特許第6183897号(P6183897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NTTドコモの特許一覧 ▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

<>
  • 特許6183897-パターンの製造方法 図000002
  • 特許6183897-パターンの製造方法 図000003
  • 特許6183897-パターンの製造方法 図000004
  • 特許6183897-パターンの製造方法 図000005
  • 特許6183897-パターンの製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183897
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20170814BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G01N1/22 L
   G01N33/497 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-222004(P2013-222004)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83933(P2015-83933A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】檜山 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昌治
(72)【発明者】
【氏名】尾上 弘晃
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0011934(US,A1)
【文献】 特開2011−066273(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/056729(WO,A1)
【文献】 特開2013−211347(JP,A)
【文献】 酒井真理,インクジェット法による回路基板製造技術,電子情報通信学会誌,2007年,Vol.90,No.7,544-548
【文献】 八瀬清志,有機分子デバイスの製膜技術II 印刷法,応用物理,日本,2008年,77巻、2号,173-177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/497
H01L 21/30
B82Y 40/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、前記底部の表面の周縁に位置する外枠と、前記外枠で囲まれた前記底部の表面上に位置する突起部と、を有するモールドを作製する第一工程と、
前記外枠の内側にポリマーの溶液を供給し、前記ポリマーを硬化させて、貫通穴が形成されたマスクを作製する第二工程と、
前記マスクを前記モールドから剥離する第三工程と、
前記マスクを基板に密着させる第四工程と、
前記基板に密着した前記マスクの前記貫通穴内に原料を導入する第五工程と、
前記マスクを前記基板から剥離して、前記原料に由来するパターンを前記基板の表面に形成する第六工程と、
を備え、
前記底部の表面からの前記突起部の高さが、前記底部の表面からの前記外枠の高さ以上である、
パターンの製造方法。
【請求項2】
前記マスクの厚さが5μm以上1mm未満である、
請求項1に記載のパターンの製造方法。
【請求項3】
前記第六工程において、前記マスクを前記基板から剥離する前、又は前記マスクを前記基板から剥離した後、前記原料に含まれる液体を除去する、
請求項1又は2に記載のパターンの製造方法。
【請求項4】
前記第五工程において、前記原料に外力を作用させることにより、前記原料を前記マスクの前記貫通穴内に導入する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のパターンの製造方法。
【請求項5】
前記外力は、圧力又は電磁気力のうち少なくともいずれかである、
請求項4に記載のパターンの製造方法。
【請求項6】
前記原料は、多孔質材料、ゼオライト及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターンの製造方法。
【請求項7】
前記第六工程において、前記マスクを前記基板から剥離した後、前記基板の前記表面上にある前記原料を焼結させることにより、前記パターンを前記基板の表面に形成する、
請求項6に記載のパターンの製造方法。
【請求項8】
前記パターンは、人体の皮膚から放出される皮膚ガスを吸着する吸脱着剤を含む、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のパターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国民医療費の増加を抑制するために、疾病の発生や進行を未然に防ぐ「予防医療」の必要性が高まっている。予防医療では、個々人の健康状態に応じた医療サービスが重要であり、個々人の健康状態に係る詳細な情報をいつでもどこでも簡便に得るための測定装置及び測定方法が必要となる。従来、脈拍、血圧、心拍数、活動量又は歩数等の測定により、被験者の健康状態を把握することが一般的であった。これらの測定には主に加速度計等の物理センサが用いられる。しかし、物理センサでは得られ難い生体情報もある。例えば、医療機関では、血液、尿、リンパ液又は髄液等の生体サンプルの測定により、物理センサでは得られ難い生化学的な生体情報を取得し、それを健康管理又は病気の診断に利用している。しかし、上記の生体サンプルは、医療従事者ではない被験者が自ら採取することは技術的に困難なものであったり、生体サンプルの採取に伴う病原体への感染、侵襲又は精神的ストレスによって被験者が害されたりすることがある。これらの問題があるため、上記の生体サンプルの測定装置及び測定方法は予防医療の手段として必ずしも適していない。
【0003】
採取が容易で、感染リスクが無く、侵襲及び精神的ストレスを伴わない生体サンプルの例として、生体の皮膚表面から放出されるガス(皮膚ガス)又は呼気等のような、生体に由来するガス(生体ガス)が挙げられる。生体ガスは、血液等の液体サンプルと同様に、個人差を反映した生体情報が得られる生体サンプルである。生体ガス中の特定成分の有無やその濃度を測定することで、健康状態に関する情報が得られる。そして、生体ガスの中でも皮膚ガスの捕集・測定は、呼気を測定装置へ吹きかけるといった能動的な動作が不要となる利点がある。また、皮膚ガスの組成及び放出量は被験者が自らの意思で変更したりコントロールしたりすることができない、という特徴を有する。これらの理由から、皮膚ガスは、呼気に比べて、より簡便に且つ正確に測定可能な生体サンプルとして期待されている。さらに生体は、その様々な部位の皮膚表面から、生体の状態や環境の変化に応じて、種々のガスを放出し、その濃度は時々刻々と変化する。したがって、生体の特定の部位の皮膚表面から放出された皮膚ガスを、被験者の意識に関わりなく経時的に測定することにより、きめ細かい健康管理を実現できると期待される。例えば、皮膚ガスの測定装置を、腕時計に代表されるような皮膚に接した状態で身につけるタイプのデバイスに搭載することができれば、そのデバイスを身につけているだけで常時測定・無意識測定による健康管理が実現できるであろう。
【0004】
しかし、生体の健康状態と関連付けられる皮膚ガスの放出量は一般に極微少量であり、ng・cm−2・min−1オーダー以下程度である。そのため、皮膚ガスをそのまま測定することは困難であり、皮膚ガスを濃縮して測定する技術が検討されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1及び2では、吸脱着剤である多孔質材料に皮膚ガスを吸着させて蓄積し、蓄積された皮膚ガスを多孔質材料から脱離させて、濃縮された皮膚ガスを測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−147962号公報
【特許文献2】WO2012/056729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、多孔質材料は排ガス用のフィルタ等に多用される。吸着された排ガス成分を多孔質材料から十分に脱離させるためには、500℃程度の高温で多孔質材料を加熱する必要がある。そして、多孔質材料の表面積又は体積が大きいほど、多孔質材料の加熱及び自然冷却に長時間を要する。したがって、従来の多孔質材料を皮膚ガスの捕集及び測定に用いた場合、短い測定間隔での皮膚ガスの組成又は濃度の変移のモニタリングができないという問題があった。多孔質材料の加熱及び自然冷却に要する時間を短縮する簡便な方法としては、多孔質材料から構成されるマクロな集積体を分割して微細なパターンを作製し、微細なパターンの加熱及び自然冷却を行う方法がある。
【0008】
また、腕時計等の小型デバイスに皮膚ガスの測定装置を搭載する場合、測定装置を小型化する必要がある。測定装置の小型化のためには、吸脱着剤(多孔質材料など)から構成される微細なパターンを基板表面に形成する技術が必要となる。以下では、基板と、当該基板表面に形成された吸脱着剤の微細なパターンと、を備えるチップを、「皮膚ガス濃縮チップ」と記す。
【0009】
皮膚ガス濃縮チップを用いて、短い測定間隔での皮膚ガスのモニタリングを行うためには、チップが備えるパターンが十分に高く、基板表面からのパターンの高さ(厚さ)が5μm以上1mm未満であることが好ましい、と本発明者らは考える。上記のパターンの高さは、皮膚ガスの濃縮に要する皮膚ガス濃縮チップの表面積、吸脱着剤のパターンの面積が基板の表面積に占める割合、皮膚ガスの吸着率及び脱離率、皮膚ガスを放出する皮膚の表面積、及び皮膚ガスの捕集時間等を考慮した値である。
【0010】
特開平11−40548号公報(以下「文献3」という。)は、パターンの製造方法を開示している。この方法では、パターンと逆の形状を有するマスクを有機高分子樹脂から形成する。このマスクの空隙部に多孔質材料を含むスラリーを充填して、マスクと共にスラリーを高温で加熱する。この加熱により、多孔質材料が焼結してパターンが形成されると共に、有機高分子樹脂から形成されたマスクは焼失する。この方法では、十分な高さを有する多孔質材料のパターンを製造することができる。しかし、文献3に記載の方法では、多孔質材料の焼結に伴いマスクが焼失するので、パターンを製造する度にマスクを作製する必要がある。つまり、マスクの形成を繰り返す必要がある点においてパターンの製造方法が煩雑であり、製造に要する時間が長い、という問題があった。
【0011】
「Y.L.A.Leung, et al., Chemical Engineering Science, vol.59, pp.4809−4817, 2004.」(以下、「文献4」という。)には、多孔質材料から構成される微細なパターンの製造方法が開示されている。この方法では、水熱合成により多孔質材料の結晶を基板上で成長させる。しかし、文献4に記載の方法では、多孔質材料のパターンの高さが、結晶を成長させる時間に依存する。そして、水熱合成による結晶成長の速度は遅い。したがって、文献4に記載の方法では十分な高さを有するパターンの製造に長時間を要する、という問題があった。例えば、非特許文献1に記載の方法で5μmの高さのパターンを作製するだけでも約1日も要してしまう。
【0012】
「B.Ilic, et al., Biomedical Microdevices, vol.2, pp.317−322, 2000.」(以下、「文献5」という。)には、リフトオフ法によるパターンの製造方法が開示されている。この方法では、ポリパラキシリレン樹脂(poly(para−xylylen) resin)を基板上に蒸着させてエッチングすることで、パターンと逆の形状を有するマスクを形成する。このマスクの空隙部に原料を注入した後、マスクを基板から剥離して、原料からパターンを形成する。この方法では、数nm〜数μmのパターンの高さを実現するために、同程度の高さ(深さ)を有する空隙部をマスクに形成する。しかし、文献5に記載の方法では、5μm以上の高さ(深さ)の空隙部を有するマスクを形成するには煩雑な加工プロセスを採らねばならず、10μm以上の高さ(深さ)の空隙部を有するマスクを形成するのは困難である。そのため、十分な高さを有するパターン(厚いパターン)を形成することはできない、という問題があった。
【0013】
「八瀬清志, 応用物理, vol.77, pp.173−177, 2008.」(以下、「文献6」という。)には、マイクロコンタクト・プリンティング法によるパターンの製造方法が開示されている。この方法では、所望のパターンに対応する形状の凹凸を有するスタンプをポリジメチルシロキサン(PDMS)から形成する。そして、スタンプの凸部分に原料を塗布し、凸部分を基版に接触させることで、パターンを形成する。このように、スタンプの凸部分に塗布した原料を基板に転写する文献6の方法は、1nm〜2μm程度の高さのパターン(薄いパターン)の形成には適しているが、十分な高さを有するパターン(厚いパターン)を形成することはできない、という問題があった。
【0014】
「酒井真理, 電子情報通信学会誌, vol.90, pp.544−548, 2007.」(以下、「文献7」という。)では、インクジェット法によるパターンの製造方法が開示されている。この方法では、原料を微小な液滴としてインクジェットヘッドから基板へ噴射し、所望のデバイスのパターンに応じて基板上の所定の箇所に液滴を着弾させる。文献7に記載の方法において、シリコン、ガラス又はプラスチック等の一般的な基板を用いた場合、着弾した液滴が基板表面との濡れ性に応じて基板上で流動したり、表面張力によって液滴同士が凝集したりする。したがって、文献7に記載の方法では、所望のパターンを正確に製造することが困難である、という問題があった。
【0015】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な高さを有するパターンを簡便に基板の表面に形成することができるパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るパターンの製造方法の一側面は、底部と、底部の表面の周縁に位置する外枠と、外枠で囲まれた底部の表面上に位置する突起部と、を有するモールド(型)を作製する第一工程と、外枠の内側にポリマーの溶液を供給し、ポリマーを硬化させて、貫通穴が形成されたマスクを作製する第二工程と、マスクをモールドから剥離する第三工程と、マスクを基板に密着させる第四工程と、基板に密着したマスクの貫通穴内に原料を導入する第五工程と、マスクを基板から剥離して、原料に由来するパターンを基板の表面に形成する第六工程と、を備え、底部の表面からの突起部の高さが、底部の表面からの外枠の高さ以上である。
【0017】
本発明に係るパターンの製造方法の一側面では、底部の表面からの外枠の高さは、作製するマスクの厚さ以上であることが好ましく、作製するマスクの厚さは、5μm以上1mm未満であることが好ましい。
【0018】
本発明に係るパターンの製造方法の一側面では、第六工程において、マスクを基板から剥離する前、又はマスクを基板から剥離した後、原料に含まれる液体を除去してもよい。
【0019】
本発明に係るパターンの製造方法の一側面では、第五工程において、原料に外力を作用させることにより、原料をマスクの貫通穴内に導入してもよい。外力は、圧力又は電磁気力のうち少なくともいずれかであればよい。
【0020】
本発明に係るパターンの製造方法の一側面では、原料は、多孔質材料、ゼオライト及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0021】
原料が、多孔質材料、ゼオライト及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種である場合、第六工程において、マスクを基板から剥離した後、基板の表面上にある原料を焼結させることにより、パターンを基板の表面に形成してもよい。
【0022】
本発明に係るパターンの製造方法の一側面では、パターンは、人体の皮膚から放出される皮膚ガスを吸着する吸脱着剤を含んでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、十分な高さを有するパターンを簡便に基板の表面に形成することができるパターンの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1a及び図1bは、本発明に係るパターンの製造方法の一実施形態において作製されるモールドの模式的斜視図である。
図2図2a、2b、2c、2d及び2eは、本発明に係るパターンの製造方法の一実施形態を示す模式図であり、特に図2aは、図1aに記載のIIa−IIa線におけるモールド8の断面図(底部6の表面に垂直な方向における断面図)である。
図3図3f、3g、3h及び3iは、本発明に係るパターンの製造方法の一実施形態を示す模式図であり、図2に示す工程に続く工程を示す図である。
図4】本発明の実施例1で形成されたパターンを顕微鏡で撮影した写真である。
図5】本発明の実施例1で作製された皮膚ガス濃縮チップによるアセトンの濃縮効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。各図面において、同一又は同等の構成要素には同一の符号を付す。
【0026】
本実施形態に係るパターンの製造方法は、第一工程、第二工程、第三工程、第四工程、第五工程及び第六工程を備える。第一工程、第二工程、第三工程、第四工程、第五工程及び第六工程はこの順序で実施される。以下では、各工程について説明する。
【0027】
(第一工程)
第一工程では、図1aに示すモールド8又は図1bに示すモールド8aを作製する。モールド8及び8aのいずれも、底部6と、底部6の表面の周縁に位置する外枠2と、外枠2で囲まれた底部6の表面上に位置する複数の突起部4と、を有する。各突起部4は外枠2と離間している。各突起部同士も互いに離間している。複数の突起部4は、規則的に配列していてもよい。例えば、複数の突起部4が格子状に配列していてもよい。複数の突起部4が等間隔で配列していてもよい。複数の突起部4が異なる間隔で配列していてもよい。
【0028】
モールド8においては、底部6の表面からの突起部4の高さh4が、底部6の表面からの外枠2の高さh2よりも高い。モールド8aにおいては、底部6の表面からの突起部4aの高さが、底部6の表面からの外枠2の高さと等しい。
【0029】
底部6の表面からの外枠2の高さh2は、第二工程において作製するマスク10aの厚さ以上であることが好ましい。
【0030】
底部6の形状は特に限定されない。例えば、底部6は板であってもよい。底部6の底面の形状は特に限定されない。例えば、底部6の底面は、多角形、円形又は楕円形であってもよい。
【0031】
突起部4の位置、形状及び寸法は、マスク10aに形成される貫通穴の位置、形状及び寸法に対応する。そして、貫通穴の位置、形状及び寸法は、最終的に得られるパターン14a又は14bの位置、形状及び寸法に対応する。したがって、第一工程において突起部4の位置、形状及び寸法を調整することにより、所望の形状及び寸法を有するパターン14a又は14bを、基板12の表面の所望の位置に容易に形成することができる。突起部4の形状は特に限定されない。例えば、突起部4は、多角柱、多角錐、円柱、円錐、楕円柱又は楕円錐であってよい。底部6の底面に平行な方向における突起部4の大きさ(幅)は、例えば5μm〜10mm程度であればよい。
【0032】
モールド8又は8aの作製方法は特に限定されない。モールド8又は8aの作製方法としては、光造形法、粉末焼結積層造形法、熱溶解積層法、インクジェット粉末積層法、金型成形法、射出成型法、切削加工法、インプリント法、フォトリソグラフィ法、電子ビーム法、ドライエッチング法、ケミカルエッチング法及び電気鋳造法等が挙げられる。所望のモールドのスケール及び形状に応じて、上記作製方法の一種、又は複数の作製方法の組み合わせにより、モールド8又は8aを作製すればよい。モールド8又は8aの材質は、特に限定されない。例えば、モールド8又は8aは、金属若しくはセラミック等の無機物、又は樹脂から形成されてもよい。モールド8又は8aを構成する樹脂は、マスク10aの原料であるポリマーの溶液10に溶解し難く、当該ポリマーの硬化時にポリマーと反応し難いものであればよい。
【0033】
(第二工程)
以下では、図1a及び図2aに示すモールド8を用いて、マスク10aを形成する場合について説明する。ただし、モールド8の代わりに図1bに示すモールド8aを用いてもよい。第二工程では、図2bに示すように、外枠2の内側にポリマーの溶液10を供給する。続いて、ポリマーを硬化することにより、突起部4と略同じ形状を有する貫通穴が形成されたマスク10aが得られる(図2c参照。)。突起部4の位置及び数は、マスク10aに形成される貫通穴の位置及び数に対応する。なお、溶液10を構成する溶媒は、ポリマーの硬化に伴って加熱等により蒸発させればよい。
【0034】
第二工程では、外枠2の内側に供給されたポリマーの溶液10の液面の高さが、外枠2の高さh2を超えることはない。そして、ポリマーの硬化により形成されるマスク10aの高さ(厚さ)も、外枠2の高さh2以下となり易い。したがって、第一工程において外枠2の高さh2を所定の値に調整することによって、第二工程において所望の高さを有するマスク10aを容易に作製することができる。また、外枠2の内側に供給するポリマー溶液の量によってマスク10aの厚さを容易に調整することもできる。マスク10aの厚さは5μm以上1mm未満であることが好ましい。これにより、第五工程及び第六工程において、高さが5μm以上1mm未満程度であるパターン14a又はパターン14bを製造することができる。
【0035】
突起部4の高さh4は、外枠2の高さh2以上であり、外枠2の高さh2はポリマーの溶液10の液面の高さ以上である。したがって、突起部4の全体がポリマーの溶液10中に浸かることはない。つまり、突起部4はポリマーの溶液10を貫通し、少なくとも突起部4の先端が液面以上の高さの位置に露出する。したがって、溶液10中のポリマーを硬化させることにより、突起部4が位置する部分においてマスク10aを完全に貫通した穴(貫通穴)を容易に且つ確実に形成することができる。
【0036】
溶液10に含まれるポリマーは、硬化するものであればよい。ポリマーの具体例としては、熱硬化性ポリマー、光硬化性ポリマー又はイオン硬化性ポリマーが挙げられる。加熱により容易に硬化させることができる点において、熱硬化性ポリマーが好ましい。溶液10を構成する溶媒は、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。
【0037】
ポリマーの溶液10を外枠2の内側に供給した後、溶液10及びモールド8の周りの雰囲気を脱気してもよい。脱気により、溶液10が外枠2の内側の隅々にまでいきわたるとともに、溶液10に含まれる気体が除去されるので、マスク10aの構造的欠陥が生じ難くなる。溶液10を外枠2の内側に供給する前に、外枠2の内壁、底部6の表面、及び突起部4の側面を、離型剤で被覆してよい。離型剤として、例えばポリパラキシリレン樹脂フィルムが好適である。これにより、第三工程においてマスク10aをモールド8から剥離し易くなる。
【0038】
(第三工程)
第三工程では、マスク10aをモールド8から剥離する(図2c参照。)。
【0039】
(第四工程)
第四工程では、図2dに示すように、マスク10aを基板12の表面に密着させる。基板12の表面は平坦であることが好ましい。この場合、第五工程においてマスク10aと基板12との間に原料14が侵入し難く、第六工程において得られるパターン14a又は14bにおける構造的欠陥の発生を抑制することができる。基板12の組成は特に限定されない。例えば、基板12は、シリコン、ガラス又はプラスチックから構成されていてよい。
【0040】
マスク10aの貫通穴に導入する原料14の性質(親水性又は疎水性など)に応じて、マスク10aの表面(貫通穴の内壁表面)に対する表面処理(例えば、表面へのプラズマ照射など)を行ってもよい。表面処理により、第五工程においてマスク10aの貫通穴に原料14をスムーズに導入できることがある。
【0041】
(第五工程)
第五工程では、図2e及び図3fに示すように、基板12の表面に密着したマスク10aの貫通穴内に原料14を導入する。例えば、固体状の原料14を貫通穴内に導入してもよい。原料14は液体であってもよい。つまり、原料14が、パターン14aを構成する成分を含むスラリー又は溶液であってもよい。以下では、原料14が液体である場合について説明する。
【0042】
貫通穴内に導入するスラリー又は溶液の量(スラリー又は溶液の液面の基板12からの高さ)を、ピペッター等を用いて調整することにより、任意の高さのパターン14aを再現性よく正確に製造することができる。または、原料14で貫通穴内を完全に満たすことにより、貫通穴と略同じ形状を有するパターン14aを再現性よく正確に製造することができる。
【0043】
原料14が貫通穴内にスムーズに導入されない場合、原料に外力を作用させてもよい。外力により、原料14を貫通穴内にスムーズに導入し、原料14と貫通穴の内壁との間に隙間が生じることを抑制することができる。その結果、パターン14aの構造的欠陥の発生が抑制される。外力は、圧力、電磁気力、又は圧力及び電磁気力の組み合わせであってもよい。圧力の具体的態様としては、風力(風圧)、原料14の周りの雰囲気の加圧又は脱気が挙げられる。原料14が磁性体又は荷電体である場合、原料14を電場又は磁場中に配置して、原料14を貫通穴内へ押し込む電磁気力を原料14に作用させればよい。
【0044】
原料14は、特に限定されないが、多孔質材料、ゼオライト及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。特に、原料14が、皮膚ガス用の吸脱着剤、又は焼結により吸脱着剤になる物質を含むことが好ましい。つまり、最終的に得られるパターン14a又は14bが、皮膚ガス用の吸脱着剤を含んでもよい。吸脱着剤の具体例としては、ゼオライト、多孔質ガラス、シリカ、アルミナ、多孔性配位高分子、及びカーボン(活性炭)等の多孔質材料が挙げられる。これらの多孔質材料から構成される吸脱着剤に吸着された皮膚ガスは、吸脱着剤の加熱、吸脱着剤の周りの雰囲気の減圧又は吸脱着剤への光照射のうちいずれか一つ、もしくは組み合わせによって、吸脱着剤から脱離する。
【0045】
皮膚ガスを構成する成分の具体例としては、水、水素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素及び硫化水素等の無機成分、又はアセトン、メタノール、エタノール、メタン、イソプレン、トリメチルアミン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びノニナール等の有機成分が挙げられる。なお、労働環境又は生活環境において存在する種々の人工的なガス成分が呼吸又は経皮吸収によって人体に取りこまれた後、人体の皮膚表面から放出される場合、これらのガス成分も皮膚ガスとして吸脱着剤に吸着される。このような人工的なガス成分の具体例としては、事業所又は研究室で扱われる化学薬品(ベンゼン、トルエン等の有機溶媒、又は塩素系溶剤)に由来するガスが挙げられる。
【0046】
吸脱着剤が吸着するガスは皮膚ガスに限定されない。皮膚ガス以外のガスとしては、人体の呼気、動植物に由来するガス、薬物に由来するガス、飲食物に由来するガス、又は大気汚染ガス若しくはシックハウスガス等の有害ガスであってもよい。
【0047】
(第六工程)
第六工程では、図3hに示すように、マスク10aを基板12から剥離して、原料14に由来するパターン14aを基板12の表面に形成する。本実施形態では、図3gに示すようにマスク10aを基板12から剥離する前、又は図3hに示すようにマスク10aを基板12から剥離した後、原料14に含まれる液体(例えば水分)を加熱等によって除去し、乾燥したパターン14aを得てよい。マスク10aを基板12から剥離した後、原料14の種類に応じてパターン14aを焼成してもよい。例えば、原料14が、多孔質材料、ゼオライト及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種、又は焼結によりこれらの物質になる成分である場合、パターン14aを焼成することが好ましい。パターン14aの焼成により、焼結体からなるパターン14bが基板12の表面に形成される(図3i参照。)。なお、原料14をマスク10aで成形した後、乾燥していない原料14を焼成してもよい。
【0048】
基板12から剥離されたマスク10aは、洗浄後、第四工程、第五工程及び第六工程において繰り返し使用することができる。つまり、同一のパターン14a又は14bの製造を繰り返す場合であっても、モールド8の形成(第一工程)ならびにマスク10aの形成(第二工程及び第三工程)を繰り返す必要がない。したがって、パターンの製造に要する時間を短縮することができる。
【0049】
第二工程において外枠2の内側に供給されるポリマーの溶液10の液面の底部6の表面からの高さが約h10であり、第二工程においてポリマーから形成されるマスク10aの厚さ(底部6の表面からのマスク10aの高さ)又はマスク10aに形成される貫通穴の深さ(マスク10aの厚さ方向における貫通穴の長さ)がh10であり、第五工程及び第六工程において原料から形成されるパターン14a又はパターン14bの基板12の表面からの高さ(パターン14a又はパターン14bの厚さ)がh14であるとき、以下の不等式(1)が成立する。
h4≧h2≧h10≧h14 (1)
【0050】
上記不等式(1)から明らかなように、パターン14a又はパターン14bの高さh14は、マスク10aの厚さh10以下になる。したがって、マスクの厚さが5μm以上1mm未満である場合、高さが5μm以上1mm未満程度であるパターン14a又はパターン14bを製造することができる。このパターン14a又はパターン14bが皮膚ガス用の吸脱着剤から構成される場合、パターン14a又はパターン14bの高さが5μm以上1mm未満程度であることにより、吸脱着剤の加熱及び自然冷却に要する時間が短縮される。そのため、吸脱着剤による皮膚ガスの濃縮及びガスセンサによる皮膚ガスの測定を短時間で行うことが可能になる。換言すれば、短い測定間隔での皮膚ガスの組成又は濃度の変移のモニタリングが可能になる。
【0051】
以上の実施形態によれば、5μm以上1mm未満程度の十分な高さを有する微細なパターンを短時間で簡便に且つ正確に製造することができる。また本実施形態によれば、十分な高さを有する微細な吸脱着剤のパターンを備える小型の皮膚ガス濃縮チップを短時間で簡便に製造することができる。皮膚ガス濃縮チップの小型化により、チップが具備するパターン(吸脱着剤)の加熱及び自然冷却に要する時間が短くなる。その結果、短い測定間隔での皮膚ガスのモニタリングが可能となる。また皮膚ガス濃縮チップの小型化により、皮膚ガスの測定装置を小型化して腕時計等の小型の携帯デバイスに搭載することが可能になる。皮膚ガスの測定装置を小型の携帯デバイスに搭載することにより、皮膚ガスの常時測定・無意識測定に基づく人体の健康管理を行うことが可能となる。
【実施例】
【0052】
以下では実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
[パターンの製造]
図1aのモールド8の代わりに図1bのモールド8aを用いたこと以外は、図2a、2b、2c、2d、2e、図3f、3g、3h及び3iに示す手順で、以下のパターンの製造方法を実施した。
【0054】
(第一工程)
第一工程では、3次元光造形機を用いて、図1bに示すモールド8aをアクリル樹脂から作製した。底部6の表面からの突起部4の高さは2mmであった。底部6の表面からの外枠2の高さも2mmであった。底部6の表面に垂直な方向から見た突起部の形状は、一辺が500μmである正方形であった。隣り合う突起部4同士の間隔は500μmであった。
【0055】
後の第三工程においてマスク10aをモールド8aから剥がし易くするために、真空蒸着法により、外枠2の内壁、底部6の表面、及び突起部4の側面をポリパラキシレン樹脂フィルムで被覆した。蒸着するポリパラキシレン樹脂フィルムの厚さは1μmに調整した。
【0056】
(第二工程)
第二工程では、図2bに示すように、外枠2の内側にポリマーの溶液10を供給し、外枠2で囲まれた空間を溶液10で満たした。溶液10には、ポリマー(主剤)として熱硬化性のPDMSを含有させた。また溶液10中にはポリマーの硬化剤も添加した。溶液中におけるPDMSと硬化剤との質量比(混合比)は、10:1に調整した。
【0057】
溶液10が供給されたモールド8aを真空デシケーター内に入れて、真空デシケーター内の真空脱気を行った。この真空脱気により、溶液10に含まれる気体を除去するとともに、外枠2で囲まれた空間の隅々にまで溶液10をいきわたらせた。
【0058】
真空脱気後、ホットプレートによりモールド8aを加熱して、溶液10中のPDMSを硬化させるとともに溶液10の溶媒を蒸発させることにより、貫通穴が形成されたPDMS製のマスク10aを形成した。
【0059】
(第三工程)
第三工程では、マスク10aをモールド8aから剥離した(図2c参照。)。
【0060】
(第四工程)
第四工程では、マスク10aを、シリコンからなる基板12の表面に密着させた(図2d参照。)。
【0061】
(第五工程)
第五工程では、基板12に密着したマスク10aの貫通穴内に、原料14であるスラリーを導入した(図2e及び図3f参照。)。原料14は、以下の成分を混合することにより調製した。
Y型ゼオライト粉末:4.42g。
シリカ粒子を分散させた水:4.42g。
カルボキシメチルセルロース:0.35g。
超純水:20mL。
なお、Y型ゼオライト粉末としては、東ソー株式会社製のハイシリカゼオライト390HUA(HSZ−390HUA)を用いた。シリカ粒子を分散させた水としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックスを用いた。
【0062】
貫通穴内に原料14(スラリー)を導入した後、原料14、マスク10a及び基板12の全体を真空デシケーター内に入れて、真空デシケーター内の真空脱気を数回繰り返した。この真空脱気により、原料14を貫通穴内の隅々にまでいきわたらせた。
【0063】
(第六工程)
真空脱気後、基板12をホットプレートにより60℃で加熱して、原料14中の水分を除去し、乾燥したパターン14aを得た(図3g参照。)。乾燥したパターン14aを得た後、マスク10aを基板12から剥離させた(図3h参照。)。マスク10aの剥離後、パターン14aが形成された基板12を電気炉に入れた。電気炉内において、基板12を100℃で30分間加熱した後、800℃で1時間加熱することにより、パターン14aを焼結させた。つまり、ゼオライトの焼結体から構成されるパターン14bを基板12の表面に形成した(図3i参照。)。
【0064】
第六工程後、基板12の表面を顕微鏡で観察した。顕微鏡を用いて撮影した基板12の表面の写真を図4に示す。図4に示すように、規則的に配列した複数のパターン14b(アレイパターン)が基板12の表面に形成されていることが確認された。基板12の表面に垂直な方向から見たパターン14bの一辺の長さは約500μmであることが確認された。表面形状測定装置によりパターン14bの高さを測定した。基板12の表面からのパターン14bの高さの平均値は129μmであった。つまり、パターン14bが十分な高さを有することが確認された。
【0065】
[皮膚ガスの濃縮実験]
パターン14bが形成された基板12を、8mm×8mmの大きさに切断することで、皮膚ガス濃縮チップを作製した。皮膚ガス濃縮チップを、蓋が空いたバイアル瓶の中に入れ、瓶の開口部を被験者の皮膚表面に密着させて、皮膚ガスを15分間捕集した。つまり、皮膚ガス濃縮チップが備えるパターン14bに皮膚ガスを吸着させた。バイアル瓶の開口部の面積は1.13cmであった。バイアル瓶の体積は16.9mLであった。なお、皮膚ガス濃縮チップのパターン14bに吸着された皮膚ガスは、パターン14bを加熱しない限りパターン14bから脱離しない。したがって、皮膚ガスの捕集中に、被験者の体動等によって瓶の開口部が皮膚表面から離れ、バイアル瓶(皮膚ガスが捕集される空間)の密閉性が一時的に破れてしまったとしても、皮膚ガスの測定の大きな妨げとはならない。
【0066】
皮膚ガスの捕集後、皮膚ガス濃縮チップを、ガスの出し入れが可能なセプタムを有するバイアル瓶の中に入れて、バイアル瓶を密閉した。バイアル瓶の体積は16.9mLであった。密閉されたバイアル瓶を240℃で5分間加熱して、皮膚ガスをパターン14bから脱離させた。加熱直後のバイアル瓶内の雰囲気に含まれるアセトン量(単位:ng)をガスクロマトグラフィ装置により測定した。アセトンは、被験者の皮膚から放出された皮膚ガスに含まれる成分の一つであり、体脂肪の燃焼マーカーとして知られる物質である。以下では、被験者の皮膚から放出された皮膚ガスに含まれるアセトンを「皮膚アセトン」と記す。加熱直後のバイアル瓶内の雰囲気に含まれるアセトンの量は、15分間でバイアル瓶内に捕集された皮膚アセトンの量(15分間の捕集量)に相当し、15分間で皮膚ガス濃縮チップのパターン14bに吸着された皮膚アセトンの量に相当する。15分間の捕集量の測定値を図5に示す。また、1分間の自然放出量を図5に示す。1分間の自然放出量とは、バイアル瓶の開口部で覆われた被験者の皮膚1.13cmから1分間に放出された皮膚アセトンの量を意味する。15分間の捕集量を1分間の自然放出量で除した値(濃縮効果)を図5に示す。
【0067】
図5に示すように、15分間の捕集量は9.1ngであった。1分間の自然放出量は0.75ngであった。濃縮効果は11.6倍であった。これらの数値から、皮膚ガス濃縮チップが備えるパターン14bは皮膚アセトンの濃縮を行うのに十分な量のゼオライトを含有していることが確認された。
【0068】
以上のように、微細な皮膚ガス濃縮チップを用いることにより、単位時間当りに皮膚から自然に放出される微量の皮膚ガスを、小型化が容易な半導体式ガスセンサで測定可能な水準にまで濃縮することができた。したがって、実施例1によれば、皮膚ガス濃縮チップ及び半導体式ガスセンサを備える小型の皮膚ガスの測定装置を製造することが可能になる。そして、小型の皮膚ガスの測定装置を腕時計等の小型の携帯デバイスに搭載することにより、皮膚ガスの常時測定・無意識測定に基づく人体の健康管理を行うことが可能となる。
【0069】
<実施例2>
実施例2では、第六工程においてマスク10aを基板12から剥離する前に、原料14中の水分を除去するための加熱を行わなかった。この点を除いて実施例1と同様の方法で、複数のパターン14bを基板12の表面に形成した。実施例2で製造したパターン14bの高さを表面形状測定装置により測定した。パターン14bの高さの平均値は97μmであった。つまり、第六工程においてマスク10aを基板12から剥離する前に原料14中の水分を除去しない場合であっても、パターン14bが十分な高さを有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る製造方法によって得られるパターンは、例えば皮膚ガスの測定装置が備える吸脱着剤として好適である。
【符号の説明】
【0071】
2・・・外枠、4,4a・・・突起部、6・・・底部、8,8a・・・モールド、10・・・ポリマーの溶液、10a・・・マスク、12・・・基板、14・・・原料、14a・・・乾燥したパターン、14b・・・焼結したパターン、h2・・・底部の表面からの外枠の高さ、h4・・・底部の表面からの突起部の高さ。
図1
図2
図3
図4
図5