【実施例】
【0024】
以下、本発明の、Hdehpが金属イオンと配位高分子(固体)([M(dehp)
3])を形成することを利用した沈殿分離法について、実施例を用いて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
[0.30M Nadehp 80/20vol%エタノール/水溶液の調製]
反応前後でpHが変化しないように、NaOH水溶液を用いて、HdehpをNa型に変えた。
Hdehp 9.66gと14.5M NaOH水溶液2.0mLと水18mLを、エタノールに溶解して100mLとし、0.30M Nadehp 80/20vol%エタノール/水溶液を調製した。
【0026】
[0.20 M LnCl
3 エタノール溶液の調製]
ランタノイド(Ln)のエタノール溶液を、以下のようにして調製した。
NdCl
3 6水和物、DyCl
3 6水和物、及びFeCl
3 6水和物のそれぞれを、エタノールに溶解して0.20 M溶液を調製した。FeCl
3の場合のみ、沈殿物を生じる可能性があるため、
2 M HNO
3水溶液を体積比として500分の1添加した。
【0027】
(実施例1)
本実施例では、調製した前記のLnエタノール溶液のモル濃度を測定した。
得られたNdCl
3エタノール溶液、DyCl
3エタノール溶液、及びFeCl
3エタノール溶液からそれぞれ0.025mLを採取して重量を秤量後、エタノールを蒸発させてから100mLにメスアップしてそれぞれの溶液モル濃度をICP-発光
分光分析(ICP-OES)で決定した。
結果を表1にまとめる。
【0028】
【表1】
【0029】
(実施例2)
本実施例では、NdとDyの単一成分溶液を用いて、配位高分子化のエタノール/水組成の依存性について検討した。
最初に、表2−1に示す4種類の溶液を混合して、各重量を記録した。
なお、LnとNadehpは、配位高分子化の当量比(1:3)で混合し、最終的なエタノール濃度が96%(1-1と1-4)、81%(1-2と1-5)、及び66%(1-3と1-6)となるようにした。
【0030】
【表2-1】
【0031】
その後、溶液を一晩放置し、沈殿した配位高分子を洗浄・濾過して重量を測定した。
実施例1で決定したモル濃度と混合した溶液重量、沈殿物の重量から、NdおよびDyの沈殿率を求めた。
結果を表2−2と
図2にまとめる。
【0032】
【表2-2】
【0033】
ほとんど全てのDyおよびNdが配位高分子化して沈殿したことがわかる。
なお、沈殿率が100%を超えている場合が多く、濾過時の洗浄が不十分で高分子化していないNadehpが残っている可能性等が考えられる。
【0034】
(実施例3)
本実施例では、Dy:Nd:Nadehp =1:1:3混合溶液での配位高分子化における酸濃度依存性を検討した。
最初に、表3−1のとおり、4種類の溶液を混合し、各重量を記録した。
なお、エタノール濃度は全て81%とし、水又はHNO
3水溶液を用いて、混合する水溶液の酸濃度を変化させた。また、LnとNadehpの混合比は、Dy:Nd:Nadehp=1:1:3とした。
【0035】
【表3-1】
【0036】
その後、溶液を一晩放置した後、沈殿した配位高分子を洗浄・濾過して重量を測定した。
得られた配位高分子約15mgを、60% HNO
3に入れて160℃のホットプレートで5日間加熱して分解した。分解溶液中のDy,Nd,PをICP-OESで定量した。配位高分子1gあたりのDy,Nd,Pのモル量とP/(Dy+Nd)を表3−2にまとめる。
【0037】
【表3-2】
【0038】
P/(Dy+Nd)はいずれもおよそ3.0であり、配位高分子として沈殿していることが確認できた。
【0039】
実施例1で決定したモル濃度と混合した溶液重量、沈殿した配位高分子の重量、表3−2に示す配位高分子中のモル濃度からDyおよびNdのそれぞれの沈殿率を求めた。
結果を表3−3と
図3−1にまとめる。
【0040】
【表3-3】
【0041】
表から、DyとNdの混合溶液では、酸濃度によらず、Dyが選択的に配位高分子化することが分かる。
また、
図3−2からは、溶液中の酸濃度が高いほど、DyとNdの分離効率が良いことが分かる。
【0042】
加えたHNO
3の濃度をH
+濃度として、配位高分子中のDy/Ndを、
図3−2にプロットする。
酸濃度が高いほどDy/Nd比が高く、分離が良いことがわかる。
【0043】
さらに、沈殿重量とモル量から、溶液中に残っているDyおよびNd濃度を算出し、以下に定義する選択係数K
cを求めた。K
cは2つの化学種(DyとNd)の分離の指標であり、値が大きいほど分離能が高いことを示す。
【0044】
【数1】
【0045】
比較のために、溶媒抽出系における抽出係数K
ex
【0046】
【数2】
【0047】
【数3】
結果を表3−4にまとめる。
【0048】
【表3-4】
【0049】
表に示すとおり、配位高分子化を利用するDyとNdの分離では、酸濃度10
-5Mの場合は溶媒抽出系と同程度の選択係数となり、酸濃度が高いと溶媒抽出よりも選択係数が高くなる。
【0050】
(実施例4)
本実施例では、Dy:Nd:Nadehp=1:5:3混合溶液での配位高分子化について検討した。
Dy:Nd:Nadehp=1:5:3(Ndが過剰)となるように、表4−1のとおり4種類の溶液を混合して、各重量を記録した。
【0051】
【表4-1】
【0052】
一晩放置した後、沈殿物を洗浄・濾過して重量を測定した。
実施例3と同じ手順で配位高分子をHNO
3で分解して配位高分子1gあたりのDy,Nd,Pのモル量とP/(Dy+Nd)、配位高分子中Dy/Nd、選択係数を求めた。結果を表4−2にまとめる。
【0053】
【表4-2】
【0054】
表に示すとおり、Ndが過剰に存在しても、Dyが選択的に配位高分子化することが分かる。
【0055】
(実施例5)
本実施例では、Dy:Nd:Nadehp=1:5:6のNd+Dyの混合溶液での配位高分子化について検討した。
実施例4よりもNadhepが過剰となるように、表5−1とおり4種類の溶液を混合。各重量を記録した。
【0056】
【表5-1】
【0057】
一晩放置した後、沈殿物を洗浄・濾過して重量を測定した。
実施例3と同じ手順で配位高分子をHNO
3で分解して配位高分子1gあたりのDy,Nd,Pのモル量とP/(Nd+Dy)、配位高分子中Dy/Ndを求めた。結果を表5−2にまとめる。
測定の結果、沈殿率が100%以上となってしまい、選択係数は算出できなかった。
【0058】
【表5-2】
【0059】
この結果、NadehpとNdが過剰に存在しても、Dyが選択的に配位高分子化することが分かった。
【0060】
(実施例6)
本実施例では、Nd+Dy溶液を水溶液に、硝酸を塩酸に変えたものである。
表6−1のとおり5種類の溶液を混合した。最終的なエタノール濃度は、81%である。
【0061】
【表6-1】
【0062】
実施例3と同様の手順で配位高分子中のNdとDyの沈殿率を求めた。結果を以下の表に示す。
【0063】
【表6-2】
【0064】
(実施例7)
本実施例では、上記実施例において、エタノールのかわりにメタノールまたはアセトンを用いてNdとDyの分離を行ったものである。
前記[0025]に記載の[0.30M Nadehp 80/20vol%エタノール/水溶液の調製]において、エタノールをメタノールまたはアセトンに置き換えて、Nadehp溶液を調製し、表7−1のとおり5種類の溶液を混合した。最終的なメタノールまたはアセトン濃度は、81%である。
【0065】
【表7-1】
【0066】
実施例3と同様の手順で配位高分子中のNdとDyの沈殿率を求めた。結果を下表に示す。
【0067】
【表7-2】
【0068】
(実施例8)
本実施例では、DyとFeの混合溶液での配位高分子化について検討した。
表8−1のとおり4種類の溶液を混合して各重量を記録した。各系のDy:Fe:Nadehpを表中に示す。
【0069】
【表8-1】
【0070】
一晩放置した後、沈殿物を洗浄・濾過して重量を測定した。
実施例3と同じ手順で配位高分子をHNO
3で分解して配位高分子1gあたりのDy,Fe,Pのモル量とP/(Dy+Fe)、配位高分子中Dy/Fe、選択係数を求めた。
結果を表8−2にまとめる。
【0071】
【表8-2】
【0072】
表からわかるように、DyとFeはどちらも同程度に配位高分子化しやすく、両者の分離はよくない。