(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータの値は、前記測定データの第2の量に対する前記x線応答モデルの前記フィッティングに基づいて決定され、前記決定された値は、前記少なくとも1つの標本パラメータ値を決定するために前記測定データの第1の量を用いる前記光学応答モデルの前記フィッティングにおいて定数として処理される、請求項1に記載のモデル構築および解析エンジン。
前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータは、前記測定データの第1の量を用いる前記光学応答モデルの前記フィッティングと、前記測定データの第2の量に対する前記x線応答モデルの前記フィッティングとの両方を含む、並行フィッティング解析において大域的パラメータとして処理される、請求項1に記載のモデル構築および解析エンジン。
前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータは、ラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、細孔サイズ、細孔密度、側壁角度、プロファイル、膜厚、臨界寸法、およびピッチのいずれかである、請求項1に記載のモデル構築および解析エンジン。
前記測定データの第2の量の前記フィッティング解析に基づいて前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータの値を決定することを更に含み、前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータの前記決定された値は、前記測定データの第1の量の前記フィッティング解析における定数として処理される、請求項11に記載の方法。
前記光学応答モデルを用いる前記測定データの第1の量および前記x線応答モデルを用いる前記測定データの第2の量の並行フィッティング解析に基づいて、前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータの値を決定することを更に含む、請求項11に記載の方法。
前記光学応答モデルを用いる前記測定データの第1の量の前記フィッティング解析および前記x線応答モデルを用いる前記測定データの第2の量の前記フィッティング解析と関連付けられた費用関数の残存値を決定することと、
前記残存値が所定の閾値を超えるかを決定することと、
前記残存値が前記所定の閾値を超える場合に、前記標本の前記構造の前記幾何学的モデルを再編成することと、
前記残存値が前記所定の閾値を超えない場合に前記標本の前記構造の前記幾何学的モデルを記憶することと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータは、ラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、細孔サイズ、細孔密度、側壁角度、プロファイル、膜厚、臨界寸法、およびピッチのいずれかである、請求項11に記載の方法。
前記測定データの第2の量の前記フィッティング解析に基づいて、前記コンピュータに前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータの値を決定させるためのコードを更に備え、前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータの前記決定された値は、前記測定データの第1の量の前記フィッティング解析における定数として処理される、請求項17に記載の非一時的で、コンピュータで読み取り可能な媒体。
前記光学応答モデルを用いる前記測定データの第1の量および前記x線応答モデルを用いる前記測定データの第2の量の並行フィッティング解析に基づいて、前記コンピュータに前記少なくとも1つの共通幾何学的パラメータの値を決定させるためのコードを更に備える、請求項17に記載の非一時的で、コンピュータで読み取り可能な媒体。
前記光学応答モデルを用いる前記測定データの第1の量の前記フィッティング解析および前記x線応答モデルを用いる前記測定データの第2の量の前記フィッティング解析と関連付けられた費用関数の残存値を前記コンピュータに決定させるためのコードと、
前記残存値が所定の閾値を超えるかを前記コンピュータに決定させるためのコードと、
前記残存値が前記所定の閾値を超える場合に前記コンピュータに前記標本の前記構造の前記幾何学的モデルを再編成させるためのコードと、
前記残存値が前記所定の閾値を超えない場合に前記コンピュータに前記標本の前記構造の前記幾何学的モデルを記憶させるためのコードと、を更に備える、請求項17に記載の非一時的で、コンピュータで読み取り可能な媒体。
【発明を実施するための形態】
【0020】
異なる半導体製作処理と関連付けられた構造的および材料特性(例えば、構造や膜の材料組成、寸法特性等)の測定を行うための方法ならびにシステムが提示される。本明細書において説明されるように、半導体標本の1つ以上の構造的パラメータは、複合型解析で異なる測定技法によって集められた測定に対する標本の応答のモデルをフィッティングすることによって決定される。参照は、ここで、背景例や発明のいくつかの実施形態に詳細になされることになり、それらの例は、添付の図面に例示される。
【0021】
一態様では、少なくとも2つの異なる測定技術に対する標本の応答のモデルは、少なくとも1つの共通幾何学的パラメータを共有する。更なる態様では、少なくとも2つの異なる測定技術に対する標本の応答のモデルは、同じ幾何学的モデルに基づく。
【0022】
いくつかの実施形態では、標本の光学測定およびx線測定の両方の複合型解析は、x線および光学技法の補完的特質に起因して測定感度と処理能力の増加を可能にする。測定の精密さおよび精度は、x線および光学測定から導かれたデータセットを使用して連続してまたは並行して数学的に解かれる共有モデルパラメータを識別することによって向上され得る。測定技術の多様性を用いて共有パラメータを測定することは、パラメータ間の相関関係を減らし、測定精度を向上させる。
【0023】
一般に、本明細書に記述されるx線および光学測定技法は、検査下で標本のいくつかの物理性質を測定する間接的な方法である。ほとんどの場合において、測定された値は、標本の物理性質を直接的に決定するために使用されることができない。公称測定処理は、構造(例えば、膜厚、臨界寸法、屈折率等)およびマシン(例えば、波長、入射角、偏光角度等)のパラメータ化から成る。測定された値を予測することを試みるモデルが、生成される。モデルは、マシン(P
マシン)および標本(P
標本)と関連付けられたパラメータを含む。
【0024】
マシンパラメータは、計測ツール自体を特徴付けるために使用されるパラメータである。例となるマシンパラメータは、入射角(AOI)、解析器角度(A
0)、偏光子角度(P
0)、照明波長、開口数(NA)等を含む。標本パラメータは、標本を特徴付けるために使用されるパラメータである。薄膜標本の場合、例となる標本パラメータは、屈折率、誘電関数テンソル、全ての層の公称層厚さ、層順序等を含む。測定目的のために、マシンパラメータは、既知の、固定パラメータとして処理され、標本パラメータは、既知ではない、浮遊パラメータとして処理される。浮遊パラメータは、理論的予測と実験データとの間の最良の適合性を生むフィッティング処理(例えば、回帰、ライブラリマッチング等)によって解かれる。既知ではない標本パラメータ、P
標本は変えられ、モデル出力値は、1組の標本パラメータ値が、モデル出力値と実験的に測定された値との間の密な一致を結果としてもたらすことが決定されるまで計算される。
【0025】
図1は、本明細書に説明されるようなモデル構築および解析機能を実施するように構成された例となるモデル構築ならびに解析エンジン150を例示する図である。一例では、モデル構築および解析エンジン150は、コンピューティングシステム(例えば、
図2に例示されるコンピューティングシステム130)によって実施される。
【0026】
モデル構築および解析エンジン150は、標本の測定された構造の幾何学的モデル152を生成するように構成された幾何学的モデル構築モジュール151を含む。モデル構築および解析エンジン150はまた、それぞれが、幾何学的モデルから少なくとも1つの共有幾何学的パラメータを含む、x線応答モデル155および光学応答モデル156をそれぞれ生成するためにx線応答関数構築モジュール153ならびに光学応答
関数構築モジュール154を含む。モデル構築および解析エンジン150はまた、複合型解析で光学測定データ124の量を用いる光学応答モデル156をフィッティングすることと、x線測定データ126の量を用いるx線応答モデル155をフィッティングすることとによって、少なくとも1つの標本パラメータ値170を解くように構成されたフィッティング解析モジュール157を含む。
【0027】
図3は、本発明のモデル構築および解析エンジン150による実施に適した方法200を例示する。一態様では、方法200のデータ処理ブロックは、コンピューティングシステム130の1つ以上のプロセッサによって実行される予めプログラムされたアルゴリズム経由で実行され得ることが認められる。モデル構築および解析エンジン150の以下の説明は、複合型計測システム100との関連で提示されるが、複合型計測システム100の具体的な構造的態様は、限定を表すのではなく、例示としてだけ解釈されるべきであることが本明細書において認められる。
【0028】
ブロック201では、モデル構築の幾何学的モデル構築モジュール151および解析エンジン150は、標本の少なくとも1つの構造の幾何学的モデル152を生成する。いくつかの実施形態では、幾何学的モデル152はまた、標本の材料性質を含む。
【0029】
ブロック202では、x線応答関数構築モジュール153は、幾何学的モデル152に少なくとも一部基づいてx線応答モデル155を生成する。同様に、光学応答関数構築モジュール154は、幾何学的モデル152に少なくとも一部基づいて光学応答モデル156を生成する。光学応答モデル
156とx線応答モデル
155の両方は、幾何学的モデル152から少なくとも1つの共通幾何学的パラメータを含む。
【0030】
図1に描写されるように、幾何学的モデル152は、x線応答関数構築モジュール153および光学応答関数構築モジュール154への入力として受信される。x線応答関数構築モジュール153は、幾何学的モデル152に少なくとも一部基づいてx線応答関数モデル155を生成する。いくつかの例では、x線応答関数モデル155は、x線形状因子
【数1】
に基づき、ここで、Fは形状因子であり、qは散乱ベクトルであり、ρ(r)は球座標における標本の電子密度である。次いで、X線散乱強度は、
【数2】
によって与えられる。
【0031】
同様に、光学応答関数構築モジュール154は、幾何学的モデル152に少なくとも一部基づいて光学応答関数モデル156を生成する。いくつかの例では、光学応答関数モデル156は、厳密結合波解析(RCWA)に基づき、ここで、マクスウェルの方程式が、標本モデルから光散乱を予測するために解かれる。
【0032】
一般に、標本パラメータは、標本とのx線および光学ビーム相互作用を説明する適切なモデルが使用される限り、決定性パラメータ(例えば、膜厚、CD、SWA等)、統計的パラメータ(例えば、側壁粗さのrms高さ、粗さの相関長さ等)、または決定性および統計的パラメータの任意の組み合わせであり得る。
【0033】
ブロック203では、光学計測システムによる標本の測定と関連付けられた光学測定データが、フィッティング解析モジュール157によって受信される。光学測定データは、標本上の光学照明入射に応答して標本から検出された光学放射の量に基づく。
図1に描写されるように、フィッティング解析モジュール157は、
図2に例示される光学検出器123によって生成された光学測定データ124を受信する。
【0034】
ブロック204では、x線計測システムによる標本の測定と関連付けられたx線測定データが、フィッティング解析モジュール157によって受信される。X線測定データは、標本上のx線照明入射に応答して標本から検出されたx線放射の量に基づく。
図1に描写されるように、フィッティング解析モジュール157は、
図2に例示されたx線検出器116によって生成されたx線測定データ126を受信する。
【0035】
ブロック205では、少なくとも1つの標本パラメータ値170は、x線応答モデル155を用いるx線測定データ126のフィッティング解析および光学応答モデル156を用いる光学測定データ124のフィッティング解析に基づいて決定される。x線応答関数モデル155および光学応答関数モデル156は、フィッティング解析モジュール157への入力として受信される。フィッティング解析モジュール157は、標本の幾何学的ならびに材料性質を決定するためにモデル化されたx線および光学散乱を対応する測定されたデータと比較する。
【0036】
いくつかの例では、実験データへのモデル化されたデータのフィッティングは、カイ二乗値を最小化することによって実現される。例えば、光学計測の場合、カイ二乗値は、
【数3】
として定義され得、ここで、
【数4】
は、「チャネル」iにおいて実験的に測定された、測定された光学信号124であり、ここで、添え字iは、波長、角座標、偏光等のような1組のシステムパラメータを説明する。
【数5】
は、1組の構造(ターゲット)パラメータ
【数6】
について評価される、「チャネル」iについてモデル化された光学信号であり、ここで、これらのパラメータは、幾何学的なもの(膜厚、CD、側壁角度、オーバーレイ等)および材料(屈折率、吸収係数、分散モデルパラメータ)等を説明する。
【数7】
は、「チャネル」iと関連付けられた不確定要素である。
【数8】
は、光学計測におけるチャネルの総数である。Mは、計測ターゲットを特徴付けるパラメータの数である。光学分光測定データのモデルをベースとした解析のための例となる方法およびシステムは、KLA−Tencor Corp.に、2009年1月13日に発行された、米国特許第7,478,019号に説明され、それの全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0037】
同様に、x線測定の場合(例えば、CD−SAXSの場合)、カイ二乗値は、
【数9】
として定義され得、ここで、
【数10】
は、「チャネル」jにおいて測定されたx線信号126であり、ここで、添え字jは、エネルギー、角度座標等のような1組のシステムパラメータを説明する。
【数11】
は、1組の構造(ターゲット)パラメータ
【数12】
、について評価される、「チャネル」jについてモデル化されたx線信号S
jであり、ここで、これらのパラメータは、幾何学的なもの(膜厚、CD、側壁角度、オーバーレイ等)および材料(電子密度等)を説明する。
【数13】
は、j番目のチャネルと関連付けられた不確定要素である。
【数14】
は、x線計測におけるチャネルの総数である。Lは、計測ターゲットを特徴付けるパラメータの数である。
【0038】
式(3)および(4)は、異なるチャネルと関連付けられた不確定要素が相関性の無いことを仮定する。異なるチャネルと関連付けられた不確定要素が相関性のある例では、不確定要素間の共分散が計算され得る。これらの例では、光学測定についてのカイ二乗値は、
【数15】
として表わされ得、ここで、
【数16】
は、光学チャネル不確定要素の共分散行列であり、Tは転置行列を示す。x線測定についてのカイ二乗値は、同じ手法で計算され得る。
【0039】
光学モデル(すなわち、
【数17】
)およびx線モデル(すなわち、
【数18】
)のためのターゲットパラメータの組は、一般に同じではない。材料定数と関数の差は、異なるターゲットパラメータを生じさせる光学およびx線相互作用過程を説明するために必要とされる。しかしながら、少なくとも1つのパラメータは、x線応答関数モデル155と光学応答関数モデル156との間で共通である。共通パラメータは、同一であるか、あるいは、一義的な代数変換によって互いに関連する。いくつかの例では、膜厚、CD、オーバーレイ等のようなターゲットパラメータは、x線応答関数モデル155と光学応答関数モデル156の両方の間で共通である。
【0040】
1つの更なる態様では、光学測定データの量を用いる光学応答モデルのフィッティングおよびx線測定データの量を用いるx線応答モデルのフィッティングは、連続して、並行して、または連続および並行解析の組み合わせによって、行われ得る。いくつかの例では、モデル構築および解析エンジン150は、横送り解析、前送り解析、および並行解析の任意の組み合わせによって測定されたパラメータの精度を向上させる。横送り解析は、同じ標本の異なる領域上の複数のデータセットを取り、解析のために後続のデータセットの上の1つのデータセットから決定される共通パラメータを渡すことを言う。前送り解析は、異なる標本上のデータセットを取り、段階的なコピーの正確なパラメータの前送りアプローチを使用する後続の解析に対して共通パラメータを前方に渡すことを言う。並行解析は、複数のデータセットに対する非線形フィッティング方法論の並行または同時適用のことを言い、ここで、少なくとも1つの共通パラメータがフィッティングの間に結合される。
【0041】
いくつかの例では、モデル構築および解析エンジン150は、複数のツールおよび構造解析を行うことによって測定されたパラメータの精度を向上する。複数のツールおよび構造解析は、回帰、ルックアップテーブル(すなわち、「ライブラリ」マッチング)、または複数のデータセットの別のフィッティング手順に基づく、前送り、横送り、または並行解析のことを言う。複数のツールおよび構造解析のための例となる方法およびシステムは、KLA−Tencor Corp.に、2009年1月13日に発行された米国特許第7,478,019号に説明され、それの全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0042】
いくつかの例では、フィッティング解析モジュール157は、x線測定データ126を用いるx線応答モデル155のフィッティング解析および光学測定データ124を用いる光学応答モデル156のフィッティング解析を連続して行うことによって、少なくとも1つの標本パラメータ値を解く。いくつかの例では、
【数19】
がまず最適化され、任意の解かれた共通標本パラメータ値は、
【数20】
の後続の最適化における定数として処理される。同様に、いくつかの他の例では、
【数21】
がまず最適化され、任意の解かれた共通標本パラメータ値は、
【数22】
の後続の最適化における定数として処理される。
【0043】
いくつかの他の例では、フィッティング解析モジュール157は、x線測定データ126を用いるx線応答モデル155および光学測定データ124を用いる光学応答モデル156の並行フィッティング解析を行うことによって少なくとも1つの標本パラメータ値を解く。非限定的な例として、並行解析に適したカイ二乗関数は、
【数23】
として定義され得、ここで、
【数24】
および
【数25】
は、光学およびx線計測に割り当てられた重み付け係数である。最も単純な場合では、
【数26】
である。しかしながら、異なる重みの割り当ては、より関連のある計測を増強させることが多い。適切な重みの選択は、通常、参照計測に対する実験データの解析によって、および/または特別なDOEターゲット上の予めプログラムされた実験計画法(DOE)パラメータ変動を測定することによって行われる。
【0044】
光学およびx線計測は、カイ二乗値を計算するときに2つ以上のそれぞれの技術を含み得る。例えば、
【数27】
は、各技術に与えられた重み係数を用いる斜入射SAXSおよび透過SAXSの複合使用のために計算され得る。同じく、
【数28】
は、各技術に割り当てられた重み係数を用いる分光偏光解析法、ビームプロファイル反射率測定および分光反射率測定の複合使用のために計算され得る。
【0045】
別の更なる態様では、光学モデルの浮遊ターゲットパラメータ、
【数29】
の数、x線モデルの浮遊ターゲットパラメータ、
【数30】
の数は、パラメータのいくつかを結び付けることによって減らされる。いくつかの例では、共通幾何学的パラメータは、単一パラメータとして処理される。例として、u1およびv1の両方が具体的な膜の厚さを表す場合、u1およびv1の値は同じ値であることが強いられる。いくつかの他の例では、光学およびx線計測の較正ならびにモデルバイアスを考慮するためにスケーリング因子とオフセット値を導入することが必要であり得る。例として、u1およびv1の両方が具体的な膜の厚さを表す場合、u1の値は、v1の関数であること(例えば、u1=f1*v1+d1、ここで、f1およびd1は定数である)を強いられる。スケーリング因子(例えば、f1)およびオフセット値(例えば、d1)は、浮遊パラメータではなく、大域的最適化が行われる前に決定される。スケーリング因子およびオフセット値の較正は、透過電子顕微鏡法(TEM)、原子間力顕微鏡法(AFM)、または他の方法の助けを用いて行われ得る。更に、構造パラメータを結び付けるためのより複雑なやり方もまた、可能である。
【0046】
光学計測データおよびx線計測データの複合型フィッティングは、興味の幾何学的および/または材料パラメータに対する補完的感度を提供する任意の種類のx線ならびに光学技術に有利である。これは、特に、少なくとも1つの幾何学的パラメータが、x線モデルと光学モデルとの間で共有されるか結び付けられる場合である。
【0047】
本明細書において前に説明されたように、測定データを用いるx線および光学モデルのフィッティングは、カイ二乗値の最小二乗の最小化によって実現される。しかしながら、一般に、x線および光学データのフィッティングは、他の関数によって実現され得る。これは、例えば、外れ値が存在する場合に、有利であり得る。例となる関数は、「Robust Statistics」John Wiley and Sons(2004)においてP.J.Huberによって提示され、それの主題は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0048】
ブロック206では、ブロック205において決定された少なくとも1つの標本パラメータ値が記憶される。
図1に例示されるように、フィッティング解析モジュール157は、メモリ180内への記憶のために標本パラメータ値170をメモリ180に通信する。
【0049】
更なる態様では、モデル構築および解析エンジン150は、1つ以上の組のパラメータ値(例えば、
【数31】
および
【数32】
)を減らされた相関関係を有する1つ以上の組のパラメータ値(例えば、
【数33】
および
【数34】
)に変換するために主成分解析(PCA)を行う。PCAは、線形座標変換による1組の線形的に相関性の無いパラメータに1組の可能な相関性のあるパラメータを転換することを伴う。
【0050】
別の更なる態様では、検査下の標本は、x線および光学計測に対するパラメータ感度を増加させるフィールド増強要素を含む。フィールド増強要素は、興味のパラメータと関連付けられた測定感度を増強するために、ならびにパラメータ相関関係を壊すために利用される構造である。
【0051】
更に別の更なる態様では、モデル構築および解析エンジン150は、共通または複数のターゲットを使用するx線および光学解析を行い、少なくとも1つの共通パラメータは、解析の間に結合される。
【0052】
更に別の更なる態様では、少なくとも2つの異なる測定技術に対する標本の応答のモデルの構造は、モデルと対応する測定データとの間の適合性の質に基づいて変えられる。いくつかの例では、幾何学的モデルの構造は、応答モデルと対応する測定データとの間の適合性の質に基づいて変えられる。
【0053】
図4は、本発明のモデル構築および解析エンジン150による実施に適した方法300を例示する。一態様では、方法300のデータ処理ブロックは、コンピューティングシステム130の1つ以上のプロセッサによって実行される予めプログラムされたアルゴリズム経由で実行され得ることが認識される。モデル構築および解析エンジン150の以下の説明は、複合型計測システム100との関連で提示されるが、複合型計測システム100の具体的な構造的態様は、限定を表すものではなく、例示としてだけ解釈されるべきであることが本明細書において認識される。
【0054】
ブロック301では、フィッティング解析モジュール157は、方法200のブロック205のフィッティング解析と関連付けられた費用関数の残存値を決定する。一例では、フィッティング解析モジュール157は、反復の最適化が完了した後に最適化費用関数(または複数の関数)の大きさに基づいて費用関数の残存値を決定する。
【0055】
ブロック302では、フィッティング解析モジュール157は、残存値が、所定の閾値を超えるかどうかを決定する。このようにして、フィッティング解析モジュール157は、x線および光学応答モデルと対応する測定データとの間の適合性の質を評価する。
【0056】
ブロック303では、幾何学的モデルは、残存値が所定の閾値を超える場合に再編成される。例えば、χ
2の値が所定の閾値を超える場合、モデル構築および解析エンジン150は、適合性の質が低いことを決定し、根本的な測定モデルは、測定結果を向上させるために再編成される必要がある。このようにして、データ適合性の質は、構造を説明するために使用されるパラメトリックモデルの有効性を検査するために使用される。一例では、モデル構築および解析エンジン150は、幾何学的モデルパラメータと関連付けられたヤコビ行列を計算することによって幾何学的モデルを再編成し、次いで、ヤコビ行列の最大値を最小化するためにモデルパラメータを変換することによってモデルを再編成する。上述のアプローチは非限定例として提供される。モデルを再編成するための多くの他のアプローチが考えられ得る。
【0057】
例えば、いくつかの測定シナリオでは、ターゲット構造は、プロファイル、膜厚、および材料性質によって各周期においてパラメータ化された周期的格子である。適切な適合性は、光学データを単独で用いる光学モデルのフィッティングに基づいて実現され得る。しかしながら、光学およびx線測定データに対して光学ならびにx線モデルを同時にフィッティングすることは、許容できないほど劣悪な適合性を呈する(すなわち、最適化費用関数の残存値が高すぎる)。それに応答して、構造的モデルは、良好な適合性が決定されるまで変えられ得る。モデルを変えることは、ターゲット構造のパラメータ化を変更すること(例えばフッター(footer)、ラインエッジ粗さのような特徴を追加するか変更すること、誘電性質を改良すること等)を伴うことに留意する。このようにして、モデル構築および解析エンジン150によって提供される最適化結果は、それが十分に正確になるまで構造的モデルを向上するように使用され得る。
【0058】
別の例では、いくつかの測定シナリオにおいて、光学データを用いる光学モデルの適切な適合性は、モデルパラメータおよびマシンパラメータ(例えば、波長、傾き角度、ノイズ等)を調整することによって実現される。これは小さな処理窓内でうまく働き得るが、このようにして動作する計測システムは、多くの場合、実際の処理変動を追跡できないことが見られる。光学をベースとした計測に加えて、x線をベースとした計測能力(例えば、CD−SAXS、XRF等)を加えることは、多くの場合、モデルの欠陥を明らかにする。このシナリオでは、モデル構築および解析エンジン150は、モデル欠陥を識別し構造モデルのパラメータ化を変えるために使用される。例えば、単純な台形モデルは、分光偏光解析法(SE)データを適合させるのに完全に適し得る。しかしながら、追加の形状パラメータは、SEとCD−SAXSのデータの両方に対する適切な
適合を実現するために追加される必要がある。向上された構造的モデルは、次いで、より代表的な構造的モデルの使用に起因してSE測定の能力を向上する。いくつかの例では、光学およびx線測定データの両方を含む複合型フィッティング解析が、最適化された構造的モデルを開発するために使用され、次いで、測定技術の1つだけ(例えば、より高い処理能力の光学計測技術)が、生産測定のために使用される。
【0059】
ブロック304では、幾何学的モデルは、残存値が所定の閾値を超えない場合に記憶される。
【0060】
図4に例示されるように、ブロック301〜303は、満足な結果が実現される(すなわち、残存値が所定の閾値を超えない)まで反復して行われ得、その時点でモデルは、更なる使用のために記憶される。
【0061】
図2は、2つの異なる測定技法を用いる標本の特性を測定するための複合型計測ツール100を例示する。
図2に描写される実施形態では、コンピューティングシステム130は、本明細書において説明されるようなモデル構築および解析機能を実施するように構成されたモデル構築ならびに解析エンジンとして構成される。
図2に示されるように、システム100は、標本位置決めシステム140上に配置された標本101の検査領域102上で複合型の光学散乱計測測定およびSAXS測定を行うために使用され得る。いくつかの実施形態では、検査領域102は、50マイクロメートル以下のスポットサイズを有する。
【0062】
描写された実施形態では、計測ツール100は、液体金属をベースとしたx線照明システム110およびx線検出器116を含む。x線照明システム110は、高輝度の、液体金属x線照明源を含む。液体金属のジェット119は、液体金属容器111から作られ、液体金属収集器112内に集められる。液体金属循環システム(図示しない)は、収集器112によって集められた液体金属を液体金属容器111に戻す。液体金属のジェット119は、1つ以上の要素を含む。非限定例として、液体金属のジェット119は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、およびビスマスのいずれかを含む。このようにして、液体金属のジェット119は、それの構成要素と対応するx線のラインを作る。いくつかの実施形態では、x線照明システム110は、0.01ナノメートルと1ナノメートルの間の波長を生成するように構成される。高輝度の、液体金属x線照明を生成するための例となる方法およびシステムは、KLA−Tencor Corp.に、2011年4月19日に発行された米国特許第7,929,667号に説明され、その米国特許の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0063】
電子ビーム源113(例えば、電子銃)は、液体金属のジェット119に電子光学系114によって向けられた電子の流れ118を作る。適切な電子光学系114は、電子ビームを収束させ、そのビームを液体金属ジェットに向けるために電磁石、永久磁石、または電磁石と永久磁石の組み合わせを含む。液体金属のジェット119および電子の流れ118の同時発生は、標本101の検査領域102上にx線ビーム117入射を作る。x線光学系115は、入射x線ビーム117を形作り標本101に向ける。いくつかの例では、x線光学系115は、標本101上への入射であるx線ビームを単色化する。いくつかの例では、x線光学系115は、標本101の検査領域102の上にx線ビーム117を一直線にするか集束させる。いくつかの実施形態では、x線光学系115は、1つ以上のx線コリメートミラー、x線開口、x線モノクロメータ、およびx線ビームストップ、多層光学系、屈折光学系、ゾーンプレートのような回折光学系、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0064】
x線検出器116は、標本101から散乱されたx線放射125を集め、入射x線放射に敏感である標本101の性質を示す出力信号126を生成する。標本位置決めシステム140が、角度分解された散乱したx線を作るために標本101を位置決めし方向付ける間に、散乱したx線125は、x線検出器116によって集められる。X線検出器116は、1つ以上のx線光子エネルギーを分解し、標本の性質を示す各x線エネルギー成分のための信号を作り出すことができる。いくつかの実施形態では、x線検出器116は、CCDアレイ、マイクロチャネルプレート、フォトダイオードアレイ、マイクロストリップ比例係数管、ガス充填比例係数管、およびシンチレータのいずれかを含む。
【0065】
複合型計測ツール100はまた、光学照明システム120および光学検出器123を含む。光学照明システム120は、入射光学照明ビーム127を形作り光学照明源121から標本101の検査領域102に向けるように構成された光学照明源121および光学照明光学系122を含む。いくつかの例では、入射光学照明ビーム127および入射x線照明ビーム117は、標本101の検査領域102で空間的に重なり合う。
【0066】
非限定例として、光学照明源121は、1つ以上のアークランプ、レーザ、発光ダイオード、レーザ駆動プラズマ源、およびレーザ駆動スーパーコンティニウム源、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一般に、任意の適切な光学照明源が考えられ得る。いくつかの実施形態では、光学照明源121は、120ナノメートルと2000ナノメートルの間の波長成分を有する照明光を生成するように構成される。
【0067】
照明光学系122は、入射光学照明ビーム127を標本101の検査領域102に一直線にするか集束させるように構成される。いくつかの例では、照明光学系122は、入射光学照明ビーム127を単色化するように構成される。いくつかの実施形態では、照明光学系122は、1つ以上の光学ミラー、集束または非集束光学系、光学波長板、光学開口、光学モノクロメータ、および光学ビームストップ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0068】
光学検出器123は、標本101から散乱された光学放射128を集め、入射光学放射に敏感である標本101の性質を示す出力信号124を生成する。標本位置決めシステム140が、角度分解された散乱した光学放射を作るために標本101を位置決めし方向付ける間に、散乱した光学放射128は、光学検出器123によって集められる。光学検出器123は、1つ以上の光学的な光子エネルギーを分解し、標本の性質を示す各光学エネルギー成分のための信号を作ることができる。いくつかの実施形態では、光学検出器123は、CCDアレイ、フォトダイオードアレイ、CMOS検出器および光電子増倍管のいずれかである。
【0069】
複合型計測ツール100はまた、それぞれ、光学検出器123およびx線検出器116によって生成された信号124および126を取得するために利用されるコンピューティングシステム130を含み、取得した信号に少なくとも一部基づいて標本の性質を決定する。
図2に例示されるように、コンピューティングシステム130は、光学検出器123およびx線検出器116に通信可能に結合される。一態様では、コンピューティングシステム130は、x線ビーム117と光学照明ビーム127の両方によって照射された検査領域102上の標本101の同時発生の臨界寸法測定と関連付けられた測定データ124および126を受信する。
【0070】
一例では、光学検出器123は、光学分光器であり、測定データ124は、光学分光器によって実施される1つ以上のサンプリング処理に基づく標本の測定された分光応答の指示を含む。同様に、一例では、x線検出器116はx線分光器であり、測定データ126は、x線分光器によって実施される1つ以上のサンプリング処理に基づく標本の測定された分光応答の指示を含む。
【0071】
更なる実施形態では、コンピューティングシステム130は、実時間にモデルパラメータにアクセスするように構成され、実時間臨界寸法(RTCD:Real Time Critical Dimensioning)を採用し、あるいは、それは、標本101と関連付けられた少なくとも1つの標本パラメータ値の値を決定するために予め計算されたモデルのライブラリにアクセスし得る。一般に、CD−エンジンのいくつかの形態は、標本の割り当てられたCDパラメータと、測定された標本と関連付けられたCDパラメータとの差を評価するために使用され得る。標本パラメータ値を計算するための例となる方法およびシステムは、KLA−Tencor Corp.に、2010年11月2日に発行された米国特許第7,826,071号に説明され、その米国特許の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0072】
1つの更なる態様では、複合型計測ツール100は、本明細書に説明されるようなビーム制御機能を実施するように構成されたコンピューティングシステム(例えば、コンピューティングシステム130)を含む。
図2に描写される実施形態では、コンピューティングシステム130は、それらが、任意の時点に標本101の所望の検査領域102で空間的に重なり合うように、入射x線ビーム117および入射光学照明ビーム127の位置決めやスポットサイズを制御するように動作されるビームコントローラとして構成される。
【0073】
図2に例示されるように、コンピューティングシステム130は、x線検出器116および光学検出器123に通信可能に結合される。コンピューティングシステム130は、光学検出器123からの測定データ124およびx線検出器116からの測定データ126を受信するように構成される。一例では、測定データ124は、標本の測定された光学応答の指示を含む。検出器123の表面上の測定された光学応答の分布に基づいて、標本101上の光学照明ビーム127の入射の位置や領域は、ビームコントローラ130によって決定される。一例では、パターン認識技法は、測定データ124に基づいて標本101上の光学照明ビーム127の入射の位置および領域を決定するためにコンピューティングシステム130によって適用される。同様に、測定データ126は、標本の測定されたx線応答の指示を含む。検出器116の表面上の測定されたx線応答の分布に基づいて、標本101上の入射x線ビーム117の位置および領域は、ビームコントローラ130によって決定される。一例では、パターン認識技法は、測定データ
126に基づいて標本101上のx線ビーム117の入射の位置および領域を決定するためにコンピューティングシステム130によって適用される。それに応答して、コンピューティングシステム130は、入射光学照明ビーム127が、標本101の所望の検査領域102で入射x線ビーム117と空間的に重なり合うように、入射光学照明ビーム127の方向を変えたり形状を新たにしたりするために照明光学系122に通信されるコマンド信号137を生成する。同様に、ビームコントローラ130は、入射x線ビーム117が、標本101の所望の検査領域102で入射光学照明ビーム127と空間的に重なり合うように、入射x線ビーム117の方向を変えたり形状を新たにしたりするために電子光学系114およびx線光学系115のいずれかに通信されるコマンド信号136を生成する。
【0074】
別の態様では、具体的な検査領域の同時発生のSAXSおよび光学散乱計測測定は、多数の異なる面外の方向付けで行われる。これは、様々な大きな角度の、面外の方向付けを含むように解析のために利用可能なデータセットの数や多様性を広げることによって、測定されたパラメータの精密さと精度を増加させ、パラメータ間の相関関係を減らす。より深く、より多様なデータセットを用いて標本パラメータを測定することもまた、パラメータ間の相関関係を減らし、測定精度を向上させる。
【0075】
図2に例示されるように、複合型計測ツール100は、光学散乱計およびx線小角散乱計に関して広範囲の面外の角度の方向付けにわたって標本101を整列することと標本101を方向付けることとの両方を行うように構成された標本位置決めシステム140を含む。換言すれば、標本位置決めシステム140は、標本101の表面と同一面内で整列された回転の1つ以上の軸周りに広い角度範囲にわたって標本101を回転するように構成される。いくつかの実施形態では、標本位置決めシステム140は、標本101の表面と同一面内で整列された回転の1つ以上の軸周りに少なくとも90度の範囲内で標本101を回転するように構成される。いくつかの実施形態では、標本位置決めシステムは、標本101の表面と同一面内で整列された回転の1つ以上の軸の周りに少なくとも60度の範囲内で標本101を回転するように構成される。いくつかの他の実施形態では、標本位置決めシステムは、標本101の表面と同一面内で整列された回転の1つ以上の軸周りに少なくとも1度の範囲内で標本101を回転するように構成される。このようにして、標本101の角度分解された測定は、標本101の表面上の任意の数の位置にわたって計測システム100によって集められる。一例では、コンピューティングシステム130は、標本101の所望の位置を示す標本位置決めシステム140のモーションコントローラ145にコマンド信号を通信する。それに応答して、モーションコントローラ145は、標本101の所望の位置決めを実現するために標本位置決めシステム140の様々なアクチュエータにコマンド信号を生成する。
【0076】
非限定例として、
図2に例示されるように、標本位置決めシステム140は、標本位置決めシステム140に標本101を固定して取り付けるためのエッジグリップチャック141を含む。回転アクチュエータ142は、周辺フレーム143に対してエッジグリップチャック141および取り付けられた標本101を回転するように構成される。描写された実施形態では、回転アクチュエータ142は、
図2に例示される座標システム146のx軸周りに標本101を回転するように構成される。
図2に描写されるように、z軸周りの標本101の回転は、標本101の面内回転である。x軸およびy軸(図示しない)周りの回転は、計測システム100の計測要素に対して標本の表面を効果的に傾ける標本101の面外回転である。それは例示されないが、第2の回転アクチュエータは、y軸周りに標本101を回転するように構成される。線形アクチュエータ144は、周辺フレーム143をx方向に移動するように構成される。別の線形アクチュエータ(図示しない)は、周辺フレーム143をy方向に移動するように構成される。このようにして、標本101の表面上のあらゆる位置は、面外の角度位置の範囲にわたる測定のために利用可能である。例えば、一実施形態では、標本101の位置は、標本101の垂直方向付けに対して−45度から+45度までの範囲内のいくつかの角度増分にわたって測定される。
【0077】
典型的な光学散乱計測システムは、広範囲の面外の角度位置にわたって(例えば、+/−1度より大きく)標本を方向付けることができる標本位置決めシステムを採用していない。結果として、これらのシステムによって集められた測定情報は、一定のパラメータに対して感度を欠いているか、あるいはパラメータ間の相関関係を減らすことができないことが多い。しかしながら、標本位置決めシステム140の大きな、面外の、角度位置決め能力は、測定感度を引き上げ、パラメータ間の相関関係を減らす。例えば、垂直方向では、SAXSは、特徴の臨界寸法を解くことができるが、特徴の側壁角度および高さに大いに鈍感である。しかしながら、広範囲の面外の角度位置にわたって測定データを集めることによって、特徴の側壁角度および高さは解かれ得る。
【0078】
本開示を通して説明される様々なステップは、単一コンピュータシステム130、あるいは、その代わりに、複数のコンピュータシステム130によって実行され得ることが認識されるべきである。更に、標本位置決めシステム140などのシステム100の異なるサブシステムは、本明細書に説明されるステップの少なくとも一部を実行するのに適したコンピュータシステムを含み得る。従って、上述の説明は、本発明の限定としてではなく、単なる例示として解釈されるべきである。更に、1つ以上のコンピューティングシステム130は、本明細書に説明される方法の実施形態のいずれかの任意の他の(複数の)ステップを行うように構成され得る。
【0079】
加えて、コンピュータシステム130は、当分野に既知の任意の手法で光学検出器123、x線検出器116、光学照明光学系122、およびx線照明光学系115に通信可能に結合され得る。例えば、1つ以上のコンピューティングシステム130は、それぞれ、光学検出器123、x線検出器116、光学照明光学系122、およびx線照明光学系115と関連付けられたコンピューティングシステムに結合され得る。別の例では、光学検出器123、x線検出器116、光学照明光学系122、およびx線照明光学系115のいずれかは、コンピュータシステム130に結合された単一コンピュータシステムによって直接的に制御されてもよい。
【0080】
複合型計測システム100のコンピュータシステム130は、有線および/または無線部分を含み得る伝送媒体によってシステムのサブシステム(例えば、光学検出器123、x線検出器116、光学照明光学系122、およびx線照明光学系115など)からデータまたは情報を受信するならびに/あるいは取得するように構成され得る。このようにして、伝送媒体は、コンピュータシステム130とシステム100の他のサブシステムとの間のデータリンクとして機能し得る。
【0081】
複合型計測システム100のコンピュータシステム130は、有線および/または無線部分を含み得る伝送媒体によって他のシステムからデータか情報(例えば、測定結果、モデル化入力、モデル化結果等)を受信するならびに/あるいは取得するように構成され得る。このようにして、伝送媒体は、コンピュータシステム130と他のシステム(例えば、メモリ搭載計測システム100、外部メモリ、または外部システム)との間のデータリンクとして機能し得る。例えば、コンピューティングシステム130は、データリンク経由で記憶媒体(すなわち、メモリ132またはメモリ180)から測定データ(例えば、信号124および126)を受信するように構成され得る。例えば、x線検出器116および光学検出器123のいずれかの分光器を使用して得られた分光結果は、永続的または半永続的メモリデバイス(例えば、メモリ132または180)内に記憶され得る。これに関して、分光結果は、搭載メモリからまたは外部メモリシステムからインポートされ得る。更に、コンピュータシステム
130は、伝送媒体経由でデータを他のシステムに送信し得る。例えば、コンピュータシステム130によって決定された標本パラメータ値170は、永続的または半永続的メモリデバイス(例えば、メモリ180)内に記憶され得る。これに関して、測定結果は、別のシステムにエキスポートされ得る。
【0082】
コンピューティングシステム130は、限定されるものではないが、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、画像コンピュータ、並行プロセッサ、または当分野に既知の任意の他のデバイスを含み得る。一般に、用語「コンピューティングシステム」は、1つ以上のプロセッサを有する任意のデバイスを包含するように広く定義され得、そのプロセッサは、メモリ媒体からの命令を実行する。
【0083】
本明細書において説明されるような方法を実施するプログラム命令134は、有線、ケーブル、または無線伝送リンクなどの伝送媒体上で伝送され得る。例えば、
図2に例示されるように、メモリ132内に記憶されたプログラム命令は、バス133を通じてプロセッサ131に伝送される。プログラム命令134は、コンピュータで読み取り可能な媒体(例えば、メモリ132)内に記憶される。例となるコンピュータで読み取り可能な媒体は、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気もしくは光ディスク、または磁気テープを含む。
【0084】
図2を参照にして説明されるように、複合型計測システムは、SAXSシステムおよび光学散乱計システムを含む。しかしながら、一般に、異なる光学計測技法と異なるx線をベースとした計測技法の組み合わせに基づく複合型解析が、この特許書類の範囲内で考えられ得る。その上、本明細書において説明されるような複合型解析に関与する任意の光学およびx線計測技法に基づく測定は、限定無しで、1つ以上の個別の計測ツール、1つ以上の複合型計測ツール、またはそれらの任意の組み合わせ上で行われ得る。
【0085】
非限定例として、以下の、(ミュラー行列偏光解析法を含む)分光偏光解析法、ミュラー行列分光偏光解析法、分光学的反射率測定、分光学的散乱計測、散乱計測オーバーレイ、ビームプロファイル反射率測定、(角度および偏光が分解される)、ビームプロファイル偏光解析法、単一または複数の個別の波長偏光解析法、複数入射角の偏光解析法、ならびに分光学的偏光解析法を含む光学計測技法のいずれかは、この特許書類の範囲内で、以下の、伝送x線小角散乱(TSAXS)、斜入射x線小角散乱(GISAXS)、x線広角散乱(WAXS)、x線反射率(XRR)、x線回折(XRD)、斜入射x線回折(GIXRD)、高分解能x線回折(HRXRD)、x線光電子分光法(XPS)、蛍光x線(XRF)、斜入射蛍光x線(GIXRF)、x線断層撮影法、およびx線偏光解析法を含むx線計測技法のいずれかを用いて本明細書において説明されたような解析のために組み合わされ得る。
【0086】
本明細書に説明されるように組み合わせて適用されるx線および光学計測技法は、半導体構造の特性を決定するために使用され得る。例となる構造は、限定されるものではないが、FinFET、ナノワイヤまたはグラフェンなどの低次元構造、サブ10nm構造、薄膜、リソグラフィ構造、シリコン貫通電極(TSV)、DRAM、DRAM 4F2、FLASHおよび高アスペクト比メモリ構造などのメモリ構造を含む。例となる構造的特性は、限定されるものではないが、ラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、細孔サイズ、細孔密度、側壁角度、プロファイル、膜厚、臨界寸法、ピッチなどの幾何学的パラメータ、ならびに電子密度、結晶粒構造、形態、方向付け、応力、および歪みなどの材料パラメータを含む。
【0087】
非限定例として、x線小角散乱(SAXS)は、10ナノメートルよりも小さい構造の幾何学的パラメータ(例えば、ピッチ、臨界寸法(CD)、側壁角度(SWA)、ライン幅粗さ(LWR)、およびラインエッジ粗さ(LER))を測定することができる。加えて、x線放射の高エネルギー特質は、光学的に不透明な薄膜、埋め込み構造、高アスペクト比構造、および多数の薄膜層を含むデバイスを貫通する。非限定例として、光学散乱計測技法は、多くの異なる構造のピッチ、CD、薄膜の厚さ、組成、および分散を測定することができる。
【0088】
図5に例示された別の非限定例では、高k金属ゲートトランジスタ160の興味のパラメータは、x線および光学測定の複合型解析に基づいて測定される。描写された例では、シリコン基板161のソース162およびドレイン163のSiGe濃度は、XRFを使用して測定され、一方、金属ゲート電極165の臨界寸法およびゲート誘電体164の厚さは、分光偏光解析法などの光学技術を用いて測定され得る。
【0089】
更に別の非限定例では、XRFは、HfO
2などの膜、非常に厚い膜、および電子密度が隣接する膜に非常に類似した複数の膜の厚さを測定するために使用される。これらの厚さは、光学測定におけるパラメータ相関関係を壊すために前に送られる。
【0090】
図5に例示される更に別の非限定例では、XRFは、FinFETなどの高度な構造におけるGeドーズを測定するために使用される。光学測定は、構造の容量で行われる。Ge濃度は、ドーズおよび容量測定に基づいて計算される。
【0091】
更に別の非限定例では、メモリ構造は、TiN/Al
2O
3/TiN層配列を含む。XRRは、TiN層の厚さを測定するために利用されるが、Al
2O
3層に比較的鈍感である。分光偏光解析法測定は、頂部および底部TiN
層を後で区別する困難性がある。複合型のXRRおよび分光偏光解析法測定は、3つの層の全ての厚さを測定することができる。
【0092】
更に別の非限定例では、スピンバルブなどの磁気多層は、公称SiO
2/NiO/Co/Cu/Co層状構造を有する。XRRは、NiO層の厚さを測定するために利用されるが、CoとCuの類似した電子密度に起因してCo/Cu/Co層を見分けることができない。GIXRDは、Co、Ni、およびCuをはっきりと分解し、また、元素ピークの相対積分強度は、CuおよびCo層の厚さを決定する。Co/Cu/Co層の全体の厚さはXRRから分かるので、Cuの厚さは、0.1nmの精密さよりも優れて決定され得る。複合型のXRR、GIXRF、および分光偏光解析法などの光学技法は、構造の全ての厚さのみならず臨界寸法を測定するように使用され得る。
【0093】
更に別の非限定例では、ラインエッジ粗さ(LER)およびライン幅粗さ(LWR)は、光学技法を用いて容易に測定されることができないが、x線小角散乱を使用して測定され得る。フォトレジスト格子およびブロック共重合体などの構造の側壁角度は、分光偏光解析法を用いて測定され得る。
【0094】
更に別の非限定例では、XRDは、III−V材料の組成および応力を測定するために利用される。これらのパラメータは、厚さや臨界寸法を決定するために、分光偏光解析法などの光学測定の解析において前送りにされる。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書において説明されたような複合型x線および光学解析は、製作処理ツールの一部として実施される。製作処理ツールの例は、限定されるものではないが、リソグラフィ露光ツール、膜蒸着ツール、埋め込みツール、およびエッチツールを含む。このようにして、複合型x線および光学解析の結果は、製作処理を制御するために使用される。一例では、1つ以上のターゲットから集められたx線および光学測定データは、製作処理ツールに送信される。X線および光学測定データは、本明細書において説明されたように、また、製作処理ツールの動作を調整するために使用される結果として、解析される。
【0096】
本明細書において説明される際、用語「臨界寸法」は、構造の任意の臨界寸法(例えば、底部臨界寸法、中間臨界寸法、頂部臨界寸法、側壁角度、格子高さ等)、任意の2つ以上の構造間の臨界寸法(例えば、2つの構造間の距離)、および2つ以上の構造間の変位(例えば、オーバーレイしている格子構造間のオーバーレイ変位等)を含む。構造は、3次元構造、パターン化構造、オーバーレイ構造等を含み得る。
【0097】
本明細書において説明される際、用語「臨界寸法の適用」または「臨界寸法測定の適用」は、任意の臨界寸法測定を含む。
【0098】
本明細書において説明される際、用語「計測システム」は、臨界寸法の適用およびオーバーレイ計測の適用を含む、任意の態様における標本を特徴付けるために少なくとも一部利用される任意のシステムを含む。しかしながら、当分野のそのような用語は、本明細書において説明されるような用語「計測システム」の範囲を限定しない。加えて、計測システム100は、パターン化されたウェーハおよび/またはパターン化されていないウェーハの測定のために構成され得る。計測システムは、LED検査ツール、ソーラー検査ツール、エッジ検査ツール、後方検査ツール、マクロ検査ツール、または(1つ以上のプラットフォームからのデータを同時に含む)マルチモード検査ツール、および臨界寸法データに基づくシステムパラメータの較正から恩恵を受ける任意の他の計測もしくは検査ツールとして構成され得る。
【0099】
様々な実施形態は、標本を処理するために使用され得る半導体処理システム(例えば、検査システムまたはリソグラフィシステム)のために本明細書において説明される。用語「標本」は、当分野に既知の手段によって処理され(例えば、欠陥のために印刷されまたは検査され)得るウェーハ、レチクル、または任意の他のサンプルのことを言うために本明細書において使用される。
【0100】
本明細書において使用される際、用語「ウェーハ」は、一般に、半導体または非半導体材料で形成された基板のことを言う。例は、限定されるものではないが、単結晶シリコン、ヒ化ガリウム、およびリン化インジウムを含む。そのような基板は、半導体製作設備において普通に見つけられおよび/または処理され得る。いくつかの場合において、ウェーハは、基板(すなわち、ベアウェーハ)だけを含み得る。代わりに、ウェーハは、基板の上に形成された異なる材料の1つ以上の層を含み得る。ウェーハ上に形成される1つ以上の層は、「パターン化される」か「パターン化されない」可能性がある。例えば、ウェーハは、繰り返し可能なパターン特徴を有する複数のダイを含み得る。
【0101】
「レチクル」は、レチクル製作処理の任意の段階にあるレチクル、あるいは半導体製作設備における使用のために発売され得るか発売され得ない完成したレチクルであり得る。レチクル、または「マスク」は、実質的に透明な基板の上に形成されるとともにパターンで構成される実質的に不透明な領域を有する当該実質的に透明な基板として一般に定義される。基板は、例えば、非晶質SiO
2などのガラス材料を含み得る。レチクルは、レチクル上のパターンがレジストに転写され得るように、リソグラフィ処理の露光ステップの間にレジストで覆われたウェーハの上方に配置され得る。
【0102】
ウェーハ上に形成された1つ以上の層は、パターン化されてもよいし、パターン化されなくてもよい。例えば、ウェーハは、繰り返し可能なパターン特徴をそれぞれ有する複数のダイを含み得る。材料のそのような層の形成や処理は、完成したデバイスを最終的に結果としてもたらし得る。多くの異なる種類のデバイスは、ウェーハ上に形成され得、本明細書において使用される際、用語ウェーハは、当分野に既知の任意の種類のデバイスがウェーハの上に製作されている当該ウェーハを包含することが意図される。
【0103】
1つ以上の例となる実施形態では、上記した機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実施され得る。ソフトウェアで実施される場合、機能は、コンピュータで読み取り可能な媒体上の1つ以上の命令またはコードとしてその上に記憶され得るか伝送され得る。コンピュータで読み取り可能な媒体は、1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの移動を容易にする任意の媒体を含むコンピュータ記憶媒体および通信媒体の両方を含む。記憶媒体は、汎用または特殊用途のコンピュータによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であり得る。例として、限定されない、そのようなコンピュータで読み取り可能な媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROMもしくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶デバイス、あるいは、命令またはデータ構造の形態で所望のプログラムコード手段を運ぶか記憶するように使用され得るとともに、汎用もしくは特殊用途のコンピュータ、または汎用もしくは特殊用途のプロセッサによってアクセスされ得る任意の他の媒体を備え得る。また、任意の接続は、コンピュータで読み取り可能な媒体と厳密には呼ばれる。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL)、または赤外線、電波、およびマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、または他の遠隔源から伝送される場合には、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、または赤外線、電波、およびマイクロ波などの無線技術は、媒体の定義に含まれる。ディスク(disk)およびディスク(disc)は、本明細書において使用される際、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスクおよびブルーレイディスクを含み、ここで、ディスク(disk)は、通常、磁気的にデータを再生し、一方、ディスク(disc)は、レーザで光学的にデータを再生する。上記の組み合わせはまた、コンピュータで読み取り可能な媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0104】
一定の特定の実施形態が指導目的のために上記で説明されたが、この特許書類の教示は、一般的適用性を有し、上記した特定の実施形態に限定されない。従って、説明された実施形態の様々な特徴の様々な修正、適合、および組み合わせは、特許請求の範囲に規定されるような発明の範囲から逸脱すること無く実施され得る。