−2,6−ジメチル−1−アザ−2,6−ジシラシクロヘキサン、及びそれらの組み合わせ。
【0031】
ケイ素含有誘電体膜を形成するのに用いられる方法は、堆積プロセスである。本明細書に開示の方法に適した堆積プロセスの例には、周期的CVD(CCVD)、熱化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積(「PECVD」)、高密度PECVD、光子アシスト型CVD、プラズマ−光子アシスト型(「PPECVD」)、クライオジェニック化学気相堆積、化学アシスト型気相堆積、熱フィラメント化学気相堆積、液体ポリマー前駆体のCVD、超臨界流体からの堆積、及び低エネルギーCVD(LECVD)が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、膜は、原子層堆積(ALD)、プラズマALD(PEALD)又はプラズマ周期的CVD(PECCVD)プロセスを介して堆積される。本明細書で用いられる用語「化学気相堆積プロセス」は、基材が1又は複数の揮発性の前駆体に暴露され、この前駆体が基材表面上で反応及び/又は分解し、所望の堆積を生じる、任意のプロセスを指す。本明細書で用いられる用語「原子層堆積プロセス」は、材料の膜を変化している組成の基材の上へ堆積する、自己制御的な(例えば、各反応サイクルにおいて堆積された膜材料の量が一定である)、連続的な界面化学を指す。本明細書中で用いられる前駆体、試薬及び源は、時折「ガス状」として説明されることがあるが、前駆体は、不活性ガスと共に又は不活性ガスなしに、直接気化、バブリング又は昇華を介して反応器内へ輸送される、液体又は固体のどちらかが可能である、ということが理解される。いくつかの場合には、気化された前駆体はプラズマ発生装置を通り抜けることができる。一つの態様において、堆積プロセスはLPCVDを含む。別の態様において、堆積プロセスはPECVDを含む。本明細書で用いられる用語「反応器」には、限定はされないが、反応チャンバー又は堆積チャンバーが含まれる。
【0032】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、反応器への導入の前及び/又は導入の間に前駆体を分離する、ALD又はCVD法を用いることにより、前駆体の予備反応を回避する。これに関連して、ALD又はCVDプロセスなどの堆積技術は、ケイ素含有膜を堆積するのに用いられる。一つの実施形態において、膜は、ALDプロセスを介して、基材表面を選択的に1又は複数のケイ素含有前駆体、酸素含有源、窒素含有源、又は他の前駆体又は試薬に暴露することにより、堆積される。膜成長は、表面反応の自己制御的な制御、各前駆体又は試薬のパルス幅、及び堆積温度によって進行する。しかしながら、いったん基材の表面が飽和すると、膜成長は停止する。
【0033】
堆積方法に応じて、ある実施形態において、1又は複数のシリコン系前駆体は、所定のモル体積、又は約0.1〜約1000ミクロモルで、反応器内に導入されてよい。この実施形態又は他の実施形態において、シリコン系前駆体は、所定の時間、又は約0.001〜約500秒間で、反応器内に導入されてよい。
【0034】
本明細書に開示された堆積方法は、1又は複数のパージガスを伴ってよい。パージガスは、未消費の反応物質及び/又は反応副生成物をパージするのに用いられる、前駆体と反応しない不活性ガスである。典型的な不活性ガスには、Ar、N
2、He、ネオン、H
2及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、Arなどのパージガスは、約10〜約2000sccmの範囲の流量で、約0.1〜1000秒間で反応器内に供給され、それにより未反応材料及び反応器に残る可能性のある副生成物をパージする。
【0035】
ある実施形態において、オルガノケイ素前駆体は、未希釈で、又は追加の反応物質又はキャリヤーガスなしに、ある一定の堆積条件下で導入され、固体を形成する。この実施形態又は他の実施形態において、アルゴン、窒素、及び/又は他のガスの流れをキャリヤーガスとして用いて、少なくとも1つのシリコン系前駆体の蒸気を、前駆体のパルス印加の間に反応チャンバーに送達するのを助けてよい。
【0036】
少なくとも1つのケイ素前駆体を、様々なやり方で反応チャンバー(CVD又はALD反応器など)に送達してよい。一つの実施形態において、液体送達システムを利用してよい。代わりの実施形態において、液体送達及びフラッシュ気化プロセスの組み合わせ型ユニットを用い(例えばShoreview、MNのMSP Corporationにより製造されるターボ気化器)、低揮発性材料が容積的に送達されるようにしてもよく、このことにより、前駆体の熱分解のない、再現性ある輸送及び堆積が導かれる。液体送達処方物において、本明細書に記載の前駆体は、未希釈の液体の形で送達されてよく、又は代わりに、それを含む溶媒処方物又は組成物で用いてよい。それ故に、ある実施形態において、前駆体処方物は、基材の上に膜を形成するのに、所与の最終使用用途において望ましく有利であり得るような、適した特性の1又は複数の溶媒成分を含んでよい。
【0037】
反応チャンバーにおける堆積温度は、100℃〜700℃の範囲である。典型的な堆積温度としては、以下の端点のうち1又は複数が含まれる:100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃及び700℃。1又は複数の堆積温度の適した範囲の例には、限定はされないが、100℃〜400℃、200℃〜450℃、又は300℃〜600℃、が含まれる。
【0038】
ある実施形態において、堆積プロセスの間の反応チャンバー内の圧力は、約0.5〜約10Torr、又は約0.5〜約2Torr、又は約0.5〜約5Torrの範囲である。PECVD堆積プロセスについて、堆積プロセスの間の圧力は、約2〜約6Torrの範囲であってよい。LPCVD堆積プロセスについて、堆積プロセスの間の圧力は、約0.25〜約1.25Torr又は約10Torrの範囲であってよい。
【0039】
エネルギーが、前駆体、他の非酸素源、還元剤、他の前駆体又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つに適用されて、反応を引き起こしシリコン系膜又はコーティングを基材の上に形成する。このようなエネルギーは、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、及び遠隔プラズマ法により提供することができるが、これらに限定されない。ある実施形態において、二次的RF周波数源を用いて、基材表面でのプラズマの特徴を修正することができる。堆積がプラズマを伴う実施形態において、プラズマ発生プロセスは、プラズマが反応器において直接発生する直接プラズマ発生プロセス、又は代わりに、プラズマが反応器の外で発生し、反応器内に供給される、遠隔プラズマ発生プロセスを含んでよい。
【0040】
典型的なALD、PEALD、CVD又はPECCVDプロセスにおいて、ケイ素酸化物基材などの基材は、最初に前駆体に暴露される反応チャンバー内のヒータステージの上で加熱され、複合体を基材の表面上へ化学吸着させる。
【0041】
一つの態様において、基材の表面の少なくとも一部の上にシリコン系膜を形成する方法が提供され、この方法は、
基材を反応器内に提供するステップ;
以下の式A〜Dを有する少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体化合物を反応器内に導入するステップ:
【化3】
(式中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハライド原子、及び式NR
1R
2(式中、R
1は直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択され、R
2は水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、C
6〜C
10アリール基、直鎖C
1〜C
6フッ素化アルキル基、分岐C
3〜C
6フッ素化アルキル基、電子吸引基、及びC
4〜C
10アリール基から選択され、任意にR
1及びR
2は共に結合して置換又は非置換の芳香環又は置換又は非置換の脂肪族環から選択される環を形成する)を有するオルガノアミノ基から選択され;R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子及びメチル(CH
3)基から選択され;R
6は、水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択される);及び
化学気相堆積(CVD)、低圧化学気相堆積(LPCVD)、プラズマ化学気相堆積(PECVD)、周期的化学気相堆積(CCVD)、プラズマ周期的化学気相堆積(PECCVD)、原子層堆積(ALD)、及びプラズマ原子層堆積(PEALD)からなる群から選択される堆積プロセスにより該表面の少なくとも一部の上に膜を形成するステップ、を含み、該シリコン系膜は、XPSによって測定した場合に、約0〜約50原子質量パーセントのケイ素を含む。一つの態様において、堆積プロセスはLPCVDを含む。別の態様において、堆積プロセスはPECVDを含む。
【0042】
別の態様において、式Si
xC
yN
z(式中、XPSによって測定した場合にxが約0〜55、yが35〜100、及びzが0〜50原子質量(wt.)パーセント(%))を有するシリコン系膜を、基材の少なくとも1つの表面の上に形成する方法が提供され、この方法は、
該基材の少なくとも1つの表面を反応チャンバー内に提供するステップ;
以下の式A〜Dを有する少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体化合物を該反応器内に導入するステップ:
【化4】
(式中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハライド原子、及び式NR
1R
2(式中、R
1は直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択され、R
2は水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、C
6〜C
10アリール基、直鎖C
1〜C
6フッ素化アルキル基、分岐C
3〜C
6フッ素化アルキル基、電子吸引基、及びC
4〜C
10アリール基から選択され、任意にR
1及びR
2は共に結合して置換又は非置換の芳香環又は置換又は非置換の脂肪族環から選択される環を形成する)を有するオルガノアミノ基から選択され;R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子及びメチル(CH
3)基から選択され;R
6は、水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択される);及び
アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される窒素含有前駆体を該反応チャンバー内に任意に導入するステップ;
エチレン、プロピレン、アセチレン、プロピン、シクロヘキサン、シクロオクタン及びそれらの混合物からなる群より選択される炭素含有前駆体を該反応チャンバー内に任意に導入するステップ;及び
低圧化学気相堆積(LPCVD)を含む堆積プロセスにより該少なくとも1つの表面の上に該シリコン系膜を形成するステップ、を含む。ある実施形態において、LPCVD堆積は、約200〜約600℃の範囲の1又は複数の温度で実施される。これらの実施形態又は他の実施形態において、シリコン系膜における炭素及び窒素の原子wt.%は、温度などのLPCVD堆積条件の変更、窒素含有前駆体の添加、又はそれらの組み合わせにより、調節することができる。
【0043】
本明細書に記載の方法のさらに別の実施形態において、ケイ素含有膜はシリコンカーバイド、窒化ケイ素及び炭窒化ケイ素からなる群より選択され、この方法は、
a. 環境温度〜約700℃の範囲の1又は複数の温度に加熱される反応器内に基材を配置するステップ;
b. 反応器内に以下の式A〜Dを有する少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体化合物を導入するステップ:
【化5】
(式中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、水素原子、ハライド原子、及び式NR
1R
2(式中、R
1は直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択され、R
2は水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
6アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、C
6〜C
10アリール基、直鎖C
1〜C
6フッ素化アルキル基、分岐C
3〜C
6フッ素化アルキル基、電子吸引基、及びC
4〜C
10アリール基から選択され、任意にR
1及びR
2は共に結合して置換又は非置換の芳香環又は置換又は非置換の脂肪族環から選択される環を形成する)を有するオルガノアミノ基から選択され;置換基R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子及びメチル(CH
3)基から選択され;R
6は、水素原子、直鎖C
1〜C
10アルキル基、分岐C
3〜C
10アルキル基、環状C
3〜C
10アルキル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルケニル基、直鎖又は分岐C
3〜C
10アルキニル基、C
1〜C
6ジアルキルアミノ基、電子吸引基、及びC
6〜C
10アリール基から選択される);及び
c. 該反応器をパージガスでパージするステップ;
d. 該反応器内にプラズマ含有源を提供し、該少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体化合物と少なくとも部分的に反応させ、該ケイ素含有膜を該基材の上へ堆積させるステップ;及び
e. 該反応器をパージガスでパージするステップ、を含み、
該ステップb〜eは、所望の厚さの該ケイ素含有膜が得られるまで繰り返される。いくつかの実施形態において、プラズマ含有源は、少なくとも1つの窒素源の形で反応器内に導入されてよく、及び/又は堆積プロセスにおいて用いられる他の前駆体内に付随的に存在してよい。
【0044】
上述の方法において、ステップb〜eは、1つのサイクルを定めており、このサイクルは、所望の厚さの膜が得られるまで繰り返すことができる。膜の厚さは、約0.1Å〜約1000Å、又は約0.1Å〜約100Å、又は約0.1Å〜約10Åの範囲である。
【0045】
ある実施形態において、ケイ素含有誘電体膜は窒素を含む。適した窒素含有源ガスは、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、窒素プラズマ、窒素/水素、窒素/ヘリウム、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、窒素/アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、アンモニア/窒素プラズマ、NF
3プラズマ、オルガノアミンプラズマ、及びそれらの混合物を含んでよい。典型的なモノアルキルヒドラジンとしては、メチルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジンが含まれるが、これらに限定されない。典型的なジアルキルヒドラジンとしては、1,1−ジメチルヒドラジンが含まれるが、これに限定されない。典型的な第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、イソ−プロピルアミン、及びtert−ブチルアミンが含まれるが、これらに限定されない。典型的な第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、及びジ−イソ−プロピルアミンが含まれるが、これらに限定されない。典型的な第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジンが含まれるが、これらに限定されない。一つの具体的な実施形態において、窒素含有源は、最終窒化ケイ素内により多くの水素を導入することを回避するために水素を有さず、窒素プラズマ、窒素/ヘリウム、窒素/アルゴンプラズマ、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0046】
炭素含有前駆体は、メタン、エタン、アセチレン、エチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン、ブタジエン、フェニルアセチレン、シクロ炭化水素(シクロペンタン、シクロヘキサンなど)からなる群より選択することができる。
【0047】
他の実施態様において、プラズマは、水素プラズマ、ヘリウムプラズマ、ネオンプラズマ、アルゴンプラズマ、キセノンプラズマ、水素/ヘリウムプラズマ、水素/アルゴンプラズマ及びそれらの混合物、からなる群より選択される。炭窒化ケイ素の堆積について、窒素含有源はさらに炭素を含むことができ、オルガノアミンプラズマ(メチルアミンプラズマ、ジメチルアミンプラズマ、トリメチルアミンプラズマ、エチルアミンプラズマ、ジエチルアミンプラズマ、トリメチルアミンプラズマ、及びエチレンジアミンプラズマなど)からなる群より選択される。
【0048】
本明細書に記載の方法のステップは、様々な順序で行ってよく、連続的に又は同時に(例えば、別のステップの少なくとも一部の間に)、及びそれらの任意の組み合わせで行ってよいことが理解される。結果として得られるシリコン系膜の化学量論的な組成物を変化させるために、前駆体及び他の源ガス(窒素含有源、炭素含有源)を供給するそれぞれのステップは、それらを供給する時間の長さを変えて行ってよい。
【0049】
多成分シリコン系膜について、他の前駆体(シリコン系前駆体、窒素含有前駆体など)のうち少なくとも1つ、還元剤、又は他の試薬を、反応器チャンバー内に交互に導入することができる。
【0050】
ある実施形態において、結果として生じるケイ素含有膜又はコーティングを堆積後処理(プラズマ処理、化学的処理、紫外光線暴露、電子ビーム暴露、熱、及び/又は他の処理などであるが、これらに限定されない)に暴露して、膜の1又は複数の特性に影響を及ぼすことができる。一つの具体的な実施形態において、シリコン系膜は約500〜約1000℃の範囲の1又は複数の温度での熱アニールに供される。ある実施形態において、本明細書に記載のケイ素含有膜は、10以下、9以下、7以下、6以下、又は5以下の比誘電率を有する。しかしながら、膜の所望の最終使用に応じて、他の(例えば、より高い又はより低い)比誘電率を有する膜を形成することができる、ということが想像される。本明細書に記載のオルガノケイ素前駆体及び方法を用いて形成されたケイ素含有又はケイ素含有膜の例は、式Si
xC
yN
z(式中、例えばXPS又は他の手段によって測定した場合に、Siは約51%〜約100%又は約55%〜約85%の範囲;Cは約0%〜約50%又は約5%〜約25%の範囲;Nは約0%〜約50%又は約0%〜25%の原子質量パーセント%(ここで、x+y+z=100原子質量パーセント)の範囲である)を有する。
【0051】
さらに別の態様において、本明細書に記載の式A〜Dを有するオルガノケイ素前駆体化合物を保管及び送達するのに用いられる容器が記載される。一つの具体的な実施形態において、容器は、CVD、LPCVD又はALDプロセスの反応器に少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体を送達するのを可能にする適切なバルブ及びフィッティングを備えた、少なくとも1つの加圧可能容器(好ましくはステンレス鋼の)を含む。この実施形態又は他の実施形態において、少なくとも2つのSiH
3基を有する少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体は、ステンレス鋼から構成された加圧可能容器内に供され、前駆体の純度は、半導体用途の大半に適した98質量%以上又は99.5%以上である。ある実施形態において、このような容器はまた、少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体と1又は複数の追加の前駆体とを必要に応じて混合するための手段を有することができる。これらの又は他の実施形態において、1又は複数の容器の内容物を追加の前駆体と予備混合することができる。代わりに、少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体及び/又は他の前駆体は、別個の容器内に、又は保管の間オルガノアミノシラン前駆体及び他の前駆体を離した状態に維持するための分離手段を有する単一の容器内に、維持することができる。
【0052】
少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体が、溶媒及び本明細書に記載の少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体を含む組成物において用いられるこれらの実施形態について、選択された溶媒又はそれらの混合物はケイ素前駆体と反応しない。組成物中の溶媒の量は質量パーセントで、0.5質量%〜99.5質量%又は10質量%〜75質量%の範囲にある。この実施形態又は他の実施形態において、溶媒が少なくとも1つのオルガノケイ素の沸点(b.p.)と同様のb.p.を有するか、又は溶媒のb.p.と少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体のb.p.との間の差が、40℃以下、30℃以下、又は20℃以下、又は10℃以下である。代わりに、沸点間の差は、以下の端点、すなわち0、10、20、30、又は40℃のいずれか1以上からの範囲内にある。b.p.の差の適した範囲の例には、限定はされないが、0〜40℃、20〜30℃、又は10〜30℃、が含まれる。組成物中の適した溶媒の例には、エーテル(1,4−ジオキサン、ジブチルエーテルなど)、第三級アミン(ピリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなど)、ニトリル(ベンゾニトリルなど)、アルカン(オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、メシチレンなど)、第三級アミノエーテル(ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなど)、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
既に述べたように、少なくとも1つのオルガノケイ素前駆体の純度レベルは、信頼性のある半導体製造に許容されるのに十分に高い。ある実施形態において、本明細書に記載の少なくとも1つのオルガノケイ素は、2質量%未満の、又は1質量%未満の、又は0.5質量%未満の、以下の不純物のうち1又は複数を含む:遊離アミン、遊離ハライド又はハロゲンイオン、及び高分子量種。本明細書に記載のオルガノケイ素前駆体のより高い純度レベルは、以下のプロセスのうち1又は複数を通して得ることができる:精製、吸着、及び/又は蒸留。少なくとも2つのSiH
3基を有するオルガノケイ素前駆体の不純物は、用いられる原材料、用いられる溶媒、副反応、又は副生成物に由来する可能性がある。例えば、1,4−DSPは、金属水素化物又は四水素化リチウムアルミニウムの存在下で溶媒中で、1,1,1,4,4,4−ヘキサクロロジシラブタン又は1,4−アルコキシジシラブタンを還元することにより、調製することができる。ある実施形態において、結果として得られるシリコン系膜に酸素が組み込まれる可能性を排除するために、テトラヒドロフラン、グリム(gylimes)などの酸素含有溶媒、又は任意の他の副生成物は、精製プロセスを介して取り除かなければならない。いくつかの場合には、副生成物は、シリコン系膜を堆積するのにドーパントとして用いることのできるオルガノケイ素化合物であり得る。
【0054】
本明細書に記載の膜は、パッシベーション層又は犠牲層(エッチ停止又は密封バリアなどであるがこれらに限定されない)として用いるのに適し得る。本明細書に記載の膜はまた、固体電子デバイス(論理メモリ、発光ダイオード(LEDs)デバイス、平面パターン化コンピューターチップ、光学デバイス、磁気情報記憶、支持材料又は基材の上のコーティング、マイクロ電気機械システム(MEMS)、ナノ電気機械システム、薄膜トランジスタ(TFT)、及び液晶ディスプレイ(LCD)など)において用いることができる。
【0055】
既に述べたように、本明細書に記載の方法を用いて、基材の少なくとも一部の上にケイ素含有膜を堆積することができる。適した基材の例には、ケイ素、SiO
2、Si
3N
4、OSG、FSG、シリコンカーバイド、水素化されたシリコンカーバイド、窒化ケイ素、水素化された窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化された炭窒化ケイ素、ホウ窒化物、反射防止コーティング、フォトレジスト、可撓性基材、有機ポリマー、多孔性有機及び無機材料、金属(銅及びアルミニウムなど)、及び拡散バリア層(TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWNなどがあるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。この膜は、様々なその後の処理ステップ(例えば、化学的機械的平坦化(CMP)及び異方性エッチングプロセスなど)に適合性がある。
【0056】
以下の例は、式A〜Dから選択されるオルガノケイ素前駆体を調製し、本明細書に記載のケイ素含有膜を堆積するための方法を説明しており、それを何らかの形で限定することは意図していない。
【実施例】
【0057】
例1. 1−クロロ−1,4−ジシラペンタン、4−クロロ−1,4−ジシラペンタン、及び1,4−ジクロロ−1,4−ジシラペンタンの合成
試薬1,4−ジシラペンタン(0.50g、4.8mmol)及び塩化tert−ブチル(0.25g、2.7mmol)をFeCl
3触媒(0.001g未満)の存在下で混ぜ合わせた。一晩撹拌した後、反応混合物は、ガスクロマトグラフ質量分光法(GC−MS)により、他の生成物の中で以下の生成物を含有していることが分かった:1−クロロ−1,4−ジシラペンタン、4−クロロ−1,4−ジシラペンタン、及び1,4−ジクロロ−1,4−ジシラペンタン(質量スペクトルデータについては表1参照)。
【0058】
例2. 1−ジメチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、4−ジメチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、及び1,4−ビス(ジメチルアミノ)−1,4−ジシラペンタンの合成
THF(2mL)中のLiNMe2(0.15g、2.9mmol)の溶液を1,4−ジシラペンタン(0.30g、2.9mmol)にすばやく添加し、一晩撹拌した。結果として得られるライトグレーのスラリーをろ過した。無色のろ液は、GC−MSにより、1−ジメチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、4−ジメチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、及び1,4−ビス(ジメチルアミノ)−1,4−ジシラペンタンを、主な生成物として含有していることが分かった(質量スペクトルデータについては表1参照)。
【0059】
例3. 1−ジエチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、4−ジエチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、及び1,4−ビス(ジエチルアミノ)−1,4−ジシラペンタンの合成
試薬1,4−ジシラペンタン(0.22g、2.1mmol)及びジエチルアミン(0.05g、0.68mmol)をCa[N(SiMe
3)
2]
2触媒(0.01g、0.03mmol)の存在下で混ぜ合わせた。即座に発泡が観察された。4時間後、反応溶液をGC−MSにより調べたところ、1−ジエチルアミノ−1,4−ジシラペンタン及び4−ジエチルアミノ−1,4−ジシラペンタンを主な生成物として、1,4−ビス(ジエチルアミノ)−1,4−ジシラペンタンを少量生成物として含有していることが分かった(質量スペクトルデータについては表1参照)。
【0060】
例4. 1−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタン及び4−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタンの合成
試薬1,4−ジシラペンタン(0.16g、1.5mmol)及びN−イソ−プロピリデン−イソ−プロピルアミン(0.05g、0.50mmol)を混ぜ合わせ、THF(1mL)中の(Ph
3P)
3RhCl触媒(0.02g、0.02mmol)の撹拌された混合物に添加した。反応物を一晩撹拌した後、結果として得られるペールオレンジの溶液をGC−MSにより調べたところ、1−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタン及び4−ジ−イソ−プロピルアミノ−1,4−ジシラペンタンを主な生成物として含有していることが分かった(質量スペクトルデータについては表1参照)。
【0061】
例5. 1−tert−ブチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、4−tert−ブチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、及び1−tert−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタンの合成
試薬1,4−ジシラペンタン(0.50g、4.8mmol)及びtert−ブチルアミン(0.35g、4.8mmol)をTHF(1mL)中のRu
3(CO)
12触媒(0.01g、0.02mmol)の存在下で混ぜ合わせた。反応物を3日間撹拌した後、結果として得られる溶液をGC−MSにより調べたところ、1−tert−ブチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、4−tert−ブチルアミノ−1,4−ジシラペンタン、及び1−tert−ブチル−2−メチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタンを含有していることが分かった(質量スペクトルデータについては表1参照)。
【0062】
上述の式A〜Dの追加の官能基化されたオルガノケイ素前駆体を、例1〜5と同様のやり方を介して作成し、質量分光法(MS)により特性評価した。1,4−ジシラペンタン系前駆体それぞれの分子量(MW)、構造、及び対応する主なMSフラグメンテーションピークを、それらの同定を確認するために表1に与えている。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0063】
例6. 低圧化学気相堆積−LPCVD
ドイツのATV Inc.により製造されたLPCVD炉を用い、未希釈でか又は1又は複数の反応物質及び/又は希釈剤と共に、前駆体1,4−ジシラブタン(1,4−DSB)又は1,4−ジシラペンタン(1,4−DSP)を用い、様々な温度で、シリコン系膜を堆積した。このLPCVD反応器は、3つの独立温度制御区域を備え、25のウェーハを処理することのできる、水平のホットウォール石英反応器である。前駆体(及び反応物又は希釈剤ガス(もしあれば))を、チャンバー内に一側面から注入する。前駆体は蒸気の引き抜きを通して炉内へ送達され、蒸気流量を測定するためにマスフローコントローラ(MFC)が用いられた。典型的な流量は、前駆体20〜25sccmであった。前駆体流量はまた、第1の堆積の後に消費された液体の体積を測定することにより、物理的に検証された。反応器は、堆積の間に不変の圧力、この場合1000mTorr、に維持される。ケイ素含有膜の全ては、中程度の抵抗率(8〜12Ωcm)の単結晶シリコンウェーハ基材の上へ堆積された。各堆積は、スロット2、スロット10〜15、及びスロット23に設置された8のテストウェーハから成っており、大規模生産におけるバッチ全体を表した。残りのスロットは、ダミーウェーハ及びバッフルウェーハ(これらは測定に用いられない)により占められた。未反応材料及び任意の副生成物は、真空ポンプを用いて吸い出される。
【0064】
各膜堆積についてのデータを表2〜表4に集約した。これらの表において、「ND」は、検出されなかったこと(not detected)を意味する。膜を堆積した後、この誘電体膜の屈折率と厚さの両方を、Rudolph FOCUSエリプソメータFE−IVD(回転補償子エリプソメータ)を用い、膜から得られたデータを、あらかじめ設定された物理モデル(例えば、ローレンツ振動子モデル)に適合させることによって、測定した。これらの膜の高吸収の特質に起因して厚さ及びRIを検証するのに、SCI Filmtek 2000 SE反射率計もまた用いた。直角入射、偏光70度反射、及び70度分光エリプソメトリックデータを収集し、測定された膜の厚さ及び屈折率を計算するのに用いる。
【0065】
マルチチャンネルプレート(MCD)及び集光したAl単色X線源を備えたPHI 5000VersaProbe分光計で行われたXPSにより、原子組成データを収集した。低分解能サーベイスキャンは、117.4eVの透過エネルギー、1.000eV/ステップ及び50msec/ステップの取り込み時間で行う。高分解能多重スキャンは、23.50eVの透過エネルギー、0.100eV/ステップ及び100msec/ステップの取り込み時間で行う。分析領域は、直径が200マイクロメートルであり、45°の取り出し角を伴う。イオンガンの設定は、2kV/2uA/4x4ラスタである。データは製造供給元から供給されたソフトウェアを用いて収集した。透過関数補正面積感度係数(ASF)を用いてデータをまとめ上げるために、Casa XPSを用いた。熱成長させたSiO
2を基準として用いた。これはシステムの検出限界のC%又はN%を全く示さなかった。
【0066】
全ての密度測定は、X線反射率法(XRR)を用いて実施した。各サンプルを、垂直配向Materials Research 回折計(MRD)ウェーハホルダー上にマウントした。XRRは、X線源としてCu−K放射線、自動Niビーム減衰器、銅ミラー、及び4バウンスGe(311)結晶モノクロメータを入射ビームに用いて実施した。入射ビームをまた、ビームフットプリントがサンプルからもっぱら反射するように、10mmにマスクした。反射ビームは三軸光学系を用いてコリメートし、反射ビーム上のガスイオン化比例計数検出器を介して検出した。公称層厚さ<200nmのサンプルは、低分解能光学系を用いてスキャンした。公称層厚さ>200nmのサンプルは、高分解能光学系を用いてスキャンした。サンプルは、0.2000
<2q
<0.6500の範囲にわたって、0.0010のステップサイズ及び1s/ステップのカウント時間を用いてスキャンした。
【0067】
表2及び3はそれぞれ、前駆体1,4−ジシラブタン(1,4−DSB)及び1,4−ジシラペンタン(1,4−DSP)についての堆積結果を与えている。表2に与えられた堆積結果は、反応物が全く用いられない条件で得られた。表2が示すように、良好な堆積速度が得られており、3以上の高屈折率(RI)は高いケイ素含有量を示している(結晶性シリコンカーバイドについてのRIは〜2.8である)。表3は、同様の条件下で、1,4−ジシラペンタン(1,4−DSP)を用いたときの堆積結果を示している。堆積は、示されているとおり、反応物質なしに;又は反応物質としてN
2又はH
2と共に、行われた。表3は、良好な堆積速度が得られていることを示しており、屈折率は高いケイ素含有量を示していない。
【表2】
【表3】
【0068】
表4は、1,4−DSPを用いる堆積についての膜特性の詳細を示している。550℃で、膜の炭素含有量は>38%であり、密度は約2.2g/cc以上であった。膜中の酸素含有量は、環境大気への暴露によってもたらされた可能性があり、反応物又は希釈剤の添加によって調節することができる。ケイ素含有量は<52%(XPSによって測定した場合に)であった。
【表4】
【0069】
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)スペクトルを、表4中の全てのサンプルについて測定した。スペクトルは一般に、〜760cm
-1での強いSi−C−Siピーク;〜1000cm
-1でのピーク(Si−CH
2−Siに割り付けられ、Si−O−Siにも割り付けられる)及び〜2100cm
-1での小さいピーク(Si−Hに割り付けられる)、を示した。他の結合は見られなかった。表3中の最後の2つのサンプルを0.5%HF溶液(49%HF:H
2Oが1:100の割合)に300秒間浸すことによって、エッチ速度を測定した。膜厚さの変化は測定されなかった。このことは、膜が希HFエッチに対して耐性があることを示している。
【0070】
例6(表4、条件1及び3)から選択されたサンプルを、O
2アッシング処理に供した。ツールは、PVA TePla MetroLine Etcher M4L プラズマアッシャーエッチャー(エッチ、剥離、洗浄、及び表面処理のためのバッチモードプラズマシステム)である。レシピは、フォトレジストを除去するための標準基準酸素アッシングレシピであった。
−電力: 200W
−He流量: 100sccm
−O
2流量: 300sccm
−圧力: 600mTorr
−時間: 10分間
【0071】
各サンプルを2片に分割した。片方を酸素アッシング処理し、もう片方のサンプルはコントロールとして保持した。全てのサンプルの膜特性は、X線光分光法(XPS)及びX線反射率法(XRR)を用いて特性評価された。下記の表5及び6は、2つの膜からのアッシング前後の結果を示している。膜RIにおいて測定可能な変化は観察されなかった。膜厚はごくわずかな変化を示し、この場合もやはり実験誤差の範囲内であった。同様に、XPS組成(O、Si、C%)の明らかな変化はなく、密度変化は実験誤差の範囲内であった。
【表5】
【表6】