特許第6185042号(P6185042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185042
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】動物用排泄物処理シート
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   A01K1/015 AZBP
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-248906(P2015-248906)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-112859(P2017-112859A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年4月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡
(72)【発明者】
【氏名】池上 武
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−112073(JP,A)
【文献】 特開2010−51261(JP,A)
【文献】 特開2005−323548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
A01K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、これらのシートの間に位置する吸収体と、を備えた動物用排泄物処理シートであって、
前記吸収体は、少なくとも親水性繊維を含む第1吸収コアと、前記表面シート及び前記第1吸収コアの間に位置し且つ複数の高吸収性ポリマー粒子によって構成された第2吸収コアと、を有していて、
前記複数の高吸収性ポリマー粒子は、粒子径が355μm〜500μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる大粒径粒子群と、粒子径が150μm〜250μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる小粒径粒子群と、を含み、
前記複数の高吸収性ポリマー粒子の全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の質量割合が、それぞれ15〜60質量%であり、
前記複数の高吸収性ポリマー粒子の全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の合計質量割合が、50質量%以上である、
前記動物用排泄物処理シート。
【請求項2】
前記表面シートと前記第2吸収コアとの間に親水性シートを備え、
前記親水性シートは、接着剤層を介して又は介さずに、前記表面シート及び前記第2吸収コアのそれぞれと接合されている、請求項1に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項3】
前記表面シートと前記親水性シートとの間には、第1接着剤層が配置されており、前記親水性シートと前記第2吸収コアとの間には、第2接着剤層が配置されており、
前記第1接着剤層及び前記第2接着剤層は、それぞれの配置パターンが前記動物用排泄物処理シートの厚さ方向において少なくとも部分的に重複するように配置されている、請求項2に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項4】
前記親水性シートが親水性繊維により構成されていて、前記親水性シートにおける前記親水性繊維の繊維間距離が150μm未満である、請求項2又は3に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項5】
前記第1吸収コアに含まれる前記親水性繊維が、カチオン系界面活性剤を含むフラッフパルプである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項6】
前記吸収体は、少なくとも前記第1吸収コア及び前記第2吸収コアを被覆するコアラップシートを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬などの動物を飼育する際に用いられる動物用排泄物処理シートに関する。
【背景技術】
【0002】
犬などのペットが排泄した排泄物を処理するための動物用排泄物処理シートとして、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、これらのシートの間に位置する吸収体とを備えた動物用排泄物処理シートが知られている。
【0003】
そして、中には、吸収体に吸収された排泄物がシートの面方向に拡散するのを抑制することができる動物用排泄物処理シートも知られている。そのような動物用排泄物処理シートとして、例えば、特許文献1には、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、これらのシートの間に配置された吸収体とを備えるペット用シートであって、前記吸収体が、カチオン系界面活性剤を含む親水性繊維により形成された第1の吸収層と、前記第1の吸収層より前記表面シート側に配置され、吸水性樹脂により形成された第2の吸収層とを有するペット用シートが提案されている。
この特許文献1に開示されたペット用シートは、親水性繊維に疎水性を付与するカチオン系界面活性剤が排泄物によって親水性繊維から剥がれず、当該親水性繊維が所望の疎水性を有している状態を長時間維持することができるため、前記吸収層で吸収された排泄物が当該吸収層内で広がる(拡散する)のを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−14304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に開示されたペット用シートにおいては、吸収体の第2の吸収層を形成する吸水性樹脂として、粒度分布において単一のピークを呈するような一種類の粒子径を有する吸水性樹脂粒子の集合体が用いられている。
そして、このような吸水性樹脂粒子の集合体として、吸水性樹脂粒子の粒子径が大きいものを用いた場合は、粒子径が小さい粒子の集合体に比べて粒子集合体としての総表面積が小さく、吸水速度が相対的に遅くなるため、表面シートを透過してきた排泄物は、その大部分が第2の吸収層で吸収されずに、第1の吸収層において吸収されることとなり、排泄物を迅速に吸収させることができない虞があった。さらに、この第1の吸収層に到達した排泄物は、前記第1の吸収層内の疎水性を付与された親水性繊維によって第1の吸収層の面方向に拡散されてしまう虞があった。
また、上述の吸水性樹脂粒子の集合体として、吸水性樹脂粒子の粒子径が小さいものを用いた場合は、粒子径が大きい粒子の集合体に比べて粒子集合体としての総表面積が大きく、吸水速度が速くなるため、表面シートを透過してきた排泄物は、その大部分が第2の吸収層において迅速に吸収されることとなるが、当該第2の吸収層内において、排泄物を吸収した吸水性樹脂粒子の粒子同士が付着してブロッキングを生じてしまい、その後に表面シートを透過してきた更なる排泄物が、上述のブロッキングによって前記第2の吸収層の表面で拡散してしまう虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、犬などの動物から排出された排泄物を、迅速に吸収することができるとともに、シートの面方向に拡散させずに吸収することができる動物用排泄物処理シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、これらのシートの間に位置する吸収体と、を備えた動物用排泄物処理シートであって、前記吸収体は、少なくとも親水性繊維を含む第1吸収コアと、前記表面シート及び前記第1吸収コアの間に位置し且つ複数の高吸収性ポリマー粒子によって構成された第2吸収コアと、を有していて、前記複数の高吸収性ポリマー粒子は、粒子径が355μm〜500μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる大粒径粒子群と、粒子径が150μm〜250μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる小粒径粒子群と、を含み、前記複数の高吸収性ポリマー粒子の全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の質量割合が、それぞれ15〜60質量%であり、前記複数の高吸収性ポリマー粒子の全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の合計質量割合が、50質量%以上である、という特定の構成を備えた動物用排泄物処理シートである。
【0008】
この態様1の動物用排泄物処理シートは、吸収体の第2吸収コアが、粒子径が355μm〜500μmである複数の高吸収性ポリマー粒子(以下、「複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子」ということがある。)からなる大粒径粒子群と、粒子径が150μm〜250μmである複数の高吸収性ポリマー粒子(以下、「複数の小粒径高吸収性ポリマー粒子」ということがある。)からなる小粒子径粒子群とを特定の質量割合で含む複数の高吸収性ポリマー粒子によって構成されているため、表面シートを透過してきた尿などの排泄物を前記第2吸収コア内の複数の小粒径高吸収性ポリマー粒子によって迅速に吸収することができるとともに、前記第2吸収コア内に複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子が存在することによって前記小粒径高吸収性ポリマー粒子同士のブロッキングを防ぎ、前記第2吸収コアにおける排泄物の表面拡散を抑制することができる。
また、前記第1吸収コアに到達した一部の排泄物は、前記第1吸収コア内の親水性繊維によって吸収された後、前記第2吸収コア内の大粒径高吸収性ポリマー粒子によって吸い上げられるように吸収されるため、前記第1吸収コア内における、前記親水性繊維に起因する排泄物の面方向拡散を抑制することができる。
したがって、本態様1の動物用排泄物処理シートは、犬などの動物から排出された排泄物を迅速に吸収することができるとともに、シートの面方向に拡散させずに吸収することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様(態様2)では、前記態様1の動物用排泄物処理シートにおいて、表面シートと第2吸収コアとの間に親水性シートを備え、当該親水性シートは、接着剤層を介して又は介さずに、表面シート及び第2吸収コアのそれぞれと接合されている。
【0010】
この態様2の動物用排泄物処理シートは、表面シートと第2吸収コアとの間に配置された親水性シートが、表面シート及び第2吸収コアのそれぞれと接合されているため、表面シートと第2吸収コアとの間に、面方向に広がる空隙が形成されにくく、当該空隙による排泄物の液溜りや第2吸収コアにおける表面拡散が生じにくくなっている。
したがって、本態様2の動物用排泄物処理シートは、排泄物の透過性(吸収速度)に優れるとともに、排泄物の第2吸収コアにおける表面拡散を更に生じにくくすることができる。
【0011】
更に本発明の別の態様(態様3)では、前記態様2の動物用排泄物処理シートにおいて、表面シートと親水性シートとの間には、第1接着剤層が配置されており、親水性シートと第2吸収コアとの間には、第2接着剤層が配置されており、前記第1接着剤層及び前記第2接着剤層は、それぞれの配置パターンが前記動物用排泄物処理シートの厚さ方向において少なくとも部分的に重複するように配置されている。
【0012】
表面シートと親水性シートとを接合する第1接着剤層の配置パターンと、親水性シートと第2吸収コアとを接合する第2接着剤層の配置パターンとが、動物用排泄物処理シートの厚さ方向において重複していると、当該重複している部分は、表面シートと親水性シートとの間及び親水性シートと第2吸収コアとの間に、面方向に広がる空隙が形成されにくいため、これら各シート間に排泄物の液溜りやシートの面方向の拡散(以下、「面方向拡散」ということがある。)が生じにくくなる。
したがって、本態様3の動物用排泄物処理シートは、排泄物の透過性(吸収速度)が更に優れるとともに、排泄物の面方向拡散が更に生じにくくなっている。
【0013】
更に本発明の別の態様(態様4)では、前記態様2又は3の動物用排泄物処理シートにおいて、前記親水性シートが親水性繊維により構成されていて、前記親水性シートにおける親水性繊維の繊維間距離が150μm未満である。
【0014】
この態様4の動物用排泄物処理シートは、前記親水性シートが親水性繊維によって構成されていて液透過性に優れているため、表面シートを透過してきた排泄物が、前記第2吸収コアへと移行しやすくなっている。
さらに、親水性シートを構成する親水性繊維の繊維間距離が、第2吸収コアに含まれる小粒径粒子群の高吸収性ポリマー粒子の粒子径よりも小さいため、本態様の動物用排泄物処理シートの上に犬などの動物が乗って動いたとしても、前記第2吸収コアに含まれる小粒径粒子群の高吸収性ポリマー粒子が、前記親水性シートを透過して外部へ放出されるというようなことが起こりにくくなっている。これにより、本態様の動物用排泄物処理シートは、上述の大粒径粒子群と小粒径粒子群との質量割合が変化しにくく、前記態様2又は3の動物用排泄物処理シートの効果を、より安定的且つ持続的に発揮することができる。
【0015】
更に本発明の別の態様(態様5)では、前記態様1〜4のいずれかの動物用排泄物処理シートにおいて、前記第1吸収コアに含まれる親水性繊維が、カチオン系界面活性剤を含むフラッフパルプである。
【0016】
この態様5の動物用排泄物処理シートは、前記第1吸収コアに含まれる親水性繊維が、カチオン系界面活性剤を含むフラッフパルプであり、前記親水性繊維(すなわち、パルプ)の表面がカチオン系界面活性剤によって一定の疎水性を有し、毛細管現象を発現しやすい構成を備えているため、前記第2吸収コアを透過してきた排泄物を、より迅速に前記第1吸収コア内に引き込むことができるとともに、前記第1吸収コア内において面方向拡散がより生じにくくなっている。
【0017】
更に本発明の別の態様(態様6)では、前記態様1〜5のいずれかの動物用排泄物処理シートにおいて、吸収体が、少なくとも第1吸収コア及び第2吸収コアを被覆するコアラップシートを含んでいる。
【0018】
この態様6の動物用排泄物処理シートは、少なくとも第1吸収コアと第2吸収コアとが、前記コアラップシートによって被覆されて一体化物となっているため、動物用排泄物処理シートの上に犬などの動物が乗って動いたとしても、第1吸収コアと第2吸収コアとの間に、面方向に広がる空隙が形成されにくく、当該空隙による排泄物の液溜りや、第1吸収コア及び第2吸収コア間における面方向拡散が生じにくくなっている。
また、吸収体において、第1吸収コアと第2吸収コアとが、このようなコアラップシートによって被覆されていると、これら吸収コアの型崩れを抑制することができるため、吸収体として、より安定した吸収性能を発揮することができる。
したがって、本態様6の動物用排泄物処理シートは、排泄物の面方向拡散をより生じにくくすることができるとともに、排泄物の透過性(吸収速度)等の吸収性能をより安定して発揮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、犬などの動物から排出された尿などの排泄物を、迅速に吸収することができるとともに、シートの面方向に拡散させずに吸収することができる動物用排泄物処理シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る動物用排泄物処理シートの斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る動物用排泄物処理シートの図1におけるII−II線に沿った断面図である。
図3図3は、第2吸収コアを構成する複数の高吸収性ポリマー粒子が大粒径粒子群のみからなる動物用排泄物処理シートが、尿を吸収する態様を模式的に示す、図2に対応する断面図である。
図4図4は、第2吸収コアを構成する複数の高吸収性ポリマー粒子が小粒径粒子群のみからなる動物用排泄物処理シートが、尿を吸収する態様を模式的に示す、図2に対応する断面図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態に係る動物用排泄物処理シートの図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の動物用排泄物処理シートの好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「広げた状態で排泄物の供給面が上方を向くように、水平面上に置いた対象物(例えば、動物用排泄物処理シート、表面シート、吸収体等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」といい、さらに、当該平面視による図を「平面図」という。
【0022】
そして、本明細書において、「幅方向W」は、「平面視における縦長の対象物の短手方向」を指し、「長さ方向L」は、「平面視における縦長の対象物の長手方向」を指し、「厚さ方向T」は、「広げた状態で水平面上に置いた対象物の厚さ方向」を指し、これらの幅方向W、長さ方向L及び厚さ方向Tは、それぞれ互いに直交する関係にある。
また、本明細書では、「動物用排泄物処理シートの厚さ方向Tにおいて、排泄物の供給面に相対的に近い側」を「供給面側」といい、「動物用排泄物処理シートの厚さ方向Tにおいて、排泄物の供給面に相対的に遠い側(或いは、後述する載置面に相対的に近い側)」を「載置面側」という。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の斜視図であり、図2は、動物用排泄物処理シート1の図1におけるII−II線に沿った断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、長さ方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有する、平面視にて矩形状のシートである。なお、本発明において、動物用排泄物処理シートの外形形状は、このような矩形状に限定されず、各種用途や意匠性等に応じて、正方形、多角形、円形、楕円形等の任意の形状を採用することができる。また、動物用排泄物処理シート1のサイズは、当該排泄物処理シートが適用される動物のサイズや種類等に応じて適宜設定することができ、例えば、適用される動物が犬の場合、長さ方向Lの長さは、400mm〜1200mm程度であり、幅方向Wの長さは、250mm〜800mm程度である。
【0024】
動物用排泄物処理シート1は、図1に示すように、広げた状態でペット等の動物の飼育空間(例えば、室内等)の所定位置に、後述する表面シートが排泄物の供給面側に位置するように載置されて、動物から排出される尿などの排泄物を吸収・保持し、前記飼育空間を清潔な状態に保つために使用される。なお、動物用排泄物処理シート1は、前記飼育空間の床面又は地面に直接載置しても、所定のホルダーやトレイ、敷材等を介して載置してもよい。
【0025】
ここで、本発明の動物用排泄物処理シートが適用される「動物」は、ペット等として飼育され得る動物であれば特に制限されず、犬や猫、ハムスター等の哺乳類のほか、例えば、鳥類や爬虫類、両生類等の様々な動物を対象とすることができる。
【0026】
また、本発明おいて、動物用排泄物処理シートが吸収・保持する「排泄物」は、後述する吸収体に吸収・保持され得るものであれば特に制限されず、例えば、糞、尿、よだれ等の唾液、血液などの液状ないし低粘度の各種体液が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、図1及び図2に示すように、厚さ方向Tにおいて、動物から排出された排泄物の供給面を形成する液透過性の表面シート2と、前記排泄物の供給面とは反対側の面であって前記動物用排泄物処理シート1の載置面(すなわち、動物用排泄物処理シートが載置される床面又は地面と対向する面)を形成する液不透過性の裏面シート4と、これらのシートの間に配置される吸液性の吸収体3と、を備えていて、表面シート2及び裏面シート4は、それぞれの周縁部において、ホットメルト型接着剤等の任意の接合手段により互いに接合されている。
【0028】
以下、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1を構成する各種部材について、詳細に説明する。
【0029】
[表面シート]
本実施形態において表面シート2は、図1及び図2に示すように、動物用排泄物処理シート1の厚さ方向Tにおいて、動物から排出された排泄物を最初に受ける位置(すなわち、供給面側の位置)に配置されていて、動物から排出された排泄物を、当該排泄物の供給面から反対側(載置面側)の面へと移行させることができる程度の液透過性を有するシート状部材によって構成されている。本発明において、表面シートを構成し得る液透過性のシート状部材としては、上述の液透過性を有するものであれば特に制限されず、例えば、SMS不織布(すなわち、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドの積層不織布)、エアースルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の任意の不織布や開孔フィルムなどを好適に用いることができる。なお、不織布は、界面活性剤により親水化処理が施されていてもよい。これらの中でも、液透過性や強度等の観点から、SMS不織布を用いることが好ましい。
【0030】
また、表面シートとして、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布(例えば、SMS不織布、スパンボンド不織布等)を用いる場合、その熱可塑性樹脂繊維の種類は、特に制限されず、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂などの公知の樹脂からなる繊維が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。なお、このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、芯鞘型繊維等の複合繊維や異形断面型繊維、立体捲縮繊維などを用いてもよい。
【0031】
さらに、上述の熱可塑性樹脂繊維は、例えば、界面活性剤や親水化剤等を利用した処理(例えば、繊維内部への界面活性剤の練り込み、繊維表面への界面活性剤の塗布等)などの親水化処理が施されていてもよく、また、顔料や香料、消臭剤、抗菌剤、殺菌剤などの任意の添加剤を含んでいてもよい。なお、これらの添加剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0032】
本発明において、表面シートを構成し得る不織布の坪量は、上述の液透過性を阻害しない限り特に制限されず、例えば、6g/m〜30/mである。坪量がこのような範囲内にあると、表面シートとして所定の強度を有するため、動物用排泄物処理シートの上に犬などの動物が乗っても破れにくく、また、表面シートを構成する繊維の繊維間距離が所定の範囲内となるため、当該表面シートにおいて、排泄物を供給面側から載置面側へ移行させる毛細管現象が発現しやすくなる。さらに、表面シートを透過して吸収体に吸収・保持された排泄物が、表面シートにおける繊維の密集により視認されにくくなるという利点もある。
【0033】
[吸収体]
本実施形態において吸収体3は、図2に示すように、表面シート2の供給面側とは反対側(すなわち、載置面側)に配置されていて、表面シート2を透過した排泄物を吸収し、保持する吸収性部材である。表面シート2と吸収体3とは、ホットメルト型接着剤等の任意の接着剤によって接合されており、当該接着剤は、排泄物の透過を妨げない程度の坪量(例えば、0.1g/m〜5g/m)及び塗工形態(例えば、スパイラル状、ドット状、ストライプ状等)で、表面シート2と吸収体3の間に配置されている。
【0034】
なお、本実施形態においては、吸収体3は、平面視にて、表面シート2及び裏面シート4よりも一回り小さい略矩形状の外形形状を有していて、動物用排泄物処理シート1の中央領域に配置されているが、本発明においては、このような態様に限定されず、例えば、吸収体は、矩形以外の任意の平面視形状を有していてもよく、また、動物用排泄物処理シートの中心から任意の方向に偏って配置されていてもよい。
【0035】
図2に示すように、吸収体3は、当該吸収体3内の載置面側(すなわち、裏面シート側)に位置し且つ排泄物を吸収し保持するための吸収性材料として少なくとも親水性繊維Pを含む、略シート状の第1吸収コア31と、当該吸収体3内の供給面側(すなわち、表面シート側)に位置し且つ排泄物を吸収し保持するための吸収性材料である複数の高吸収性ポリマー粒子Sによって構成された、第2吸収コア32と、これら第1吸収コア31及び第2吸収コア32を載置面側(すなわち、裏面シート側)から被覆する、少なくとも1枚の液透過性シートからなるコアラップシート33と、によって構成されている。
そして、第2吸収コア32を構成する複数の高吸収性ポリマー粒子Sは、粒子径が355μm〜500μmである複数の高吸収性ポリマー粒子(複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子S1)からなる大粒径粒子群と、粒子径が150μm〜250μmである複数の高吸収性ポリマー粒子(複数の小粒径高吸収性ポリマー粒子S2)からなる小粒径粒子群と、を含んでいて、さらに、前記複数の高吸収性ポリマー粒子Sの全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の質量割合が、それぞれ15〜60質量%の範囲内であり、且つ、前記複数の高吸収性ポリマー粒子Sの全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の合計質量割合が、50質量%以上である。
【0036】
このように構成された動物用排泄物処理シート1は、吸収体3における第2吸収コア32が、複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子S1からなる大粒径粒子群と複数の小粒径高吸収性ポリマー粒子S2からなる小粒子径粒子群とを特定の質量割合で含む、複数の高吸収性ポリマー粒子Sによって構成されているため、表面シート2を透過してきた尿などの排泄物を、第2吸収コア32における複数の小粒径高吸収性ポリマー粒子S2によって迅速に吸収することができるとともに、前記第2吸収コア32内に複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子S1が存在することによって前記小粒径高吸収性ポリマー粒子S2同士のブロッキングを防ぎ、前記第2吸収コア32における排泄物の表面拡散を抑制することができる。
また、第2吸収コア32を透過して第1吸収コア31に到達した一部の排泄物は、当該第1吸収コア31内の親水性繊維Pによって吸収された後、前記第2吸収コア32内の大粒径高吸収性ポリマー粒子S1によって吸い上げられるように吸収されるため、前記第1吸収コア31内における、親水性繊維Pに起因する排泄物の面方向拡散を抑制することができる。
したがって、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、犬などの動物から排出された排泄物を、迅速に吸収することができるとともに、シートの面方向に拡散させずに吸収することができる。
【0037】
なお、動物用排泄物処理シートが、尿などの排泄物を迅速に吸収することができると、排泄直後から排泄物に対する消臭効果や隠蔽効果を発揮することができ、動物の飼い主等に対して快適な飼育環境を提供することができる。さらに、動物用排泄物処理シートが、尿などの排泄物をシートの面方向に拡散させずに吸収することができると、犬などの動物が複数回の排泄を行いやすくなり、また、動物の足や体毛等が濡れにくくなる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1のように、吸収体3が上述のような第1吸収コア31及び第2吸収コア32によって構成されていると、犬などの動物が動物用排泄物処理シート1の上に乗ったときに、動物の足から掛かる圧力によって前記第1吸収コア31内の親水性繊維Pの間に保持された排泄物が滲み出てきたとしても、この滲み出てきた排泄物を、前記第1吸収コア31の供給面側に位置する第2吸収コア32内の複数の高吸収性ポリマー粒子S(特に、複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子S1)によって吸収することができるので、表面シート2の供給面に向かう排泄物の液戻りが生じにくくなる。その結果、吸収体3から戻ってきた排泄物によって、動物の足が汚れたり、悪臭が発生したりすることを防ぐことができる。
【0039】
ここで、本発明の動物用排泄物処理シートの比較形態として、吸収体の第2吸収コアが複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子からなる大粒径粒子群のみによって構成された場合、及び、吸収体の第2吸収コアが複数の小粒径高吸収性ポリマー粒子からなる小粒径粒子群のみによって構成された場合の動物用排泄物処理シートについて、それぞれのシートが尿を吸収するメカニズムを、図面を参照しながら説明する。
図3は、第2吸収コアを構成する複数の高吸収性ポリマー粒子が大粒径粒子群のみからなる動物用排泄物処理シートが、尿を吸収する態様を模式的に示す、図2に対応する断面図であり、図4は、第2吸収コアを構成する複数の高吸収性ポリマー粒子が小粒径粒子群のみからなる動物用排泄物処理シートが、尿を吸収する態様を模式的に示す、図2に対応する断面図である。なお、図3及び図4に示す各動物用排泄物処理シート10、11において、図1及び図2に示す動物用排泄物処理シート1と同じ部材については、図1及び図2と同一の符号を付している。
【0040】
図3に示す動物用排泄物処理シート10は、第2吸収コア32を構成する複数の高吸収性ポリマー粒子S1’が大粒径粒子群のみからなり、当該大粒径粒子群は、相対的に粒子群(粒子集合体)としての総表面積が小さく、吸水速度が遅いため、表面シート2を透過した尿Uは、その大部分が第2吸収コア32では吸収されずに、第1吸収コア31において吸収されることとなり、排泄直後からすると、迅速とはいえないタイミングで吸収されることになる。さらに、前記第2吸収コア32を透過して第1吸収コア31に到達した尿Uは、図3に示すように、前記第1吸収コア31内の親水性繊維Pによって吸収されるものの、当該親水性繊維Pによって第1吸収コア31内の面方向に拡散されやすくなっている。
【0041】
また、図4に示す動物用排泄物処理シート11は、第2吸収コア32を構成する複数の高吸収性ポリマー粒子S2’が小粒径粒子群のみからなり、当該小粒径粒子群は、相対的に粒子群(粒子集合体)としての総表面積が大きく、吸水速度が速いため、表面シート2を透過した尿Uは、その大部分が第2吸収コア32の前記小粒径粒子群において迅速に吸収されることとなるが、当該第2吸収コア32において、尿Uを吸収した高吸収性ポリマー粒子S2’の粒子同士が付着してブロッキングBを生じてしまい、その後に表面シート2を透過してきた尿Uが、上述のブロッキングBによって前記第2吸収コア32の表面で拡散しやすくなる。
【0042】
以下、本発明の動物用排泄物処理シートの吸収体を構成する各種部材について、更に詳細に説明する。
【0043】
(第1吸収コア)
本発明において、第1吸収コアは、少なくとも親水性繊維を含む吸収性材料によって構成されている。第1吸収コアに含まれる親水性繊維は、液体を吸収、保持することができるものであれば特に制限されず、例えば、広葉樹や針葉樹由来の木材パルプ、草植物パルプ等のパルプ;レーヨン等の再生繊維などのセルロース系親水性繊維を用いることができる。中でも、繊維長が長いフラッフパルプが好ましい。また、第1吸収コアに含まれる親水性繊維の坪量は、特に制限されないが、吸液性等の観点から、30g/m〜250g/mの範囲内であることが好ましい。
【0044】
また、本発明の動物用排泄物処理シートにおいては、第1吸収コアに含まれる親水性繊維として、カチオン系界面活性剤を含むフラッフパルプを、特に好適に用いることができる。このようなカチオン系界面活性剤を含むフラッフパルプは、親水性繊維(すなわち、パルプ)の表面が上述のカチオン系界面活性剤によって一定の疎水性を有しており、毛細管現象を発現しやすいため、このようなフラッフパルプを第1吸収コアに含まれる親水性繊維として用いると、前記第2吸収コアを透過してきた排泄物を、より迅速に第1吸収コア内に引き込むことができるとともに、当該第1吸収コア内に引き込まれた排泄物は上述の親水性繊維表面の疎水性によって弾かれやすいため、当該第1吸収コア内における排泄物の面方向拡散を、より効果的に抑制することができる。
【0045】
ここで、カチオン系界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウムン塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ポリアミド誘導体などを用いることができる。これらの中でも、第4級アンモニウム塩は、抗菌性を有し、吸収体に抗菌性を付与することができるため、好適に用いることができる。
【0046】
また、第1吸収コアは、本発明の効果を阻害しない範囲内において、他の吸収性材料を含むことができる。そのような他の吸収性材料としては、例えば、高吸収性ポリマーなどが挙げられる。高吸収性ポリマーは、特に吸水特性に優れたポリマー(例えば、ボルテックス法に基づく吸水速度が10秒以下のポリマー)であり、当分野において「SAP」と称されることがあるポリマーである。かかる高吸収性ポリマーは、後述する第2吸収コアを構成する高吸収性ポリマーと同一の高吸収性ポリマーでも、異なる高吸収性ポリマーでもよい。第1吸収コアが、このような他の吸収性材料を含んでいると、吸収体全体として吸水量や保水量が増大するため、動物から排出される排泄物を、長時間に亘ってより確実に吸収・保持することができる。
【0047】
(第2吸収コア)
本発明において、第2吸収コアは、図2に示す実施形態のように、前記第1吸収コアの供給面側の表面において、当該表面の全体に亘って面状に分散した状態で存在する複数の高吸収性ポリマー粒子によって構成されている。第2吸収コアを構成する複数の高吸収性ポリマー粒子は、上述したとおり、粒子径が355μm〜500μmである複数の高吸収性ポリマー粒子(複数の大粒径高吸収性ポリマー粒子)からなる大粒径粒子群と、粒子径が150μm〜250μmである複数の高吸収性ポリマー粒子(複数の小粒径高吸収性ポリマー粒子)からなる小粒径粒子群と、を含んでいて、さらに、前記複数の高吸収性ポリマー粒子の全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の質量割合が、それぞれ15〜60質量%の範囲内であり、且つ、前記複数の高吸収性ポリマー粒子の全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の合計質量割合が、50質量%以上である。本発明の効果(特に、排泄物をシートの面方向に拡散させずに吸収することができるという効果)が、より有利に得られるという観点から、前記複数の高吸収性ポリマー粒子の全粒子の質量に対する、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の質量割合は、それぞれ15質量%〜40質量%及び20質量%〜60質量%の範囲内が更に好ましく、また、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の合計質量割合は、65質量%〜75質量%の範囲内が更に好ましい。
【0048】
なお、本明細書において、高吸収性ポリマー粒子の粒子径は、ふるい分け法、すなわち、ふるいの目開きによって決定される粒子の大きさであり、質量割合は、目開きの異なる複数のふるいを備えた振動ふるい機(例えば、Retsch社製「AS−200型」)を用いて、所定質量(初期質量(g))の複数の粒子を所定時間(例えば、3分間)ふるい掛けし、各ふるいに残存する粒状物の質量(g)と上述の初期質量(g)から質量百分率(%)を算出することによって、得ることができる。なお、上述の目開きの異なる複数のふるいとしては、例えば、目開きがそれぞれ150μm、250μm、355μm、500μmである複数のふるいを用いることができる。
【0049】
本発明において、前記第2吸収コアを構成する高吸収性ポリマーは、特に吸水特性に優れたポリマー(例えば、ボルテックス法に基づく吸水速度が10秒以下のポリマーであり、当分野において「SAP」と称されることがある。)であるが、その具体的な組成等は特に制限されず、例えば、ポリアクリル酸系、デンプン系、セルロース系等の任意の高吸収性ポリマーを採用することができる。この第2吸収コアを構成する高吸収性ポリマーの坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、吸液性等の観点から、5g/m〜80g/mの範囲内であることが好ましく、10g/m〜60g/mの範囲内であることが更に好ましい。
【0050】
なお、上述の実施形態では、吸収体3は、第1吸収コア31及び第2吸収コア32の2個の吸収コアによって構成されているが、本発明においては、このような構成に限定されず、上述の第1吸収コア及び第2吸収コアを含むものである限り、吸収コアは、3個以上の複数の吸収コアから構成されていてもよい。そのような構成としては、例えば、第1吸収コアの載置面側に、更に別の第3吸収コアが配置された構成などが挙げられる。
【0051】
(コアラップシート)
本発明において、コアラップシートは、第1吸収コア、第2吸収コア等とともに吸収体を構成する液透過性のシート状部材であり、当該コアラップシートは、第1吸収コアと、第2吸収コアと、任意の親水性シートとを、載置面側(すなわち、裏面シート側)から被覆して、これらの吸収コア等を一体化し、各吸収コアの型崩れや前記親水性シートの位置ズレ、高吸収性ポリマー粒子の漏出等を防止するように機能するものである。本発明において、コアラップシートは、液透過性を有するシート状部材であれば特に制限されず、例えば、後述する親水性シートと同様のティッシュペーパー(例えば、針葉樹晒クラフトパルプを主原料として形成された、坪量が12g/m〜25g/mのティッシュペーパー等)のほか、エアースルー不織布、スパンボンド不織布などの任意の不織布を用いることができる。
【0052】
上述の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1では、第1吸収コア31と第2吸収コア32とが、コアラップシート33によって被覆されて一体化物となっているため、動物用排泄物処理シート1の上に犬などの動物が乗って動いたとしても、第1吸収コア31と第2吸収コア32との間に、面方向に広がる空隙が形成されにくく、当該空隙による排泄物の液溜りや、第1吸収コア31及び第2吸収コア32間における面方向拡散が生じにくくなっている。また、吸収体3において、第1吸収コア31と第2吸収コア32とが、このようなコアラップシート33によって被覆されていると、これら吸収コアの型崩れを抑制することができるため、吸収体として、より安定した吸収性能を発揮することができる。
【0053】
(親水性シート)
本発明の動物用排泄物処理シートは、表面シートと第2吸収コアとの間に、親水性シートが配置されていてもよい。ここで、図5は、本発明の別の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1’の図2に対応する断面図である。
図5に示すように、本発明の別の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1’は、表面シート2と第2吸収コア32との間に親水性シート34を備えていて、該親水性シート34は、接着剤層を介して又は介さずに、表面シート2及び第2吸収コア32のそれぞれと接合されている。この別の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1’は、表面シート2と第2吸収コア32との間に、親水性シート34が介在し、且つ、前記親水性シート34は、表面シート2及び第2吸収コア32のそれぞれと接合されているため、表面シート2と第2吸収コア32との間に、面方向に広がる空隙が形成されにくく、当該空隙による排泄物の液溜りや第2吸収コア32における表面拡散が生じにくくなっている。
したがって、かかる動物用排泄物処理シート1’は、排泄物の透過性(吸収速度)に優れるとともに、排泄物の第2吸収コアにおける表面拡散を更に生じにくくすることができる。
【0054】
なお、親水性シート34は、図5に示すように、第1吸収コア31及び第2吸収コア32とともに、上述のコアラップシート33によって載置面側から被覆されて、吸収体3を構成してもよいし、第1吸収コア31及び第2吸収コア32をコアラップシート33によって被覆してなる吸収体3の、供給面側の表面に配置されていてもよい。吸収体3において、親水性シート34が、第2吸収コア32の供給面側(表面シート側)の表面を覆うように配置されていると、前記コアラップシート33と協働して、第1吸収コア31及び第2吸収コア32の型崩れや高吸収性ポリマー粒子の漏出等を抑制することができるため、吸収体として、より安定した吸収性能を発揮することができる。
【0055】
上述の別の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1’は、表面シート2と親水性シート34との間に第1接着剤層(不図示)が配置され、親水性シート34と第2吸収コア32との間に第2接着剤層(不図示)が配置されていて、これらの接着剤層は、それぞれの配置パターンが動物用排泄物処理シート1’の厚さ方向Tにおいて少なくとも部分的に重複するように配置されている。表面シート2と親水性シート34とを接合する第1接着剤層の配置パターンと、親水性シート34と第2吸収コア32とを接合する第2接着剤層の配置パターンとが、動物用排泄物処理シート1’の厚さ方向Tにおいて重複していると、当該重複している部分は、表面シート2と親水性シート34との間及び親水性シート34と第2吸収コア32との間に、面方向に広がる空隙が形成されにくくなるため、これら各シート間における排泄物の液溜りや面方向拡散が生じにくくなる。
【0056】
なお、本発明において、親水性シートと第2吸収コアとの接合形態は、上述の接着剤によるものに限定されず、親水性シートと第2吸収コアは、水スプレーによって接着されていてもよい。この水スプレーは、吸収体を製造する際に、複数の高吸収性ポリマー粒子から構成される第2吸収コアの上面(すなわち、供給面側の表面)に水を噴霧(スプレー)し、その上に親水性シートを貼り付けるという接着手段である。なお、噴霧された水は、その後蒸発して、当該水の噴霧箇所が乾燥した状態となるので、上述の親水性シートと第2吸収コアは、直接的に(すなわち、接着剤を介さずに)接合された状態となる。親水性シートと第2吸収コアがこのような水スプレーによって接着されていると、親水性シートと第2吸収コアとの間に接着剤層が介在せず、面方向に広がる空隙が形成されにくいため、表面シートを透過してきた尿などの排泄物を迅速に第2吸収コアに移行させることができるとともに、親水性シートと第2吸収コアとの間において、排泄物の液溜りや面方向拡散が生じにくくなる。
【0057】
本発明において、表面シートと第2吸収コアとの間に配置される親水性シートは、液透過性を有する親水性のシートであれば特に制限されず、例えば、親水性繊維によって構成された繊維シートなどを用いることができ、更に具体的には、上述のコアラップシートと同様のティッシュペーパー(例えば、針葉樹晒クラフトパルプを主原料として形成された、坪量が12g/m〜25g/mのティッシュペーパー等)のほか、エアースルー不織布、スパンボンド不織布などの任意の不織布を用いることができる。また、親水性シートは、青色や緑色、黄色、オレンジ色、赤色等の任意の色に着色されていてもよい。表面シートと第2吸収コアとの間に配置される親水性シートがこのように着色されていると、第1吸収コア及び第2吸収コアに吸収・保持された排泄物の色が、親水性シートの色彩に紛れて目立たなくなるため、吸収体に保持された排泄物が表面シート側から視認されにくくなる。
【0058】
また、本発明において、表面シートと第2吸収コアとの間に配置される親水性シートは、親水性繊維により構成され、当該親水性シートにおける親水性繊維の繊維間距離が150μm未満であるものが好ましい。このような構成の親水性シートは、液透過性に優れているため、表面シートを透過してきた排泄物を、迅速に第2吸収コアに移行させることができる。さらに、親水性シートを構成する親水性繊維の繊維間距離が、第2吸収コアに含まれる小粒径高吸収性ポリマー粒子の粒子径よりも小さいため、動物用排泄物処理シートの上に犬などの動物が乗って動いたとしても、前記第2吸収コアに含まれる小粒径高吸収性ポリマー粒子が、前記親水性シートを透過して外部へ放出されるというようなことが起こりにくくなる。これにより、かかる親水性シートを備えた動物用排泄物処理シートは、上述の大粒径粒子群と小粒径粒子群との質量割合が変化しにくく、本発明の効果(すなわち、犬などの動物から排出された排泄物を迅速に吸収することができるとともに、シートの面方向に拡散させずに吸収することができるという効果)を、より安定的且つ持続的に発揮することができる。なお、繊維間距離については、一般に水銀圧入法等の種々の測定方法が知られているが、本明細書においては、所定の粒子径を有する粒子が透過し得る繊維間距離という程度の精度で足り、具体的に、「繊維間距離が150μm未満である」とは、繊維シート上に、粒子径が150μmである複数の高吸収性ポリマー粒子を配置して、該繊維シートを振動させたときに、上述の高吸収性ポリマー粒子が透過しない程度の繊維間距離を意味する。
【0059】
[裏面シート]
本発明において、裏面シートは、図2に示す実施形態のように、動物用排泄物処理シートの厚さ方向Tにおいて、当該動物用排泄物処理シートが載置される床面又は地面と対向するように配置されて、動物から排出された尿などの排泄物の漏洩を防ぐように機能する、液不透過性のシート状部材である。このような裏面シートを構成し得る液不透過性のシート状部材は、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等によって形成された樹脂フィルム、該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体、各種樹脂フィルム同士を積層した積層樹脂フィルム(例えば、ポリエチレン/ポリプロピレンの積層フィルム)、撥水性又は疎水性の不織布などを好適に用いることができる。
また、裏面シートは、上述の表面シートと同様に、吸収体を覆うことができる平面視形状及び寸法を有しており、上述の実施形態においては、表面シート及び裏面シートは、平面視にて、略同一の矩形状及び寸法を有している。
【0060】
本発明の動物用排泄物処理シートは、例えば、次のようにして製造することができる。
(1)吸収体の製造
吸収性材料として少なくとも親水性繊維を含む略平板状の第1吸収コアを用意し、この第1吸収コアの一方の表面(すなわち、動物用排泄物処理シートの供給面側となる表面)に、粒子径が355μm〜500μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる大粒径粒子群と、粒子径が150μm〜250μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる小粒径粒子群とを所定の質量割合及び所定の合計質量割合で含む複数の高吸収性ポリマー粒子を、均一に配置することにより第2吸収コアを形成し、当該第1吸収コア及び第2吸収コアの積層体からなる吸収コアを得る。さらに、この吸収コアの上面に、ホットメルト型の接着剤を用いて液透過性の親水性シートを貼り付けた後、当該親水性シート及び吸収コアを下面側(すなわち、動物用排泄物処理シートの載置面側)からコアラップシートによって被覆することにより、吸収体を得る。
(2)動物用排泄物処理シートの製造
得られた吸収体の上面(すなわち、動物用排泄物処理シートの供給面側となる表面)に、ホットメルト型の接着剤を用いて液透過性の表面シートを接合するとともに、吸収体の下面(すなわち、動物用排泄物処理シートの載置面側の表面)に、液不透過性の裏面シートを配置し、表面シートと裏面シートの間に吸収体を挟んだ状態で、表面シートと裏面シートのそれぞれの周縁部を、ホットメルト型の接着剤を用いて接合することにより動物用排泄物処理シートを得ることができる。
【0061】
本発明の動物用排泄物処理シートは、上述の各実施形態や後述する実施例等に制限されることなく、本発明の目的や趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を例示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
実施例1〜3及び比較例1〜4
(1)吸収体の製造
坪量が60g/mのフラッフパルプからなる第1吸収コアの上面に、粒子径が355μm〜500μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる大粒径粒子群と、粒子径が150μm〜250μmである複数の高吸収性ポリマー粒子からなる小粒径粒子群とを下記の表1に示す各質量割合及び各合計質量割合で含む複数の高吸収性ポリマー粒子を、均一に配置して第2吸収コアを形成し、前記大粒径粒子群及び前記小粒径粒子群の質量割合及び合計質量割合が異なる複数種類の吸収コアを得た。このようにして得られた各吸収コアの上面に、ホットメルト型の接着剤を用いて坪量が12.5g/mのティッシュペーパーからなる親水性シートを貼り付けた後、当該親水性シート及び吸収コアを、坪量が12.5g/mのティッシュペーパーからなるコアラップシートによって下面側から被覆することにより、実施例1〜3及び比較例1〜4の動物用排泄物処理シートに用いる各吸収体を作製した。
(2)動物用排泄物処理シートの製造
作製した各吸収体について、吸収体の上面にホットメルト型の接着剤を用いて坪量が17g/mのSMS不織布からなる表面シートを接合するとともに、吸収体の下面にポリエチレン/ポリプロピレンの積層フィルムを裏面シートとして配置し、表面シートと裏面シートのそれぞれの周縁部を、ホットメルト型の接着剤によって接合することにより、実施例1〜3及び比較例1〜4の動物用排泄物処理シートを得た。
【0064】
実施例1〜3の動物用排泄物処理シートの第2吸収コアに用いた複数の高吸収性ポリマー粒子について、下記のボルテックス法に基づく吸水速度の測定方法に従って、それぞれの吸水速度を測定した。また、吸水速度の参考例として、大粒径粒子群のみからなる複数の高吸収性ポリマー粒子(参考例1)及び小粒径粒子群のみからなる複数の高吸収性ポリマー粒子(参考例2)についても、同様に吸水速度を測定した。これらの吸水速度の測定結果は、下記の表1に示す。
【0065】
[吸水速度の測定方法]
1)100mlビーカーに、50gの生理食塩水を入れる。
2)マグネットスターラーを用いて、直径8mm、長さ30mmの撹拌子を600rpmの回転数で回転させることにより、生理食塩水を撹拌する。
3)2gの複数の高吸水性ポリマー粒子をビーカーに投入し、時間の計測を開始する。
4)撹拌を続けながら、生理食塩水に渦の発生がなくなるまでの時間(秒)を測定し、その時間を吸水時間(吸水速度)(秒)とする。
【0066】
【表1】
【0067】
また、上述のようにして得られた実施例1〜3及び比較例1〜4の動物用排泄物処理シートについて、下記の測定方法に従って液体拡散面積(cm)を測定し、動物用排泄物処理シートの面方向における拡散性を評価した。液体拡散面積の測定結果は、下記の表2に示す。
【0068】
[液体拡散面積の測定方法]
(1)測定対象となる動物用排泄物処理シートの測定箇所(但し、折り目を有する部分を除く。)に、外径66.6mm、内径60.2mm、高さ53mmの塩化ビニル製の管を配置する。
(2)0.9%の生理食塩水を入れたビュレットを上記塩化ビニル製の管内に挿入し、動物用排泄物処理シートから10mm上方の位置に固定する。
(3)上記ビュレットから、0.9%の生理食塩水40mLを6秒で滴下する。
(4)生理食塩水を滴下してから5分経過した時点で、生理食塩水の所定の第1方向における拡散長(cm)、及び当該第1方向と直交する第2方向における拡散長(cm)をそれぞれ測定する。なお、本発明の実施例及び比較例の動物用排泄物処理シートを測定するに当たっては、上記第1方向は、動物用排泄物処理シートを製造する際の搬送方向(いわゆる、MD方向)とし、上記第2方向は、前記MD方向と直交する方向(いわゆる、CD方向)とした。
(5)測定した第1方向における拡散長及び第2方向における拡散長を用いて、以下の計算式に従って液体拡散面積(cm)を算出する。
液体拡散面積=(第1方向の拡散長/2)×(第2方向の拡散長/2)×3.14
【0069】
【表2】
【0070】
本発明の実施例1〜3の動物用排泄物処理シートは、いずれも、模擬排泄物としての生理食塩水を、迅速に吸収することができ、また、表2に示すように、液体拡散面積が小さく、シートの面方向に拡散させずに吸収することができた。
一方、比較例1〜4の動物用排泄物処理シートは、いずれも、第2吸収コアにおける高吸収性ポリマーの大粒径粒子群及び小粒径粒子群の質量割合がそれぞれ15〜60質量%の範囲外であったため、液体拡散面積が大きく、模擬排泄物(生理食塩水)を、シートの面方向に拡散させずに吸収することができなかった。
【符号の説明】
【0071】
1 動物用排泄物処理シート
2 表面シート
3 吸収体
31 第1吸収コア
32 第2吸収コア
33 コアラップシート
34 親水性シート
4 裏面シート
図1
図2
図3
図4
図5