特許第6184800号(P6184800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184800
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】船舶係留装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/20 20060101AFI20170814BHJP
   B63B 21/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   E02B3/20 A
   B63B21/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-169331(P2013-169331)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-38274(P2015-38274A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091591
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 秀人
(72)【発明者】
【氏名】門乢 宏文
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭59−35616(JP,Y2)
【文献】 実公昭59−35614(JP,Y2)
【文献】 特公昭59−43603(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00〜 3/28
B63B 1/00〜 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接岸した船舶と係船柱とを係留ロープによって連結する船舶係留装置において、
前記係留ロープを結索する前記係船柱の基部を挿抜自在に収容する保持穴を、岸壁に形成し、
前記保持穴に連続した収容穴を形成し、
前記収容穴に延長材を収容させ、
前記延長材の先端部を前記係船柱の基部に固定すると共に、該延長材の基端部を任意の部分に固定し、
前記延長材の長さであって、岸壁から伸長する部分の長さを、異常高さまで上昇した海面と岸壁との距離よりも大きくしてあることを特徴とする船舶係留装置。
【請求項2】
前記保持穴に前記係船柱の基部を保持する保持手段を設け、
前記保持穴に海水が浸入した場合に、該保持手段を解除して係船柱を自由とすることを特徴とする請求項1に記載の船舶係留装置。
【請求項3】
前記保持手段は、
前記係船柱の基部を収容するハウジングであって、該ハウジングの内壁に形成したフランジ部の上部側に前記基部を収容させ、
係船柱の基部を有底の円筒形で形成し、該円筒形の側壁に形成した透孔に遊挿したせん断キーを備え、
前記ハウジングの内壁面に前記せん断キーの先端部が挿抜自在に遊挿される係止溝を形成し、
前記せん断キーの背面が臨む領域を占退し、該せん断キーが係止溝から離脱することを占位時には防止し、退避時には許容するストッパーを備え、
前記フランジ部よりも下部側の浮体室に浮体を収容させ、
前記保持穴に海水が浸入した場合に、前記浮体が浮力を受けて上昇することにより、前記ストッパーを押動してせん断キーの背面から退避させて、該せん断キーの先端部が前記係止溝から抜去されるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の船舶係留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岸壁に船舶を係留する係留装置に係り、特に、大津波の発生等によって海面が異常に上昇した場合であっても、船舶の不測の漂流を防止する船舶係留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
着岸のために入港した船舶は、岸壁や桟橋に突設されている係船柱にロープやワイヤロープ等の係留ロープを括りつけることで停船して離岸が阻止される。一般に、岸壁等の接岸施設は、干満に応じた海面の昇降による水位の変化によっても、船舶の乗客を乗降や貨物の荷役に支障を生じない高さに設計されている。また、大潮と台風が重なった場合等で岸壁に大波が被さる場合であっても、前記係船柱に係留ロープによって係留されている船舶の停泊には支障を生じない。なお、接岸施設には防舷材が取り付けられて、船舶と接岸施設とが損傷しないようにしてある。
【0003】
ところで、近年には大地震の発生に伴われて予想をはるかに上回る大津波が発生し、多大な被害が生じたことは記憶に新しい。このような大津波等によって海面が異常に上昇した場合には、係船柱に係留ロープによって係留されている船舶は、海面の上昇に伴われて上昇する。予想以上に海面が上昇する場合には、船舶が転覆するおそれが生じる。
【0004】
図6図7は、岸壁Gに設けられた係船柱1に船舶Sが係留ロープ2によって停船している状態を示している。図6は平常時であり、潮の干満による海面Lの昇降に応じて船舶Sも昇降するが、岸壁Gの高さは船舶Sとの間の乗降や荷役に支障が生じることがないものとされている。これに対して、暴風雨や大津波により予想を超えた高さまで海面Lが上昇して、岸壁Gの高さをはるかに超えた場合には、図7に示すように、船舶Sは海面Lの上昇によって岸壁Gの高さを超えて上昇する。前記係留ロープ2は、船舶Sが接岸している状態を維持できる程度の余裕を持った長さとされているから、海面Lが異常に上昇した場合には、係船柱1と海面Lとの間の距離が係留ロープ2の長さよりも大きくなってしまうおそれがある。このような場合には、図7に示すように、船舶Sが係留ロープ2によって拘束されて、該係留ロープ2が掛止されている舷側が引き込まれて転覆してしまうおそれがある。また、緊張した係留ロープ2が破断してしまう場合があり、船舶Sが津波に運ばれて漂流したり、陸地に運ばれて座礁したりしてしまうおそれがある。
【0005】
ところで、特許文献1には、津波が襲来した際に、係留索が破断したり、船体が漂流したり、他の物体に損害を与えることがない係留システムとして、船体と係船岸の間を、緩衝材を介在させた緩衝索で連結し、船体とマーカーブイの間を、係留索で連結し、マーカーブイ4海底のチェーンの間を緩衝材を介在させた緩衝索とで連結し、チェーンの他端はブロックに連結した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−131332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された係留システムでは、船体と係船岸との間が緩衝材を介在させた緩衝索で連結されている構成であるから、上昇した海面と係船岸との距離がこの緩衝索の長さよりも大きくなってしまうと、船体が緩衝索に拘束されて転覆してしまうおそれがある。なお、緩衝索の緩衝材に伸縮性が備えられているが、係留された船体が係船岸から離脱しない程度の伸縮性であるから、海面の異常上昇の際には、伸長した状態であっても船体が拘束されることとは避けられない。
【0008】
そこで、この発明は、予想以上の高い大津波が襲来して、海面の上昇に伴われて船舶が上昇した場合でも、牽引ロープで接岸施設に連結された状態が維持されると共に、船舶を転覆させることのない船舶係留装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る船舶係留装置は、接岸した船舶と係船柱とを係留ロープによって連結する船舶係留装置において、前記係留ロープを結索する前記係船柱の基部を挿抜自在に収容する保持穴を、岸壁に形成し、前記保持穴に連続した収容穴を形成し、前記収容穴に延長材を収容させ、前記延長材の先端部を前記係船柱の基部に固定すると共に、該延長材の基端部を任意の部分に固定し、前記延長材の長さであって、岸壁から伸長する部分の長さを、異常高さまで上昇した海面と岸壁との距離よりも大きくしてあることを特徴としている。
【0010】
大津波等の襲来によって生じる海面の異常上昇に伴われて船舶が上昇した場合、海面と岸壁との距離が係留ロープの長さよりも大きくなると、前記係船柱が前記保持穴から引き抜かれる。このため、船舶は上昇によっても転覆することがない。なお、前記延長材の長さは、海面の異常上昇時にも船舶の上昇を十分に許容する長さとする。
【0011】
また、請求項2の発明に係る船舶係留装置は、前記保持穴に前記係船柱の基部を保持する保持手段を設け、前記保持穴に海水が浸入した場合に、該保持手段を解除して係船柱を自由とすることを特徴としている。
【0012】
係船柱は前記保持穴に収容されており、海面の異常上昇時には容易に引き抜かれる必要があるから、該保持穴に強固に係合させることは不都合であるので、遊挿されている。このため、通常時の波浪による船舶の岸壁に対する進退によって保持穴に対してぐらついたり、場合によっては衝撃を受けて引き抜かれてしまうおそれがある。そこで、平常時には容易にぐらついたり引き抜かれたりしないように前記保持手段を設けたものである。そして、海水が上昇して前記保持穴から前記収容穴に浸入すると、前記保持手段が解除されて係船柱の拘束が解かれる。これにより、係船船中が保持穴から引き抜かれることが可能となって、海面の上昇に伴う船舶の上昇によって延長材が引き出される。
【0013】
なお、例えば、該収容穴に岸壁の側面に開口している横穴を穿設して、浸入した海水が排出されるようにして、平常時に前記収容穴と保持穴とに海水が滞留しないようにしておく。
【0014】
また、請求項3の発明に係る船舶係留装置は、前記保持手段を、前記係船柱の基部を収容するハウジングであって、該ハウジングの内壁に形成したフランジ部の上部側に前記基部を収容させ、係船柱の基部を有底の円筒形で形成し、該円筒形の側壁に形成した透孔に遊挿したせん断キーを備え、前記ハウジングの内壁面に前記せん断キーの先端部が挿抜自在に遊挿される係止溝を形成し、前記せん断キーの背面が臨む領域を占退し、該せん断キーが係止溝から離脱することを占位時には防止し、退避時には許容するストッパーを備え、前記フランジ部よりも下部側の浮体室に浮体を収容させ、前記保持穴に海水が浸入した場合に、前記浮体が浮力を受けて上昇することにより、前記ストッパーを押動してせん断キーの背面から退避させて、該せん断キーの先端部が前記係止溝から抜去されるように構成したことを特徴としている。
【0015】
すなわち、前記保持手段を、海水が浸入したことにより浮力を受けた浮体の浮上によって解除させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る船舶係留装置によれば、海面が上昇して岸壁から海面までの距離が係留ロープの長さよりも大きくなった場合であっても、前記延長材が伸長することにより船舶が傾いたり、転覆したりすることがない。しかも、延長材によって規制されるから、船舶が漂流することが防止される。また、平常時には係船柱は所定の位置に設置された状態であるので、船舶を係留させることができる。
【0017】
また、請求項2の発明に係る船舶係留装置によれば、海面が岸壁を越えた場合に前記保持手段が解除されるので、平常時に不用意に係船柱が保持穴から抜け出てしまうことを防止でき、係船柱の機能が十分に果たされる。
【0018】
また、請求項3の発明に係る船舶係留装置によれば、海面の異常上昇により前記保持穴が浸水したことによる海水の浮力を受けて前記浮体を浮上させるから、確実に保持手段を解除でき、係船柱を確実に解放できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明に係る係留装置によって船舶が接岸施設に係留された状態を示す概略図である。
図2図1に示す状態で、大津波等の襲来によって海面が異常水位となった状態を示す概略図である。
図3】係船柱の保持手段の第1の実施形態を示す図であり、係船柱が保持された状態から解放される状態までを示している。
図4】係船柱の保持手段の第2の実施形態を示す図であり、係船柱が保持された状態から解放される状態までを示している。
図5】係船柱の保持手段の第3の実施形態を示す図であり、係船柱が保持された状態から解放される状態までを示している。
図6】従来の係留装置によって船舶が接岸施設に係留された状態を示す概略図で、図1に相当している。
図7図6に示す状態で、大津波等の襲来によって海面が異常水位となった状態を示す概略図で、図2に相当している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図示した好ましい実施形態に基づいて、この発明に係る船舶係留装置を具体的に説明する。
【0021】
図1は船舶Sが接岸施設である岸壁Gに係船柱1に係留ロープ2で係留されている状態を示しており、平常時には、干満や波浪によっても、海面Lは岸壁Gの上面よりも低い位置で昇降して、船舶Sに対する乗降や荷役が安定して行われている。前記係船柱1の基部1aは、岸壁Gの上面に形成された保持穴3に挿抜自在に収容されている。この保持穴3の下部には該保持穴3よりも小径の収容穴4を連続させてある。
【0022】
前記基部1aには延長材5の先端部が固定されており、この延長材5が前記収容穴4に収容されている。この延長材5は、例えばリンクチェーンで形成される等、容易に破断しないものとしてある。また、この延長材5は、岸壁Gから伸長する部分の長さを、大津波等の襲来によって異常にの上昇した海面Lと岸壁Gとの間の距離よりも大きくしてある。例えば、地震に伴って発生した大津波の高さが予想される以上の規模であり、その際に上昇する海面Lの高さを考慮してある。また、延長材5の基端部は、後述する作用を果たすのに適宜な位置に固定されている。
【0023】
以上により構成された船舶係留装置では、平常時には、図1に示すように、通常の係船柱1として機能して、船舶Sを係留ロープ2を介して係留して、乗降や荷役の支障が生じないようにしてある。この状態で、大津波が襲来して海面Lが異常に上昇し、船舶Sが海面Lの上昇に伴われて岸壁Gの上方にまで上昇すると、前記係留ロープ2が緊張する。
【0024】
さらに、海面Lが上昇して船舶Sが上昇すると、係船柱1の基部1aが船舶Sの上昇によって保持穴3から引き抜かれる。また、この係船柱1に伴われて、延長材5も収容穴4から引き抜かれる。この延長材5の岸壁Gから伸長した部分の長さは、異常上昇した海面Lと岸壁Gとの距離よりも大きくしてあるから、船舶Sの上昇を許容し、船舶Sの転覆が防止される。しかも、延長材5の基端部は適宜な部位に固定されているから、船舶Sは漂流してしまうことが阻止される。
【0025】
図3図5には前記係船柱1を保持する保持手段の第1実施形態〜第3実施形態を示している。前述したように、係船柱1は保持穴3に挿入してあるが、挿抜自在とされているだけである場合には、船舶Sが波浪によって浮遊することで係留ロープ2を緊張させ、係船柱1に不測の方向の外力が作用し、保持穴3の内壁に衝突したり、引き抜かれそうになったりして、保持穴3を破損してしまうおそれがある。このため、平常時に、係船柱1に不測の外力が加えられた場合でも該保持穴3を破損することがないようにし、海面Lが異常上昇した場合にのみ、係船柱1が容易に保持穴3から抜去される構造とすることが好ましい。そのため、係船柱1の保持手段を設けて、係船柱1を保持穴3に対して着脱自在とする手段を採用するものである。
【0026】
図3に示す実施形態に係る係船柱1の保持手段10は、一対の鉤部材11とこの鉤部材11を開放する浮体12とから構成されており、係船柱1の基部1aと共に保持穴3に収容されている。前記鉤部材11はほぼL字形に形成されており、L字の一方の腕部の先端部には、内側を指向させて突出させた鉤部11aが形成され、前記係船柱1の基部1aにはこの鉤部11aと係合する段部1bが形成されている。前記L字形の屈曲部は、例えば保持穴3の内壁に取り付けられた軸11bを中心として揺動自在に支持されており、該L字形の他方の腕部は入力部11cとされて、係船柱1の基部1aの下方に伸長している。なお、この入力部11cと基部1aの中央部との間には後述する動作を行わせるのに適宜な間隙Hが形成され、入力部11cの基部が係船柱1の基部1aの底面に当接されている。
【0027】
前記入力部11cの下方には、前記浮体12が配されている。この浮体12は、下部に浮子部12aが形成され、この浮子部12aから上方に伸長させた支柱部の先端に押動板12bが具備されている。前記前記浮子部12aが浮力を受けることで、浮体12を浮上させるようにしてある。
【0028】
この第1実施形態に係る保持手段10は、海面Lの上昇によって保持穴3に海水が浸入すると、同図(b)に示すように、前記浮体2が浮力を受けて上昇する。浮体2が上昇すると、前記押動板12bの上昇によって前記入力部11cが押し上げられる。このため、一対の鉤部材11が前記軸11bを中心として前記鉤部11aを開放する方向に揺動し、同図(c)に示すように、係船柱1の基部1aの拘束を解除する。このため、同図(d)に示すように、係船柱1は海面Lの上昇による船舶Sの上昇により、保持穴3から引き出されることになる。
【0029】
なお、平常時の海水が前記保持穴3および収容穴4に浸入して滞留してしまうと、前記浮体2が浮力を受けることになるから、例えば、岸壁Gの側面に形成した開口から横穴を形成して前記収容穴4に連通させて、海水の滞留を防止することが望ましい。
【0030】
次に、図4に示す第2実施形態に係る保持手段20を説明する。この実施形態では、係船柱21は保持穴3に収容されるハウジング22に保持されている。係船柱21の基部21aは底部を有する円筒形に形成されており、該基部21aの中間部に形成された透孔にせん断キー23が遊挿されている。一方、このせん断キー23の先端部は、図4(c)と(d)に示すように、前記ハウジング22に形成された係止溝22aに挿抜自在に遊挿されている。ハウジング22の中間部の内壁面には、内側に指向したフランジ部22bが形成されており、前記基部21aがこのフランジ部22bに載置されている。前記基部21aにはストッパー24が円筒形の軸方向に移動自在に収容さており、該基部21aの底部に下降した位置で、前記せん断キー23の背面が臨む領域を占位して、該せん断キー23を前記係止溝22aに遊挿された状態に維持している。なお、このストッパー24がせん断キー23の背面から退避した位置となった場合には、例えば、せん断キー23にバネ手段等の復元力を、該せん断キー23がストッパー24の位置まで退避する方向に移動するよう付勢して、せん断キー23が前記係止溝22aから退避するようにしてある。また、基部21aの底板の中央部には、透孔21bが形成されている。
【0031】
前記フランジ部22bの下部は浮体室22cとされており、この浮体室22cに浮体25が収容されている。この浮体25は浮子部25aと、該浮子部25aの上部の中央部には押動ロッド25bが植設されており、この押動ロッド25bの先端部が、前記透孔21bに遊挿されて、前記ストッパー24に当接させてある。また、前記ハウジング22の浮体室22cには適宜な位置に透孔22dが形成されて、浮体室22cの内外部がこの透孔22dを介して連通されている。
【0032】
この第2実施形態に係る保持手段20の場合には、海面Lの上昇によって海水が保持穴3と収容穴4とに浸入すると、図4(b)に示すように、前記浮体室22cに収容されている浮体25が浮力を受けて上昇し、前記押動ロッド25bが前記ストッパー24を押し上げる。このため、該ストッパー24は、同図(c)に示すように、せん断キー23の背面が臨む領域から上方に退避し、該せん断キー23が自由となる。このため、該せん断キー23が前記ハウジング22に形成された係止溝22aから抜去され、該ハウジング22と係船柱21との連係が解除される。このため、該係船柱21が自由となり、海面Lの上昇に伴われた船舶Sの上昇より前記係留ロープ2が緊張して係船柱21が上昇して、船舶Sの転覆が防止される。
【0033】
次に、図5に示す第3の実施形態に係る保持手段30を説明する。この保持手段30は、第2実施形態に係る保持手段20を改良した構成としたものである。なお、図4に示す実施形態と同一の部位には、同一の符号を付してある。
【0034】
前記せん断キー31の背面に当接させたストッパー32は中央部でストッパー部材32a、32bに分割されており、それぞれのストッパー部材32a、32bの上端部は、ヒンジ32cによってせん断キー31に対して揺動自在に連結されている。前記浮体25の前記押動ロッド25bの先端は、前記ストッパー部材32a、32bの双方に当接させてある。
【0035】
この図5に示す第3実施形態では、前記浮体25が上昇すると、前記ストッパー部材34a、35bの双方を押し上げる。これらストッパー部材32a、32bは前記ヒンジ32cを軸としてそれぞれ揺動し、図5(b)に示すように、観音開きの状態で開放されながら、せん断キー31の背面から退避し、該せん断キー31を中央部に移動させる。これにより、該せん断キー31が、図5(c)に示すように、前記係止溝22aから抜去されて、ハウジング22と係船柱21との連係が解除される。このため、該係船柱21が自由となり、海面Lの上昇に伴われた船舶Sの上昇より前記係留ロープ2が緊張して係船柱21が上昇して、船舶Sの転覆が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明に係る船舶係留装置によれば、大津波の襲来等による海面の異常上昇時であっても、船舶が漂流してしまうことを防止でき、船舶が陸地に漂流して不測の損害の発生防止に寄与する。
【符号の説明】
【0037】
G 岸壁
S 船舶
L 海面
1 係船柱
1a 基部
1b 段部
2 係留ロープ
3 保持穴
4 収容穴
5 延長材
10 保持手段
11 鉤部材
12 浮体
20 保持手段
21 係船柱
21a 基部
21b 透孔
22 ハウジング
22a 係止溝
22b フランジ部
22c 浮体室
22d 透孔
23 せん断キー
24 ストッパー
25 浮体
30 保持手段
31 せん断キー
32 ストッパー
32a、32b ストッパー部材
32c ヒンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7