(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3速度で前記基板を回転させ、前記第1めっき液を前記基板上に保って、前記核不連続の膜または粒状の第1めっき層を用いて前記第1めっき層を成長させ、かつ第2速度で前記基板を回転させて前記第1めっき液を液切れなく外方へ排出することを特徴とする請求項1に記載のめっき処理方法。
前記基板を前記第5速度で回転させて前記第2めっき液を供給した後、前記第5速度と同程度の第6速度で基板を間欠的に回転させて前記第2めっき液の放射むらをなくすことを特徴とする請求項4に記載のめっき処理方法。
前記基板を前記第5速度で回転させて前記第2めっき液を供給した後、前記第5速度より大きな第6速度で前記基板を間欠的に回転させて、前記基板上の第2めっき液を撹拌することを特徴とする請求項4に記載のめっき処理方法。
前記制御機構は前記基板保持機構と、前記第2めっき機構を制御して、前記基板を第4速度で回転させて前記第2めっき液を供給して凹部内面に第2めっき層を形成するとともに、前記基板を第4速度より大きな第5速度で回転させて前記第2めっき液を供給し、第2めっき液を周縁部に向って放射状に移動させることを特徴とする請求項10に記載のめっき処理装置。
前記制御機構は前記基板保持機構と、前記第1めっき機構を制御して、前記基板を第1速度で回転させて前記第1めっき液を供給して前記基板上に第1めっき層の不連続の膜または粒状の第1めっき層を形成するとともに、前記基板を前記第1速度より大きな第2速度と、第1速度より小さな第3速度とを繰り返しながら回転させて第1めっき液を供給して前記第1めっき層の成長を促進することを特徴とする請求項12に記載のめっき処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<発明の実施の形態>
以下、
図1乃至
図9を参照して、本発明の実施の形態について説明する。まず
図1および
図2を参照して、めっき処理装置20の全体構成について説明する。
図1は、めっき処理装置20を示す側面図であり、
図2は、めっき処理装置20を示す平面図である。なお本実施の形態においては、めっき処理装置20が、基板2に対してめっき液を吐出することにより、基板2に対するめっき処理を一枚ずつ実施する枚葉式の装置である例について説明する。
【0021】
<めっき処理装置>
めっき処理装置20は、ケーシング101の内部で基板2を保持して回転させる基板保持機構110と、基板保持機構110に保持された基板2に向けてめっき液を吐出し、特定機能を有するめっき層を基板の凹部の内面に形成するめっき機構と、めっき機構に接続され、めっき機構にめっき液を供給するめっき液供給機構と、を備えている。このうち、めっき機構は、基板2に対して第1めっき液を吐出する第1めっき機構30と、基板2に対して第2めっき液を吐出する第2めっき機構40と、を有している。まためっき液供給機構は、第1めっき機構30に第1めっき液を供給する第1めっき液供給機構71と、第2めっき機構40に第2めっき液を供給する第2めっき液供給機構72と、を有している。第1めっき液および第2めっき液の詳細については後述する。
【0022】
まためっき処理装置20は、基板2に向けて第1前処理液を吐出する第1前処理機構54をさらに備えている。第1前処理機構54には、第1前処理機構54に第1前処理液を供給する第1前処理液供給機構73が接続されている。第1前処理液は、基板2に対して第1めっき液や第2めっき液などのめっき液を吐出する前に、基板2に対して吐出される液である。第1前処理液としては、例えば、脱イオン処理が施された純水、いわゆる脱イオン水(DIW)が用いられる。
【0023】
まためっき処理装置20は、基板2に向けてプリウェット液を吐出するプリウェット機構57をさらに備えていてもよい。プリウェット機構57には、プリウェット機構57にプリウェット液を供給するプリウェット液供給機構76が接続されている。プリウェット液は、乾燥状態の基板2に対して供給される液である。プリウェット液を用いることにより、例えば、その後に基板2に対して供給される処理液と、基板2との間の親和性を高めることができる。プリウェット液としては、例えば、CO
2のイオンなどを含むイオン水が用いられる。
【0024】
基板保持機構110の周囲には、第1開口部121および第2開口部126を有し、基板2から飛散しためっき液や第1前処理液などの液体を受ける排液カップ120と、気体を引き込む開口部106を有する排気カップ105と、が配置されている。排液カップ120の第1開口部121および第2開口部126によって受けられた液体は、第1排液機構122および第2排液機構127によって排出される。排気カップ105の開口部106に引き込まれた気体は、排気機構107によって排出される。また、排液カップ120は昇降機構164に連結されており、この昇降機構164は、排液カップ120を上下に移動させることができる。このため、基板2から飛散した液の種類に応じて排液カップ120を上下させることにより、液が排出される経路を液の種類の応じて異ならせることができる。
【0025】
(基板保持機構)
基板保持機構110は、
図2に示すように、ケーシング101内で上下に伸延する中空円筒状の回転軸部材111と、回転軸部材111の上端部に取り付けられたターンテーブル112と、ターンテーブル112の上面外周部に設けられ、基板2を支持するウエハチャック113と、回転軸部材111に連結され、回転軸部材111を回転駆動する回転機構162と、を有している。
【0026】
このうち回転機構162は、制御機構160により制御され、回転軸部材111を回転駆動させ、これによって、ウエハチャック113により支持されている基板2が回転される。この場合、制御機構160は、回転機構162を制御することにより、回転軸部材111およびウエハチャック113を回転させ、あるいは停止させることができる。また、制御機構160は、回転軸部材111およびウエハチャック113の回転数を上昇させ、下降させ、あるいは一定値に維持させるように制御することが可能である。
【0027】
(めっき機構)
次に第1めっき機構30および第2めっき機構40について説明する。なお、第1めっき機構30および第2めっき機構40は、基板2に対して吐出するめっき液の組成が異なるのみであり、その他の構成は略同一である。ここでは、第1めっき機構30について主に説明する。
【0028】
第1めっき機構30は、基板2に向けて第1めっき液を吐出する吐出ノズル34と、吐出ノズル34が設けられた吐出ヘッド33と、を有している。吐出ヘッド33内には、第1めっき液供給機構71から供給された第1めっき液を吐出ノズル34に導くための配管や、第1めっき液を保温するための熱媒を循環させるための配管などが収納されている。
【0029】
吐出ヘッド33は、上下方向および水平方向に移動可能となるよう構成されている。例えば吐出ヘッド33は、アーム32の先端部に取り付けられており、このアーム32は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構165により回転駆動される支持軸31に固定されている。このような回転機構165および支持軸31を用いることにより、
図2(a)に示すように、吐出ヘッド33を、基板2に向けて第1めっき液を吐出する際に位置する吐出位置と、第1めっき液を吐出しない際に位置する待機位置との間で移動させることができる。
【0030】
吐出ヘッド33は、
図1および
図7に示すように、基板2の中心部から基板2の周縁部までの長さ、すなわち基板2の半径の長さに対応するよう延びていてもよい。この場合、吐出ヘッド33には、第1めっき液を吐出する吐出ノズル34が複数設けられていてもよい。この場合、第1めっき液を吐出する際に複数の吐出ノズル34が基板2の半径方向に沿って並ぶよう吐出ヘッド33を位置づけることにより、基板2の広域にわたって同時に第1めっき液を供給することができる。
【0031】
第2めっき機構40は、基板2に向けて第2めっき液を吐出する吐出ノズル44と、吐出ノズル44が設けられた吐出ヘッド43と、を有している。また吐出ヘッド43は、アーム42の先端部に取り付けられており、このアーム42は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構167により回転駆動される支持軸41に固定されている。
【0032】
(めっき液供給機構)
次に、めっき機構30,40にめっき液を供給するめっき液供給機構71,72について、
図3を参照して説明する。なお、第1めっき液供給機構71および第2めっき液供給機構72は、収容されているめっき液の組成が異なるのみであり、その他の構成は略同一である。ここでは、第1めっき液供給機構71について主に説明する。
【0033】
図3に示すように、第1めっき液供給機構71は、第1めっき液71cを貯留するタンク71bと、タンク71b内の第1めっき液71cを第1めっき機構30へ供給する供給管71aと、を有している。供給管71aには、第1めっき液71cの流量を調整するためのバルブ71dおよびポンプ71eが取り付けられている。またタンク71bには、タンク71b内に貯留される第1めっき液71cを加熱するための加熱ユニット71gが設けられている。同様に、第2めっき液供給機構72は、供給管72a、タンク72b、バルブ72d、ポンプ72eおよび加熱ユニット72gを有している。
【0034】
ところで、本実施の形態においては、後述するように、基板に形成された、大きなアスペクト比を有する凹部の内面に対するめっき処理が実施される。また、凹部の深さは、例えば10μm以上となっている。このような深い凹部に対してめっき液を供給する場合、めっき液に含まれる各成分は、主に、めっき液中における拡散に基づいて凹部の下部にまで到達する。ところで、拡散現象は、時間の経過とともに徐々に進行する現象である。このため、凹部の内部における、めっき液の各成分の濃度分布は、めっき反応によってめっき層が形成されながら、時間とともに変化する。従って、深い凹部に対してめっき液を供給する場合、凹部の内部におけるめっき液の各成分の濃度分布は一般に不均一になっている。このため、単一のめっき液を凹部に対して供給する場合、凹部の内面に形成されるめっき層の厚みが、凹部内における位置に応じて異なることが考えられる。
【0035】
ここで本実施の形態によれば、特定機能を有するめっき層を基板の凹部の内面に形成する際に、組成の異なる2種類のめっき液を用いることにより、上述の課題を解決している。以下、本実施の形態において用いられる、第1めっき液および第2めっき液について説明する。
【0036】
(めっき液)
第1めっき液および第2めっき液は、基板2の表面に形成される、特定機能を有するめっき層に対応する材料を含んでいる。例えば、めっき処理装置20によって基板2に形成されるめっき層が、配線を構成する金属材料が絶縁膜や基板2の内部に浸透することを防止するバリア膜である場合、第1めっき液および第2めっき液は、バリア膜の材料となるCo(コバルト)、W(タングステン)やTa(タンタル)などを含んでいる。また、めっき処理装置20によって基板2に形成されるめっき層が、配線材料の埋め込みを容易化するためのシード膜である場合、第1めっき液および第2めっき液は、配線の材料となるCu(銅)などを含んでいる。その他にも、含まれる材料やめっき反応の種類に応じて、錯化剤や還元剤(B(ホウ素)、P(リン)を含む化合物)、界面活性剤などが第1めっき液および第2めっき液に含まれていてもよい。
【0037】
また、第1めっき液および第2めっき液のうち少なくとも一方のめっき液は、めっき反応の速度に影響を与えることができる添加剤を含んでいる。添加剤は、めっき液に含まれる材料などに応じて適宜選択される。例えば、第1めっき液および第2めっき液が、バリア膜の材料となるCoおよびWを含む場合、第1めっき液および第2めっき液のうち少なくとも一方のめっき液は、添加剤として、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、いわゆるSPSを含んでいる。
【0038】
以下、めっき液に添加剤を入れることの目的について詳細に説明する。本実施の形態においては、第1めっき液に含有される添加剤の濃度と、第2めっき液に含有される添加剤の濃度とが異なっている。例えば添加剤としてSPSが用いられる場合、第1めっき液に含有されるSPSの濃度が、第2めっき液に含有されるSPSの濃度よりも低くなっている。具体的には、第2めっき液に含有されるSPSの濃度が、5ppm以上となっており、第1めっき液に含有されるSPSの濃度が、5ppm未満、例えば0ppmとなっている。これによって、第1めっき液から形成される第1めっき層および第2めっき液から形成される第2めっき層を含むめっき層の厚みの均一性を向上させることができる。
【0039】
以下、添加剤の濃度が異なる2種類のめっき液を用いることにより、めっき層の厚みの均一性を向上させることができることのメカニズムについて説明する。
【0040】
大きな深さを有する凹部に対するめっき処理においては、凹部の内面のうちめっき層が形成されやすい部分が、添加剤の濃度によって変化する。例えば、SPSが含有されていないめっき液を用いた場合、めっき層は、凹部の内面の上部に優先的に形成される。一方、SPSが含有されているめっき液を用いた場合、めっき層は、凹部の内面の下部に優先的に形成される。このように、めっき層が優先的に形成される位置が添加剤の濃度に応じて変化する理由としては、様々なことが考えられる。
【0041】
例えば、理由の1つとして、めっき液中において、めっき層の材料となる元素の拡散速度と添加剤の拡散速度とが異なることが考えられる。
【0042】
このような知見に基づいて、本実施の形態においては、第1めっき液の添加剤の濃度は、基板の凹部の上部におけるめっき反応の速度が、凹部の下部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されている。また、第2めっき液の添加剤の濃度は、基板の凹部の下部におけるめっき反応の速度が、凹部の上部におけるめっき反応の速度よりも大きくなるよう、設定されている。このような2種類のめっき液を用いて、特定機能を有する1つのめっき層、例えばバリア膜やシード膜を形成することにより、後述するように、凹部の内面に形成されるめっき層の厚みの均一性を向上させることができる。
【0043】
(前処理機構およびプリウェット機構)
次に前処理機構54およびプリウェット機構57について説明する。前処理機構54は、基板2に向けて前処理液73cを吐出する吐出ノズル54aを有している。同様に、プリウェット機構57は、基板2に向けてプリウェット液76cを吐出する吐出ノズル57aを有している。
図1に示すように、各吐出ノズル54a,57aは、吐出ヘッド53に取り付けられている。吐出ヘッド53は、上下方向および水平方向に移動可能となるよう構成されている。例えば第1めっき機構30の吐出ヘッド33の場合と同様に、前処理機構54の吐出ヘッド53は、アーム52の先端部に取り付けられている。アーム52は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構166により回転駆動される支持軸51に固定されている。この場合、
図2(b)に示すように、吐出ヘッド53は、基板2の中心部に対応する位置と基板2の周縁部に対応する位置との間で支持軸51を軸として水平方向に移動可能となっている。
【0044】
(前処理液供給機構およびプリウェット液供給機構)
次に
図4を参照して、前処理機構54に前処理液を供給する前処理液供給機構73、および、プリウェット機構57にプリウェット液を供給するプリウェット液供給機構76について説明する。なお、前処理液供給機構73およびプリウェット液供給機構76は、収容されている処理液の種類が異なるのみであり、その他の構成は略同一である。ここでは、前処理液供給機構73について主に説明する。
【0045】
図4に示すように、前処理液供給機構73は、DIWなどの前処理液73cを貯留するタンク73bと、タンク73b内の前処理液73cを前処理機構54へ供給する供給管73aと、を有している。供給管73aには、前処理液73cの流量を調整するためのバルブ73dおよびポンプ73eが取り付けられている。また前処理液供給機構73は、前処理液73c中の溶存酸素や溶存水素などの気体を除去する脱気手段73fをさらに有していてもよい。脱気手段73fは、
図4に示すように、タンク73bに貯留されている前処理液73cに窒素などの不活性ガスを送り込むガス供給管として構成されていてもよい。これによって、不活性ガスを前処理液73c中に溶解させることができ、このことにより、前処理液73c中に既に溶存していた酸素や水素などを外部に排出することができる。すなわち、前処理液73cに対していわゆる脱ガス処理を施すことができる。
【0046】
同様にプリウェット液供給機構76は、プリウェット液76cを貯留するタンク76bと、供給管76aと、バルブ76dと、ポンプ76eとを有している。
【0047】
以上のように構成されるめっき処理装置20は、制御機構160に設けた記憶媒体161に記録された各種のプログラムに従って制御機構160により駆動制御され、これにより基板2に対する様々な処理が行われる。ここで、記憶媒体161は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体161としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリーや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0048】
<めっき処理方法>
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用および効果について説明する。ここでは、基板2に形成された凹部12の内面に、無電解めっき法によって、CoWBを含むバリア膜を形成するめっき処理方法について説明する。
図5および
図8〜
図9は、めっき処理方法を示すフローチャートである。また
図6A乃至
図6Gは、めっき処理方法の各工程の際の基板2の様子を示す断面図である。
【0049】
はじめに、配線材料を埋め込むための凹部12を基板2に形成する。凹部12を基板2に形成する方法としては、従来から公知の方法の中から適宜採用することができる。具体的には、例えば、ドライエッチング技術として、弗素系又は塩素系ガス等を用いた汎用的技術を適用できる。特にアスペクト比(孔の径に対する孔の深さの比)の大きな凹部12を形成するには、高速な深掘エッチングが可能なICP−RIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:誘導結合プラズマ−反応性イオンエッチング)の技術を採用した方法をより好適に採用できる。特に、六フッ化硫黄(SF
6)を用いたエッチングステップとC
4F
8などのテフロン系ガスを用いた保護ステップとを繰り返しながら行う、ボッシュプロセスと称される方法を好適に採用できる。
【0050】
凹部12の内部におけるめっき液の各成分の移動が、流動ではなく主に拡散に基づく限りにおいて、凹部12の具体的な形状が特に限られることはない。例えば、凹部12のアスペクト比は、5〜30の範囲内となっている。具体的には、凹部の横断面が円形状である場合、凹部12の直径が、0.5〜20μmの範囲内、例えば8μmとなっている。また、凹部12の高さまたは深さが、10〜250μmの範囲内、例えば100μmとなっている。その後、凹部12の内部に絶縁膜が形成される。絶縁膜の形成する方法としては、例えば、化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により堆積されるシリコン酸化膜(SiO
2)を形成する方法が用いられる。
【0051】
次に、基板2をケーシング101の内部に移載し、プリウェット処理機構57を用いて、基板2に向けてプリウェット液76cを吐出する(プリウェット工程S10)。これによって、基板2の表面、例えば凹部の内面および基板2の上面と、後に基板に対して供給される前処理液との間の親和性を高めることができる。プリウェット液としては、例えば、CO
2のイオンなどを含むイオン水が用いられる。
【0052】
次に第1めっき工程(S21)を実施する(図および
図8参照)。
【0053】
まず基板2を回転させながら、前処理機構54を用いて基板2に向けて前処理液73cを吐出する。この場合、基板2の回転数は500rpmとなっており、吐出ノズル54aから前処理液73cを基板2上に吐出する。前処理液73cとしては、例えば脱ガスが施されたDIWが用いられる。
【0054】
次に基板2を回転させたまま、DIWの供給を停止して吐出ノズル54aからIPA供給部73Aから供給されたIPA(イソプロピルアルコール)を基板2上に供給する。
【0055】
その後、基板2を回転させたまま、IPAの供給を停止して吐出ノズル54aから再び前処理液73cとしてDIWを基板2上に吐出する。
【0056】
このように吐出ノズル54aからDIWを供給し、その後IPAを供給し、次に再びDIWを供給することにより基板2に対する第1前処理が行なわれる(
図8参照)。
【0057】
この第1前処理工程中、吐出ノズル54aは基板2の中央部上方に停止させておく。このようにして基板2の凹部12内部が前処理液73cにより充填される(
図6A参照)。
【0058】
次に、第1めっき機構30を用いて、基板2に向けて、CoWBを成膜するため第1めっき液71cを吐出する第1めっき工程の概略を説明する。はじめに、第1めっき液供給機構71を用いて、第1めっき液71cを第1めっき機構30に供給する。供給される第1めっき液71cの温度は、めっき反応が適切な速度で進行するよう設定することができる。次に
図7に示すように、基板2の半径方向に沿って並ぶよう配置された複数の吐出ノズル34から、基板2に向けて第1めっき液71cが吐出される。これによって、基板2の表面全域にわたって同時に第1めっき液71cを供給することができる。このことにより、基板2上における第1めっき液71cの温度分布を、基板2上の位置に依らず略均一にすることができる。例えば、基板2の中心部分に到達した第1めっき液71cの温度と、基板2の周縁部分に到達した第1めっき液71cの温度とを略同一にすることができる。
【0059】
基板2に向けて第1めっき液71cを吐出すると、
図6Bに示すように、凹部12の内部の第1前処理液73cが第1めっき液71cによって置換され、凹部12の内部に第1めっき液71cが充填される。この際、第1めっき液71cにおけるめっき反応が進行する。この結果、
図6Cに示すように、基板2の表面および凹部12の内面12aに第1めっき層13が形成される。ところで上述のように、第1めっき液71cに含まれる各成分は、主に、めっき液中における拡散に基づいて凹部12の下部にまで到達する。このため、凹部12の内部における第1めっき液71cの各成分の濃度分布は、めっき反応の進行により、一般に凹部12の上部と下部で不均一になっている。また、第1めっき液71cに含有されるSPSの濃度は、第2めっき液72cに含有されるSPSの濃度よりも低くなっており、例えば0ppmになっている。このため、第1めっき工程S21においては、凹部12の上部に優先的に第1めっき層13が形成される。すなわち
図6Cに示すように、凹部12の内面12aに形成される第1めっき層13の厚みが、凹部12の下部に比べて凹部12の上部において大きくなっている。
【0060】
次に第1めっき液71cを基板2上に供給する第1めっき工程(S21)の具体的工程について、
図8により詳述する。
【0061】
まず上述のように第1前処理が行なわれた基板2を500rpmで回転させたまま、吐出ノズル34から常温の第1めっき液71cを基板2上に供給し、凹部12内部のDIWと第1めっき液71cを置換して基板2表面全域および凹部12内面に第1めっき液71cをなじませる。
【0062】
次に基板2の回転数を100rpmとし、第1めっき液71cを加熱して、第1めっき液の温度を例えば45℃まで上昇させておく。その後吐出ノズル34から第1めっき液71cを基板2上に供給する。このようにして、基板2を均一に加熱することができる。
【0063】
次に基板2を100rpmの回転数で高速回転させながら基板2上に第1めっき液71cを間欠的に供給する。
【0064】
このように基板2を100rpmの高速(第1速度)で回転させながら第1めっき液71cを間欠的に基板2上に供給することにより、基板2の表面全域に不連続の膜または粒状の第1めっき層13を形成することができる。 このように第1速度で基板2を回転させながら基板2上に第1めっき液71cを間欠的に供給するサイクルは複数回繰り返される。
【0065】
なお、基板2の回転数(第1速度)を、その後、200rpmまで上昇させて、第1めっき液71cの供給を続けてもよい。
【0066】
その後、基板2の表面に形成された不連続の膜または粒状の第1めっき層13を成長させて膜形成を行なう。具体的には第1速度(200rpm)より大きな第2速度(300rpm)の回転数と、第1速度(200rpm)より小さな第3速度(13〜23rpm)の回転数を繰り返しながら基板2を回転させて、吐出ノズル34から第1めっき液71cを基板2上に連続的に供給する。
【0067】
このように基板2を第3速度で回転させることにより、第1めっき液71cを基板2上に保つことができ、基板2の表面全域に第1めっき液71cを行き渡らせて、不連続の膜または粒状の第1めっき層13を成長させることができる。このことにより確実に第1めっき層13の膜を形成することができる。
【0068】
上述した第3速度1低速を13〜23rpmに定めた理由は以下の通りである。すなわち、第3速度1低速が13rpmより小さいと、基板2上にある第1めっき液71cの膜厚が大きくなって、第1めっき液71cの流動性が低下し、第1めっき液71cの温度が低下する。これにより、第1めっき液71cのめっき反応の進行が遅くなってしまう。他方第3速度が23rpmより大きいと、第1めっき液71cが基板2の周縁部から放出されて、基板2上にめっき反応が進行した第1めっき液71cを保つことがむずかしくなり第1めっき層13が成長しにくくなってしまう。
【0069】
また基板2を第2速度で回転させることにより、基板2上の第1めっき液71cを適度に連続させながら、液切れすることなく基板2の第1めっき液71cを周縁部から外方へ排出することができる。
【0070】
このように第1めっき液71cを適度に外方へ排出することにより、第1めっき液71cが基板2上に滞留することはなく、このため第1めっき液71cの滞留に伴なう第1めっき液71cの温度低下を防ぐことができ、第1めっき層13の成長を促進することができる。
【0071】
このような第1めっき層13の膜形成工程は複数回のサイクルで行なわれる。
【0072】
次に基板2を500rpmで回転させ、吐出ノズル54aからDIWを供給して、基板2に対して第1リンス処理を行なう。この場合、吐出ノズル54aは基板2の中央部上方に停止させておく。
【0073】
次に基板2を300rpmで回転させ、吐出ノズル54aからIPAを基板2上に供給するとともに、基板2上に図示しないN
2ガス供給ノズルからN
2ガスを供給して基板2に対する第1乾燥処理を施す。
【0074】
次に第2めっき工程(S31)を実施する(
図5および
図9参照)。
【0075】
まず基板2を回転させながら、前処理機構54を用いて基板2に向けて前処理液73cを吐出する。この場合、基板2の回転数は500rpmとなっており、吐出ノズル54aから前処理液73cを基板2上に吐出する。前処理液73cとしては、例えば脱ガスが施されたDIWが用いられる。
【0076】
次に基板2を回転させたまま、DIWの供給を停止して吐出ノズル54aからIPA供給部73Aから供給されたIPAを基板2上に供給する。
【0077】
その後、基板2を回転させたまま、IPAの供給を停止して吐出ノズル54aから再び前処理液73cとしてDIWを基板2上に吐出する。
【0078】
このように吐出ノズル54aからDIWを供給し、IPAを供給し、次に再びDIWを供給することにより基板2に対する第2前処理が行なわれる(
図9参照)。
【0079】
この第2前処理工程中、吐出ノズル54aは基板2の中央部上方に停止させておく。このようにして基板2の凹部12内部が前処理液73cにより充填される(
図6D参照)。
【0080】
次に、第2めっき機構40を用いて、基板2に向けて、CoWBを成膜するため第2めっき液72cを吐出する第2めっき工程の概略を説明する。はじめに、第2めっき液供給機構72を用いて、所定の温度に加熱された第2めっき液72cを第2めっき機構40に供給する。供給される第2めっき液72cの温度は、めっき反応が適切な速度で進行するよう設定されており、例えば45℃に設定されている。次に、第1めっき工程S21の場合と同様に、基板2の半径方向に沿って並ぶよう配置された複数の吐出ノズル44から、基板2に向けて第2めっき液72cが吐出される。これによって、基板2の広域にわたって同時に第2めっき液72cを供給することができる。このことにより、基板2上における第2めっき液72cの温度分布を、基板2上の位置に依らず略均一にすることができる。例えば、基板2の中心部分に到達した第2めっき液72cの温度と、基板2の周縁部分に到達した第2めっき液72cの温度とを略同一にすることができる。
【0081】
基板2に向けて第2めっき液72cを吐出すると、
図6Eに示すように、凹部12の内部の前処理液73cが第2めっき液72cによって置換され、凹部12の内部に第2めっき液72cが充填される。この際、第2めっき液72cにおけるめっき反応が進行する。この結果、
図6Fに示すように、第1めっき層13上に第2めっき層14が形成される。ところで、第1めっき液71cの場合と同様に、第2めっき液72cに含まれる各成分は、主に、めっき液中における拡散に基づいて凹部12の下部にまで到達する。このため、凹部12の内部における第2めっき液72cの各成分の濃度分布は一般に不均一になっている。また、第2めっき液72cに含有されるSPSの濃度は、第1めっき液71cに含有されるSPSの濃度よりも高くなっており、例えば5ppmになっている。このため、第2めっき工程S31においては、凹部12の下部に優先的に第2めっき層14が形成される。すなわち
図6Fに示すように、凹部12の内面12aに形成される第2めっき層14の厚みは、凹部12の上部に比べて凹部の下部において大きくなっている。
【0082】
次に第2めっき液72cを基板2上に供給する第2めっき工程(S31)の具体的工程について、
図9により詳述する。
【0083】
まず上述のように第2前処理が行なわれた基板2を100rpmで回転させ、吐出ノズル44から常温の第2めっき液72cを基板2上に供給し、凹部12内部のDIWと第2めっき液72cを置換して、基板2表面全域および凹部12内面に第2めっき液72cをなじませる。
【0084】
次に基板2の回転数を100rpmとし、第2めっき液73cを加熱して、第2めっき液73cの温度を例えば45℃まで上昇させておく。
【0085】
その後吐出ノズル44から第2めっき液72cを基板2上に供給する。このようにして、基板2を均一に加熱することができる。
【0086】
次に基板2を2rpmの低速(第4速度)で回転させながら吐出ノズル44から第2めっき液72cを基板2上に間欠的に供給し、凹部12内部に第2めっき液72cを行き渡らせ、この凹部12内に第2めっき液72cを留める。
【0087】
このように基板2を第4速度で回転させながら凹部12内に第2めっき液72cを留めることにより、凹部12内面において第1めっき層13上に第2めっき層14を確実に形成することができる。
【0088】
すなわち、基板2を第4速度より大きな回転数で回転させた場合、とりわけ凹部12の深さが比較的小さい場合に、凹部12内に進入した第2めっき液72cが凹部12から外方へ流れ出し、凹部12内面に確実に第2めっき層14を形成することができないことも考えられる。
【0089】
これに対して本実施の形態によれば、基板2を第4速度の低い回転数で回転させることにより、第2めっき液72cを凹部12内に留めて、凹部12内面において第1めっき層13上に第2めっき層14を確実に形成することができる。
【0090】
次に基板2を第4速度より大きな第5速度で回転させ、第2めっき層72cを基板2上に間欠的に供給する。このことにより基板2上において第2めっき液72cを基板2の周縁部に向って放射状に移動させることができる。
【0091】
このようにして基板2上に周縁部に向う第2めっき液72cの連続的な層流を形成することにより、第2めっき液72cが局所的に滞留することなく、第2めっき層14を均一な厚みをもつよう形成することができる。
【0092】
なお基板2を第5速度で回転させる場合、基板2の回転数を2prmから18rpmまで徐々に上昇することができる。このとき、基板2の回転数となる第5速度は、2〜18rpmの範囲をもつ。
【0093】
次に基板2上に第2めっき液72cを供給しながら、基板2を第5速度(2〜18rpm)より大きな第6速度(40rpm)で回転させた後、基板2を停止させる。このような基板2の第4速度および第5速度による回転、および第6速度による回転と停止を繰り返すことにより、基板2上において第2めっき液72cを撹拌する。なお、基板2の第4速度および第5速度による回転、および第6速度による回転と停止を繰り返すことなく、基板2上において第2めっき液72cを撹拌することもできる。
【0094】
次に基板2を第5速度(2〜18rpm)と同様の第7速度(13〜18rpm)で回転させながら基板2上に第2めっき液72cを間欠的に供給する。
【0095】
このことにより、第5速度で基板2を回転させて第2めっき液72cを基板2の周縁部に向って放射状に移動させた際に生じる第2めっき液72cの放射むらを基板2の表面全域から除去することができる。
【0096】
次に基板2上に第2めっき液72cを供給しながら、基板2を第5速度(2〜18rpm)より大きな第6速度(40rpm)で回転させた後、基板2を停止させる。このような基板2の回転と停止を繰り返すことにより、基板2上において、第2めっき液72cを撹拌することができる。
【0097】
なお、第2めっき液72cの放射むらを除去する工程の後に第2めっき液72cを撹拌する場合、第2めっき液72cの放射むらを除去する工程の前に第2めっき液72cを撹拌する工程は、必ずしも実施する必要はない。
【0098】
次に基板2を300rpmで回転させ、吐出ノズル54aからDIWを供給して、基板2に対して第2リンス処理を行なう。この場合、吐出ノズル54aは基板2の中央部上方に停止させておく。
【0099】
次に基板2を300rpmで回転させ、吐出ノズル54aからIPAを基板2上に供給するとともに、基板2上に図示しないN
2ガス供給ノズルからN
2ガスを供給して基板2に対する第2乾燥処理を施す。
【0100】
このように本実施の形態によれば、第1めっき工程S21においては、基板2の表面全域に均一な厚みの第1めっき層13を形成することができるとともに凹部12の上部に優先的に第1めっき層13を形成することができる。また第2めっき工程S31においては、凹部12の下部に均一な第2めっき層14を形成することができる。このため、第1めっき層13および第2めっき層14を含むめっき層15として形成されるバリア膜の厚みを、基板2の表面全域および凹部12内において略均一にすることができる。なお、上述の第1めっき工程S21および第2めっき工程S31が実施される時間は、めっき層15の厚みが凹部12内の位置に依らず略均一になり、かつ、めっき層15の厚みが全体的に所望の厚みにまで到達するよう、適切に調整される。
【0101】
このようにして、表面全域および凹部12内面にめっき層15からなるバリア膜が形成された基板2を得ることができる。
【0102】
その後、
図6Gに示すように、めっき層15からなるバリア膜上にシード膜16が形成されてもよい。また、シード膜16によって覆われた凹部12内に、銅などの金属材料を含む配線17が形成されてもよい。シード膜16および配線17を形成する方法が特に限られることはないが、例えば無電解めっき法が用いられ得る。この際、めっき層15からなるバリア膜を形成する場合と同様に、含有されている添加剤の濃度が異なる2種類のめっき液が用いられてもよい。また、上記の実施の形態では、凹部12内のめっき層15を第1めっき層13を形成した後に第2めっき層14を形成するようにしたが、凹部12内に第2めっき層14を形成した後に第1めっき層13を形成するようにしてもよい。