(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
偏光子と、偏光子の少なくとも片面に積層された機能層とを含む偏光板であって、偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率から、機能層の偏光子透過軸方向の弾性率を差し引いた値が、−1100MPa以上1668MPa以下である、偏光板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る偏光板および画像表示装置について詳述するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明の偏光板は、偏光子と、偏光子の少なくとも片面に積層された機能層とを含む。例えば、本発明の1つの実施形態において、
図1に示すように、偏光板10は、偏光子1と、その両面にそれぞれ積層された第1機能層3および第2機能層5を含むものであってよい。本発明の偏光板は、更に、その片面側の表面に、例えば
図2に示す偏光板11のように少なくとも一方の機能層(図示する態様では第2機能層5)の偏光子1と反対側の面に、粘着剤層7が積層されてよく、かかる粘着剤層7は最表面に剥離層(図示せず)を有していても、いなくてもよい。本発明の別の実施形態において、
図3に示すように、偏光板12は、偏光子1と、その片面に積層された機能層3と、偏光子1のもう片面に積層された粘着剤層7を含むものであってよい。しかしながら、本発明の偏光板の構成(積層順序等)は、これら実施形態に限定されず、偏光子と、偏光子の少なくとも片面に積層された機能層とを含む限り、任意の構成を有し得る。
【0013】
本発明における「偏光子」は、自然光などの光を直線偏光に変換する機能を有する部材であり、透過軸と吸収軸を有する。偏光子の透過軸方向は、偏光子に自然光を透過させたときの透過光の振動方向として理解される。一方、偏光子の吸収軸は、偏光子の透過軸に直交する。なお、一般に、偏光子は延伸フィルムであり得、偏光子の吸収軸方向は、その延伸方向(MD)に一致し得、偏光子の透過軸方向は、幅方向(TD)に一致し得る。
【0014】
本発明において「機能層」とは、偏光子に対して何らかの機能、例えば物理的、機械的および/または光学的な機能を発揮または付与することを目的として設けられる層を意味する。機能層は、偏光子に対して任意の適切な方法で積層され、例えば接着剤により偏光子に接着されていてよい。
【0015】
かかる機能層には、例えば、保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが含まれ、これらのいずれかの単層または任意の2つ以上の積層体であってよい。保護フィルムは、偏光子を保護する機能を発揮し得るものであればよく、光学機能を有していなくても、あるいは、光学機能を兼ね備えるもの、例えば位相差フィルムまたは輝度向上フィルム等としても機能するものであってもよい。また、保護フィルムの偏光子と接着される側と反対側の面にはハードコート層、反射防止層、防眩層等の層が形成されていてもよい。本発明を限定するものではないが、機能層は、保護フィルム単独であってよく、保護フィルムと位相差フィルムとの貼合品等であってよい。
【0016】
本発明の偏光板は、偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率から、機能層の偏光子透過軸方向の弾性率を差し引いた値(ΔE、以下、単に「弾性率差」とも言う)が、−1100MPa以上であることを満たす(即ち、下記式(1)を満たす)。
ΔE=E
P−E
F≧−1100 ・・・(1)
E
P: 偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率(MPa)
E
F: 機能層の偏光子透過軸方向の弾性率(MPa)
本発明における用語「偏光子透過軸方向」は、偏光子の透過軸方向と平行であるかまたは略平行(なす角度が±7度以内)となる方向を意味する。
【0017】
上記の弾性率差ΔEが−1100MPa以上であることにより、水と接触する環境下における耐クラック性が向上し、耐久性に優れる偏光板が提供される。かかる本発明の偏光板は、結露を生じるような環境下においても、光抜け(偏光顕微鏡にてクロスニコルで観察した場合の光漏れ)、割れなどを生じることなく良好な偏光特性を示すことができる。弾性率差ΔEは、約−1000MPa以上であることがより好ましく、上限は特に限定されないが、例えば約3000MPa以下、特に約2500MPa以下、好ましくは2000MPa以下、さらに好ましくは1500MPa以下であってよい。
【0018】
偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pは、偏光子の原料および製法等により異なり得るが、例えば約3500〜6000MPa、好ましくは5500MPa以下、より好ましくは5000MPa以下であり得る。偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pは、弾性率差ΔE=E
P−E
Fを大きくするためには、より大きいほうが好ましい。一方で、偏光板を成形加工する際に発生し得るクラックを抑制する観点からは、偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pは、より小さいほうが好ましい。偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pが上記の範囲であると、これらを両立し易くなる。本発明を限定するものではないが、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸、染色、ホウ酸溶液中での架橋等に付して得られる偏光子の場合、延伸倍率を大きくすること、偏光子中のホウ素含有率を高くすること、および/または、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のホウ酸以外の架橋剤を導入することによって、偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率をより大きくすることができる。
【0019】
偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率は、所定温度(代表的には23℃)での偏光子の偏光子透過軸方向の引張弾性率(MPa)として測定される。より詳細には、偏光子から試験片を切り出し、所定温度環境下にて、試験機で試験片の偏光子透過軸方向両端部をつかんで偏光子透過軸方向に沿って引っ張り、これにより得られる応力−ひずみ曲線における初期の直線の傾きから算出することができる。
【0020】
機能層の偏光子透過軸方向の弾性率E
Fは、機能層の組成や、光学特性の有無または程度等により異なり得、例えば約1000〜10000MPaの範囲から、偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pに応じて上記式(1)を満たすように、適宜選択され得る。機能層の偏光子透過軸方向の弾性率E
Fは、弾性率差ΔE=E
P−E
Fを大きくするためには、より小さいほうが好ましい。本発明を限定するものではないが、機能層が配向性を有する場合には配向の程度を小さくすること、および/または、主鎖に環構造等の剛直な構造を有しない組成の材料で機能層を構成することによって、機能層の偏光子透過軸方向の弾性率をより小さくすることができる。なお、機能層の「偏光子透過軸方向」は、機能層を偏光子に積層した場合に、偏光子の透過軸方向と平行であるかまたは略平行(なす角度が±7度以内)となる方向を意味する。
【0021】
機能層の偏光子透過軸方向の弾性率は、所定温度(代表的には23℃)での機能層の偏光子透過軸方向の引張弾性率(MPa)として測定される。より詳細には、機能層から試験片を切り出し、所定温度環境下にて、試験機で試験片の偏光子透過軸方向両端部をつかんで偏光子透過軸方向に沿って引っ張り、これにより得られる応力−ひずみ曲線における初期の直線の傾きから算出することができる。
【0022】
図1および
図2に示すように偏光子1の両面にそれぞれ第1機能層3および第2機能層5が積層されている場合、本発明の偏光板は、偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率から、第1機能層の偏光子透過軸方向の弾性率を差し引いた値が、−1100MPa以上であり、かつ、偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率から、第2機能層の偏光子透過軸方向の弾性率を差し引いた値が、−1100MPa以上であることを満たす。この場合、上記式(1)中のE
Fは、第1機能層の偏光子透過軸方向の弾性率と第2機能層の偏光子透過軸方向の弾性率とが同じときはその値であり、異なるときはいずれか大きい方の値で代表され得る。
【0023】
図2および
図3に示すように、本発明の偏光板に含まれ得る粘着剤層7は(その表面に剥離層が存在する場合には、剥離層を剥がした後に)、偏光板11、12を他の部材に貼り合わせるために使用され得る。
【0024】
かかる粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率は、5000kPa以下であってもよく、1000kPa以下であることが好ましく、これにより、偏光板を粘着剤層を介して液晶表示装置等に貼合した際に効果的に水と接触する環境下における耐クラック性を向上させることができる。粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率は、約500kPa以下であることがより好ましく、150kPa以下であることがさらに好ましい。粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率の下限は特に限定されないが、例えば約50kPa以上であってよい。本発明を限定するものではないが、例えば、公知の粘着剤に、ウレタンアクリレート系オリゴマー等のオリゴマーを配合すること、および/または、イソシアネート系架橋剤等の架橋剤を添加することによって、粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率を上記の範囲に調整することができる。粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率が上記の範囲であると、偏光板の寸法変化の抑制と応力の緩和を両立し易くなる。なお、粘着剤層の「偏光子透過軸方向」は、粘着剤層を偏光子に積層した場合に、偏光子の透過軸方向と平行であるかまたは略平行(なす角度が±7度以内)となる方向を意味する。
【0025】
粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率は、所定温度(代表的には23℃)での粘着剤層の偏光子透過軸方向の引張弾性率(kPa)として測定される。より詳細には、粘着剤層から試験片を切り出し、所定温度環境下にて、試験機で試験片の偏光子透過軸方向両端部をつかんで偏光子透過軸方向に沿って引っ張り、これにより得られる応力−ひずみ曲線における初期の直線の傾きから算出することができる。
【0026】
例えば偏光板11は、
図4に示すように粘着剤層7を介して他の部材15に貼り合わせられて、画像表示装置20を構成し得る。他の部材は、特に限定されないが、例えば液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス素子などであってよく、代表的にはこれらを構成するガラス板上に、偏光板が粘着剤層を介して貼り合わせられ得る。画像表示装置は、液晶セルの場合は液晶表示装置と称され、有機エレクトロルミネッセンス素子の場合は有機エレクトロルミネッセンス表示装置と称される。しかしながら、本発明の画像表示装置は、かかる実施形態に限定されず、液晶セルまたは有機エレクトロルミネッセンス素子と、本発明の偏光板とを含む限り、任意の適切な構成を有し得る。
【0027】
以下、本発明の偏光板および画像表示装置について、それらの製造方法を通じてより詳細に説明する。
【0028】
本発明の偏光板を製造するため、偏光子、機能層、および使用する場合には粘着剤層を準備する。
【0029】
[偏光子]
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸、染色、ホウ酸溶液中での架橋等に付して得たものであり得る。
【0030】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80モル%以上の範囲であり得るが、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールであってもよく、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂をエチレンおよびプロピレン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸等の不飽和カルボン酸;不飽和カルボン酸のアルキルエステルおよびアクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは1500〜8000であり、さらに好ましくは2000〜5000である。
【0032】
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂から構成される原反フィルムを一軸延伸し、水で膨潤させ(膨潤工程)、二色性色素で染色し(染色工程)、ホウ酸水溶液で架橋させ(架橋工程)、水で洗浄し(洗浄工程)、最後に乾燥させる(乾燥工程)により、製造することができる。
【0033】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、空中で延伸を行う乾式延伸、浴中で延伸を行う湿式延伸のいずれであってもよく、これらの双方を行ってもよい。偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pを大きくするためには延伸倍率の向上に有利な湿式延伸で実施することが好ましい。湿式延伸は、例えば、上記の染色工程および/または架橋工程の間および/または前後に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴中に浸漬した状態で延伸を施し得る。一軸延伸を施すには、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを周速の異なるロール間を通して延伸してもよいし、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを熱ロールで挟む方法で延伸してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの最終的な延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
【0034】
膨潤工程では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水で膨潤させる。膨潤処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬させることにより実施できる。水の温度は、例えば10〜70℃であり、浸漬時間は、例えば10〜600秒程度である。
【0035】
染色工程では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、フィルムに二色性色素を吸着させる。染色処理は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬させればよい。二色性色素としては、具体的に、ヨウ素または二色性染料が用いられる。
【0036】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。水溶液中のヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.003〜1重量部程度であり得る。水溶液中のヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.1〜20重量部程度である。この水溶液の温度は、通常10〜45℃程度であり、浸漬時間は、通常30〜600秒程度である。
【0037】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。水溶液中の二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10
-3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、浸漬時間は、通常20〜600秒程度である。
【0038】
架橋工程は、例えば、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬させて行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常1〜15重量部程度、好ましくは2〜10重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常1〜20重量部程度、好ましくは5〜15重量部である。ホウ酸水溶液へのフィルムの浸漬時間は、通常10〜600秒程度であり、好ましくは20秒以上であり、また好ましくは300秒以下である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜70℃である。ホウ酸水溶液には、pH調整剤として、硫酸、塩酸、酢酸、アスコルビン酸などを添加してもよい。ホウ酸水溶液は、組成および温度等が異なる2種以上のものを使用してよく、この場合、最初のホウ酸水溶液より、後のホウ酸水溶液のほうが、ホウ酸濃度が低くなるように適用することが好ましい。
【0039】
架橋工程を経たポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水による洗浄工程に付される。洗浄処理は、例えば、架橋処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬させて行われる。洗浄処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。
【0040】
その後、乾燥工程を経て、偏光子が得られる。乾燥は、通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は通常40〜100℃であり、乾燥時間は通常30〜600秒程度である。
【0041】
偏光子の厚みは、例えば約5〜30μmであってよい。偏光子のホウ素含有率は、優れた耐久性を得られる観点から、好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上、さらに好ましくは3.0重量%以上であり、温度変化による偏光板の収縮やカール(反り)を抑制できる観点から、好ましくは5.5重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下である。
【0042】
[機能層]
機能層は、代表的には、保護フィルムであってよい。保護フィルムは、熱可塑性樹脂から構成される透明樹脂フィルムであり得る。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂を例とする鎖状ポリオレフィン系樹脂および環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;セルローストリアセテートおよびセルロースジアセテート等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂から選択される(メタ)アクリル系樹脂;またはこれらの少なくとも2種以上の混合物などが挙げられる。また、上記樹脂を構成する少なくとも2種以上の単量体の共重合物を用いてもよい。
【0043】
環状ポリオレフィン系樹脂は通常、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、エチレンおよびプロピレン等の鎖状オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0044】
環状ポリオレフィン系樹脂は種々の製品が市販されている。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品の例としては、いずれも商品名で、TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチックス株式会社から販売されている「TOPAS」(登録商標)、JSR株式会社から販売されている「アートン」(登録商標)、日本ゼオン株式会社から販売されている「ゼオノア」(登録商標)および「ゼオネックス」(登録商標)、三井化学株式会社から販売されている「アペル」(登録商標)などがある。
【0045】
また、製膜された環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの市販品を保護フィルムとして用いてもよい。市販品の例としては、いずれも商品名で、JSR株式会社から販売されている「アートンフィルム」(「アートン」は同社の登録商標)、積水化学工業株式会社から販売されている「エスシーナ」(登録商標)および「SCA40」、日本ゼオン株式会社から販売されている「ゼオノアフィルム」(登録商標)などが挙げられる。
【0046】
セルロースエステル系樹脂は通常、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。また、これらの共重合させたものや、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものを用いることもできる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)が特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例は、いずれも商品名で、富士フイルム株式会社から販売されている「フジタック(登録商標) TD80」、「フジタック(登録商標) TD80UF」、「フジタック(登録商標) TD80UZ」および「フジタック(登録商標) TD40UZ」、コニカミノルタ株式会社製のTACフィルム「KC8UX2M」、「KC2UA」および「KC4UY」などがある。
【0047】
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する、上記セルロース系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。好適なポリエステル系樹脂の例は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0048】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性、透明性を有する樹脂である。ポリカーボネート系樹脂は、光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネート等であってもよい。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を含む重合体である。該重合体は、典型的にはメタクリル酸エステルを含む重合体である。好ましくはメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合が、全構造単位に対して、50重量%以上含む重合体である。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、他の重合性モノマー由来の構成単位を含む共重合体であってもよい。この場合、他の重合性モノマー由来の構成単位の割合は、好ましくは全構造単位に対して、50重量%以下である。
【0050】
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得るメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、メタクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0051】
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る上記他の重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル、及びその他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を挙げることができる。他の重合性モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0052】
その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレン等のビニル系化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物が挙げられる。その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の範囲に含まれる限り、機能層は、位相差フィルムおよび輝度向上フィルム等の光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる透明樹脂フィルムを延伸(一軸延伸または二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。あるいは、機能層は、保護フィルムと位相差フィルムとの貼合品等であってよい。
【0054】
また、機能層は、機能層の偏光子とは反対側の表面に、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層および防汚層等の表面処理層(コーティング層)を備えていてもよい。表面処理層は、公知の方法により形成可能である。
【0055】
偏光子の両面に第1機能層および第2機能層を設ける場合、これら2つの機能層は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。機能層が異なる場合の例としては、機能層を構成する熱可塑性樹脂の種類が少なくとも異なる組み合わせ;機能層の光学機能の有無またはその種類において少なくとも異なる組み合わせ;表面に形成される表面処理層の有無またはその種類において少なくとも異なる組み合わせなどがある。
【0056】
機能層の厚みは、偏光板の薄膜化の観点から薄いことが好ましく、例えば90μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下であり、更に好ましくは30μm以下である。他方、機能層は、加工性の観点からある程度の強度を確保し得る厚みを有することが好ましく、例えば5μm以上である。
【0057】
[粘着剤層]
粘着剤層を形成する粘着剤としては、従来公知のものを適宜選択すればよく、偏光板が曝され得る環境下において、剥れなどが生じない程度の接着性を有するものであればよい。具体的には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などを挙げることができ、透明性、耐候性、耐熱性、加工性の点で、アクリル系粘着剤が特に好ましい。
【0058】
粘着剤には、必要に応じ、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、シランカップリング剤など、各種の添加剤を適宜に配合してもよい。
【0059】
粘着剤層は、通常、粘着剤の溶液を剥離層(離型フィルム)上に粘着剤を塗布し、乾燥することにより形成される。剥離層上への塗布は、例えば、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。更に、剥離層に粘着剤を塗布して形成した粘着剤層の表面に別の剥離層を配置して、粘着剤層の両面に剥離層が形成されたものを利用してもよい。
【0060】
粘着剤層の厚みは、通常3〜100μm程度であり、好ましくは5〜50μmである。
【0061】
[偏光板の製造]
偏光子、機能層、および使用する場合には粘着剤層を、所望の順序で積層することにより、本発明の偏光板を製造することができる。
【0062】
偏光子層と機能層との積層は、任意の適切な方法により実施してよく、例えば接着剤を使用して層間を接着してよい。接着剤には、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤などを使用でき、生産性の観点から水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤を使用することが好ましい。得られた偏光板における接着剤層の厚みは、例えば水系接着剤であれば0.01〜0.2μm程度であり得、活性エネルギー線硬化性接着剤であれば0.1〜4μmであり得る。
【0063】
水系接着剤は、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものである。好ましく用いられる水系接着剤は、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた接着剤組成物である。
【0064】
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、当該ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂であることができるほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体であってもよい。
【0065】
ポリビニルアルコール系樹脂を接着剤成分とする水系接着剤は通常、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液である。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0066】
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤は、接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂のような硬化性成分や架橋剤を含有することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を好適に用いることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、「スミレーズレジン650」(田岡化学工業(株)製)、「スミレーズレジン675」(田岡化学工業(株)製)、「WS−525」(日本PMC(株)製)等が挙げられる。これら硬化性成分や架橋剤の添加量(硬化性成分及び架橋剤としてともに添加する場合にはその合計量)は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合には、接着性向上の効果が小さくなる傾向にあり、また、当該添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して100重量部を超える場合には、接着剤層が脆くなる傾向にある。
【0067】
また、接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合の好適な例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。
【0068】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する接着剤である。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、偏光板が有する接着剤層は、当該接着剤の硬化物層である。
【0069】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する接着剤であることができ、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性接着剤である。ここでいうエポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0070】
好適に使用できるエポキシ系化合物の具体例は、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物を含む。
【0071】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、又はこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
【0072】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。また、活性エネルギー線硬化性接着剤が(メタ)アクリル系化合物のようなラジカル重合性硬化性成分を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
【0073】
偏光フィルムに保護フィルムを貼合するに先立って、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面活性化処理を行ってもよい。この表面活性化処理により、偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を高めることができる。
【0074】
粘着剤層を使用する場合、それ自体の粘着性により、偏光子層または機能層に対して積層することができる。より詳細には、粘着剤層の積層面に剥離層が存在する場合はその剥離層を剥がして、粘着剤層を偏光子層または機能層に対して転写することにより積層できる。
【0075】
[画像表示装置の製造]
上記のようにして製造される偏光板を、粘着剤層を介して他の部材(光学部材)に、貼り合わせて、画像表示装置を得ることができる。より詳細には、粘着剤層の貼り合わせ面に剥離層が存在する場合はその剥離層を剥がして、偏光板を他の部材に対して粘着剤層の粘着性により貼り合わせることができる。例えば、偏光板を液晶セルに貼り合わせることにより液晶表示装置を得ることができ、有機エレクトロルミネッセンス素子に貼り合わせることにより有機エレクトロルミネッセンス表示装置を得ることができる。偏光板が貼り合わせられる液晶セルまたは有機エレクトロルミネッセンス素子は、既知のものを適用すればよい。液晶セルまたは有機エレクトロルミネッセンス素子のうち、偏光板が直接貼り合わせられる構成要素は、代表的にはガラス板である。
【0076】
しかしながら、本発明の偏光板の用途は画像表示装置に限定されず、様々な光学用途に使用され得ることに留意されたい。
【実施例】
【0077】
<実施例1>
(A)偏光子の作製
長尺のポリビニルアルコールフィルム(平均重合度:約2400、ケン化度:99.9モル%以上、厚み:60μm)を連続的に搬送し、20℃の純水からなる膨潤浴に滞留時間31秒で浸漬させた(膨潤工程)。その後、膨潤浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/水が2/100(重量比)であるヨウ素を含む30℃の染色浴に滞留時間122秒で浸漬させた(染色工程)。次いで、染色浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が12/4.1/100(重量比)である56℃の架橋浴に滞留時間70秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が9/2.9/100(重量比)である40℃の架橋浴に滞留時間13秒で浸漬させた(架橋工程)。染色工程および架橋工程において、浴中でのロール間延伸により縦一軸延伸を行った。原反フィルムを基準とする総延伸倍率は5.5倍とした。次に、架橋浴から引き出したフィルムを5℃の純水からなる洗浄浴に滞留時間3秒で浸漬させた後(洗浄工程)、80℃の乾燥炉に滞留時間190秒で導入し乾燥を行い(乾燥工程)、偏光子を得た。本実施例で得られた偏光子の厚みは23.6μmであった。
【0078】
(B)偏光板の作製
上記(A)で得られた偏光子を連続的に搬送するとともに、長尺の第1機能層(第1保護フィルム)〔コニカミノルタオプト株式会社製のTACフィルム「KC8UX」、厚み:80μm〕および長尺の第2機能層(第2保護フィルム)〔コニカミノルタオプト株式会社製のTACフィルム「KC8UX」、厚み:80μm〕を連続的に搬送し、偏光子と第1機能層との間および偏光子と第2機能層との間に水系接着剤を注入しながら、貼合ロール間に通して第1機能層/水系接着剤層/偏光子/水系接着剤層/第2機能層からなる積層フィルムを得た。引き続き、得られた積層フィルムを搬送し、60℃の乾燥炉に滞留時間100秒で導入して加熱処理を行うことにより水系接着剤層を乾燥させて、偏光板を得た。上記の水系接着剤には、ポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)製の商品名「ゴーセファイマー」、平均重合度1100〕を95℃の熱水に溶解して得られた濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液に架橋剤〔日本合成化学工業(株)製のグリオキシル酸ナトリウム〕をポリビニルアルコール粉末10重量部に対して1重量部の割合で混合した水溶液を用いた。
【0079】
(C)粘着剤層付き偏光板の作製
剥離層(離型フィルム)上に25μmの厚みで形成されている市販のアクリル系粘着剤シートの市販品を用いて、上記(B)で得られた偏光板の第2機能層上に厚み25μmの粘着剤層を形成し、粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0080】
(D)偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率(引張弾性率)
上記(A)で得られた偏光子から、偏光子透過軸方向に長さ100mmおよび偏光子吸収軸方向に幅20mmの長方形の試験片を切り出した。次いで、引張試験機〔株式会社島津製作所製 オートグラフ AG−1S試験機〕の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように上記試験片の長さ方向(偏光子透過軸方向)両端部を挟み、23℃の環境下、引張速度5mm/分で試験片を長さ方向(偏光子透過軸方向)に引っ張り、得られる応力−ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、23℃での偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率(引張弾性率)〔MPa〕を算出した。これにより算出された本実施例の偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pは4773MPaであった。
【0081】
(E)偏光子のホウ素含有率
偏光子約0.2gを純水170mlに加え、95℃にて完全に溶解させた後、マンニトール水溶液(12.5重量%)を30g加えて測定用サンプル溶液とした。この測定用サンプル溶液が中和点を迎えるまで、水酸化ナトリウム水溶液(1mol/l)を滴下し、その滴下量からポリビニルアルコールフィルム中のホウ素含有率(重量%)を下記式から算出した。これにより算出された本実施例の偏光子のホウ素含有率は3.8重量%であった。
ホウ素含有率=1.08×水酸化ナトリウム水溶液滴下量(ml)/偏光フィルムの重量(g)
【0082】
(F)機能層の偏光子透過軸方向の弾性率(引張弾性率)
上記(B)の偏光板を製造する際に使用した第1機能層および第2機能層から、得られた偏光板において偏光子透過軸方向と平行な方向に長さ100mmおよび偏光子吸収軸方向と平行な方向に幅20mmの長方形の試験片を切り出した。次いで、引張試験機〔株式会社島津製作所製 オートグラフ AG−1S試験機〕の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように上記試験片の長さ方向(偏光子透過軸方向と平行な方向)両端部を挟み、23℃の環境下、引張速度5mm/分で試験片を長さ方向(偏光子透過軸方向と平行な方向)に引っ張り、得られる応力−ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、23℃での機能層の偏光子透過軸方向の弾性率(引張弾性率)〔MPa〕を算出した。これにより算出された本実施例の第1機能層の偏光子透過軸方向の弾性率E
F1および第2機能層の偏光子透過軸方向の弾性率E
F2は4169MPaであった。
【0083】
(G)粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率(引張弾性率)
上記(C)の粘着剤層付き偏光板を製造する際に使用した粘着剤シートから、粘着剤層のみを、得られた偏光板において偏光子透過軸方向と平行な方向に長さ50mmおよび偏光子吸収軸方向と平行な方向に幅5mmの長方形の試験片として切り出した。次いで、精密万能試験機〔株式会社島津製作所製 オートグラフ AGS−50NX試験機〕の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が3cmとなるように上記試験片の長さ方向(偏光子透過軸方向と平行な方向)両端部を挟み、23℃の環境下、引張速度300mm/分で試験片を長さ方向(偏光子透過軸方向と平行な方向)に引張り、得られる応力−ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、23℃での粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率(引張弾性率)〔kPa〕を算出した。これにより算出された本実施例の粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率E
PSAは135kPaであった。
【0084】
(H)弾性率差
弾性率差ΔEとして、上記(D)にて得られた偏光子の偏光子透過軸方向の弾性率E
Pから、上記(F)にて得られた第1機能層の偏光子透過軸方向の弾性率E
F1と第2機能層の偏光子透過軸方向の弾性率E
F2とが同じときはその値を、異なるときはいずれか大きい方の値をE
Fとして差し引いて算出した。これにより算出された本実施例の弾性率差ΔEは604MPaであった。
【0085】
(I)耐クラック性の評価
上記(C)で得られた粘着剤層付き偏光板から、偏光子透過軸方向に長さ80mmおよび偏光子吸収軸方向に幅60mmの長方形の試験片を切り出した。試験片をガラス板に貼り合わせ、80℃のオーブンに1時間投入した。ガラス板に貼り合わせられた試験片をオーブンから取り出した後、23℃で相対湿度55%の環境下に15分保管し、次いで、23℃の水に30分間浸漬した。ガラス板に貼り合わせられた試験片を水から取り出した後、試験片の水分を空気噴射によって取り除いた。その後、試験片の長さ方向(偏光子透過軸方向)端部を、ルーペ(倍率10倍)を用いて目視観察し、クラックの本数を数えた。本実施例ではクラックは認められなかった。
【0086】
<実施例2〜4>
偏光板を製造するときの第1機能層および第2機能層を表1の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光板および粘着剤層付き偏光板を作製した。ここで表1中の機能層の略称の詳細は次の通りである。
〔a〕TAC1:コニカミノルタオプト株式会社製のTACフィルム「KC8UX2MW」 厚み80μm
〔b〕TAC2:コニカミノルタオプト株式会社製のTACフィルム「KC4UYW」 厚み40μm
〔c〕TAC3:コニカミノルタオプト株式会社製のTACフィルム「KC2UAW」 厚み25μm
〔d〕COP1:JSR株式会社製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである商品名「アートンフィルム FEKB015D3」 厚み15μm
〔e〕COP2:日本ゼオン株式会社製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである商品名「ゼオノアフィルム ZF14−023」 厚み23μm
〔f〕COP3:日本ゼオン株式会社製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである商品名「ゼオノアフィルム ZT12−090079」 厚み21μm、面内位相差90nm、厚み位相差79nm
【0087】
<実施例5
(参考例)、比較例1〜3>
偏光子を製造する時に、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が12/1.5/100(重量比)である56℃の架橋浴に滞留時間70秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が9/1.5/100(重量比)である40℃の架橋浴に滞留時間13秒で浸漬させ(架橋工程)、偏光板を製造する時の第1機能層および第2機能層を表1の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光板および粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0088】
<実施例6>
偏光子を製造する時に、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が12/5.0/100(重量比)である56℃の架橋浴に滞留時間70秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が9/5.0/100(重量比)である40℃の架橋浴に滞留時間13秒で浸漬させ(架橋工程)、偏光板を製造するときの第1機能層および第2機能層を表1の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光板および粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0089】
<実施例7>
長尺のポリビニルアルコールフィルム(平均重合度:約2400、ケン化度:99.9モル%以上、厚み:30μm)を使用し、偏光板を製造するときの第1機能層および第2機能層を表1の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光板および粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0090】
<実施例8>
偏光子を製造する際の原反フィルムを基準とする総延伸倍率を5.4倍としたこと以外は実施例7と同様にして偏光板および粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0091】
<実施例9>
偏光子を製造するときに、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が12/1.5/100(重量比)である56℃の架橋浴に滞留時間70秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が9/1.5/100(重量比)である40℃の架橋浴に滞留時間13秒で浸漬させ(架橋工程)、偏光板を製造するときの第1機能層および第2機能層を表1の通りに変更したこと以外は実施例7と同様にして偏光板および粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0092】
<比較例4>
偏光板を製造するときの第1機能層および第2機能層を表1の通りに変更したこと以外は実施例9と同様にして偏光板および粘着剤層付き偏光板を作製した。
【0093】
各実施例および比較例の条件および結果を表1にまとめて示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1を参照して、弾性率差ΔEが−1100MPa以上である実施例1〜9では、クラック本数が20本以下であり、弾性率差ΔEが−1200MPa以下である比較例1〜4ではクラック本数が80本以上であるのに対して顕著に低減されていることが確認された。
【0096】
<実施例10〜13>
実施例1で用いたものとは異なる市販のアクリル系粘着剤シートを用いて偏光板の第2機能層上に厚み25μmの粘着剤層を形成したこと以外は、実施例1または6と同様にして粘着剤層付き偏光板を作製した。各実施例で用いた粘着剤層の偏光子透過軸方向の弾性率E
PSAは表2の通りであった。
【0097】
各実施例の条件および結果を表2にまとめて示す。
【0098】
【表2】