(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高分子ジオールがポリ(エチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(ノナメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレン−co−ノナメチレンアジペート)およびポリ(3−メチル−1,5−ペンタメチレンアジペート)からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
有機ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
鎖伸長剤が1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項5または6に記載の方法。
高分子ジオールの質量と有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の合計質量との質量比([高分子ジオールの質量]/[有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の合計質量])が10/90〜50/50である、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリに代表される大規模集積回路(LSI)は、集積化や微細化が年々進行し、それに伴いその製造技術はより高度の高密度化に対応する必要が生じ、その製造工程も複雑化している。半導体デバイスの積層数についても増加してきており、従来では問題とならなかった半導体デバイス製造時における絶縁膜や導電体膜等のウエハ表面の凹凸が、半導体デバイスの多層化により、断線や抵抗値のバラツキを引き起こす一因となっている。そのため、ウエハ表面の一層の平坦化が求められている。
【0003】
また、LSIを製造する際に、ウエハ表面にマスクのパターンを形成する技術としてリソグラフィ(投光露光)が行われているが、半導体集積回路の微細化に伴い、露光波長が短くなり露光の焦点深度が非常に浅くなっている。ウエハ表面に凹凸が存在するとマスクのパターンの解像度が低下してしまうため、この点からもウエハ表面の一層の平坦化が求められている。
【0004】
ウエハ表面の平坦化は、通常、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)を利用した研磨装置によって行われる。ウエハ表面を研磨しながら研磨の終点を決定するための技術としては、レーザー干渉計を利用した方法(例えば、特許文献1参照)や、特定の波長の光に対して透明な部分(透過窓)を有する研磨パッドを使用した方法(特許文献2および3参照)が提案されている。特許文献2には、透過プラグ(透過窓)を液体状態の不透過樹脂に埋め込んだのち不透過樹脂を硬化させ、さらにスライスして透過プラグ(透過窓)を有するパッドを製造する方法が例示されている。また特許文献3には、実質的に透明なプラグ(透過窓)が配置された研磨パッドが記載されている。
【0005】
しかし、特許文献2および3に記載された研磨パッドは、(1)透過窓を研磨パッドに埋め込む必要があるため、その製造が煩雑である、(2)透過窓とその周辺部との間に隙間が生じると、研磨の際に使用される研磨スラリーが漏れる原因となる、(3)透過窓を構成する材料とそれ以外の部分を構成する材料とが異なるため、研磨中にこれらが異なる速度で摩耗することにより、透過窓周辺にクラックや裂け目が発生する、という問題が生じる。
【0006】
上述の問題を解決するため、研磨表面部分と透過窓が同一の樹脂からなる研磨パッドが提案されている(特許文献4参照)。特許文献4には、ポリマー材料が透明である領域(透過窓)と、ポリマー材料が不透明である隣接した領域とを有する該成形品を含む研磨パッドが記載されている。この特許文献4では、半結晶質の熱可塑性ポリマーを用いて融解温度からガラス転移温度に冷却する際に、一部分について急速な冷却処理をすることにより、その一部分を非晶質として透明性を付与する方法、あるいはポリマー性ジオールおよびポリマー性ジアミンの混合物とジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートとから形成される反応性熱硬化性ポリマーから研磨パッドを製造する際に、透過窓を形成する部分の反応温度を他の部分と異なる温度とすることによりその部分に透明性を付与する方法が記載されている。
【0007】
しかし、特許文献4に記載された研磨パッドは、(1)透過窓となる部分における製造時の温度制御が煩雑である、(2)透過窓とそれ以外の部分が同一の樹脂であっても、温度制御により透過窓に透明性を付与させた場合には、透過窓を構成する樹脂とそれ以外の部分を構成する樹脂との間の物性の違いにより、研磨時にスクラッチが発生する等の悪影響が懸念される、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかして、本発明の目的は、研磨中における被研磨物の検査や研磨終点の測定を光学的手段により行うことができる研磨パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記の目的は、
[1] 熱可塑性ポリウレタンのイソシアネート基由来の窒素原子の含有率が4.8〜6.0質量%である熱可塑性ポリウレタン組成物からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
研磨層が検出部分および他の部分を有し、
検出部分の厚さが0.2〜1.0mmであり、
他の部分の厚さが1.1〜2.5mmである
研磨パッド;
[2] 下記測定条件での熱可塑性ポリウレタン組成物のレーザー透過率が20〜60%である、前記[1]の研磨パッド
試験片:熱可塑性ポリウレタン組成物からなるシート
試験片の厚さ:0.5mm
レーザーの波長:660nm
レーザーの出力:310μW
検出ヘッドと出力ヘッドとの距離:10cm
試験片の測定位置:検出ヘッドと出力ヘッドとの中間;
[3] 検出部分の面積が100〜2,000mm
2である、前記[1]または[2]の研磨パッド;
[4] 検出部分の平面形状が短辺10〜25mmおよび長辺10〜80mmの長方形である、前記[1]〜[3]のいずれかの研磨パッド;
[5] 熱可塑性ポリウレタンが高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させることによって得られるものである、前記[1]〜[4]のいずれかの研磨パッド;
[6] 高分子ジオールの数平均分子量が1,400〜3,600である、前記[5]の研磨パッド;
[7] 高分子ジオールがポリエステルジオールおよび/またはポリエーテルジオールを含有する、前記[5]または[6]の研磨パッド;
[8] 高分子ジオールが炭素数6〜12のジオールに由来する構造単位を有するポリエステルジオールを含有する、前記[5]または[6]の研磨パッド;
[9] 高分子ジオールがポリ(エチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(ノナメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレン−co−ノナメチレンアジペート)およびポリ(3−メチル−1,5−ペンタメチレンアジペート)からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
有機ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
鎖伸長剤が1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つである、前記[5]または[6]の研磨パッド;
[10] 高分子ジオールの質量と有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の合計質量との質量比([高分子ジオールの質量]/[有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の合計質量])が10/90〜50/50である、前記[5]〜[9]のいずれかの研磨パッド;
[11] 研磨層の研磨面とは反対側の面に弾性層が積層されている、前記[1]〜[10]のいずれかの研磨パッド;
[12] 研磨層の検出部分の上に位置する弾性層の部分が空隙であるか、または該空隙に透明部材がはめ込まれている、前記[11]の研磨パッド;および
[13] 前記[1]〜[12]のいずれかの研磨パッドを用いる研磨方法;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、研磨中における被研磨物の検査や研磨終点の測定を光学的手段により行うことができる研磨パッド、および該研磨パッドを用いる研磨方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の研磨パッドは、熱可塑性ポリウレタンのイソシアネート基由来の窒素原子の含有率が4.8〜6.0質量%である熱可塑性ポリウレタン組成物からなる研磨層を有する研磨パッドであって、研磨層が検出部分および他の部分を有し、検出部分の厚さが0.2〜1.0mmであり、他の部分の厚さが1.1〜2.5mmであることを特徴とする。
【0013】
熱可塑性ポリウレタン組成物は、熱可塑性ポリウレタンのみからなるものであってもよく(即ち、熱可塑性ポリウレタン組成物=熱可塑性ポリウレタン)、熱可塑性ポリウレタンと他の成分との混合物であってもよい。熱可塑性ポリウレタンとしては、光の透過性の観点から、高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させることによって得られるものが好ましい。また、該熱可塑性ポリウレタンが実質的に発泡構造を有さないことがより好ましい。
【0014】
高分子ジオールとしては、例えばポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。中でもポリエーテルジオールおよびポリエステルジオールが好ましい。
【0015】
ポリエーテルジオールとしては、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などが挙げられる。中でもポリ(エチレングリコール)およびポリ(テトラメチレングリコール)が好ましい。
【0016】
ポリエステルジオールは、例えば、常法に従い、ジカルボン酸またはそのエステル、無水物等のエステル形成性誘導体と、低分子ジオールとを直接エステル化反応またはエステル交換反応させることにより得られる。
【0017】
ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)およびこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)等の炭素数2〜48(好ましくは炭素数2〜12)の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。
【0018】
低分子ジオールとは炭素数が12以下のジオールをいう。低分子ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオールなどが挙げられる。これらの低分子ジオールは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。低分子ジオールの炭素数は6〜12であることが好ましく、8〜10であることがより好ましく、9であることがさらに好ましい。即ち、ポリエステルジオールとしては、炭素数6〜12のジオールに由来する構造単位を有するものが好ましく、炭素数8〜10のジオールに由来する構造単位を有するものがより好ましく、炭素数9のジオールに由来する構造単位を有するものがさらに好ましい。
【0019】
ポリエステルジオールは、ポリ(ノナメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレン−co−ノナメチレンアジペート)およびポリ(3−メチル−1,5−ペンタメチレンアジペート)が好ましい。
【0020】
ポリカーボネートジオールは、低分子ジオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応により好適に得られる。ポリカーボネートジオールを構成する低分子ジオールとしては、先に例示した低分子ジオールが挙げられる。ジアルキルカーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。アルキレンカーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとしては、例えばジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0021】
高分子ジオールは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。高分子ジオールの数平均分子量は1,400〜3,600であることが好ましく、1,700〜3,400であることがより好ましく、2,000〜3,200であることがさらに好ましい。高分子ジオールの数平均分子量が高すぎる場合は、得られる研磨層の透明性が低下し、高分子ジオールの数平均分子量が低すぎる場合は、得られる研磨層の硬度が高くなりすぎ、スクラッチが発生しやすくなる傾向がある。なお、本明細書でいう高分子ジオールの数平均分子量はJIS K1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量を意味する。
【0022】
有機ジイソシアネートとしては、通常のポリウレタンの製造に従来から使用されるものを使用できる。有機ジイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等の脂肪族または脂環式ジイソシアネート;2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらの有機ジイソシアネートは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、得られる研磨パッドの耐摩耗性などの点から4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが好ましく、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0023】
鎖伸長剤としては、通常のポリウレタンの製造に従来から使用されるものを使用できる。鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を使用することが好ましく、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、1,9−ノナンジオール、m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール等のジオール類;エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、ヒドラジン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン等の1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(nは3〜10の整数)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等のジアミン類などが挙げられる。これらの鎖伸長剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
【0024】
熱可塑性ポリウレタンとしては、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングルコール)、ポリ(ノナメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレンアジペート)、ポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレン−co−ノナメチレンアジペート)およびポリ(3−メチル−1,5−ペンタメチレンアジペート)からなる群より選ばれる少なくとも一つの高分子ジオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一つの有機ジイソシアネートと、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも一つの鎖伸長剤とを反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0025】
熱可塑性ポリウレタンにおけるイソシアネート基由来の窒素原子の含有率は4.8〜6.0質量%であり、4.9〜5.8質量%の範囲内であることが好ましく、5.0〜5.8質量%がより好ましい。該含有率が4.8質量%未満の場合には、熱可塑性ポリウレタン組成物からなる研磨層が柔らかくなりすぎ、被研磨面の平坦性や研磨効率が低下する傾向がある。一方、該含有率が6.0質量%を超える場合には、得られる研磨パッドが硬くなりすぎて、被研磨物にスクラッチが発生しやすくなる傾向があり、また、研磨層のレーザー透過率が低下し、光学的手段による研磨終点の測定等を行うことが困難になる。
【0026】
熱可塑性ポリウレタンは、上記の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を所定の比率で溶融混練して製造できる。各成分の使用比率は、耐摩耗性等、熱可塑性ポリウレタン組成物からなる研磨層に付与すべき物性などを考慮して適宜決定される。この点、高分子ジオールおよび鎖伸長剤に含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.95〜1.3モルとなる割合で各成分を使用することが好ましい。該割合が0.95モル未満であると、熱可塑性ポリウレタン組成物からなる研磨層の機械的強度および耐摩耗性が低下する傾向があり、1.3モルを超えると熱可塑性ポリウレタンの生産性や保存安定性が低下する傾向がある。研磨層の機械的強度や耐摩耗性および熱可塑性ポリウレタンの生産性や保存安定性の観点から、高分子ジオールおよび鎖伸長剤に含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.96〜1.1モルとなる割合で各成分を使用することがより好ましく、0.97〜1.05モルとなる割合で各成分を使用することがさらに好ましい。
【0027】
また、高分子ジオールの質量と有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の合計質量との質量比([高分子ジオールの質量]/[有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の合計質量])が10/90〜50/50となるように各成分を使用することが好ましい。該質量比が10/90未満であると、得られる研磨パッドが硬くなり過ぎ、研磨後のウエハ表面にスクラッチが発生し易い傾向があり、50/50を超えると得られる研磨パッドが柔らかくなり過ぎ、平坦化性能が低下する傾向がある。スクラッチ抑制と平坦化性能両立の観点から、該質量比は13/87〜45/55であることがより好ましく、16/84〜40/60であることがさらに好ましい。
【0028】
数平均分子量が1,400〜3,600の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させることによって得られ、且つイソシアネート基由来の窒素原子の含有率が4.8〜6.0質量%である熱可塑性ポリウレタンが、高い透明性を有するため好ましい。加えて、該熱可塑性ポリウレタンが実質的に発泡構造を有さないことがより好ましい。
【0029】
熱可塑性ポリウレタンは上記の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を原料として使用し、プレポリマー法やワンショット法などの公知の方法により製造できる。熱可塑性ポリウレタンは実質的に溶媒の不存在下に溶融重合する方法によって製造することが好ましく、多軸スクリュー型押出し機を用いて連続溶融重合する方法がより好ましい。
【0030】
熱可塑性ポリウレタン組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、上記熱可塑性ポリウレタン以外の他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば架橋剤、無機充填剤、有機フィラーなどの充填剤;架橋促進剤、架橋助剤、軟化剤、粘着付与剤、老化防止剤、発泡剤、加工助剤、密着性付与剤、結晶核剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、ブルーミング防止剤、離型剤、増粘剤、酸化防止剤などが挙げられる。熱可塑性ポリウレタン組成物における他の成分の含有量は50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。熱可塑性ポリウレタン組成物が熱可塑性ポリウレタンからなること、即ち、研磨層が熱可塑性ポリウレタンからなることが特に好ましい。
【0031】
熱可塑性ポリウレタン組成物のレーザー透過率は20〜60%であることが好ましく、25〜60%であることがより好ましく、30〜60%であることがさらに好ましい。該レーザー透過率が低すぎると光学的手段による研磨終点の測定等を行うことが困難になることがある。逆に該レーザー透過率が60%より高い場合には、薄肉部分である検出部分を研磨層に形成しなくとも、研磨終点の測定等を行うことができる。なお、該レーザー透過率の測定条件は以下の通りである。
試験片:熱可塑性ポリウレタン組成物からなるシート
試験片の厚さ:0.5mm
レーザーの波長:660nm
レーザーの出力:310μW
検出ヘッドと出力ヘッドとの距離:10cm
試験片の測定位置:検出ヘッドと出力ヘッドとの中間
【0032】
研磨層に用いられる熱可塑性ポリウレタン組成物からなるシートは、上記熱可塑性ポリウレタン組成物をシート状に押出すことによって製造される。押出し方法としては特に制限されないが、例えばT−ダイを装着した単軸押出機、二軸押出機などの押出機を使用して、上記樹脂を溶融押出してシートとする方法を採用できる。
【0033】
得られたシートは必要に応じて、裁断、打ち抜き、切削などにより所望の寸法、形状に加工したり、研削等により所望の厚さに加工したりして、研磨層を形成することができる。また研磨層には、必要に応じて格子状、同心円状、螺旋状の溝、貫通孔等を形成してもよい。
【0034】
溝の形成方法としては、例えば上記のシートを切削加工することにより溝を形成する方法;上記のシートに加熱された金型、熱線等を接触させ、接触部を溶解させることにより溝を形成する方法;溝を形成するための凸部を有する金型を使用し、これに上記熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融物を流し込んだのち固化させるなどして、予め溝が形成されたシートを製造する方法などが挙げられる。
【0035】
研磨層の検出部分の形成方法としては、例えば上記溝を形成後のパッド表面および/または裏面をスピンドルなどで切削加工する方法;溝および検出部分を形成するための凸部を有する金型を使用し、これに上記熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融物を流し込んだのち固化させるなどして、予め溝および検出部分が形成されたシートを製造する方法などが挙げられる。
【0036】
研磨層は、厚さが0.2〜1.0mmである検出部分と、厚さが1.1〜2.5mmである他の部分とを有することを特徴とする。
ここで検出部分とは、研磨装置の研磨台(プラテン)上のレーザー照射窓付近に形成された研磨層の薄肉部分をいい、研磨層全体に形成されたスラリー流動を制御する目的の溝とは明確に区別される。また、本発明において溝とは、線状に連続的に形成され、且つ幅(詳しくは、連続方向に直交する方向の幅)が3mm以下であるくぼみの部分(即ち、光による検出に使用できない部分)をいう。
一方、検出部分とは、その平面形状が楕円形、円形または多角形等に形成され、且つ幅(楕円形の場合は短軸、円形の場合は直径、多角形の場合は最小の辺)が10mmを超える薄肉部分(即ち、光による検出に使用できる部分)をいう。また、前述の検出部分の厚さおよび他の部分の厚さは、溝が形成されていない部分の厚さをいう。なお、検出部分は研磨パッド上の1箇所だけでもよく、または2箇所以上存在していてもよい。
【0037】
研磨層の検出部分の厚さは、0.25mm〜0.9mmであることが好ましく、0.3mm〜0.8mmであることがより好ましい。検出部分が薄すぎる場合は、研磨層の力学強度が低く、破損によるスラリー漏洩などの可能性があり、検出部分が厚すぎる場合は、光の透過が阻害される傾向となる。
【0038】
研磨層の他の部分の厚さは、1.2mm〜2.3mmであることが好ましく、1.3mm〜2.1mmであることがより好ましい。研磨層の他の部分があまりに薄いと、研磨均一性が低下する場合がある。弾性層を有する複層型研磨パッドの場合において研磨層の他の部分があまりに厚いと、被研磨物全体の反りやうねりに対する弾性層の追従効果が低下する場合がある。
【0039】
研磨層の検出部分の面積は、100〜2,000mm
2であることが好ましく、200〜1800mm
2であることがより好ましく、300〜1,600mm
2であることがさらに好ましい。検出部分が小さすぎる場合は光学的手段による研磨終点の測定等が困難になることがあり、検出部分が大きすぎる場合は研磨層の研磨特性が変化することがある。
【0040】
検出部分の平面形状は短辺10〜25mmおよび長辺10〜80mmの長方形であることが好ましく、短辺10〜23mmおよび長辺25〜80mmの長方形であることがより好ましく、短辺10〜20mmおよび長辺35〜80mmの長方形であることがさらに好ましい。ここで、検出部分の平面形状とは、検出部分が形成された研磨層の面を上から見たときの検出部分の形状をいう。また、本発明における長方形とは、直角である四つの内角と等しい長さの対辺をもつ平面四辺形を意味し、短辺および長辺の長さが等しい正方形も含む概念である。
【0041】
研磨パッドは上記の研磨層1層のみからなる単層型研磨パッドでもよく、研磨層の研磨面とは反対側の面に弾性層が積層されている複層型研磨パッドでもよい。弾性層はその硬度が研磨層の硬度よりも低いことが好ましい。弾性層の硬度が研磨層の硬度よりも低いと、被研磨物の局所的な凹凸には硬質の研磨層が作用し、一方、被研磨物全体の反りやうねりに対しては柔軟な弾性層が追従することができるため、結果としてグローバル平坦性(被研磨物の全体的な平坦性)とローカル平坦性(被研磨物の局所的な平坦性)を両立させることができる。
【0042】
複層型研磨パッドにおける研磨層の硬度は、被研磨物のローカル平坦性の観点や、硬度が高すぎると被研磨面にスクラッチが発生しやすくなることから、JIS−D硬度として55以上であることが好ましく、60〜80であることがより好ましく、65〜75がさらに好ましい。一方、弾性層の硬度は、グローバル平坦性の観点や、硬度が低すぎると、研磨台(プラテン)に貼り付けて研磨を行う際に研磨台の回転を研磨層に十分に伝えることができず安定した研磨を行えない場合があることから、JIS−C硬度として20〜80であることが好ましく、30〜70がより好ましく、40〜65がさらに好ましい。
【0043】
弾性層の厚さは、0.5〜3mmであることが好ましい。弾性層の厚さが0.5mm未満の場合には、被研磨物全体の反りやうねりに対する追従効果が低下する場合があり、一方、3mmを越える場合には、研磨パッド全体が柔らかくなりすぎるため、研磨パッドを研磨台(プラテン)に貼り付けて研磨を行う際に研磨台の回転を研磨層に十分に伝えることができず安定した研磨を行えない場合がある。弾性層の厚さは1〜2.5mmであることがより好ましい。
【0044】
弾性層の材質としては、現在汎用的に使用されているポリウレタンを含浸させた不織布(例えば、ニッタ・ハース株式会社製「Suba400」等)の他、天然ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴム;ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;発泡プラスチック;ポリウレタンなどを採用できる。中でも、弾性層に必要な柔軟性を有し、また容易に発泡構造が得られることからポリウレタンが好ましい。
【0045】
複層型研磨パッドは、研磨層と弾性層とが直接接合しているものの他、接着剤や両面粘着テープ等により両層が接着されたものや、両層の間にさらに別の層が存在するものも含む。
【0046】
複層型研磨パッドでは、光学的手段による被研磨物の検査や研磨終点の測定を妨げないために、研磨層の検出部分の上に位置する弾性層の部分が空隙であるか、または該空隙に透明部材がはめ込まれていることが好ましい。ここで、透明部材とは、光学的手段に用いられる光(例えばレーザー光)に対して透明な部材をいう。透明部材としては、例えばガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシなどが挙げられる。
【0047】
本発明の研磨パッドは、公知の研磨スラリーと共に、化学的機械的研磨等の研磨方法に使用することができる。研磨スラリーとしては、例えば水やオイル等の液状媒体;酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素等の研磨剤;塩基、酸、界面活性剤などの成分を含有したものを用いることができる。また研磨方法において、必要に応じ、研磨スラリーと共に、潤滑油、冷却剤などを併用してもよい。
【0048】
研磨方法は、公知の装置(特に、研磨中における被研磨物の検査や研磨終点の測定を光学的手段により行うことができる装置)を使用して、研磨スラリーを介して、被研磨物と研磨パッドを、加圧下、一定速度で一定時間接触させることによって行うことができる。被研磨物としては、例えば、水晶、シリコン、ガラス、光学基板、電子回路基板、多層配線基板、ハードディスクなどが挙げられる。特に、被研磨物は、シリコンウエハや半導体ウエハであることが好ましい。半導体ウエハとしては、例えば酸化シリコン、酸化フッ化シリコン、有機ポリマー等の絶縁膜;銅、アルミニウム、タングステン等の配線材金属膜;タンタル、チタン、窒化タンタル、窒化チタン等のバリアメタル膜などを表面に有するものが挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0050】
[レーザー透過率の評価]
下記のようにして得られた熱可塑性ポリウレタンを単軸押出し機(90mmφ)に仕込み、シリンダー温度215〜225℃、ダイス温度225℃にてリップ幅2.0mmのTダイより速度120cm/分で下向きに押出し、試験片として厚さ0.5mmのシートを作成した。次に、キーエンス社製レーザーセンサLV−NH110(波長660nm、出力310μw)を用い、検出ヘッドと出力ヘッドを10cmの距離で相対させ、該ヘッドの中間点に試験片を垂直に設置し、そのレーザー透過率を測定した。
【0051】
[光による終点検出の評価]
研磨パッドをアプライドマテリアルズ社製研磨装置「MIRRA」に設置し、旭ダイヤモンド工業株式会社製ダイヤモンドドレッサー「CMP−M」を用い、超純水を200mL/分の流速で流しながらドレッサー回転数120rpm、研磨パッド回転数50rpm、ドレッサー荷重5.0lbfにて30分間、研磨パッドの表面をコンディショニングした。次に、研磨パッドの回転数80rpm、ウエハ回転数70rpm、研磨圧力20kPaの条件において、研磨スラリー(株式会社フジミインコーポレーテッド社製「PL−7105」、超純水、過酸化水素水(濃度31質量%)を1:2:0.09の質量比で混合したもの)を200mL/分の流速で流しながら、SEMATECH製パターンウエハSEMATECH854を130秒間研磨した。この研磨において、銅膜が除去されてバリア膜が露出した時のレーザー光の反射率が10%以上変化した場合を終点検出が可能であると評価した。
【0052】
[銅膜除去後のスクラッチの評価]
光による終点検出性能の評価を実施した後の研磨パッドを、超純水を200mL/分の流速で流しながらドレッサー回転数120rpm、研磨パッド回転数80rpm、ドレッサー荷重5.0lbfにて30秒間コンディショニングした後、パターンの無い銅膜を表面に有する8インチシリコンウエハを60秒間研磨した。KLA−Tencor社製Surfscan SP1を用い、研磨後に銅膜が除去されたウエハ表面に存在する0.16μm以上の大きさのスクラッチ数を測定した。
【0053】
[製造例1]
熱可塑性ポリウレタン(PU−1)の製造
数平均分子量2000のポリ(テトラメチレングリコール)[略号:PTMG2000]、数平均分子量2000のポリ(2−メチル−1,8−オクタメチレン−co−ノナメチレンアジペート)[略号:PNOA2000、ノナメチレン単位と2−メチル−1,8−オクタメチレン単位とのモル比=7対3]、1,4−シクロヘキサンジメタノール[略号:CHDM]、1,4−ブタンジオール[略号:BD]および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート[略号:MDI]を、PTMG2000:PNOA2000:CHDM:BD:MDIの質量比が20.1:8.4:5.7:14.2:51.6(イソシアネート基由来の窒素原子の含有率:5.8質量%)となる割合で用い、且つそれらの合計供給量が300g/分になるようにして、定量ポンプにより同軸で回転する二軸押出機(30mmφ、L/D=36、シリンダー温度:75〜260℃)に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタンを製造した。生成した熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状に水中に連続的に押出した後、ペレタイザーでペレット状に細断し、得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより熱可塑性ポリウレタン(以下、これをPU−1という)を製造した。得られたPU−1のレーザー透過率は40%であった。
【0054】
[製造例2]
熱可塑性ポリウレタン(PU−2)の製造
数平均分子量3000のポリ(テトラメチレングリコール)[略号:PTMG3000]、CHDM、BDおよびMDIを、PTMG3000:CHDM:BD:MDIの質量比が21.1:6.3:15.8:56.8(イソシアネート基由来の窒素原子の含有率:6.4質量%)となる割合で用い、且つそれらの合計供給量が300g/分になるようにして、定量ポンプにより同軸で回転する二軸押出機(30mmφ、L/D=36、シリンダー温度:75〜260℃)に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタンを製造した。生成した熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状に水中に連続的に押出した後、ペレタイザーでペレット状に細断し、得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより熱可塑性ポリウレタン(以下、これをPU−2という)を製造した。得られたPU−2のレーザー透過率は15%であった。
【0055】
[実施例1]
製造例1で得られたPU−1を単軸押出機(90mmφ)に仕込み、シリンダー温度215〜225℃、ダイス温度225℃にてリップ幅2.0mmのT−ダイより速度40cm/分で下向きに押出し、厚さ1.5mmのシートを作製した。
上記シートの表面を研削して厚さが1.2mmで均一なシートを作製し、直径510mmの円盤状に切り出した。さらに円盤状シートの研磨面となる片面に幅1.0mm、深さ0.7mm、ピッチ6.5mmの円溝を形成した。さらに中心から100mmの部分に、長辺が直径方向に平行となるように長方形(長辺57mm、短辺19mm、面積1083mm
2)の検出部分を研磨層の研磨面とは反対側の面に形成した。検出部分の厚さは0.5mmであり、他の部分の厚さは1.2mmであった。また、研磨層の研磨面とは反対側の面に、弾性層としてニッタ・ハース株式会社製「suba400」を貼り付けて複層型研磨パッドを形成した。このとき、弾性層で検出部分に接する部分は予め切り抜いて空隙を形成した。
【0056】
得られた複層型研磨パッドをAMAT社製研磨装置MIRRAに装着し、SEMATECH製パターンウエハSEMATECH854を研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階で検出レーザー強度の明確な変化が認められ、光による研磨終点検出が可能であった。また、銅膜除去後のウエハ表面のスクラッチ数は100個以下であった。
【0057】
[実施例2]
長辺40mm、短辺15mm、面積600mm
2および厚さ0.3mmの長方形の検出部分を形成したこと以外は実施例1と同様にして複層型研磨パッドを作製した。該パッドも光による研磨終点検出が可能であった。また、銅膜除去後のウエハ表面のスクラッチ数は100個以下であった。
【0058】
[実施例3]
長辺35mm、短辺10mm、面積350mm
2および厚さ0.7mmの長方形の検出部分を形成したこと以外は実施例1と同様にして複層型研磨パッドを作製した。該パッドも光による研磨終点検出が可能であった。また、銅膜除去後のウエハ表面のスクラッチ数は100個以下であった。
【0059】
[比較例1]
製造例1で得られたPU−1を単軸押出機(90mmφ)に仕込み、シリンダー温度215〜225℃、ダイス温度225℃にてリップ幅3.5mmのT−ダイより速度40cm/分で下向きに押出し、厚さ3.1mmのシートを作製した。
上記シートの表面を研削して厚さが2.7mmで均一なシートを作製し、直径510mmの円盤状に切り出した。さらに円盤状シートの研磨面となる片面に幅1.0mm、深さ1.2mm、ピッチ6.5mmの円溝を形成した。さらに中心から100mmの部分に長辺が直径方向に平行となるように長方形(長辺57mm、短辺19mm、面積1083mm
2)の検出部分を形成した。検出部分の厚さは1.5mmであり、他の部分の厚さは2.7mmであった。また、研磨層の研磨面とは反対側の面に、弾性層としてニッタ・ハース株式会社製「suba400」を貼り付けて複層型研磨パッドを形成した。このとき、弾性層で検出部分に接する部分は予め切り抜いて空隙を形成した。
【0060】
得られた複層型研磨パッドをAMAT社製研磨装置MIRRAに装着し、SEMATECH製パターンウエハSEMATECH854を研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階で検出レーザー強度の明確な変化が認められず、光による研磨終点検出ができなかった。また、銅膜除去後のウエハ表面のスクラッチ数は100個以下であった。
【0061】
[比較例2]
PU−1を製造例2で得られたPU−2に代えたこと以外は実施例1と同様の操作により複層型研磨パッドを製造した。該パッドは光による研磨終点検出ができなかった。また、銅膜除去後のウエハ表面のスクラッチ数は約1000個であった。