特許第6184473号(P6184473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケーエルエー−テンカー コーポレイションの特許一覧

特許6184473レチクルの劣化を検出するための反射マップおよび透過マップの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184473
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】レチクルの劣化を検出するための反射マップおよび透過マップの使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20170814BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20170814BHJP
【FI】
   G01N21/956 A
   G03F1/84
【請求項の数】20
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-501709(P2015-501709)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公表番号】特表2015-516568(P2015-516568A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】US2013029587
(87)【国際公開番号】WO2013142079
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月4日
(31)【優先権主張番号】61/613,181
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘス カール イー
(72)【発明者】
【氏名】シ ルイ−ファン
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−162038(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/030825(WO,A2)
【文献】 特開平09−145626(JP,A)
【文献】 特開平09−304291(JP,A)
【文献】 特開2004−354088(JP,A)
【文献】 特開平10−170240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィレチクルを検査する方法であって、
レチクルにおける複数の局所領域を定義することと、
検査の際に光学式レチクル検査ツールを用いて、前記レチクルにおける前記複数の局所領域の各々について、前記複数の局所領域の各々に属する複数のサブ領域から反射した光に対応する複数の反射強度値の平均値を得ることと、
前記検査の際に前記光学式レチクル検査ツールを用いて、前記レチクルにおける前記複数の局所領域の各々について、前記複数の局所領域の各々に属する前記複数のサブ領域を透過した光に対応する複数の透過強度値の平均値を得ることと、
前記複数の局所領域の各々について、前記複数の反射強度値の前記平均値と、前記複数の透過強度値の前記平均値とを組み合わせることにより複合強度マップを生成することであって、
前記レチクルが劣化していないときに、前記レチクルのレチクルパターンを前記複合強度マップからキャンセルし、かつ、前記レチクルが劣化したときに、前記レチクルの前記レチクルパターンを前記複合強度マップからキャンセルしないものとする、複合強度マップを生成することと、
を含むフォトリソグラフィレチクルを検査する方法。
【請求項2】
前記レチクルの上に存在しているレチクルパターン部分と空間的に放射状の劣化パターンとの双方に対応し、かつ、前記レチクルパターン部分の外側に存在している前記レチクルの複数の部分に対応する複数の強度値とは異なる、複数の強度値が前記複合強度マップに含まれているときに、前記レチクルが前記空間的に放射状のパターンにしたがい劣化していることが前記複合強度マップによって示されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レチクルをフォトリソグラフィプロセスにおいて繰り返し使用して前記空間的に放射状の劣化パターンが前記フォトリソグラフィプロセスによって発生した後で前記検査を行うことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複合強度マップに前記レチクルの上のパターン部分に対応する複数の強度値が含まれるとともに、前記レチクルの上に劣化が存在していないときに前記複数の強度値が前記レチクルの上の非パターン部分に対応する複数の強度値と実質的に等しくなるように、
前記複数の反射強度値の前記平均値と、前記複数の透過強度値の前記平均値とを結合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
局所領域の各々について得られた複数の反射強度値の前記平均値が、前記光学的レチクル検査ツールによって得られた反射強度画像から得られ、局所領域の各々について得られた複数の透過強度値の前記平均値が、前記光学的レチクル検査ツールによって得られた透過強度画像から得られ、かつ、前記複合強度マップが、前記反射強度画像と前記透過強度画像との双方を組み合わせた画像の形をとることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
局所領域の各々が、前記反射透過強度画像の画素に対応することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
局所領域の各々が、前記反射透過強度画像のパッチに対応し、各パッチが複数の画素を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
複数の反射強度値の前記平均値と、複数の透過強度値の前記平均値とを、前記複数の反射強度値および前記複数の透過強度値から得た特定の値で重み付けした上で組み合わせることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の局所領域が、実質的に前記レチクルのアクティブ領域の全体によって構成され、前記複合強度マップを前記レチクルの前記アクティブ領域の全体について生成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検査が、前記レチクルの上にペリクルを取り付けて行われ、かつ、前記複合強度マップが、前記レチクルのペリクルが時間の経過にしたがい所定のレベルを超えて劣化したかどうかを示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フォトリソグラフィレチクルを検査するための検査システムであって、
入射ビームを生成するための光源と、
前記入射ビームを試料へ向かわせるための照明光学モジュールと、
前記入射ビームに応じて前記試料から反射した反射出力ビームと、前記入射ビームに応じて前記試料を透過した透過出力ビームとを、少なくとも1つのセンサへ向かわせるための集光光学モジュールと、
前記反射出力ビームを検出して前記反射出力ビームについて反射強度画像または反射強度信号を生成するとともに、前記透過出力ビームを検出して前記透過出力ビームについて透過強度画像または透過強度信号を生成するための少なくとも1つのセンサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置が、
レチクルの複数の局所領域を定義する処理と、
局所領域の各々について、検査の間に、前記反射出力ビームから、前記レチクルの局所領域の各々に属する複数のサブ領域から反射した光に対応する複数の反射強度値の平均値を得る処理と、
局所領域の各々について、前記検査の間に、前記透過出力ビームから、前記レチクルの局所領域の各々に属する前記複数のサブ領域を透過した光に対応する複数の透過強度値の平均値を得る処理と、
前記局所領域の各々について、複数の反射強度値の前記平均値と、複数の透過強度値の前記平均値とを組み合わせることにより複合強度マップを生成する処理であって、前記レチクルが劣化していないときに前記レチクルのレチクルパターンが前記複合強度マップからキャンセルされるように、かつ、前記レチクルが劣化したときに前記レチクルの前記レチクルパターンが前記複合強度マップからキャンセルされないように、前記複合強度マップを生成する処理と、
を実行するように構成されていることを特徴とするフォトリソグラフィレチクルを検査するための検査システム。
【請求項12】
前記レチクルの上に存在しているレチクルパターン部分と空間的に放射状の劣化パターンとの双方に対応し、かつ、前記レチクルパターン部分の外側に存在している前記レチクルの複数の部分に対応する複数の強度値とは異なる、複数の強度値が前記複合強度マップに含まれているときに、
前記レチクルが前記空間的に放射状のパターンにしたがい劣化していることが前記複合強度マップによって示されることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記検査が、前記レチクルをフォトリソグラフィプロセスにおいて繰り返し使用して前記空間的に放射状の劣化パターンが前記フォトリソグラフィプロセスによって発生した後で行われることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記複合強度マップに前記レチクルの上のパターン部分に対応する複数の強度値が含まれるとともに、前記レチクルの上に劣化が存在していないときに前記複数の強度値が前記レチクルの上の非パターン部分に対応する複数の強度値と実質的に等しくなるように、
複数の反射強度値の前記平均値と、複数の透過強度値の前記平均値とが結合されていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記局所領域の各々について得られた前記複数の反射強度値の前記平均値が、前記反射出力ビームによって得られた反射強度画像から得られ、前記複数の局所領域の各々について得られた前記複数の透過強度値の前記平均値が、前記透過出力ビームによって得られた透過強度画像から得られ、かつ、前記複合強度マップが、前記反射強度画像と前記透過強度画像との双方を組み合わせた画像の形とされていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
局所領域の各々が、前記反射強度画像および透過強度画像の画素に対応していることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
局所領域の各々が、前記反射強度画像および透過強度画像のパッチに対応し、各パッチが複数の画素を有することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
複数の反射強度値の前記平均値と、複数の透過強度値の前記平均値とが、前記反射強度値および透過強度値から得た特定の値で重み付けした上で組み合わせられていることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の局所領域が、実質的に前記レチクルのアクティブ領域の全体によって構成され、前記複合強度マップが、前記レチクルの前記アクティブ領域の全体について生成されることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記検査が、前記レチクルの上にペリクルを取り付けて行われ、かつ、前記複合強度マップが、前記レチクルのペリクルが時間の経過にしたがいあらかじめ定義されたレベルを超えて劣化したかどうかを示すことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年3月20日に出願されたCarl E.Hess他による米国仮出願第61/613,181号(発明の名称『マスクの劣化を検出するための透過強度マップおよび反射強度マップの使用』)に基づく米国特許法第119条の規定による優先権を主張し、この仮出願に係る記載内容は、これを参照してすべて本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、一般にレチクル検査の分野に関する。より具体的には、本発明は、レチクルの劣化を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
半導体製造産業は、一般に、シリコンなど積層されかつ基板上にパターン形成される半導体材料を用いて集積回路を製造するために高度に複雑化した技術を利用している。回路集積の大規模化および半導体デバイスの小型化のために、製造されたデバイスは欠陥の影響を受けやすくなってきている。つまり、デバイスにおいて不具合を生じさせる欠陥が微細化しつつある。エンドユーザまたは顧客への出荷前のデバイスは無欠陥である。
【0004】
集積回路は、典型的には複数のレチクルによって製造される。まず回路設計者は回路パターンデータをレチクル生産システムまたはレチクルライタに与えるが、このデータは特定の集積回路(IC)設計を記述する。回路パターンデータは、典型的には、製造されたICデバイスの物理レイヤの表現レイアウト(representational layout)という形をとる。この表現レイアウトは、ICデバイスのそれぞれの物理レイヤ(例えばゲート酸化物、ポリシリコン、メタライゼーションなど)についての表現レイヤ(representational layer)を含む。それぞれの表現レイヤは、特定のICデバイスのレイヤのパターニングを定義する複数の多角形からなる。レチクルライタは、回路パターンデータを用いて、後に特定のIC設計を製造するのに用いられる複数のレチクルを書き込む(例えば典型的には電子ビームライタまたはレーザスキャナがレチクルパターンを露光するのに用いられる)。
【0005】
レチクルまたはフォトマスクは、少なくとも透明領域および不透明領域、さらに場合により半透明領域および位相シフト領域を含む光学要素であって、これら領域が全体として集積回路のような電子デバイスにおける同一平面のフィーチャのパターンを定義する。レチクルは、エッチング、イオンインプランテーションまたは他の製造プロセスのために半導体ウェハの特定の領域を定義するためにフォトリソグラフィ中に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各レチクルまたはレチクルのグループの製造後であれば、各新品のレチクルには欠陥または劣化が存在しないのが典型的である。しかしながら、使用後であれば、レチクルには欠陥または劣化が存在していることがある。それゆえ、改良されたレチクル検査技術へのニーズが依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明の特定の実施形態の基本的理解を提供するために本開示の簡易な概要を説明する。この概要は、本開示の包括的な概観ではなく、本発明の必須の/不可欠の要素を特定するものでもなく、かつ、本発明の範囲を画定するものでもない。その唯一の目的は、ここに開示した若干の概念を、後述するより一層詳細な説明への橋渡しとして簡易な形態にて提示することにある。
【0008】
一実施形態においては、フォトリソグラフィレチクルを検査する方法が開示される。レチクルにおける複数の局所領域が定義される。検査の際に光学式レチクル検査ツールを用いて、局所領域の各々について、レチクルの局所領域の各々に属する複数のサブ領域から反射した光に対応する複数の反射強度値の平均値を得る。また、検査の際に光学式レチクル検査ツールを用いて、局所領域の各々について、レチクルの局所領域の各々に属する複数のサブ領域を透過した光に対応する複数の透過強度値の平均値を得る。局所領域の各々について、複数の反射強度値の平均値と、複数の透過強度値の平均値とを組み合わせることにより複合強度マップを生成する。そして、複合強度マップを生成する際、レチクルが劣化していないときに、レチクルのレチクルパターンを複合強度マップからキャンセルし、かつ、レチクルが劣化したときに、レチクルのレチクルパターンを複合強度マップからキャンセルしないものとする。
【0009】
具体的な実施態様においては、複合強度マップに、レチクルの上に存在しているレチクルパターン部分と空間的に放射状の劣化パターンとの双方に対応し、かつ、このレチクルパターン部分の外側に存在している当該レチクルの部分に対応する複数の強度値とは異なる、複数の強度値、が含まれているときに、前記レチクルが空間的に放射状のパターンで劣化していることが複合強度マップによって示される。さらなる態様において、レチクルをフォトリソグラフィプロセスにおいて繰り返し使用して空間的に放射状のパターンがフォトリソグラフィプロセスによって発生した後で検査を行う。他の実施形態においては、複合強度マップが、レチクルの上のパターン部分に対応し、当該レチクルの上に劣化が存在していないときにレチクルの上の非パターン部分に対応する複数の強度値と実質的に等しい複数の強度値を含むように、複数の反射強度値の平均値と、複数の透過強度値の平均値とを結合する。
【0010】
別の実施形態においては、局所領域の各々について得られた複数の反射強度値の平均値が、光学的レチクル検査ツールによって得られた反射強度画像から得られ、局所領域の各々について得られた複数の透過強度値の平均値が、光学的レチクル検査ツールによって得られた透過強度画像から得られる。この態様においては、複合強度マップが、反射強度画像と透過強度画像との双方を組み合わせた画像の形をとる。さらなる態様においては、局所領域の各々が、反射強度画像および透過強度画像の画素に対応する。その他の態様においては、局所領域の各々が、反射強度画像および透過強度画像のパッチに対応し、各パッチが複数の画素を有する。
【0011】
さらなる別の実施形態においては、複数の反射強度値の平均値と、複数の透過強度値の平均値とを、反射強度値および透過強度値から得た特定の値で重み付けした上で組み合わせる。その他の態様においては、複数の局所領域が、実質的にレチクルのアクティブ領域の全体を含み、複合強度マップをレチクルのアクティブ領域の全体について生成する。別の実施形態においては、検査はレチクルの上にペリクルを取り付けて行われ、かつ、複合強度マップは、レチクルのペリクルが時間の経過にしたがい所定のレベルを超えて劣化したかどうかを示す。
【0012】
特定の実施形態においては、本発明はフォトリソグラフィレチクルの検査を行うためにフォトリソグラフィレチクルを検査する検査システムに関する。システムは、入射ビームを生成するための光源と、入射ビームを試料へ向かわせるための照明光学モジュールを備えている。さらに、システムは、入射ビームに応じて試料から反射した反射出力ビームと、入射ビームに応じて試料を透過した透過出力ビームとを、少なくとも1つのセンサへ向かわせるための集光光学モジュールを有する。少なくとも1つのセンサは、反射出力ビームを検出して反射出力ビームについて反射強度画像または反射強度信号を生成するとともに、透過出力ビームを検出して透過出力ビームについて透過強度画像または透過強度信号を生成するように構成されている。さらに、システムは、前述した処理の少なくとも一部を実行するように構成された制御装置を備えている。他の実施形態においては、本発明は、前述した処理の少なくとも一部を実行するための命令を格納したコンピュータ読み取り可能媒体に関する。
【0013】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】高出力遠紫外(UV)光を用いたフォトリソグラフィ露光の対象となるレチクルの一部分の概略を示した側面図である。
図1B図1Aのレチクルの概略を示した側面図であって、反復して行われるリソグラフィ露光に起因するマスクフィーチャの劣化を示した図である。
図1C】反復して行われるリソグラフィ露光プロセスの間に発生したMoSiレチクルの一部分の劣化を示した図である。
図2】洗浄プロセスに起因して生じるレチクルのフィーチャの浸食を示した図である。
図3A】ペリクルフレームに囲まれたアクティブ領域を有するレチクルの概略を示した上面図である。
図3B図3Aのレチクルおよびペリクルの概略を示した側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るレチクル上の単純な不透明パターンから得られた複合強度マップの概略を示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係るレチクル検査プロセスを示すフローチャートである。
図6A】本発明の実施形態に係るレチクルの2つの「スワス」に対応する2組の強度データの概略を示した図である。
図6B】具体的な実施態様に係る、複数のパッチに分割されたスワスに対応する強度データセットの概略を示した図である。
図6C】レチクルにおける特定のスワスに属する特定のパッチにおける複数の画素またはポイントに対応する複数の強度値を示した図である。
図7A】本発明の具体的な実施態様に係る、実質的に劣化がないレチクルから得られた反射画像および透過画像を組み合わせた結果を示した図である。
図7B】本発明の具体的な実施態様に係る、有意な劣化を有するレチクルから得られた反射画像および透過画像を組み合わせた結果を示した図である。
図8】本発明の技術を実装することができる検査システムの例を示した概略図である。
図9A】特定の実施形態に係るマスクパターンをフォトマスクからウェハ上に転写するためのリソグラフィシステムを示した簡易概略図である。
図9B】特定の実施形態に係るフォトマスク検査装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の記載には、本発明に対する綿密な理解を提供すべく具体的事項が詳細にわたり多数記載されている。本発明は、これらの詳細な具体的事項の一部またはその全部を設けずに実施されてもよい。この他、本発明を不必要に不明瞭としない趣旨から、周知のプロセス運用または装置コンポーネントについては説明を加えていない。本発明は具体的な実施形態との関連で説明されるが、本発明がかかる実施形態に限定される趣旨ではないことを理解すべきである。
【0016】
「レチクル(reticle)」なる用語には、一般的にはガラス、ホウケイ酸ガラス、石英または溶融シリカなどの透明基板であって、不透明材料のレイヤをその表面に形成した透明基板が包含される。不透明材料(または実質的に不透明な材料)には、フォトリソグラフィ光(例えば遠紫外光)を完全にまたは部分的に遮断する任意の適切な材料が含まれる。かかる材料の例としては、クロム、ケイ化モリブデン(MoSi)、ケイ化タンタル、ケイ化タングステンおよびOMOG(Opaque MoSi on glass)等が含まれる。接着性を向上させるために、不透明レイヤと透明基板との間にポリシリコン膜を加えてもよい。不透明材料の上には、酸化モリブデン(MoO2)、酸化タングステン(WO2)、酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(CrO2)などの低反射膜が形成されてもよい。
【0017】
レチクルなる用語は、クリアフィールドレチクル、ダークフィールドレチクル、バイナリレチクル、位相シフトマスク(phase shift mask;PSM)、Alternate型PSM、減衰型またはハーフトーン型PSM、ターナリ減衰型PSMおよびクロムレス位相リソグラフィによるPSMを含む(ただしこれらに限定されない)様々な種類のレチクルを意味する。クリアフィールドレチクル(clear‐field reticle)は、透明なフィールドまたはバックグラウンド領域を有し、ダークフィールドレチクル(dark‐field reticle)は、不透明なフィールドまたはバックグラウンド領域を有している。バイナリレチクル(binary reticle)は、パターン形成された透明または不透明な領域を有するレチクルである。例えば、クロム金属吸着膜によって規定されるパターンをもつ透明溶融シリカブランクから形成されたフォトマスクを用いることができる。バイナリレチクルは、位相シフトマスク(PSM)とは異なるもので、この種のレチクルの1つとしては、光を部分的にのみ透過させる膜が含まれ、かかるレチクルは、一般にハーフトーン型(halftone)または埋め込み型位相シフトマスク(embedded phase−shift mask;EPSM)と呼ばれることがある。位相シフト材料がレチクルの交互に配設された透明なスペースの上に配置されている場合には、レチクルは、Alternate型PSM、ALT PSMまたはレベンソン型(Levenson)PSMと呼ばれる。任意のレイアウトパターンに適用される位相シフト材料の種類の1つは、減衰型(attenuated)またはハーフトーン(halftone)PSMと呼ばれ、これは不透明材料を部分的に透過性のある(あるいは「ハーフトーン」)膜に置換して製造されたものであってよい。ターナリ減衰(ternary attenuated)PSMは、完全に不透明なフィーチャをも含んだ減衰型PSMである。
【0018】
レチクルは、時間の経過に伴い多くの異なる仕方でダメージを受けることがある。第1の劣化の例としては、フォトリソグラフ露光プロセスがレチクルの不透明材料の物理的劣化につながる場合がある。例えば、193nm高出力遠紫外(UV)ビームのような、レチクル上に対して用いられる高出力ビームは、レチクル上の不透明材料に対して物理的にダメージを与えることがある。また、ダメージは248nmUVビームのような他の波長であっても発生しうる。実際に、UVビームは、物理的に、不透明フィーチャのコーナを削り取り当該フィーチャの平板化が惹起されることで、レチクル上の不透明パターンを減弱化させる原因となりうる。この特徴的な物理的効果は、レチクルのクリティカルディメンション(CD)に対して悪影響を与えうる。
【0019】
図1Aは、高出力遠紫外(UV)光108を用いたフォトリソグラフ露光の対象となるレチクルの一部分100の概略を示した側面図である。レチクルの一部分100は、透明基板102の上に形成された不透明パターン104a、104bを備えている。不透明部分104a、104bは、実質的に光108を遮断する一方、透明部分は、下方に配置されたウェハ(図示せず)に設けられた、入射光108に反応するフォトリソグラフィ膜を露光させるために、光108をウェハに到達するまで通過させる。この膜の露光領域は、露光された(または露光されない)膜部分を除去するためのエッチング工程といったさらなるプロセスを経た上でパターンをウェハ上に形成する。
【0020】
図に示すように、不透明パターン構造(104a、104bは、それぞれクリティカルディメンション(CD)幅106a、106cをもつように設計および形成されている。同様に、不透明フィーチャ104a、104b間の間隔は、CD幅106bを有している。特定のCD値は、概ね、フォトリソグラフィ工程においてかかる特定のレチクルのフィーチャがどのようにウェハに転写されるか、および、かかるCDがこの転写プロセスを最適化するためにどのように選択されるかに影響を及ぼす。換言すれば、ある特定のレチクルのフィーチャのCD値が特定のCD範囲内にあるかぎり、かかるCD値によって、回路設計者が意図した通りに成果物たる集積回路が適切に動作することができるような、対応するウェハフィーチャを製造することができる。集積チップ領域を保護するため、フィーチャは、典型的には、成果物たる演算回路を得るのに必要な最小寸法で形成される。
【0021】
各露光の間、遠UV光はレチクルに対して相対的に高出力で照射される。UVビームは、不透明フィーチャの表面にバブルおよび変形を発生させて粗面(図示せず)を生成させることができる。この粗面化効果を経ると、高出力UV光は、不透明フィーチャに「プッシュダウン(push down)」を生じる傾向があり、その結果、より丸みを帯びかつ平坦化した不透明フィーチャを得る。マスクフィーチャ寸法、例えば図1Aの106a〜106cは、当初は所定の仕様に適合するCD値を有している。しかしながら、遠UVへの反復的な露光を経ると、例えば、マスクフィーチャは、CD値がもはや所定の仕様の範囲内でなくなるような劣化が生じることがある。このタイプの劣化は、この種の問題がクロムタイプのレチクルに典型的に発生するので、「クロム」劣化(chrome degradation)と呼ばれる。
【0022】
図1Bは、図1Aのレチクルの概略を示した側面図であって、反復して行われるリソグラフィ露光に起因して生じるマスクフィーチャの物理的なタイプの劣化を示した図である。同図に示すように、劣化したフィーチャ154a、154bは、離隔幅156bに影響を及ぼすとともに、顕著に変化した寸法156a、156cを呈している。同図に示すように、不透明フィーチャ154a、154bは、それぞれ、当初幅106a、106cと比較して顕著に大きい幅156a、156cを有している一方、かかる不透明フィーチャの間の間隔は、当初幅106bと比較してはるかに小さい幅156bを有している。この劣化の結果、フィーチャのCD値がウェハの歩留りに影響を与える程度に顕著に変化している可能性がある。例えば、マスクフィーチャ幅156a、156cは、当初の線幅のCDよりも顕著に大きくなっている可能性があり、他方、離隔線幅156bは、当初の離隔幅のCDよりも顕著に小さくなっている可能性がある。
【0023】
別のタイプの劣化は、特にケイ化モリブデン(MoSi)レチクルに発生するが、その他のタイプのレチクルにも発生する。図1Cは、反復して行われるリソグラフィ露光プロセスの間に発生したMoSiレチクルの一部分の劣化を示した図である。露光の間、光がMoSiフィーチャ164a、164bと化学的に反応して、酸化レイヤ174b、174bをかかるMoSiフィーチャの上に生じさせる。つまり、光は、光触媒化学反応を生じさせて、MoSi材料から酸素をイオン化させるとともに、かかるMoSiフィーチャの表面の酸化を生じさせる。この酸化によって、不透明MoSiフィーチャがエッジ部分に沿った酸化ビルドアップによって丸みを帯びることになる。また、このMoSi酸化が原因となってCD値が変化する。例えば、MoSiフィーチャ164a、164bは、追加的な酸化材料174a、174bと合わせて、それぞれ、より一層大きなフィーチャ幅のCD176a、176cおよびより一層小さな離隔CD176bをもたらす。
【0024】
別の劣化の例においては、不透明フィーチャが洗浄プロセスによって小さくなってしまう可能性がある。空気中からまたはその他の発生源からの化学的汚染物質が、レチクル表面に形成されて、「ヘイズ(haze)」を生じさせる可能性がある。このヘイズは、典型的にはレチクルから洗浄除去される。しかしながら、この洗浄プロセスがレチクルのフィーチャの侵食の原因となる可能性がある。図2は、洗浄プロセスに起因して生じるレチクルのフィーチャの浸食を示す。洗浄処理前は、レチクルは透明基板202上に特定サイズおよび特定形状のレチクルのフィーチャ204a、204bを備えている。洗浄処理の間、洗浄液が原因となってこれらのレチクルのフィーチャが侵食されて、侵食を受けたフィーチャ206a、206bを生じさせる可能性がある。また、洗浄に起因して生じるタイプの劣化の場合、特にCDがより小さくなってしまい(例えば200nm以下)、ウェハの歩留りに影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
レチクルのペリクルもまた時間の経過にしたがって劣化する。図3Aは、ペリクルフレーム302に囲まれたアクティブ領域304を有するレチクルの概略を示した上面図である。図3Bは、図3Aのレチクルおよびペリクルの概略を示した側面図である。ペリクルは、ペリクルフレーム302と、このペリクルフレーム302に支持された透明膜306とを備えている。ペリクルは、アクティブ領域304を汚染から保護するためにレチクルに取り付けられている。
【0026】
リソグラフィシステムは相対的に高い開口数(numerical aperture)を有しているので、レチクルの背面に存在する小さい汚染物質は焦点を結ぶことはなく、露光特性に影響を与えないのが通常である。しかしながら、ペリクル膜が露光の間に経時的に暗くなる、あるいは変化する可能性がある。ペリクル膜306は例えば洗浄プロセスを行った後で新しい膜と交換することができるが、複数回の洗浄処理の間に進むペリクルの劣化を監視するほうが有益であると考えられる。ペリクルの劣化は、経時的に放射状となる傾向があり、ウェハ製造に悪影響を及ぼしうる。
【0027】
特定の実施形態によれば、例えばレチクルなどの試料について得られた反射強度マップと透過強度マップとの組合せを利用して、クロム、MoSiなどのレチクルの劣化、ペリクルの劣化または洗浄起因型の劣化を検出するための技術およびシステムが提供される。劣化は、複合マップ全体にわたって空間的に多様なシグネチャを伴う傾向があり、このシグネチャはフォトリソグラフィ露光が繰り返されるにしたがって次第により一層目立つようになる。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態に係る単純なレチクルパターンから得られた複合強度マップ418の概略を示した図である。同図に示すように、2つの単純な十字パターンを含むレチクル領域の反射画像402が得られる。反射画像402は、透明レチクル領域に対応する暗領域410を有する傾向があるが、これは光がレチクルの透明部分を通過して再び検出器のほうへ反射することはないからである。対照的に、反射画像402は、2つの不透明なレチクルの十字形状パターンについては、そこから光が再び検出器のほうへ反射する明領域408a、408bを呈する。
【0029】
対応する透過画像406は、反射画像402とは反対の強度パターンを有する傾向にある。同図に示すように、透過画像406は、不透明レチクルパターンに係る暗い十字部分414a、414bと、透明レチクルの一部分に係る明領域412を備えている。
【0030】
複合画像418は、反射画像と透過画像とから形成することができる。例えば、反射画像および透過画像をあわせて平均することで相対的に灰色の複合画像418が得られる。つまり、パターン縁部416a、416bを除いて不透明レチクルパターンの大半が複合画像からキャンセルされることになる。複合画像からのレチクルパターンのキャンセレーションは不完全ではあるものの、広い領域にわたる平均値を得ることで複合強度マップに対してパターンが与えるインパクトを劇的に低減することができる。
【0031】
レチクルパターンからのインパクトを最小化すると、劣化を複合マップ内で容易に視認することができる。例えば、クロム劣化は、透過画像と比較して、反射画像において不均衡なインパクトを伴う傾向がある。クロム劣化は、透過画像内で対応する変化を伴わないまま不透明レチクル材料の反射率の顕著な低下を生じさせる可能性がある。そして、劣化したレチクルの一部分においてもレチクルパターンがキャンセルされていないので、この不均衡を複合マップ内で強調表示させることができる。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態に係るレチクル検査プロセス500を示すフローチャートである。レチクルの製造後、処理502において当該レチクルを1つ以上のフォトリソグラフィプロセスにおいて使用することができる。もっとも、レチクルは検査されるのに先立って使用される必要があるわけではない。レチクルがすでに使用されたかどうかを問わず、処理504においてレチクルの反射透過画像(reflected and transmitted image)を得る。
【0033】
次に、処理506において、反射画像の各局所領域について、平均反射強度値を得る。同様に、処理508において、透過画像の各局所領域について、平均透過強度値も得る。個々のレチクル画像は、概ね、複数の局所領域に分割することができる。そして、この複数の局所領域から、複数のポイントに係る複数の強度値が取得される。一例として、各局所領域は、画素に対応する。その他の例においては、各局所領域は、パッチ部分に対応していて、このパッチ部分が複数の画素を含んでいる。以下の例においては、パッチ部分が用いられているが、任意の適切なタイプおよびサイズの局所領域を本発明の技術とともに利用することができる。
【0034】
レチクルのパッチ部分は、この強度データを得るためにスキャンされることができる。パッチ部分は、特定のシステムおよび用途要件にしたがって任意のサイズおよび形状とされてもよい。概ね、各パッチ部分について得られた複数の強度値は、任意の適切な態様でレチクルをスキャンすることによって得られてもよい。一例として、各パッチ部分についての複数の強度値は、レチクルをラスタスキャンすることで得られてもよい。代替的に、画像は、円形パターンや螺旋形パターンなどの任意の適切なパターンを用いてレチクルをスキャンすることによって得られてもよい。もちろん、(1つまたは複数の)センサは異なる態様で(例えば円形パターンで)配置される必要があることもあり、および/または、レチクルは、スキャンの間にレチクルから円形または螺旋形状をスキャンするために、異なる態様で(例えば回転されて)移動されてもよい。
【0035】
以下に示す例においては、レチクルがセンサを通過して移動するにしたがい、光は、レチクルの矩形領域(以下、「スワス(swath)」という。)から検出され、かかる被検出光は、各パッチに属する複数のポイントについての複数の強度値に変換される。本実施形態においては、スキャナのセンサは、レチクルから反射したまたは透過した光を受光してそれからレチクルのパッチのスワスに対応する強度データを生成するために、矩形パターンにしたがって配置されている。具体的な例においては、各スワスは、幅約1百万画素および高さ約1000〜2000画素とすることができる。他方、各パッチは、幅約2000画素および高さ1000画素とすることができる。一例として、各画素のサイズは72nmである。
【0036】
図6Aは、本発明の実施形態に係るレチクル600の2つの「スワス」602a、602bに対応する2つの強度データ、例えば反射データおよび透過データ、のセット概略を示した図である。強度データの各セットは、レチクル600の「スワス」に対応していてもよい。強度データの各セットは、蛇行パターンまたはラスタパターンにしたがってレチクルからスワスを逐次スキャンすることにより取得されてもよい。例えば、レチクル600の一番目のスワス602は、左から右へ光学的検査システムの光ビームによってスキャンされて、強度データの第1のセットが取得される。二番目のスワス604が次に右から左へスキャンされて、強度データの第2のセットが取得される。図6Bは、複数のパッチに分割されたスワスに対応する強度データセット602aの概略を示した図である。同図に示すように、強度データ602aには、レチクルのスワスに属する複数のパッチに対応する強度データセット652a、652b、652c、652dなど複数のパッチについて得られた強度データがさらに含まれている。
【0037】
強度データが各スワスに属する各パッチにおける複数のポイントについて収集される間または収集された後で、例えば各反射透過画像の各パッチまたは1つ以上のパッチからなるセットについて平均強度値を判定してもよい。図6Cは、レチクルの特定のスワスに属する特定のパッチ652aの複数の画素またはポイントに対応する複数の強度値(例えば672a、672b、672c、672d、672e、672f)を示した図である。例えば、レチクルのパッチに対応する反射強度データセット652aは、反射強度値26、25、25、25、24、25等を含んでいる。各パッチについて得られた反射強度値すべては、当該パッチについて平均反射強度値(例えば25)を判定するためにあわせて平均されてもよい。
【0038】
各パッチについての反射強度値および透過強度値は、任意の適切な態様で設定された光学的検査ツールを用いて取得されてもよい。例えば、光学的検査ツールは、概ね、反射強度値および透過強度値の両方を得るための動作パラメータセットまたは「レシピ」にしたがい設定される。レシピ設定は、以下の設定のうち1つ以上の設定を含む。すなわち、特定のパターンにおけるレチクルをスキャンするための設定、画素サイズ、隣接信号を単一信号からグループ分けするための設定、焦点合わせ設定、照明または検出開口設定、入射ビーム角度および波長設定、検出器設定、反射光量または透過光量設定、空間モデリングパラメータ等である。
【0039】
ここで再び図5を参照すると、処理510において、各局所領域(例えばパッチまたは画素)における平均反射強度値と平均透過強度値とを組み合わせて、複合反射(R)・透過(T)画像またはマップを生成する。例えば、各画素、パッチまたは各パッチセットについて得られたR・T平均値は、合計されてもよく、それらの平均値をとるようにしてもよい。
【0040】
具体的に得られたR値および/またはT値には、重み付けを施してもよい。例えば、異なるR強度値またはT強度値に対して、複合画像またはマップにおけるレチクル不透明パターンのキャンセレーションが最適化される(例えば最小レチクルパターンが複合画像内に残る)ように、異なる重み付けを施してもよい。一実施態様においては、異なるR強度値は、パターンキャンセレーションを最大化するために異なる重み付けを施されてもよい。もし劣化のないレチクルにレチクルの複数のパターン部分に対応する特定の強度値(色)を有する反射画像がもたらされるならば、これらの特定のR強度値は、同一のレチクルパターン部分に対応するT強度値とともにキャンセルされるように重み付けを施されてもよい。
【0041】
場合によっては、特定の領域についてのR信号およびT信号は、反対符号に代えて同一符号を有していることもあり、このことは、関連領域において結果に整合性がなく、信頼性を欠くことを示している可能性がある。このように、RとTとの組合せは、信頼性が不十分な場合には当該領域において低く評価されている可能性があり、あるいは、演算から除外されている可能性がある。
【0042】
重み値は、実質的に劣化または欠陥のないことが検証された既知の良好なレチクルから得られた検査結果の解析によって得ることができる。レチクルは、任意の適切な方法により、実質的に劣化または欠陥が全くないことを検証または確定されるようにしてもよい。例えば、新たに製造されたレチクルの買い手は、レチクルに欠陥および劣化がないことを製造元で検証済みであるとみなしてもよい。代替的に、レチクル上にCDが不均一であるという欠陥が存在するかどうか、あるいは、レチクルが劣化しているかどうかを判定するために、レチクルは、例えば、ダイ・ツー・データベース(die−to−database)方式の検査を行うことによって、光学顕微鏡または走査電子顕微鏡を用いて検査されてもよい。レチクルは、ヘイズやその他のタイプの劣化および欠陥の除去のための洗浄後に同様にして検査されてもよい。
【0043】
複合強度マップが提供された後で、処理512において、当該マップは、レチクルが仕様不適合となるような劣化を有するかどうかを判定するために解析される。その上で、処理514において、レチクルが検査を合格したがどうかが当該マップに基づいて判定される。例えば、劣化のないレチクルは均一強度の複合画像を生成する傾向があるので、ユーザは、複合マップ画像上における任意の空間的に変化するシグネチャの存在がレチクルの劣化を表すと判定してもよい。代替的に、任意の空間的な変化があらかじめ定義された閾値を超える(またはそれ未満の)関連する平均強度値を有しているかどうかを、自動化されたプロセスによって判定してもよい。平均強度値があらかじめ定義された閾値を超えている(またはそれ未満)ならば、対応するレチクルの一部分は、レチクルに欠陥があってもはや使用に堪えないかどうかを判定するためにより一層慎重にレビューを受けてもよい。例えば、クリティカルディメンション(CD)が仕様不適合であるかどうかを判定すべく欠陥領域に対してレビューを行うために走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてもよい。
【0044】
レチクルの検査が不合格であれば、処理516において、当該レチクルは廃棄され、または可能であれば補修される。例えば、ある特定の欠陥をレチクルから除去することができる。補修後、レチクルに対して検査が随時行われ、手順500が繰り返される。
【0045】
複合反射透過強度マップを任意の適切な形で記憶および/または表示するために任意の適切な機構を用いてもよい。例えば、強度マップは、レチクルの各領域についての平均強度変化値のリストとしてテキスト的に表現されることができる。各複合平均強度値は、対応するレチクル領域座標の横にリストアップされてもよい。また、各複合強度値は、格子点の差分値についての標準偏差または分散のような測定基準によって表現されることができる。代替的にまたは追加的には、複合強度マップは、異なる強度分散値または範囲が、異なる色を付されたレチクル領域、異なる棒グラフ高さ、異なるグラフ値または3次元表現等の異なる視覚的態様にしたがって示されるように、視覚的に表現されてもよい。複合強度マップは、異なる格子点サンプリングサイズによって、あるいは、多項式フィッティングなどの異なる関数形へのフィッティングまたはフーリエ変換によって、表現されることができる。また、個別の反射マップおよび透過マップは、例えば視覚的にまたは定量的に表現されることができる。
【0046】
劣化がいまだレチクル上に発生していないときは、複合反射透過画像は、その大半が灰色となる傾向があるが、これは、不透明パターンが反射画像および透過画像において反対の強度値をもたらすからである。図7Aは、本発明の具体的な実施態様に係る、実質的に劣化がないレチクルから得られた反射画像および透過画像を組み合わせた結果を示した図である。同図に示すように、反射画像702と透過画像704とを組み合わせると、各局所領域の反射強度値および透過強度値の平均値をとった複合画像706となる。生成された複合画像706は、ほぼ均一な灰色外観を有している。
【0047】
図7Bは、本発明の具体的な実施態様に係る、有意な劣化を有するレチクルから得られた反射画像および透過画像を組み合わせた結果を示した図である。同図に示すように、有意な劣化は、透過画像772においてよりも反射画像774においてのほうが多く観察される。生成された複合画像776は、複合画像からキャンセルされなかったレチクルパターンの領域とともに、この実質的に放射状の劣化を表している。
【0048】
ある特定の複合強度マップの実施形態は、レチクルについて空間次元における強度変化を説明するものである。例えば、複合強度マップは、レチクルの特定の広い領域についての透過光と反射光との平均値に対応している。この複合強度マップは、微細スケール解像度で欠陥を解像する必要のない平均空間的変化を示している。追加的には、かかる劣化が反射画像および/または透過画像において明確に観察できるようになる前に、複合強度画像において控えめな劣化が見える。また、複合強度マップは、反復的なレチクルのフィーチャに加えて非反復的なレチクルのフィーチャに対しても容易に生成および適用されることができる。
【0049】
また、本発明の特定の実施形態は例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行われるように、その他の検査技術と比較してより大きい数のポイントをサンプリングすることができる。SEM検査は非常に緩慢なので、スパースサンプリング(例えば典型的には2000ポイント以下)がしばしば用いられる。本発明の実施態様の一例として、各パッチ(1k×2k)は、各画素の2百万ポイントすべてについて強度値を得るためにスキャンされる約2百万画素を含んでいる。もし平均値が各パッチについて得られるならば、2百万ポイントがサンプリングされる。その他の例においては、2つのパッチにおけるポイントを平均することで、各2パッチグリッドについて1百万ポイントがサンプリングされることになる。もし50パッチが平均されるならば、各50パッチグリッドについて40,000ポイントがサンプリングされる。200パッチを平均することで、10,000ポイントがサンプリングされることになるが、これでも依然としてSEM検査においてサンプリングしたい最大ポイント数よりもはるかに多い。
【0050】
反射光に対応する強度値は、各パッチについて得られた平均強度値を判定する前または判定した後で、透過光について得られた強度値と組み合わせてもよい。例えば、反射強度値および透過強度値の平均値を、各ポイントまたは画素について判定してもよい。代替的に、1つのパッチに対して反射強度値と透過強度値とについて平均値を別々に計算してもよい。次に、別々に計算された各パッチについての反射平均値および透過平均値をあわせて平均値をとり、あるいは組み合わせてもよい。実施態様の一例として、反射(R)値および透過(T)値は、式(T−R)/2にしたがって組み合わせてもよい。R平均値およびT平均値は足し合わせることもできる。反射信号は、典型的には、透過信号とは反対符号である。したがって、2つのマップの差分をとれば信号を足し合わせることになる。ノイズ源はTおよびRについて異なるので、ノイズは複合信号から除いて平均される傾向となりうる。
【0051】
複合強度マップは、ペリクルが取り付けられている間に、あるいはペリクルが(例えば交換のために)取り外された後で、レチクルのアクティブ領域に対して生成されてもよい。アクティブ領域は、リソグラフィプロセスの間に、対応するパターンをウェハ上に生成するのに用いられるレチクルパターン部分である。つまり、レチクルアクティブ領域は、ウェハの複数のダイ領域を生成するのに用いられる。ペリクルが存在している場合には、複合強度マップは、レチクルのアクティブ領域、ペリクルまたはその両方の劣化を示してもよい。
【0052】
複合強度マップは、非均一的劣化のみを示す傾向がある。例えば、強度差分マップは、レチクルまたはペリクルにわたる放射状劣化パターンを示してもよい。強度は、アクティブ領域の異なる密度レベルに基づいて変化してもよい。例えば、同じ劣化は、複合強度マップ内で、レチクルのより高密度のアクティブ領域に対応する領域においてより鮮明に示されるようにしてもよい。
【0053】
複合強度マップは、パターン密度効果を補償するために生成されていてもよい。強度変化はエッジ画素数に依存するので、各パッチについての強度値は、平均エッジ画素数に基づいてスケールすることができる。例えば、各特定のパッチ平均値は、レチクル内のすべてのパッチについての平均エッジ画素数を特定のパッチのエッジ画素数で除算することでスケールされることができる(縮小または拡大することができる)。パッチにエッジがない場合(例えば空である場合)、このスケーリングはゼロで除算することがないように当該パッチに対しては行われない。
【0054】
本発明の技術は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを任意に適切に組み合わせて実装することができる。図8は、本発明に係る技術を実装することができる例示的検査システム800の概略図である。検査システム800は、検査ツールまたはスキャナ(図示せず)から入力802を受信する。また、検査システムは、受信された入力802を配信するデータ配信システム(例えば804a、804b)と、受信された入力802の具体的な部分/パッチを処理する強度信号(またはパッチ)処理システム(例えばパッチプロセッサおよびメモリ806a、806b)と、複合強度マップを生成するマップジェネレータシステム(例えばマップジェネレータプロセッサおよびメモリ812)と、検査システムコンポーネント間の通信を行うためのネットワーク(例えば交換ネットワーク808)と、任意的な大容量記憶装置816と、反射強度マップ、透過強度マップおよび複合強度マップに対するレビューを行う1つ以上の検査制御および/またはレビューステーション(例えば810)を備えている。検査システム800の各プロセッサは、典型的には、1つ以上のマイクロプロセッサ集積回路を備えており、また、インタフェースおよび/またはメモリ集積回路を含んでおり、かつ、これに加えて1つ以上の共有および/またはグローバルメモリデバイスに接続されている。
【0055】
入力データ802を生成するスキャナまたはデータ取得システム(図示せず)は、レチクルの強度信号または画像を得るように構成された(例えば以下に説明するような)任意の適切な機器の形態をとることができる。例えば、スキャナは、反射し、透過し、あるいはその他の形で1つ以上の光センサに向けられた、被検出光の一部分に基づいて、光学的画像を構成しまたはレチクルの一部分の強度値を生成する。スキャナは、続いて強度値を出力し、あるいは、画像がスキャナから出力されてもよい。
【0056】
スキャナまたは検査ツールは、レチクルの各パッチにわたる入射光学ビームスキャンとして、反射光および透過光を検出および集光するように操作可能であってもよい。前述したように、入射光学ビームは、各々が複数のパッチで構成されているレチクルの複数のスワスにわたってスキャンを行ってもよい。光はこの入射ビームに応じて、各パッチの複数のポイントまたはサブ領域から集光されてもよい。
【0057】
スキャナまたは検査ツールは、概ね、かかる被検出光を、強度値に対応する被検出信号に変換するように操作可能であってもよい。検出された信号は、レチクルの異なる場所において異なる強度値に対応する振幅値を有する電磁波形の形をとってもよい。検出された信号は、強度値および関連するレチクル点座標の単純なリストの形をとってもよい。検出された信号は、レチクル上の異なる位置または走査点に対応する異なる強度値を有する画像の形をとってもよい。反射透過画像は、レチクルのすべての位置がスキャンされかつ検出された信号に変換された後で生成されてもよく、あるいは、反射透過画像の一部分は、各レチクルの一部分がスキャンされて、レチクル全体のスキャンの後で最終的な反射透過画像が完成するのに応じて生成されてもよい。
【0058】
検出された信号は、空間像の形をとってもよい。つまり、フォトリソグラフィシステムの光学的効果をシミュレーションしてウェハ上で露出されるフォトレジストパターンの空間像を生成するために空間撮像技術が用いられてもよい。一般的には、フォトリソグラフィツールのオプティクスは、レチクルからの検出された信号に基づいて空間像を生成するためにエミュレートされる。空間像は、ウェハのフォトレジストレイヤの上にフォトリソグラフィオプティクスを通過した光から生成されたパターンに対応している。追加的には、フォトレジスト材料の特定のタイプのためのフォトレジスト露光工程もまたエミュレートされてもよい。
【0059】
入射光または被検出光は、任意の適切な空間的開口を通過させて任意の適切な入射角で任意の入射光または被検出光プロファイルを生成するようにしてもよい。一例として、プログラマブル照明または検出開口は、ダイポール、四重極、クエーサー、アニュラス等の特定のビームプロファイルを生成するために利用されてもよい。具体例においては、ソースマスクオプティマイゼーション(SMO)または任意の画素化照明技術が実装されてもよい。
【0060】
強度データまたは画像データ802は、ネットワーク808を経由してデータ配信システムによって受信されることができる。データ配信システムは、受信されたデータ802の少なくとも一部分を保持するために、RAMバッファのような1つ以上のメモリデバイスと関連付けされてもよい。メモリ全体はスワスのデータ全体を保持するのに充分大きいのが好ましい。例えば、1ギガバイトのメモリであれば、1000画素またはポイント×100万のスワスを処理するのに充分である。
【0061】
また、データ配信システム(例えば804a、804b)は、受信された入力データ802の一部分の、複数のプロセッサ(例えば806a、806b)への配信を制御するように構成されてもよい。例えば、データ配信システムは、第1のパッチ用のデータを第1のパッチプロセッサ806aへルーティングしてもよく、第2のパッチ用のデータをパッチプロセッサ806bへルーティングしてもよい。また、複数のパッチのための複数のデータセットは、各パッチプロセッサへルーティングされてもよい。
【0062】
パッチプロセッサは、少なくともレチクルの部分またはパッチに対応する強度値または画像を受信してもよい。また、パッチプロセッサは、それぞれ、受信されたデータ部分を保持するなどのローカルメモリ機能を提供するDRAMデバイスといった1つ以上のメモリデバイス(図示せず)に接続されまたはこれと一体的に構成されていてもよい。メモリは、レチクルのパッチに対応するデータを保持するのに充分大きいものが好ましい。例えば、8メガバイトのメモリであれば、512×1024画素のパッチに対応する強度値または画像を処理するのに充分である。代替的に、パッチプロセッサは、メモリを共有してもよい。
【0063】
各プロセッサは、1つ以上のパッチからなる各セットについて得られた平均パッチ強度値を判定および記憶してもよい。例えば、各プロセッサは、1つのパッチの平均値または複数パッチからなる各セットの平均値を判定してもよい。例えば、1、2、50または200のパッチからなる各セットについて平均値を判定してもよい。平均値判定の対象となるパッチ数は、もちろん、サンプリング粒度に影響を与える。つまり、各平均値計算の対象となるパッチ数の多さは、サンプリング数の小ささと関連している。しかしながら、各平均値を判定するためにより多くのパッチが用いられるのに応じてノイズは低減されていく。
【0064】
入力データ802の各セットは、レチクルのスワスに対応していてもよい。1つ以上のデータセットは、データ配信システムのメモリに記憶されてもよい。このメモリは、データ配信システム内の1つ以上のプロセッサによって制御されてもよく、メモリは、複数のパーティションに分割されていてもよい。例えば、データ配信システムは、スワスの一部分に対応するデータを第1のメモリパーティション(図示せず)内に受信してもよく、データ配信システムは、その他のスワスに対応するその他のデータを第2のメモリパーティション(図示せず)内に受信してもよい。好ましくは、データ配信システムの各メモリパーティションは、かかるメモリパーティションと関連付けされたプロセッサへルーティングされるデータの部分のみを保持する。例えば、データ配信システムの第1メモリパーティションは、第1のデータを保持してパッチプロセッサ806aへルーティングしてもよく、第2のメモリパーティションは、第2のデータを保持してパッチプロセッサ806bへルーティングしてもよい。
【0065】
データ配信システムは、データの各データセットを当該データの任意の適切なパラメータに基づいて定義および配信してもよい。例えば、データは、レチクル上のパッチの対応する位置に基づいて定義および配信されてもよい。一実施形態においては、各スワスは、スワス内の画素の水平位置に対応するカラム位置の範囲と関連付けされている。例えば、スワスのカラム0〜256は、第1のパッチに対応し、および、これらのカラム内の画素は、1つ以上のパッチプロセッサへルーティングされる第1の画像または強度値集合を含んでいるであろう。同様に、スワスのカラム257〜512は、第2のパッチに対応していてもよく、および、これらのカラムにおける画素は、異なるパッチプロセッサへルーティングされる第2の画像または強度値集合を含んでいる。
【0066】
図9Aは、特定の実施形態に係るマスクパターンをフォトマスクMからウェハWの上に転写するのに用いることができる典型的なリソグラフィシステム900を示した簡易概略図である。かかるシステムの例としては、スキャナおよびステッパ、より具体的にはオランダ国フェルトホーフェンのASML社から入手可能なPAS5500システムが含まれる。一般的に、照明源903は、光ビームを、照明光学系907(例えばレンズ905)を通過させて、マスク平面902に配置されているフォトマスクMの上に向けて照射する。照明レンズ905は、平面902において開口数901を有している。開口数901の値は、フォトマスク上のどの欠陥がリソグラフィ的観点から見て有意な欠陥であってどの欠陥がそうではないかに影響を与える。ビームのうちフォトマスクMを通過する部分は、パターン転写を開始するために結像光学系913を通過してウェハWの上に向かうパターン化光学信号をなしている。
【0067】
図9Bは、レチクル平面952において相対的に大きい開口数951bをもつ撮像レンズを備えた照明光学系951aを有する、特定の実施形態に係る例示的な検査システム950の概略図である。図示された検査システム950は、例えば、より一層拡張的な検査を行うための60−200倍以上の倍率を提供するように設計された顕微鏡倍率オプティクスを含む、検出オプティクス953a、953bを備えている。例えば、検査システムのレチクル平面952における開口数951bは、リソグラフィシステム900のレチクル平面902における開口数901よりもはるかに大きくすることが考えられ、これにより、試験検査画像と実際の印刷画像との間に相違をもたらしうる。
【0068】
本明細書に記載された検査技術は、図9Bに概略を示したシステムのような様々な特別に構成された検査システムに実装させることができる。図示されたシステム950は、照明光学系951aを通ってレチクル平面952内のフォトマスクM上に向かう光ビームを生成する照明源960を備えている。光源の例としては、コヒーレントレーザ光源(例えば遠UVまたはガスレーザ発生装置)、フィルタ付きランプ、LED光源等が含まれる。一例として、光源は193nmレーザである。上述した通り、検査システム950は、対応するリソグラフィシステムのレチクル平面開口数(例えば図9Aにおける要素901)よりも大きい開口数951bをレチクル平面952に有してもよい。検査対象たるフォトマスクMは、レチクル平面952におけるマスクステージの上に配置されて光源に対して露出される。
【0069】
マスクMからのパターン化イメージは、光学的要素953aの集光部を通過し、光学的要素953aはパターン化イメージをセンサ954aの上に投影する。反射系において、光学的要素(例えばビームスプリッタ976および検出レンズ978)は、反射光をセンサ954bの上に向け、捕捉する。2つのセンサが図示されているが、同一のレチクル領域の異なるスキャン処理の間に単一のセンサを用いて反射光および透過光を検出することができる。適切なセンサとしては、電荷結合素子(CCD)、CCDアレイ、時間遅延積分(TDI)センサ、TDIセンサアレイ、光電子増倍管(PMT)およびその他のセンサが含まれる。
【0070】
照明光学系のカラムは、レチクルのパッチをスキャンするために、任意の適切な機構により、マスクステージに対して移動させてもよく、および/またはステージを検出器またはカメラに対して移動させてもよい。例えば、ステージを移動させるためにモータ機構を利用してもよい。モータ機構は、例として、ねじ駆動装置およびステッピングモータ、フィードバックポジション付きリニアドライブ、または、バンドアクチュエータおよびステッピングモータによって構成されてもよい。
【0071】
各センサ(例えば954aおよび/または954b)が捕捉した信号は、コンピュータシステム973によって処理されることができ、あるいはより一般的には、1つ以上の信号処理装置によって処理されることができる。そして、かかる装置は、それぞれ、各センサからのアナログ信号を処理のためにデジタル信号に変換するように構成されたアナログ/デジタルコンバータを備えたものである。コンピュータシステム973は、典型的には、入出力ポートと1つ以上のメモリとに適切なバスまたはその他の通信機構を介して接続された1つ以上のプロセッサを有している。
【0072】
また、コンピュータシステム973は、焦点およびその他の検査レシピパラメータを変更するなどのユーザ入力を提供するための1つ以上の入力装置(例えばキーボード、マウス、ジョイスティック)を備えている。さらに、コンピュータシステム973は、例えば、試料位置(例えばピント合わせおよびスキャン)を制御するためのステージに接続され、また、その他の検査パラメータやその他の検査システムコンポーネントのコンフィギュレーションを制御するために当該その他の検査システムコンポーネントに接続されていてもよい。
【0073】
コンピュータシステム973は、得られた強度値、画像およびその他の検査結果を表示するためのユーザインタフェース(例えばコンピュータ画面)を提供するように(例えばプログラミング命令により)構成されていてもよい。コンピュータシステム973は、反射および/または透過被検知光ビームの強度、位相および/またはその他の特性を解析するように構成されていてもよい。コンピュータシステム973は、得られた強度値、画像およびその他の検査特性を表示するためのユーザインタフェースを(例えばコンピュータ画面上に)提供するように(例えばプログラミング命令により)構成されていてもよい。特定の実施形態においては、コンピュータシステム973は、前記詳述した検査技術を実行するように構成されている。
【0074】
かかる情報およびプログラム命令は、特別に構成されたコンピュータシステム上で実装されるので、かかるシステムは、コンピュータ読み取り可能媒体に格納することができる、本明細書に記載された様々な処理を実行するためのプログラム命令/コンピュータコードを備えている。機械可読媒体の例としては、これらに限定されるものではないが、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープのような磁気媒体、CD−ROMディスクなどの光学的媒体、光学ディスクなどの光磁気媒体、および、読出し専用メモリデバイス(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)のようなプログラム命令を格納および実行するように特別に構成されたハードウェアデバイスが含まれる。プログラム命令の例としては、コンパイラにより生成されるような機械コードと、高レベルコードを含むファイルであってインタープリタを利用してコンピュータによって実行することができるファイルとの双方が含まれる。
【0075】
特定の実施形態においては、フォトマスクを検査するシステムは、本明細書に記載された技術を実行するように構成された少なくとも1つのメモリと少なくとも1つのプロセッサとを備えている。検査システムの一例としては、特別に構成された、カリフォルニア州ミルピタスのKLA‐Tencor社から入手可能なTeraScan(登録商標)DUV検査システムが含まれる。
【0076】
上記発明は理解の明確性のため詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲内で変更および改変を行うことができることは明らかであろう。本発明のプロセス、システムおよび装置を実装する代替的な手段が多数存在することが理解されるべきである。したがって、本実施形態は本発明を説明することを目的とするものであって、本発明を限定する趣旨ではなく、本発明は本明細書に記載した詳細事項に限定されるべきものでもない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B