(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体であって前記二つのキャリア付金属箔の少なくとも一つにおいて220℃で3時間、6時間または9時間のうちの少なくとも一つの加熱後における、前記金属箔と前記金属キャリアとの間の剥離強度が、5gf/cm以上200gf/cm以下である。
金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体であって前記二つのキャリア付金属箔の少なくとも一つにおいて前記金属キャリアと前記金属箔との間の剥離強度が5gf/cm以上200gf/cm以下である請求項1に記載の積層体。
金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体であって、前記金属キャリアと前記金属箔とが、離型層を用いて貼り合わせてなり、
前記離型層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、又はこれらの合金、またはこれらの水和物、またはこれらの酸化物、あるいは有機物の何れか一種以上を含む層であってかつ複数の層で構成されており且つCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu若しくはAlの金属、又はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu若しくはAlの合金を含むか、または、
前記離型層は前記金属キャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Alの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、又は、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Alの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層と、その上に積層されたCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Alの元素群から選択された一種以上の元素の水和物若しくは酸化物または有機物からなる層とから構成されているか、または、
前記離型層は、前記金属キャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層、その次にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層とから構成されている積層体。
220℃で3時間、6時間または9時間のうちの少なくとも一つの加熱後における、金属箔と金属キャリアとの間の剥離強度が、0.5gf/cm以上200gf/cm以下である請求項3〜9のいずれか一項に記載の積層体。
請求項1〜14のいずれか一項に記載の積層体において、前記金属箔の表面において平面視したときに、前記金属キャリアと前記金属箔との積層部分の外周の少なくとも一部が樹脂で覆われてなる積層体。
請求項15に記載の積層体において、前記金属箔の表面において平面視したときに、前記金属キャリアと前記金属箔との積層部分の外周の全体にわたって樹脂で覆われてなる積層体。
金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体において、前記それぞれの金属箔の表面の全面にそれぞれ板状樹脂を積層してなる多層積層体であって、前記金属箔の表面を覆う部分の樹脂の厚みが5μm以上であり、平面視した場合の前記金属箔の面積をSaとし、前記二つの板状樹脂の内、平面視した場合の面積が同一であるかまたは大きい前記板状樹脂の面積をSbとした場合、Sa/Sbが1.0未満である多層積層体。
請求項23に記載の多層積層体において、平面視した場合の前記二つの板状樹脂が互いに接着している面積をSpとし、平面視した場合の前記二つの板状樹脂の内、面積が同一であるかまたは大きい方の板状樹脂の面積をSqとした場合、SpとSqとの比Sp/Sqが0.001以上である多層積層体。
金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体において、前記それぞれの金属箔の表面の全面にそれぞれ板状樹脂を積層してなる多層積層体であって、前記金属箔の表面を覆う部分の樹脂の厚みが5μm以上であり、平面視した場合の前記二つの板状樹脂が互いに接着している面積をSpとし、平面視した場合の前記二つの板状樹脂の内、面積が同一であるかまたは大きい方の板状樹脂の面積をSqとした場合、SpとSqとの比Sp/Sqが0.001以上である多層積層体。
請求項22〜27のいずれか一項に記載の多層積層体を、前記金属箔の表面において平面視したときに、前記金属キャリアと前記金属箔との積層面にて切断されている多層積層体。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体あるいは請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂又は金属層を1回以上積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体あるいは請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体、請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体、樹脂基板付金属層または金属層を1回以上積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項34または35に記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記積層体を、金属箔の表面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層面の少なくとも一つにて切断する工程を含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項34〜36のいずれか一項に記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項36または37に記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記切断した部分の積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含む多層金属張積層板の製造方法。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体あるいは請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体と、当該積層体または多層積層体の少なくとも一つの金属箔の面側に設けられた、樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体、請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体、樹脂基板付金属層または金属層から選択される層を1層以上有する層とを含む多層金属張積層板。
請求項40に記載の多層金属張積層板であって、前記多層金属張積層板の金属箔の面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層面の少なくとも一つが切断されている多層金属張積層板。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体あるいは請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、ビルドアップ配線層を一層以上形成する工程を含むビルドアップ基板の製造方法。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体あるいは請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体、請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体、樹脂基板付金属層、配線、回路または金属層を1回以上積層することを含むビルドアップ基板の製造方法。
請求項42または43に記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記積層体を、金属箔の表面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層面の少なくとも一つにて切断する工程を含むビルドアップ基板の製造方法。
請求項42〜44のいずれか一項に記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
請求項44に記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記切断した部分の積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
請求項45または46に記載のビルドアップ配線板の製造方法において、剥離して分離した金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体あるいは請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体と、当該多層積層体の少なくとも一つの金属箔の面側に設けられた、樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体、請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体、樹脂基板付金属層、配線、回路または金属層から選択される層を1層以上有する層とを含むビルドアップ基板。
請求項50に記載のビルドアップ基板であって、前記ビルドアップ基板の金属箔の面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層面の少なくとも一つが切断されているビルドアップ基板。
前記形成された配線の上に、さらに請求項1〜21のいずれか一項に記載の積層体あるいは請求項22〜33のいずれか一項に記載の多層積層体を有する請求項54に記載のビルドアップ基板。
請求項52〜55のいずれか一項に記載のビルドアップ基板であって、前記ビルドアップ基板の金属箔の面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層面の少なくとも一つが切断されているビルドアップ基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のキャリア付金属箔は、プリント配線板の製造工程を簡素化及び歩留まりアップにより製造コスト削減に大きく貢献する画期的な発明であるが、プリント配線板の製造に関して、その用途については未だ検討の余地が残されている。このようなキャリア付金属箔は、樹脂製の板状キャリアとしてプリプレグのような厚みが200μm程度の樹脂基板をコアとしている。一方で、配線回路の高密度化、多層化に伴い、ビルドアップする総数が20層以上となる場合があり、このような場合においては、コアが通常のプリプレグである場合に、ビルドアップ基板全体で厚みが2mmを超えることもあり、これまでの製造設備で処理できなくなるということもあり、キャリア付金属箔においてより薄いコア、すなわちキャリアが求められていた。
【0006】
また、実用面、例えば強度の観点や、打痕、変形等による品質の低下などの観点から、単にキャリアを薄くしただけでは、ハンドリングの面で問題が残る可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、従来のキャリア付金属箔のような良好なハンドリング性を実現し、かつ、配線回路の高密度化、多層化に対応することを容易にする積層体について、鋭意検討した結果、キャリアを金属板または金属箔とし、かつ、二つのキャリア付金属箔を所定の様式にて積層させることにより、当該課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体。
(2)前記金属キャリア同士を、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて得られる(1)に記載の積層体。
(3)前記金属キャリア同士が接合されている(1)または(2)に記載の積層体。
(4)前記金属キャリア同士を、無機基板または金属板を介して、積層させて得られる(1)に記載の積層体。
(5)前記金属キャリアと金属箔とが、離型層を用いて貼り合わせてなる(1)〜(4)のいずれかに記載の積層体。
(6)前記金属キャリアと金属箔との間の剥離強度が0.5gf/cm以上200gf/cm以下である(5)に記載の積層体。
(7)前記金属キャリアにおける金属箔と接する側の表面の十点平均粗さ(Rz jis)が、3.5μm以下である(5)または(6)に記載の積層体。
(8)220℃で3時間、6時間または9時間のうちの少なくとも一つの加熱後における、金属層と金属板との剥離強度が、0.5gf/cm以上200gf/cm以下である(5)〜(7)のいずれかに記載の積層体。
(9)厚みが8〜500μmである(1)〜(8)のいずれかに記載の積層体。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の積層体であって、孔が設けられた積層体。
(11)(10)に記載の積層体であって、前記孔は直径0.01mm〜10mmであり、1〜10箇所設けられている積層体。
(12)少なくとも一方の金属箔が銅箔または銅合金箔である(1)〜(11)のいずれかに記載の積層体。
(13)(1)〜(12)のいずれかに記載の積層体において、前記金属箔の表面において平面視したときに、前記金属キャリアと前記金属箔との積層部分の外周の少なくとも一部が樹脂で覆われてなる積層体。
(14)(13)に記載の積層体において、前記金属箔の表面において平面視したときに、前記金属キャリアと前記金属箔との積層部分の外周の全体にわたって樹脂で覆われてなる積層体。
(15)樹脂が熱硬化性樹脂を含む(13)または(14)に記載の積層体。
(16)樹脂が熱可塑性樹脂を含む(13)〜(15)のいずれかに記載の積層体。
(17)(13)〜(16)のいずれかに記載の積層体において、前記樹脂の前記金属層の外側において、孔が設けられた積層体。
(18)(17)に記載の積層体において、前記孔は直径0.01mm〜10mmであり、1〜10箇所設けられている積層体。
(19)(1)〜(18)のいずれかに記載の積層体を、前記金属箔の表面において平面視したときに、前記金属キャリアと前記金属箔との積層面にて切断して得られる積層体。
(20)(1)〜(19)のいずれかに記載の積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂又は金属層を1回以上積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
(21)(1)〜(19)のいずれかに記載の積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、(1)〜(19)のいずれかに記載の積層体、樹脂基板付金属層または金属層を1回以上積層することを含む多層金属張積層板の製造方法。
(22)(20)または(21)に記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記積層体を、金属層の表面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層面の少なくとも一つにて切断する工程を含む多層金属張積層板の製造方法。
(23)(20)〜(22)のいずれかに記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含む多層金属張積層板の製造方法。
(24)(22)または(23)に記載の多層金属張積層板の製造方法において、前記切断した部分の積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含む多層金属張積層板の製造方法。
(25)(23)または(24)に記載の製造方法において、剥離して分離した金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を含む多層金属張積層板の製造方法。
(26)(20)〜(25)のいずれかに記載の製造方法により得られる多層金属張積層板。
(27)(1)〜(19)のいずれかに記載の積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、ビルドアップ配線層を一層以上形成する工程を含むビルドアップ基板の製造方法。
(28)ビルドアップ配線層はサブトラクティブ法又はフルアディティブ法又はセミアディティブ法の少なくとも一つを用いて形成される(27)に記載のビルドアップ基板の製造方法。
(29)(1)〜(19)のいずれかに記載の積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、(1)〜(19)のいずれかに記載の積層体、樹脂基板付金属層、配線、回路または金属層を1回以上積層することを含むビルドアップ基板の製造方法。
(30)(29)に記載のビルドアップ基板の製造方法において、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、金属層、積層体の金属箔、積層体の金属キャリア、樹脂基板付金属層の樹脂、樹脂基板付金属層の金属層又は樹脂に穴を開け、当該穴の側面および底面に導通めっきをする工程を更に含むビルドアップ基板の製造方法。
(31)(29)または(30)に記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記片面あるいは両面配線基板を構成する金属層、片面あるいは両面金属張積層板を構成する金属層、及び積層体を構成する金属箔、樹脂基板付金属層の金属層、及び金属層の少なくとも一つに配線を形成する工程を1回以上行うことを更に含むビルドアップ基板の製造方法。
(32)配線形成された表面の上に、(1)〜(19)のいずれかに記載の積層体を積層する工程を更に含む(29)〜(31)のいずれかに記載のビルドアップ基板の製造方法。
(33)(27)〜(32)のいずれかに記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記積層体を、金属箔の表面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層面の少なくとも一つにて切断する工程を含むビルドアップ基板の製造方法。
(34)(27)〜(33)のいずれかに記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
(35)(33)に記載のビルドアップ基板の製造方法において、前記切断した部分の積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
(36)(34)または(35)に記載のビルドアップ配線板の製造方法において、剥離して分離した金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を更に含むビルドアップ配線板の製造方法。
(37)(34)〜(36)のいずれかに記載の製造方法により得られるビルドアップ配線板。
(38)(34)〜(36)のいずれかに記載の製造方法によりビルドアップ配線板を製造する工程を含むプリント回路板の製造方法。
(39)(27)〜(33)のいずれかに記載の製造方法によりビルドアップ基板を製造する工程を含むプリント回路板の製造方法。
(40)(27)〜(33)のいずれかに記載の製造方法により得られるビルドアップ基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、良好なハンドリング性を実現し、かつ、配線回路の高密度化、多層化に対応することを容易にする積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る積層体は、金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、必要に応じて無機基板および/または金属板を介して、前記金属キャリア同士を積層させて得られる。
【0012】
本発明に好適に使用されるキャリア付金属箔の一構成例を
図2に示す。
図2には、金属キャリア11cの両面に、金属箔11aを剥離可能に密着させたキャリア付き金属箔の二つを、金属キャリア同士を積層させた積層体が示されている。なお、金属キャリア11cと金属箔11aとは、後述する離型層11bを介して貼り合わせられている。
【0013】
積層体を構成するキャリア付金属箔は、構造的には、
図1に示したCCLと類似しているが、このキャリア付金属箔では、金属キャリアと金属箔とが最終的に分離されるもので、人手で容易に剥離できる構造を有する。この点、CCLは剥離させるものではないので、構造と機能は、全く異なるものである。
【0014】
また、本発明に好適に使用されるキャリア付金属箔の他の構成例を
図10に示す。
図10には、
図2と同様に、金属箔11aを剥離可能に密着させた金属キャリア11cからなる二つのキャリア付金属箔を、後述するような無機基板および/または金属板11dを介して、積層させた積層体が示されている。
【0015】
本発明で使用する積層体の実施形態における金属キャリアと金属箔は、いずれ分離、すなわち剥がさなければならないので過度に密着性が高いのは不都合であるが、プリント回路板作製過程で行われるめっき等の薬液処理工程において剥離しない程度の密着性を備える方が好ましい。このような観点から、金属層間での剥離強度は、0.5gf/cm以上であることが好ましく、1gf/cm以上であることが好ましく、2gf/cm以上であることが好ましく、3gf/cm以上であることが好ましく、5gf/cm以上であることが好ましく、10gf/cm以上であることが好ましく、30gf/cm以上であることがより好ましく、50gf/cm以上であることが一層好ましい一方で、200gf/cm以下であることが好ましく、150gf/cm以下であることがより好ましく、80gf/cm以下であることが一層好ましい。金属層同士が密着性を備える場合、その金属層間での剥離強度をこのような範囲とすることによって、搬送時や加工時に剥離することがない一方で、人手で容易に剥がすことができる。
【0016】
このような密着性を実現するための剥離強度の調節は、後述するように、金属キャリアの表面に対して、特定の表面処理を施すことで容易に実現することができる。
【0017】
また、本発明の積層体は、金属箔の表面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層部分の外周の少なくとも一部において、好ましくは全体にわたって覆う樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
すなわち、好ましい態様として、金属箔の表面において平面視したときに、樹脂が金属箔の全体を覆うとともに金属箔と金属キャリアとの積層部分の全周を覆う態様1(
図3)、樹脂が金属箔の表面の全体を覆うとともに金属箔と金属キャリアとの積層部分の外周の一部を覆う態様2(例えば、
図4)、樹脂が金属箔の表面において平面視したときに開口部を有するように金属箔と金属キャリアとの積層部分の外周を覆い、当該開口部において金属箔が露出する態様3(例えば、
図5、
図6)などが考えられる。
【0019】
図3、
図4は、積層体の典型的な構成例を示す。
図3はこの構成例を平面視したときの図であり、
図4はこの構成例のA−A’断面図である。
図3、4において、金属キャリア22が離型層24を介して金属箔23と接触する構成のキャリア付金属箔の二つが、金属キャリア22同士を積層した構造となっていて、さらに樹脂31が両方の金属箔23の全体を覆うとともに、金属キャリア22と、金属箔23との積層面の全周を覆っている。
【0020】
このような構成とすることにより、金属箔の表面において平面視したときに、金属キャリアと金属箔との積層部分が樹脂により覆われ、他の部材がこの部分の側方向、すなわち積層方向に対して横からの方向から当たることを防ぐことができるようになり、結果としてハンドリング中の金属箔の剥がれを少なくすることができる。また、この積層部分の外周を露出しないように覆うことにより、ビルドアップ工程等での薬液処理工程におけるこの界面への薬液の浸入を防ぐことができ、金属層の腐食や侵食を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明の他の典型的な構成例としては、
図5に示したように、平面視したときに、金属キャリアと金属箔と積層部分の一部が露出していてもよい。すなわち、
図5においては金属箔32の側方向において樹脂31により覆われていないが、金属箔が金属キャリアから離れないという観点からはこの態様においても同様の効果を得ることができる。この樹脂31で覆われていない側面において、この積層部分が露出した形となっているため、この方向からの薬液の浸入を防ぐことが難しい。このため、金属箔の腐食や侵食がシビアに問題となる場合には、四方向からの薬液の浸入を防ぐ必要があり、この場合
図3の態様が好ましい。
【0022】
なお、
図3〜5の積層体において、例えば本発明のキャリア付金属箔同士を積層して得られる積層体を、二つの板状樹脂で挟んで、当該構造を維持するために、板状樹脂同士を加熱接着する。この加熱接着は、樹脂が流動する状態になる温度にてホットプレスにて行う。あるいは、加熱接着しなくても、ある程度の密着性があれば足りる。そこで接着により樹脂同士を密着させる場合、エポキシ樹脂系接着剤などのような接着剤を好適に使用することができる。さらに、この密着性は、板状樹脂を接着または加熱接着させる領域が一定範囲のときに効果的に発揮させることができる。この観点から、平面視したときの金属箔の面積(Sa)と板状樹脂の面積(Sb)との比(Sa/Sb)を0.6以上1.0未満、好ましくは0.80以上0.95以下とすることで、板状樹脂同士を接着または加熱接着する必要十分な面積を確保することができるため好ましい。また、別の観点から、前記二つの板状樹脂が接着または加熱接着されている面積(Sp)と、前記当該接着または加熱接着された面を含む板状樹脂の面積(Sq)との比(Sp/Sq)を0.001以上0.2以下、好ましくは0.01以上0.20以下とすることによっても、板状樹脂同士を接着または加熱接着する必要十分な面積を確保することができるため好ましい。それぞれの金属箔に積層している二つの板状樹脂の面積および形状は同一であることが好ましいが、異なっていても良い。前記二つの板状樹脂の面積および形状が異なる場合は、S
bおよびSqの値としては面積が大きい方の板状樹脂のものを使用することとする。
【0023】
なお、樹脂の形状は金属箔と金属キャリアとの積層部分を覆うことができれば形状において制限されることはない。すなわち、
図3〜5において樹脂の平面視したときの形状が四角形である場合を示したが、これ以外の形状としてもよい。一方、金属層についても四角形以外の形状としてもよい。
【0024】
ここで、キャリア付金属層は、例えば
図3、
図4(または
図5)に示したような積層体20(または積層体30)を樹脂21−金属箔23−離型層24−金属キャリア22−離型層24−金属箔23−樹脂21の積層構造を含む面であるカットラインBにてカットして得られる。あるいは、後述するように、金属箔の表面において平面視したときに、金属箔と金属キャリアとの積層面にてカットしてもよい。積層体の上に、後述のように、配線層、樹脂、ビルドアップ層などを積層した後で、上述したような所定の位置でカットして金属層同士を分離することで、多層金属張積層板やビルドアップ基板の最表面に金属層が露出した状態としてもよい。
【0025】
このようにして露出させた金属層を回路形成に供することで、従来のようにプリント回路板の製造工程の簡素化および歩留まりアップにより製造コスト削減の効果を維持しつつ、生産性の向上を実現することができる。
【0026】
積層体の金属箔の表面において平面視したときに、積層体が占める領域において積層体の使用領域(例えば、最終的に回路が形成される)の外側に十分にスペースがとられた態様では、この積層体の金属層内の使用領域の外側のスペース、または後述するように積層体を積層面にて樹脂で覆う場合この樹脂において、ドリルなどを用いて、直径0.01mm〜10mm程度の孔を1〜10箇所程度設けてもよい。ここで、直径とは、孔を取り囲む円の最小直径を意味する。このようにして設けられた孔は、後述する多層金属張積層板の製造や、ビルドアップ基板の製造に際して、位置決めピンなどを固定するための手段として用いることができる。
図12に孔開けを行った積層体の断面の一例を示す。
図12では、それぞれ金属キャリア22およびこの金属キャリアの表面に剥離可能に接触する金属箔23を有する二つのキャリア付金属箔の金属キャリア同士を端部にて接着剤112を用いて接合した積層体において、この積層体を平面視したときに接着剤112よりも内側に孔114を開けた例が示される。なお、この孔開けに先立って、金属箔と金属キャリアとを同じ形状とし、各端部を合わせる、すなわち矩形形状である場合、平面視したときに四角の位置がずれないように重ね合わせるようにすることが、孔開けの際の位置合わせを容易にするため、好ましい。
【0027】
また、本発明は、金属キャリアと金属箔とを離型層を介して密着させる。好適な離型層としては、例えばキャリア付き銅箔(キャリア付き極薄銅箔)において当業者に知られた任意の剥離層または中間層を用いることができる。例えば、剥離層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、又はこれらの合金、またはこれらの水和物、またはこれらの酸化物、あるいは有機物の何れか一種以上を含む層で形成することが好ましい。剥離層は複数の層で構成されても良い。なお、剥離層は拡散防止機能を有することができる。ここで拡散防止機能とは母材からの元素を極薄銅層側への拡散を防止する働きを有する。
【0028】
本発明の一実施形態において、
図2の離型層24は金属キャリア22側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Alの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、又は、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Alの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層(これらは拡散防止機能をもつ)と、その上に積層されたCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Alの元素群から選択された一種以上の元素の水和物若しくは酸化物または有機物からなる層とから構成される。
また、例えば離型層24は、金属キャリア22側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層、その次にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層で構成することができる。なお、各元素の合計付着量は例えば1〜50000μg/dm
2とすることができ、また例えば付着量は1〜6000μg/dm
2とすることができる。
【0029】
離型層24はNi含有層及びCr含有層の2層で構成されることが好ましい。この場合、Ni含有層は金属キャリア22との界面に、Cr含有層は金属箔23(例えば銅箔または極薄銅層)との界面にそれぞれ接するようにして積層する。
【0030】
離型層24は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより得ることができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。
【0031】
また、例えば、離型層24は、キャリア上に、ニッケル層、ニッケル−リン合金層又はニッケル−コバルト合金層と、クロム層またはクロム含有層とがこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、金属箔23がキャリア付銅箔の極薄銅層の場合には、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロム層またはクロム含有層との界面で剥離するようになる。また、離型層24のニッケル層にはキャリアからキャリアの構成元素である成分が金属箔23(例えば銅箔または極薄銅層)へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。離型層24におけるニッケルの付着量は好ましくは100μg/dm
2以上40000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上4000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上2500μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上1000μg/dm
2未満であり、離型層24におけるクロムの付着量は5μg/dm
2以上100μg/dm
2以下であることが好ましい。離型層24を金属キャリア22の片面にのみ設ける場合、金属キャリア22の反対面にはNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。なお、クロム含有層はクロメート処理層であってもよく、クロム合金めっき層であってもよい。クロム層はクロムめっき層であってもよい。
なお、離型層は接着剤で形成してもよい。
また、金属箔とキャリアとを剥離可能に接触させることは、超音波溶接等の後述する接合方法を用いて、金属箔とキャリアとを接合することを含む。
【0032】
さらに、
図6に示すように、積層体40が、少なくとも一方の面において平面視したときに、開口部42を有し、この開口部において、金属箔23が露出した構造をとってもよい。
図6では、積層体の両面に開口部を設けた場合を示す。
この開口部は、通常のフォトリソグラフィ技術や、マスキングテープやマスキングシート等を積層した後に開口部のみエッチング除去する技術、または樹脂に対して、プレスにより、二つの金属層を接触させて得られる積層物を圧着または熱圧着することなどにより形成することができる。この開口部は、平面視したときに、金属層の端部(外周)より内側で形成されていてもよいし、金属層の端部または二つの金属層の積層部分の外周の少なくとも一部に到達していてもよい。
【0033】
また、
図7に示すように、金属箔23を露出させたまま、金属キャリア22と金属箔23との積層面、すなわち離型層24の金属箔23の外周における端部のみを樹脂51で覆ってもよい。このような積層体50であっても、後述するような積層体の用途である積層過程において、離型層24に薬液が入り込まないようにすることができる。
【0034】
本発明に係る製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、離型層形成の前に金属キャリアの表面を洗浄する洗浄工程を行ってもよい。
【0035】
また、多層プリント配線板の製造過程では、積層プレス工程やデスミア工程で加熱処理することが多い。そのため、積層体が受ける熱履歴は、積層数が多くなるほど厳しくなる。従って、特に多層プリント配線板への適用を考える上では、所要の熱履歴を経た後にも、金属キャリアと金属箔との間の剥離強度が先述した範囲にあることが望ましい。
【0036】
従って、本発明の更に好ましい一実施形態においては、多層プリント配線板の製造過程における加熱条件を想定した、例えば220℃で3時間、6時間または9時間のうちの少なくとも一つの加熱後における、金属キャリアと金属箔との間の剥離強度が、0.5gf/cm以上であることが好ましく、1gf/cm以上であることが好ましく、2gf/cm以上であることが好ましく、3gf/cm以上であることが好ましく、5gf/cm以上であることが好ましく、10gf/cm以上であることが好ましく、30gf/cm以上であることが好ましく、50gf/cm以上であることがより好ましい。また、当該剥離強度が200gf/cm以下であることが好ましく、150gf/cm以下であることがより好ましく、80gf/cm以下であることが更により好ましい。
【0037】
220℃での加熱後の剥離強度については、多彩な積層数に対応可能であるという観点から、3時間後および6時間後の両方、または6時間および9時間後の両方において剥離強度が上述した範囲を満たすことが好ましく、3時間、6時間および9時間後の全ての剥離強度が上述した範囲を満たすことが更に好ましい。
【0038】
本発明において、剥離強度はJIS C6481に規定される90度剥離強度測定方法に準拠して測定する。
【0039】
以下、このような剥離強度を実現するための各材料の具体的構成要件について説明する。
【0040】
金属キャリアまたは金属箔としては、銅又は銅合金板や箔が代表的なものであるが、アルミニウム、ニッケル、亜鉛などの板や箔を使用することもできる。特に、銅又は銅合金箔の場合、電解箔又は圧延箔を使用することができる。金属箔は、限定的ではないが、プリント回路基板の配線としての使用を考えると、0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、好ましくは0.5μm以上、好ましくは1μm以上、好ましくは1.5μm以上、好ましくは2μm以上、および400μm以下、好ましくは120μm以下、好ましくは50μm以下、好ましくは35μm以下、好ましくは25μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは7μm以下、好ましくは5μm以下、好ましくは4μm以下、の厚みを有するのが一般的である。キャリア付金属箔に用いる金属箔としては、同じ厚みのものを用いても良いし、異なる厚みのものを用いても良い。
【0041】
ここで、金属キャリアの厚みとしては、プリント回路板の配線またはプリント回路基板を製造するためのコア材としての使用を考えると、典型的には3〜900μm程度、あるいは3〜500μm程度、あるいは3〜300μm程度、あるいは3〜125μm程度であり、従来のプリプレグなどの樹脂基板よりも薄いことが好ましい特徴である。また、本発明の積層体は、このようなキャリア付金属箔の二つを、金属キャリア同士を接触させるようにして積層させる。これにより、従来のキャリア付金属箔を用いた積層体よりも薄くすることができる一方で、当該積層体の強度や、打痕、変形等による品質不良の発生の低減などの観点からのハンドリング性を維持することを可能にする。さらに、薄い積層体とすることを可能にすることから、従来の製造設備に供することができ、かつ、配線回路の高密度化、多層化に対応することができる。
このような観点から、
図2に示したような本発明の積層体の厚みは、典型的には6〜1800μm、好ましくは6〜1500μm、好ましくは6〜1000μm、好ましくは6〜800μm、好ましくは8〜500μm、好ましくは8〜250μm、好ましくは10〜200μm、好ましくは10〜180μm、好ましくは10〜160μm、好ましくは10〜150μm、好ましくは10〜120μm、好ましくは10〜100μm、好ましくは10〜80μmである。
【0042】
使用する金属キャリアまたは金属箔には各種の表面処理が施されていてもよい。例えば、耐熱性付与を目的とした金属めっき(Niめっき、Ni−Zn合金めっき、Cu−Ni合金めっき、Cu−Zn合金めっき、Znめっき、Cu−Ni−Zn合金めっき、Co−Ni合金めっきなど)、防錆性や耐変色性を付与するためのクロメート処理(クロメート処理液中にZn、P、Ni、Mo、Zr、Ti等の合金元素を1種以上含有させる場合を含む)、表面粗度調整のための粗化処理(例:銅電着粒やCu−Ni−Co合金めっき、Cu−Ni−P合金めっき、Cu−Co合金めっき、Cu−Ni合金めっき、Cu−W合金めっき、Cu−As合金めっき、Cu−As−W合金めっき等の銅合金めっきによるもの)が挙げられる。粗化処理が金属箔と金属キャリアとの剥離強度に影響を与えることはもちろん、クロメート処理も大きな影響を与える。クロメート処理は防錆性や耐変色性の観点から重要であるが、剥離強度を有意に上昇させる傾向が見られるので、剥離強度の調整手段としても意義がある。
【0043】
また、金属キャリア同士の積層は、単に重ね合わせる他、例えば以下の方法で行うことができる。なお、この金属キャリア同士の接合は、金属箔を金属キャリアに接触させる前に行ってもよいし、キャリア付金属箔同士を重ね合わせた後で行ってもよいし、特にキャリア層の表面に凹凸が生じるような方法により接合する場合、先に金属キャリア同士を接合してから金属箔がこの接合部分にかからないように積層してもよい。
(a)冶金的接合方法:融接(アーク溶接、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、抵抗溶接、シーム溶接、スポット溶接)、圧接(超音波溶接、摩擦撹拌溶接)、ろう接;
(b)機械的接合方法:かしめ、リベットによる接合(セルフピアッシングリベットによる接合、リベットによる接合)、ステッチャー;
(c)物理的接合方法:接着剤、(両面)粘着テープ
一方の金属層の一部または全部と他方の金属層の一部または全部とを、上記接合方法を用いて接合することにより、一方の金属層と他方の金属層を積層し、金属層同士を分離可能に接触させて構成される積層物を製造することができる。一方の金属層と他方の金属層とが弱く接合されて、一方の金属層と他方の金属層とが積層されている場合には、一方の金属層と他方の金属層との接合部を除去しないでも、一方の金属層と他方の金属層とは分離可能である。また、一方の金属層と他方の金属層とが強く接合されている場合には、一方の金属層と他方の金属層とが接合されている箇所を切断や化学研磨(エッチング等)、機械研磨等により除去することにより、一方の金属層と他方の金属層を分離することができる。
【0044】
本発明では、樹脂を金属箔の面に貼り合せる場合には剥離強度が高いことが望まれる場合がある。当該場合には、例えば、金属層(例えば電解銅箔)のマット面(M面)を樹脂との接着面とし、粗化処理等の表面処理を施すことによって化学的および物理的アンカー効果による接着力向上を図ることが好ましい。
【0045】
積層体を樹脂で覆う場合、好適な樹脂としては、特に制限はないが、熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、スチレンブタジエン樹脂エマルジョン、アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョン、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、天然ゴム、松脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、シリコン樹脂、シリコーンまたは熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、あるいは熱可塑性天然ゴム等を使用することができる。より典型的には250℃でも溶融しないおよび/またはガラス転移温度が200℃以上である耐熱性樹脂、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、好ましくは250℃でも溶融せず、かつ、ガラス転移温度が200℃以上である耐熱性樹脂、例えばポリイミド樹脂や液晶ポリマー樹脂(LCP樹脂)などを使用することができる。また、樹脂は耐薬液性、特に耐酸性、耐デスミア液性を有するものが好ましい。なお、ここで「デスミア処理」とは、樹脂にレーザおよび/またはドリルで穴を開けた後、または樹脂表面に金属箔を貼り合わせた後、エッチング等により金属箔を除去した後に、樹脂や金属箔例えば銅箔の残りかす等を処理液により除去することをいい、「デスミア液」とはその際に用いられる処理液をいう。さらに、この樹脂の粘度は、0.5Pa・s以上、1Pa・s以上、5Pa・s以上、10Pa・s以上、かつ、10000Pa・s以下、5000Pa・s以下、3000Pa・s以下であればよく、100Pa・s以下の範囲についてはJIS Z 8803(2011)に準拠し、JIS Z 8803(2011)の「6 細管粘度計による粘度測定方法6.2.3 ウベローデ粘度計」を用いて測定し、100Pa・sよりも高い範囲については同「7 落球粘度計による粘度測定方法」を用いて測定する。
【0046】
また、プリプレグを使用することもできる。金属箔に、貼り合わせる前のプリプレグはBステージの状態にあるものがよい。プリプレグ(Cステージ)の線膨張係数は12〜18(×10
-6/℃)と、基板の構成材料である銅箔の16.5(×10
-6/℃)、またはSUSプレス板の17.3(×10
-6/℃)とほぼ等しいことから、プレス前後の基板サイズが設計時のそれとは異なる現象(スケーリング変化)による回路の位置ずれが発生し難い点で有利である。更に、これらのメリットの相乗効果として多層の極薄コアレス基板の生産も可能になる。ここで使用するプリプレグは、回路基板を構成するプリプレグと同じ物であっても異なる物であってもよい。
【0047】
プリプレグを使用する場合、キャリア付金属箔を金属箔側から平面視したときに、一回り大きなサイズのものを用いることが、積層体側面への薬液の侵入を効果的に抑える観点から好ましい。このBステージのプリプレグの上に、さらに一回り大きいサイズの金属箔や金属キャリアを積層することが、プレスした際にプリプレグが広がってはみ出すことを防ぎ、他の層を汚染することを効果的に防ぐことができる観点から、好ましい。
【0048】
また、樹脂の熱膨張率が、金属箔および金属キャリアの熱膨張率の+10%、−30%以内であることが望ましい。これによって、金属箔および金属キャリアと、樹脂との熱膨張差に起因する回路の位置ずれを効果的に防止することができ、不良品発生を減少させ、歩留りを向上させることができる。
【0049】
樹脂の厚みは特に制限はなく、リジッドでもフレキシブルでもよいが、厚すぎるとホットプレス中の熱分布に悪影響がでる一方で、薄すぎると撓んでしまいプリント配線板の製造工程を流れなくなることから、通常5μm以上1000μm以下であり、50μm以上900μm以下が好ましく、100μm以上400μm以下がより好ましい。
【0050】
また、平面視したときに金属箔の表面の少なくとも一部を樹脂で覆う態様において、樹脂層の厚みは小さいほど好ましいが、典型的には50μm以下、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、および典型的には1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。なお、ここでいう樹脂層の厚みとは、例えば
図6に示したように、積層体40を平面視したときの樹脂41の金属箔23を覆う部分の厚みtを指す。
【0051】
また、積層体を平面視したときに開口部を設けることが歩留まりの観点から好ましく、金属箔23の端部に接線を引き、その接線に垂直な方向であり、かつ、平面視した際の金属層端部における接線に垂直な方向における樹脂の幅、例えば
図6に示したような態様において、樹脂41の開口部42の端部から金属箔23の端部に到達するまでの樹脂41の幅wが、典型的には10mm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下であり、かつ、典型的には0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。この樹脂層の幅が、大きすぎると、歩留まりの観点から好ましくなく、逆に小さすぎると開口部端部からの薬液浸み込みを効果的に抑える効果が小さくなる。
【0052】
そこで、本発明に係る積層体の金属箔の面を樹脂で覆う場合には、好ましい一実施形態においては、樹脂と金属箔の面の剥離強度を好ましい範囲(例えば800gf/cm以上)に調節するため、貼り合わせ面の表面粗度を、JIS B 0601:2001に準拠して測定した金属箔表面の十点平均粗さ(Rz jis)で表して、0.4μm以上とすることが好ましく、0.5μm以上とすることが好ましく、0.8μm以上とすることが好ましく、1.0μm以上とすることが好ましく、1.2μm以上とすることが好ましく、1.5μm以上とすることが好ましく、2.0μm以上とすることが好ましい。また上限は特に設定をする必要は無いが、例えば、10.0μm以下とすることが好ましく、8.0μm以下とすることが好ましく、7.0μm以下とすることが好ましく、6.0μm以下とすることが好ましく、5.0μm以下とすることが好ましい。
【0053】
また、本発明に係る積層体の好ましい一実施形態においては、埋め込み法(エンベティッド法)による回路形成をするために、金属箔の上に回路または配線を設ける場合、金属箔と当該回路または配線、または当該回路または配線を埋め込む樹脂との間の剥離強度を先述した好ましい範囲に調節するため、金属箔の金属キャリアが存在する側の面とは反対側の面の表面粗度を、JIS B 0601:2001に準拠して測定した十点平均粗さ(Rz jis)で表して、3.5μm以下、更に3.0μm以下とすることが好ましい。但し、表面粗度を際限なく小さくするのは手間がかかりコスト上昇の原因となるので、0.1μm以上とするのが好ましく、0.3μm以上とすることがより好ましい。
【0054】
金属箔を金属キャリアから分離可能に接触させて構成されるキャリア付金属箔を樹脂に埋め込むことで、前記金属箔において平面視したときに積層部分の外周の少なくとも一部が樹脂で覆われる積層体を製造するためのホットプレスの条件としては、樹脂としてプリプレグ(例えば板状プリプレグ)を使用する場合、圧力30〜40kg/cm
2、プリプレグのガラス転移温度よりも高い温度でホットプレスすることが好ましい。
【0055】
また、
図2〜
図7に示した積層体の金属キャリアの間に無機基板および/または金属板を介在させることもできる。
図6に示した積層体について、無機基板または金属板を用いた例を
図11に示す。
図11において、積層体60は、金属キャリア22の表面に剥離可能に金属箔23を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア22の間に無機基板および/または金属板61を介在させて積層させて得られる。当該無機基板または金属板61は後述するコア材としての働きをする。
このような無機基板としては、例えばセラミックス、窒化アルミニウム、アルミナなどが挙げられる。また、金属板としては、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ニッケル板、ニッケル合金板、ステンレス板、銅合金板、銅板、鉄板、鉄合金板、亜鉛板、亜鉛合金板などが挙げられる。無機基板および/または金属板の厚みは、特に限定する必要はないが、例えば1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、かつ、10000μm以下、好ましくは5000μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
また、この無機基板または金属板と、金属キャリアとは、接着剤、溶接、前述の各種の接合方法などを用いて積層することができ、剥離可能に密着させるようにしてもよい。
また、この
図11に示した積層体60をラインB(またはラインC)にてカットすることによって、例えば
図10に示したような積層体を得ることができる。
【0056】
さらに、別の観点から、本発明は、上述した積層体の用途を提供する。
第一に、上述した積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向、すなわち金属箔の表面に対して略垂直な方向に対して、樹脂又は金属層を1回以上、例えば1〜10回積層することを含む多層金属張積層板の製造方法が提供される。ここで、金属層とは、前述したような金属箔および金属キャリアとして挙げた金属からなる層が挙げられ、典型的には箔や板などの形態である。
【0057】
第二に、上述した積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、または本発明の積層体、すなわち
図2または
図10に示したような積層体または
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体を切断して得られる積層体あるいは
図11に示したような金属キャリアの間に無機基板および/または金属板を介在させた積層体、樹脂基板付金属層、または金属層を1回以上積層することを含む多層金属張積層板の製造方法が挙げられる。なお、この積層は、所望する回数だけ行われ、各積層回とも、樹脂、片面あるいは両面金属張積層板、本発明の積層体、および金属層からなる群から任意に選択することができる。また、樹脂基板付金属層としては、従来の樹脂キャリアまたは金属キャリアを有するキャリア付金属箔などを好適に使用することができる。
【0058】
上記の多層金属張積層板の製造方法においては、剥離可能な状態にある金属箔の部分で、当該金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を含むことができる。ここで、剥離可能な状態にある金属箔の部分は、
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体ではなく、
図2に示したような積層体の金属箔を想定しているが、
図2で示したような積層体であっても、例えば冶金的接合方法や機械的接合方法などの金属箔の上から接合を行ったものについては、後述するような切断工程を経ることで、金属箔が金属キャリアから剥離可能となる。
また、前記積層体を、金属層の表面において平面視したときに、金属箔と金属キャリアとの積層面の少なくとも一つにて、例えば前記積層体の金属箔上で切断する工程を含むことができる。この場合にも、切断後の積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含むことができる。上記の多層金属張積層板の製造方法においては、前記積層体を、金属箔の表面において平面視したときに、金属箔と金属キャリアとの積層面の少なくとも一つにて切断する工程を更に含むことができる。
【0059】
さらに、金属箔を金属キャリアから剥離して分離した後、金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を更に含むことができる。
【0060】
第三に、上述した積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、本発明の積層体、すなわち
図2または
図10に示したような積層体または
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体を切断して得られる積層体あるいは
図11に示したような金属キャリアの間に無機基板および/または金属板を介在させた積層体、樹脂基板付金属層、配線、回路または金属層を1回以上、例えば1〜10回積層することを含むビルドアップ基板の製造方法が提供される。なお、この積層は、所望する回数だけ行われ、各積層回とも、樹脂、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、本発明の積層体、および金属層からなる群から任意に選択することができる。また、上述と同様に、樹脂基板付金属層としては、従来のキャリア付金属箔などを好適に使用することができる。
【0061】
第四に、上述した積層体の少なくとも一つの金属箔の面方向に対して、ビルドアップ配線層を一層以上積層する工程を含むビルドアップ基板の製造方法が提供される。この際、ビルドアップ配線層はサブトラクティブ法又はフルアディティブ法又はセミアディティブ法の少なくとも一つを用いて形成することができる。
【0062】
ここで、積層体の第四の用途、すなわちビルドアップ基板の製造方法における、サブトラクティブ法とは、金属張積層板や配線基板(プリント配線板、プリント回路板を含む)上の金属層の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。フルアディティブ法とは、導体層に金属層を使用せず、無電解めっき又は/および電解めっきにより導体パターンを形成する方法であり、セミアディティブ法は、例えば金属層からなるシード層上に無電解金属析出と、電解めっき、エッチング、又はその両者を併用して導体パターンを形成した後、不要なシード層をエッチングして除去することで導体パターンを得る方法である。
【0063】
上記のビルドアップ基板の製造方法においては、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面金属張積層板、積層体の金属箔、積層体の金属キャリア、金属層、樹脂基板付金属層の樹脂、樹脂基板付金属層の金属層、又は樹脂に穴を開け、当該穴の側面および底面に導通めっきをする工程を更に含むことができる。また、前記片面あるいは両面配線基板を構成する金属層、片面あるいは両面金属張積層板を構成する金属層、積層体を構成する金属箔、樹脂基板付金属層の金属層、及び金属層の少なくとも一つに配線を形成する工程を1回以上行うことを更に含むこともできる。
【0064】
上記のビルドアップ基板の製造方法においては、配線形成された表面の上に、本発明の積層体、すなわち
図2または
図10に示したような積層体または
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体あるいは
図11に示したような金属キャリアの間に無機基板および/または金属板を介在させた積層体を切断して得られる積層体を積層する工程を更に含むこともできる。
【0065】
なお、「配線形成された表面」とは、ビルドアップを行う過程で都度現れる表面に配線形成された部分を意味し、ビルドアップ基板としては最終製品のものも、その途中のものも包含する。
【0066】
上記のビルドアップ基板の製造方法においては、剥離可能な状態にある金属箔の部分で、当該金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を含むことができる。ここで、剥離可能な状態にある金属箔の部分は、
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体ではなく、
図2に示したような積層体の金属箔を想定しているが、
図2で示したような積層体であっても、例えば冶金的接合方法や機械的接合方法などの金属箔の上から接合を行ったものについては、後述するような切断工程を経ることで、金属箔が金属キャリアから剥離可能となる。
また、前記積層体を、金属層の表面において平面視したときに、金属箔と金属キャリアとの積層面の少なくとも一つにて、例えば前記積層体の金属箔上で切断する工程を含むことができる。この場合にも、切断後の積層体の金属箔を金属キャリアから剥離して分離する工程を更に含むことができる。上記のビルドアップ基板の製造方法においては、前記積層体を、金属箔の表面において平面視したときに、金属箔と金属キャリアとの積層面の少なくとも一つにて切断する工程を更に含むことができる。あるいは、金属キャリア同士が接合または溶接または接着されている場合、この積層体を平面視したときに、この接合、溶接または接着されている部分よりも内側で切断してもよい。また、金属キャリア同士の接合部を切断、研削、機械研磨、エッチング等の化学研磨等により除去することもできる。
【0067】
さらに、金属箔を金属キャリアから剥離して分離した後、金属箔の一部または全部をエッチングにより除去する工程を更に含むことができる。
【0068】
なお、上述の多層金属張積層板の製造方法およびビルドアップ基板の製造方法において、各層同士は熱圧着を行うことにより積層させることができる。この熱圧着は、一層一層積層するごとに行ってもよいし、ある程度積層させてからまとめて行ってもよいし、最後に一度にまとめて行ってもよい。
【0069】
特に、本発明は、上記のビルドアップ基板の製造方法において、片面あるいは両面配線基板、片面あるいは両面銅張積層板、本発明の積層体、すなわち
図2または
図10に示したような積層体または
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体を切断して得られる積層体あるいは
図11に示したような金属キャリアの間に無機基板および/または金属板を介在させた積層体の金属箔、当該積層体の金属キャリア、金属層、樹脂基板付金属層の樹脂、樹脂基板付金属層の金属層、または樹脂に穴を開け、当該穴の側面および底面に導通めっきをし、更に前記片面あるいは両面配線基板を構成する金属箔および回路部分、片面あるいは両面銅張積層板を構成する金属箔、積層体を構成する金属箔、樹脂基板付金属層の金属層、または金属層に回路を形成する工程を少なくとも1回以上行うビルドアップ基板の製造方法を提供する。
【0070】
以下、上述した用途の具体例として、本発明に係る積層体を利用した4層CCLの製法を説明する。ここで使用する積層体は、
図2に示したような金属キャリア11cおよび金属箔11aを、剥離層11bを介して分離可能に接触させて構成される。積層体に、所望枚数のプリプレグ12、次に内層コア13と称する2層プリント回路基板または2層金属張積層板、次にプリプレグ12、更に樹脂付金属層を順に重ねることで1組の4層CCLの組み立てユニットが完成する。次に、このユニット14(通称「ページ」と言う)を10回程度繰り返し、プレス組み立て物15(通称「ブック」と言う)を構成する(
図8)。その後、このブック15を積層金型10で挟んでホットプレス機にセットし、所定の温度及び圧力で加圧成型することにより多数の4層CCLを同時に製造することができる。積層金型10としては例えばステンレス製プレートを使用することができる。プレートは、限定的ではないが、例えば1〜10mm程度の厚板を使用することができる。4層以上のCCLについても、一般的には内層コアの層数を上げることで、同様の工程で生産することが可能である。
【0071】
以下、上述した用途の具体例として、金属箔11aを金属キャリア11cに離型層11bを介して分離可能に接触させて構成されるキャリア付金属箔の二つを、金属キャリア11c同士を接触させて構成される積層体11を利用したコアレスビルドアップ基板の製法を例示的に説明する。この方法では、積層体11の両側にビルドアップ層16を必要数積層して、最終的に二つの金属箔11aを、金属キャリア11cから剥離する(
図9参照)。
【0072】
また例えば、本発明の積層体に、絶縁層としての樹脂、2層回路基板、絶縁層としての樹脂を順に重ね、その上に本発明の積層体を順に重ねて、このようにして得られる最終の積層体における金属箔と金属キャリアとの積層面にてカットすることでビルドアップ基板を製造することができる。
【0073】
また、別の方法としては、本発明の積層体に、絶縁層としての樹脂、導体層としての金属層を順に積層する。次に、必要に応じて金属層の全面を、ハーフエッチングして厚みを調整する工程を含めてもよい。次に、積層した金属層の所定位置にレーザー加工を施して金属層と樹脂を貫通するビアホールを形成し、ビアホールの中のスミアを除去するデスミア処理を施した後、ビアホール底部、側面および金属層の全面または一部に無電解めっきを施して層間接続を形成して、必要に応じて更に電解めっきを行う。金属層上の無電解めっきまたは電解めっきが不要な部分にはそれぞれのめっきを行う前までに予めめっきレジストを形成しておいてもよい。また、無電解めっき、電解めっき、めっきレジストと金属層の密着性が不十分である場合には予め金属層の表面を化学的に粗化しておいてもよい。めっきレジストを使用した場合、めっき後にめっきレジストを除去する。次に、金属層および、無電解めっき部、電解めっき部の不要部分をエッチングにより除去することで回路を形成する。その後、積層体における金属箔と金属キャリアとの積層面にてカットすることでビルドアップ基板を製造することができる。樹脂、銅箔の積層から回路形成までの工程を複数回行ってさらに多層のビルドアップ基板としてもよい。
さらに、このビルドアップ基板の最表面には、本発明の積層体、すなわち
図2または
図10に示したような積層体または
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体あるいは
図11に示したような金属キャリアの間に無機基板および/または金属板を介在させた積層体を切断して得られる積層体を接触させて積層してもよい。なお、最後に積層体を密着させる場合、その前段までで重ね合わせた積層体における金属箔と金属キャリアとの積層面にてカットをしておいてもよいが、最後の積層体の密着までカットを行わず、最後に全ての積層体の金属箔と金属キャリアとの積層面が切断面に含まれるようにカットされるように、一度にカットしてもよい。
【0074】
ここで、ビルドアップ基板作製に用いる樹脂基板としては、熱硬化性樹脂を含有するプリプレグを好適に用いることができる。
【0075】
また、別の方法としては、本発明の積層体を覆う樹脂に開口部を設けて露出する金属箔の露出表面に、絶縁層としての樹脂例えばプリプレグまたは感光性樹脂を積層する。その後、樹脂の所定位置にビアホールを形成する。樹脂として例えばプリプレグを用いる場合、ビアホールはレーザー加工により行うことができる。レーザー加工の後、このビアホールの中のスミアを除去するデスミア処理を施すとよい。また、樹脂として感光性樹脂を用いた場合、フォトリソグラフィ法によりビアホール形成部の樹脂を除去することができる。次に、ビアホール底部、側面および樹脂の全面または一部に無電解めっきを施して層間接続を形成して、必要に応じて更に電解めっきを行う。樹脂上の無電解めっきまたは電解めっきが不要な部分にはそれぞれのめっきを行う前までに予めめっきレジストを形成しておいてもよい。また、無電解めっき、電解めっき、めっきレジストと樹脂の密着性が不十分である場合には予め樹脂の表面を化学的に粗化しておいてもよい。めっきレジストを使用した場合、めっき後にめっきレジストを除去する。次に、無電解めっき部または電解めっき部の不要部分をエッチングにより除去することで回路を形成する。その後、積層体における金属箔と金属キャリアとの積層面にてカットすることでビルドアップ基板を製造することができる。樹脂の積層から回路形成までの工程を複数回行ってさらに多層のビルドアップ基板としてもよい。
さらに、このビルドアップ基板の最表面には、本発明の積層体、すなわち
図2または
図10に示したような積層体または
図3〜
図7に示したような樹脂で覆った積層体あるいは
図11に示したような金属キャリアの間に無機基板および/または金属板を介在させた積層体を切断して得られる積層体を接触させて積層してもよい。なお、最後に積層体を密着させる場合、その前段までで重ね合わせた積層体における金属箔と金属キャリアとの積層面にてカットをしておいてもよいが、最後の積層体の密着までカットを行わず、最後に全ての積層体の金属箔と金属キャリアとの積層面が切断面に含まれるようにカットされるように、一度にカットしてもよい。
【0076】
また、別の方法としては、
図13〜
図15に示したようなビルドアップ方法が挙げられる。
すなわち、
図13においては、
図12に示したキャリア付金属箔同士を金属キャリア側で重ねた積層体のそれぞれの金属箔23にプリプレグ115、116を積層させ、さらに回路形成用の金属層117、118を積層させる。積層後に、カットラインBにてカットする。この一連の操作の際に、孔114はアライメントホールとして機能し、孔114の上面にプリプレグ、金属層を積層させても、超音波、放射線(電磁放射線(X線およびガンマ線)または粒子放射線(α線、β線、中性子線、電子線、中間子線、陽子線等))または電磁波を当てることで位置検出をすることができるようになっている。なお、装置の普及の程度や利用のしやすさを考慮するとX線またはガンマ線を用いることが好ましく、X線を用いることがより好ましい。
【0077】
続いて、
図14においては、
図13で得られた積層体の孔114よりも内側に積層方向に貫通する孔124を開ける。これにより、人間にも孔が視覚化されることになる。また、孔114よりも内側に孔124を開けることにより積層体の金属層と金属層との間に薬液が染み込むのを防止できる。
【0078】
そして、
図15においては、
図14で得られた積層体の最外層の金属層117、118に回路を形成し、回路領域122、123を設けてビルドアップ基板121を得る。この後、
図16に示すように、
図15で得られたビルドアップ基板121にさらにビルドアップ層132を形成し、さらに必要に応じてビルドアップ層の形成を続けて、最後に、平面視したときに孔124の内側に設定した所定のカットラインBにてカットして、矢印Dに沿って金属層の界面にて分けて二つの基板133、134にしてもよい。また、
図15に示したように、平面視したときに孔124の内側に設定した所定のカットラインBにてカットし、金属キャリア23同士の界面にて分けて二つのビルドアップ基板を得て、
図17に示すように、それぞれのビルドアップ基板141の両面に対して引き続きビルドアップ層142を形成していってもよいし、片面だけにビルドアップ層を形成していってもよい。
【0079】
このようにして作製されたコアレスビルドアップ基板に対しては、めっき工程及び/又はエッチング工程を経て表面に配線を形成し、更に金属箔と金属キャリアとの間で、剥離分離させることでビルドアップ配線板が完成する。剥離分離後に剥離面に対して、配線を形成してもよいし、金属箔をエッチングにより除去して多層ビルドアップ配線板としてもよい。更に、ビルドアップ配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。また、剥離前のコアレスビルドアップ基板に直接、電子部品を搭載してもプリント回路板を得ることができる。
【実施例】
【0080】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0081】
<実験例1>
以下の手順により、
図2に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
キャリアとして、厚さ35μmの長尺の電解銅箔(JX日鉱日石金属社製JTC)を用意した。この銅箔の光沢面(シャイニー面)に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで電気めっきすることにより4000μm/dm
2の付着量のNi層を形成した。
【0082】
(1)Ni層(Ni含有層、剥離層:下地メッキ1)
銅箔キャリアのS面に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続メッキラインで電気メッキすることにより1000μg/dm
2の付着量のNi層を形成した。具体的なメッキ条件を以下に記す。
【0083】
硫酸ニッケル:270〜280g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
ホウ酸:30〜40g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
pH:4〜6
浴温:55〜65℃
電流密度:10A/dm
2
【0084】
(2)Cr層(Cr含有層、剥離層:下地メッキ2)
次に、(1)にて形成したNi層表面を水洗及び酸洗後、引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続メッキライン上でNi層の上に11μg/dm
2の付着量のCr層を以下の条件で電解クロメート処理することにより付着させた。
重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0g/L
pH:7〜10
液温:40〜60℃
電流密度:2A/dm
2
【0085】
(3)極薄銅層
次に、(2)にて形成したCr層表面を水洗及び酸洗後、引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続メッキライン上で、Cr層の上に厚み2μmの極薄銅層を以下の条件で電気メッキすることにより形成し、キャリア付極薄銅箔を作製した。
銅濃度:80〜120g/L
硫酸濃度:80〜120g/L
電解液温度:50〜80℃
電流密度:100A/dm
2
【0086】
上記の処理によるキャリア付極薄銅箔(極薄銅層の厚さ2μm、極薄銅層粗化形成面粗さ:Rz0.6μm)を用い、この極薄銅箔の粗面(マット面:M面)に、下記に示す粗化めっきを行った。以下に、処理条件を示す。これらはいずれも、本発明の積層体におけるキャリア付極薄銅箔を構成する極薄銅箔への粗化処理層を形成するための工程である。粗化粒子形成時の対限界電流密度比は2.50とした。
【0087】
(液組成1)
Cu:15g/L
H
2SO
4:100g/L
W:3mg/L
ドデシル硫酸ナトリウム添加量:10ppm
(電気めっき温度1)50℃
【0088】
本粗化処理の後、下記に示す正常めっきを行った。以下に、処理条件を示す。
(液組成2)
Cu:40g/L
H
2SO
4:100g/L
(電気めっき温度1)40℃
(電流条件1)
電流密度:30A/dm
2
クーロン量:150As/dm
2
【0089】
次に、耐熱・防錆層の上に電解クロメート処理を行った。
電解クロメート処理(クロム・亜鉛処理(酸性浴))
CrO
3:1.5g/L
ZnSO
4・7H2O:2.0g/L
Na
2SO
4:18g/L
pH:4.6
浴温:37℃
電流密度:2.0A/dm
2
時間:1〜30秒
(pH調整は硫酸又は水酸化カリウムで実施)
【0090】
次に、このクロメート皮膜層の上に、シラン処理(塗布による)を施した。シラン処理の条件は、次の通りである。
0.2% 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
なお、各キャリア付極薄銅箔に関して、それぞれの極薄銅箔と金属キャリアとの剥離強度は、13gf/cmおよび10gf/cmであった。
このようにして得られた二つのキャリア付極薄銅箔の金属キャリア同士を接触させて極薄銅箔層の上から超音波溶接機にて、超音波周波数20kHz、出力100〜450W、振幅65μm、加圧力100〜400kgf/cm
2の条件で二つのキャリア付極薄銅箔を接合させて、
図2に示した構造の積層体を得た。
【0091】
<実験例2>
以下の手順により、
図2に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
以下の条件にて、剥離層の形成および極薄銅箔の粗化処理を行った後の処理以外は、実験例1と同様の手順にて行った。なお、クロメート処理後に積層した極薄銅層厚みは3μmであった。
【0092】
(剥離層の形成)
(1)「Ni−Zn」:ニッケル亜鉛合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸亜鉛(ZnSO
4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整してニッケル亜鉛合金めっきを形成した。
Ni付着量は、3000μg/dm
2であり、Zn付着量は、250μg/dm
2であった。
【0093】
(2)「有機」:有機物層形成処理
上記で形成したニッケル亜鉛合金めっき層の上に、濃度1〜30g/Lのカルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)を含む、液温40℃、pH5の水溶液を、20〜120秒間シャワーリングして噴霧することにより行った。有機物層厚みは、25μmであった。
【0094】
(粗化処理)
以下の条件にて、粗化処理1、粗化処理2、防錆処理、クロメート処理、及び、シランカップリング処理をこの順に行った。なお、極薄銅箔の厚みは3μmとした。
・粗化処理1
液組成 :銅10〜20g/L、硫酸50〜100g/L
液温 :25〜50℃
電流密度 :1〜58A/dm
2
クーロン量 :4〜81As/dm
2
・粗化処理2
液組成 :銅10〜20g/L、ニッケル5〜15g/L、コバルト5〜15g/L
pH :2〜3
液温 :30〜50℃
電流密度 :24〜50A/dm
2
クーロン量 :34〜48As/dm
2
・防錆処理
液組成 :ニッケル5〜20g/L、コバルト1〜8g/L
pH :2〜3
液温 :40〜60℃
電流密度 :5〜20A/dm
2
クーロン量 :10〜20As/dm
2
・クロメート処理
液組成 :重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH :3〜4
液温 :50〜60℃
電流密度 :0〜2A/dm
2
クーロン量 :0〜2As/dm
2
・シランカップリング処理
ジアミノシラン水溶液の塗布(ジアミノシラン濃度:0.1〜0.5wt%)
【0095】
なお、各キャリア付極薄銅箔に関して、それぞれの極薄銅箔と金属キャリアとの剥離強度は、5gf/cmおよび8gf/cmであった。
このようにして得られた二つのキャリア付極薄銅箔の金属キャリア同士を接触させて極薄銅箔層の上から摩擦撹拌溶接、ツール(スターロッド)の回転数200〜1000rpm、ツール荷重100〜2000Nにて、二つのキャリア付極薄銅箔を接合させて、
図2に示した構造の積層体を得た。
【0096】
<実験例3>
以下の手順により、
図2に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
二つのキャリア付極薄銅箔を、実験例2に示した手順を同様にして得た。なお、各キャリア付極薄銅箔に関して、それぞれの極薄銅箔と金属キャリアとの剥離強度は、5gf/cmおよび8gf/cmであった。
そして、二つのキャリア付極薄銅箔の金属キャリア同士を接着剤を介して密着させて、
図2に示した構造の積層体を得た。
【0097】
<実験例4>
実験例1の手順において、二つのキャリア付極薄銅箔の金属キャリア同士の接合を超音波溶接にて行うかわりに、シーム溶接にて行った以外は、実験例1と同様の手順にて、
図2に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
なお、樹脂で積層面を覆う前に、各キャリア付極薄銅箔に関して、それぞれの極薄銅箔と金属キャリアとの剥離強度を測定したところ、13gf/cmおよび10gf/cmであった。
【0098】
<実験例5>
実験例2の手順において、二つのキャリア付極薄銅箔の金属キャリア同士の接合を摩擦撹拌溶接にて行うかわりに、TIG溶接にて行った以外は、実験例2と同様の手順にて、
図2に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
なお、樹脂で積層面を覆う前に、各キャリア付極薄銅箔に関して、それぞれの極薄銅箔と金属キャリアとの剥離強度を測定したところ、5gf/cmおよび8gf/cmであった。
【0099】
<実験例6>
実験例3の手順において、金属キャリアの厚みを100μmとし、二つのキャリア付極薄銅箔の金属キャリア同士を接着剤にて接着するかわりに、かしめにて接合した以外は、実験例3と同様の手順にて、
図2に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
なお、樹脂で積層面を覆う前に、各キャリア付極薄銅箔に関して、それぞれの極薄銅箔と金属キャリアとの剥離強度を測定したところ、5gf/cmおよび8gf/cmであった。
【0100】
<実験例7>
実験例1の手順において、金属キャリアの厚みを70μmとし、二つのキャリア付極薄銅箔の金属キャリア同士の接合を超音波溶接にて行うかわりに、セルフピアッシングリベットにて接合した以外は、実験例1と同様の手順にて、
図2に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
なお、樹脂で積層面を覆う前に、各キャリア付極薄銅箔に関して、それぞれの極薄銅箔と金属キャリアとの剥離強度を測定したところ、13gf/cmおよび10gf/cmであった。
【0101】
<実験例8>
実験例2にて得られた積層体の両銅箔の表面に、アルミ板を接触させて、このアルミ板をマスクとして当該積層体の一方の側方向、すなわち積層方向に対して一方の横からの方向、およびそれに対向する方向から、エポキシ樹脂(粘度:2.0Pa・s)を塗布した。
なお、アルミ板は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、少なくとも一方の対向する一対の端辺を露出させながら極薄銅箔の表面を覆う形状を有するものを両極薄銅箔について用いた。また、樹脂の塗布はアルミ板が極薄銅箔の外側まで覆われた側の一つの側面および当該一つの側面に対向する面に対して行った。
すなわち、樹脂で覆われた側の対向する一対の端辺を含む方向について、
図6に示した断面構造を有する積層体が得られた。
【0102】
<実験例9>
実験例3にて得られた積層体の両銅箔の表面に、アルミ板を接触させて、このアルミ板をマスクとして当該積層体の一方の側方向、すなわち積層方向に対して一方の横からの方向、およびそれに対向する方向から、エポキシ樹脂(粘度:0.5Pa・s)を塗布した。
なお、アルミ板は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、少なくとも一方の対向する一対の端辺の外側まで覆う形状を有するものを両極薄銅箔について用いた。また、樹脂の塗布はアルミ板が極薄銅箔の外側まで覆われた側の一つの側面および当該一つの側面に対向する面に対して行った。
すなわち、樹脂で覆われた側の対向する一対の端辺を含む方向について、
図7に示した断面構造を有する積層体が得られた。
【0103】
<実験例10>
実験例4にて得られた積層体の両銅箔の表面に、アルミ板を接触させて、このアルミ板をマスクとして当該積層体の一方の側方向、すなわち積層方向に対して一方の横からの方向、およびそれに対向する方向から、エポキシ樹脂(粘度:300Pa・s)を塗布した。
なお、アルミ板は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、少なくとも一方の対向する一対の端辺を露出させながら極薄銅箔の表面を覆う形状を有するものを両極薄銅箔について用いた。また、樹脂の塗布はアルミ板が極薄銅箔の外側まで覆われた側の一つの側面および当該一つの側面に対向する面に対して行った。
すなわち、樹脂で覆われた側の対向する一対の端辺を含む方向について、
図6に示した断面構造を有する積層体が得られた。
【0104】
<実験例11>
実験例5にて得られた積層体の両銅箔の表面に、アルミ板を接触させて、このアルミ板をマスクとして当該積層体の全部の側方向、すなわち積層方向に対して横からの全方向から、エポキシ樹脂(粘度:1Pa・s)を塗布した。
なお、アルミ板は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、それぞれの対向する一対の端辺についての外側まで覆う形状を有するものを両極薄銅箔について用いた。
すなわち、それぞれの対向する一対の端辺を含む方向について、
図7に示した断面構造を有する積層体が得られた。
【0105】
<実験例12>
実験例6にて得られた積層体の両銅箔の表面に、アルミ板を接触させて、このアルミ板をマスクとして当該積層体の全部の側方向、すなわち積層方向に対して横からの全方向から、エポキシ樹脂(粘度:3000Pa・s)を塗布した。
なお、アルミ板は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、それぞれの対向する一対の端辺を露出させながら極薄銅箔の表面を覆う形状を有するものを両極薄銅箔について用いた。
すなわち、対向する一対の辺を含む方向の両方について、
図6に示した断面構造を有する積層体が得られた。
【0106】
<実験例13>
実験例7にて得られた積層体の両銅箔の表面に、アルミ板を接触させて、このアルミ板をマスクとして当該積層体の全部の側方向、すなわち積層方向に対して横からの全方向から、エポキシ樹脂(粘度:5Pa・s)を塗布した。
なお、アルミ板は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、それぞれの対向する一対の端辺についての外側まで覆う形状を有するものを両極薄銅箔について用いた。
すなわち、それぞれの対向する一対の端辺を含む方向について、
図7に示した断面構造を有する積層体が得られた。
【0107】
<実験例14>
実験例1にて得られた積層体の両銅箔の表面に、アルミ板を接触させて、このアルミ板をマスクとして当該積層体の一方の側方向、すなわち積層方向に対して一方の横からの方向、およびそれに対向する方向から、エポキシ樹脂(粘度:15Pa・s)を塗布した。
なお、アルミ板は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、一つの端辺の外側まで覆い、かつ、当該端辺と対向する端辺を露出させ、また当該両端辺と直交する第2の方向については中心を境に両端部に向かって1/4の長さずつ覆う形状を有するものを、両極薄銅箔について用いた。また、樹脂の塗布はアルミ板が極薄銅箔の外側まで覆われた側の側面および当該側面に対向する面に対して行った。
すなわち、極薄銅箔を平面視したときに、樹脂で覆われた側の、露出側端辺については樹脂が極薄銅箔の表面に回り込み(
図6を参照)、これに対向する端辺について極薄銅箔の表面までは樹脂が回り込まず金属キャリアとの積層面を覆う(
図7を参照)構造を有する積層体が得られた。
【0108】
<実験例15>
実験例1にて得られた積層体の両銅箔の表面にそれぞれ、銅箔よりも大きさの大きい板状プリプレグを接触させた。
なお、板状プリプレグは、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、極薄銅箔の全周を覆う形状のものを用いた。その後、ホットプレスにより加熱圧着を行い積層体に板状プリプレグを積層した。当該積層体は、金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体の全て樹脂で覆った構造(
図3、
図4)を有するものであった。
【0109】
<実験例16>
以下の手順により、
図10に示した構造の二つのキャリア付極薄銅箔を有する積層体を作製した。
一方のキャリア付極薄銅箔の金属キャリアと他方のキャリア付極薄銅箔の金属キャリアとの間に厚み100μmのアルミニウム板を設けて、極薄銅箔層の上から超音波溶接機にて、超音波周波数20kHz、出力300〜450W、振幅65μm、加圧力250〜400kgf/cm
2の条件で一方のキャリア付極薄銅箔と、アルミニウム板と、他方のキャリア付極薄銅箔を接合させて
図10に示した構造の積層体を得た以外は、実験例1と同様の手順にて行った。なお、クロメート処理後に積層した極薄銅層厚みは3μmであった。
【0110】
<実験例17>
実験例1にて得られた積層体の両銅箔の表面にそれぞれ、銅箔よりも大きさの大きい板状プリプレグを接触させた。そして、前記銅箔と接触している面とは反対側の板状プリプレグの表面にそれぞれ、板状プリプレグよりも大きさの大きい別の銅箔を接触させた。
なお、板状プリプレグは、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、極薄銅箔の全周を覆う形状のものを用いた。また、別の銅箔は、当該積層体を極薄銅箔について平面視したときに、板状プリプレグの全周を覆う形状のものを用いた。その後、ホットプレスにより加熱圧着を行い積層体に板状プリプレグ、別の銅箔を積層した。当該積層体は、金属キャリアの表面に剥離可能に金属箔を接触させてなるキャリア付金属箔の二つを、前記金属キャリア同士を積層させて得られる積層体の全て樹脂で覆った構造を有しかつ、板状プリプレグの積層体と接触している面とは反対側の面に別の金属箔を有するものであった。
<実験例18>
厚み100μmのアルミニウム板の代わりに、厚み50μmの黄銅板(JIS H3100 合金番号C2680)を用い、一方のキャリア付極薄銅箔の金属キャリアと他方のキャリア付極薄銅箔の金属キャリアとの間に厚み50μmの黄銅板を設けて、各金属キャリアと黄銅板をエポキシ樹脂(粘度:50Pa・s)で接着した以外は、実験例16と同様に積層体を製造した。
【0111】
このようにして作製した積層体の両側に、表面に金属層(銅箔)が露出している側にはFR−4プリプレグ(南亜プラスティック社製)、銅箔(JX日鉱日石金属(株)製、JTC12μm(製品名))を順に重ね、表面に樹脂が露出している側には、銅箔(JX日鉱日石金属(株)製、JTC12μm(製品名))、FR−4プリプレグ(南亜プラスティック社製)、銅箔(JX日鉱日石金属(株)製、JTC12μm(製品名))を順に重ね、3MPaの圧力で170℃・100分間ホットプレスを行い、4層または6層銅張積層板を作製した。
【0112】
次に、前記4層または6層銅張積層板表面の銅箔とその下の絶縁層(硬化したプリプレグ)を貫通する直径100μmの孔をレーザー加工機を用いて空けた。続いて、前記孔の底部に露出した内層に存在する銅箔表面と、前記孔の側面、前記4層〜6層銅張積層板表面の銅箔上に無電解銅めっき、電気銅めっきにより銅めっきを行い、内層に存在する銅箔と、4〜6層銅張積層板表面の銅箔との間に電気的接続を形成した。次に、4〜6層銅張積層板表面の銅箔の一部を塩化第二鉄系のエッチング液を用いてエッチングし、回路を形成した。このようにして、4〜6層ビルドアップ基板を作製することができる。
【0113】
続いて、前記4または6層ビルドアップ基板を、前記金属層上の位置で切断した後、前記積層体を構成する金属層と金属層を剥離して分離することにより、2組の2または3層ビルドアップ配線板を得た。
【0114】
続いて、前記の2組の2または3層ビルドアップ配線板上の、金属層(銅箔)と接触していた金属層である銅箔をエッチングし配線を形成して、2組の2または3層ビルドアップ配線板を得た。
このように、通常、ビルドアップ基板の製造に際して、例えばスルーホールを設ける場合に、薄い極薄銅箔のところでしわやバリの発生が見られることが多く、これが品質不良となり得るが、極薄銅箔が金属キャリアにより支持されるため、積層加工時にしわやバリなどの発生を抑えることができる。